サンゴ礁造園モデル海域の海水流動特性 -その2.サンゴ礁 ......The model...

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海洋科学技術センター試験研究報告 JAMSTEC R 25 (1991 Mar.) サンゴ礁造園モデル海域の海水流動特性 -その2.サンゴ礁造園モデル海域内における計測調査 河野 健*1 工藤 君 明*1 沖縄本島南部のサンゴ礁造園モデル海域は知念半島の東に位置し,北部は中城湾, 東部南部には島嶼及びバリアリーフが存在する。 ここでは, サンゴの移植実験が行 われており,この海域の海水交換がどのように行われているのかを明らかにするこ とは,非常に重要である。 そこで,この海域内において,流れの様子を把握し,今後の計測方針を立てるた めの観測調査を行ったので報告する。 また,水路やりーフ上で流速を計測したデータおよびサンゴ礁造園モデル海域の 底質についても紹介する。 キーワード:サンゴ礁造園,海水交換,観測調査 The Characteristics of the Flow at the Model Area of the "Coral Reef Project" ― PART II.Observation in the Model Area Takeshi KAWANO*2 Kimiaki KUDO*2 The model area for the sea test of the "Coral Reef Project" is iocated at the south- ern Okinawa Island, east of Chinen Peninsula and faces Nakagusuku Bay on the north. The southern and eastern parts of this area are surrounded by a several reefs, We are making an experiment of coral transplantation and estimating the environments for corals, it is necessary to understand how the water exchanges there. We observed the outline of the flow1 pattern for future detailed investigations. In this paper, results of these observations are given and discussed. Meas- urements of flows in the pass between reefs and on the reef, and the characteristics of the sea bottom sediment are also described. Key Word : Coral Reef Project,water exchange, observation 49 *1 海洋開発研究部 *2 Marine Research and Technology Department

Transcript of サンゴ礁造園モデル海域の海水流動特性 -その2.サンゴ礁 ......The model...

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海洋科学技術センター試験研究報告 JAMSTEC R 25 (1991 Mar.)

サンゴ礁造園モデル海域の海水流動特性

-その2.サンゴ礁造園モデル海域内における計測調査

河野 健*1 工藤 君明*1

沖縄本島南部のサンゴ礁造園モデル海域は知念半島の東に位置し,北部は中城湾,

東部南部には島嶼及びバリアリーフが存在する。ここでは,サンゴの移植実験が行

われており,この海域の海水交換がどのように行われているのかを明らかにするこ

とは,非常に重要である。

そこで,この海域内において,流れの様子を把握し,今後の計測方針を立てるた

めの観測調査を行ったので報告する。

また,水路やりーフ上で流速を計測したデータおよびサンゴ礁造園モデル海域の

底質についても紹介する。

キーワード:サンゴ礁造園,海水交換,観測調査

The Characteristics of the Flow at the Model Area

of the "Coral Reef Project"

― PART II. Observation in the Model Area ―

Takeshi KAWANO*2 Kimiaki KUDO*2

The model area for the sea test of the "Coral Reef Project" is iocated at the south-

ern Okinawa Island, east of Chinen Peninsula and faces Nakagusuku Bay on the

north. The southern and eastern parts of this area are surrounded by a several

reefs, We are making an experiment of coral transplantation and estimating the

environments for corals, it is necessary to understand how the water exchanges

there.

We observed the outline of the flow1 pattern for future detailed investigations.

In this paper, results of these observations are given and discussed. Meas-

urements of flows in the pass between reefs and on the reef, and the characteristics

of the sea bottom sediment are also described.

Key Word : Coral Reef Project, water exchange, observation

49

*1  海洋開発研究部

*2  Marine Research and Technology Department

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1 はじめに

沖縄本島南部のサンゴ礁造園モデル海域は,知

念半島の東に位置し,北部は中城湾,東部は久高

島に接し,南部にはバリアリーフが発達している。

ここには,減少したサンゴ礁の回復を人為的に促

進する技術を研究開発するため,人エノルが設置

され,近隣のサンゴ礁から採捕されたサンゴ破片

の移植実験が行われている。1)2)3)この人エノルを

中心とする海域の海水交換がどのように行われて

いるかを明らかにすることは,移植したサンゴの

成長にとって非常に重要である。    。

そこで,サンゴ礁造園モデル海域内の流れの概

略を把握するとともに,今後の計測の方針を決定

することを目的とした流向・流速を主とした総合

的な観測を行った。

また,このサンゴ礁造園モデル海域では,北側

の中城湾からの海水の流出入のほかに,東側,南

側に存在するバリアリーフを越えての流出入およ

びバリアリーフ間,リーフと島嶼の間の水路から

の流出入が考えられ,この海域の海水交換の形態

の特徴となっている。

そこで,これらの水路,リーフ上,中城湾との

境界において流向・流速を計測し,その海水流動

特性を調査した。また,人エノルを中心とする海

域において底質の調査を行った。

2 モデル海域の海水流動特性調査

サンゴ礁造園モデル海域内において,海底地形

等から判断して人エノルヘの海水の流入出口とし

て特徴的と思われる点を人エノルを中心に6点配

置し,それぞれの測点において流向・流速を主と

する計測を行った。図1のB1~B6に測点を示

す。B1~B3は,いずれもいわゆる水路には該

当しないが,地形上,水路の延長とみなせるよう

な点である。特に,B2はコマカ島南側水路の延

長上に位置し,またB3はヒラビシ水路の延長上

に位置する。B4は久高口とよばれる水路で,B

5, B 6はサンゴ礁造園モデル海域と中城湾との

境界に配置されている。

1989年11 月3日より29 日までの期間,各測

点において計測機器を係留して計測を行った。係

留系を図2に示す。流向・流速の他に場所によっ

ては濁度,塩分濃度,水深も同時に計測した。本

計測の主目的は先に述べたようにサンゴ礁造園モ

図1 計測地点

50 JAMSTEC R 25 (1991)

Fig.l Measurement points

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stB1 stB2 stB3 st.B4 stB5 stB6

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図2 BI---B6における係留系

Fig.2 Description of the Mooring at B 1 ---B 6

回特

海洋将司R筏術センター

知念賞蛾*1:11

*

N..iIi

図3 気象観測点

Fig.3 Measurement points for Climate

デ、ル海域内の流れの概略の特徴を調査し, 今後の

計調IJの指針の決定に資することであるので,計測

期間をあまり長くとっておらず, この海域内にお

ける恒流等を算出するには至っていないが,いく

つかの重要なポイントが指摘できる。

2. 1 測定結果

2. 1. 1 背景(気象状況)

図3に示す那覇および、糸数の両測候所における

JAMSTEC R 25 (1991) 51

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海面気圧

(那覇)

湿

風 向

(天気図より)

図4 1989年10月'"'"12月の気象

Fig.4 Climate from October to December, 1989

1989年 9月から 12月の 3ヵ月間の気温,風速,

海面気圧,降水量の日平均のデータを図4に示す。

図 4の上部に各測点での計測期間が示 しである。

これによると, B1---B4の計測時には東風が吹

き,また, B5, B6点の計測時には北風が卓越

し,顕著な降雨が認められる。これは 11月後半

よりルソン島を横断した台風 30号の影響で,

この時期には海も比較的荒れていた。 これは,

知念実験本部で計測されたデータとも一致し

ている O 3〉

2, 1. 2 各測点、における流向・流速の

計測結果

各測点における流向 ・流速の計測結果を図 5---

図 10に示す。水深を同時に計測した場合には,

それも併せて記入しである。また,参考のため同

時期の那覇,糸数の風向の割合を示しているO

a) B 1点

B1点における流向 ・流速の計測結果を図5に

示す。スティックダイアグラム,流向頻度分布を

みると,流向はほぼ北東に向いている。これは風

向との関連性はなく ,波浪による とは考えにくし、o

b) B 2点

B2における流向 ・流速の計測結果を図6に示

す。表層近くの流向は風向と関係なく一様に北北

東ないし北北西である。また,満潮時に流速が大

きくなる傾向が認められる。これに対し,底層に

おいては, 流速は小さいものの流向は潮汐によっ

て変化している。即ち,干潮時に南南東流,満潮

時には北北東流が卓越するようであるO 特に干潮

時の南南東流は顕著で、流向頻度分布図をみると,

南南東流の方が卓越していると考えられるO なお,

水深が11月5日22時前後に約 0.5m深くなって

いるが, これは係留系を支える中立ブイが水圧で

なかば潰れたためである。

52 JAMST EC R 25 (1991)

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Wind Direction

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那覇

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Current Velocity Ccm/ s) 40 ,,", U J," VI' V ,. V A.Vv,l UJ Current Direction

N 35%

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11/4 S 40%

図5 B 1点における流向・流速と風向

Fig.5 Current velocity, Current direction, and Wind direction at B 1

Current Velocity (cm/ s) Upper Layer

一一一一一ーーー一一ーーーーーーーーー一ーーーーー一ーーーーーーーーーー一ー-ーー----ーー ---

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19.01

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11/5 11/6 11/7 11/8

Wind Direction )1'¥./

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那覇

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N 35%

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S 40cm/s N Upper Layer

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図6 B2点における流向・流速,水深,風向 S 40cm/s Lower Laver

Fig.6 Current velocity, Current direction, Water depth and Wind direction at B 2 -_

c) B 3点

B3点における流向・流速の計測結果を図7に

示す。表層近くの流速は著しく変化するものの,

JAMSTEC R 25 (1991)

強いて言えば東性であり,風向の影響がある可能

性もある。底層の流速はやはり小さいが,流向に

ついては潮位変化と関連があり, B 2点、とは逆に,

53

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Wind Direction

那覇

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11/11

S 40cm/s

Water depth and Wind direction at B 3

B3点、における流向・流速,水深,風向

Current velocity, Current direction,

図7

Fig.7

Wind Direction

那覇糸数

Current Velocity (cm/ s) Upper Layer

Lower

E W

11/11

-40

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25 (1991) R

S

Current direction and Wind direction at B 4

JAMSTEC

風向図8 B4点における流向・流速,

Fig.8 Current velocity,

54

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Current Vclocity (cm/s) U

那朝糸数.

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S 40cm/s

W

20.0

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17.0

Water depth and Wind direction

図9

Fig.9

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Wind Direction

那覇

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11/24 . 11/25 ・ 11/26 .. . 11/27. 11/28' 11/29

B5点における流向・流速,水深,風向

Current velocity, Current direction,

糸数

Current Velocity (c!D/s)

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11/29 11/28

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Water depth and Wind direction

図10 B 6点における流向・流速,水深,風向

Fig.10 Curren t veloci ty, Curren t direction,

干潮時には北北東流となっているO。B4点

B4点における流向・流速の計測結果を図8に

示す。ここでは潮位の測定は行われなかったが,

司期間に計測されたB3点における測定結果を参

環すると,表層,底層とも南向きの流れが卓越し,

これは潮位によらない。また,風向との関連性も

ない。この測点は久高島と平瀬の聞に位置し,中

城湾内の海水がこの時期にはもっぱら湾外へ流出

していることを示していると考えられる。

e) B 5点B5点における流向・流速の計測結果を図9に

示す。流向流速は表層というよりは中層に近い場

所で計測されたが,流速は小さく,流向は干潮時

55 25 (1991) R JAMSTEC

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図11 上層における流向

Fig.11 Current direction of Upper layer

図12 底層における流向

Fig.12 Current direction of Lower layer

に北北西ないし北西性を示し,満潮時には流れが

停止する傾向がみられるO 設置時より序々に水深

が増大しているが, これは,天候の悪化のため係

留系が深い方へ移動させられたためであると考え

られる。

f) B 6)点

56 JAMSTEC R 25 (1991)

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B6点における流向・流速の計測結果を図 10

に示す。表層近くの流速の変化は著しいが,北北

東性の傾向をみることができる。これは,風向と

の関連も考えられる。底層においては,流向流速

とも変化が微弱で傾向を求めることは難しいが?

あえて言えば南東性である。また,表層,底層と

も潮位との関連を考えることは難しいが,底層に

おいて,満潮時に南南東流が卓越するように見え

る。

2.2 モデル海域内の流向に関する考察

2. 2. 1 表層における流向

図 5---図 10に示された流向の頻度分布図をみ

ると, B 1点では北東性, B 2点では北北西から

北北東性, B 3点では強いて言うな らば東性, B

4点では南西性,B 5点では北西性, B 6点では

事.11

1;:11

水深111.11

(m) 15.自

35.事由

a.切水温(上層)

23.E焔

雪白.舗

北東性の流れが卓越しているという傾向がみられ

る。これを図示すると図 11のようになるO この

図をみると表層では海水はモデ、ル海域の南側から

知念半島に沿うような形で進入し,一つはコマカ

島北東方向から久高口へ向かつて流出する流れ,

もう一つはそのまま北東方向に進み中城湾の中心

部へと進む流れの二つに分岐するように思われる。

2. 2. 2 底膚における流向

2. 2. 1と同様に図5--図 10に示す流向の頻度分

布図をみると, B 1点では,水深が浅いので上層

と同じ方向と考えて北東性, B 2点ではどちらか

というと南東性, B 3点では弱い北西性, B 4点

では南東性, B 5点は不明であるが, B 6点は南

南東性である。

これを図示すると,図12のようになる。

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20 51.0 34.0........ 一一

図13 B 6点における水深,水温,塩分,濁度

Fig.13 Water depth, Water temperatun:~, Salinity and Turbidity at B 6

JAMSTEC R 25 (1991) 57

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10/8

pass. CP 1 )

コマカ島南側水路における流向 ・流速

Current velocity and Current direction at the KOMAKA-Is.

図14

Fig.14

Tide (cm) → 一 一、140

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Velocity (cm/s)

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10-1 10-1

流速スペクトル(コマカ島南側水路)

Current velocity spectra

CKOMAKA-Is.

10-' 。じ二

図15

Fig.15

pass)

25 (1991)

ヒラビシ水路 CP2)における流向

・流速と潮位(1990.3.15--3.22)

Current veloci ty and Tide level

CHIRABISHI pass. P 2 )

R

3/18

JAMSTEC

、3/17

Fig.16(a)

図16(a)

これを見ると,流れの様相は表層と著しく異なり,

北方向の中城湾中心部から流れが流入し,久高口

から流出するようにみえる。

図13にB6点における水深,上層の水温,底

層の水温,濁度を示す。これをみると,上層にお

58"

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合わせて, もしこれがB6測定時の降雨による影

響と考えるならば,中城湾中心部から淡水ととも

に懸濁物質がモデル海域に流入してきていると類

推される。

パて水温が 230Cと一定であるのに対し,底層で

ま水温に乱れがあり,特に 11月 26日に水温が

:50Cから 23.5

0Cまで低下するなど,明らかに上

書とは異なる水が南南東に向かつて進んできてい

ると考えられる。この時の塩分濃度の変化と考え

3 水路及びリーフ上における海水流動特性

サンゴ礁造園モデル海域における海水交換の形

態の特徴とも言えるリーフ聞や, リーフと島興関

の水路,及びリーフを介しての海水の流動特性に

ついて,何点かで計測を行っているので,その結

果を示す。

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A

• 、、

3/20 3/19 XI0' [(cm/s)z.S] 3.5, 一

ム自由降ー申悼ー町'-ーーー一司自 , . 四 .1 ・ '---

3/22 3/21 一-. 3/20

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・内

U-eA

10-3

図18 流速スペクトル (N成分)

Fig.18 Current velocity spectra

(N-Component) Velocity (cm/s)

40, Upper Layer

v十$ 0

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10・・10-6 10-6 10-7

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BEgs-ca

-

W

3/28 3/29 12 : 00

図19 久高口 (B4)における流向・流速

(1990. 3.28---3.29)

Fig.19 Current velocity at KUDAKA

-pass (B 4) (1990. 3.28---3.29)

ヒラビシ水路 (P2)における流向

・流速と潮位 (1990.3.15---3.22)

Curren t veloci ty and Tide level

(HIRABISHI pass. P 2 )

図16(b)

Fig.16(b)

図17

59 25 (1991) R AMSTEC

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3. 1 水路における海水流入出

3. 1. 1 コマカ島南側水路

1989年 10月7日'-'1989年 10月9日までの期

間, コマカ島南側の水路 (P1)で水深 4mの点

において計測した流向流速のスティックダイアグ

ラムを図 14上段に流向の頻度分布図を図 14下

段に示す。これから判断すると計測期間中は海底

の地形に沿った南向きの流れと北西向きの流れが

存在しているが,流速の大きさを比較すると南向

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N

2

pb

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60

き (リーフからの流出方向)が卓越している。図

15にスペク トル解析の結果を示す。解析の結

果,約 17時間および6時間の周期変動をもつこ

とがわかった。

3. 1. 2 ヒラビシ水路

1990年3月15日'-'3月 22日までの期間, ヒ

ラビシ水路の水面下約4mの点 CP2)において

行った計測結果を図 16'-'図 18示す。図 16には

ステックダイアグラム及び潮位をあわせて示すが,

この図から,流れの変化が必ずしも潮位と一致し

ないことがわかる。流向の頻度分布を図 17に示

す。これらから,水路の方向に沿った南北方向の

流れがあることがわかるが,この計測期間の聞は

北北東の方向(流入方向)に卓越していることが

わかる。スペクトル解析の結果, 1日周期の変化

が主であることがわかる。(図 18)

この地点は, 1989年 6月27日から 7月3日に

かけて流水面下約 13mの点で流速の計測がおこ

なわれたが,この時には南南東の方向の流れが卓

越しており,今回の計測とは逆向きである02) こ

れは,先にも述べたように,表層の流れと底層の

流れは様相が異なるので,係留した深度が異なる

ためと考えられる。

-50

E向bomponent(cm/ s)

3/26 3/23 3/24

図21(a) リーフ上 (R点〉の流向・流速

上段 :N成分

下段 :E成分(1990.3.23'-' 4.25)

Fig.21(a) Current velocity at the Reef (R)

N-component (above)

E-component (below)

(1990. 3.23--4.25)

JAMSTEC R 25 (1991)

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3/30 4/3 4/1 4/2

図21(b) リーフ上 (R点)の流向 ・流速

上段 :N成分

下段 :E成分 (1990.3.23---4.25)

Fig.21(b) Current velocity at the Reef (R)

N-component (above)

E-component (below)

(1990. 3.23---4.25)

図22 流向頻度分布(リーフ上)

Fig.22 Current direction frequency

(on the Reef)

3. 1. 3 久高口

久高口 CB4点)において 1989年 11月 10日

にかけて,海底上3.2mの点(海面下約5----6m

及び22---23 mに相当する)で計測された流速が

図8に示されているO 上段が表層近く,下段が底

層である。流向頻度分布図からもわかるように,

JAMSTEC R 25 (1991)

QU

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O'一一一一一ーし

10-1 10-6

1

10・5 10四‘ 10-3 . 10→

図23 流速スペクトル

上段 :N成分

下段 :E成分

Fig. 23 Current velocity spectra

N-component (above)

E-component (below)

e

< .

短いけれどもこの期間は表層, 底層とも南南西な

いし南東方向の流れが卓越しており,これは湾内

からもっぱら海水が流出していることを示してい

る。ほぼ同じ地点、において, 1990年3月 28日か

ら3月 29日にかけて,海底上2m及び20mの点

で計測された流速を図 19に,流向頻度図を図 20

に示す。特に表層については,計測期間が短かす

ぎ,はっきりしたことは判らないが,あえて言う

ならこの期間は表層,底層とも流れは南東ないし

東南東で,やはり海水が流出している方向であるO

以上の2回の計測から, 11月, 3月ともこの

久高口からは海水が流出する傾向がうかがえるO

3.2 リーフを介しての海水の流入出

図 1に示す測点Rの水深約 1mの海底に流速

計を固定し計測を行った。その結果を図 21---図

23に示す。 1990年 3月 23日か ら1990年 4月 25

日の約 1ヵ月間計測を行ったが,そのなかで代表

61

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的な期間を示す。図21は流速の南北成分と東西

成分を示したものであり,潮位を同時に示しであ

る。図 22は流向の頻度分布であるが,こ の地点で

はリーフに平行な方向(東西)方向が主な成分と

なっていることが分かる。図 21からは潮位との

関連をみるこ とは難しいが,図 23に示す流速の

末ペク トラムをみると,東西方向(下段〉には l

日周期,半日周期のと ころに強いピークがみられ,

潮汐との関連がうかがえるのしかし,南北方向

(上段〉の場合, ピークは東西方向のものに比べ

ると大きくなく ,より複雑と考えられる。図 21

(a)の前半部は海が比較的荒れた時のも のである

が, この時にはつねに北向きすなわち流入する方

向に流れている点が注目される。

4 底質について

図 1のB1""B6の6測点において底質を採取

し,その粒度組成を調べた結果を図24,図 25に

示す。図 24は1989年 11月に図 1の・印の点で

採取されたもので,図25は1990年 3月に図 1の

A印の点において採取されたものである。底質は,

沈澱法 (砂分についてはエメリー管法,泥分につ

いてはピペツ :ト法による)及び節分法によって調

査 した。図24,図25での沈澱法による結果には,

園、

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Mz: Q.77 Skt:・0.110 ・・0・泊 Ko: 096

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E J !otz: 1.17 'Sk,:・~.150,: 0.52 Ko: 0.13

、同

十・ / ーー

t.Iz: 0.ιZ ~, :-O~7 0,:057・Ko:i <ち

/ 同ト

日t.Iz: 1.10 Skt: 0.19 (7,: 0.60 Ko: 1.02

. 』占ヒ

ヶ:J22:?:者.

/ ートー

Mz: 5.25 Sk,:-0.43 0,: 0.35 1<..: 2.05

機分が加算されていない。一方,箭による分別は

砂サイズ未満では有効でなく,現時点では両者の

方法の優劣は決め難い。図 24・図 25の粒度積算

グラフに基づき, 粒度組成に関する 4つのパラメー

タをφスケールを用いて以下の式により計算した。

φ=一log2d ….. .・ H ・.. . . .・ H ・.. . . .・ H ・..…(1)

但し, d:直径 (mm)

とすると,中央粒径Mzは

φ 16+ ゆ50+φ84

z- 3

淘汰度を σ1とすると,

φ 84一φ 16 φ 95-φ 5

aI= 十

6.6

歪度を Sklとすると,

v

(φ84十ゆ 16-2φ50)

SK,= , 2 (O 84ーゆ 16)

(φ 95+ o 5 - 2φ50)

2 (ゆ95一φ5)

トJ

.

同・1

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. (2)

. (3)

. (4)

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o t :0.-61 K.: 0・s6

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I 11

1/ トート 同

トート・ ー

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t.IZ: 0.53 Sk,: 0.26 σ,: 0.84 .Ko: 0.91

. 11 .

11

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V -圃L圃-

t.Iz: 2.52 Sk,:・0.330,: 0.78 K.:, 1.02

図24 底質試料の沈殿法(上段)及び飾別法(下段)による粒度結果(1989.November)

Fig.24 Cumulative frequency curve of the sediment at Nakagusuku Bay

62 JAMSTEC R '25 (1991)

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F、i泡g.25 Cumulative frequency curve of the sediment at Nakagusuku Bay

March)

尖度を Kcとすると,

Kn = (ゆ 95ーゆ 5)

~ 2.44 (ゆ75-o 25) …(5)

これらを 4パラメータ相関図に記入したものが

図26である。図中, *で示した点が 1989年 11

月の測定における値で, 0で示された点が 1990

年3月における測定結果である。 B1"""'B6の肩

に, (ダッシュ)のついているものが節分法によ

る値でありそうでないものが沈澱法による値であ

る。同図には, Ujiie et a14) ,による中城湾全域

にわたる 71点の底質サンプルより得た値もフ。ロッ

トしであり, これらについてはA"""'Dの各タイプ

に分類しである。

Aタイプとは平均粒径が極細粒砂ないしシルト

の泥質のもので,歪度がマイナスすなわち細かい

泥分により富んだA1タイプと歪度がフ。ラス(粗

い成分が多い)A 2タイプに分けられる。また,

Bタイプとは平均粒径が中粒ないし細粒の砂で淘

汰度の低い(粒揃いの)もの, cタイプとは同じ

く平均粒径が中粒ないし細粒の砂で淘汰度の高い

(粒が不揃いの)もの, Dタイプは平均粒径が組

粒以上で淘汰度の比較的低いものである。 5)

同一サンプルでも沈澱法による値と節分法によ

JAMSTEC 'H .25 "(1991)

る値との聞には,かなりの差がしばしば認められ

るが,節分法による値には著しいばらつきがある

ので, ここでは沈澱法による値をもとに議論する。

B3点の底質がBタイプすなわち淘汰のよい(粒

揃いの)中粒砂に属する点を除くと他は全て粗粒

砂の中央粒径をもっ。また, Ujiie et a14), の分

類によると粗粒砂の中央粒径に相当するのはDタ

イプだが, これらDタイプの歪度はプラスすなわ

ち粗い方に粒度分布が偏るのに対し,本計測では

歪度がマイナスを示している点が注目される。

次にこれら 5タイプの地理的分布図に以上の観

測点を記入したものが図27である。

B 1点, B 2点, B 3点, B 5点はDタイプの

領域とよく 一致しているO またDタイプの底質は

近辺のサンゴ礁に棲息する生物の遺骸片によって

構成されていると考えられており,観測点がリー

フ周辺に位置することからも, これらの測点にお

ける底質はDタイプに属すると考えられる。 しか

し,歪度に関しては, これまでのDタイプの一般

的性質とは逆にマイナスとなっている。これが,

1980年の Ujiieet a14) ,による測定後の 10年間

の海況の変化に起因すると考えると,より細粒の

物質(特に泥サイズ)が漸増してきていることを

示唆することとなる。

63

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2 3 Mz

4 5 戸

図26 中央粒径ゆに対する淘汰度(σ l),歪度 (SKl),尖度 (Ka)

Fig.26σ 1, SKl, Ka VS.φ

5 結論

本計測調査によって次のようなことが明らかと

なった。

①表層の流れは,サンゴ礁造園モデル海域の南

側から流入し,久高口及び

の方向へと流出している。しかし,底層の流れ

はこれと異なり,中城湾中心部から流入し,久

高口から流出している。

②サンゴの生育にとって重要な役割を果たす要

素の一つである懸濁物の挙動は, 乙の底層の流

64 JAMSTEC R 25 (1991)

Page 17: サンゴ礁造園モデル海域の海水流動特性 -その2.サンゴ礁 ......The model area for the sea test of the "Coral Reef Project" is iocated at the south ern Okinawa

5加n

*11月観測点

大 3月削U点

国AI

国A2

日B

回c

図D

。。的

図27 推積分の分布図

Fig.27 Distribution of 5 type sediments

れによ って大きな影響を受ける。特に底層に恒

常流が存在する場合,懸濁物の挙動や底質の移

動, 特性化は, この恒常流によって一義的に決

まるといっても過言ではない。従って,今後は

この恒常流の有無を確かめ, もし,存在するな

らこれを算山するために特に底層における流れ

についてさらに長期にわたる計測を行い調査す

る必要がある。

③このためには,今回の計測の結果,明らかと

なった底層流の流入口と考えられるB6点及び

湾外への排出口と考えられるB4点,さらにそ

の中間的な役割を果たすと考えられるB2点,

B3点において比較的長期にわたる流向流速等

の計測を行う必要がある。

④このサンゴ礁造園モデル海域の特徴で、ある南

側に発達したバリアリーフを介する海水の流入

出や, リーフ問, リーフと島しょの聞の水路に

おける流入出を明らかにするために, これらの

点におけるデータをさらに蓄積する必要があるO

⑤底質について,サンゴ礁造園モデル海域の底

質は,粒度分布が細かい方に偏っていて (歪度

がマイナスで)粗粒砂の中央粒径をもつことが

わかった。 1980年に行われた UjiieetaP) , に

よる底質調査からは, この海域はDタイプすな

わち組粒砂の中央粒径をもち, 歪度がプラス

(粒が粗い方に偏っている〉の底質であること

が予想されたが,中央粒径については一致した

ものの,歪度については一致しなかった。これ

は, Ujiie et a14),による調査後 10年間に海

況の変化等に起因すると考えると, この

10年の聞に泥のような細かい底質が除々に増

加してきていることを示す。

6 謝辞

本研究を行うに当り,サンゴ礁造園モデル海域

の海水流動特性調査を指導していただいた琉球大

学理学部海洋学科氏家宏教授,山本聡助教授,

小賀百樹助教授,小野朋典技官並びに計測に協力

していただいた氏家研究室の皆さんに感謝の意を

JAMSTEC R 25 (1991) 65

Page 18: サンゴ礁造園モデル海域の海水流動特性 -その2.サンゴ礁 ......The model area for the sea test of the "Coral Reef Project" is iocated at the south ern Okinawa

表します。

参考文献

1)工藤君明,本多牧夫 :沖縄本島周辺のサンゴ

礁の現状調査, JAMSTEC"R21 (1989) pp.

121 ,....,' pp.142

2)工藤君明"大西 毅,本多牧夫:サンゴ移植・

観測システムについて JAMSTEC R23 (1990)

pp.345 ,...., pp.369

3)本多牧夫:移植サンゴの生育と環境条件の関

係について, J AMSTEC R25 (now appear)

4) H. Ujiie, M. Ya:rhamoto, M. Okitsu, and

K. Nagao : Sedimentological aspect of Naka-

gusuku Bay, Okinawa, Subtropical Japan,

Galaxea, 2, (1983) pp.95"""pp.117

5)氏家宏:琉球弧の海底一底質と地質-,新

星図書出版側, (1986)

(原稿受理:1990年11月6日)

66 JAMSTEC R 25 (1991)