労働安全衛生法に基づく 化学物質管理の考え方と留意点 -...
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労働安全衛生法に基づく化学物質管理の考え方と留意点
令和元年11月13日
厚生労働省化学物質対策課中村 宇一
NITE講座 「化学物質に関するリスク評価とリスク管理の基礎知識」 第2回
労働安全衛生法とは
(目的)
第1条 この法律は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。
(事業者等の責務)
第3条 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。
2 機械、器具その他の設備を設計し、製造し、若しくは輸入する者、原材料を製造し、若しくは輸入する者又は建設物を建設し、若しくは設計する者は、これらの物の設計、製造、輸入又は建設に際して、これらの物が使用されることによる労働災害の発生の防止に資するように努めなければならない。
第4条 労働者は、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、事業者その関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない。 1
事業場における
化学物質管理と労働災害の状況
2
事業場における有害業務の有無・割合
有害業務の割合では製造業が最も高いが
他の業種でも一定の割合で有害業務が行われている
※平成28年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要 第18表から一部抜粋
産業有機溶剤業務がある
特定化学物質の製造・取扱い業務がある
鉱業、採石業、砂利採取業 4.4 % 1.8 %
建設業 6.8 % 2.0 %
製造業 23.4 % 11.6 %
電気・ガス・熱供給・水道業 8.7 % 11.6 %
不動産業、物品賃貸業 2.7 % 0.6 %
学術研究、専門・技術サービス業 8.4 % 6.0 %
サービス業(他に分類されないもの) 8.3 % 5.1 %
産業 合計 5.0 % 2.7 %
3
資料出所:労働者死傷病報告(平成25~28年、休業4日以上死傷)の1,920人中を集計・分析。
有害物等との接触による労働災害(休業4日以上)
労働災害件数は、製造業、建設業、清掃と畜業の順に多い
労働災害全体に占める割合は、製造業、清掃と畜業、建設業の順に高い
図 有害物等との接触による労働災害の業種別内訳(割合)
図 有害物等との接触が労働災害全体に占める割合(業種別)
資料出所:労働者死傷病報告(平成25~28年、休業4日以上死傷)
45.1%
15.9%
8.1%
6.6%
5.6%
5.5%
5.0%
8.2%製造業
建設業
清掃・と畜業
商業
運輸交通業
接客娯楽業
保健衛生業
その他
0.81%
0.47%
0.65%
0.18%
0.17%
0.32%
0.23%
0.24%
0.41%
0.0% 0.5% 1.0%
製造業
建設業
清掃・と畜業
商業
運輸交通業
接客娯楽業
保健衛生業
その他
全産業
5
資料出所:死亡災害報告(平成25~28年)
有害物等との接触による労働災害(死亡)
死亡災害では相対的に、建設業、畜産水産業などが占める割合が高い
死亡災害全体に占める割合は、畜産水産業、貨物取扱業なども高い
図 有害物等との接触による死亡災害の業種別内訳(人)
図 有害物等との接触が死亡災害全体に占める割合(業種別)
資料出所:死亡災害報告(平成25~28年)
23
20
6
5
3
22
2
2
1 製造業
建設業
接客娯楽業
畜産・水産業
保健衛生業
貨物取扱業
清掃・と畜業
運輸交通業
商業
その他
3.2%
1.5%
8.3%
6.5%
6.4%
4.2%
1.1%
0.4%
0.5%
0.4%
1.7%
0% 2% 4% 6% 8% 10%
製造業
建設業
接客娯楽業
畜産・水産業
保健衛生業
貨物取扱業
清掃・と畜業
運輸交通業
商業
その他
全産業
6
H23 H24 H25 H26 H27
石綿による中皮腫 544 522 528 529 539
石綿による肺がん 400 402 382 391 363
コークス等製造業務による尿路系腫瘍 4 6 10 1 4
1,2-ジクロロプロパンによる胆管がん 10 6 1
ベンジジンによる尿路系腫瘍 2 3 1 2 8
クロム酸塩・重クロム酸塩による肺がん等 2 3 2
電離放射線による白血病、肺がん等 1 1 2 1 1
ベータ-ナフチルアミンによる尿路系腫瘍 4 1 1 5
ジクロロメタンによる胆管がん 3 1
その他のがん 16 2 1 2
計 957 954 940 933 923※新規支給決定者数
職業がんの労災補償状況
7
胆管がんとは
胆管に発症するがんで、一般的には高齢者に発症する疾病とされ、50歳未満での発症はまれ。これまで、国際的にも化学物質による職業がんとは認識されてこなかった。
平成24年3月に大阪府内にある印刷事業場の労働者から化学物質の使用により胆管がんを発症したとして労災請求があった。
印刷事業場で発生した胆管がん
平成26年5月末日現在、印刷業における胆管がんの労災請求は87人(53人)。印刷業以外における胆管 がんの労災請求は20人(12人)で、多くの業種に分布。
※ ( )は請求時の死亡者数
8
調査の結果、原因物質は「1,2-ジクロロプロパン」と「ジクロロメタン」と推定
⇒ 1,2-ジクロロプロパンは、工業的使用量も多くはなく、有害性が未知な部分が多かったが、有害性情報が十分ではない物質を安易に使用※本件をきっかけに因果関係がわかり、国内で他にも労災認定
⇒ これまで胆管がんは、国際的にも職業がんの知見はなかった。有害性が不明であること(分類できない)は無害であることを意味しない。
⇒ 特にジクロロメタンは、工業的によく使われていたが、この高濃度で長期間ばく露した事例で初めてヒトへの発がん性が判明。毒でない物は存在せず、ばく露量次第である。
〇 1,2-ジクロロプロパンを発がん物質として特定化学物質障害予防規則で規制(平成25年10月施行)
〇 ジクロロメタンを発がん物質として特定化学物質障害予防規則で規制(平成26年11月施行)
印刷事業場で発生した胆管がん
9
2015年12月 福井県の事業場から複数の膀胱がん発症が報告される
労働安全衛生総合研究所による災害調査
主な原因物質 ・・・オルト-トルイジン(芳香族アミン)特徴的な臭気のある、無色の液体。 沸点200℃で気化しにくい主な用途 : 染料、顔料の中間体原料、エポキシ樹脂硬化剤原料
➢ IARC グループ1 「ヒトに対して発がん性がある」 (2010年)➢ 経皮吸収による全身への健康影響が無視できない
➢ 皮膚腐食性・刺激性・・・GHS区分外・ 作業環境測定、個人ばく露測定の結果は、日本産業衛生学会が勧告する許容濃度の1ppmより極めて低い
• 再現作業の前後で、作業員の尿中のオルト-トルイジンが増加• オルト-トルイジンを含む有機溶剤で作業服が濡れることがしばしばあった• 内側がオルト-トルイジンに汚染されたゴム手袋を繰り返し使用していた
経皮ばく露が主な原因と推測
厚生労働省
オルト-トルイジンを特化則に追加するとともに、経皮吸収によるばく露防止対策を強化
福井の事業場における膀胱がん発症事案
10
2016年9月 先の膀胱がん事案を契機とした全国調査で一の事業場において複数の膀胱がん発症を確認、労働安全衛生総合研究所による調査を実施
一の事業場における複数の膀胱がん発症事案の概要
・膀胱がんの病歴または所見・・・労働者1名、退職者6名の合計7名・発症者7名のうち5名について、3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)の取扱歴があった。●3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)
無色の結晶又は茶褐色のペレット。融点110℃、沸点379℃主な用途 : 防水材、床材などに利用されるウレタン樹脂の硬化剤
➢ 特定化学物質障害予防規則の特定第2類物質、特別管理物質(1976年~)
➢ IARC グループ1 「ヒトに対して発がん性がある」 (2010年)
厚生労働省
原因究明のため、労働安全衛生総合研究所による調査を実施原因は未解明であるが、予防的見地から以下の対策を実施・ 関係業界団体に対し、ばく露防止措置の徹底等を要請・ MOCAを取り扱う個々の事業場に対し、ばく露防止措置の徹底等を指導
化成品等の製造事業場における膀胱がん発症事案
11
12
• ポリマー(樹脂等)の製造を行う化学工場の製品の包装等を行う工程(投入、計量、袋詰め、梱包、運搬など)の作業に従事していた6名の労働者が肺疾患を発症
• 発症時の年齢は20代~40代で、6名のうち5名は業務歴が2年前後と短期間
事案の概要
アクリル酸系水溶性ポリマー製造事業場における肺疾患発症事案
架橋型アクリル酸系水溶性高分子化合物について
• 医薬品や化粧品を製造する際の中間体として使用される(主に増粘剤としての利用)
• 消費者等に提供される最終製品である医薬品や化粧品から元の吸入性粉じんに戻ることはない
• アクリル酸ポリマーを架橋剤と反応させることで、架橋構造を有している。
• 外観は白い粉末状。
原因の推定
有害性に関する情報
• 肺に対する有害性の文献情報は、これまで確認されて
いない
• 肺組織の線維化は無機粉じんの吸入により引き起こさ
れることはよく知られているが、本物質(架橋型アク
リル酸系水溶性高分子化合物)を含め、有機粉じんに
より発症するとの確立した知見はなく、労働安全衛生
法関係法令による措置義務の対象とはなっていない
13
資料出所:平成8年「労働環境調査」、平成13年「労働環境調査」、平成18年「労働環境調査」、平成26年「労働環境調査」
有害作業の種類
作業環境測定の結果管理区分Ⅲだった事業場の割合
H8年 H13年 H18年 H26年
粉じん作業が行われている事業場 5.7% 5.6% 7.4% 7.7%
有機溶剤業務が行われている事業場 3.8% 3.3% 4.3% 5.0%
特定化学物質の製造・取扱い業務が行われている事業場 1.2% 1.2% 2.9% 5.7%
有害作業の種類作業環境測定の実施率
H8年 H13年 H18年 H26年
粉じん作業が行われている事業場 75.3% 68.0% 81.3% 80.5%
有機溶剤業務が行われている事業場 73.8% 73.1% 80.3% 82.3%
特定化学物質の製造・取扱い業務が行われている事業場 81.2% 76.4% 86.4% 90.2%
化学物質を取り扱う事業場における作業環境
労働環境状況調査(平成26年)では、作業環境測定実施義務のある作業場を有しているにもかかわらず、18%(有機溶剤)、10%(特定化学物質)の事業場が実施していない。
改善が必要な管理区分3の事業場の割合が有機溶剤で5%(平成18年は4%)、特定化学物質で6%(平成18年は3%)と作業環境は悪化している。
14
事業場における
化学物質管理の基本的考え方
15
・化学物質の有害性には、発がん性など重篤なものも多い。
・遅発性の健康障害(がんなどばく露してから疾病が発症するまで10~数十年を要するもの)は、事業者が対策を怠った場合に、その発症に気づいてから健康障害を防止しようとしても、潜伏期間分を遡ることはできない。
・化学物質の有害性は、未解明なものも多く、今の時点で有害性が
明確になっていないこと=安全ではない。
・法令で厳しい規制がされていない物質=安全な物質でもない。
・毒であるかどうかは量で決まり、毒でないものは存在しない。
化学物質を取り扱うにあたって知っておくべきこと
化学物質を取り扱うことによるリスクを正しく評価しリスクに応じて対策を講じる必要 16
(労働災害の)リスク = ハザード × 暴露
危険有害要因 人
リスクの発生
安全衛生対策の不備
労働災害
ばく露
の可能性、程度、頻度
工学的対策 管理的対策
個人用保護具除去・低減
(空間的又は時間的に分離する)
危険・有害要因から労働災害に至るプロセス
17
リスクは ハザードのみで決まらない
リスク = 有害性 × ばく露
有害性低い ≠ リスク低い
より有害性又は危険性の低い化学物質等に代替した場合でも、代替に伴い使用量が増加すること、代替物質の揮発性が高く気中濃度が高くなること、あるいは、爆発限界との関係で引火・爆発の可能性が高くなることなど、リスクが増加する場合がある
発生年月 被災結果 原因物質 災害発生状況
H25.8 中毒1名 二酸化炭素
化学工場で製造されたドライアイス800㎏を配送する作業に従事していた被災者が、配送用車の運転席で意識を失っているところを発見された。製品の昇華を遅らせるため、製品の上に割ったドライアイスをちりばめ、その上に断熱シートを掛けていたとのことであり、発生した二酸化炭素により、二酸化炭素中毒になったもの。
H24.7 死亡1名 二酸化炭素路上に停車中の冷蔵冷凍車内の架台上で、配送作業を行っていた作業者が、車内に発生していた二酸化炭素を吸い込み、意識を失った。
【参考】有害性が低い物質で中毒・死亡に至った例
18
有害性が不明であることは 有害性が低いことと違う
有害性が不明 ≠ 有害性が低い
「危険性又は有害性のより低い物質への代替」には、危険性又は有害性が低いことが明らかな化学物質への代替が含まれ、以下のものがある。・ばく露限界がより高い化学物質・GHS又は日本工業規格Z7252に基づく危険性又は有害性の区分がより低
い化学物質危険性又は有害性が不明な化学物質等を、危険性又は有害性が低いものとして扱うことは避けなければならない。
どのように扱えば安全か分かっている物質を適切に管理して使用する
規制の強さ = 危険・有害性の強さ
とは限らない
19
労働安全衛生法に基づく
規制の仕組み
20
製造禁止
リスクアセスメント義務
(
リスクアセスメント
努力義務)
安全データシート
(SDS)
交付義務
(
SDS交付努力義務)
ベンジジン等 重度の健康障害あり(十分な防止対策なし)
健康障害多発(特にリスクの高い業務あり)
ベンゼン等
一定の危険・有害な物質
健康障害発生(使用量や使用法
によってリスクあり)
8物質
122物質
673物質
約7万物質
(
ラベル表示努力義務)
ラベル表示義務
追加等
新たに一定の危険・有害性の評価が確立した物質
【製造禁止】製造、輸入、譲渡、提供、使用を禁止
【特別規則】個別の規則(有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則など)で、製造・取扱いに際して、具体的な措置(排気装置の設置、マスクの使用、健康診断の実施など)を義務付け
【リスクアセスメント】製造・取扱いに際して、危険・有害性を調査・評価することを義務付け
【ラベル表示】譲渡・提供する場合に、容器にその物質の危険・有害性を絵表示することを義務付け
【SDS交付】譲渡・提供する場合に、その物質の危険・有害性、取扱い上の注意等を記載した文書を交付することを義務付け
特別規則発散抑制措置作業環境測定保護具、検診
など
労働安全衛生法に基づく化学物質に対する規制の体系
21
※対象とする含有率は、SDS交付義務対象の方が、おおむね、ラベル表示義務対象と同じか広いが、一部は逆の物質もある。※リスクアセスメントは、SDS交付義務とラベル表示義務のいずれか一方でも対象になれば、義務となる。※物質や含有率のほか、作業などによっても規制内容が異なってくる。※対象含有率が上記表記と異なる%である物質や、混合物のみの%を規定している物質があるなど、上図は正確ではない。
含有率
物質の種類
特別規則(特化則、有機則等)
122物質
ラベル表示義務
673物質
SDS交付義務
1~5%
0.1~1%
0.1~1%
がん原性指針
1%
リスクアセスメントSDS/ラベル努力義務
がん原性指針
がん原性指針
化学物質の規制体系(種類、含有率)
22
製造禁止
リスクアセスメント義務
(
リスクアセスメント
努力義務)
安全データシート
(SDS)
交付義務
(
SDS交付努力義務)
ベンジジン等 重度の健康障害あり(十分な防止対策なし)
健康障害多発(特にリスクの高い業務あり)
ベンゼン等
一定の危険・有害な物質
健康障害発生(使用量や使用法
によってリスクあり)
8物質
122物質
673物質
約7万物質
(
ラベル表示努力義務)
ラベル表示義務
追加等
新たに一定の危険・有害性の評価が確立した物質
【製造禁止】製造、輸入、譲渡、提供、使用を禁止
【特別規則】個別の規則(有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則など)で、製造・取扱いに際して、具体的な措置(排気装置の設置、マスクの使用、健康診断の実施など)を義務付け
【リスクアセスメント】製造・取扱いに際して、危険・有害性を調査・評価することを義務付け
【ラベル表示】譲渡・提供する場合に、容器にその物質の危険・有害性を絵表示することを義務付け
【SDS交付】譲渡・提供する場合に、その物質の危険・有害性、取扱い上の注意等を記載した文書を交付することを義務付け
特別規則発散抑制措置作業環境測定保護具、検診
など
労働安全衛生法に基づく規制(製造禁止)
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労働安全衛生法に基づく規制(製造禁止)
(製造の禁止)
第55条 黄りんマツチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物で、政令で定めるものは、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用してはならない。ただし、試験研究のため製造し、輸入し、又は使用する場合で、政令で定める要件に該当するときは、この限りでない。
<製造等禁止の物質(安全衛生法施行令)>① 黄りんマッチ② ベンジジン及びその塩③ 4―アミノジフエニル及びその塩④ 石綿(次に掲げる物で厚生労働省令で定めるものを除く。)
・ 石綿の分析のための試料の用に供される石綿・ 石綿の使用状況の調査に関する知識又は技能の習得のための教育の用に供される石綿・ 上に掲げる物の原料又は材料として使用される石綿
⑤ 4―ニトロジフエニル及びその塩⑥ ビス(クロロメチル)エーテル⑦ ベータ―ナフチルアミン及びその塩⑧ ベンゼンを含有するゴムのりで、その含有するベンゼンの容量が当該ゴムのりの溶剤(希釈剤を
含む。)の5%を超えるもの⑨ ②,③,⑤~⑦に掲げる物をその重量の1%を超えて含有し、又は④に掲げる物をその重量の0.1%
を超えて含有する製剤その他の物
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製造禁止
リスクアセスメント義務
(
リスクアセスメント
努力義務)
安全データシート
(SDS)
交付義務
(
SDS交付努力義務)
ベンジジン等 重度の健康障害あり(十分な防止対策なし)
健康障害多発(特にリスクの高い業務あり)
ベンゼン等
一定の危険・有害な物質
健康障害発生(使用量や使用法
によってリスクあり)
8物質
122物質
673物質
約7万物質
(
ラベル表示努力義務)
ラベル表示義務
追加等
新たに一定の危険・有害性の評価が確立した物質
【製造禁止】製造、輸入、譲渡、提供、使用を禁止
【特別規則】個別の規則(有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則など)で、製造・取扱いに際して、具体的な措置(排気装置の設置、マスクの使用、健康診断の実施など)を義務付け
【リスクアセスメント】製造・取扱いに際して、危険・有害性を調査・評価することを義務付け
【ラベル表示】譲渡・提供する場合に、容器にその物質の危険・有害性を絵表示することを義務付け
【SDS交付】譲渡・提供する場合に、その物質の危険・有害性、取扱い上の注意等を記載した文書を交付することを義務付け
特別規則発散抑制措置作業環境測定保護具、検診
など
労働安全衛生法に基づく規制(特別規則)
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労働安全衛生法に基づく規制(特別規則)
(事業者の講ずべき措置等)
第22条 事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。一 原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害。
第27条 第20条から第25条まで及び第25条の2第1項の規定により事業者が講ずべき措置及び前条の規定により労働者が守らなければならない事項は、厚生労働省令で定める。
有機溶剤中毒予防規則
特定化学物質障害予防規則
鉛中毒予防規則
四アルキル鉛中毒予防規則
石綿障害予防規則
【特別規則】特に危険・有害性の高い物質・作業を特定し、それぞれ製造・取扱いに当たって遵守すべき事項を個別具体的に規定
法律に基づき、具体的な規制として以下の特別規則が定められている
26
有機溶剤中毒予防規則
第1章 総則
第2章 設備
第3章 換気装置の性能等
第4章 管理
第5章 測定
第6章 健康診断
第7章 保護具
第8章 有機溶剤の貯蔵及びから容器の処理
第9章 有機溶剤作業主任者技能講習
有機溶剤中毒予防規則について
産業有機溶剤業務がある
鉱業、採石業、砂利採取業 4.4 %
建設業 6.8 %
製造業 23.4 %
電気・ガス・熱供給・水道業 8.7 %
不動産業、物品賃貸業 2.7 %
学術研究専門・技術サービス業
8.4 %
サービス業(他に分類されないもの)
8.3 %
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有機溶剤とは、他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物の総称。油・ロウ・樹脂・ゴム・塗料など水に溶けないものを溶かすことから、溶剤として塗装、洗浄、印刷等工業的用途において幅広く使用されている。身近なものでは石油・灯油・シンナーが有機溶剤。
一部出典:厚生労働省パンフレット「有機溶剤を正しく使いましょう」
○常温では液体であり、揮発性が高い。
沸点が低く常温での蒸気圧が高い
(例) ジクロロメタン
沸点:40℃、蒸気圧:47.4kPa(20℃)
(参考) 水の蒸気圧: 2.3kPa(20℃)、47.5kPa(80℃)
○揮発した蒸気は、作業者の呼吸を通じて体内に吸収されやすく、油脂に溶ける性質があることから皮膚からも吸収される。
出典:厚生労働省パンフレット「有機溶剤を正しく使いましょう」
○危険有害性蒸気を吸入すると健康を害する引火しやすい
○空気より重い
有機溶剤とは
28
①有機溶剤等
有害性の高いハザード
ばく露の大きい場合
リスクの高いものを対象に健康障害防止措置
を義務付け
本章の規定は、有機溶剤業務を行なう事業についてはもとより、それ以外の有機溶剤等を販売する事業及び倉庫業等についても適用されるものであること。 (S35.10.31基発第929号)
○安衛則の規定が適用される例(有機則に規定なし)
○基本
有機溶剤中毒予防規則の適用対象
②屋内作業場等③有機溶剤業務
○その他
貯蔵場所の換気等(第8章)は、有機溶剤業務以外にも適用
(皮膚障害等防止用の保護具)
第594条 事業者は、皮膚に障害を与える物を取り扱う業務又は有害物が皮膚から吸収され、若しくは侵入して、健康障害若しくは感染をおこすおそれのある業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、塗布剤、不浸透性の保護衣、保護手袋又は履はき物等適切な保護具を備えなければならない。
29
有機溶剤業務
イ 有機溶剤等を製造する工程における有機溶剤等のろ過、混合、攪拌、加熱又は容器若しくは設備への注入の業務
ロ 染料、医薬品、農薬、化学繊維、合成樹脂、有機顔料、油脂、香料、甘味料、火薬、写真薬品、ゴム若しくは可塑剤又はこれらの物の中間体を製造する工程における有機溶剤等のろ過、混合、攪拌又は加熱の業務
ハ 有機溶剤含有物を用いて行う印刷の業務ニ 有機溶剤含有物を用いて行う文字の書込み又は描画の業
務ホ 有機溶剤等を用いて行うつや出し、防水その他物の面の
加工の業務ヘ 接着のためにする有機溶剤等の塗布の業務ト 接着のために有機溶剤等を塗布された物の接着の業務チ 有機溶剤等を用いて行う洗浄(ヲに掲げる業務に該当す
る洗浄の業務を除く。)又は払しよくの業務リ 有機溶剤含有物を用いて行う塗装の業務(ヲに掲げる業
務に該当する塗装の業務を除く。)ヌ 有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務ル 有機溶剤等を用いて行う試験又は研究の業務ヲ 有機溶剤等を入れたことのあるタンク(有機溶剤の蒸気
の発散するおそれがないものを除く。以下同じ。)の内部における業務
地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場
船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部
保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部
タンクの内部ピットの内部坑の内部ずい道の内部暗きょ又はマンホールの
内部箱桁の内部ダクトの内部水管の内部そのほか通風が不十分な
場所(航空機、コンテナー、蒸気管、煙道、ダム、船体ブロックの各内部等)
●屋内作業場●船舶の内部●車両の内部●タンク等の内部
屋内作業場等
30
普通有機溶剤
第1種(2物質) 第2種(35物質) 第3種(7物質)
特定化学物質→特別有機溶剤
第1種相当(5物質) 第2種相当(7物質)
※該当なし
局排装置等の設置
タンク等の内部以外
5
・密閉式・局排装置・プッシュプル(全体換気は×)
×
タンク等の内部
吹付作業
6-①-②
吹付以外
6-①-②
・密閉式・局排装置・プッシュプル・全体換気
いずれか
強 弱毒性
有機溶剤の分類と措置内容
クロロホルム、四塩化炭素、 1,2-ジクロロエタン 等
トルエン、キシレン、アセトン、エチルエーテル 等
ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ナフサ 等
いずれか
二硫化炭素、1,2-ジクロロエチレン
1,4-ジオキサン、ジクロロメタン、スチレン等
31
条文 第1種有機溶剤 第2種有機溶剤 第3種有機溶剤
管
理
作業主任者 19 ○ ○ ○
定期自主検査 20 ○ ○ ○
点検 22 ○ ○ ○
補修 23 ○ ○ ○
掲示 24 ○ ○ ○
区分表示 25 赤 黄 青
作業環境測定 28 ○ ○ ×
そ
の
他
健康診断 29 ○ ○ ○(タンク等内部に限る)
貯蔵 35 ○ ○ ○
空容器の処理 36 ○ ○ ○
32
特定化学物質障害予防規則
第1章 総則
第2章 製造等に係る措置
第3章 用後処理
第4章 漏えいの防止
第5章 管理
第5章の2 特殊な作業等の管理
第6章 健康診断
第7章 保護具
第8章 製造許可等
第9章 特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習
第10章 報告
特定化学物質障害予防規則
産業特定化学物質の製造・取扱い業務がある
鉱業、採石業、砂利採取業 1.8 %
建設業 2.0 %
製造業 11.6 %
電気・ガス・熱供給・水道業 11.6 %
不動産業、物品賃貸業 0.6 %
学術研究専門・技術サービス業
6.0 %
サービス業(他に分類されないもの)
5.1 %
33
第1類物質がん等の慢性障害を引き起こす物質の内、特に有害性が高いもの
第2類物質がん等の慢性障害を引き起こす物質の内、第1類物質以外のもの
第3類物質大量漏洩により急性中毒を引き起こす物質(漏洩防止措置が必要)
特定第2類物質 第2類物質の内、大量漏洩により急性中毒を引き起こす物質
特別有機溶剤等
オーラミン等
※製造許可物質
管理第2類物質 特定第2類物質、特別有機溶剤等及びオーラミン等以外のもの
特別管理物質第一類物質、第二類物質の中で、職業がんなど労働者に重度の健康障害を生ずるおそれがあり、発症までに長い期間がかかるもの
特定化学物質の分類
有機溶剤として規制されていた物質等でがん原性の可能性のあるもの
物質にがん原性は見られないが製造工程にがん原性のあるもの
34
第1類物質
○ 密閉式、局排装置
○ぼろ処理、立入禁止、床、容器等○休憩室、洗浄設備、喫煙等禁止
○
作業主任者
○
作業環境測定
○
特殊健診
(ホルムアルデヒド、エチレンオキシドは安衛則45
条)
第2類物質
○ 密閉式、局排装置、全体換気
○ぼろ処理、立入禁止、床、容器等○休憩室、洗浄設備、喫煙等禁止
第3類物質
○ぼろ処理、立入禁止、床、容器等
不要
不要
アンモニア、一酸化炭素、塩化水素、硫酸、フェノール 等
PCB
ジクロルベンジジン、ベリリウム 等
大量漏えい防止
○特定化学設備
特別管理物質
○掲示○作業記録、測定記
録の30年保存
管理第2類物質
クロム酸、コールタール、
シアン化カリウム、カドミウム、水銀 等
オーラミン等
特別有機溶剤等
特定第2類物質
塩化ビニル、ベンゼン、
塩素、シアン化水素、臭化メチル等
特定化学物質の分類と措置内容○製造許可
35
特定化学物質
第1類物質
第2類物質
第3類物質
特定第2類物質
オーラミン等
管理第2類物質
エチルベンゼン等(屋内の塗装業務)
1,2-ジクロロプロパン等(洗浄・払拭業務)
クロロホルム等(有機溶剤業務)
クロロホルム、四塩化炭素、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、スチレン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、メチルイソブチルケトン
特別有機溶剤等(旧エチルベンゼン等)
有機溶剤としての措置(有機則)+
発がん性に着目した措置(特化則)【例:特別管理物質として記録を30年保存】
有機溶剤中毒予防規則で規制されている有機溶剤のうち、WHO/IARCで1、2A、2Bの評価がされているものについて、職業がんの予防の観点から健康障害防止措置が必要
「特別有機溶剤」規制の導入 ※平成26年
36
特化則など労働安全衛生法令による具体的な措置について検討対象物質の形状・取扱い業務の範囲、局所排気装置、保護具、作業環境測定(管理濃度)、特殊健診、記録の保存等
有害性情報の収集 ばく露実態調査(測定など)
対象物質の選定
専門家によるリスク評価
ばく露評価有害性評価
健康障害防止措置検討会 →国に報告
リスク評価(初期、詳細)
有害物ばく露作業報告(事業場→監督署)
検討会の結果を踏まえて、必要に応じ、特別規則の規制対象物質に追加
○ 国内外の情報をもとに、特に危険・有害性の高いと考えられる物質を選定し、その物質の危険・有害性情報を収集するとともに、使用状況を調査し、専門家による検討を経て、必要に応じて特別規則に追加。
化学物質の有害性・危険性の評価と必要な規制の検討
37
物質名 公布 施行
ホルムアルデヒド、1,3-ブタジエン、硫酸ジエチル 2007.12 2008.3
ニッケル化合物、砒素及びその化合物 2008.11 2009.4
酸化プロピレン、1,1-ジメチルヒドラジン、1,4-ジクロロ-2-ブテン、1,3-プロパンスルトン
2011.1 2011.4
インジウム化合物、エチルベンゼン、コバルト及びその無機化合物 2012.9 2013.1
1,2-ジクロロプロパン 2013.8 2013.10
ジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト(DDVP)、クロロホルム、四塩化炭素、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、スチレン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、メチルイソブチルケトン
2014.8 2014.11
ナフタレン、リフラクトリーセラミックファイバー 2015.8 2015.11
オルト-トルイジン 2016.11 2017.1
3酸化2アンチモン 2017.3 2017.6
これまで28物質を特化則に追加
リスク評価により「特定化学物質障害予防規則」に追加された物質
38
化学物質の種類は、約7万種類
年間100㎏を超える製造・輸入の物質の新規届出は年間約1,000物質
年間100kg以下を製造・輸入の少量新規化学物質は常時3万物質強
規制対象物質の拡大の手法だけでは対応困難
労働現場における化学物質の現状
39
※平成29年に発生した化学物質による休業4日以上の健康障害事案の分析結果
件数 割合
障害内容別の件数※複数の傷害が発生しているものがあるため、合計値は件数と合わない場合がある※( )内は障害内容別の件数を合計したものに対する割合
吸入による中毒等
眼障害 皮膚障害 誤飲による障害
特別規則対象物質 78 20.5%32
(37.6%)14
(16.5%)39
(45.9%)0
(0.0%)
特定化学物質 64 16.8% 25 10 36 0
有機溶剤 13 3.4% 6 4 3 0
鉛 1 0.3% 1 0 0 0
四アルキル鉛 0 0.0% 0 0 0 0
特別規則以外のSDS交付義務対象物質
93 24.5%6
(6.2%)31
(32.0%)60
(61.9%)0
(%)
SDS交付義務対象外物質 96 25.3%8
(7.9%)30
(29.7%)63
(62.4%)0
(%)
物質名が特定できていないもの 113 29.7%13
(10.9%)30
(25.2%)75
(63.0%)1
(0.8%)
合計 380 -59
(14.7%)105
(26.1%)237
(59.0%)1
(0.2%)
特別規則の規制対象外の物質による労働災害が8割を占める現状
現在の対策
以前の対策 特別規則
SDS/ラベル リスクアセスメント
○健康障害を発生させた化学物質を後追い的に規制○ハザードベースの規制
○事業者が化学物質の危険性・有害性情報に基づいて自らリスクアセスメント を行い、その結果に基づき自律的に措置を実施
○重篤な健康障害のおそれのある物質については、国がリスク評価を行い、リスクが高い場合に規制
化学物質対策の方向性
41
製造・輸入業者による化学物質の危険性・有害性に関する情報の把握
把握した情報の関係事業者等への伝達(ラベル表示、SDS交付)
事業者によるリスクアセスメントの実施
結果を踏まえたリスク低減措置の実施(使用中止・代替化、局所排気装置等の設置、保護具の使用等)
昭和52年新規物質届出制度
昭和47年ラベル表示義務化
↓平成28年
義務対象拡大
平成11年SDS交付義務化
平成28年義務化
事業者が化学物質管理を自律的に行う仕組みの構築
平成26年の労働安全衛生法改正(平成28年施行)で、ラベル表示・SDS交付義務対象物質の統一化とリスクアセスメントの義務化が行われた
42
製造禁止
リスクアセスメント義務
(
リスクアセスメント
努力義務)
安全データシート
(SDS)
交付義務
(
SDS交付努力義務)
ベンジジン等 重度の健康障害あり(十分な防止対策なし)
健康障害多発(特にリスクの高い業務あり)
ベンゼン等
一定の危険・有害な物質
健康障害発生(使用量や使用法
によってリスクあり)
8物質
122物質
673物質
約7万物質
(
ラベル表示努力義務)
ラベル表示義務
追加等
新たに一定の危険・有害性の評価が確立した物質
【製造禁止】製造、輸入、譲渡、提供、使用を禁止
【特別規則】個別の規則(有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則など)で、製造・取扱いに際して、具体的な措置(排気装置の設置、マスクの使用、健康診断の実施など)を義務付け
【リスクアセスメント】製造・取扱いに際して、危険・有害性を調査・評価することを義務付け
【ラベル表示】譲渡・提供する場合に、容器にその物質の危険・有害性を絵表示することを義務付け
【SDS交付】譲渡・提供する場合に、その物質の危険・有害性、取扱い上の注意等を記載した文書を交付することを義務付け
特別規則発散抑制措置作業環境測定保護具、検診
など
労働安全衛生法に基づく規制(自主的取組)
43
労働安全衛生法に基づく規制(自主的取組)(表示等)
第57条 爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物若しくはベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は前条第1項の物を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあっては、その容器)に次に掲げるものを表示しなければならない。ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない。一 次に掲げる事項
イ 名称ロ 人体に及ぼす作用ハ 貯蔵又は取扱い上の注意ニ イからハまでに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
二 当該物を取り扱う労働者に注意を喚起するための標章で厚生労働大臣が定めるもの
(文書の交付等)
第57条の2 労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は第56条第1項の物(以下この条及び次条第1項において「通知対象物」という。)を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により通知対象物に関する次の事項(前条第2項に規定する者にあつては、同項に規定する事項を除く。)を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない。一 名称二 成分及びその含有量三 物理的及び化学的性質四 人体に及ぼす作用五 貯蔵又は取扱い上の注意六 流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置七 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項 44
労働安全衛生法に基づく規制(自主的取組)
(第五十七条第一項の政令で定める物及び通知対象物について事業者が行うべき調査等)
第57条の3 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第五十七条第一項の政令で定める物及び通知対象物による危険性又は有害性等を調査しなければならない。
2 事業者は、前項の調査の結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。
【ラベル表示義務対象物質】名称等を表示すべき危険物及び有害物(安衛法施行令第18条)
【SDS交付義務対象物質】名称等を通知すべき危険物及び有害物(安衛法施行令第18条の2)
【リスクアセスメント実施義務対象物質】(安衛法第57条の3)
=
=
令和元年6月現在673物質が義務対象
!GHSで何らかの危険性・有害性の区分がある全ての化学物質は、ラベル表示及びSDS交付を行うことが法令上の努力義務
45
化学物質の危険有害性の種類
物理化学的危険性
急性毒性皮膚腐食性・刺激性眼に対する重篤な損傷・眼刺激性呼吸器感作性・皮膚感作性生殖細胞変異原性発がん性生殖毒性特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)特定標的臓器・全身毒性 (反復ばく露)吸引性呼吸器有害性
GHS分類
GHS・・・化学品の分類および表示に関する世界調和システム(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)
可燃性・引火性ガス支燃性・酸化性ガス・・・・・・
環境に対する有害性
水生環境急性有害性・・・・・・
健康に対する有害性
46
労働安全衛生法上の義務対象物質でない物質を譲渡・提供している事業所のうち、当該製品の全てにGHS対応ラベルを表示し、又は安全データシート(SDS)を交付している事業所の割合は年々増加しているが、13次防の目標である80%にはまだ開きがある。
すべて交付している62.6%
譲渡・提供先から求めがあれば
交付している
22.7%
全く交付していない
2.4%
平成29年「労働安全衛生調査(実態調査)」
SDS交付状況別事業所割合
(平成29年)
一部交付している
12.3%
ラベル表示状況別事業所割合
(平成29年)
すべて表示している68.6%
全く表示していない
14.6%
一部表示している
5.7%
譲渡・提供先から求めがあれば表示している
11.1%
ラベル表示及びSDS交付状況
47
●●●
危険
○○○○○・・・△△△△・・・・
ラベルの表示
SDS(安全データシート)
安全データシート(SDS)●●●------------------------------------------
------------------------------------------
事業者間の取引時にSDSを提供し、化学物質の危険有害性や適切な取扱い方法などを伝達
1 化学品および会社情報2 危険有害性の要約(GHS分類)3 組成および成分情報4 応急措置5 火災時の措置6 漏出時の措置7 取扱いおよび保管上の注意8 ばく露防止および保護措置
9 物理的および化学的性質10 安定性および反応性11 有害性情報12 環境影響情報13 廃棄上の注意14 輸送上の注意15 適用法令16 その他の情報
(製品の特定名) △△△製品 ○○○○ (絵表示)(注意喚起語) 危険
(危険有害性情報)・引火性液体及び蒸気 ・吸入すると有毒 ・・・
(注意書き) ・火気厳禁 ・防毒マスクを使用する ・・・・・・
ラベル表示、SDS交付は「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)」(GHS)(国連勧告)に基づく分類、JISZ7252,7253及び事業者向けGHS分類ガイダンス等に依ります。
GHSに基づくラベル・SDS
48
可燃性/引火性ガス引火性液体可燃性固体自己反応性化学品
など
支燃性/酸化性ガス酸化性液体・固体
爆発物自己反応性化学品有機過酸化物
金属腐食性物質皮膚腐食性
眼に対する重大な損傷性
高圧ガス 急性毒性(区分1~3)
急性毒性 (区分4)皮膚刺激性(区分2)眼刺激性(区分2A)皮膚感作性特定標的臓器毒性
(区分3)など
水生環境有害性 呼吸器感作性生殖細胞変異原性発がん性生殖毒性特定標的臓器毒性(区分1,2)吸引性呼吸器有害性
【どくろ】
【円上の炎】 【爆弾の爆発】
【ガスボンベ】【腐食性】
【環境】 【健康有害性】
【炎】
【感嘆符】
<ラベルの絵表示と危険・有害性>
49
施行後は危険有害性を有しているSDS交付義務対象物質が、ラベル表示された化学品とし
て流通することになるので、このラベル表示を効果的に活用することで、ユーザー企業でのSDSの確認及び適切なリスクアセスメント実施を促進する。すなわち、化学品を受け取った事業者が、ラベルを見て有害性等に気づき、アクション(SDSの確認とリスクアセスメントの実
施)を取るよう、川上(製造者等)から川下(ユーザー)までの各者の役割に応じた支援や地域全体の取組を促進する対策をパッケージとして実施する。(「ラベルでアクション」プロジェクトの実施)
~事業場における化学物質管理の促進のために~
◆ラベル表示の範囲が、平成28年より640物質まで拡大され、ラベルのある化学品が多く流通。(現在(2018年7月1日以降)では673物質に拡大)
◆事業者、労働者は危険有害性を正しく認識し、リスク低減措置を確実に実行しましょう
◆労働者それぞれがラベルの内容をしっかり理解できるよう、事業者はラベル教育を行いましょう(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161231_00001.html)
◆化学品を出荷するメーカー、流通会社は、全ての製品にラベル表示するようにしましょう
SDSを確認SDSがなければ供給元に交付を求める
危険有害性に応じたリスクアセスメント
を行う
○○○○・・△△△△・・
事業者は
労働者は絵表示で
危険有害性を確認リスクアセスメントの結果をみて対策を行う
化学物質が来る ラベルを見る アクション!
事業者や労働者ラベルを見て
危険有害性に気づく
ラベルでアクション!
50
GHS対応モデルラベル・モデルSDS情報
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」には約3,000物質のモデルSDS情報が掲載されており、GHS区分情報、許容濃度、物理化学的性質などの情報が収集できる。
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/GHS_MSD_FND.aspx
51
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000445824.pdf52
53
⚫ 一定の危険性・有害性が確認されている化学物質による危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)の実施が事業者の義務
⚫ 事業者には、リスクアセスメントの結果に基づき、労働安全衛生法令の措置を講じる義務があるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するために必要な措置を講じることが努力義務
⚫ 上記の化学物質を製造し、又は取り扱う全ての事業者が対象
⚫ リスクアセスメント等の適切・有効な実施を図るため国が指針を示す(平成27年9月18日付け化学物質等による危険性又は有害性等の調査等
に関する指針)
⚫ 施行時期:平成28年6月1日
※対象物質は令和元年6月現在で673物質
リスクアセスメントの義務化の概要
54
<法律上の実施義務>1.対象物を原材料などとして新規に採用したり、変更したりするとき2.対象物を製造し、または取り扱う業務の作業の方法や作業手順を新規に採用したり変更したりするとき
3.前の2つに掲げるもののほか、対象物による危険性または有害性などについて変化が生じたり、生じるおそれがあったりするとき※新たな危険有害性の情報が、SDSなどにより提供された場合など
1.リスクアセスメントの実施時期
<指針による努力義務>1.労働災害発生時
※過去のリスクアセスメント(RA)に問題があるとき2.過去のRA実施以降、機械設備などの経年劣化、労働者の知識経験などリスクの状況に
変化があったとき3.過去にRAを実施したことがないとき
※施行日前から取り扱っている物質を、施行日前と同様の作業方法で取り扱う場合で、過去にRAを実施したことがない、または実施結果が確認できない場合
施行日(平成28年6月1日)以降、該当する場合に実施します。
55
リスクアセスメントとリスク低減措置を実施するための体制を整えます。安全衛生委員会などの活用などを通じ、労働者を参画させます。
2.リスクアセスメントの実施体制
担当者 説明 実施内容
総括安全衛生管理者など事業の実施を統括管理する人(事業場のトップ)
リスクアセスメントの実施を統括管理
安全管理者または衛生管理者作業主任者、職長、班長など
労働者を指導監督する地位にある人 リスクアセスメントの実施を管理
化学物質管理者化学物質などの適切な管理について必要な能力がある人の中から指名
リスクアセスメントの技術的業務を実施
専門的知識のある人必要に応じ、化学物質の危険性と有害性や、化学物質のための機械設備などについての専門的知識のある人
対象となる化学物質、機械設備のリスクアセスメントへの参画
外部の専門家
労働衛生コンサルタント、労働安全コンサルタント、作業環境測定士、インダストリアル・ハイジニストなど
より詳細なリスクアセスメント手法の導入など、技術的な助言を得るために活用が望ましい
※事業者は、上記のリスクアセスメントの実施に携わる人(外部の専門家を除く)に対し、必要な教育を実施するようにします。
56
57
特定された危険性または有害性によるリスクの見積り
リスクの見積りに基づくリスク低減措置の内容の検討
3.リスクアセスメントの流れ
リスクアセスメント結果の労働者への周知
リスクアセスメント
リスクアセスメントは以下のような手順で進めます。
リスク低減措置の実施
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
化学物質などによる危険性または有害性の特定ステップ1
特定された危険性又は有害性によって生ずるおそれのある労働者の危険又は健康障害の発生する発生可能性とその重篤度を組み合わせたもの
リスクとは・・・
以下の情報を入手し、危険性又は有害性を特定する。・SDS、仕様書、機械・設備の情報・作業標準書、作業手順書・作業環境測定結果・災害事例、災害統計 等
・発生するおそれのある危険又は健康障害の発生可能性と重篤度から見積る。
・化学物質等による疾病では、有害性の程度とばく露の程度を用いる。
リスク低減措置の優先順位
①危険有害性の高い化学物質等の代替や化学反応プロセス等の運転条件の変更等
②工学的対策(局所排気装置の設置等)③管理対策(作業手順の改善等)④有効な保護具の使用
57
●●●
危険
○○○○○・・・△△△△・・・・
ラベル SDS(安全データシート)安全データシート(SDS)●●●------------------------------------------
------------------------------------------
事業者間の取引時にSDSを提供し、化学物質の危険有害性や適切な取扱い方法などを伝達
ラベルによって、化学物質の危険有害性情報や適切な取扱い方法を伝達
(容器や包装にラベルの貼付や印刷)
化学物質などについて、リスクアセスメントなどの対象となる業務を洗い出した上で、 SDSに記載されているGHS分類などに即して危険性または有害性を特定します。
化学物質などによる危険性または有害性の特定ステップ1
<労働安全衛生法令で定められているラベル、SDSの記載項目>(赤字は通達)
○ラベル表示・名称(物質名又は製品名)・ 人体に及ぼす作用(GHS分類)・ 貯蔵又は取扱い上の注意・ 表示者の氏名・注意喚起語・安定性及び反応性・標章(絵表示)
※ 混合物の場合は、混合物としての危険有害性又は成分ごとの危険有害性情報を記載
○SDS通知・名称(物質名又は製品名)・・・ラベルと一致・成分及びその含有量(「10%~20%」表記も可)・物理的及び化学的性質・人体に及ぼす作用(GHS分類)・貯蔵又は取扱い上の注意・流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置
・通知者の氏名、危険性又は有害性の要約、安定性及び反応性、適用される法令、その他参考事項
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リスクアセスメントは、対象物を製造し、または取り扱う業務ごとに、次のア~ウのいずれかの方法またはこれらの方法の併用によって行う。(有害性はイを推奨、危険性はアとウに限る)
ア.対象物が労働者に危険を及ぼし、または健康障害を生ずるおそれの程度(発生可能性)と、危険または健康障害の程度(重篤度)を考慮する方法
マトリクス法発生可能性と重篤度を相対的に尺度化し、それらを縦軸と横軸とし、あらかじめ発生可能性と重篤度に応じてリスクが割り付けられた表を使用してリスクを見積もる方法
数値化法発生可能性と重篤度を一定の尺度によりそれぞれ数値化し、それらを加算または乗算などしてリスクを見積もる方法
枝分かれ図を用いた方法 発生可能性と重篤度を段階的に分岐していくことによりリスクを見積もる方法
コントロール・バンディング 化学物質リスク簡易評価法(コントロール・バンディング)などを用いてリスクを見積もる方法 → 有害性のみ
災害のシナリオから見積もる方法
化学プラントなどの化学反応のプロセスなどによる災害のシナリオを仮定して、その事象の発生可能性と重篤度を考慮する方法
リスクの見積りステップ2
イ.労働者が対象物にさらされる程度(ばく露濃度など)と対象物の有害性の程度を考慮する方法
安衛令別表1に定める危険物および同等のGHS分類による危険性のある物質について、安衛則第四章などの規定を確認する方法 など
ウ.その他、アまたはイに準じる方法
推奨
実測値による方法対象の業務について作業環境測定などによって測定した作業場所における 化学物質の気中濃度などを、その化学物質のばく露限界(日本産業衛生学会が示す許容濃度、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)が示すTLV-TWAなど)と比較する方法
使用量などから推定する方法
数理モデルを用いて対象の業務の作業を行う労働者の周辺の化学物質の気中濃度を推定し、その化学物質のばく露限界と比較する方法
あらかじめ尺度化した表を使用する方法
対象の化学物質への労働者のばく露の程度とこの化学物質による有害性を相対的に尺度化し、これらを縦軸と横軸とし、あらかじめばく露の程 度と有害性の程度に応じてリスクが割り付けられた表を使用してリスクを見積もる方法
59
気中濃度の測定方法
◆作業環境測定◆個人ばく露測定◆簡易な測定(検知管、パッシブサンプラーなど)
リスクは許容範囲を超えている
ばく露限界値
リスクは許容範囲内であるとみなす
許容濃度、TLV-TWA
実際に、化学物質などの気中濃度を測定し、ばく露限界値と比較する方法は、最も基本的な方法として推奨されます。
バッジ型パッシブサンプラー
検知管
実測値を用いる方法
ばく露量 (実測値)
作業環境測定
リスクの見積り
数理モデルを用いて推定する方法リスクの見積り
欧州化学物質生態毒性・毒性センター(ECETOC)が提供するリスクアセスメントツール(ECETOC- TRA)は定量的評価が可能なツールとして普及しています。
http://www.ecetoc.org/tra (英語) 化学物質の物理化学的性状、作業工程(プロセスカテゴリー)、作業時間、換気条件などを入力することによって、推定ばく露濃度が算出されます。
60
①SDSを用い、GHS分類などを参照して有害性のレベルを区分する。
有害性のレベル
GHS分類における健康有害性クラスと区分
A
・皮膚刺激性・眼刺激性・吸引性呼吸器有害性・その他のグループに分類
されない粉体、蒸気
区分2区分2区分1
B・急性毒性・特定標的臓器(単回ばく露)
区分4区分2
C
・急性毒性・皮膚腐食性・眼刺激性・皮膚感作性・特定標的臓器(単回ばく露)・特定標的臓器(反復ばく露)
区分3区分1区分1区分1区分1区分2
D
・急性毒性・発がん性・特定標的臓器(反復ばく露)・生殖毒性
区分1,2区分2区分1区分1,2
E・生殖細胞変異原性・発がん性・呼吸器感作性
区分1,2区分1区分1
②作業環境レベルと作業時間などから、ばく露レベルを推定する。(作業環境レベルは以下のような式で算出)
作業環境レベル =(取扱量)+(揮発性・飛散性)-(換気)
※これらの表はリスクの見積り方を例示するものであり、有害性のレベル分け、ばく露レベルの推定は仮のものです。
ばく露レベル作業環境レベル
5以上 4 3 2 1以下
年間作業時
間
400時間超過 Ⅴ Ⅴ Ⅳ Ⅳ Ⅲ
100~400時間 Ⅴ Ⅳ Ⅳ Ⅲ Ⅱ
25~100時間 Ⅳ Ⅳ Ⅲ Ⅲ Ⅱ
10~25時間 Ⅳ Ⅲ Ⅲ Ⅱ Ⅱ
10時間未満 Ⅲ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅰ
ばく露レベル
Ⅴ Ⅳ Ⅲ Ⅱ Ⅰ
有害性のレベル
E 5 5 4 4 3
D 5 4 4 3 2
C 4 4 3 3 2
B 4 3 3 2 2
A 3 2 2 2 1
取扱量
多量:3中量:2少量:1
揮発性・飛散性
高:3中:2低:1
換 気
遠隔操作・完全密閉:4局所排気:3全体換気・屋外作業:2換気なし:1
③有害性のレベルとばく露レベルからリスクを見積る。
化学物質などの有害性とばく露の量を相対的に尺度化しリスクを見積もる方法リスクの見積り
61
危険または健康障害の程度(重篤度)
死亡 後遺障害 休業 軽傷
危険または健康障害を生じるおそれの
程度
(発生可能性)
極めて高い 5 5 4 3
比較的高い 5 4 3 2
可能性あり 4 3 2 1
ほとんどない 4 3 1 1
リスク 優先度
4~5 高直ちにリスク低減措置を講じる必要がある。措置を講じるまで作業停止する必要がある。
2~3 中速やかにリスク低減措置を講じる必要がある。措置を講じるまで使用しないことが望ましい。
1 低 必要に応じてリスク低減措置を実施する。
※発生可能性「②比較的高い」、重篤度「②後遺障害」の場合の見積り例
マトリクスを用いた方法(危険性によるリスクの見積りなど)リスクの見積り
62
⚫ 危害の重篤度:化学物質固有の危険性(爆発性、引火性等)等
⚫ 危害発生の頻度:事故等が発生する頻度・可能性 等
⚫ 有害性の程度:GHS分類情報、ばく露限界値 等✓ GHS分類情報(皮膚腐食性/刺激性、発がん性、特定標的臓器など)
✓ 許容濃度(日本産業衛生学会)、TLV-TWA(ACGIH)など
⚫ ばく露の程度: 気中濃度 等✓ 化学物質を吸入したり、触れたりすることによる体内への取り込みの程度
✓ 実測または推定により得られた、化学物質の気中濃度
有害性の程度 ばく露の程度 リスクの程度を判断
危害の重篤度 危害発生の頻度 リスクの程度を判断
(留意点)リスクには危険性(爆発・火災等)及び有害性(健康影響)の両方があり、リスクアセスメントに当たっては両方を勘案する必要
63
◆労働安全衛生法に基づく労働安全衛生規則や特定化学物質障害予防規則などの特別規則に規定がある場合は、その措置をとる必要があります。
◆次に掲げる優先順位でリスク低減措置の内容を検討します。
リスクアセスメントの結果に基づき、労働者の危険または健康障害を防止するための措置の内容を検討してください。
※危険有害性の不明な物質に代替することは避けるようにしてください。
リスク低減措置の内容の検討ステップ3
法令に定められた事項の実施(ある場合)
危険性・有害性の高い化学物質の使用中止、有害性の低い化学物質への代替化
化学反応のプロセス等の運転条件の変更、化学物質等の形状の変更等
工学的対策・衛生工学的対策(工程の密閉化、局所排気装置の設置等)
管理的対策(マニュアルの整備、立入禁止措置、ばく露管理等)
個人用保護具の使用
2
3
4
1リスク低減措置の優先順位
低
高大前提
64
ばく露限界
物質ごとの「ばく露限界」が職場環境の管理目標
この濃度以下であれば労働者がばく露しても通常は健康に影響のない濃度
※科学的な知見
ばく露低減の目標
リスクは許容範囲を超えている
ばく露限界値
リスクは許容範囲内であるとみなす
許容濃度、TLV-TWAばく露量 (実測値)
<化学物質の許容濃度>許容濃度とは、労働者が1日8時間、週40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で有害物質にばく露される場合に、当該有害物質の平均ばく露濃度がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響がみられないと判断される濃度である。
短時間であれば、高濃度のばく露が許容されるとは限らないばく露時間が短い、あるいは労働強度が弱い場合でも、許容濃度を越えるばく露は避けるべきである。
ばく露濃度は、平均値の上下に変動するが、許容濃度は変動の幅があまり大きくない場合に利用されるべきものである。どの程度の幅の変動が許容されるかは物質によって異なる。特に注記のない限り、ばく露濃度が最大になると予想される時間を含む 15分間の平均ばく露濃度が、許容濃度の数値の1.5 倍を越えないことが望ましい。 65
化学物質のばく露経路とその防止措置
吸い込む(経気道(吸入)、経口)
【定常時】
皮膚に付着(経皮、皮膚障害)
眼に入る
食べる・飲む(経口(飲み込み))
作業場での飲食喫煙禁止容器等への表示
空気環境の改善呼吸用保護具
飛散防止保護眼鏡
接触防止保護衣や保護手袋
【緊急時・異常時】
設備破損や誤った動作による大量漏洩による急性中毒
設備の腐食防止設備の操作ミス防止
有害性の低い物質への代替
適切な作業方法
66
経気道(吸入)ばく露が生じるとき
ガス・・・常温で気体のもの
蒸気・・・常温で液体のものが気化(蒸発)したもの
物質は、固体、液体、気体のいずれかの状態で存在
揮発性(蒸発しやすさ)の高い物質ほど、高ばく露になりやすい液体の温度が上昇すると、濃度の最大値(飽和蒸気圧)は上昇する
粉じん・・・小さい固体
小さくて軽い粒子(質量あたりの表面積が大きく、密度が小さい)ほど、気中を舞って沈降しない粒径が小さいほど、体内の奥へ(鼻・のど → 気管 → 肺胞)
ガスは密閉設備内で通常扱われるが、サンプリングを行ったり、ガスを液体に溶かしていたりするとガスの発散あり
有害性が必ずしも高くなくとも、大量吸入すれば健康に影響が生じる可能性☑有害性が分かっていない「アクリル酸系水溶性ポリマー」による肺疾患の集団発生
☑「木材粉じん」は国際がん研究機関(IARC)はグループ1(人に対する発がん性あり)との評価 67
件数 割合
障害内容別の件数※複数の傷害が発生しているものがあるため、合計値は件数と合わない場合がある※( )内は障害内容別の件数を合計したものに対する割合
吸入による中毒等
眼障害 皮膚障害 誤飲による障害
特別規則対象物質 78 20.5%32
(37.6%)14
(16.5%)39
(45.9%)0
(0.0%)
特定化学物質 64 16.8% 25 10 36 0
有機溶剤 13 3.4% 6 4 3 0
鉛 1 0.3% 1 0 0 0
四アルキル鉛 0 0.0% 0 0 0 0
特別規則以外のSDS交付義務対象物質
93 24.5%6
(6.2%)31
(32.0%)60
(61.9%)0
(%)
SDS交付義務対象外物質 96 25.3%8
(7.9%)30
(29.7%)63
(62.4%)0
(%)
物質名が特定できていないもの 113 29.7%13
(10.9%)30
(25.2%)75
(63.0%)1
(0.8%)
合計 380 -59
(14.7%)105
(26.1%)237
(59.0%)1
(0.2%)
化学物質のばく露経路は皮膚接触が最多
胆管がんや膀胱がんの集団発生事案も、皮膚吸収による可能性
⇒代替化、工程の密閉化、適切な保護具(手袋等)の使用が重要
• 検討したリスク低減措置の内容を速やかに実施するよう努めます。• 死亡、後遺障害または重篤な疾病のおそれのあるリスクに対しては、暫定的措置を直
ちに実施してください。• リスク低減措置の実施後に、改めてリスクを見積もるとよいでしょう。
リスク低減措置の実施ステップ4
1 周知事項① 対象物の名称② 対象業務の内容③ リスクアセスメントの結果(特定した危険性または有害性、見積もったリスク)④ 実施するリスク低減措置の内容
2 周知の方法は以下のいずれかによります。 ※SDSを労働者に周知する方法と同様です。
①作業場に常時掲示、または備え付け②書面を労働者に交付③電子媒体で記録し、作業場に常時確認可能な機器(パソコン端末など)を設置
3 法第59条第1項に基づく雇入れ時の教育と同条第2項に基づく作業変更時の教育において、上記の周知事項を含めるものとします。
4 リスクアセスメントの対象の業務が継続し、上記の労働者への周知などを行っている間は、それらの周知事項を記録し、保存しておきましょう。
リスクアセスメントを実施したら、以下の事項を労働者に周知します。
リスクアセスメント結果の労働者への周知ステップ5
69
27.4%
20.4%
14.2%11.4%
63.3%
9.0%
54.6%
34.5%
18.1%19.6%
16.8%11.9%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
人材がいない 方法が分からない 災害起きていない 法令のみで十分 危険有害作業なし その他
全事業所
化学物質使用
(資料出所)平成29年労働安全衛生調査(実態調査)概況※ 実施率集計 「化学物質」のリスクアセスメント実施率は、「すべての化学物質について実施」、「一部実施」の合計※※ 理由集計 「全事業所」 :概況(全調査対象事業所の50.4%がいかなるリスクアセスメントも実施していない)
「化学物質使用」:特別集計(化学物質使用事業所(全調査対象事業所の 6.7%)の8.4%がいかなるリスクアセスメントも実施していない)
○ リスクアセスメントを実施していない理由は、「十分な知識を持った人材がいない」、「実施方法が判らない」が比較的多く、特に化学物質使用事業場においてはその傾向が顕著であり、支援の必要性が高い。全ての法定物質についてリスクアセスメントを実施している事業場の割合は約53%であり、実施の徹底が必要。
45.9
72.7 79.2
0
20
40
60
80
100
全般 化学物質
(法定外)
化学物質
(法定物質)
リスクアセスメント実施率(※)
(41.5) (52.8)
( カッコ内は、「すべて実施」の割合 )
リスクアセスメントを実施していない理由(複数回答)
70
譲渡提供者(製造者・輸入者等)
SDS
譲渡提供先(使用者等)
1. 相談窓口(コールセンター)を設置し、電話やメール等で相談を受付SDSやラベルの作成、リスクアセスメント(「化学物質リスク簡易評価法」の使い方等)について
2. 専門家によるリスクアセスメントの訪問支援相談窓口における相談の結果、事業場の要望に応じて専門家を派遣、リスクアセスメントの実施を支援
リスクアセスメントを実施
SDS・ラベルを作成
※ 化学物質リスクアセスメント簡易ツールの入力支援サービス⇒ コールセンターが事業者に代わり入力し、評価結果をメール等で通知
事業者コールセンター
使用物質、作業内容等
評価結果を通知(メール、FAX)
入力を支援
TEL:050-5577-4862 E-mail:[email protected]受付時間: 毎日10:00 ~ 17:00 ( 12:00 ~ 13:00 を除く)※土日曜日、祝日、国民の休日、12/29~1/3を除く。
リスクアセスメント実施に対する相談窓口、専門家による支援
71
●掲載先/■主体 概要(掲載情報)
●職場のあんぜんサイト( http://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07.htm)■厚生労働省
✓ 化学物質リスク簡易評価法(コントロール・バンディング)・液体等取扱作業(粉じん作業を除く)・鉱物性粉じん又は金属性粉じん発生作業
✓ 検知管を用いた化学物質のリスクアセスメントガイドブック
✓ 爆発・火災リスクアセスメントスクリーニング支援ツール
✓ 工業塗装、印刷、めっき作業のリスクアセスメントシート
✓ CREATE-SIMPLE(クリエイト・シンプル)(職場のあんぜんサイトからリンク)
●■独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
✓ プロセス災害防止のためのリスクアセスメント等実施シート厚生労働省のスクリーニング支援ツールよりも精緻なリスクアセスメントを実施することが可能(一定の専門知識を要する)。
(職場のあんぜんサイトからリンク)
●ECETOC-TRAサイト
■欧州化学物質生態毒性・毒性センター(ECETOC)
✓ ECETOCが開発したリスクアセスメントツール(ECETOC-TRA)。
EXCELファイル(英語版)をダウンロードして作業方法等を入力することで定量的な評価が可能。日本語マニュアルあり。((一社)日本化学工業協会が日本語版を提供(会員又は有料利用。)。)
(職場のあんぜんサイトからリンク)
●EMKG Software 2.2
■the Federal Institute for OccupationalSafety and Health(BAuA)
✓ 独安衛研(BAuA)が提供する定量的評価が可能なリスクアセスメントツール(英語版)
✓ EMKG-EXPO-TOOL(EMKG 2.2からばく露評価部分を抽出)
公開中の主な化学物質リスクアセスメント支援ツール等
72
製造禁止
リスクアセスメント義務
(
リスクアセスメント
努力義務)
安全データシート
(SDS)
交付義務
(
SDS交付努力義務)
ベンジジン等 重度の健康障害あり(十分な防止対策なし)
健康障害多発(特にリスクの高い業務あり)
ベンゼン等
一定の危険・有害な物質
健康障害発生(使用量や使用法
によってリスクあり)
8物質
122物質
673物質
約7万物質
(
ラベル表示努力義務)
ラベル表示義務
追加等
新たに一定の危険・有害性の評価が確立した物質
【製造禁止】製造、輸入、譲渡、提供、使用を禁止
【特別規則】個別の規則(有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則など)で、製造・取扱いに際して、具体的な措置(排気装置の設置、マスクの使用、健康診断の実施など)を義務付け
【リスクアセスメント】製造・取扱いに際して、危険・有害性を調査・評価することを義務付け
【ラベル表示】譲渡・提供する場合に、容器にその物質の危険・有害性を絵表示することを義務付け
【SDS交付】譲渡・提供する場合に、その物質の危険・有害性、取扱い上の注意等を記載した文書を交付することを義務付け
特別規則発散抑制措置作業環境測定保護具、検診
など
労働安全衛生法に基づく規制(一般規制)
衛生基準
有害要因除去ガス等の発散抑制粉じん飛散防止
立入禁止保護具備え付け
73
労働安全衛生規則(一般規制)(有害原因の除去)
第576条 事業者は、有害物を取り扱い、ガス、蒸気又は粉じんを発散し、有害な光線又は超音波にさらされ、騒音又は振動を発し、病原体によつて汚染される等有害な作業場においては、その原因を除去するため、代替物の使用、作業の方法又は機械等の改善等必要な措置を講じなければならない。
(ガス等の発散の抑制等)
第577条 事業者は、ガス、蒸気又は粉じんを発散する屋内作業場においては、当該屋内作業場における空気中のガス、蒸気又は粉じんの含有濃度が有害な程度にならないようにするため、発散源を密閉する設備、局所排気装置又は全体換気装置を設ける等必要な措置を講じなければならない。
(立入禁止等)
第585条 事業者は、次の場所には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなければならない。一~四(略)五 ガス、蒸気又は粉じんを発散する有害な場所六 有害物を取り扱う場所七(略)
(呼吸用保護具等)
第593条 事業者は、著しく暑熱又は寒冷な場所における業務、多量の高熱物体、低温物体又は有害物を取り扱う業務、有害な光線にさらされる業務、ガス、蒸気又は粉じんを発散する有害な場所における業務、病原体による汚染のおそれの著しい業務その他有害な業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、保護衣、保護眼鏡、呼吸用保護具等適切な保護具を備えなければならない。
(皮膚障害等防止用の保護具)
第593条 事業者は、皮膚に障害を与える物を取り扱う業務又は有害物が皮膚から吸収され、若しくは侵入して、健康障害若しくは感染をおこすおそれのある業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、塗布剤、不浸透性の保護衣、保護手袋又は履はき 物等適切な保護具を備えなければならない。 74
⇒自社で取り扱う全ての化学物質について、危険有害性・対策の再点検を
⇒特化則等の対象外でも、有害性のある物質は安衛則に基づく措置が義務であることを再確認し、SDS等を活用し、対策の徹底を
⇒危険有害性が不明な物質は安易に使用しない(用いる場合は危険有害性があることを前提とした対策を)
⇒使用する物質の危険有害性、リスクアセスメント結果、ばく露防止措置、保護具使用に関する労働者教育の徹底を
○特化則等の法令遵守の不徹底・MOCA(特化則の規制対象)を取り扱っていた複数の事業場(膀胱がんが集団発生)では、特化則に基づく対策の未実施、劣悪な作業環境の放置が認められた
○特化則等の対象外物質は措置不要との誤解・リスクアセスメントは実施したが、特化則等の対象外であったため措置を講じずに、露労働災害が発生した事例
○法令規制対象外の物質は安全との誤解・使用していた物質が法令規制対象になったため、規制対象外の物質(危険有害性が不明な
物質)に安易に変更し、後にがんが集団発生した事例
○作業を行う労働者の認識・知識不足・労働者が物質の危険有害性や適切な取扱方法を理解しないことによる労働災害が散見
事業場における化学物質管理の課題と注意点
75
1 趣旨・目的現在、国内で輸入、製造、使用されている化学物質は数万種類に上るが、その中には危険性
や有害性が不明な物質も少なくない。こうした中で、化学物質による労働災害(がんなどの遅発性疾病は除く。)は年間450件程度で推移し、法令による規制の対象となっていない物質による労働災害も頻発している状況にある。また、オルト-トルイジンによる膀胱がん事案、MOCAによる膀胱がん事案、有機粉じんによる肺疾患の発生など、化学物質等による重大な職業性疾病も後を絶たない状況にある。
一方、国際的には、化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)により、全ての危険・有害な化学物質について、ラベル表示やSDS交付を行うことが国際ルールとなっており、欧州ではREACH(Regis tration Evaluation Authorisation and Restriction of Chemicals)という仕組みにより、一定量以上の化学物質の輸入・製造については、全ての化学物質が届出対象となり、製造量、用途、有害性などのリスクに基づく管理が行われている。
こうしたことから、化学物質による労働災害を防ぐため、学識経験者、労使関係者による検討会を開催し、今後の職場における化学物質等の管理のあり方について検討することとする。
2 検討事項(1)国によるリスク評価のあり方に関すること(2)事業場における化学物質等による労働災害防止対策のあり方に関すること(3)ラベル表示・SDS交付等の危険有害性情報の伝達のあり方に関すること(4)化学物質等の管理に係る人材育成のあり方に関すること(5)その他職場における化学物質等の管理のあり方に関すること
職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会(2019年9月2日 第1回開催)
76
<参考資料>
石綿(アスベスト)対策
77
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
1600
1800
2000
8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
肺がん(労災認定)
中皮腫(労災認定)
肺がん+中皮腫(労災認定)
平成(年度)
石綿関連疾患の労災補償状況の推移
※ 当該年度における労災保険法に基づく保険給付の支給決定件数。決定件数は当該年度に請求されたものに限るものではない。※ 平成28年度は速報値
926
78
現在の石綿関連疾患の労災認定等件数は現在の死亡災害件数と同程度である。
建設業は石綿関連疾患の方が多い
建設業石綿
石綿関連疾患の労災補償状況の推移
79
死亡
者数
中皮腫による死亡者数(日本)
1555
500
中皮腫の8割程度は石綿に起因するといわれている
グラフ出所:人口動態統計による当該年における中皮腫による死亡者数(確定数)から作成(平成7年から統計開始)
80
耐用年数(年)
RC構造住宅 47
事務所等 50
S造住宅 34
事務所等 38
出典:社会資本整備審議会建築分科会アスベスト対策部会(第5回)
・対象建築物は0.1重量%以上のアスベストを含む可能性のある民間建築物
・建築物は、右表の耐用年数(「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(H20.4.30財務省令第32号)による)で解体されるものとした
民間建築物の解体棟数
石綿を使用した建築物の解体工事のピーク(推定2028年頃)に向
けて、解体工事での石綿対策が重要課題
81
石綿含有建材の使用状況
「目で見るアスベスト建材(第2版)」(国土交通省)より
過去に輸入した石綿の多くが建材として使用された建築物では、様々な建材に石綿が使用されている
※上図以外にも、建築物で使用されている石綿建材はある
82
・過去の石綿建材使用時の石綿ばく露により、毎年多くの労災認定・石綿使用建築物の解体棟数は2030年頃のピークに向けてさらに増加・今後の石綿使用建築物の解体工事で石綿ばく露防止対策の強化が必要
現状と課題
労働安全衛生法第6条に基づく「第13次労働災害防止計画」において
石綿対策の強化を盛り込んだ(平成30年2月厚生労働大臣決定)
労働者の石綿健康障害防止対策の課題
83
○解体・改修工事前の石綿有無の事前調査・分析(法令上の義務)が不十分
○全く対策を取らないままの違法解体が散見
○石綿作業主任者の未選任や健診の未実施が散見(いずれも法令上の義務)
○石綿の高濃度飛散や外部への漏洩事例
・石綿使用有無の調査が不十分で必要な措置をとらずに解体等が行われている事例多数
・石綿分析を行う者の中には、基礎知識の無い者や十分な能力のない者が見られる
・必要な措置を講じずに解体等が行われる事例が散見される※解体してしまえば石綿や措置の実施の有無を事後に確認することは困難
・年間解体件数20万件、解体業者4万社に対し、石綿健診実施事業場数は約750(受診者数は約1万人)
・解体業者の4割に石綿作業主任者が不在という調査結果あり
・吹付石綿除去作業等以外の石綿作業現場でも石綿が高濃度で発散した事例が見られる
・吹付石綿除去作業等の現場で隔離空間からの石綿漏洩事例が散見される
⇒石綿健康障害防止対策の徹底、強化に向けた検討が必要
労働者の石綿健康障害防止対策の課題
84
現行の規制の概要(石綿則) 現状・課題の概要 対策見直し(主な論点)
【作業開始前の措置】・目視、設計図書等による石綿使用有無の調査の義務
・石綿使用有無が不明の場合における分析による調査義務
・調査結果の記録・結果概要の掲示を義務付け
・作業計画の策定義務・以下の作業の事前届出義務①耐火建築物・準耐火建築物の吹付石綿除去作業(工事開始の14日前)【計画届】
②保温材・耐火被覆材・断熱材の除去作業等(工事開始前まで)【作業届】
【作業上の措置】・吹付石綿除去作業等は、隔離、負圧の維持、作業開始時の集じん・排気装置からの石綿漏洩有無の点検、作業開始時の負圧の点検等の義務
・作業場への立入禁止措置義務・石綿を湿潤化する義務・呼吸用保護具・保護衣の使用義務・使用した器具・工具等の付着物除去義務・石綿作業場であること、人体への作用、注意事項、使用すべき保護具の掲示義務
【管理対策】・石綿作業主任者の選任義務・労働者に対する特別教育実施義務・常時、石綿作業に従事する者に対する健康診断の実施義務
・常時、石綿作業に従事する者に対する作業記録の作成・保存義務
【作業上の措置】
(対策が不十分)○吹付石綿除去作業等以外の石綿作業現場でも石綿が高濃度で発散した事例が見られる<原因>破砕で生じた粉状の石綿の再飛散等
○吹付石綿除去作業等の現場で隔離空間からの石綿漏洩事例などが散見される
(全く対策を取らない)○必要な措置を講じずに解体等が行われる事例が散見される<原因>・解体してしまえば事後に石綿の有無や措
置の実施の有無を確認することは困難なため
・解体現場を網羅的に把握できず、指導すべき事業者を行政が特定することが困難
【作業開始前の措置】○石綿使用有無の調査が不十分で必要な措置をとらずに解体等が行われている事例多数(総務省勧告等)<原因>・建築物や石綿建材に関する知識不足
・法令上の調査として何をどこまで行う必要があるかが明確に示されていない
・調査結果が適切に共有されず
○石綿分析を行う者の中には、基礎知識の無い者や十分な能力のない者が見られる。
○調査者などが十分確保できておらず、今後のニーズ拡大への対応が必要
【管理対策】年間解体件数(80㎡以上)20万件、解体業者4万社、
○石綿作業主任者の選任、石綿健康診断の実施等の基本的な管理対策が必ずしも徹底されていない
【作業上の措置】○隔離解除の際に、一定の知見を有する者を活用して取り残しの有無の確認を求める必要はないか。
○仕上塗材について、除去作業における石綿飛散状況や対策を確認・検証し、必要な措置を講じることが必要ではないか
○吹付材についても、石綿含有とみなして隔離等の措置を講じることを可能としてはどうか。
○湿潤化の義務がある成形版等の除去作業は、破砕しないことを原則とし、飛散性が高いケイ酸カルシウム板Ⅰ種をやむを得ず破砕する場合は、養生も義務づけてはどうか
○湿潤化が著しく困難な場合は、効果を確認の上で、局所吸引等の措置を求めてはどうか
【作業開始前の措置】○調査の方法(範囲)を明確化してはどうか○事前調査及び分析を行う者について、それぞれ講習受講等の一定の要件を義務づけてはどうか
〇調査結果の記録項目を明確化し、調査結果の保存、現場への備付けを義務づけてはどうか
〇40年間保存義務がある個人の作業記録の項目に、事前調査結果の概要を追加してはどうか
○作業届を計画届に変更してはどうか。
【事業者に対する指導等】○作業計画に基づく作業状況・従事労働者を記録し、保存することを義務づけてはどうか
〇40年間保存義務がある個人の作業記録の項目に、上記作業状況の記録からまとめたばく露防止対策の概要を追加してはどうか
○石綿の有無に関わらず、一定以上の解体・改修工事は予め事前調査結果等の届出を義務づけてはどうか。その情報に基づいて店社または現場に対する指導を実施してはどうか。
○違反を繰り返す事業者等の公表を検討してはどうか
建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策等の見直し(主な論点)