極性反転パルス放電 オゾン生成や絶縁診断への応用 · 極性反転繰り返しパルス発生回路の場合 往復する進行波が繰り返し極性反転するため,
底質の固化・被覆 (反転・集積反転工法)による ため池放射性...
Transcript of 底質の固化・被覆 (反転・集積反転工法)による ため池放射性...
技 術 紹 介
技 術 紹 介
1
取組の背景
東日本大震災に起因して発生した原子力発電所
の事故により、ため池等の農業水利施設には、放
射性物質が蓄積しており、営農や施設管理等に悪
影響を及ぼさないための対策が必要となっている。
東北農政局と福島県は平成二十四年度から「ため
池等汚染拡散防止対策実証事業」により、ため池
等農業水利施設における放射性物質の実態とそれ
による影響の把握、及び影響を軽減するための対
策技術の実証に取り組んでいる。
本報では、その一環として、福島県南相馬市の
ため池で行った実証工事の概要と得られた結果に
ついて紹介する。
2
対策技術の概要
ため池の放射性物質対策は、要因や程度に応じ
て、吸着除去、底質の原位置固定、底質被覆、底
質除去等多岐にわたる。
本ため池では底質の巻き上がり抑制を目的とし
た対策を行った。巻き上がり抑制対策としては、
底質除去、底質の原位置固定、底質被覆があるが、
対象面積が二〇、〇〇〇㎡を超える、本ため池に
おいては、原位置固定のための工法として、固化、
被覆を合わせた底質固化反転工法を採用した。
なお、本工法は『ため池等汚染拡散防止対策技
術検討委員会』により検討した対策工法である。
今回の実証工事では事前の調査により、対策工
法を以下の二工法に分けて行った。
固化反転工法(図1)
放射性Cs(セシウム)汚
染の深さが一〇㎝を超える範囲は、①上層(三〇
㎝)を剥ぎ取り、セメント系固化材で改良、②覆
土材として下層(二〇㎝)を剥ぎ取り、中性固化
材で改良、③上層を先に埋戻し、④下層を埋戻し
(覆土)反転させる。
集積反転工法(図2)
放射性Cs汚染の深さが
一〇㎝以下の範囲は、⑤表層(五〜一五㎝)を剥
ぎ取り、セメント系固化材で改良、⑥集積場に埋
めて覆土材(中性固化材で改良)にて覆土する。
3
実証工事の概要
3・1 工事範囲
事前調査結果により図3に示す通り各工法の施
底質の固化・被覆(反転・集積反転工法)によるため池放射性物質の汚染拡散防止
青木あすなろ建設株式会社東京土木本店 課長 杉山 浩司
上層 30cm
下層 20cm
上層 30cm
①上層 30cm を剥ぎ取りセメント系固化材で改良する。
②下層 20cm を剥ぎ取り中性固化材で改良する。
③改良した上層土を先に埋戻す。(反転)
④改良した下層土を埋戻す。(覆土)
下層 20cm
上層 30cm
図 1 固化反転工法
⑤表層 5~15cm を剥ぎ取りセメント系固化材で改良する。
⑥改良土を集積場に埋戻し覆土する。
表層 5~15cm表層改良土
覆土 20cm
図 2 集積反転工法
76 土地改良 292号 2016.1●
工範囲(面積)を決定した。
3・2 固化材の種類及び添加量
固化材の種類は放射性Cs(セシウム)を含む上
層土及び表層土は改良効果が高く経済的なセメン
ト系固化材、下層土は覆土材として転用し、工事
完了後はため池の底質となるため、水質に影響が
出にくい中性固化材を使用した。
添加量は改良後のバックホウによる池敷き内作
業を想定して、トラフィカビリティ確保に必要な
強度八八kN/㎡により以下の通りとした。
①セメント系固化材(高有機質土用)一二〇㎏/㎥
②中性固化材二一〇㎏/㎥。
3・3 使用機械
本工事に使用した主要機械を表1に示す。
施工時期が冬期で、改良後の強度発現が遅くト
ラフカビリティの早期確保が困難で工期上の制約
もあり、池敷き内作業はすべて泥上掘削機(写真
1)にて行った。
3・4 仮設備計画(図3)
①
改良作業ヤード
上流の畑を借地し、掘削土を
運搬・仮置きし改良を行うヤードを設置した。
②
仮排水路工
上流部からの流入水は仮排水路管
径三〇〇㎜×二条により、下流側の池外へ排水
した。
③
濁水処理設備
池敷き内の作業で発生する濁水
は下流側堤体部に設置した濁水処理設備三〇
㎥/hにより処理した。
④
中央仮設道路
池敷き内の中央部に敷鉄板を敷
設し幅員六・〇mの施工時の進入路を設置した。
4
実証工事の結果
①作業単位毎の空間線量率変化
実証工事による周辺への線量の影響を事前に把
握するため、実施工前に固化反転工法試験施工を
行い各作業時の空間線量率を確認した。
結果を図4に示す。
上層剥ぎ取り、下層剥ぎ取りにより線量率は低
下する。反転により上層改良土を埋戻すと線量は
上昇するが改良による低減効果が確認できる。最
後に下層改良土を埋戻し覆土することで線量はさ
らに低減する。
②各対策工法の空間線量率変化
対策工法の効
果を把握するた
めに、工事期間
中施工範囲の測
点ごとに空間線
量率を測定した。
図5に固化反転
工法の空間線量
率測定結果を示
す。
施工開始前の
空間線量率は
〇・六〜一・〇μ
Sv/hであった
が、は剥ぎ取り、
集積反転工法(A=14,014m2)
固化反転工法(A=6,801m2)
①改良作業
ヤード
②仮排水路工
③濁水処理設備
④中央仮設道路
図 3 施工範囲・仮設計画図
写真 1 泥上掘削機(MA200)
表 1 主要機械
機械名 能力、規格 使用工種集積・反転
湿地ブルドーザ D21P 4t級 敷均・締固め
不整地運搬車 EG110R 11t 運搬
泥上掘削機 MA200 0.7m3 掘削・積込・敷均・整地土質改良
バックホウ SH200-5 0.7m3 積込・投入
自走式土質改良機 SR-P1800 120t/h 土質改良
濁水処理設備 30m3/h 濁水処理
図 4 各作業時の空間線量率測定結果
77土地改良 292号 2016.1 ●
技 術 紹 介
埋戻しを順次行うことにより、空間線量率は徐々
に低減し、施工完了時には〇・四μSv/hまで低
減している。
測定結果より、汚染土を固化・反転して覆土す
る固化反転工法は、線量率を三〇%〜六〇%低減
でき対策工法として有効である。
また、ため池の底質は覆土材により固化され、
汚染土の流失も防止できる。
図6に集積反転工法における表層剥ぎ取り箇所
の空間線量率測定結果を示す。
施工開始前の空間線量率は〇・五〜一・二μSv/
hであったが、各測点位置の表層剥ぎ取り直後に
線量率が〇・三μSv/h
まで低減した。
5
その他技術
①地形測量
放射性物質対策では、
確実に汚染土を処理する
ことが必要とされる。剥
ぎ取りは通常、点で施工
管理を行うが、点管理で
は汚染土の取り残しが懸
念される。今回は事前、
事後の地形測量に、三次
元レーザースキャナー測
量を採用し面的に剥ぎ取
り厚を管理することで取
り残し防止対策を行った。
②土質改良
改良は当初バックホウ
原位置撹拌を計画してい
たが、池敷き内の汚染土
は含水比が高く原位置で
の適正な固化材の添加管
理が困難であった。
また、改良土量
や固化材の添加量
が多く、試験施工
時のバックホウに
よる混合では均一
な改良体の造成が
難しく、施工能力
もQ=八㎥/hで
あり、本施工では
工期を優先して、
Q=四〇㎥/hの
自走式土質改良機
(写真2)を導入
した。これにより
工期内に均一な改良体が造成できた。
6
まとめ
東北農政局と福島県は県内の全ため池の約八割
にあたる二、九五六箇所の農業用ため池の水質及
び底質の放射性物質について調査結果を発表した。
本年度から各市町村による本格的な調査が実施
され、放射性物質対策箇所及び対策工法が選定さ
れる。
今回工事では固化反転・集積反転工法の効果を
実証することができた。本工事の結果が、今後の
ため池放射性物質対策への一助となれば幸いです。
0.20
0.30
0.40
0.50
0.60
0.70
0.80
0.90
1.00
1.10
1.20
1.30
01/0
5
01/0
7
01/0
9
01/1
1
01/1
3
01/1
5
01/1
7
01/1
9
01/2
1
01/2
3
01/2
5
01/2
7
01/2
9
01/3
1
02/0
2
02/0
4
02/0
6
02/0
8
02/1
0
02/1
2
02/1
4
02/1
6
02/1
8
02/2
0
02/2
2
02/2
4
02/2
6
02/2
8
03/0
2
03/0
4
03/0
6
03/0
8
03/1
0
03/1
2
03/1
4
03/1
6
03/1
8
03/2
0
μSv
S2S5S7S9S11S13
図 5 固化反転工法の空間線量率測定結果
0.20
0.30
0.40
0.50
0.60
0.70
0.80
0.90
1.00
1.10
1.20
1.30
01/0
501
/07
01/0
901
/11
01/1
301
/15
01/1
701
/19
01/2
101
/23
01/2
501
/27
01/2
901
/31
02/0
202
/04
02/0
602
/08
02/1
002
/12
02/1
402
/16
02/1
802
/20
02/2
202
/24
02/2
602
/28
03/0
203
/04
03/0
603
/08
03/1
003
/12
03/1
403
/16
03/1
803
/20
03/2
203
/24
03/2
6
μSv
S15S17S19S21S23S25
図 6 集積反転工法の表層剥ぎ取り箇所の空間線量率測定結果
写真 2 自走式土質改良機 SR-P1800
78 土地改良 292号 2016.1●