森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライ...

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森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーン の推進に向けた⽇本の取組 林野庁海外林業協⼒室 Photo: Courtesy of CIFOR

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森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に向けた⽇本の取組

林野庁海外林業協⼒室

Photo: Courtesy of CIFOR

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世界の森林減少の現状及びその要因

世界の森林⾯積の変化

世界の森林は約40億ha(森林率: 約31%)で、2015年までの5年間に、年平均で331万ha減少(植林による増加分も加味)。 森林減少の原因の8割は農地開発(東南アジアや南⽶では主に⼤⾖やパームオイル等の商品作物の開発、アフリカでは主に⽣計の維持を⽬的とする⼩規模農

地開発)と⾔われており、森林減少抑制の課題は、⾷料安全保障の問題と密接に関連。 森林の減少・劣化は、地域の社会経済活動や環境に悪影響を及ぼすのみならず、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出、⽣物多様性の損失、砂漠化

の進⾏を引き起こすなど、⼈類の⽣存基盤を脅かす⼤きな問題。国連持続可能な開発⽬標(SDGs)においては、2020年までに森林減少を阻⽌し、植林を⼤幅に増加させる⽬標を明記(SDG15.2)

森林減少の要因別内訳(2000-2010)

森林⾯積の増減の上位5か国(2010-2015)

順位 国名 年間純増加⾯積(千ha)

対森林⾯積⽐(2010年)

1 中国 1,542 0.8 %2 オーストラリア 308 0.2 %3 チリ 301 1.8 %4 ⽶国 275 0.1 %5 フィリピン 240 3.3 %

順位 国名 年間純減少⾯積(千ha)

対森林⾯積⽐(2010年)

1 ブラジル ▲984 ▲0.2 %2 インドネシア ▲684 ▲0.7 %3 ミャンマー ▲546 ▲1.7 %4 ナイジェリア ▲410 ▲4.5 %5 タンザニア ▲372 ▲0.8 %

森林⾯積及び農地⾯積の年変化(2000-2010)

森林⾯積の年間増減

農地⾯積の年間増減

データ:世界森林資源評価2015(FAO)

データ:世界森林⽩書2016(FAO)

‐727

‐457

‐341 ‐331‐0.18%

‐0.11%‐0.09% ‐0.08%

‐0.25%

‐0.20%

‐0.15%

‐0.10%

‐0.05%

0.00%

‐800

‐600

‐400

‐200

01990‐2000年 2000‐2005年 2005‐2010年 2010‐2015年

年変化面積(万ha)年変化率(右軸)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

アフリカ 中南米 アジア 全大陸

都市開発

インフラ開発

鉱物資源開発

農業開発(生計)

農業開発(商業)

‐8000

‐6000

‐4000

‐2000

0

2000

4000

6000

8000

冷温帯 温帯 亜熱帯 熱帯

000 ha

データ:世界森林⽩書2016(FAO)

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世界の持続可能な森林経営に向けた⽇本の取組• 国際的対話プロセスへの貢献‐ UNFF会合、FAO林業委員会、モントリオール・プロセス etc.

• 違法伐採対策の推進‐ ⽊材⽣産国の違法伐採対策に対する⻑年の⽀援‐ 合法⽊材の流通・利⽤を促進する”クリーンウッド法”の成⽴(2016)

• REDD+活動の⽀援‐ JICAによる⼆国間技術協⼒、途上国への資⾦供与、国際機関等への資⾦拠出(GCF、FCPF、UN‐REDD等)、⼆国間クレジット制度(JCM)の活動、官⺠プラットフォームの設⽴

→ 公的セクターによる取組の限界(持続性、効果)→ 森林セクターの外側にいるステークホルダーのより深い関与が不可⽋

× 森林減少のスピードは鈍化しているが、依然として進⾏× 森林減少のドライバーは農地やインフラの開発等、森林セクター以外に起因

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サプライチェーンの取組の重要性

• ニューヨーク宣⾔(2014)への署名‐ “2020年までの農林産物に由来する森林減少を撲滅させる” という⽬標に、⽇本政府及び⽇本法⼈(1社)が署名。

• 持続可能な開発⽬標”SDGs”の策定(2015)‐ SDG12(持続可能な⽣産と消費)、SDG15(陸域⽣態系の保護、持続可能な森林経営等)を始め、森林減少の阻⽌は世界的な喫緊の課題であるとの認識を醸成。⽇本の取組指針として「SDGs実施指針」を策定(2016)

• ⺠間セクター、NGOの先導的取組‐ Forest 500, CDP Forest, TFA2020, Supply Change, etc.‐ 機関投資家による国連責任投資原則(PRI)への署名、ESG投資の拡⼤

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⽇本は農林産物の供給の多くを海外に依存

• ⽊材⾃給率は2000年代以降は上昇傾向にあり33%(2016年)に達するも、依然として毎年約5,000万m3(丸太換算)を輸⼊する⽊材輸⼊国。

• ⾷料⾃給率(供給熱量ベース)は39%であり、豊かな⾷⽣活の⼤半を海外からの輸⼊に依存。

→ ⽇本の⼀次産品輸⼊が直接的に⽣産国の森林減少を引き起こしていなくとも、グローバルマーケットの主要プレイヤーとして、そのリスクを認識・評価することが必要

→ ⺠間セクターや消費者の意識啓発のため、“サプライチェーン”と“森林減少”をテーマに国際シンポジウムを開催

100

010

80706050403020

90

⽶ 99%

畜産物 16%

油脂類 3%

砂糖類 28% ⿂介類 59%

⼩⻨ 12%

野菜 76%⼤⾖ 27%その他 22%果実 35%

品⽬別の⾷料⾃給率(供給熱量ベース)

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森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポジウム<SDGs, ⽣物多様性愛知⽬標の達成の鍵となる⺠間セクターによる森林保全への挑戦>

• 主催:林野庁(農林⽔産省) 協⼒:FAO, ITTO• 2018年1⽉23⽇‐24⽇@東京• 参加者 延べ約350⼈

International organization [3]:  FAO, ITTO, CIFOR, GCFGovernment [4]: Indonesia, Malaysia, EU, France, Japan(MAFF, METI)NGO [3]: Global Canopy, Forest Trends, Wild AsiaPrivate [12]: AEON, Airbus D&S, Ajinomoto, Hakuhodo,Japan Paper Association, Kao, Meiji, Nestle Japan, QUICK, Response Ability, Sekisui House, Starbucks Coffee Japan 

→ 議論の成果をモデレーターズ・サマリー(14のKey messages)としてとりまとめ

野中農林⽔産⼤⾂政務官 ミュラーFAO林業局部⻑

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モデレーターズ・サマリーの概要 (1)

1. 森林減少ゼロに貢献するサプライチェーンは、SDGsや⽣物多様性条約愛知⽬標の達成に向けて、決定的な役割を果たす。NY宣⾔は優れた参考例。

2. 需要サイドの企業は、製品原材料の⽣産が供給サイドにおいて森林減少を招くリスクを考慮しつつ、調達⽅針の確⽴や、実施状況の継続的公表に取り組む必要。

3. 合法かつ持続可能なサプライチェーンの構築・運⽤に向けて、キャパシティ・ビルディングの強化が必要。

4. あらゆる規模の事業者が競争的ではなく、プラットフォームやコンソーシアム等を通じて、共同的にかつ透明性を持った形で対処することが重要。

5. 市場の透明性を⾼めるため、⼀次産品流通が始まる⽣産現場を特定するリモートセンシング技術等の⾰新的なツールの開発・普及が重要。

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6. 企業のゼロ・デフォレステーションへの取組及び実施状況の開⽰は、今や世界的なESG投資の流れと関連。⾦融・投資セクターも、投資や融資を通じて持続可能な⽣産・消費に向けた変⾰を促すことが可能。

7. 公的セクターも積極的な役割を果たす必要。官⺠連携の強化が必要。

8. 経済・社会・環境側⾯への影響について、消費者も意識を⾼める必要。

9. 森林減少のみならず、持続可能な林産物⽣産を通じた森林劣化への対処も重要。

10. 森林保全と⾷料安全保障の達成の両⽴を図る上では、⽣産国の⼟地利⽤計画に則した包括的アプローチの実践が重要。また主要輸⼊国は、取組レベルの低い国への問題の移転が起こらないよう、整合的で協調したアプローチを⽬指す必要。

モデレーターズ・サマリーの概要 (2)

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森林所管官庁が林産物以外の商品を扱う⺠間セクターにどのように森林減少問題への関与を促していくか?

• 森林減少リスクに関連するサプライチェーンに関与する企業の多くは、林産業以外のセクター(⾷品、化学、⼩売、⾦融, etc.)

• 森林所管官庁がこれら企業とどのように森林減少・劣化問題について協働していくか→政府内で組織を超えて連携した取組の必要性

KAO CORP.DAIWA HOUSE INDUSTRY CO. LTD.OJI HOLDINGS CORP.AJINOMOTO CO. INC.NIPPON PAPER INDUSTRIES CO. LTD.SHISEIDO CO. LTD.SUMITOMO GROUPAEON CO. LTD.ASICS CORP.CALBEE INC.

KIKKOMAN CORP.MITSUBISHI CORP.QP CORP.SEKISUI HOUSE LTD.TOYO SUISAN KAISHA LTD.YAKULT HONSHA CO. LTD.JA GROUPMEIJI HOLDINGS CO. LTD.NISSHIN OILLIO GROUP LTD.NITORI HOLDINGS CO. LTD.

SEVEN & I HOLDINGS CO. LTD.YAMAZAKI BAKING CO.JBICMITSUBISHI UFJ FINANCIAL GROUPNOMURA PARTNERS FUNDSNORINCHUKIN BANKORIX CORPORATIONSUMITOMO MITSUI FINANCIALMIZUHO FINANCIAL GROUPSUMITOMO MITUI TRUST HOLDING

例)Forest500 (Global Canopy)の評価対象とされている⽇本法⼈

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Thank you

Deforestation‐Free?