Fe-C系溶融合金の密度と粘性ならびにその構造変化 …...1.まえがき ∫...

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Title Fe-C系溶融合金の密度と粘性ならびにその構造変化に関 する一考察(「液体金属の構造と物性」,物性研研究会報 告) Author(s) 森田, 善一郎; 足立, 彰 Citation 物性研究 (1970), 15(2): 64-72 Issue Date 1970-11-20 URL http://hdl.handle.net/2433/88184 Right Type Departmental Bulletin Paper Textversion publisher Kyoto University

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  • TitleFe-C系溶融合金の密度と粘性ならびにその構造変化に関する一考察(「液体金属の構造と物性」,物性研研究会報告)

    Author(s) 森田, 善一郎; 足立, 彰

    Citation 物性研究 (1970), 15(2): 64-72

    Issue Date 1970-11-20

    URL http://hdl.handle.net/2433/88184

    Right

    Type Departmental Bulletin Paper

    Textversion publisher

    Kyoto University

  • Fe一℃ 系溶融合金の密度 と粘性をらび匿

    その構造変化に蘭する一考察

    大坂大学工学部 森 田 善一郎

    足 立 彰

    1. まえが き∫

    著者 らはさきに製錬工学的立場か ら溶融鉄q)肇度 と粘度を高精度に測定し

    それ らの結果か ら溶融鉄におvlては約 1580-1840℃の温度でその構造が

    変化す ることを示唆 し,さらにそれに ともなって他の物理的や るV,は物蓬化

    学的諸量 も変化するであろ うことを推察 した ol)2)5) その後溶射鉄の酸素溶

    ノ、

    解度の温度依存性の検討結果 4)や東近 の溶融鉄q)蒸気圧測定結果 5)など著者Ih U

    らの指摘した溶融鉄の構造変化を うらずvJる事実 も得 られては V,るが,.なおI

    琴細 につvlてはさ らに検 討を加冬.る下 さで.あろう-a.ところで溶融鉄の構造変(I

    化Q)存在が事実であるとす ればその構造変化q)様相は当然他の共存元素の影

    響奪 うけるであろ うことが想像 され.る。著者 ら蜂 この問題点哲各種鉄合金の

    渚物性測定か ら解 明す ることを計画してV,るが,..まずその手Ird・じめとして,

    鉄鋼製錬工学上 もっとも重要であると考え られるFe-C 系を選び,その-,

    二の組成のもU)につV,て密度および粘性測定を行なっ牢結栄を報告する。

    2.従来の結果

    Fe-C 系溶融合金q)密度お よび粘性については従来かな り多 くの測定が夜

    されてい るが,6-20)そ申らの温度依存性 哲追求した もめはほとんど牽 く,多

    くはそれ らの組成依存性勘娼するものであるoしか もそれ ら甲測定露草は

    Fig.1 お よび 2VC示す ように,それらの値のみならず傾向までも測定者にi .・ -:よって輿忙し, このことは本合金系の測定が きわめて国難であるEl.とを如実

    に物治 ってレ\るO

    -64-

  • Fe-C系溶融合金

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  • 森臼善一郎 ・足立 彰

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    1,Arsent'evetal,ll)2.Vostryakovetal.12)5.Turovskiietal.15)4.Barfieldetal.14)5.Lucas.8)6.Rorrnnovetal.15)7.Krasheninnikovetal.16)8.WerlLi-shiheta117)?.Kawaietal.18)

    10.Vatolinetal.19)Maekawaeta1.2q)

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    Fig・2ViscpsityCoefficient of liquid Fe-Calloys.at

    1550℃

    5.実験結果 と考察

    著者 らは, Fe-C系合金の密度お よび粘度の組成依存性についての検討に

    先立ち,それ らの温度依存性VTL着 日して, アルキメデス法 1)ぉ よぴるつぼ回

    転疲動法 2)に より,-,二の組成の合金につ き測定を実施 した?.Fig・5 VC

    Fe-0.55wt.0/0C合金の密度測定結果を,また Fig.4Hに同一試料につい

    ての連続浮力測定結果 を示す。すなわち密度値は融点から約 1550℃の範

    蕗では温度 とともに きわめてゆるやかに戚少す るが,約 1550-1550℃の

    温度範囲で急激に低下し, 1550-1590℃では再び減少はゆるやかとな り,

    約 1600oC附近で急激VC増加することが観察され,俗融鉄の場合 よりも俊座

    な挙動 をす ることがわかるo ここで庄 昌すべ きことは, この密度の温度依存

    中一6もー

  • Fe-C系溶融合金

    性の複推孝る変化が連続浮力測定結果 ときわめてよ く対応していることであ

    り,連続浮力測定がか ゝる密度測定結果の検定に きわめで有効であることを

    示す ものであるO次に Fe-0.18wt・% C溶融合金の粘性測定結果 事)をFig.5

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    (euJ〇/a)ÅエISNヨG

    寸1-∩'て~~○ヽ

    .) 粘性係数導 出のための密度値 としては Lucas8)の ものを用いた。

    -6 7・-

  • 森田善一郎 ・足立 彰

    に示す.本合金試料の炭素含有量は密度測定試料 と異な っているに もか ゝわ

    らず,、この粘性測定療巣は密度測定結果 と定性的VC榛まった く対応 した変化

    を示 してい るOこの粘性係数の異常変化はか ゝるFe-C 系合金液体が

    Arrhenius塾の単純なものとしては説明で き孜いことを示しておゝ り,また

    密度 と粘性の温度依存性の傾向の一致は,密度 と粘性の一般的相関性か らそ

    れ ら測定値の信頼性の高いことを物語っているO

    ところでこれ ら密度お よび粘性の俊雄なる変化の過程VCついては,沢の よ

    うな考え方VCよりう ま く説明で きる。す なわち 1550-1550℃にかけての

    密度の低下ならびに 1550℃付近における粘睦の温度依存性の変化は,1580

    -1640℃でみ られる溶融政の構 造 変 化 1・2)t同様の変化が,炭素の存在に

    よって低温慶領域に魂のれたものと考えてよhoこのようVC炭素が溶銑の構

    造変化温度を大 きく低下させる原凶 としては,炭素に よる鉄の融点降下の影

    響ならびVC衆素が風体鉄の場合にみ られるように FCC 安定化元素である

    (BCC 安定化元素ではない) ことなどが考え られ,この考え方をさらに進

    めてい くと, Fe-C 系溶融合金では,溶融鉄の場合よりも低吟温度領域で

    ∂鉄の頑1'Ll構埠が くずれることが憩像され・この ことは本実験綜巣 ともうま・

    く対応している.次に1600oC付近における密度と糖性の増大については次の ように

    推察す ることができるo すなわち Fe-C溶融合金中の炭素の活量は 1%C以

    下ではRaoult別か ら負′偏移 をとろことが知 られてお り21,)したがちて本組

    成のような低炭素合金液体では異種原子間の結合すなわ ちFe-C原子の

    Clustering を考えることがで きるO この cluster を今 1600℃ 以 下

    の低温域で安定 と考え, 1600℃ で分解し始めると仮定すれば, この

    cluster の解離匿 より炭素イオンは鉄 イオン間に浸入型に溶解するととも

    に,その一部は遮換型に存在 している亜素イオン・)と卑応 してCOガスを生

    成 し, 酸素濃度 を減少させ,その結果密度お よび粘度が上昇 したのではない

    か と考え られるO以上太実験結果佐対しきわめて speculativeな考察を試

    書) 癖鉄中VCは酸素が必ず多少含まれて去、りL,ことに耐火物か らの酸素の供i

    給を無 視することはできない .

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    1550 TEMPERATURE(oC)1600

    1550 TEhQ,ERATURE(oC)1600 1650F主g、4 Changeofbuoyancyonheatingandcoolingofliquid Fe-05wt砿 alloy

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    Fig.5 Viscosity of liquid Fe-0.18%C

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  • Fe-C系溶融合金

    みたが, この種の考察はさ ら匹多 くの組成における一連の実験結果を得た上

    で夜されるべ きであろう。

    最後に測 定技術L.の問題点に頻れておこうOすなわ ちそれは Fe-C系溶融

    合金のこのような測定にかける変化の過程は必ずしも定常的ではない とい う

    ことで 挙る、。 とくにCOの生成反応に ともな う嘩素 と酸素の塵慶変化はこの

    楓の卿定では不可避であるとい って過言でな く,その意味では本密度お よび

    粘性測定結果 も,厳密には正確 さを欠 くものと言わざるを得ない。IFig.1

    おゝよぴ 2に示 したように, Felニ系の諸物性値が測定者に よって異な ってい

    る原因 もこの点に あるとい って よく, この妓術的問題点の解決が,今後この

    系の測定にお、ける大 きな課題の一つになるであろ うO

    4. むすび

    .FeTC系溶融合金の構造VC閲する知見を侍る目的で,その密度 と粘 性の温

    度依存性に着 目し, Fe-0.55wt0/OC,およびFe-0.18wt% C溶融合金に

    つ き,それぞれアノY,キメデス法お よびるつぼ回転逼勤法VCより密度および粘

    度を融点か ら約 1650℃の温度範囲において測定し,その結果について若干

    の考察替加えた 。また Fe-C系の測定においては,測定車VC二臣灯 るCO生成

    反応による炭素お よび酸素慮度の変化VC留意すべきであることを指摘 したO

    畢後に本密度お 羊び粘性測定には大学院学 生・垣内博之, 前花忠夫,横谷

    勝弘の諸氏が従事 されたことを付記し感謝の意を表するD

    文 献

    1) 森乱 荻 野,垣内,足立 :日本金属学会誌・ 5_4・(1970),Na2・

    p.248.

    2) 荻野・森 臥 前花,横谷,足 立 :鉄 と鋼, 5_i・(1970)・Na15

    (掲載予定 )

    5) 森田 :物性研究・ 1_5・(1970)・N85・p1581・4) 森田,足立 :発表予定

    5) 加藤 :私信

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  • 森田善一郎 ・足立 彰

    6) C.13enedicks.N.Ericson andG.Er-icson:Arch・

    Eisenh蒜ttenw .,i, (1950)p・475・

    7) E.Widawski and F.Sauerwald:ZーJAnorg.allgem・'chem・

    ユヱ之・(1950) p・145

    8) L.上).Lucas:lViem.S°i.Rev.Met∴61′■.(1964)、,p.97

    9) A.A.Vertman.A.Ivl.Samarin and E.S.Philippov.IDokl

    Akad.Nauk.SSSR,155,(1964),p.52:5

    10) 斎藤,佐久蘭 :日本金属学会 65回講演′観要, (1968),

    ll) P.P Arsent′ev.盟.G.Vinogradov and S.∫.Filippov :

    Izv.VUZ,Chern.iviet・,(1965),NB5.p.1′1・

    12) A.A.Vostryakov,N.A.Vatolin andO.A,Yesin:Fiz.iVletal

    Metailoved・ 16・(19占5)・NoL5・p・占75・

    15). B.M.Turovskii and A.P.Lyubimov: Izv.VUZ,Cher王1.Met..

    (1960),組2,p.15

    14) R.N.Barfield and J.A.Kitchener:J.Iron Steel lnst.,

    1皇且,(1955)・p・524

    15) A.A.記omanov and V.G.Kochegarov: Izv.Akad.Nauk.SSSR.

    Otd.,Met.iCorn.ll)el°.,(1965).No.5.p.89

    16) M.G.Krasheninnikov and S.∫.Filippov: Izv.VUZ,Chern

    Met..(1961),ぬ 9.p.21

    17) WenLil-shin and A.P.Lyubimov:Izv.VUZ.Chern.Met.,

    (19占1),No.7.p.5 )

    18) 川合,近 :招 和 42年度鉄鋼基礎共同研究会溶鋼溶淳部会第 2分科会

    提出簡料, (1967,12,15).

    19) N.A.Vatolin,A.A.Vostryakov and 0.A.Yesin:h z.Metal.

    A'letaHoved・'L5,(1965)・No・2・b・222

    20) 前川,中川,鈴木,百滴 :学振報告 19委 -82占9, (1966.)

    21) Hsyu Tszen-Tszi.A.U.Polyakolv・an-a A.IVl.Sa'harim:Ⅰzv.

    Akad.Nauk SSSR,(1961)p.112.

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