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桐蔭学園公開授業 2016 11 12 () 2 校時 数学(袴田) 事前資料 「反転授業への試み」 10 月より,Classi(ベネッセコーポレーション・ソフトバンク)を利用し,反転授業に取り組んでおり ます。教科書での教授部分は,事前に自宅で映像教材(Classi)をみさせております。 本時は,数学Ⅲ 微分法の応用「平均値の定理の利用」を扱います。平時の授業の流れの 1 時間ですので, 前時の理解度により,演習内容が変更になる場合がありますことを,予めご了承願います。 前時「平均値の定理」 平均値の定理 関数 が閉区間 で連続で, 開区間 で微分可能ならば, を満たす実数 が存在する。 事前学習(映像教材) のとき,不等式 を証明せよ。 事前学習の映像教材は,以下の URL からご覧になれます。(授業内では放映いたしません) 11 14 日(月)まで視聴できます) 平均値の定理(教科書教授内容) http://vdg.jp/L9F4t_uqSGhL/ 平均値の定理の利用(演習問題) http://vdg.jp/Zs9FhxTLfDAT/ 事前学習確認問題 において,次の不等式を証明せよ. 展開 平均値の定理を用いて,次のことを証明せよ。 のとき 演習(予備問題) 平均値の定理を用いて,次のことを証明せよ。 のとき

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桐蔭学園公開授業 2016年 11月 12日(土) 2校時 数学(袴田) 事前資料

「反転授業への試み」

10 月より,Classi(ベネッセコーポレーション・ソフトバンク)を利用し,反転授業に取り組んでおり

ます。教科書での教授部分は,事前に自宅で映像教材(Classi)をみさせております。

本時は,数学Ⅲ 微分法の応用「平均値の定理の利用」を扱います。平時の授業の流れの 1時間ですので,

前時の理解度により,演習内容が変更になる場合がありますことを,予めご了承願います。

前時「平均値の定理」

 平均値の定理

 関数 が閉区間 , で連続で,

 開区間 , で微分可能ならば,

    

    

 を満たす実数が存在する。

事前学習(映像教材)

のとき,不等式

を証明せよ。

事前学習の映像教材は,以下の URLからご覧になれます。(授業内では放映いたしません)

(11月 14日(月)まで視聴できます)

① 平均値の定理(教科書教授内容) http://vdg.jp/L9F4t_uqSGhL/

② 平均値の定理の利用(演習問題) http://vdg.jp/Zs9FhxTLfDAT/

事前学習確認問題

において,次の不等式を証明せよ.

           

展開

平均値の定理を用いて,次のことを証明せよ。

    

のとき  

演習(予備問題)

平均値の定理を用いて,次のことを証明せよ。

    のとき 

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公開授業 学習デザインシート 2016年 11月 12日(2校時) 教室:409

1.授業担当者(教科): 氏名 袴田 英康 (数学)

2.対象クラス: 高校2年(男子部)・理数科 内理αR 数学P

3.単元名・教材

数研出版 数学Ⅲ 第6章 微分法の応用「平均値の定理の応用」

4.単元観・教材観

(1)教材観

微積分は、中高数学の中で最大の目的であると言っても過言でないくらいに重要な単元である。本単元の

微分法では、自然界や社会の様々な変化を分析し、現在の状況・将来の予測を可能とする。高校においては、

曲線における接線の傾きや曲線の凹凸を調べ、分析する基礎手法を学ぶ。数学Ⅱの微分法で基礎となる概念

や計算を学ぶが、単純計算という意識でしかない生徒が多い。そこで、第 5 章の初等関数の微分計算を学ぶ

際、平均変化率の極限や導関数の定義から、その概念を理解することを大事にしたい。更に、弧度法やネイ

ピア数が、解析学に必須のものであることも意識づけ、その上で、様々な形の関数を微分できる技術を習得

できるようにしたい。第 6 章の微分法の応用では、第 5 章で習得した概念と技術を活用し、曲線を更に細か

く分析することを目標とする。局所的な部分の解明に微分法を用い関数の増減や凹凸の他、全体像をイメー

ジするために極限を利用するなど、既習事項を入れつつ定着を図る。

(2)生徒観

本学園中学から約 1/3 の生徒が理数科に進学し、その約半数が高校 2 年で理系を選択した。このクラスは、

習熟度別クラス編成 2 クラスの上位である。私は、中学 1 年から 4 年半、この生徒たちの学年に所属してい

る。このクラスには、中学時にも上位であった生徒が多く、学習意欲が高い。しかし、その学習への姿勢は

受動的であり、家庭での学習時間や学習方法に改善が必要な生徒もいる。授業中はまじめに取り組んでいる

ものの、短時間で終わるような確認課題でさえ、授業直前で仕上げようとする生徒が少なくなかった。主体

的な学習を目標として、グループ討論や発表を行ってきたが、一人が正解を出してしまうと、ほかの生徒は

それを聞いただけで終わることが多かった。高校 1 年で履修した数学Ⅱの微分法では計算技術に頼り、概念

や定義を理解しないまま、形式的な解法で満足していた傾向があった。教師の解説は真剣に聞くが、解説を

待つ傾向が強く、自分たちで考える姿勢が乏しい。グループ討論は、私が担当する理数科文系クラスの方が

活発である。理系の数学をより深く理解するためにも、主体的に考える態度と、論理を追及する姿勢を身に

つけることが課題である。

(3)指導観

この単元では、正確な微分計算が必要である。第 5 章で、様々な初等関数の導関数を扱ったが、まだまだ

定着していない。しかし、正しく計算する技術も大切であるが、そのことのみが目的であると誤解されない

ように留意する必要がある。そのため、導関数の定義や、連続、微分可能などの用語の使い方も意識する授

業にしたい。また、微分係数と曲線の接線の傾きの関係から、定理の図形的意味を直感的に理解できる。過

去には、既習事項の中間値の定理と、本時の平均値の定理を混同する生徒が多かったので、その違いも明確

にしたい。

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(4)反転授業

公開授業のために特別に準備した単発の授業ということではなく、平時の授業として観ていただき、今後

の指導のための研究としたい。教授事項の講義の後、グループ討論や発表などを行うアクティブラーニング

型授業を実践していたが、限られた授業時間内で学びを深める時間の確保が難しかった。教科書内容を予習

していれば、授業で深い学びにつなげられるが、復習・演習で手一杯の生徒が多く、なかなか実行できなか

った。

そこで、本年度 10 月からの授業で、「反転授業」を試みることを考えた。この試みには、指導内容の映像

教材が必須であり、Classi というシステムを利用させていただくことができた。「反転授業」は、講義の「知

識習得」の部分を自宅学習で事前に済ませ、これまで自宅学習で行ってきた課題や自主演習を授業内で行う、

いわゆる従来型の授業と自宅学習を文字通り反転させた授業である。そうすることによって、授業で生徒の

考えや躓きに耳を傾け、「思考力」や「協働性」の育成に取り組める。さらに映像教材は、いつでも自分の好

きな時間に利用でき、個々のペースで映像を止めたり、戻したり、早めたりすることもでき、どんどん先を

予習することも可能である。また、本学園の中学 2 年生以下の生徒は、各自がタブレットをもち、Classi な

どのシステムやソフトも利用しており、2 年後には高校に進級してくるため、高校でも ICT 機器を導入した

授業が行えるよう環境えているところである。その 1 つとして「反転授業」の研究を進め、これからの授業

のあり方を考えていきたい。

初めに「反転授業」を行った米国の教授は、各学生のペースで進めさせているとのことであるが、本校の

高校の授業では、取り組みの確認と定着を図るために、毎時、予習範囲を指定して取り組ませるべきと考え

る。Classi はビデオ映像や Web テストがあり、個人で先に進めたい生徒も活用できる。逆に、既習事項の

確認にも使える。また、授業を欠席した場合でも、教授内容の確認ができる利点もある。

「反転授業」を行うにあたっては、保護者の理解と協力を得ることも大切である。Web を閲覧できる環境

が整っているか、PCやタブレットなどがあるかなど、設備・費用の面も考えなければならない。スマホで

も可能であるが、画面が小さく、数式の添え字などが見えないこともある。また、設備が整っていても、時

間制限などのルールを決めている家庭もある。学習すべき時間にネット環境を利用して学習以外のことをし

てしまうケースも危惧される。そのため、保護者への連絡も行った。日本では、まだまだ映像教材が整って

おらず、米国のように数多くの映像教材を無償で利用できる環境もそれほど整っていない。日本語に吹き替

えられている映像も存在するが、画面が英語で表現されており、ある意味よい学習にもなるが、学習内容に

苦労している生徒には厳しいものがある。Classi は、その点でも利用しやすい。

「反転授業」を行う際に、Classi のような教材とタブレットのような機材が必要となる。今回は、研究の

一環として、本時のクラスの個々の生徒にタブレットを貸与し、研究することが可能となった。授業内での

タブレット利用も有効であるが、通信設備の問題もあり、現在は自宅のみの利用にとどめている。

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5.単元の目標:

数学Ⅱの微分法で身につけた基礎的知識や技術をさらに発展させ、初等関数の微分計算技能を習得する。

微分法の概念、原理や定理などの理解を目指し、曲線の接線の傾きや凹凸などを分析し、極限も用いること

で、より詳しく曲線のグラフを分析する能力を伸ばす。これまで単元ごとに習ったさまざまな関数やそれら

の合成関数も微分していくことで、関数全体としての総合的なイメージができるようになる。機器にたよる

ことなくグラフをイメージできる便利さを知り、自ら分析して活用しようとする姿勢を養う。

6.単元の評価規準

A:知識・技能 B:思考力・判断力・表現力 C:主体性・多様性・協働性

① 微分の計算ができる。

② 原理・法則・定理を理解する。

③ 微分法を利用して、関数の値

の変化や接線の方程式を求め

ることができる。

① 極限の概念に関心をもち、微

分法に応用する。

② 微分法の概念に関心をもち、

導関数の定義から理解しよう

とする。

③ 曲線のグラフを描くことがで

きる。

④ 場面に応じて必要な定理・公

式をみつける。

⑤ 自分の意見や考えを他者に伝

わるように表現したり、解法

をまとめたりすることができ

る。

① 映像教材、小テストで事前学

習をする。

② 他者の意見や考えを聞きいれ

ることができる。

③ 自分と他者の意見や考えを比

較し、よりよい考えに発展さ

せようとする。

7.単元の指導と評価の計画

授業時数 主な学習内容 評価

1時間目 ガイダンス・微分係数 A①B①

2時間目 微分可能と連続 B①②

3時間目 導関数 A①B①②C①②③

4時間目 積の導関数 A①B② C①②③

5時間目 商の導関数 A①B② C①②③

6時間目 合成関数の導関数 A①B②④C①②③

7時間目 逆関数の導関数 A①B② C①②③

8時間目 三角関数の導関数 A①B② C①②③

9時間目 対数関数の導関数①(自然対数の底 e の導入) B①②C①②③

10時間目 対数関数の導関数② A①B② C①③

11 時間目 対数関数の導関数③(e の定義から極限) A①B② C①②③

12時間目 指数関数の導関数 A①B② C①②③

13時間目 第 n 次導関数・対数微分法 A①B①④C①

14時間目 陰関数表示の導関数 A①B② C①

15時間目 媒介変数表示と導関数 A①B② C①

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16時間目 接線と法線 A① B② C①②③

17時間目 共通接線 A① B②③ C①

18時間目 陰関数表示のグラフの接線と法線 A①② B②③ C①

19時間目 方程式の重解と微分 A①② B②④ C①②③

20時間目 平均値の定理 B②⑤ C①②③

21時間目

(本時) 平均値の定理の利用 A② B②④⑤ C①②③

22時間目 ロルの定理と平均値の定理の証明 A② B②

23時間目 関数の増減 A①③ B② C①

24時間目 関数の極値,最大・最小 A①②③B②③ C①②③

25時間目 関数の凹凸 A①③ B②③ C①②③

26時間目 関数のグラフの概形① B②③ C①

27時間目 関数のグラフの概形② A②③ B①③④⑤ C②③

28時間目 第 2 次導関数と極値 A① B③ C①②③

29時間目 不等式の証明 A①② B④⑤ C①②③

30時間目 方程式の実数解の個数 A①③ B③④⑤ C①②③

31時間目 微分法演習 A①②③B①②④⑤

32時間目 微分法の応用演習 A①②③B①②③④⑤

8.本時の展開

(1) 本時の指導目標

平均値の定理を利用して、不等式の証明に利用できる場合があることに気づき、証明できるようになる。

グループで意見をまとめて発表できる。他のグループの発表を聞き、評価することができる。

(2) 本時の学習指導過程

過程 学習活動 指導上の留意点 評価

準備 自宅で「平均値の定理の利用」の映像教材と小

テストで事前学習をする。

予習をしなければ、授業で演習できないよ

うな授業展開を考える。事前学習チェック

をする。

C①

導入

(10 分)

前時の「平均値の定理」の確認。

「平均値の定理」をペアワークで確認し合う。

(1 分)

ワークシートに「平均値の定理」書いて確認す

る。(2 分)

前時の振り返りで出た疑問点などを紹介す

る。

区間、連続、微分可能の用語を正しく使っ

ているかも確認する。

書くことにより、再確認できる。

C①

x > 0 のとき,

不等式 1 <𝑒𝑥 − 1

𝑥< 𝑒𝑥 を証明せよ。

映像教材

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映像教材「平均値の定理の利用」から、わかっ

たこと、疑問点などを各自考える。(1 分)

4 人のグループワークで、疑問点を話し合う。

その後、班ごとに発表する。(6 分)

各自 1 つ(以上)挙げるよう指示する。

本時の授業内容の確認をする。(予習できな

かった生徒がいた場合にも、概略がつかめ

るようにする)

疑問点を発表し、理解の定着を図る。

(疑問点がなければ、展開に移る)

A②

C①②③

展開

(35 分)

小テスト

各自で考える時間(個 4 分)

グループ討論(協働 2 分,個 6 分)

区間、微分可能の用語を用いているかを確認

し、解答を完成する。

問題

各自で考える時間(個 5 分)

グループ討論(協働 4 分)

演習

事前学習より、平均値の定理を利用すれば

よいと着眼する生徒が多いと考える。映像

教材の確認問題としての出題であるが、一

見、平均値の定理の形になっていない。

進行状況により、関数 f(x) を生徒から引き

だして誘導する。

進行の遅い生徒も、平均値の定理が利用で

きる形が作れたことを評価する。

式変形を行ってから平均値の定理を利用す

る。

始め 2 分考えた後、方針がつかめない場合、

他の生徒からアイデアをもらい、その続き

の証明を完成させる。

早く解き終わったグループに、新たな課題

を与えつつ、悩んでいる班へのサポートを

する。

A②B②④

C②③

A②B④

B⑤

C②③

まとめ

(5 分)

振り返り

「平均値の定理」が不等式の証明に利用できる

ことを振り返る。理解したこと、まだ解決して

いない疑問点を自由に書く。

次の授業内容と、映像教材の提示

(極限値へ利用、ロルの定理と平均値の定理の

証明。理解度によりコーシーの平均値の定理)

不等式の証明以外にも、極限値を求めると

きにも利用できることを伝え、事前学習に

つなげる。

B②④

𝑥 > 0 のとき,

不等式 1

𝑥 + 1<

log (𝑥 + 1)

𝑥< 1 を証明せよ。

0 < α < β <π

2 のとき,

不等式 sin β − sin α < β − α を証明せよ。

𝑎 − 𝑏 < 𝑏 log 𝑏 − 𝑎 log 𝑎 < 𝑏 − 𝑎

を証明せよ。

1

𝑒2 < 𝑎 < 𝑏 < 1 のとき,

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9.その他

【使用教材等】(自宅にて)タブレット等の機器

Classi映像教材と小テスト

【事前学習指示】

① 前時に、事前学習項目を指示する。

映像教材は、取り組みやすいよう 10 分程度が望ましい。

② 映像を見た直後の確認として、基礎問題(小テスト)へ取り組ませる。

(Classi は、回答率や正解率がわかるように工夫されている)

③ 自主課題として、10 問くらいの計算練習問題を課すこともした。

④ 定期的にアンケートを行い、事前学習や授業のありかたを考える材料とした。

生徒には、上記「7.単元の指導と評価の計画」の

ような表を配付しており、下図○印のように、どの

項目を学習するかがわかるようにした。このとき、

簡単なポイントなどをコメントするように心掛け

た。