高圧ガス保安対策事業(高圧ガス保安技術基準作成 …平成26年度...

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平成26年度 経済産業省委託 高圧ガス保安対策事業(高圧ガス保安技術基準作成・運用検討) 冷凍保安規則関連 (冷凍機等への可燃性冷媒再充塡の安全性評価) 平成27年 3月 高圧ガス保安協会

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平成26年度 経済産業省委託

高圧ガス保安対策事業(高圧ガス保安技術基準作成・運用検討)

冷凍保安規則関連

(冷凍機等への可燃性冷媒再充塡の安全性評価)

報 告 書

平成27年 3月

高圧ガス保安協会

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目次

Ⅰ 事業趣旨等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

1.平成 26 年度委託事業実施計画(仕様書)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

2.委員会の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

3.委員会開催状況等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 Ⅱ 平成 25 年度事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

Ⅲ 平成 26 年度事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

1. 事業の進め方等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

1.1 冷凍則見直し対象の冷媒ガス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

1.2 冷凍設備に適用される技術上の基準等との比較対象の規制・規格 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

1.3 検討すべき項目の抽出 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

1.4 安全性の立証等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

1.5 委員会としての提言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

2. 規制合理化要望の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

2.1 R32、R1234yf 及び R1234ze(E)に係る要望の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

2.2 指定設備に使用可能な冷媒の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

2.3 二酸化炭素に係る要望の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

3.今後の検討の方向性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

4.まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

添付資料 1 微燃性ガスに関する国際規格比較のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31

添付資料 2 R32 等の規制合理化要望の立証資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38

添付資料 3 二酸化炭素の規制合理化要望の立証資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73

参考資料 高圧ガス保安法に基づく冷凍保安規則における冷媒の種類による冷凍設備の扱い等・・ 83

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Ⅰ 事業趣旨等 1.平成 26 年度委託事業実施計画(仕様書)

(1)目的

冷凍設備分野の保安対策においては、科学技術の進歩、国際整合化の要請、社会的受容性

等の観点から、基準の見直しに向けた検討をすることが常に重要である。

この事業では、冷凍設備分野の健全な発展に寄与するために、冷凍設備に使用される少し可

燃性のある冷媒等についての安全性の評価を行い、高圧ガス保安法での規制のあり方につい

て、検討を行う。

また、高圧ガスを利用した製品、機器類等は次々に新たなものが開発され、製品化される。

これらの製品、機器類に関し適用される基準の明確化、高圧ガス設備の範囲、技術基準の追

加などの法技術的課題や国際的な動向を踏まえた評価方法についての検討が必要である。こ

れらについて現状を調査し、それぞれの課題について技術基準の追加・整備等、解決策をまと

める。

(2)調査内容等

冷凍機等への可燃性冷媒再充塡の安全性評価

近年、冷凍機やエアコンの冷凍設備に使用する冷媒について、地球温暖化係数が小さい、

省エネによって電気代等が安くなる、冷媒の価格が安い等といった理由から、液化石油ガス(プ

ロパン)等の可燃性がある冷媒を使用したいという動きがある一方、可燃性がある冷媒が充塡

された冷凍設備は、可燃性ガスの漏えい等によって火災の発生や拡大の原因になるとともに、

不燃性の冷媒用に設計された冷凍設備に可燃性冷媒を再充塡すること、可燃性冷媒が充塡さ

れていることを知らずに他の冷媒の補充作業を行うこと等についても、火災の発生や拡大の原

因となるため、規制を厳しくすべきという意見がある。 さらに、この数年、高圧ガス保安法に関係する冷凍設備分野の事故が著しく増加しているこ

とから、冷凍機等の冷凍設備に可燃性がある冷媒を使用することについて、安全性の確保の観

点から適切な規制を行うことが望まれているところであり、高圧ガス保安法での規制の在り方に

ついて、検討を行う。

i)調査及び検討事項

冷凍設備における冷媒の規制の在り方を検討するために、以下の事業を行う。

①冷媒について、冷凍保安規則(以下、「冷凍則」という。)における冷媒の定義、冷凍設備に

適用する技術上の基準等の見直しの検討

・少し可燃性がある冷媒(R32、R1234yf、R1234ze及びR413A)について、冷凍則の見直

のために、一般高圧ガス保安規則、ASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)及びISO(国際

標準化機構)の規格において、冷凍設備に適用される技術上の基準等を比較し、検討すべ

き項目を抽出するとともに、冷凍則における冷媒の定義、冷凍設備に適用する技術上の基

準等の在り方について検討する。

・高圧で使用される二酸化炭素冷媒の冷凍則における在り方について検討する。

②文献、インターネット等による冷媒の安全性評価に係わる研究等情報の収集

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ⅱ)調査結果に基づく技術基準案の検討

有識者(選定に当たっては高圧ガス保安室と相談の上決定のこと。)により構成された委員

会は、i)①の調査結果に基づき、i)①についての技術上の基準等の在り方について検討を行

い、必要に応じ省令改正や例示基準改正に係る提言等を行う。

ⅲ)委員会の運営

i)①について委員会を運営(委員8名程度、委員会3回程度)する。

2.委員会の構成

敬称略・順不同

【氏 名】 【所 属】

委員長 飛原 英治 東京大学 新領域創成科学研究科 教授

委 員 佐藤 研二 東邦大学 理学部 生命圏環境科学科 教授

〃 今村 友彦 諏訪東京理科大学 工学部 機械工学科 講師

〃 滝澤 賢二 独立行政法人産業技術総合研究所 環境化学技術研究部門

主任研究員

〃 辻 健次 【公益社団法人日本冷凍空調学会】

ダイキン工業株式会社 空調生産本部 企画部法規グループ

シニアスキルスペシャリスト

〃 松田 憲兒 一般社団法人日本冷凍空調工業会 技術部 部長 参事

〃 小田 達郎 一般社団法人日本冷蔵倉庫協会 技術部 部長

〃 石川 淳一 【日本フルオロカーボン協会】

三井・デュポンフロロケミカル株式会社 環境・ビジネス開発

主幹

〃 藤本 悟 【一般社団法人日本冷凍空調工業会】

ダイキン工業株式会社 CSR・地球環境センター室長

3.委員会開催状況等

【回数】 【開催日】 【場 所】 【主な議事】

第 1 回 平成 26 年 10 月 28 日(火) 高圧ガス保安協会 ・事業趣旨等

第 1・2 会議室 ・検討項目の審議

第 2 回 平成 26 年 12 月 15 日(月) 高圧ガス保安協会 ・規制合理化要望の審議

第 2・3 会議室 ・冷凍関係事故

第 3 回 平成 27 年 2 月 27 日(金) 高圧ガス保安協会 ・規制合理化要望の審議

第 4 会議室 ・まとめの方向性等の審議

・報告書案の審議

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Ⅱ 平成 25 年度事業

平成 25 年度事業の課題確認

本年度事業実施計画を踏まえ、昨年度の主な課題等について、次の①から⑦までの確認 を行った。

①EU 及び米国の冷凍設備にかかる規制は、適用範囲、規制体系等が異なっており、また、

冷凍保安規則と比べても異なっていた。このため、EU 規制等の導入に際しては、冷凍保

安規則の適用範囲等の関係から導入できない規制による保安の低下を引き起こさないよ

うな検討が必要である。

②技術上の基準の導入に際しては、海外において法的強制力のなかった ISO 及び

ASHRAE を含め、別途安全性について妥当性のあるものを前提とした検討が必要である。

③冷媒ガスの新たな分類方法を導入する際には、現行規制の分類から別の分類に変わる

場合があるため、混乱を招かないような措置を含めた検討が必要である。

④現行の冷凍保安規則には定義付けられていない「微燃性ガス」という新たな分類の創設

に際しては、その分類に該当する技術上の基準の内容と併せ、現行規制と同等以上の保

安が確保されるのかどうかの検討が必要である。

⑤冷媒ガスを可燃性ガス等に分類するための測定方法について、ISO 及び ASHRAE に引

用されている ASTM E 681 法は一般高圧ガス保安規則に規定されているそれとは考え方

が異なっていた。このため、測定方法によって得られる結果に影響を及ぼす測定温度及び

測定湿度を踏まえた検討が必要である。

⑥可燃性ガス等の定義の検討に際しては、冷凍保安規則のみならず、一般高圧ガス保安

規則への影響も踏まえた検討が必要である。

⑦二酸化炭素に対する EU 規制において、圧力が高いことによる特別な規制は見当たらず、

所謂安全率の違いによる差はあるものの我が国と同様に冷凍設備の強度確認として耐圧

試験を課して安全性を確保しており、R410A、R404A、R134a 等の冷媒と同様の規制で

あった。

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Ⅲ 平成 26 年度事業 1.事業の進め方等

1.1 冷凍則見直し対象の冷媒ガス

本年度事業において冷凍保安規則における冷媒の定義、冷凍設備に適用する技術

基準等の対象となる冷媒ガスは次のとおりとした。なお、R413A については、当該冷媒

ガス製造者が生産を中止し、今後も生産の見込みがないこと及び冷凍機器製造者の

開発計画も見込まれないため、R413A にかかる規制合理化要望対象から除外するこ

ととした。

①R32

②R1234yf ③R1234ze(E) ④二酸化炭素

1.2 冷凍設備に適用される技術上の基準等との比較対象の規制・規格

冷凍保安規則の見直しのために、次の一般高圧ガス保安規則、ASHRAE(アメリカ

暖房冷凍空調学会)及び ISO(国際標準化機構)の規格を対象とした冷凍設備に適用

される技術上の基準等の比較・検討を行った。なお、 IEC(国際電気標準会議)は

ISO5149 で検討すべき防爆に関する規定を IEC に委ね、当該 ISO に取込む予定のた

め、今回の対象規格に含めた。

①一般高圧ガス保安規則

②ASHRAE15 (2013) Safety Standard for Refrigeration Systems

③ASHRAE34 (2013) Designation and Safety Classification of Refrigerants

④ISO817 3rd editon (2014) Refrigerants - Designation and safety classification

⑤ISO5149-1 1st editon (2014) Refrigerating systems and heat pumps - Safety and environmental requirements - Part 1: Definitions, classification and selection criteria

⑥ISO5149-2 1st editon (2014) Refrigerating systems and heat pumps - Safety and

environmental requirements - Part 2: Design, construction, testing, marking and

documentation

⑦ISO5149-3 1st editon (2014) Refrigerating systems and heat pumps - Safety and

environmental requirements - Part 3: Installation site

⑧ISO5149-4 1st editon (2014)Refrigerating systems and heat pumps - Safety and

environmental requirements - Part 4: Operation, maintenance, repair and recovery

⑨IEC60335-2-40 Editon 5.0 (2013) Household and similar electrical appliances -

Safety - Part 2 - 40:Particular requirements for electrical heat pumps,

airconditioners and dehumidifers

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1.3 検討すべき項目の抽出

本事業において検討すべき項目として抽出すべく要望は、次の①から③までを踏まえ

たものとした。

①平成 25 年度の課題等を踏まえた要望事項の整理、検討を行う。

②1.2「冷凍設備に適用される技術上の基準等との比較対象の規制・規格」から要望事項

の整理、検討を行う。

③1.4「安全性の立証等」が確認されている、又は確認予定であることを踏まえ、要望事項

の整理、検討を行う。

1.4 安全性の立証等

1.3「検討すべき項目の抽出」における要望は、次の①から④までのデータ等によって

確認等されたものであること。

①実証実験等により得られたデータについて検討を行う。

②ASHRAE、ISO 及び IEC の制定・改正における技術的根拠について検討を行う。 ③本事業では、「文献、インターネット等による冷媒の安全性評価に係わる研究等情報の

収集」が目的の一つとなっている。現時点では、安全性評価に係るものとして、例えば、

「微燃性冷媒リスク評価研究会平成 25 年度プログレスレポート」等があげられ、これら

の情報の中で有益なものがあればその検討を行う。

④平成 26 年 7 月にリコールした家庭用ヒートポンプ給湯機には二酸化炭素が用いられて

いる。この機器は冷凍保安規則の適用除外のものではあるが、事故の原因から水平

展開すべき事項がないかどうかの観点から検討を行う。

1.5 委員会としての提言

要望する規定等の安全性が立証され、かつ、政省令等の改正が妥当と判断した場合 には、政令、冷凍保安規則、関係告示、基本通達及び例示基準の改正案を提言する。な お、この場合、一般高圧ガス保安規則の定義等に影響を及ぼすおそれのある場合にはそ の点も踏まえた提言等とする。

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2.規制合理化要望の検討 2.1 R32、R1234yf 及び R1234ze(E)に係る要望の検討 2.1.1 概要 R32、R1234yf 及び R1234ze(E)(以下「R32 等」という)に係る規制合理化要望は、少

し可燃性のある燃焼特性を踏まえ、安全な措置を講じることで、冷凍保安規則に定義され

ている不活性ガスのフルオロカーボンと同等の規制に合理化すべきというものである。 (1)その他製造者への改正 要望の内容を把握するため、法令の観点から整理する。

冷凍保安規則の規制は、冷媒の種類と使用される冷凍機器の冷凍能力との関係に

より、図 1 のように規制の区分が決まる体系となっている。

R32 等の冷媒は、現行の法令では不活性ガス以外のフルオロカーボンに該当し、 図 1 のように冷凍能力によって、第 1 種製造者(許可)、第 2 種製造者(届出)及びその 他製造者(届出不要)に区分され、それぞれの規制を受ける。

要望は、冷凍能力 3 トン以上 20 トン未満の範囲のものをその他製造者(届出不要)

に合理化したいというものである。(図 2) なお、参考に不活性ガスのフルオロカーボンの規制概要を図 3 に示した。

図 1 現行規制図

冷凍能力

(RT)

冷媒種類

RT<3

3≦RT<5

5≦RT<20

20≦RT<50

50≦RT

R32 等フルオロカーボン

(不活性ガス以外)

適用

除外 その他

製造者 第 2 種

製造者 第 1 種

製造者 図 2 改正要望規制図

冷凍能力

(RT)

冷媒種類

RT<3

3≦RT<20

20≦RT<50

50≦RT

R32 等フルオロカーボン

(不活性ガス以外)

適用

除外 その他

製造者 第 2 種

製造者 第 1 種

製造者 注)RT:冷凍能力のトン 図 3 不活性のフルオロカーボン規制図

冷凍能力

(RT)

冷媒種類

RT<3

3≦RT<5

5≦RT<20

20≦RT<50

50≦RT

フルオロカーボン

(不活性ガス)

適用

除外 その他

製造者

第 2 種

製造者 第 1 種

製造者

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(2)現行規制の概要 上記(1)のとおり、冷凍設備における1日の冷凍能力と不活性ガス等の冷媒ガスの種

類により、第 1 種製造者、第 2 種製造者及びその他製造者に区分され、その区分に応じ、

適用される規制が異なる体系となっている。

表 1 にそれぞれの区分に応じた主な規制の適否を示した。

表 1 主な規制概要

主な規制 第1種製造者 第2種製造者 その他製造者

知事 許可 法第5条第1項 令第4条 ○ - -

知事 届出 法第5条第2項 令第4条 - ○ -

設備に係る技術

上の基準

冷凍則第7条 ○ - -

冷凍則第12条 - ○ -

製造の方法に係る

技術上の基準

冷凍則第9条 ○ - -

冷凍則第14条 - ○ -

その他製造の基準 冷凍則第15条 - - ○

冷凍保安責任者の選任等 (第36条関係) ○ ○ -

保安検査(3年に1回) (第40条関係) ○ - -

1)設備に係る技術上の基準(第 7 条等)

①第 1 種製造者にあっては冷凍保安規則第 7 条の基準が、第 2 種製造者にあっては

第 12 条の基準がそれぞれ適用される。

②第 2 種製造者の適用される冷凍保安器則第 12 条は、第 1 種製造者に適用される

冷凍保安器則第 7 条第 1 項第 1 号から第 17 号までのうち、次の基準が適用され

る。

・第 1 号から第 4 号まで

・第 6 号

・第 8 号から第 12 号まで

・第 14 号から第 17 号まで

第 5 号、第 7 号及び第 13 号の基準は適用されない。

③その他製造者にあっては第 7 条の技術上の基準の適用はない。これが第 2 種製造

者とその他製造者との差となる。

2)製造の方法に係る技術上の基準(第 9 条等)

①第 1 種製造者には冷凍保安器則第 9 条第 1 号から第 4 号までの基準が適用される。

②第 2 種製造者には第 9 条第 1 号から第 4 号までの基準(指定設備は第 3 号ロを除く。)

に気密試験を加えた基準が適用される。

③その他製造者にあっては第 2 種製造者の基準である第 9 条の適用がなく、気密試

験のみの基準が適用される。これが第 2 種製造者とその他製造者の差となる。

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2.1.2 技術基準との比較対象規格等の検討 (1)検討項目の概要 冷凍保安規則の見直しのために、一般高圧ガス保安規則、ASHRAE、ISO 及び IEC

の規格において、冷凍設備に適用される技術上の基準等を比較検討し、検討すべき項

目を調査した。その項目の概要は次のとおりである。これらの項目については、規制合

理化要望の妥当性を立証する資料の中で導入されている。なお、この内容については

添付資料 1「微燃性ガスに関する国際規格のまとめ」を参照のこと。

ISO817 及び ASHRAE34 では、可燃性に関しては、燃焼限界、燃焼熱、燃焼速度等の燃焼性の数

値に応じて、燃焼性の高い順から、強燃性(A3)、弱燃性(A2)、微燃性(A2L)及び不燃性(A1)に区

分されている。R32、R1234yf 及び R1234ze(E)は微燃性(A2L)に区分され、新たな冷媒が開発された

場合、その冷媒の燃焼性の数値によって、分類される区分が決定される。

一方、高圧ガス保安法では、一般高圧ガス保安規則において、可燃性ガスの定義より、R32 は不

活性ガスに区分され、R1234yf 及び R1234ze(E)は可燃性ガスに区分される。また、冷凍保安規則に

おいては、R32、R1234yf 及び R1234ze(E)はいずれも未掲名のため、すべて不活性ガス以外のフル

オロカーボン(第2グループ)に区分される。

国際規格比較では、特に A2L の微燃性ガス(R32、R1234yf、R1234ze(E)、)を使用した機器につい

ての要求事項の概要を以下にまとめた。

①室内の冷媒濃度は一般的に以下の値以下(ただし、人が存在する室内は別)

ISO5149 : 0.2×LFL、IEC60335-2-40 : 0.25×LFL(移動式の一体型)

なお、LFL: 燃焼下限界 (kg/m3)(R32:0.307、R1234yf:0.289、R1234ze(E):0.303)

②換気等の安全対策を施した上での最大充填冷媒量は次式で求まる m3 に制限されている。

ISO5149 : m3 = 195×LFL (1.5×130×LFL)

(R32:m3=59.9kg、R1234yf:m3=56.4kg、R1234ze(E):m3=59.1kg)

IEC60335-2-40 : m3 = 130×LFL (A3、A2、A2L の区分け無し)

現在改正検討中の案では、以下。

m3 = 260×LFL (2×130×LFL)

③濃度基準を守るための安全対策は、換気、遮断弁または警報の中なら選択する。このうち遮断

弁、警報に対する要求仕様及び冷媒漏洩検知器に対する要求仕様は以下。

【遮断弁】

・冷媒漏洩発生時は、遮断弁は冷媒の流れを遮断することができる。

・遮断弁は、停電時に(ばね等で)閉止されるように設計する。

【警報】

・警報は、他の冷凍システムとは別電源にする。(ISO5149 Part 3: 8.2)

・警報は、ブザーや光の点滅等、聴覚と視覚の両方に警報する。

【冷媒漏洩検出器】

・少なくとも各機械室や居室には、少なくとも1つの漏洩検出器を設置すること。

・冷媒漏洩検知器は LFL の 25%を超えないレベルで警報を作動させること。

④機械室に関しては、ISO5149 に以下の規定がある。

・人が立ち入る機械室は1時間に4回以上の換気を行うこと。

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・警報システムは機械室の内外に警報すること。

・燃焼機器を機械室に設置してはいけない。

⑤着火源、防爆要求等に関し、以下のように規定されている。

・2L 冷媒のみを含む冷凍システムが設置してある部屋の電気設備は防爆不要。(ISO5149)

・加熱面は冷媒の自己発火温度よりも 100K 低い温度を超えてはならない。( ISO5149、

IEC60335-2-40)

・IEC 60079-15 を遵守している電気部品は着火源とみなさない。(ISO5149、IEC60335-2-40)

・A2L 冷媒では可溶栓は使用可能。(ISO5149)

(2)安全評価情報 本事業では、「文献、インターネット等による冷媒の安全性評価に係わる研究等情報

の収集」が目的の一つとなっている。調査の結果、次の①及び②を有益な情報とした。 ①微燃性冷媒リスク評価研究会 平成 25 年度プログレスレポート このレポートは、今回の規制合理化要望の妥当性を説明する資料中に導入されてい

るものである。詳細については http://www.jsrae.or.jp/committee/binensei/risk_j.html を参照のこと。 ②小型冷凍機への可燃性冷媒使用に係る規制の在り方の検討事業報告書(平成 24 年

度経済産業省委託事業) 可燃性、少し可燃性、不活性等の冷媒ガスを充てんした冷凍設備の燃焼実験を行っ

ている。この結果、不活性冷媒と比較して、圧力及び火炎による危険性の増大が認め

られなかった等について報告している。 詳細については http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2013fy/E003990.zip を参照の

こと。 2.1.3 規制合理化要望・立証の概要 規制合理化要望については、第 1 回及び第 2 回委員会において提案がなされ、検討を

行ってきた。これらの検討の結果を踏まえ、第 3 回の委員会において、一般社団法人日 本冷凍空調工業会からの上述の 2.1.1 の要望があった。次には要望の詳細及び要望の 妥当性等を説明した資料を以下に示した。なお、詳細については添付資料 2 を参照のこ と。なお、項番号等は要望資料の原文のままであるため、添付資料の参照の際にはその 項番号がそのまま参照できる。 1.2 規制緩和の内容

微燃性ガス(R32、R1234yf、R1234ze(E))を現在使用されているR410A、R134a、R404Aなど

のフルオロカーボンの不活性ガス並みの扱いとできるようにすることであり、そのためには、安全を確

保するための技術基準を設定することである。

不活性ガス並みの扱いとは:

不活性ガスと全く同等の扱いではなく、不活性ガスに認められていることの幾つかを微燃性ガスに

も許容するものである。すなわち

今回対象としている微燃性ガス(R32、R1234yf、R1234ze(E))で、

①3~20 冷凍トン未満を届出が不要なその他製造者の扱いにすること。

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②指定設備となれること(施行令第十五条:不活性に限られている)

である.

なお、R32は冷凍則では掲名されていないが、一般則の燃焼試験では不燃であるので、掲名をす

ると冷凍則で不活性ガスになる可能性は高い。一方、R1234yf、R1234ze(E)は一般則の燃焼試

験では可燃となるので,冷凍則では可燃性ガスに掲名される可能性が高い。ただし、燃焼性はR32も

R1234yfやR1234ze(E)も大差なく、安全を確保するには同じ技術基準を適用すべきと考える。

今回対象としている微燃性ガス(R32、R1234yf、R1234ze(E))の課題は、燃焼することであ

る。燃焼性に係る物性値を総合的に比較し、安全を確保する技術基準を策定すべきと考える。

微燃性ガスをできるだけ安全な状態で使用するための要件を明確にするため、(公益社団法人)日

本冷凍空調学会傘下の「微燃性冷媒リスク評価研究会」を設立し産学官共同で安全性評価を行い、

一般社団法人日本冷凍空調工業会の微燃性冷媒安全性リスク検討WGなどで、リスクアセスメントを

実施している。

そのなかで明らかとなってきたことは、微燃性ガスの燃焼性はプロパンよりも安全で微燃性ガスの

燃焼を防ぐか危険回避の処置として有効な対策として、濃度管理、機械換気の設置、冷媒の遮断装

置、警報装置の設置といった安全要件であることである。

これらの要件を選択・組合せることでリスクの抑制が可能となるが、製品の実現には課題も残され

ており、詳細は後述する。

2.冷媒の比較

一般高圧ガス保安規則第二条で可燃性ガスの定義は、イ)爆発限界の下限が 10%以下またはロ)

爆発限界の上限と下限の差が 20%以上のものである。つまり、冷媒の燃焼性を燃焼限界の下限と上

下限の差のみで可燃か不燃か 2 分割に分けている。

一方、国際規格 ISO817 は冷媒の燃焼性により、3(強燃性)、2(弱燃性)、2L(微燃性:燃焼熱量

が 19MJ/kg 以下で燃焼速度が 10cm/s 以下の微燃性冷媒)、1(不燃)と 4 分割にしている。このよう

に、燃焼性による冷媒区分を燃焼熱量と燃焼速度により細分化して、燃焼性を評価していく動きにな

っている。

なお、可燃か不燃かは試験方法や条件によって決まる。たとえば、一般高圧ガス保安法の A 法に

よる可燃性評価試験・条件で不燃である R410A、R134a は、60℃で高湿度条件では可燃となることが

示されている。

今回対象にしている R32 は A 法では不燃と評価され、R1234yf や R1234ze(E)は可燃と評価される。

一方、ISO817 の試験法・条件では R32 も、R1234yf、R1234ze(E)と同じように可燃となる。これは、国

際規格 ISO817 で2L を燃焼熱量が 19MJ/kg 以下で燃焼速度が 10cm/s 以下の微燃性冷媒と定義

し、冷媒の燃焼性を考慮したものではあるが、燃焼性を評価するには、着火するエネルギーや着火後

の燃焼熱量、燃焼速度、さらには燃焼による圧力上昇の度合いなど、総合的に判断する必要があ

る。

今後、R32、R1234yf、R1234ze(E)以外の冷媒の燃焼性を評価する場合には、燃焼性を評価する重

要な物性値として取り上げた下記の①~⑧の値等を参考に総合的に評価するのが良いのではない

か。

燃焼性評価の重要な物性値:

①燃焼速度、②燃焼熱量、③消炎距離、④消炎直径、⑤最小着火エネルギー

⑥爆発強度指数(KG値)、⑦燃焼限界(最小 LFL 及び最大 UFL)、⑧自己着火温度

4.微燃性冷媒のリスク評価

4.4 リスクの許容値の考察

・・・日本冷凍空調工業会で想定する製品ごとのリスク許容値を表 4.4.1 に示す。

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表4.4.1 日本冷凍空調工業会想定の製品ごとのリスク許容値

(考えられないとするリスク値)

形態 ストック台数 リスク許容値(回/台・年)

家庭用 1億台 使用時 1.0E-10

その他 1.0E-09

店舗用 780万台 使用時 1.3E-09

その他 1.3E-08

ビル用

マルチ

1000万台

(室内)

使用時 1.0E-09

その他 1.0E-08

チラー 13.4万台 産業用なので専門家の介在に

よりリスク低減可能として

1.0E-06

5.リスク評価の概要

5.1 業務用パッケージエアコンのリスク評価

⑥まとめ

室内機が天井設置タイプの場合のリスクは少なく許容値を満足する。床置きと室外機の半地

下設置と狭小地設置で対応が必要

⑦残された課題

室外機の半地下設置と狭小地設置が課題である。

半地下設置の場合には⑤項で示した通り、冷媒漏えい検知手段と冷媒の滞留を抑制する拡

散ファンなどの安全対策を義務付け、狭小地設置の場合にはボイラーの近傍設置禁止等を義

務付ける。

冷媒充填量制限によるリスク回避が難しい冷媒充填量の場合の課題は、後述するビル用マ

ルチと同じため、ビル用マルチの箇所を参照のこと。

5.2 ビル用マルチエアコンのリスク評価

⑥まとめ

ビル用マルチは冷媒充填量が多く、部屋容積と漏えい冷媒量が必ずしも相関しているわ

けではないので、冷媒充填量による濃度管理だけに頼ると室内空間で着火濃度を超える場

合が多い。よって室内に冷媒漏えい検知手段と機械換気手段または漏えい遮断手段または

警報手段のいずれかを備えることにより、部屋の多様性に関わらずリスクを許容値まで低

減できる見通しである。

室外機を機械室に設置する場合には、4 回/h の機械換気および検知器等の安全対策が必

須である。

室内については、冷媒漏えい検知手段を室内に備え、換気手段または漏えい遮断手段を備え

る場合のリスク評価を行い、リスクが許容レベル以下になることを確認している。警報はこれらと同

等の効果を持つとした。この場合、施工時のミスを担保できないため、これらの機能を室内機本体

に備えるか、もしくは、室内機本体とインターロックを備えることを安全要件とした。但し、安全対策

としての警報が有効である冷媒量の範囲、最大冷媒量上限値、冷媒漏えい検知手段の室内機本

体への設置位置などについては、今後さらに検討が必要である。

⑦残された課題

今後の課題と、その理由(⇒以下)を示す。

・最大冷媒量上限値の検討

⇒ISO5149 では、195[m3]*LFL と規定されており、R32 では 60[kg]となる。その根拠は、炭化水素冷

媒では上限値が 5[kg]となっており、可燃領域の大きさにすると 130[m3]となり、微燃性ゆえに炭

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化水素冷媒の 1.5 倍として、195[m3]とした、もので、総冷媒量による爆発エネルギーから決めら

れている。それに対し、ここでの冷媒上限値X[kg]は、室内機本体に安全装置を備えた場合のリ

スクの検討から決定する必要があり、今後詳細検討する必要がある。国内における LPG ガスの

室内置き最大許容量などの数値も参考にする必要がある。

・漏えい検知手段の信頼性確保のための技術基準(漏えい検知手段を室内機本体に設置する場合

にはその設置場所、試運転時を含めた動作保証方法)の明確化

⇒冷凍保安則においては、可燃性または毒性ガスの場合には滞留するおそれのある場所に漏え

い検知設備を設けることとなっており、例示基準13では、その方式、発報濃度、検知精度、定

期検査の間隔、等が定められている。微燃性冷媒の場合に、同じ要求が必要かどうかも含め、

基準につき検討する必要がある。

・冷媒遮断の方法及びその信頼性確保のための技術基準の明確化

⇒冷凍保安則においては、漏えい量上限値など冷媒遮断についての定めが無い。スローリーク

では室内の自然換気により冷媒が排出されるため、室内に可燃領域を生じさせない。漏えい量

上限を小さく抑えようとすれば、装置も大きくなり実用性が低下する為、どこまで漏えい上限値

が許容されるか、また、停電時の対策も含め、その仕様についての検討が必要である。

・警報が有効である冷媒量範囲の明確化

⇒ISO5149 では、冷媒充填量/室内容積の値に応じて、その値が比較的低い場合には、警報が

有効な安全対策として認められており、また、病院・学校など自主的避難が難しい者が居る、も

しくは、百貨店・スーパーマーケットなど不特定多数の者が集まる場所において、室内だけでは

無く管理場所にも警報装置を設置するように定められている。冷媒量に制約を加えることによ

り、警報でも安全性が担保できる可能性もあるため、様々な室内機の設置場所を考慮した上

で、適切な設置場所や、警報が有効である冷媒量の範囲について検討する必要がある。

・可燃域を作るような急速漏えいを防止するための技術基準(機械継手)の明確化

⇒室内における冷媒漏えい箇所は、室内機中の熱交換器が最も多く、次に室内機と冷媒連絡配

管を繋ぐ機械継手(フレア)が多い。また、天井裏で連絡配管を接続する際にも、ロウ付けが禁

止されている現場では、機械継手が用いられる場合も有る。ロウ付けの代わりに用いられるこ

うした天井裏の機械継手から漏えいした場合には、室内機本体に設置された漏えい検知器で

検知することは難しい。

よって、この様な機械継手(フレア)を可燃冷媒機器に使用する場合、IEC や ISO では、ロウ

付け並みの信頼性を有することを判定するための試験基準ほか各種の要件が付加されてい

る(国際規格の章参照)。特に、ISO14903 にはこうした試験基準が定められており、国内の

基準として導入検討をする必要がある。

5.3 チラーのリスク評価

⑥まとめ

機械換気のある標準的な機械室に設置されるチラー、および屋外防音壁のある悪条件での空冷ヒ

ートポンプをそれぞれ標準モデルとした場合、総計としての着火確率は 8.19×10-12 件/台・年であり

許容できる。ただ一部(1%と想定)の機械室に換気が無いと仮定すれば 8.39×10-7 件/台・年(表

5.3.1 の換気なしの場合の 1%)となり許容できない(表 5.3.1)。 よって機械換気を義務づけるととも

に、機械換気が不十分な場合あるいは長期停電時の点検を考慮して、漏えい検知手段と警報等を

義務付ける。

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表 5.3.1 リスク評価結果

対象 ライフステージ

ライフステージ

比率

機械換気無

対策前

[件/台・年]

機械換気有

対策後

[件/台・年]

備考

供給者 物流 0.0517 4.28×10-6 5.43×10-13 -

使用者

据付[搬入] 0.0517 5.55×10-6 2.64×10-12 換気無:

8.39×10-5

換気有:

8.19×10-12

据付[試運転] (0.0023)

使用[機械室] 0.2144 1.45×10-5 1.85×10-12

使用[屋外] 0.5002

修理 0.1207 6.38×10-5 3.70×10-13

オーバーホール 0.0098

供給者 廃棄 0.0517 1.83×10-5 9.05×10-12 -

上記リスク評価において留意すべき算定上の条件を以下に示す。

同一機械室に設置されるチラーは 4 台として隣接する機器の発停回数を考慮。

機械換気はダクト用ファンの故障率 2.5×10-4 件/年・台を使用し、2 系統構成とした。

機械換気が存在しない確率を 1%とした。

換気無しでは,漏れ頻度を可燃空間そのものが存在頻度とした。

換気のある微小漏れでは可燃空間が存在しないとして可燃空間の存在確率を 0 とした。

着火源は可燃空間全体に均等にあると仮定。たとえばライター裸火は床面表面付近にも存在す

るとした。

可燃空間の時空積は,水冷チラーは R1234ze(E),空冷ヒートポンプは R32 の値を使用した。

⑦残された課題

チラーのリスク評価から、安全は機械室の必要要件により確保されることを示した。それら要件は、5

冷凍トン以上では 4 回/h 以上の機械換気が動作していることと、警報と連動した漏えい検知手段が冷

媒を検知せずかつ故障状態でないこと、それらとの起動インターロックである。5 冷凍トン未満では冷媒

充填量が小さく、機械室に全量漏えいしても冷媒濃度が 0.25×LFL を超えないため、必要とする要件は

ない(表 5.3.2)。

一方で、チラー以外の機器が機械室に設置される場合がある。今回の検討では、機械室の設置され

るユニットから冷媒配管を居室に配する機器(水冷ビル用マルチ)が相当し、ビル用マルチのリスク評価

から 5 冷凍トン未満についても漏えい検知手段と警報にあわせて 4 回/h 以上の機械換気が必要要件

である。起動インターロックは不要である。

表 5.3.2 完全に使用するためのガイドライン

製品 冷凍トン

3~5 5~20 20~50 50 以上

水冷ビル用マル

機械室設置 ○ ○

機械換気

漏えい検知手

段・警報

インターロック チラー機械室設置 - ○ ○ ○

6.1 安全使用のための技術基準

これまで述べてきたように、業務用パッケージエアコンおよびビル用マルチエアコンでのR32、チラ

ーでのR32、R1234ze(E)の検討結果に基づいて、最も使用ケースが多い平均的ケースにおいては安

全であると考える。ただし、一部の悪条件が重なる場合には安全に使用するための対策が必要であ

る。ここでは安全使用のための技術基準に関してまとめて述べる。技術基準は、下記の①~④の4つ

である。

① 部屋の容積当たりの冷媒充填量の制限による濃度管理を最優先する:

壁掛けや天井設置などの場合は、換気が全くない最悪の場合でも、多くの場合、部屋全体が

可燃濃度になる80%近くまでは、室内に漏れた冷媒が周囲に拡散するために発生する可燃空間

は無視できるほど小さい(図6.1参照)。着火事故を回避するために、最も重要なのが、最大冷媒

量が漏れても燃焼下限濃度(LFL)から十分小さい濃度になる冷媒充填量の制限である。これは

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酸欠事故や毒性事故にも相通じるところである。表6.1に、ISO817に記載の燃焼下限濃度、毒性

限界濃度及び酸欠限界濃度を示す。ISO817では、燃焼下限濃度に安全率を乗じた値、毒性限

界濃度、酸欠限界濃度のうち、最も小さい値を濃度の管理基準として設定する。燃焼下限濃度

の安全率として、IEC60335-2-40に基づき0.25を用いると、濃度の管理基準は表6.1に記載の値と

なる。微燃性冷媒において、燃焼下限濃度に安全率0.25を乗じた値を濃度の管理基準とすれ

ば、床置き機器を除き、十分安全であり、他の安全対策は、基本不要と考える。

表6.1 濃度管理基準(日本冷凍空調工業会案)

vol% 燃焼下限

濃度(LFL)

毒性限界

濃度

酸欠限界

濃度

制限値

(管理基準)

R22(参考) - 5.9 14.0 5.9 (=毒性基準)

R410A(参考) - 17.0 14.0 14.0 (=酸欠限界)

R1234yf 6.2 10.0 14.0 1.55 (=0.25×LFL)

R1234ze(E) 6.5 5.9 14.0 1.625(=0.25×LFL)

R32 14.4 22.0 14.0 3.6 (=0.25×LFL)

(理由)5 章で述べたとおり、

部屋の大きさに対して冷媒

充填量が十分小さければ

(LFL25%以下)、部屋の中

に可燃空間ができる割合は

十分小さい。

図 6.1 R32 の漏えい量と可燃空間の関係(床面積 46.2 ㎡、容積 110m3、換気なし)

② 濃度管理できない場合は常時機械換気、あるいは検知手段およびそれに連動して作動する機械

換気を設置する;

(1)機械室の場合:

多くが濃度管理値を超える機械室等の場合には、直火の持ち込みを禁止した上で、微燃性冷

媒を使用する機器とのインターロック付き常時機械換気および検知器と警報の両方を義務付け

る。

水冷チラーや水冷ビル用マルチなどの冷凍設備の場合は機械室に設置される場合が多いの

で機械換気と冷媒ガス漏えいを検知して警報する安全装置を同時に要求する。機械換気は4回

/h換気とし、これらの安全対策により、機器への冷媒充填量の制限は不要である。

(理由)

• 多種の機器が設置される機械室では、建築基準法に従い機械換気が設置されており気

密性も高い。微燃性ガス使用の冷凍設備を機械室に設置する場合には、安全担保する

ために機械換気量として 4 回/h 換気を要求する。

• 4 回換気/h があれば、機械室(内容積 75m3 以上)可燃空間が発生しにくいもしくは非常

に短時間であることを確認している。

• 安全装置は独立電源とし、機械換気が動作していることと、警報と連動した漏えい検知手

段が冷媒を検知せずかつ故障状態でないこと、それらとのインターロックをチラーの起動

に要求する。理由は機械室の場合にはチラーとその付帯設備に着火源となりうる大型の

スイッチ類が存在するからである。

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• 小容量の冷凍設備で小さな機械室設置の場合に、部屋容積が小さいために4回/h 換気

では絶対量として換気量が小さく、噴出漏れ(75kg/h)でも液漏れのような大量漏えいの

場合には、可燃空間を生成する。よって機械換気だけではなく、漏えい検知手段および

警報等も同時に要求する。

(2)居室内の場合:

ビル用マルチエアコンのように室内容積に比べて冷媒量が大きく、濃度管理のみでは十分でな

い場合には、冷媒漏えい検知手段と漏洩冷媒を十分に安全な場所へ排出できる機械換気装置

を備え、可燃域を生成させないようにする。

適切な換気があれば可燃空間を発生させないということは5章で述べてきたとおり。室内の場

合には機械室と異なり、常時換気でなくても良いが、機械換気装置の動作を保証し、漏えいした

時に換気が確実に機能することを要求する。

ただし以下の要件を満たすことを必須とする。

・ 最低換気量を規定する。換気量は LFL/4 であることを十分保証する値にする。

・ 換気装置と冷凍装置のインターロックを必須とする

・ 漏えい検知手段を設置し、検知した場合は換気を動作させる。検知手段は独立電源と

する。

・ 漏えい検知手段は室内機と一体にするか、一体でない場合は漏えい検知手段と冷凍装

置とのインターロックを必須とする。

(理由)

・ 漏えい検知手段および換気装置が確実に施工されていることを、インターロックを必須と

することにより保証する。

・ 室内機と換気が停止している場合でも、漏えいを検知した場合には換気が自動復帰し

作動するようにする。

・ 漏えい検知手段は、機器が停止している場合でも作動するように独立電源とする。

・ 漏えい検知手段の仕様、並びに設置・動作保証(試運転時を含む)の在り方については

今後詳細検討する。

③ 機械換気が保証できない場合には、検知手段およびそれに連動して作動する遮断手段あるいは

警報を選択的に設置する。

室内に冷媒漏えい検知手段を備え、漏えい検知時に冷媒漏えいを遮断する手段あるいは警

報を選択的に設置することを要求する。ただし以下の要件を満たすことを必須とする。

・ 遮断装置の遮断量、設置要件を規定する(今後、詳細検討する)

・ 遮断手段あるいは警報と冷凍装置のインターロックを必須とする

・ 漏えい検知手段を設置し、検知した場合は遮断手段あるいは警報を動作させる。検知

手段は独立電源とする。

・ 漏えい検知手段は室内機と一体にするか、一体でない場合は漏えい検知手段と冷凍装

置とのインターロックを必須とする。

(理由)

・ 漏えい検知手段および遮断手段あるいは警報が確実に施工されていることを、インター

ロックを必須とすることにより保証する。

・ 漏えい検知手段は、機器が停止している場合でも作動するように独立電源とする。

・ 漏えい検知手段の仕様、並びに設置・動作保証(試運転時を含む)の在り方については

今後詳細検討する。

・ 警報の効果については、さらに検討し、遮断手段の選択、組み合わせ要件を規定する

(今後、詳細検討する)。警報時、部屋の在室者が適切な安全対策をとれる状況では、

警報は有効な手段である。

④ 上記技術基準の他に、各機器の特徴に応じた個別技術基準が必要:

これまでの各章で詳細述べてきたとおり、上記①②③の技術基準の他に機器個別の要求基準が

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必要である。例えば

・ ビル用マルチにおける総充填量制限X[kg]の設定

・ 室外機で半地下や狭小地設置での技術基準

・ 床置き室内機の安全対策(製造者責任で対応可能)

など

なお、低温機器に関しては、まだリスクアセスメントが完了していない。上記安全対策は、低温

機器も想定した上で設定したが、その安全対策により、着火リスクが許容粋に収まるか、低温機器

を運用する際に設置等の問題があるものはないか、等は不明であり、今後検討を進める必要があ

る。

6.2 安全基準の法的拘束力について

各機器において、微燃性冷媒を安全使用するために必要な技術基準を表6.2に示す。

表6.2 各機器を安全に使用するために必要な技術基準

製品 冷凍トン 安全対策

3~5 5~20 20以上

業務用パッケージエアコン

○ ○

① 充填量制限による濃度管理を優

先。

濃度管理ができなければ

② 常時機械換気か

③ 漏えい検知に基づく換気、漏えい

遮断手段、警報のいずれかを選

択する技術基準とする。

④ 機械室設置の場合は

常時換気(4回/h)と漏えい検知に

基づく警報の両方を技術基準とす

る。

ビル用マルチエアコン・GHP

○ ○

ビル用マルチの水冷室外機

(機械室) ○ ○

チラー(機械室)

- ○ ○

低 温 機 器

(コンデンシン

グユニット)

スーパーマーケ

ット等での使用 ○ ○ ○

冷 凍 冷 蔵 庫 等

と接続 ○ ○ ○

各機器で安全使用するために必要な技術基準を守るためには、何らかの法的拘束力が必要であ

る。

すべての機器を想定すると、各冷凍トンの区分で冷媒充填量制限による濃度管理を優先する。充

填量制限で濃度管理ができない場合は常時換気か、漏えいを検出し換気あるいは遮断、警報のい

ずれかの手段から選択し、場合によっては組み合わせて使用することを必須とする。

業務用パッケージエアコンとチラーに関して安全技術基準は明確になっている。

ただ、ビル用マルチエアコンについては、今後、最大許容冷媒量、実用かつ有効な冷媒漏えい遮

断弁、冷媒漏えい検知手段の設置位置(主に機器本体に設置する場合)、動作保証方法等の仕様

が決まっていない部分についての詳細な詰めが必要である。

さらに低温機器は現在リスクアセスメントを実施中であり、低温機器の設置ケースと安全対策との

関係はまだ明確になっていないが、安全対策は限られており、今回提示した技術基準の組み合わせ

で安全対策になると考えるが、その有効性や設置時・運用時に問題が生じないかについては、今後

検討を進める必要がある。 2.1.4 要望内容の検討の結果 (1)整理 ○R32 等は、現行規制では不活性ガス以外のフルオロカーボンに位置付けられる。(微燃

性ガスという定義はない) ○R32 等は、少し可燃性があるため、R32 等が漏えいした場合、可燃性領域ができない

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よう、1/4LFL 以下の濃度になる冷媒充塡量の制限、換気装置の設置、漏えい検知装

置と遮断装置の設置又は漏えい検知装置と警報装置の設置により不活性ガスのフル

オロカーボンと同等の安全性が確保できるとしている。 ○R32 等を冷凍設備に使用する場合には、安全装置の設置等の義務化により、不活性

ガスのフルオロカーボンと同様の規制(第 2 種製造者の規制からその他製造者の規制

に合理化)としても保安上の問題はないとしている。 (2)提言等 要望の妥当性を立証した資料(上記 2.1.3 枠内)について検討を行ったところ、R32 等

の燃焼性を評価するための重要な物性値のうち、例えば、R1234ze(E)は乾燥条件では

燃焼しないが高湿度になると可燃性を有する等、湿度の影響により燃焼性が左右される

こと、自己着火温度における高温表面温度限界の緩和が議論されており、安全評価の閾

値が国際的にも未だ確定していない等課題がある。 また、規制合理化要望の提案とその提案の妥当性を立証すべき事項との間に検討を

要する事項があり、的確な論点に基づいた検討ができないという課題がある。 このようなことから、規制合理化要望に対する省令改正、例示基準改正に係る提案等を

行う場合には、適切な評価方法の確立を図り、要望に対して的確な立証データを揃える 必要がある。

2.2 指定設備に使用可能な冷媒の検討 2.2.1 現行規制に対する要望等

第 1 種製造者としての規制を受けるが、法令に定める構造、性能等を満足すれば第 2 種製造設備の規制とすることができる。

現行規制では、指定設備に使用できるガスは「フルオロカーボン(不活性のものに限 る。)」となっている。

R32 等は、現行規制において、不活性以外のフルオロカーボンに該当する。このため、

現行規制のままでも規制の合理化が可能かどうかについて検討が必要である。

【法第56条の7】

高圧ガスの製造のための設備のうち公共の安全の維持又は災害の発生の防止に支障を及ぼすおそ

れがないものとして政令で定める設備(以下「指定設備」という。)の製造をする者、指定設備の輸入をし

た者及び外国において本邦に輸出される指定設備の製造をする者は、経済産業省令で定めるところによ

り、その指定設備について、経済産業大臣、協会又は経済産業大臣が指定する者(以下「指定設備認定

機関」という。)が行う認定を受けることができる。

【政令第15条第2号】

冷凍のための不活性ガスを圧縮し、又は液化して高圧ガスの製造をする設備でユニット形のもののう

ち、経済産業大臣が定めるもの

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【政令関係告示第6条第2項】

令第15条第2号の経済産業大臣が定めるものは、次の各号のいずれにも該当する設備とする。

一 当該設備が定置式製造設備であること。

二 当該設備の冷媒ガスがフルオロカーボン(不活性のものに限る。)であること。

三 当該設備の冷媒ガスの充てん量が3000kg未満であること。

四 冷凍保安規則第5条の規定により算出した当該設備の1日の冷凍能力が50トン以上であること。

2.2.2 規制合理化要望・立証の概要

指定設備に不活性ガス以外のフルオロカーボンを充てんしても保安上問題がないとする

安全確保の技術要件は、常時換気、漏えい検知装置、警報装置及びインターロックの設

置が必要である。

2.2.3 要望内容の検討 (1)整理 ○R32 等は、現行規制では不活性ガス以外のフルオロカーボンに位置付けられる。 ○R32 等は、少し可燃性があるため、R32 等が漏えいした場合、可燃性領域ができない

よう、常時換気、漏えい検知装置、警報装置及びインターロックの設置により不活性ガ

スのフルオロカーボンと同等の安全性が確保できるとしている。 ○R32 等を冷凍設備に使用する場合には、安全装置の設置等の義務化により、不活性

ガスのフルオロカーボンと同様の規制(第 1 種製造者の規制から第 2 種製造者の規制

に合理化)としても保安上問題はないとしている。 (2)提言等 指定設備にかかる規制合理化要望の提案とその提案の妥当性を立証すべき事項との

間に検討を要する事項があり、的確な論点に基づいた検討ができないという課題がある。

このため、この要望についても、規制合理化要望に対する省令改正、例示基準改正に 係る提案等を行う場合には、要望に対して的確な立証データ等を揃える必要がある。

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2.3 二酸化炭素に係る要望の検討 2.3.1 概要

二酸化炭素は、図 4 のように第 1 種製造者(許可)、第 2 種製造者(届出)に区分され、 届出の不要なその他製造者の規制はない。

要望は、都道府県知事への届出が必要な第 2 種製造者のうち、冷凍能力 3 トン以上 5 トン未満の範囲のものを届出が不要となる「その他製造者」を創設し、規制の合理化をし

たいというものである。(図 5) なお、現行規制については、2.1.1(1)及び(2)と同様である。

図 4 現行規制図 冷凍能力

(RT)

冷媒種類

RT<3

3≦RT<5

5≦RT<20

20≦RT<50

50≦RT

二酸化炭素 適用

除外 第 2 種

製造者 第 1 種

製造者 図 5 改正要望規制図 (創設)

冷凍能力

(RT)

冷媒種類

RT<3

3≦RT<5

5≦RT<20

20≦RT<50

50≦RT

二酸化炭素 適用

除外 その他

製造者 第 2 種

製造者 第 1 種

製造者 注)RT:冷凍能力のトン

2.3.2 規制合理化要望の概要 規制合理化要望については、第 1 回及び第 2 回委員会において提案がなされ、検討を

行ってきた。これらについての検討の結果を踏まえ、第 3 回の委員会において、一般社団 法人日本冷凍空調工業会からの上述の 2.3.1 の要望があった。次には要望の詳細及び 要望の妥当性等を説明した資料を以下に示した。なお、詳細については添付資料 3 を参 照のこと。なお、項番号等は要望資料の原文のままであるため、参照の際にはその項番 号をそのままご参照下さい。

1.2 規制緩和の内容

CO2冷媒の規制緩和は、ヒートポンプ給湯機と冷凍・冷蔵用冷凍機を対象として

3冷凍トン以上5冷凍トン未満を[第2種製造者]から[その他製造者]に緩和することである。

CO2冷媒の規制緩和に当たって、安全上注意すべき点は高圧であることと漏えい冷媒管理におけ

る限界濃度が小さいことである。これら安全上の注意点が3から5冷凍トンでどの程度考慮すべきか

を評価しておく必要がある。

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2.CO2冷媒に関する国際規格の動向

CO2冷媒に関する特別な規制としてはANSI/ASHRAE-15でCO2冷媒の特殊サイクル[自然循環(ポ

ンプ搬送)サイクルやアンモニア/ CO2などのカスケードサイクル]における設計圧力の余裕の取り方

[設計圧力は系内で想定される最高圧力の2割増し以上の値とする]の規制はあったがその他にCO2

冷媒に関する特別な規制はなかった。また海外規格の動向としては冷凍設備の強度確認試験圧力

は高圧ガス保安法の3/4倍、即ち設計圧力の3倍に統一される方向である。

3.CO2冷媒を使用した冷凍設備の市場実績

2013年度までのCO2冷媒の冷凍機器の市場実績数は下記のようになっているが,これまで人身

事故の発生の情報は無く,安全に稼働している.

日本;

・家庭用エコ給湯機:400万 台以上

・業務用エコ給湯機:21,000 台以上

・別置型冷凍機(コンデンシングユニット) 約300台(3トン未満)、約200台(3トン以上5トン未満)

2014年度末には累計1,100台を超える予定

・内蔵ショーケース:5,000台以上

・自動販売機:30万 台(推定)

・アンモニア/ CO2システム:1,000台超 (内約30%が20冷凍トン~50冷凍トン)

4.CO2冷媒を使用した冷凍設備の事故例

高圧ガス保安協会(KHK)の高圧ガス事故データベースに、昔ではあるが事故内容を分析するため

に1990年以前の事故情報も集約して【1965年~2013年】におけるCO2冷媒を用いた冷凍設備に係

わる事故を調査した。報告義務のある3冷凍トン以上の冷凍設備について人身事故は0件で、その

他の事故5件 [全て運転中の漏えい事故。3件は機器の異常発報により発見され、1件は熱交換さ

れた水溶液の変色により発見され、残りの1件はアンモニア冷凍機異常停止によるCO2系統の安全

弁作動]のみであった。アンモニア冷凍設備における人身事故は多く97件であった。

また各ガスについて冷凍設備に限定せず高圧ガス事故全体として見た場合に各ガスの人身事故

者数を見てみると総計5,483名に対して炭酸ガスは140名(2.6%)、フルオロカーボンは103名(1.9%)、ア

ンモニアは336名(6.1%)であった。人身事故件数で見ても同様の傾向にある。以上より炭酸ガスはフ

ルオロカーボンほど安全ではないが、少なくともアンモニアより安全と考えて良い。

この他に報告義務のない3冷凍トン未満の冷凍設備に関して、環境に起因する異常状態想定ミス

が原因の全面腐食による家庭用CO2ヒートポンプ給湯機の圧縮機シェル破損事故が発生している。

この事故の発生メカニズムは,

①ドレン排水管施工の不具合や、枯葉、泥などによりヒートポンプユニット底部の排水口および排

水穴が詰まることにより、機内空気熱交換器で発生するドレン水が圧縮機下部に溜まる異常な状

態になること。

②この溜まったドレン水に設置環境により塩分などが溶け込むこと。

③圧縮機周囲に巻かれた防音材がその下端からこの塩分を含んだ水を吸い上げること。④圧縮機

の運転で防音材に含まれた水分が蒸発し、塩分などが圧縮機シェル表面で濃縮。

⑤ヒートポンプ給湯機運転のたびに圧縮機シェル表面は高温となるため塩分などが濃縮した水分に

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よる腐食が促進されシェル全周にわたり減肉が進行し内圧に耐えられなくなり破損に至る。

これまでこの破損事故は14件発生しているが、人的な被害はなく、またメーカのリコール対応により

安全に収束している。

5.CO2 を安全に使用するために必要な技術基準の考え方

5.1 3 冷凍トンから 5 冷凍トンの小型冷凍設備での安全性の考え方

CO2冷媒は高圧ガス保安法でも不活性ガスの筆頭にあげられ、国際基準の枠組みでもA1冷媒

として位置づけられているが、冷媒の特質および安全性の両面から配慮すべき事項を抽出し安全

に使用するために必要な技術基準の考え方を検討した。

5.1.1 CO2冷媒の特質

CO2ガスは市中においてドライアイスや液化炭酸ガスとして一般の人々に広く扱われている物

質である。飲食店や縁日でも見かけられる緑色の液化炭酸ガスボンベは高温にさらされると急激

に圧力が上昇し安全弁が作動するため商売の妨げになるとの陳情もあり、2007年に安全弁の作

動上限圧力は「耐圧試験圧力の8/10」から「耐圧試験圧力」まで高くすること、つまり、15.68MPa

から19.6MPaに引き上げて使用されるに至っている。(付帯条件は無い)

15.68MPaから19.6MPaに引き上げて使用されるに至っている。

CO2ガスの冷媒としての熱・物理的特性について一般的に使用されているフルオロカーボン

(R410A・R134a)と比較した結果を表5.1.1に示す。CO2冷媒は自然冷媒でありオゾン破壊係数が

ゼロ、地球温暖化係数(GWP)は1と環境にやさしい冷媒であり、また飽和蒸気密度が高く単位体

積当たりの冷凍能力が大きいことを特徴とする。一方で常温の飽和蒸気圧はR410Aの1.65MPaに

比べ6.4MPaと約4倍と高圧となる。また、臨界温度が31.1℃とフルオロカーボンに比べ低い。

31.1℃以上の超臨界状態では圧力を高くしても液化しなくなる性質があるため、臨界温度以上

での冷媒圧力は回路内の冷媒充填量と冷媒の温度によって決まり、高圧側設計圧力は一般的に

12~15MPaになる。最新のコンデンシグユニット型冷凍機では冷凍機と蒸発器間の高圧側冷媒搬

送管路を中間圧化し、高圧発生部分を冷凍機本体内のみとして、冷凍機外部の配管内圧力を運

転時は常時6MPa以下に減圧にしたシステムもあるが、広く普及しているヒートポンプ給湯機では

高圧14MPa、低圧9MPaとして、また、コンデンシグユニット型冷凍機では高圧12MPa、中・低圧

8MPaで設計されている。フルオロカーボンに比べると設計圧力は高いが、単位体積当たりの冷凍

能力が大きいことから冷媒充填量は少なくすることができる。

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表 5.1.1 CO2 の熱-物理的特性(R410A・R134a との比較)

項目 CO2 R404A R410A R134a 地球温暖化係数(GWP) (-) 1 3920 2090 1340 オゾン層破壊係数(ODP) (-) 0 0 0 0 飽和蒸気圧(絶対圧)

-20℃ (MPa) 1.97 0.30 0.40 0.13 0℃ (MPa) 3.49 0.60 0.80 0.29 20℃ (MPa) 5.73 1.08 1.44 0.57 25℃ (MPa) 6.40 1.25 1.65 0.67 30℃ (MPa) 7.21 1.41 1.88 0.77

0℃での飽和蒸気密度 (kg/m3) 97.64 30.47 30.44 14.42 9℃での蒸発した場合の単位体積当たりの冷凍能力

(※1) (MJ/m3) 14.70 4.51 6.40 2.90

沸点 (℃) -78.4 -46.1 -51.4 -26.5 臨界点 (℃) 31.10 72.0 71.4 101.03

(MPa) 7.377 3.72 4.900 4.056 (※1:空調 JIS C9612 に準拠したシミュレーション条件で算出)

5.1.2 CO2冷媒の安全性

CO2冷媒自体は無害であるが、高濃度のCO2冷媒を吸入すると人体に影響があるため、空気中

のCO2濃度が人体に与える影響(表5.1.2)と不活性冷媒に共通する酸素欠乏の危険性(表5.1.3)

を考慮し、不活性ガスのフルオロカーボンと同様に冷媒漏えいに対する安全配慮が必要である。

高濃度のCO2冷媒の影響と酸素欠乏双方の点を加味した冷媒漏えい時の限界濃度はKHK施

設基準KHKS0302-1に示されている。KHK施設基準及びANSI/ASHRAEの規格からフルオロカー

ボンとCO2にて冷媒ガスの限界濃度及び限界濃度時の酸素濃度を比較した結果を表5.1.4に示

す。職業暴露限界(OEL)はフルオロカーボンに比べ約5倍ではあるが、漏えい時の限界濃度はフ

ルオロカーボンに比べ1/3~1/3.5(ppmベース)である。

設置に際しては漏えいした冷媒ガスが滞留しないように開口部または機械換気装置の設置、ま

たは漏えい検知警報設備などを設置し、安全を確保する必要がある。

表5.1.2 CO2濃度と人に対する作用

CO2 濃度(vol%) 人体への影響 0.5 長期安全限界 3.0 生理機能の変化が体重、血圧、心拍数等の変化として表れる 5.0 呼吸困難が極度に困難になる。30 分暴露で中毒症状になる。

7~9 許容限界。激しいあえぎの症状となり約 15 分で意識不明となる 25~30 呼吸低下、血圧低下、昏睡状態になり数時間後に死に至る。

出典:Kent,A.D :Occupational Health Review, Vol.21 No.1-2 1970, p.1 Canada

表 5.1.3 酸素欠乏の危険性

出展:酸素欠乏「船員災害防止協会」

酸素濃度 状況 21% 通常濃度 18% 安全限界。しかしながら、連続換気が必要。 16% 呼吸、脈拍増加、頭痛、悪心、はきけ 12% めまい、はきけ、筋力低下、体重支持不能、墜落(死につながる。) 10% 顔面蒼白、意識不明、嘔吐(吐物が気道閉塞で窒息死) 8% 失神昏倒、7~8 分以内に死亡 6% 瞬時に昏倒、呼吸停止、けいれん、6 分で死亡

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表 5.1.4 冷媒ガスの限界濃度および酸素濃度

冷媒 ANSI/ASHRAE_Standard 34-2013 KHKS0302 安全区分 職 業 暴 露 限 界

OEL(ppm(v/v)) 冷媒濃度限界 RCL(ppm(v/v))

限界濃度 (ppm(v/v))

限界濃度における酸

素濃度(%) R744 A1 5,000 40,000 40,000 20.14 R32 A2L 1,000 36,000 28,500 - R134a A1 1,000 50,000 60,000 19.70 R404A A1 1,000 130,000 120,000 18.45 R410A A1 1,000 140,000 140,000 18.00

5.1.3 冷媒の特質上安全を考慮すべき項目とその対応の考え方

冷媒の特質および安全性の両面から検討した結果、CO2冷媒を冷凍機として扱う場合の配

慮すべき事項は次の点であり、それら項目に対する技術基準の考え方を示す。

(1)フルオロカーボンに比べ設計圧力が高い

・CO2 冷媒は他の冷媒と比べて圧力は高いが、他の冷媒と同様に用途によって用いる材料に

生じる応力が許容応力以下となるように高圧ガス保安法に適合した設計がなされ、耐圧設

計上は安全と言える。

・小容量の CO2 冷凍設備(3冷凍トン以上5冷凍トン未満)においては圧力容器に該当する容器

(内径が高圧ガス保安法では 160mm を超えるもの、ISO、ASHRAE では 152mm を超えるも

の)を持たない設計が行われている。

・CO2 冷凍設備の高圧側熱交換器[ガスクーラ]は細管の集合体であるため、一部が破損しても

瞬時に高圧ガスの全エネルギーが放出されることは無く、安全と言える。

・CO2 別置型ショーケースシステムにおいて、不特定多数の人が接近するショーケース蒸発器

の圧力は R410A エアコンにおける暖房時の室内熱交換器の圧力と比較して同等以下であ

る。

・高圧な CO2 冷媒を使用する場合は、耐圧設計のために単に肉厚を上げるだけでなく、配管や

熱交換器に使用する伝熱管の細径化を図り、内容積を小さくしている。

一例として表 5.1.5 でコンビニエンスストアの冷凍冷蔵システムにおける配管および熱交換

器の比較を示す。CO2 ではフルオロカーボンに比べ比体積が約 1/4 と小さく、前述したように

冷媒配管の細径化により限界内圧が高くなり、また、熱交換器内容積も約 1/3 程度まで小

型化されている。その結果、冷凍設備で使用する冷媒量は R404A に比べて 50%以下になる

(冷媒充填量に関しては次項(2)にて記述)。

表 5.1.5 コンビニエンスストアにおける冷凍冷蔵システムの配管および熱交換器比較

冷媒配管寸法(mm) 低圧側熱交換器回路内容積 (cm3)

低圧側 高圧側 店内ケース A 店内ケース B 店内ケース C 店内ケース D

R404A 外径:31.75 外径:15.88 2569 8639 3680 6222

CO2 外径: 9.35 外径: 6.35 683

(0.27)※

1708

(0.20)※

1708

(0.46)※

3147

(0.51)※

※( )内の数値は回路内容積の R404A 比を表す

・高圧ガス保安法の技術基準よりも低レベルの基準(設計圧力の 3 倍圧の強度確認試験)を

安全の担保とした国内の CO2 家庭用ヒートポンプ給湯機や海外の CO2 低温用冷凍機の市

場実績はある。

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・最新の CO2 システムでは屋外の冷凍機と屋内のショーケース間の高圧側冷媒搬送管路を中

間圧化[4~6MPa(R410A エアコンの 2 倍以下) と]し、高圧発生部を屋外の冷凍機内部のみ

とする技術開発や 2 段圧縮機構により圧縮機シェルにかかる圧力を中間圧化した圧縮機構

造の採用が進められている。

(2)漏えい冷媒の限界濃度が低い

漏えいした冷媒ガスの濃度管理については KHK 施設基準(不活性ガスを冷媒とする製造

施設においては施設基準 KHKS0302-1 または KHKS0302-2)により運用が図られており、

CO2 冷媒においても不活性のフルオロカーボンと同様に、限界濃度を指標とし、冷凍設備に

充てんされている冷媒ガスの全量が(当該冷媒設備が設置されている)最小の室内に漏えい

した場合において、当該室内にいる人に危害を及ぼすことなく、避難等緊急措置が支障なく

とれるような措置を講じ、維持・管理されている。

また「4.CO2冷媒を使用した冷凍設備の事故例」で示したようにCO2冷凍設備での事故(全

5件)はすべて漏えい事故であるが、人身事故につながるような重大事故は発生していない。

限界濃度を指標としたKHK施設基準に準拠して安全性が確保されていると考えられる。

冷媒充填量は冷媒漏れ時の濃度を左右する重要な因子である。CO2冷媒は表5.1.1で示し

たように単位体積当たりの冷凍能力が高い事に加え、分子構造上配管径を細くしても圧力

損失がつきにくく耐圧面から細管を採用しているためフルオロカーボンに比べ冷媒充填量を

低く抑えることができる。

そこで今後CO2冷媒の普及が見込まれる冷凍・冷蔵分野における対象設備にて、CO2冷

媒を用いたシステムと不活性のフルオロカーボンR404Aを用いたシステムとの冷媒充填量比

較と限界濃度以下にするための必要面積の比較を行う。実際的な比較とするためCO2冷凍

機は5冷凍トン未満[“第2種製造者”、“適用除外”]で構成し、R404A冷凍機は20冷凍トン未

満[“その他製造者”、“適用除外”]で構成している。(表5.1.6及び表5.1.7)。

表5.1.6はコンビニエンスストアで用いられる一般的な冷凍冷蔵システムでの事例であり、

R404Aに比べ4割程度の充填量となる。また、不特定多数の人が滞在する売り場で1系統が

全量急速漏えいしても、限界濃度条件を満足するために必要な面積は、CO2システムは複

数系統に分かれているためCO2システム(17.4m2)とR404Aシステム(15.4m2)の必要面積は

同程度で、167m2の売り場面積に対して約10%以下程度と小さい。

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表 5.1.6 コンビニエンスストアにおける冷凍冷蔵システムの冷媒充填量比較例(一例)

店舗面積(167m2)

R404A CO2 システム構成 ・冷蔵ショーケース 28 尺

・ウォークイン ・冷蔵ショーケース 28 尺

・ウォークイン 冷凍システム系統 1 系統 3 系統 冷凍機能力 (法定トン別台数)

・3.16 冷凍トン 1 台

[適用除外]

(法定トン別台数) ・1.56 冷凍トン 2 台 ・0.72 冷凍トン 1 台

全て[適用除外] 冷媒充填量 全 20.0kg 全 8.3kg

1 系統当り充填量 MAX3.6kg 平均 3.3kg

充填量 R404A 比 1(-) 0.4(-)

平均容量の 1 系統が

漏えいした場合に限界

濃度以下とするために

必要な空間

・41.6m3 高さ 2.7m として ・15.4m2[売場面積の

9.2%]

・47.1m3 高さ 2.7m として ・17.4m2[売場面積の

10.4%] 設計圧力 2.8MPa 12MPa

表 5.1.7は大型スーパーマーケットにおける冷凍冷蔵システムでの事例であり、CO2システ

ムの 1 系統あたりの冷媒充填量は従来の R404A 比で 1/3 程度まで抑えられている。

・不特定多数の人が滞在する売り場で 1 系統が全量急速漏えいしても、限界濃度条件を満足

するために必要な面積は、3000m2 を超える売り場面積に対して、表 5.1.7 のように5%程度と

十分小さく、また建築基準法やビル衛生管理法に基づいた CO2 濃度管理基準[1,000ppm 以

下:CO2 冷媒限界濃度の 1/40 以下]で換気も行われているので、冷媒漏えいに対しては十分

安全と言える。

・CO2 システムにおいてもまた従来の R404A システム[その他製造者]においても冷凍機が複数

個の小型プレハブ冷蔵庫(冷凍庫)に接続される場合には限界濃度管理が必要となる場合があ

る。

これら特定作業者が短時間しか滞在しない冷凍・冷蔵倉庫内空間については労働安全衛生

面から、漏えい冷媒に関係のない事故にも対応できるように、作業者の正常状態または正常反

応を2~3分おきにセンサー等で確認する方法なども考えられるが、これまでフルオロカーボン

においても CO2 においても事故例がないことより、従来通り施設基準 KHKS0302-1,2 の運用[特

定作業者が短時間しか滞在しない冷凍・冷蔵倉庫内空間に対しては冷媒漏えい検知警報設備

を可能な限り設置すること]で良いと考える。

また実際に取扱説明書や機器貼付ラベルで漏えい冷媒に対する注意喚起を行うとともに、ま

だ市場性の少ない低温環境用 CO2 センサーを冷凍機メーカがユーザーに供給していることも見

受けられる。

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表 5.1.7 大型スーパーマーケット冷凍冷蔵システムでの冷媒充填量比較(一例)

売り場面積(3000m2超)

R404A CO2

システム構成 ・冷蔵ショーケース 全 858 尺

・冷凍ショーケース 全 230 尺

・冷蔵プレハブ 6 個

・冷凍プレハブ 4個

・冷蔵ショーケース 全 858 尺

・冷凍ショーケース 全 230 尺

・冷蔵プレハブ 6 個

・冷凍プレハブ 4個

冷凍システム系統 12 系統 20 系統

冷凍機能力 (法定トン別台数)

・15.8 冷凍トン 2 台

・10.9 冷凍トン 4 台

・8.93 冷凍トン 4 台

・6.98 冷凍トン 2 台

5 トン以上 20 トン未満の

「その他製造者」で構成

(法定トン別台数)

・3.89 冷凍トン 12 台

・2.99 冷凍トン 8 台

3 トン以上は届出が必要な「第

2 種製造者」

冷媒充填量 全 1,103kg

1系統当たり充填量

Max140kg、平均 92kg

全 580kg

1系統当たり充填量

Max35kg、平均 29kg

1系統当たり充填量

の対 R404A 比 1(-) 0.3(-)

平均容量の 1 系統

が漏えいした場合

に限界濃度以下と

するために必要な

空間

・192m3

高さ 2.8m とすれば

・69m2[売場面積の 2.3%]

・403m3

高さ 2.8m とすれば

・144m2[売場面積の 4.8%]

設計圧力 2.8MPa 12MPa

(4)CO2冷媒を使用した冷凍機システムを安全に使用するための仕組み

CO2冷媒を用いたコンデンシングユニットに対しては,日本冷凍空調工業会にて低温冷媒

調査WG/別置型CO2サブWGにてサービスマニュアルを作成し、設置工事及びメンテナンスサ

ービスを安全に実施するため、CO2冷媒の特徴と取り扱い、及び工事要領と作業上の留意事

項をまとめている。さらに、コンデンシングユニット「CO2冷媒サービスマニュアル」での講習会を

始め、設置工事業者やメンテナンスサービス業者に対してCO2冷媒冷凍設備の安全運用の周

知徹底を図っている。

冷凍機外部の冷媒管路に設置する配管部品(弁や冷媒乾燥器[ドライヤー及びストレーナー]は

ろー付け接続とし、屋外の冷凍機近傍に設置するよう指導し、且つ実行されている。

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6.まとめ

高圧ガス保安法で規定する圧力容器を持たない3冷凍トン以上5冷凍トン未満の CO2 冷凍設備

に対して技術要件の緩和ではなく、管理要件の緩和(第2種製造者から届出義務のないその他製

造者とする緩和 )では、

CO2冷媒に関しANSI/ASHRAE-15で、CO2冷媒の特殊なサイクル[自然循環(ポンプ搬送)サイクル

やアンモニア/ CO2などのカスケードサイクル]における設計圧力の余裕の取り方[設計圧力は系内

で想定される最高圧力の2割増し以上の値とする]の規制はあったが、通常のサイクルでは特別な規

制はないこと、高圧ガス保安法で規定する圧力容器を持たない比較的小容量のCO2冷凍設備にお

いて、材料に生じる応力が許容応力以下となるように高圧ガス保安法に適合した設計がなされてい

ることから、耐圧設計上は安全と言える。

漏えい冷媒の限界濃度に関し、第5項の表5.1.6および表5.1.7でコンビニエンスストアや大型スー

パーマーケットの具体例で示すようにCO2冷媒はR404Aと比較して限界濃度は低いが、冷媒充填量

が少ないため実際の施設における漏えい冷媒の影響はCO2冷凍設備[5冷凍トン未満]とR404A冷凍

設備[その他製造者:20冷凍トン未満]で大差ないと考えてよい。

2.3.3 検討・提言 (1)検討 二酸化炭素冷媒の規制合理化における検討は、主に他の冷媒に比べた場合の設計圧

力の高さ、高濃度になった場合の毒性、ヒートポンプ給湯機における圧縮機の破裂事故 等について行われた。

設計圧力の高さについては、 ①材料に生じる応力が許容応力以下となるように高圧ガス保安法に適合した設計がな

されていることから、他の冷媒と同様に、耐圧設計上からの問題がないとする考え方

がある。 ②平成 26 年 7 月にリコールされた高圧ガス保安法の適用を受けない家庭用ヒートポン

プ給湯機の事故は、圧縮機の防音材が吸湿する設計構造になっており、ドレン排水

処理不良と重なり、圧縮機の全面腐食が原因で破裂に至った。このため、事故は二

酸化炭素が主原因ではないが、圧縮機は、冷凍設備の中で最も圧力が高くなる部位

であるため、破裂した時のエネルギーも大きくなる。また、漏れ量も設計圧力の高さ

に比例することからも、二酸化炭素における設計圧力の高さは無視できないとの考

え方がある。 ③この圧縮機の破裂事故を、高圧ガス保安法へ水平展開した場合、設計が妥当であっ

たとしても現に事故が起こっているため、設計が適切であることを以て規制を合理化

しても問題がないとの結論には問題があるとの考え方がある。また、この事故の対策

は講じられているが、その後に事故が発生していないという実績の積み重ねも規制

合理化のためには重要な要素の一つであるとの考え方が示された。 なお、平成 26 年には、R22 の漏えい事故による人身事故(福岡県及び長崎県)が発生

していた。この冷媒は、不活性ガスのフルオロカーボンではあるが、3 名が ICU に入院す

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る事態となった。このことを踏まえ、今後は第 1 種製造者及び第 2 種製造者に対して、不

活性ガスのフルオロカーボンが滞留するおそれのある場合には検知器の義務付けを検討

する旨の方向性が示された。 (2)提言等

法令に基づく適切な設計がなされたものであったとしても、圧縮機が破裂した際のエネ

ルギーの大きさ、漏えいによる被害の大きさは、他の冷媒に比べて大きくなることが十分

に想定される。 また、圧縮機の破裂事故の対策が講じられているものの、その有効性を示す無事故の

実績の積み上げも、規制合理化の検討のためには重要な要素の一つになるとの考え方

が示された。 以上を総合的に踏まえると、規制合理化の提案を行うためには、設計圧力の高さによる

課題の解決が必要であること。また、漏えいによる人身事故を受け、不活性ガスのフルオ

ロカーボンであっても滞留するおそれのある第 1 種製造者等の製造施設にも検知器を義

務付けることの検討を行うため、この動向も視野に入れた検討が引き続き必要である。 3.今後の検討の方向性

以上までの R32、R1234yf 及び R1234ze(E)並びに二酸化炭素に係る規制合理化の審 議結果を踏まえ、経済産業省高圧ガス保安室から次のような検討の方向性の案が示され た。3.1 については了承されたが、3.2 については、平成 27 年度も検討を継続すべきとなっ た。 冷媒の種類、設備の規模等によって、技術上の基準を満たした冷凍設備を使用する事業 者が都道府県に対して届出又は許可の手続きを行えば現在でも使用は可能である。 3.1 R32、R1234yf 及び R1234ze(E)については

安全性を配慮しつつ、次の方向で検討を継続する。検討に当たっては、ユーザ、事業

者等のために安全性の観点から必要最小限の規制となるよう努める。

(1)法令での対応

・冷凍設備に使用されている冷媒、今後使用される冷媒の管理をしやすくするために、冷凍

則において、冷媒の種類を掲名する方法を当面踏襲することを検討する。

【冷凍則第 2 条第 1 項第 1 号~3 号】

・3 つの微燃性冷媒を、冷凍則において「不活性ガス」に位置付けることを検討する(届出・許

可の手続きの規制緩和)。 【冷凍則第 2 条第 1 項第 3 号】

・これと併せて、不活性ガスの設備であっても負傷者を多く出しているため、第 1 種製造者及

び第 2 種製造者に対して、ガスが滞留するおそれのある場合には検知器を義務付けること

を検討する(現在は、可燃性ガス及び毒性ガスの設備に義務付けている。規制強化)。

【冷凍則第 7 条第 1 項第 15 号】

・その他の技術上の基準等の手当てを行う必要があるか否か等を検討する。

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(2)公益社団法人日本冷凍空調学会

・今後新たに開発される冷媒の評価等を行う常設の委員会を設置することを検討していた

だく。

(3)一般社団法人日本冷凍空調工業会等

・法令での対象にならない設備等について、日本冷凍空調工業会等の冷凍空調機を取り

扱う業界の自主基準の策定等で保安を補完していただく。

・前述の日本冷凍空調学会での対応を支持する。

3.2 二酸化炭素冷媒について

10MPa 程度の高圧で使用されること、平成 26 年に高圧ガス保安法が適用されない小さ

い冷凍設備であるが100万台規模の圧縮機の爆発に関連したリコール等が行われている

こと等から、現時点での緩和の議論は時期尚早とする。

4.まとめ

本年度は、R32、R1234yf 及び R1234ze(E)並びに二酸化炭素に係る規制合理化の要 望に絞って検討を行った。

R32、R1234yf 及び R1234ze(E)における規制合理化要望については、要望の妥当性を 立証する資料において、評価方法が確立されていないデータの提示、安全性の立証資料と

してデータが不足している等の課題がある。また、規制合理化要望の検討を行う場合、提案

とその提案に応じた適切な立証が必要となるが、検討を要する事項が見受けられる等の課

題もあることから、冷凍保安規則の在り方の提言までには至らなかった。 今後、R32、R1234yf 及び R1234ze(E)における規制合理化の要望にあっては、ガスが滞

留するおそれのある場合には検知器を義務付けることとセットで「不活性ガス」に位置付ける

ことを検討する旨の方向性が示されたため、これに加え、これまでの検討の経緯、課題等を

踏まえつつ、安全性に配慮した的確な立証に基づく検討が必要であると考えられる。 また、二酸化炭素における規制合理化要望にあっては、法令に基づく適切な設計であった

としても、圧縮機が破裂した際のエネルギーの大きさ等から、設計圧力が高いことによる課

題の解決を図りつつ、高圧ガス保安法の適用を受けないものの圧縮機の破裂事故後の事

故が発生していないことの実績の積重ね等を踏まえ、引き続きの検討が必要と考えられる。

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添付資料 1

微燃性ガスに関する国際規格比較のまとめ

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微燃性ガスに関する国際規格比較のまとめ 1 冷媒の区分 ISO817 及び ASHRAE34 では、可燃性に関しては、燃焼限界、燃焼熱、燃焼速度等の燃焼性の数

値に応じて、燃焼性の高い順から、強燃性(A3)、弱燃性(A2)、微燃性(A2L)及び不燃性(A1)に区分されている。R32、R1234yf 及び R1234ze(E)は微燃性(A2L)に区分され、新たな冷媒が開

発された場合、その冷媒の燃焼性の数値によって、分類される区分が決定される。 一方、高圧ガス保安法では、一般高圧ガス保安規則において、可燃性ガスの定義より、R32 は不

活性ガスに区分され、R1234yf 及び R1234ze(E)は可燃性ガスに区分される。また、冷凍保安規則に

おいては、R32、R1234yf 及び R1234ze(E)はいずれも未掲名のため、すべて不活性ガス以外のフル

オロカーボン(第2グループ)に区分される。 国際規格比較では,特に A2L の微燃性ガス(R32、R1234yf、R1234ze(E)、)に注目し、安全のた

めの技術基準としてどのような規定がさえているのかを項目に従ってまとめた. 2 室内冷媒濃度制限及び総冷媒充填量制限 (1)室内冷媒濃度制限

可燃性冷媒に関して、ISO5149 及び IEC60335-2-40 では、一般的に、室内に冷媒が流れる機器を

有するシステムにおける(無換気状態での)最大冷媒量は、次式で求まる mmax 以下の値に制限され

ている。 ISO5149 : mmax = 0.2×LFL×V IEC60335-2-40 : mmax = 0.25×LFL×V(冷媒充填作業が不要の可搬式の物に限る) ここで、

mmax: 室内の許容最大冷媒量 (kg) LFL: 燃焼下限界 (kg/m3)(R32:0.307、R1234yf:0.289、R1234ze(E):0.303)

V : 室内の内容積 (m3) なお、人が存在する室内に冷媒が流れる分離型システム(現地での配管工事が必要)で換気が行

われない場合における最大冷媒量は、次式で求まる mmax で規定されている。 mmax = 2.5×LFL5/4×h0×A1/2

ここで、 h0 : 室内機の床面からの設置高さ (m) (天井設置型 2.2、壁掛け型 1.8、窓設置型 1.0、床置き型 0.6) A : 室内の床面積 (m2)

ただし、適用可能な冷媒には上限があり、例えば、A2L 冷媒では以下となっている。 ISO5149 : mmax<1.5×26×LFL IEC60335-2-40 : mmax<26×LFL

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(2)最大充填冷媒量制限 可燃性冷媒を使用した機器に関し、換気等の安全対策を施した上での最大充填冷媒量は、次式で

求まる m3 に制限されている。 <ISO5149> A3 または A2 に区分される冷媒(燃焼性が高い冷媒)

m3 = 130×LFL A2L に区分される冷媒(燃焼性が低い冷媒)

m3 = 195×LFL (= 1.5×130×LFL) <IEC60335-2-40>

m3 = 130×LFL なお、IEC60335-2-40 は現在改正検討中であり(2016 年後半~2017 年前半改正案成立見

込み)、その改正案では、A2L に区分される冷媒の最大充填冷媒量は次式となる予定であ

る。 m3 = 260×LFL (= 2×130×LFL)

ちなみに、上式に基づくと、R32、R1234yf 及び R1234ze(E)においては最大充填冷媒量 m3 は以下

の値となる。 <ISO5149> R32:m3=59.9kg、R1234yf:m3=56.4kg、R1234ze(E):m3=59.1kg <IEC60335-2-40> R32:m3=39.9kg、R1234yf:m3=37.6kg、R1234ze(E):m3=39.4kg 3 設置要求及び安全対策 (1)室内 ISO5149 及び IEC60335-2-40 では、室内に冷媒が流れる機器を有するシステムにおいて、冷媒濃

度または冷媒量によって安全対策が要求される。 <ISO5149>

不燃性冷媒(A1)または微燃性冷媒(A2L)に関して、総冷媒量を室内の容積で序した値

の大きさにより、以下のように安全対策が要求されている。 地下の最下階 RCL 以下 : 使用制限無し

RCL 超 QLMV 以下 : 1 個の安全対策 QLMV 超 QLAV 以下 : 2 個の安全対策

地下の最下階以外 QLMV 以下 : 使用制限無し QLMV 超 QLAV 以下 : 1 個の安全対策 QLAV 超 : 2 個の安全対策 ここで、 RCL : (密閉空間での)冷媒限界濃度 (kg/m3)(=0.2×LFL) QLMV : 最低限の換気を伴う空間での冷媒限界濃度 (kg/m3) QLAV : 追加対策を施した空間での冷媒限界濃度 (kg/m3)(=0.5×LFL)

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なお、安全対策は、冷媒濃度が RCL を超える部屋に対して必要となり、換気、遮断弁また

は警報の中なら選択することになっており、このうち遮断弁及び警報には以下の要求仕様

がある。また、人の動きが制限されている場所では、警報だけの安全対策は認められてい

ない。 【遮断弁】 ・遮断弁は冷媒回路内の適切な位置に設置され、冷媒漏洩発生時は、遮断弁は冷媒

の流れを遮断することができる。(ISO5149 Part 3: 6.4.1, 6.4.3) ・遮断弁は、停電時に(ばね等で)閉止されるように設計する。 (ISO5149 Part 3: 6.4.3) 【警報】 ・警報は、冷媒漏洩時に、漏洩検出器の信号で動作し、人が適切な行動を取るよう

に警告する。(ISO5149 Part 3: 8.1) ・警報は、他の冷凍システムとは別電源にする。(ISO5149 Part 3: 8.2) ・警報は、ブザーや光の点滅等、聴覚と視覚の両方に警報する。例えば、周囲の音

より 15dBA 大きいレベルの音、点滅するランプ等。(ISO5149 Part 3: 8.3.1) ・自主避難が難しいあるいは多数の人々が集まる場所(病院、映画館、スーパーマ

ーケット、学校、ホテル、レストラン等)には、機器設置場所に加え、管理場所

への警報通告も必要である。(ISO5149 Part 3: 8.3.3) ・警報には、冷凍機器とは別の電源(電池等)を使用しなければならない。(ISO5149

Part 3: 8.2) なお、冷媒漏洩検出器に関しては以下の要求仕様がある。

・少なくとも各機械室や前述の限界濃度を超える居室には、少なくとも1つの漏洩

検出器を設置すること。(ISO5149 Part 3: 9.2) ・冷媒漏洩検知器は LFL の 25%を超えないレベルで警報を作動させること。

(ISO5149 Part 3: 9.4.2) また、R32、R1234yf、R1234ze(E)及び CO2 の各値は以下となっている。 ※ISO/TC86/SC1 N241(2014 年発行版の数値を正しく修正したもの)に記載の値 R32 : RCL=0.061、QLMV=0.063、QLAV=0.15 R1234yf : RCL=0.058、QLMV=0.060、QLAV=0.14 R1234ze(E) : RCL=0.061、QLMV=0.063、QLAV=0.15 R744(CO2) : RCL=0.072、QLMV=0.074、QLAV=0.18 なお、強燃性冷媒(A3)または弱燃性冷媒(A2)に関しては、次式で求まる冷媒限界濃度

以下で運用しなければならない。 冷媒限界濃度= 0.2×LFL <IEC60335-2-40>

可燃性冷媒に関して冷媒濃度に応じ以下のように安全対策が要求されている。 冷媒限界濃度以下 : 使用制限無し(無換気での使用可) 冷媒限界濃度超 : 機器筐体内または室内の換気が必要(GG.3) ※一体型で移動可能なユニット 冷媒限界濃度=0.25×LFL 分離型で固定されるユニット 冷媒限界濃度=2.5×LFL5/4×h0×A1/2/V

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(2)機械室 機械室に関しては、ISO5149 で以下のように規定されている。IEC60335-2-40 には ISO5149 に

従うとの記載がある。 <ISO5149>

・人が立ち入る機械室は1時間に4回以上の換気を行うこと。(ISO5149 Part 3: 5.13.2) ・警報システムは機械室の内外に警報すること。(ISO5149 Part 3: 8.3.2)

・A2L、A2、A3 冷媒を使用する場合は、燃焼機器を機械室に設置してはいけない。(ISO5149 Part 3: 5.14.3)

2.4 着火源、防爆要求、配管継手等 可燃性冷媒の着火源、防爆要求、配管継手等に関し、ISO5149 または IEC60335-2-40 には、以下

のように規定されている。 <ISO5149> ・2L 冷媒のみを含む冷凍システムが設置してある部屋の電気設備は、危険領域に対する必要

要件を守る必要はない(防爆は不要)。(ISO5149 Part 3: 7.3) ・加熱面は冷媒の自己発火温度よりも 100K 低い温度を超えてはならない。(ISO5149 Part 3:

5.14.4) ・IEC 60079-15 を遵守している電気部品は着火源とみなさない。(ISO5149 Part 2: 5.2.16) ・可溶栓は A1、A2L 冷媒に対してのみ使用可能。(ISO5149 Part 2: 5.2.7.2) ・配管継手は、国の規格及び ISO14903 を遵守している必要がある。(ISO5149 Part 2: 5.2.3.1) <IEC60335-2-40> ・IEC 60079-15 を遵守している電気部品は着火源とみなさない。(22.116) ・定められた漏洩模擬試験に従い、漏洩冷媒が蓄積しないことが確認された電気部品は、着

火源とみなさない。(22.116) ・可燃性冷媒の漏れにさらされる可能性がある部品表面温度は、冷媒発火点(自己発火温度)

より 100 K 低い温度を超えてはならない。(22.117) ・室内で使用される機械継手は、ISO14903 を遵守している必要がある。なお、フレア継手を

使用する場合は、フレア部の再加工が必要である。 なお、IEC 60079 は防爆に関する国際規格であり、 IEC 60079-15 は構造部品に関して、所定の

試験にて着火しないことを確認することを規定した規格である。 2.5 まとめ 以上、説明した国際規格での A2L 冷媒を使用した機器についての要求事項を以下にまとめる。 ①室内の冷媒濃度は一般的に以下の値以下(ただし、人が存在する室内は別)。

ISO5149 : 0.2×LFL、IEC60335-2-40 : 0.25×LFL(移動式の一体型) なお、LFL: 燃焼下限界 (kg/m3)(R32:0.307、R1234yf:0.289、R1234ze(E):0.303)

②換気等の安全対策を施した上での最大充填冷媒量は次式で求まる m3 に制限されている。

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ISO5149 : m3 = 195×LFL (1.5×130×LFL) (R32:m3=59.9kg、R1234yf:m3=56.4kg、R1234ze(E):m3=59.1kg) IEC60335-2-40 : m3 = 130×LFL (A3、A2、A2L の区分け無し) 現在改正検討中の案では、以下。

m3 = 260×LFL (2×130×LFL) ③濃度基準を守るための安全対策は、換気、遮断弁または警報の中なら選択する。このうち遮断弁、

警報に対する要求仕様及び冷媒漏洩検知器に対する要求仕様は以下。 【遮断弁】 ・冷媒漏洩発生時は、遮断弁は冷媒の流れを遮断することができる。 ・遮断弁は、停電時に(ばね等で)閉止されるように設計する。 【警報】 ・警報は、他の冷凍システムとは別電源にする。(ISO5149 Part 3: 8.2) ・警報は、ブザーや光の点滅等、聴覚と視覚の両方に警報する。 【冷媒漏洩検出器】 ・少なくとも各機械室や居室には、少なくとも1つの漏洩検出器を設置すること。 ・冷媒漏洩検知器は LFL の 25%を超えないレベルで警報を作動させること。 ④機械室に関しては、ISO5149 に以下の規定がある。

・人が立ち入る機械室は1時間に4回以上の換気を行うこと。 ・警報システムは機械室の内外に警報すること。

・燃焼機器を機械室に設置してはいけない。 ⑤着火源、防爆要求等に関し、以下のように規定されている。 ・2L 冷媒のみを含む冷凍システムが設置してある部屋の電気設備は防爆不要。(ISO5149) ・加熱面は冷媒の自己発火温度よりも 100K 低い温度を超えてはならない。(ISO5149、

IEC60335-2-40) ・IEC 60079-15 を遵守している電気部品は着火源とみなさない。(ISO5149、IEC60335-2-40) ・A2L 冷媒では可溶栓は使用可能。(ISO5149)

ISO5149、IEC60335-2-40、ASHRAE15 での要求仕様を整理した表を次に示す。なお、ASHRAE15では、可燃性冷媒は一般空調用に使用できない規定になっているため、上記では引用しなかったが、

現在改訂検討中で、IEC60335-2-40、ISO5149 に規定されている内容の導入検討を行っている。 ≪参照規格≫ (1) ISO817:2014 Refrigerants - Designation and safety classification (2) ISO5149:2014 Refrigerating systems and heat pumps - Safety and environmental requirements - Part 1: Definitions, classification and selection criteria Part 2: Design, construction, testing, marking and documentation Part 3: Installation site Part 4: Operation, maintenance, repair and recovery

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(3) IEC60335-2-40:2013 Household and similar electrical appliances - Safety - Part 2-40: Particular requirements for electrical heat pumps, air-conditioners and dehumidifiers

(4) ANSI/ASHRAE Standard 15:2013 Safety Code for Mechanical Refrigeration (5) ANSI/ASHRAE Standard 34:2013 Designation and Safety Classification of Refrigerants (6) ISO/TC86/SC1 N241(2014-10-04) ISO5149 Part 1:2014 に記載の RCL,QLMV,QLAV の数値等を正しく修正したもの (7) IEC 60079-15:2010 Explosive atmospheres - Part 15: Equipment protection by type of protection "n"

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添付資料 2

R32 等の規制合理化要望の立証資料

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1.微燃性ガスの規制緩和について

1.1 規制緩和の必要性

冷凍空調機器は人の居住空間はもとより、食品・食物の保存、家畜・野菜・果実の育成、工場の生産ライン

のプロセスや工作機械の性能維持などの温度・湿度を調整する機器として、人々の生活に広く深く係ってい

る。日本市場の年間平均出荷台数は、家庭用エアコンが約800万台、業務用冷凍空調機器が約80万台程

度である。2013年度日冷工の世界空調機器統計によると、世界で9500万台以上が生産され、そのうち日

本の冷凍空調機器メーカーは約2850万台以上を生産している。世界シェア約30%程度の日本の冷凍空調

機器メーカーの製品開発動向が世界に与える影響は大きい。

日本の冷凍空調機器メーカーは、オゾン層破壊物質である塩素を含む冷媒の使用禁止により、CFC から

HCFCへ、さらにHFCへの冷媒転換を、世界に先駆け迅速に対応して地球環境の保全活動を牽引して来た。

しかし、現在主として使用されている HFC は地球温暖化に影響する物質であることから、温暖化係数(GWP)

の低いもの(含む自然冷媒)への転換が世界的に喫緊の課題になっている。日本の冷凍空調機器メーカー

はエネルギー消費の抑制のために機器の高効率化を実現しながら、冷媒転換にも積極的に取り組んでおり、

その動向は世界から注目されている。

今後、地球環境に優しい製品を普及させるために、再び日本が温暖化対策の取り組みの一つとして冷媒

転換を率先して行い、その環境を整えることが、冷凍空調機器をはじめとした関連産業活動の継続的発展に

必要となっている。

現在までに開発・使用検討されているフルオロカーボンに分類される冷媒のうち、多くは温暖化係数が小

さく、弱い燃焼性がある冷媒(業界内では「微燃性ガス」と呼んでおり、ISOや ASHRAE では A2L 冷媒に分類

されている)であり、この微燃性ガスを安全に使用していく技術の確立が急務である。ここで使用を検討してい

る微燃性ガス(R32、R1234yf、R1234ze(E))は、従来のフルオロカーボンの不活性ガスに対して弱い燃

焼性がある点が大きな違いであるが、プロパン(ISOやASHRAEでは強燃性ガス:A3に分類)のような爆発

性のある可燃性ガスとは異なっている。なお、R32は冷媒量が少なく危害度も小さい家庭用エアコンに既に

採用され2012年から順次市場投入されている。

微燃性ガスの使用にあたっては、漏えいした冷媒を燃焼させることなく安全に使用するための技術要件を

明確にする必要がある。その際、日本においては、冷凍空調機器の製造・販売・使用にあたり高圧ガス保安

法が中心となる法の一つである。微燃性ガスについて、高圧ガス保安法を遵守した状態で使用できるように、

安全に使用するための要件を規定したうえでの規制緩和が望まれる。

1.2 規制緩和の内容

規制緩和の内容:

微燃性ガス(R32、R1234yf、R1234ze(E))を現在使用されているR410A、R134a、R404Aなどのフルオロ

カーボンの不活性ガス並みの扱いとできるようにすることであり,そのためには、安全を確保するための技術

基準を設定することである。

不活性ガス並みの扱いとは:

不活性ガスと全く同等の扱いではなく、不活性ガスに認められていることの幾つかを微燃性ガスに

も許容するものである。すなわち

今回対象としている微燃性ガス(R32、R1234yf、R1234ze(E))で、

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①3~20 冷凍トン未満を届出が不要なその他製造者の扱いにすること。

②指定設備となれること(施行令第十五条:不活性に限られている)

である.

なお、R32は冷凍則では掲名されていないが、一般則の燃焼試験では不燃であるので,掲名をすると冷

凍則で不活性ガスになる可能性は高い.一方、R1234yf、R1234ze(E)は一般則の燃焼試験では可燃と

なるので,冷凍則では可燃性ガスに掲名される可能性が高い。ただし,燃焼性はR32もR1234yfやR1234z

e(E)も大差なく、安全を確保するには同じ技術基準を適用すべきと考える。

今回対象としている微燃性ガス(R32、R1234yf、R1234ze(E))の課題は、燃焼することである.燃焼性

に係る物性値を総合的に比較し、安全を確保する技術基準を策定すべきと考える。

微燃性ガスをできるだけ安全な状態で使用するための要件を明確にするため、(公益社団法人)日本冷

凍空調学会傘下の「微燃性冷媒リスク評価研究会」を設立し産学官共同で安全性評価を行い,一般

社団法人日本冷凍空調工業会の微燃性冷媒安全性リスク検討WGなどで、リスクアセスメントを実施してい

る。

そのなかで明らかとなってきたことは、微燃性ガスの燃焼性はプロパンよりも安全で微燃性ガスの燃焼を防

ぐか危険回避の処置として有効な対策として、濃度管理、機械換気の設置、冷媒の遮断装置、警報装置の

設置といった安全要件であることである。

これらの要件を選択・組合せることでリスクの抑制が可能となるが、製品の実現には課題も残されており、詳

細は後述する。

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2.次世代冷媒と国際規格の動向 2.1 冷媒の区分 ISO817 及び ASHRAE34 では、可燃性に関しては、燃焼限界、燃焼熱、燃焼速度等の燃焼性の数

値に応じて、燃焼性の高い順から、強燃性(A3)、弱燃性(A2)、微燃性(A2L)及び不燃性(A1)に区分されている。R32、R1234yf 及び R1234ze(E)は微燃性(A2L)に区分され、新たな冷媒が開

発された場合、その冷媒の燃焼性の数値によって、分類される区分が決定される。 一方、高圧ガス保安法では、一般高圧ガス保安規則において、可燃性ガスの定義より、R32 は不

活性ガスに区分され、R1234yf 及び R1234ze(E)は可燃性ガスに区分される。また、冷凍保安規則に

おいては、R32、R1234yf 及び R1234ze(E)はいずれも未掲名のため、すべて不活性ガス以外のフル

オロカーボン(第2グループ)に区分される。この第2グループには、R32、R1234yf 及び R1234ze(E)以外に、国際分類で不燃性(A1)に区分される燃焼性を有しない冷媒や、強燃性(A3)に区分され

る燃焼性が非常に高い冷媒等、掲名されていないフルオロカーボン冷媒がすべて区分される。燃焼

性が低い微燃性(A2L)の冷媒と燃焼性が非常に高い強燃性(A3)の冷媒を、(冷媒が掲名されるま

での間)同じ区分の中で運用するのは、安全面から適切な運用とは言い難く、それぞれを早期に適

切なグループに区分するための措置を検討する必要がある。また、国際規則では、今後の改定で、

ISO817 または ASHRAE34 に記載された冷媒にのみ、国際規格に記載の内容の適用を許可するべき

という提案もなされている。冷凍則は掲名主義であるが、冷媒の掲名が速やかになされる仕組みも

必要である。

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3. 冷媒の比較

一般高圧ガス保安規則第二条で可燃性ガスの定義は、イ)爆発限界の下限が 10%以下またはロ)爆

発限界の上限と下限の差が 20%以上のものである。つまり、冷媒の燃焼性を燃焼限界の下限と上下限

の差のみで可燃か不燃か 2 分割に分けている。

一方、国際規格 ISO817 は冷媒の燃焼性により、3(強燃性)、2(弱燃性)、2L(微燃性:燃焼

熱量が 19MJ/kg 以下で燃焼速度が 10cm/s 以下の微燃性冷媒)、1(不燃)と 4 分割にしている。こ

のように,燃焼性による冷媒区分を燃焼熱量と燃焼速度により細分化して、燃焼性を評価していく

動きになっている。

なお、可燃か不燃かは試験方法や条件によって決まる。たとえば、一般高圧ガス保安法の A 法に

よる可燃性評価試験・条件で不燃である R410A、R134a は、60℃で高湿度条件では可燃となることが

示されている。(3.1 に後述する。)

今回対象にしている R32 は A法では不燃と評価され、R1234yf や R1234ze(E)は可燃と評価される。

一方、ISO817 の試験法・条件では R32 も、R1234yf、R1234ze(E)と同じように可燃となる。これは、

国際規格 ISO817 で2L を燃焼熱量が 19MJ/kg 以下で燃焼速度が 10cm/s 以下の微燃性冷媒と定義し、

冷媒の燃焼性を考慮したものではあるが、燃焼性を評価するには、着火するエネルギーや着火後の

燃焼熱量、燃焼速度、さらには燃焼による圧力上昇の度合いなど、総合的に判断する必要がある。

3.1 平成 25 年度 プログレスレポートによる冷媒比較

公益社団法人日本冷凍空調学会傘下の微燃性冷媒リスク評価研究会では2011年10月から活

動を行い、微燃性ガス(R32、R1234yf、R1234ze(E))のリスク評価を行っている。

微燃性ガス(R32、R1234yf、R1234ze(E))に関し、プロパンと比較して下記のようにまとめられ

ている。(表 3.1.1 参照)

・微燃性ガスはプロパンと比較し、最小着火エネルギーEminは1 桁以上大きいこと。

そのため、プロパンと異なり人体由来の静電気火花で着火させることは極めて困難なこと。

(注1)

・消炎距離dqは約3倍以上大きく、そのため実際に火花が生じる場合には消炎距離以下の電極間距離

で生じる可能性があり、その場合、火炎が外に伝播するためには、電極による冷却に打ち勝つた

めに大きな放電エネルギーが必要になること。(消炎距離は、初期火炎核が持続可能な伝播火炎

に移転する火炎サイズを表す。消炎距離が大きい=多くのエネルギーを投入しないと持続可能な

火炎が得られないことになる。)

・消炎直径は数倍大きく、電気部品に小さな隙間があっても火炎は外部へ通過できないため、そう

いった電気部品内部のスパークは火種にならないこと。(消炎直径は、すでに持続伝播している

火炎を消炎に至らしめるすき間の大きさを表す。)

さらに解説すると、(注1)人体の静電容量 C を100pF とし、帯電電位 V が200~400kV

と仮定すると静電エネルギーE は E=CV2×1/2 より0.2~0.8mJ となる。このため、プロパン

(Emin=0.247mJ)は、静電気で着火する可能性が高い。

さらに燃焼速度 Su を見ても、プロパンが Su=38.7m/s に対し、R32、R1234yf はそれぞれ Su=6.7m/s、

1.5m/s と遅い。

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表 3.1.1 11 種類の冷媒の消炎距離と Eminの推定値

なおこの表に R1234ze(E)が記載されていないのは、湿度が無い状態では燃焼しないためで

ある。

ここで、Su,max:燃焼速度、

dqh:円筒容器を横型に配置し平行平板を垂直にした場合の燃焼距離

dqv:円筒容器を縦型に配置し平行平板を水平にした場合の燃焼距離

φmin:最小消炎距離を与える当量比

表 3.1.2 は主な冷媒の燃焼性に関する比較表である。表のなかで KG値は爆発の激しさを示す指標

となっており、ISO 6184-2(1985)や NFPA68(2007)に定められている爆発強度指数 KGである。P は圧

力(100kPa)、 t は時間(s)、Vvessel

は燃焼容器容積(m3)である。K

G値が大きくなると爆発の激しさが

増すことになり、 例えば爆発放散口の設計ではより大きな放散口面積が必要になる。

防爆仕様が適用除外になっているアンモニアや R32、R1234yf、R1234ze(E)やなどの KG値(爆発の

激しさを示す指標)はプロパンと比べ1桁以上低い値となっている。

表 3.1.2 燃焼に関する比較表

R1234yfは、着火と消炎について、これまでの研究によって、乾燥空気中では、燃焼限界はR32や

アンモニアと比べて低いが、消炎距離は非常に大きいため着火が起こりにくく、燃焼速度はこれら

の数分の1であるため着火した場合にも火炎伝播は弱々しく威力は非常に小さい。R1234yfを回収す

るためのフルオロカーボン回収装置に関し、不活性ガスを回収するためのフルオロカーボン回収装

置と同様に安全を確保しつつ法の適用除外とするための技術基準が設定された。(高圧ガス保安協

会のR1234yf回収装置技術基準検討委員会にて審議され、産業構造審議会保安分科会高圧ガス小委員

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会で技術的内容が承認された。)一方、R1234ze(E)は火炎伝播が持続しない。

しかし,高温度条件においては、R1234類(R1234yf、R1234ze(E)など)は湿度の影響を強くうけ

るため,可燃濃度範囲は大きく広がり,消炎距離は数分の一に減少し,燃焼速度は数倍に増大する

ことコメントがある。国際的に湿度の影響をどのように評価するかは未だ確定していない.

ただし、図3.1.1に示すように、R1234ze(E)はR1234yfより、全ての湿度でR1234yfより燃焼性は小

さい。このため,回収装置を安全に使用するために、R1234yfと同様の技術基準をR1234ze(E)に適用

すれば良いと考える。

図 3.1.1 R1234yf 及び 1234ze(E)の燃焼限界(最小 LFL、最大 UFL)の湿度依存性

【R410A、R134a は、60℃で高湿度条件では可燃となることが示されている。】と記載したが、図

3.1.2、図 3.1.3 はそれぞれ R410A、R134a の 60℃における湿度影響による可燃性限界を示した図で

ある。R410A、R134a 等の ISO817 で不燃性に分類されている冷媒は、60℃・高湿度条件では可燃性を

有するものもあるが、通常の環境条件(20~30℃程度)では可燃性を有しないものであり、R32、

R1234yf、R1234ze 等の ISO817 で微燃性に分類されている冷媒は、通常の環境条件で弱い可燃性を有

するものであると言える。 この高湿度の時の燃焼熱量の比較を表 3.1.3 に示す。可燃性を示す条件での燃焼熱量は、不活性

ガス<微燃性(R32、R1234yf、R1234ze(E))<(アンモニア、弱燃性(R152a)の順になっている。

図 3.1.2 R410A の燃焼限界の湿度影響 図 3.1.3 R134a の燃焼限界の湿度影響

出典:Journal of Fluorine Chemistry 161 (2014) 29–33

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表 3.1.3 燃焼熱の湿度影響

(不活性ガス R410A、R134a、微燃性ガス R32、R1234yf、R1234ze(E)、弱燃性 R152a など)

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3.2 燃焼熱量 HOC の比較

図 3.2.1 は燃焼熱量 HOC の各冷媒の比較図である。R32、R1234yf、R1234ze(E)はプロパンなど A3

の強燃性冷媒に対し 1/3~1/5 と小さく、アンモニアより半分程度と小さい。

高圧ガス保安法の冷凍則では不活性ガスに掲名されているR134aも燃焼した際の HOC が記載

されているが、R1234yf やR32よりも小さい値になっている。(追加)

図 3.2.1 強燃性3、微燃性2L、不活性(R134a)の各冷媒の HOC 比較図(デュポン社提

供資料より)

3.3 ISO817 における冷媒の燃焼性物性値表

表 3.3.1 は ISO817 に記載されている冷媒の燃焼性に係る物資値の比較表の一部である。

燃焼性として、A3、A2、A1 の安全区分、下限燃焼限界 LFL、冷媒濃度限界 RCL、燃焼速度 Su、燃

焼熱量 HOC、自己着火温度などがある。

自己着火温度に関し、ISO5149 では【高温表面は、冷媒の発火点(自己着火温度)より100K低

い温度を越えてはならない。】とされている。高圧ガス保安法ではこのような規制は無く、また現在、

国際規格 IEC60335-2-40 改訂の論議の中で高温表面温度限界の緩和が議論されているが,この値を

使用するに当たっては注意は必要である.

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表 3.3.1 ISO817 における冷媒の燃焼性物性値表

3.4 微燃性ガスの燃焼性評価のまとめ

以上、下記のようなことが言える。

①静電気が着火源になるプロパンのような強燃性ガスは、漏えいすると火災や爆発につながるが、

微燃性ガス(R32、R1234yf、R1234ze(E))では着火源は限定される。

②現在市場で多く使用している不活性のフルオロカーボン(R410A、R134a)は高湿度条件では可

燃性を示し、燃焼熱量も微燃性ガス(R32、R1234yf、R1234ze(E))より少ないが若干ある。

③防爆仕様が適用除外になっているアンモニアよりも可燃性や爆発性も危害度は同等以下である。

④以上から、着火を抑制するか着火後の迅速な処理を行う技術基準を設定すること(着火源を特

定し使用禁止など排除すること。着火し難いように充填量に制限を加えること。漏えいした場

合、漏えいを早く遮断するか警報による退避や漏えい個所に近づかないようにすることなど。)

で冷媒に着火させることなく安全に取り扱うことができる。

今後、R32、R1234yf、R1234ze(E)以外の冷媒の燃焼性を評価する場合には、燃焼性を評価する重

要な物性値として取り上げた下記の①~⑧の値等を参考に総合的に評価するのが良いのではないか。

冷凍則は掲名主義であるが、冷媒の掲名が速やかになされる仕組みも必要である。例えば、日本

冷凍空調学会に冷媒安全性評価委員会なるものを設置し、冷媒の掲名に対する安全評価の判断を行

う仕組みなども考えられる。

燃焼性評価の重要な物性値:

①燃焼速度、②燃焼熱量、③消炎距離、④消炎直径、⑤最小着火エネルギー

⑥爆発強度指数(KG値)、⑦燃焼限界(最小 LFL 及び最大 UFL)、⑧自己着火温度

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4. 微燃性冷媒のリスク評価

4.1 リスク評価体制

微燃性であるA2L冷媒については、

現在、日本、米国、中国など各国で

リスク評価が始まっている。日本で

は主査である東京大学飛原英二教授

を中心に、(公益社団法人)日本冷

凍空調学会が2011年10月に(一般社

団法人)日本冷凍空調工業会やNEDO

プロジェクトと連携して「微燃性冷

媒リスク評価研究会」を設立し産学

官共同で安全性評価に取り組んでい

る。全体の体制を図4.1に示す。 微

燃性冷媒のリスク評価は、各製品別

に、ミニスプリットSWGⅠ(家庭用

エアコン)、ミニスプリットSWGⅡ

(業務用パッケージエアコン)、

ビル用マルチSWG、チラーSWG、GHP SWG、

低温機器SWG(冷凍機)に分けて実施された。

図4.1 微燃性冷媒リスク評価研究会の体制

4.2 着火現象のとらえ方

冷媒が燃えるためには、以下の事象が同時に起こらなければならない(図4.2)。

① 急速な漏れが発生すること(油煙が発生し、臭いが周辺に漂う程度の漏えい)

② その漏れた冷媒により可燃濃度に達した可燃域が生成され、それがある程度の時間、形成される

こと

③ その可燃域に冷媒の着火エネルギを超える着火源があること

④ その時に、その空間の気流が燃焼速度を超えないこと

図4.2 着火するための必要条件

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4.3 微燃性冷媒の特性と使用にあたって考慮すべき観点

微燃性冷媒は強燃性冷媒と違って、以下のような特性を持っているので4.2に記載されている各事

象の確率が小さく、それらが同時に起こる確率は極めて低くなる。

① 燃焼性となる下限濃度はプロパンよりR32は約7倍、R1234yfとR1234ze(E)は約3倍と高い。よっ

て冷媒が狭い部屋に大量に漏れた場合か、床置きのように何らかの理由で偏在した場合しか大き

な可燃域は形成されない。

表4.3.1 各種冷媒の可燃濃度と毒性濃度(出典:ISO817)

ppm 燃焼下限

濃度(%)

最小着火エネルギ

(mJ)

燃焼速度

(cm/s)

燃焼エネルギ

(MJ/kg)

R413A 8.8 7.6

R134a (11.5*)

R410A (15.6*)

R1234yf 6.2 540 1.5 10.7

R1234ze(E) 6.5 1.2 10.1

R32 14.4 20 6.7 9.5

R290(プロパン) 2.1 0.247 46.0 46.3

R600a(イソブタン) 1.8 0.44 41 45.6

R717(アンモニア) 16.7 32 7.2 18

R413A 8.8 11.2 8.6

*:60℃、50%湿度(その他は23℃、50%湿度)

図4.3.1 微燃性冷媒の燃焼下限濃度と最小着火エネルギ(MIE)

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② 着火に必要なエネルギ(MIE)がプロパンと比べてR32は8倍以上、R1234yfやR1234ze(E)は2500

倍近く大きくこれらの冷媒が着火するためには大きなエネルギが必要である。マッチや石油ライ

ター以外のブタンライター・ターボライターや家庭用コンセントなどでは着火しないことが確認

されている。これらの冷媒の中で最も着火エネルギの小さいR32の場合でも、220V、60A、4Jの電

磁開閉器で数百回に一回の確率で着火する実験結果があり、それ以下のエネルギでは着火してい

ない。また、通常のスイッチや電磁開閉器はカバーがあるため、もし着火しても冷却効果により

火炎が外部へ洩れることは通常の隙間ではない。(プログレスレポート2014)

図4.3.2 微燃性冷媒の燃焼速度と燃焼エネルギ(R1234ze(E)はほぼR1234yfと同じ)

③ 単位質量あたりの燃焼エネルギが小さく、更に燃焼速度が小さい。爆発指数KG値もアンモニアと

比べて小さいので、使用量に注意すればプロパンほど爆発的な燃焼には至らないと考える。 更

にR1234yfの爆発指数は小さく、特性からR1234ze(E)も小さい。

表 4.3.2 各冷媒の爆発指数 KG値 (出典:2014 プログレスレポート)

R290(プロパン) (100※)

R717(アンモニア) (10※)

R32 11

R1234yf 9

R1234ze(E) 8

※:試験装置が違うため参考値

このように微燃性冷媒の着火確率は極めて小さく、その微燃性冷媒の特性を明確にして安全性を確

認するとともに、一部危険性があるところは適切な対応をして使用していくことが可能と考える。

この点については日本冷凍空調工業会、日本冷凍空調学会が先述のように共同して評価している

ので、以下にその内容を紹介し、安全の基準について述べる。

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4.4 リスクの許容値の考察

自動車も家電製品も何らかのリスクを抱えながら社会に存在しており、ここでは絶対安全という

のは存在しない。社会的に許容されるリスクのレベルは、製品

ごとに異なっている社会への影響により評価されるべきもの

であり、この課題については2011年6月に発行された経済産業

省の「リスクアセスメント・ハンドブック(実務編)」4)を参

照した。

ここにはその目的として以下のような記載がある。

図 4.4.1 経済産業省発行

リスクアセメントガイドブック

つまり「法律だけを守れば良いというのではなく、確かな安全性を追求するためにリスクアセス

メントが必要である」ということである。

これによると、許容される安全レベルとしての「発生頻度ゼロレベル」と見なされるためには、

家電製品、ガス・石油機器、事務用機器、その他一般的な消費生活商品の場合、致命的事故あるい

は重大事故の確率が10-8以下でなければならない、と記載されている。ただし、これは「販売数が100

万台の場合」と記載されており、「10-8以下の発生確率」は「重大事故は百年に1回以下」(インタ

ーリスク総研資料)と相当である。

家庭用エアコンの場合はストックが1億台あるので「重大事故は百年に1回以下」は10-10の発生確

率となり、これを安全基準の目標値とした。

業務用エアコンの場合はストックが一千万台であり10-9、の発生確率を、同様に、チラーと設備用

冷凍機はストックは百万台規模であり10-8レベルの発生確率を目標値とした。

図4.4.2 経済産業省ハンドブックのR-map

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図4.4.3 経済産業省ハンドブックにおけるリスク判断基準

ただ経済産業省のハンドブックでは致命的あるいは重大事故発生確率を言及にしているのに対し、

検討したこのリスクアセスメントでは着火事故が起れば最悪の重大事故に直結するという前提に立

っている。日本冷凍空調工業会では当初は安全率を厳しくして評価をスタートしそして図4.4.2の横

軸である危害度の評価が進むにつれて、できるものは求める安全率を緩和する立場をとっている。

その他、業務用エアコンも「百年に1回以下」を採用しているが、チラーなど産業用途はメンテナン

スや専門家の介在によってリスクを軽減できるので「十年に1回」を採用している。日本冷凍空調工

業会で想定する製品ごとのリスク許容値を表4.4.1に示す。

表4.4.1 日本冷凍空調工業会想定の製品ごとのリスク許容値

(考えられないとするリスク値)

形態 ストック台数 リスク許容値(回/台・年)

家庭用 1億台 使用時 1.0E-10

その他 1.0E-09

店舗用 780万台 使用時 1.3E-09

その他 1.3E-08

ビル用

マルチ

1000万台

(室内)

使用時 1.0E-09

その他 1.0E-08

チラー 13.4万台 産業用なので専門家の介在によりリスク

低減可能として

1.0E-06

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5. リスク評価の概要

次に 2014 年 4 月発行の「微燃性冷媒リスク評価研究会」のプログレスレポート等や環境と新冷媒国際シンポジウム 2014 の発表から、各製品別のリスク評価の概要を紹介する。 全てのリスク

評価は経済産業省発行のリスクアセスメント・ハンドブックを参考にして次のステップで行ってい

る。

① 意図される仕様

② 合理的に予見可能な悪条件使用の明確化

③ 通常用いられる平均的なケースのリスクの特定

④ 悪条件使用の場合のリスクの特定とリスクの低減

⑤ まとめ

⑥ 課題

なお、リスク評価を行った機器(図 4.1 参照)のうち、以下については、説明を省略した。

①家庭用エアコン(3 冷凍トン以下であり高圧ガス保安法の適用対象外のため)

②GHP(ビル用マルチエアコンと類似のリスク評価内容のため)

③低温機器(リスク評価が完了していないため)

また、以下に説明を行う機器の中でも、ビル用マルチエアコンに関しては、一部まだリスク評価が

完了していない部分もある。また、チラー以外は、微燃性冷媒のうち、(現時点では)R32 を使用す

る場合についてのみ、リスク評価を行った。

安全対策について最も重要なのが濃度管理である。冷凍機器が施設される部屋の容積あたりの冷

凍機の冷媒の総充填量を制限し、燃える空間(可燃空間)が実用レベルでできないようにすること

が最も重要である。

図 5.1 R32 の漏えい量と可燃空間の関係(床面積 46.2 ㎡、容積 110m3、換気なし)

(図 5.1 の説明)例えば業務用パッケージエアコンの典型的使用例として、床面積 46.2m2の事務

所に冷房能力 7.1kW(冷媒充填量 3kg)の天井カセット型室内機を設置した場合、図に示すように、

全量漏れたとしても 1.3%以下であり、燃焼下限濃度(LFL)に対して十分な安全率があるために、可

燃空間は極めて小さい。ただしビル用マルチ(冷媒充填量 50kg を超えるものもある)や機械室設置

のチラーなどでは、部屋の容積(V)に対する総充填量(M)が多く、部屋の冷媒濃度(=M/V)が、LFL を

超える場合があるので、換気や遮断弁などによる濃度管理が重要である。

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5.1 業務用パッケージエアコンのリスク評価(参考資料1)

① 対象機種と対象台数

冷房能力で 3.6kW~30.0kW のエアコンでストック台数は 780 万台。

冷媒として R32 を使用する場合についてリスク評価を行った。

② 通常の使用ケース

代表的な能力クラスは 3HP(7.1kW)と 6HP(14.0kW)。基本的に室内機と部屋は一対一に対応し

ており、冷媒量(能力にほぼ相関する)と設置空間容積はほぼ比例関係にあり、能力に応じた

部屋に設置される限り、図 5.1.1 に代表的な設置例を示すが、天井設置型ではほとんどの条件

において LFL/4 以下という濃度基準は満足する。主要な室内機の形態は天井設置タイプ(カセ

ット、天吊り、ダクト)や壁掛けタイプであり漏れた冷媒はほぼ一様に拡散される。一方、室

外機設置環境は地上設置(4 面開放)が主流である。全体の 80%が配管長 30m 以内で現地での追

加充填はない。

図 5.1.1 業務用パッケージエアコンの市場での面積と充填量(カタログ値)

③ 予見可能な悪条件使用の明確化

悪条件で使用される例として、室内機の場合は床置き型による漏えい冷媒の床面への滞留、

長配管による漏えい冷媒量の増加、密閉された部屋での使用(カラオケなど)、部屋に比較し

て予想以上に過大な設備の使用、食堂など厨房の影響、などがある。

同様に室外機の場合は長配管による漏えい冷媒量の増加、3 面以上閉塞されている各階設置や半

地下設置、ビルの間などに設置される狭小空間への設置、などがある。

④ 通常用いられる平均的ケースのリスクの特定

室内機で想定した例は、冷房能力 7.1kW、冷媒量 3kg、部屋の大きさは高さ 2.7m で床面積

42.3m2(26 畳)である。天井設置で、冷媒漏えい速度が 10kg/h の場合、漏えい冷媒は、空気

と混合しやすく、漏れ口の周りの小さな空間以外は燃焼下限濃度(LFL)を超えることはないの

で、リスクは非常に小さい(3.71E-12)。同一漏えい速度の場合、14.0kW の能力であってもリ

スクは同等である。

室外機は、大型になっても小型と設置環境は同じなので、冷媒充填量の多い大能力の方がリ

スクは高い。それでも、冷房能力 14.0kW、冷媒量 4kg、4 面開放の室外設置の場合、リスクは

少ないと言える(着火確率 6.35E-11)。

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図 5.1.2 に家庭用のモデルではあるが壁掛タイプの室内機か

ら漏えいした場合の可燃域を記載する。可燃域は漏えい個所近傍

のみに存在する。東京大学及び日冷工において、ビル用マルチも

含め多くの解析を行っているが、この傾向は業務用パッケージエ

アコンでも、同様である。(2014 プログレスレポート、東京大学

の研究成果)

図 5.1.2 R32 が壁掛室内機

で漏えいした場合の可燃域

(家庭用の例)

⑤ 悪条件使用の場合のリスクの特定とリスクの低減

前項で想定した悪条件の中で、室内機についてリスクが許容値に達しないのは床置き型の場

合である。この場合は以下の安全対策を製造者責任として義務付ける。

【要求事項】

床置タイプの場合には漏えい冷媒が滞留するので、滞留を回避する検知器と拡散装置などを

義務付ける。

図 5.1.3 に 11m2 の自然換気だけで機械換気のない部屋に冷

凍能力 8.0kW(冷媒量 4Kg)の床置き室内機が設置された場合

で、急速漏れ(10kg/h)が起こった場合の可燃空間の発生を示す。

この場合は図のように床面に可燃域が発生する。安全対策がな

いと可燃空間が床面に広がっている。

図 5.1.3 8.0kW 業務用床置きの漏えい

この床面に滞留した冷媒を検出し、拡散させ可燃空間を無くすために撹拌手段を義務付ける。

撹拌がある場合の試験結果を図 5.1.4 に示す。検知器が漏えいを検知し、必要条件を満たすフ

ァンによる撹拌があれば、可燃空間が生成しないことを確認している。

- 55 -

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図 5.1.4 試験による撹拌効果の検証結果

室外機の場合には、半地下設置と狭小地設置の場合にリスクが残る。半地下設置には冷媒濃

度が基準値を超える場合、冷媒漏えい検知手段と冷媒の滞留を抑制する拡散ファンなどの安全

対策を義務付ける。狭小地設置の場合は、横 4 面のうち最低でも1面に幅 0.6m の開放空間を設

けるか、あるいはボイラー等の近傍設置禁止を義務付ける。

⑥ まとめ

室内機が天井設置タイプの場合のリスクは少なく許容値を満足する。床置きと室外機の半地

下設置と狭小地設置で対応が必要

⑦ 残された課題

室外機の半地下設置と狭小地設置が課題である。

半地下設置の場合には⑤項で示した通り、冷媒漏えい検知手段と冷媒の滞留を抑制する拡散

ファンなどの安全対策を義務付け、狭小地設置の場合にはボイラーの近傍設置禁止等を義務付

ける。

冷媒充填量制限によるリスク回避が難しい冷媒充填量の場合の課題は、後述するビル用マル

チと同じため、ビル用マルチの箇所を参照のこと。

- 56 -

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参考資料1.

- 57 -

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5.2 ビル用マルチエアコンのリスク評価(参考資料2)

① 対象機種と対象台数

冷房能力で 14.0kW(5HP)~150.0kW(54HP)、

ストック台数は室内機 1000 万台、室外機 250 万台。

冷媒として R32 を使用する場合についてリスク評価を行った。

② 通常の使用ケース

代表的な能力クラスは室外機 56kW(20HP)、室内機 7.1~8.0kW(約 3HP)。設置先は事務所、

店舗、ホテル、学校、病院など。室内機は天井設置型(カセット、ダクト、天吊り)や壁掛け

型が主流である。室外機の設置場所は地上、屋上設置(4 面開放)が主で、各階設置(1 面開放)・

機械室設置(密閉)・半地下設置(天面開放)もある。

③ 予見可能な悪条件使用の明確化

ビル用マルチの室内機の場合には、部屋の容積と比較して冷媒充填量が多いので、ドア下換

気がある場合でも、機械換気がない場合に悪条件となる。天井設置型でも建築基準法に定めら

れている換気が停止した場合は、例えば夜間に事務所の換気設備が停止する場合、リスクが高

くなる。床置き型(ローボーイ、トールボーイ)は約 2%占めているが漏えい冷媒の床面への滞

留があるので特に厳しい。

室外機の場合は業務用パッケージエアコンと同じであるが、水冷型の場合には機械室に設置

されることが多いので後述のチラーと同じく、空調機と連動した 4 回/h 以上の機械換気および

冷媒漏えい検知器設置等の安全対策が必須である。

④ 通常用いられる平均的ケースのリスクの特定

複数の室内機を有し冷媒充填量が比較的多いビル用マルチのリスクを十分反映した設置ケー

スを対象に、着火確率を推定した。標準的設置ケースでは、多くの場合、漏えいしても冷媒量

に対して室内容積が大きいために可燃濃度に達するような可燃空間は小さい、あるいは、通常

は建築基準法で換気量が定められており機械換気があれば可燃空間が小さく、着火確率は許容

出来る範囲となる。最も設置ケースの多い事務所の例では、冷房能力 56kW、冷媒量 26.3kg、部

屋の大きさは高さ 2.7m 床面積 114m2(約 25 畳)である。通常は建築基準法等で機械換気がある

ので可燃域は室内機のごく近傍にしか生じない。機械換気の故障率は 0.025%(日冷工調査)な

ので、それを考慮してもリスクは非常に小さい(着火確率 3.5E-12)。

室外機は、通常は 4 面開放の室外設置なので、リスクは小さい。

⑤ 悪条件使用の場合のリスクの特定とリスクの低減

夜間に換気が停止する事務所の小部屋、防音構造となったカラオケ、飲食店個室、美容室の

バックヤードなどは、室内容積も小さく、着火源も存在することは否定できない。これらの設

置ケースにおいて、機械換気が無いあるいは夜間停止するという条件のもとでは、漏えい時に

出来た可燃空間が長時間存在することとなり、石油ライターやガスコンロによる着火確率が、

1.10E-08[回/台・年]となった。これは、100 年に 1 度という事故確率の許容値 1.0E-09 を超え

た。

よって、安全対策として、これらの悪条件に関しては、冷媒漏えいを検知し、換気手段また

は冷媒漏えい遮断手段、あるいは警報のいずれか、場合によっては組み合わせを備えることを

要求する。

【要求事項】

安全要件は、(要件 A、または、要件 B、または、要件 C、または、要件 D)、かつ、要件 E。

・要件 A 冷媒充填量[kg]/室内容積[m3]で求められる冷媒濃度が、LFL/4 以下であること。

・要件 B 室内に冷媒漏えい検知手段を備え、機械換気装置を備えること。機械換気装置は、空調機

とのインターロックを取り、空調機の動作中は機械換気装置が確実に動作していることを

保証すること。漏えい検知時に機械換気装置を作動させ、空調機停止時及び運転時にも、

可燃域を生成させないようにすること。換気量は室内冷媒濃度を 1/4 以下にするに十分な

量であること。これらの漏えい検知手段は、室内機本体と一体の構造であるか、一体で無

い場合には室内機とのインターロック機構を備えること。

- 58 -

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・要件 C 室内に冷媒漏えい検知手段を備え、漏えい検知時に冷媒漏えいを遮断する手段を備えるこ

と。漏えい検知手段や冷媒漏えい遮断手段は、室内機本体と一体の構造であるか、一体で

無い場合には室内機とのインターロック機構を備えること。

・要件 D 室内に冷媒漏えい検知手段を備え、漏えい検知時に警報を発する手段を備えること。漏え

い検知手段や警報手段は、室内機本体と一体の構造であるか、一体で無い場合には室内機

とのインターロック機構を備えること。

ビル用マルチにおいては、上記に加えて、下記要件を必要とする。

・要件 E 1つの冷媒系統の冷媒充填用が、Xkg 以下であること。(X の値は未決定)

理由は、ビル用マルチな場合は裸火等も存在する可能性のある屋内に比較的大きな冷媒量

が持ち込まれ、狭小部屋に室内機が設置される可能性もあり、各室で個別に安全対策をと

った上においても、着火事故の危害度を一定以内に抑える必要があると考え、冷媒充填量

の最大値を設ける。

冷媒漏えい検知、機械換気、冷媒漏えい遮断は、ISO5149規格に記載されている施工側にて実施

される安全対策である。冷媒漏えい検知手段が室内の床面上に設置され、漏えいが検知された際

には、機械換気装置や冷媒漏えい遮断装置が作動し、可燃空間の生成を防止するので、着火事故

確率は6.60E-12となり、リスクが許容レベル以下になることを確認した。警報に関しては、上記

の装置と同じ効果を有するとした。

しかし、この場合、施工時に、冷媒漏えい検知手段、警報手段、冷媒漏えい遮断手段を設置す

ることとしたが、施工ミスによりこれらの手段が設置されないケースでは安全を担保しきれない。

従って、こうした施工ミスを防止するために、上記の安全要件に示した安全手段を室内機本体と

一体の構造とするか、一体構造で無い場合には室内機とインターロックをとることで、安全手段

が設置されない限りは、試運転時を含めて室内機が運転できないようにして、これらの安全手段

の効果を確実なものにすべきである。

ISO5149では、換気、漏えい遮断の他に、冷媒漏えい検知に警報を作動させるだけの安全対策が

認められているが、警報は人が窓を開ける等の作業をすることにより安全となる対策であり、冷

媒充填量が多い時に、有効性が不足することも考えられるため、更なる検討を必要とする。また、

ISO5149では、最大冷媒充填量を195*LFL以下に制限しているが、この値の妥当性についても、更

に検討を必要とする。

⑥ まとめ

ビル用マルチは冷媒充填量が多く、部屋容積と漏えい冷媒量が必ずしも相関しているわけで

はないので、冷媒充填量による濃度管理だけに頼ると室内空間で着火濃度を超える場合が多い。

よって室内に冷媒漏えい検知手段と機械換気手段または漏えい遮断手段または警報手段のいず

れかを備えることにより、部屋の多様性に関わらずリスクを許容値まで低減できる見通しであ

る。

ビル用マルチ(冷媒はR32)の着火事故確率

対策無し対策有り(施工側)

着火事故確率 [件/台・年] 1.10E-08 6.60E-12 同上許容値 [件/台・年] 1.00E-09 ←

 換気状態機械換気無しor夜間停止

機械換気(ISO5149準拠)

 ・冷媒量 M [kg ] 20~88.1 ←

 ・部屋容積 V [m3] 9.5~114 ←

 ・M/V/LFL [-] 2.6~30 ←

- 59 -

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室外機を機械室に設置する場合には、4 回/h の機械換気および検知器等の安全対策が必須で

ある。

室内については、冷媒漏えい検知手段を室内に備え、換気手段または漏えい遮断手段を備え

る場合のリスク評価を行い、リスクが許容レベル以下になることを確認している。警報はこれ

らと同等の効果を持つとした。この場合、施工時のミスを担保できないため、これらの機能を

室内機本体に備えるか、もしくは、室内機本体とインターロックを備えることを安全要件とし

た。但し、安全対策としての警報が有効である冷媒量の範囲、最大冷媒量上限値、冷媒漏えい

検知手段の室内機本体への設置位置などについては、今後さらに検討が必要である。

⑦ 残された課題

今後の課題と、その理由(⇒以下)を示す。

最大冷媒量上限値の検討

⇒ISO5149 では、195[m3]*LFL と規定されており、R32 では 60[kg]となる。その根拠は、炭化

水素冷媒では上限値が 5[kg]となっており、可燃領域の大きさにすると 130[m3]となり、微

燃性ゆえに炭化水素冷媒の 1.5 倍として、195[m3]とした、もので、総冷媒量による爆発エ

ネルギーから決められている。それに対し、ここでの冷媒上限値X[kg]は、室内機本体に

安全装置を備えた場合のリスクの検討から決定する必要があり、今後詳細検討する必要が

ある。国内における LPG ガスの室内置き最大許容量などの数値も参考にする必要がある。

漏えい検知手段の信頼性確保のための技術基準(漏えい検知手段を室内機本体に設置する場合

にはその設置場所、試運転時を含めた動作保証方法)の明確化

⇒冷凍保安則においては、可燃性または毒性ガスの場合には滞留するおそれのある場所に漏え

い検知設備を設けることとなっており、例示基準13では、その方式、発報濃度、検知精度、

定期検査の間隔、等が定められている。微燃性冷媒の場合に、同じ要求が必要かどうかも含

め、基準につき検討する必要がある。

冷媒遮断の方法及びその信頼性確保のための技術基準の明確化

⇒冷凍保安則においては、漏えい量上限値など冷媒遮断についての定めが無い。スローリーク

では室内の自然換気により冷媒が排出されるため、室内に可燃領域を生じさせない。漏えい

量上限を小さく抑えようとすれば、装置も大きくなり実用性が低下する為、どこまで漏えい

上限値が許容されるか、また、停電時の対策も含め、その仕様についての検討が必要である。

警報が有効である冷媒量範囲の明確化

⇒ISO5149 では、冷媒充填量/室内容積の値に応じて、その値が比較的低い場合には、警報が有

効な安全対策として認められており、また、病院・学校など自主的避難が難しい者が居る、

もしくは、百貨店・スーパーマーケットなど不特定多数の者が集まる場所において、室内だ

けでは無く管理場所にも警報装置を設置するように定められている。冷媒量に制約を加える

ことにより、警報でも安全性が担保できる可能性もあるため、様々な室内機の設置場所を考

慮した上で、適切な設置場所や、警報が有効である冷媒量の範囲について検討する必要があ

る。

可燃域を作るような急速漏えいを防止するための技術基準(機械継手)の明確化

⇒室内における冷媒漏えい箇所は、室内機中の熱交換器が最も多く、次に室内機と冷媒連絡配

管を繋ぐ機械継手(フレア)が多い。また、天井裏で連絡配管を接続する際にも、ロウ付け

が禁止されている現場では、機械継手が用いられる場合も有る。ロウ付けの代わりに用いら

れるこうした天井裏の機械継手から漏えいした場合には、室内機本体に設置された漏えい検

知器で検知することは難しい。

よって、この様な機械継手(フレア)を可燃冷媒機器に使用する場合、IEC や ISO では、ロ

ウ付け並みの信頼性を有することを判定するための試験基準ほか各種の要件が付加されて

いる(国際規格の章参照)。特に、ISO14903 にはこうした試験基準が定められており、国内

の基準として導入検討をする必要がある。

また、これまで検討してきた微燃性ガスを不活性ガスとして掲名した場合、3冷凍トン~5

冷凍トンのビル用マルチ製品群は高圧ガス保安法の適用除外となる。しかし、この範囲にも安

全要件を実施すべきであり、何らかの拘束力が働くようにすることが重要である。

- 60 -

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参考資料 2

リス

クア

セス

メン

トの

全体

像(ビ

ル用

マル

チ)

【基

本情

報】

①対

象範

囲(冷

房能

力)

14.0

kW(5H

p)~

150kW

(54H

p)②

対象

台数

(ス

トッ

ク)

1000万

台(室

内)、

250万

台(室

外)

③主

な使

用状

況・設

置先

業種

 事

務所

、店

舗、

ホテ

ル、

学校

、病

院、

住宅

など

・代

表能

力クラス

は、

室外

機は

56kW

(20H

p)、

室内

機は

7.1

~8.0

kW(約

3H

p)・室

内機

形態

は、

天井

設置

タイプ(

カセット、

ダクト、

天吊

、壁

掛)が

主で

、床

置設

置タイ

プ(

ローホ

゙ーイ、

トール

ボー

イ)は

約2%

・室

外機

設置

場所

は、

地上

・屋

上設

置(4面

開放

)が

主で

、各

階(1面

開放

)・機

械室

(密

閉)・半

地下

(天

面開

放)も

有り

設置

状況

●設

置ケ

ース

●部

屋の

大き

(m

3)

●冷

房能

力(kW

)●

冷媒

量(Kg)

①平

均的

ケー

ス事

務所

(機

械換

気有

り、

故障

率0.0

25%)

110

56

26.3

許容

値:1.0

E-09(室

内)、

4.0

E-09(室

外)

未対

策時

(機

械換

気停

止)

構成

比未

対策

時市

場平

均対

策時

市場

平均

①設

置状

況1

事務

所:天

井設

置、

夜間

換気

停止

夜間

に空

調及

び換

気が

停止

した

中で

、冷

媒が

滞留

、残

業者

が喫

煙。

110

150

88.1

7.6

E-09

3.8

E-01

②設

置状

況2

飲食

店:床

置設

置、

個室

機械

換気

無を

想定

、床

置か

らの

漏洩

冷媒

が滞

留、

ガス

コンロに

より

着火

。24.3

150

52.8

3.8

E-07

2.0

E-02

③設

置状

況3

カラオ

ケ:天

井設

置、

防音

構造

機械

換気

全停

止を

想定

。防

音の

ため

隙間

無し

、使

用時

間(3h)中

に冷

媒滞

留継

続。

9.5

150

88.1

1.8

E-07

2.1

E-03

④設

置状

況4

美容

室ハ

゙ックヤ

ード

:天

井設

置狭

いス

ペー

スに

、給

湯器

など

の着

火源

。機

械換

気無

し。

14

150

88.1

1.3

E-09

1.6

E-03

⑤設

置状

況5

焼肉

店:天

井設

置個

室で

、ガス

コンロ有

り、

機械

換気

全停

止を

想定

。19.6

150

88.1

2.8

E-09

7.8

E-04

⑥設

置状

況6

天井

裏:天

井設

置(ダ

クト)

換気

無し

で密

閉構

造を

想定

。但

し、

着火

源は

漏電

・火

災以

外無

し。

30.8

56

20.0

3.0

E-10

1.0

E+00

-対

策不

要-

⑦設

置状

況7

宴会

場:天

井設

置機

械換

気全

停止

を想

定。

432

150

88.1

0.0

E+00

5.0

E-03

-対

策不

要-

⑧設

置状

況8

機械

室:水

冷室

外機

、密

閉構

造機

械換

気全

停止

を想

定。

給湯

ボイ

ラーで

着火

。109

150

150

6.1

E-08

6.0

E-03

5.4

E-10

3.2

E-09

4回

換気

(2回

換気

*2系

統)

【最

も平

均的

な設

置ケ

ース

【最

も危

険と

思わ

れる

設置

状況

の抽

出】

●リ

スク

が高

い理

由●

部屋

の大

きさ

(m

3)

●冷

房能

力(kW

)●

冷媒

量(Kg)

●リ

スク

評価

結果

(確

率)

設置

状況

冷媒

漏洩

検知

し、

機械

換気

また

は冷

媒漏

洩遮

断(検

知・換

気・遮

断手

段は

、室

内機

と一

体か

、も

しくは

インター

ロックを

とる

●リ

スク

評価

結果

(確

率)

3.5

E-12

6.6

E-12

1.1

E-08

●左

確率

の条

件(安

全対

策)

抽出

のた

めの

基本

的な

考え

[

室内

機全

形態

及び

各種

シス

テム

(空

冷・水

冷・蓄

熱)を

対象

に、

7社

でリス

ク特

定し

、そ

の内

リスク大

(滞

留し

易さ

、着

火源

多さ

)の

ケース

を抽

出し

詳細

評価

した

]  

(可

燃域

生じ

ず)

- 61 -

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5.3 チラーのリスク評価

① 対象機種と対象台数

屋外設置される空冷ヒートポンプおよび機械室設置される水冷チラーで、能力範囲が 7.5~17500kW。

市場ストックは 13 万 4 千台。すべて定置式であって移動式は除く。

冷媒として R32、R234yf、R1234ze(E)を使用する場合についてリスク評価を行った。

② 通常用いられる使用ケース

・機械室設置のケース

水冷チラーが設置される機械室は、巡回点検・メンテナンス等常に人の出入りする空間であるが、

専門技術者であるオペレータ,サービスマン,工事業者等の出入りに限られる。機械室には着火

源として、電気品、工具、喫煙、燃焼機器、人間に起因するものがある(図 5.3.1)。もっとも

典型的なケースとして、機械室の容積は、平均値 109 ㎥(チラー容量 25 冷凍トン相当)、最小値

75 ㎥(20 冷凍トン相当)であり、第一種製造設備に相当する 192 ㎥(50 冷凍トン相当)を中心

にリスク評価している。

図 5.3.1 機械室イメージ

・屋外設置のケース

空冷ヒートポンプが空気の流れのある屋外に設置される場合、冷媒が滞留することはないが、建

物の壁 2 面と標準防音壁(開口率 25%)2 面で囲まれる場合について冷媒が滞留するケースとし

て検討した。

③ 予見可能な悪条件使用の明確化

・狭小な機械室で、冷媒漏えい量に対して換気量が小さいもしくは換気がない条件

・設備休止で電源が供給されていない機械室のチラーから冷媒が漏れ、機械室が冷媒で充満した条

件からの使用

・冷媒充填量が多い冷凍能力の大きなチラーから長時間冷媒漏えいするが継続する条件。

④ 通常用いられる使用ケースのリスク特定

・機械室設置のケース

冷凍機の容量に対しては、平均的な機械室に相当する容積※で評価しているが、最も狭小な機械室

規模に近い。いずれの冷媒も機械換気がある場合、可燃域は形成されるがリスクは小さい。

R1234ze(E)の場合、可燃域は機械室全体に形成されるが、存在時間が短くリスクは小さい。R32

の場合、可燃域に達する領域は非常に小さくリスクは無視できる。

- 62 -

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※評価条件:25 冷凍トンで 109m3の機械室設置で急速(10kg/h)/噴出(75kg/h)漏れ

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

0 10 20 30 40

Cum

ulati

ve fl

amm

able

volu

me [

m3 m

in]

Flam

mab

le Vo

lum

e [m

3 ]

Time [min]

FV

FV_old

FVT

FVT_old

LFL~UFL

図 5.3.2 可燃空間体積の時間経過[左]、最大となる可燃空間(R1234ze(E) 4 回/h 噴出漏れ)[右]

左図でFVは可燃空間体積、FVTは可燃時間空間積

・屋外設置のケース

通常、四方に壁のない屋上等に設置される空冷ヒートポンプでは,大気の流れもあり可燃空間が

形成されないが、標準設置要領上想定される 2 面の壁,2 面の開口率 25%の壁のケースで形成され

る可燃空間のパターンを示す(図 5.3.3).冷媒漏えい箇所は,①空気熱交換器,②ユニットの化

粧パネル内の 2ケース。冷媒充填量は 11.7kg。

(a)急速漏れ (b)噴出漏れ

図 5.3.3 防音壁内の可燃空間(R32,風速 0m/s)

可燃空間はわずかに床面から上に薄く形成される。しかし屋外の床面に着火源は存在しないため

可燃空間として無視できる。

⑤ 悪条件使用の場合のリスクの特定と安全を担保するための技術的な要求事項

1) 最も厳しい条件は機械換気のない場合である。着火確率は 8.39E-05 件/年・台(表 5.3.1)

に相当するため、通常設置される機械換気がない場合が 1%あれば、着火確率は 8.39E-07 件/

年・台である。これは許容できないため十分な機械換気の設置を必須要件として要求する。機

械換気がある場合、故障率を考慮しても着火確率は 8.19E-12 件/年・台(表 5.3.1)であり十

分許容できるレベルである。

【要求事項】。

・ 機械常時換気を備えること。機械室容積基準4回/h換気とする。

・ 上記内容について、設置を法的に担保する。

2) 工場の生産停止、点検、改修工事などによる長期停電等で機械室の機械換気が停止するリス

クがあり、その間に生じた冷媒漏えいにより機械室に冷媒が充満している場合がある。復電後短

時間で可燃空間を除去することが重要である。評価を行った結果、機械室内に R1234ze(E)が充

満した状態で換気を開始すると、図 5.3.4 に示すが、4 回/h 換気の場合は標準機械室 109㎥で 6

分,最小機械室 75m3で 20分後に可燃空間が消滅する.設備が長期停電から復電後 20 分で稼働

することは難しく十分短時間といえる。

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【要求事項】

・ 冷媒漏えい検知器

・ 機械常時換気を備えること。機械室容積基準4回/h換気とする

・ 冷媒漏えい検知手段による起動インターロック

図5.3.4 換気停止時に冷媒漏えいにより形成された可燃空間の継続時間(R1234ze(E))

(75m3の機械室で 20 分、109m

3では 6 分、それぞれ 4 回/h 換気)

3) 冷媒充填量が非常に大きな機器(50 冷凍トン以上)が機械室に設置※された場合も、相当す

る平均的な機械室であっても機械換気量は相対的に大きく可燃域は形成されない。冷媒充填量が

多い 50冷凍トン以上のチラーから継続して冷媒が漏えいしても機械室が 50冷凍トンに相当する

平均的な 192 ㎥以上の容量があれば、冷媒漏れ量に対して換気量が十分確保されるため可燃空間

は形成されない。R1234ze(E)の結果は R32、R1234yfにも当てはまる。また 4回/h 換気によりチ

ラーの冷媒量充填制限は不要となる。図 5.3.5 に解析結果を示すが、可燃域は漏れ付近の微小な

領域のみである。

図 5.3.5 継続する冷媒漏れが機械換気とバランスした状態 R1234ze(E)

50 冷凍トンのチラーから 192m3の機械室に漏えいした場合(左図 2 回/h、右図 4回/h 換気)

4) それでも狭小な機械室で機械換気が不十分な悪条件の場合は存在する可能性があるので、安

全対策として漏えい検知手段+保護装置を要求する。この場合には急速漏れ/噴出漏れで一時的

に可燃空間が形成され、動力盤のスパークが着火源となるからである。また換気装置、漏えい検

知手段、保護装置により安全を担保するには以下の事項をあわせて要求する。

【要求事項】

・ 無停電電源(UPS)等の独立電源で動作する冷媒漏えい検知手段を 1 つ以上、冷媒の滞留

しやすい位置に(センサー部を)設置する。

・ 警報はライト等に連動し,機械室の外から確認できるものであること。

・ 機械室換気の運転中,冷媒漏えい検知手段の正常動作中(故障状態でないこと)かつ冷媒

漏えい警報の未発報をチラーの起動インターロックとする。

• 機械換気装置,冷媒漏えい検知手段,漏えい警報装置とUPS等の独立電源は,機械設置

時と製造メーカが推奨する周期に点検を実施し,記録を保管すること。

• 暖房機器,給湯機,コンロ等の裸火の機械室持ち込み禁止。禁煙,火気使用厳禁。

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⑥ まとめ

機械換気のある標準的な機械室に設置されるチラー、および屋外防音壁のある悪条件での空冷ヒー

トポンプをそれぞれ標準モデルとした場合、総計としての着火確率は 8.19×10-12 件/台・年であり

許容できる。ただ一部(1%と想定)の機械室に換気が無いと仮定すれば 8.39×10-7件/台・年(表

5.3.1 の換気なしの場合の 1%)となり許容できない(表 5.3.1)。 よって機械換気を義務づけると

ともに、機械換気が不十分な場合あるいは長期停電時の点検を考慮して、漏えい検知手段と警報等

を義務付ける。

表 5.3.1 リスク評価結果

対象 ライフステー

ライフステージ 比率

機械換気無 対策前

[件/台・年]

機械換気有 対策後

[件/台・年] 備考

供給者 物流 0.0517 4.28×10-6 5.43×10-13 -

使用者

据付[搬入] 0.0517 5.55×10-6 2.64×10-12 換気無:

8.39×10-5 →

換気有: 8.19×10-12

据付[試運転] (0.0023) 使用[機械室] 0.2144 1.45×10-5 1.85×10-12 使用[屋外] 0.5002 修理 0.1207

6.38×10-5 3.70×10-13 オーバーホー

ル 0.0098

供給者 廃棄 0.0517 1.83×10-5 9.05×10-12 -

上記リスク評価において留意すべき算定上の条件を以下に示す。

同一機械室に設置されるチラーは 4 台として隣接する機器の発停回数を考慮。

機械換気はダクト用ファンの故障率 2.5×10-4件/年・台を使用し、2 系統構成とした。

機械換気が存在しない確率を 1%とした。

換気無しでは,漏れ頻度を可燃空間そのものが存在頻度とした。

換気のある微小漏れでは可燃空間が存在しないとして可燃空間の存在確率を 0とした。

着火源は可燃空間全体に均等にあると仮定。たとえばライター裸火は床面表面付近にも存在する

とした。

可燃空間の時空積は,水冷チラーは R1234ze(E),空冷ヒートポンプは R32 の値を使用した。

⑦ 残された課題

チラーのリスク評価から、安全は機械室の必要要件により確保されることを示した。それら要件は、

5 冷凍トン以上では 4 回/h 以上の機械換気が動作していることと、警報と連動した漏えい検知手段が冷

媒を検知せずかつ故障状態でないこと、それらとの起動インターロックである。5 冷凍トン未満では冷

媒充填量が小さく、機械室に全量漏えいしても冷媒濃度が 0.25×LFL を超えないため、必要とする要件

はない(表 5.3.2)。

一方で、チラー以外の機器が機械室に設置される場合がある。今回の検討では、機械室の設置される

ユニットから冷媒配管を居室に配する機器(水冷ビル用マルチ)が相当し、ビル用マルチのリスク評価

から 5 冷凍トン未満についても漏えい検知手段と警報にあわせて 4 回/h 以上の機械換気が必要要件で

ある。起動インターロックは不要である。

表 5.3.2 完全に使用するためのガイドライン

製品 冷凍トン

3~5 5~20 20~50 50 以上

水冷ビル用マル

機械室設置 ○ ○

機械換気

漏えい検知手

段・警報

インターロック チラー機械室設置 - ○ ○ ○

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備考) 備考として、ボイラなどバーナの着火源

の可能性について述べる

ボイラや直焚き吸収冷温水機のバーナ吸気は

機械室内の空気を導入するが、バーナ火炎が漏

えい冷媒に着火しないシーケンスタイミングが

組まれている。

点火時、ファンのみの運転を暫く行った後,

パイロットバーナに点火し,その後メイン

バーナを点火させる。通常メインバーナのみ

で燃焼を行っている。停止時、メインバーナ

を停止し,ポストパージのため一定時間ファン

単独運転を継続する。ファンは運転時動作して

いる。

機器内にガスが流入することはあっても,燃焼

室のガスが室内に逆流することはなく,漏えい

ガスによる火災の可能性はない。

Machine room Outside

Main burner

Pilot burner

ignition transformer

Air fan

Exhaust

図 5.3.6 吸収冷温水器のバーナ部

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6. 安全使用のための技術基準と法的拘束力

6.1 安全使用のための技術基準

これまで述べてきたように、業務用パッケージエアコンおよびビル用マルチエアコンでのR32、チ

ラーでのR32、R1234ze(E)の検討結果に基づいて、最も使用ケースが多い平均的ケースにおいては安

全であると考える。ただし、一部の悪条件が重なる場合には安全に使用するための対策が必要であ

る。ここでは安全使用のための技術基準に関してまとめて述べる。技術基準は、下記の①~④の4

つである。

① 部屋の容積当たりの冷媒充填量の制限による濃度管理を最優先する:

壁掛けや天井設置などの場合は、換気が全くない最悪の場合でも、多くの場合、部屋全体が可

燃濃度になる80%近くまでは、室内に漏れた冷媒が周囲に拡散するために発生する可燃空間は無

視できるほど小さい(図6.1参照)。着火事故を回避するために、最も重要なのが、最大冷媒量

が漏れても燃焼下限濃度(LFL)から十分小さい濃度になる冷媒充填量の制限である。これは酸

欠事故や毒性事故にも相通じるところである。表6.1に、ISO817に記載の燃焼下限濃度、毒性限

界濃度及び酸欠限界濃度を示す。ISO817では、燃焼下限濃度に安全率を乗じた値、毒性限界濃度、

酸欠限界濃度のうち、最も小さい値を濃度の管理基準として設定する。燃焼下限濃度の安全率と

して、IEC60335-2-40に基づき0.25を用いると、濃度の管理基準は表6.1に記載の値となる。微燃

性冷媒において、燃焼下限濃度に安全率0.25を乗じた値を濃度の管理基準とすれば、床置き機器

を除き、十分安全であり、他の安全対策は、基本不要と考える。

表6.1 濃度管理基準(日本冷凍空調工業会案)

vol% 燃焼下限

濃度(LFL)

毒性限界

濃度

酸欠限界

濃度

制限値

(管理基準)

R22(参考) - 5.9 14.0 5.9 (=毒性基準)

R410A(参考) - 17.0 14.0 14.0 (=酸欠限界)

R1234yf 6.2 10.0 14.0 1.55 (=0.25×LFL)

R1234ze(E) 6.5 5.9 14.0 1.625(=0.25×LFL)

R32 14.4 22.0 14.0 3.6 (=0.25×LFL)

(理由)5 章で述べたとお

り、部屋の大きさに対

して冷媒充填量が十

分小さければ(LFL25%

以下)、部屋の中に可

燃空間ができる割合

は十分小さい。

図 6.1 R32 の漏えい量と可燃空間の関係(床面積 46.2 ㎡、容積 110m3、換気なし)

② 濃度管理できない場合は常時機械換気、あるいは検知手段およびそれに連動して作動する機械

換気を設置する;

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(1)機械室の場合:

多くが濃度管理値を超える機械室等の場合には、直火の持ち込みを禁止した上で、微燃性冷媒

を使用する機器とのインターロック付き常時機械換気および検知器と警報の両方を義務付ける。

水冷チラーや水冷ビル用マルチなどの冷凍設備の場合は機械室に設置される場合が多いので

機械換気と冷媒ガス漏えいを検知して警報する安全装置を同時に要求する。機械換気は4回/h換

気とし、これらの安全対策により、機器への冷媒充填量の制限は不要である。

(理由)

• 多種の機器が設置される機械室では、建築基準法に従い機械換気が設置されており気密

性も高い。微燃性ガス使用の冷凍設備を機械室に設置する場合には、安全担保するため

に機械換気量として 4 回/h 換気を要求する。

• 4 回換気/h があれば、機械室(内容積 75m3以上)可燃空間が発生しにくいもしくは非常

に短時間であることを確認している。

• 安全装置は独立電源とし、機械換気が動作していることと、警報と連動した漏えい検知手段

が冷媒を検知せずかつ故障状態でないこと、それらとのインターロックをチラーの起動に要求

する。理由は機械室の場合にはチラーとその付帯設備に着火源となりうる大型のスイッ

チ類が存在するからである。

• 小容量の冷凍設備で小さな機械室設置の場合に、部屋容積が小さいために4回/h 換気で

は絶対量として換気量が小さく、噴出漏れ(75kg/h)でも液漏れのような大量漏えいの

場合には、可燃空間を生成する。よって機械換気だけではなく、漏えい検知手段および

警報等も同時に要求する。

(2)居室内の場合:

ビル用マルチエアコンのように室内容積に比べて冷媒量が大きく、濃度管理のみでは十分でな

い場合には、冷媒漏えい検知手段と漏洩冷媒を十分に安全な場所へ排出できる機械換気装置を備

え、可燃域を生成させないようにする。

適切な換気があれば可燃空間を発生させないということは5章で述べてきたとおり。室内の場

合には機械室と異なり、常時換気でなくても良いが、機械換気装置の動作を保証し、漏えいした

時に換気が確実に機能することを要求する。

ただし以下の要件を満たすことを必須とする。

・ 最低換気量を規定する。換気量は LFL/4 であることを十分保証する値にする。

・ 換気装置と冷凍装置のインターロックを必須とする

・ 漏えい検知手段を設置し、検知した場合は換気を動作させる。検知手段は独立電源とす

る。

・ 漏えい検知手段は室内機と一体にするか、一体でない場合は漏えい検知手段と冷凍装置

とのインターロックを必須とする。

(理由)

・ 漏えい検知手段および換気装置が確実に施工されていることを、インターロックを必須

とすることにより保証する。

・ 室内機と換気が停止している場合でも、漏えいを検知した場合には換気が自動復帰し作

動するようにする。

・ 漏えい検知手段は、機器が停止している場合でも作動するように独立電源とする。

・ 漏えい検知手段の仕様、並びに設置・動作保証(試運転時を含む)の在り方については

今後詳細検討する。

③ 機械換気が保証できない場合には、検知手段およびそれに連動して作動する遮断手段あるいは

警報を選択的に設置する。

室内に冷媒漏えい検知手段を備え、漏えい検知時に冷媒漏えいを遮断する手段あるいは警報

を選択的に設置することを要求する。ただし以下の要件を満たすことを必須とする。

・ 遮断装置の遮断量、設置要件を規定する(今後、詳細検討する)

・ 遮断手段あるいは警報と冷凍装置のインターロックを必須とする

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・ 漏えい検知手段を設置し、検知した場合は遮断手段あるいは警報を動作させる。検知手

段は独立電源とする。

・ 漏えい検知手段は室内機と一体にするか、一体でない場合は漏えい検知手段と冷凍装置

とのインターロックを必須とする。

(理由)

・ 漏えい検知手段および遮断手段あるいは警報が確実に施工されていることを、インター

ロックを必須とすることにより保証する。

・ 漏えい検知手段は、機器が停止している場合でも作動するように独立電源とする。

・ 漏えい検知手段の仕様、並びに設置・動作保証(試運転時を含む)の在り方については

今後詳細検討する。

・ 警報の効果については、さらに検討し、遮断手段の選択、組み合わせ要件を規定する

(今後、詳細検討する)。警報時、部屋の在室者が適切な安全対策をとれる状況では、

警報は有効な手段である。

④ 上記技術基準の他に、各機器の特徴に応じた個別技術基準が必要:

これまでの各章で詳細述べてきたとおり、上記①②③の技術基準の他に機器個別の要求基準が

必要である。例えば

・ ビル用マルチにおける総充填量制限X[kg]の設定

・ 室外機で半地下や狭小地設置での技術基準

・ 床置き室内機の安全対策(製造者責任で対応可能)

など

なお、低温機器に関しては、まだリスクアセスメントが完了していない。上記安全対策は、低温機

器も想定した上で設定したが、その安全対策により、着火リスクが許容粋に収まるか、低温機器を

運用する際に設置等の問題があるものはないか、等は不明であり、今後検討を進める必要がある

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6.2 安全基準の法的拘束力について

各機器において、微燃性冷媒を安全使用するために必要な技術基準を表6.2に示す。

表6.2 各機器を安全に使用するために必要な技術基準

製品 冷凍トン 安全対策

3~5 5~20 20以上

業務用パッケージエアコン

○ ○

① 充填量制限による濃度管理を優先。

濃度管理ができなければ

② 常時機械換気か

③ 漏えい検知に基づく換気、漏えい遮

断手段、警報のいずれかを選択する

技術基準とする。

④ 機械室設置の場合は

常時換気(4回/h)と漏えい検知に基

づく警報の両方を技術基準とする。

ビル用マルチエアコン・GHP

○ ○

ビル用マルチの水冷室外機

(機械室) ○ ○

チラー(機械室)

- ○ ○

低温機器(コ

ンデンシングユ

ニット)

スーパーマーケッ

ト等での使用 ○ ○ ○

冷凍冷蔵庫等と

接続 ○ ○ ○

各機器で安全使用するために必要な技術基準を守るためには、何らかの法的拘束力が必要である。

すべての機器を想定すると、各冷凍トンの区分で冷媒充填量制限による濃度管理を優先する。充

填量制限で濃度管理ができない場合は常時換気か、漏えいを検出し換気あるいは遮断、警報のいず

れかの手段から選択し、場合によっては組み合わせて使用することを必須とする。

業務用パッケージエアコンとチラーに関して安全技術基準は明確になっている。

ただ、ビル用マルチエアコンについては、今後、最大許容冷媒量、実用かつ有効な冷媒漏えい遮

断弁、冷媒漏えい検知手段の設置位置(主に機器本体に設置する場合)、動作保証方法等の仕様が決

まっていない部分についての詳細な詰めが必要である。

さらに低温機器は現在リスクアセスメントを実施中であり、低温機器の設置ケースと安全対策と

の関係はまだ明確になっていないが、安全対策は限られており、今回提示した技術基準の組み合わ

せで安全対策になると考えるが、その有効性や設置時・運用時に問題が生じないかについては、今

後検討を進める必要がある。

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6.3 当安全対策の効果

これまで述べてきた安全対策によって、酸欠等の高圧ガス全体の事故への効果について述べる。

高圧ガス保安協会の事故事例データベースから 1990 年~2013 年まで 24 年間の漏れ事故や人身事故

から過去事例と比較してその効果を検証する。

対象機種は報告の義務がある 20 冷凍トン以上の機器であるとし、日本冷凍空調工業会のデータベ

ースより年間販売台数は、設備用冷凍空調機約 6 万台/年、チラー約 1 万台/年、ターボ 125 台/

年であり総合計は約 7 万台である。チラーや設備用冷凍空調は比較的製品寿命が長いので 20 年とす

ると、ストック台数は 140 万台となる。ここで母数に設備用冷凍空調を含まない場合もあるがその

場合は 20 万台。設備用で、20 トン以上かどうかという区分は難しいため、ここでは大きな母数であ

る 140 万台とする。また高圧ガス保安協会に報告されているデータベースから、24 年間で漏えいに

基づく事故を検索すると漏えい事故 637 件、軽傷事故 12 件、重傷事故なし、死亡事故1件。母数を

ストック台数の 140 万台として確率を計算した(表 6.3.1)。これらを図にして、日冷工の許容値も

記載すると以下のようになる。死亡事故の一件だけが許容範囲を超えているが、亡くなられた工事

業者がどのような経緯で事故に至ったのか実態は充分明らかではないので、この一件だけで判断す

るのは難しい。

表 6.3.1 1990~2013 年の高圧ガス事故(高圧ガス保安協会事故データベースより)

件数 全高圧ガス 内 LPG 内フロロカーボン(漏えい

起因のみ)と事故確率

内ア ン モニ

漏えい事故件数 9,686 5,842 (637) 4.6E-4 305

軽傷事故 713 337 (12) 8.6E-6 31

重傷事故 239 116 (0) 0 6

死亡事故 79 23 (1) 7.1E-7 5

(計)人身事故全体 926 433 (13) 9.2E-6 37

6.3.1 過去の事故事例と日本冷凍空調工業会の許容値

表 6.3.2 に 25 年間の事故事例を、記載するがこれまで述べてきた対策により、火災事故以外の事故

も防止できる効果が期待できる。

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表 6.3.2 1990~2013 年の高圧ガス人身事故(漏えい起因に限る)

死亡事故年月日 事故区分 事故名称 物質名 1次事象 業種 着火源 事故概要

1994/10/3製造事業所(冷凍)

冷凍機修理中のフルオロカーボン噴出

フルオロカーボン

漏洩等 食品 無<定修中>

地下室に設置している圧縮機が不調であったため、メンテナンス会社の作業員が修理を行っていた。修理を開始していたが、修理状況を確認に行った冷凍事業所の社長が、倒れている作業員を発見した。この作業員は圧縮機の冷媒、油の交換を行うため、冷媒をホースで戸外に大気放出していたところ、機械室内にフルオロカーボンが充満し、酸欠に至ったものと思われる。

軽傷事故年月日 事故区分 事故名称 物質名 1次事象 業種 着火源 取扱状態 事故概要

1987/7/10製造事業所(冷凍)

フロンガス漏えい

フルオロカーボン

漏洩等 一般化学 無<定修中>

ワクチン製造装置である凍結乾燥機の冷媒を循環させるポンプが故障したため、メーカーの作業員2名がポンプの交換作業を行った。この時、熱交換器に冷媒ガスを再冷却するためのフロン502を室内に放出した。別室でバーナーを使用していた社員が吐き気、喉の痛み等を訴えた。原因はフロン502がバーナーの熱により有毒ガスに変化し、そのガスを吸入したものと推定されている。

1990/2/27製造事業所(冷凍)

冷凍設備点検中のフルオロカーボン漏えい

フルオロカーボン

漏洩等その他(ビル業)

無<定修中>

非ユニット型冷凍機の定期点検で安全弁の取付中、作業員が体のバランスをくずして、足元の銅配管を踏んだ。このため、銅配管の取付部からガスが漏えいした。この漏えい箇所を修理するため、圧力を下げようとして、油タンク下部プラグをゆるめたところガスが噴出した。

1996/6/19製造事業所(冷凍)

フルオロカーボン冷凍配管修理中の酸欠

フルオロカーボン

漏洩等 食品 無<工事中>

スーパーの食品冷却ケースが不調なため、冷凍工事業者に点検・修理を依頼した。閉店後ケースから商品を撤去し調査したところ、店舗内の床下に設置されている配管のエルボ部につまりが認められたので、作業員2名が地下空間に入り配管をカットしたところフルオロカーボンが漏れ酸欠状態となって1名が意識を失って倒れ、もう1名の作業員が救出しようとしたが手に負えず、レスキュー隊によって救出された。エルボ部のつまりはコンプレッサーの潤滑油が配管内に入り潤滑油に含まれる水分が氷結し冷凍効果を悪くしたもの。

1998/5/31製造事業所(冷凍)

配管袋ナット増し締め中のフルオロカーボン噴出

フルオロカーボン

漏洩等 一般化学 無<定修中>

冷凍事業所で冷凍機の出口側に設置された油溜器排気配管の袋ナット部からフルオロカーボンが漏れているのを発見し上司に連絡し増し締め作業に入った。まず下流側に取付いたドレンポット、凝縮器及び排気ポンプの元バルブを閉め、冷凍機の出口バルブ及び油溜器の元バルブを開けたまま排気配管の袋ナットを緩め、内圧を抜く操作を行ったところ、緩め過ぎて袋ナットが外れフルオロカーボンが噴出した。作業者は素手で袋ナットを締めようとしたため手に凍傷を負った。

1999/10/8製造事業所(冷凍)

スーパーの冷却配管からのフルオロカーボン漏えい

フルオロカーボン

漏洩等その他(空調設備)

無<通常運転中>(停止)

スーパーの惣菜調理場に隣接した冷凍機械室から冷媒ガスのフルオロカーボン22が漏えいした。冷凍室のドアを開けたため調理場にガスが流れ込み、調理場で働いていた8名の内、1名がめまいを覚え倒れた。コンプレッサユニットとフリーザーをつなぐ配管のろう付け溶接部に振動によって亀裂が入りガスが漏えいしたもの。

2001/6/15製造事業所(冷凍)

冷凍設備の熱交換器からのフルオロカーボン漏えい

フルオロカーボン

漏洩等 食品 無<スタートアップ中>

食品加工工場で昼休みが終わり、1階加工室で作業を開始したところ従業員12名が頭痛等の体調不良を訴えた。元冷凍責任者が2階機械室に設置された熱交換器(冷却管)の元バルブを閉め、加工室の換気を行った。当該熱交換器は10年ほど使用しておらず、久しぶりに稼働させたもので何らかの原因で冷却管に冷媒ガスが入り込み加工室に漏れ出したものとみられている。

2002/9/10 移動

車輌に積載した容器からのフロンガス漏えい

フルオロカーボン22

漏洩等 運送 無<移動中>

配送車にフロン22ガス容器20本(100L×3本、20L×17本)を積載し国道を走行していたところ、運転席と助手席の間にあるコンソールボックス上から物が落ち、それを慌てて拾おうとして前方不注意となり、信号で停車していた車に追突した。この衝撃により20L容器17本が荷台上の後部に散乱し、内3本のバルブが緩みガスが漏えいした。

2004/9/25製造事業所(コ)

配管の腐食による塩酸・フッ酸・フロン混合ガスの漏えい

混合ガス(塩酸、フッ酸、フルオロカーボン124、フルオロカーボン125)

漏洩等 一般化学 無<通常運転中>

フロン製造施設内の混酸塔から脱酸塔までの配管入口よりガス漏えいしているのを、付近で工事していた作業者が発見。報告を受けた当直者は現場確認後、設備運転の緊急停止と装置の脱圧及び散水措置を行った。漏えいにより塩化水素ガスを吸引した作業者が軽傷を負った。プロセスにおけるフッ酸がライニング部に拡散、浸透したため母剤が腐食。その際に発生した水素ガスがライニングと配管部の間に蓄積したため圧力が上昇し、ライニングが内側へふくれるように変形、膨れの進展によりライニングに割れが発生して、プロセス流体中のフッ酸が炭素鋼を内面腐食させたこととともに、当該発災箇所は機器と架構に挟まれた狭い場所であったために日常点検で見えにくい部分でもあった。さらに外面腐食対策が不十分であったため外面からの腐食と重なり、配管が開口してガスが漏えいしたもの。今後はライニング設備のプロセスを変更し、点検を強化した他にも、外面腐食対策として、点検、補修の強化を行った。

2006/8/22製造事業所(冷凍)

冷凍設備におけるフルオロカーボン漏えい

フルオロカーボン22

漏洩等 食品 無<通常運転中>

17時頃、冷蔵倉庫作業員から息苦しくて庫内に入れないと連絡を受け、工務作業員が現場を確認したところ、冷媒(フロン22)漏れの可能性があると判断した。直ちに冷凍機械室に行ったところ、圧縮機は停止状態で圧力ゲージを見ると0に近い状態であった。このため、ほぼ全量(推定30㎏)が庫内で漏えいしたと判断し、冷凍庫内の作業を中止した。再び庫内に戻ると、ガスが充満して入れない状態だったため、排風器で庫内を換気した。17時30分頃、出荷作業を行っていた社員(17時前に15分程度庫内を担当)が、体調不良を訴え嘔吐したため18時に救急車で病院に搬送した。また、倉庫作業員の話では、13時頃からいつもと違う息苦しさ、異臭があった感じがした、との説明があった。その後、機械室より窒素ガスを配管内に入れることにより、ユニットクーラーの冷却銅管に2mm程の穴を発見した。原因は、ユニットクーラーの熱交換器の銅配管と霜取り用ヒーターの電気配線の被覆が剥がれ、冷却コイル(銅管)と配線がじかに接触したためとみられる。剥がれた原因は、霜の付着・溶解の繰り返しによると考えられる。電気配線には、露出しないようにサイドカバーが設置してあるが、カバー内に着水がみられ、電気配線と銅管とが接近し、ついに配線が銅管に押しつけられ、12時にタイマー作動する霜取り用ヒーター通電時に漏電して銅管に2㎜程の穴があいたと推定される。今後は、電気配線と銅管が接触しないよう、配線をカバー外に出すこととし、また漏電ブレーカーを取り付けることとした。庫内の作業前には、フロンガス、酸素濃度測定等の検査を検討することとした。さらに、従業員に対し、ガスの性質等保安教育を実施することとした。

2006/12/13製造事業所(冷凍)

冷凍機からのフルオロカーボン22の漏えい

フルオロカーボン22

漏洩等その他(スーパー)

無<通常運転中>

スーパーマーケットに設置された青果用冷凍機の蒸発器(ユニットクーラー)の吸い込み側配管(外径13㎜銅配管)が破損し、大量のガスが漏えいした(通常運転中)。このため、バックヤード付近の売り場で作業をしていたアルバイト従業員は気分が悪くなってトイレに入ったところ意識を失い、また、店内の買物客1名も気分が悪くなった。従業員が調べたところ、冷蔵庫内でガスが漏えいする音がしたため出入り口等を開放して換気を行い、消防に連絡するとともに、客の避難誘導を行った。ガスは、バックヤード内と一部売場に拡散し、約50m離れている総菜作業室内のLPガス漏れ警報器が作動した。推定漏えい量は、約150kgであった。原因は、ユニットクーラーの吸い込み側に、10㎝位の厚さで氷が付着していたため、従業員が氷の除去作業を行っていたが、この作業に鋭利な工具を使用していたため、誤ってクーラーの配管を破損してしまったためとみられる。クーラーを詳細に調査したところ、銅管に窪みがあり、中心部は貫通していた(窪みの大きさ:20㎜×7㎜。貫通部の径:約4㎜)。なお、作業を行っていた本人が、漏えいに気付いたかどうかは不明である。今後は、全店従業員に対する注意喚起を実施し、来客避難誘導、換気措置など緊急時対応の訓練を実施することとした。また、専門業者に依頼して全店の冷凍設備の緊急点検を実施し、さらに問題があれば設備の変更を検討することとした。

2010/8/7製造事業所(冷凍)

瞬停による冷凍設備の冷媒圧力が上昇し安全弁作動

フルオロカーボン22

漏洩等 食品 無<通常運転中>

平成22年8月7日16時00分頃、工場内の電力が雷により瞬停を発生し、冷却塔ファンのインバーターが停止した。これにより冷却水の水温は上昇し、その結果、冷凍機内部のフロンの圧力が上昇した。2台のうち1台は圧力スイッチが作動し停止したが、もう1台は圧力スイッチが作動せず運転を継続した。その結果、安全弁が作動し、フロンガス(R-22)約100kgが噴出漏えいした。原因は、冷凍機の圧力スイッチが老朽化により適切に作動しなかったためであった。また、冷却塔ファンが瞬停で停止する設定となっていたことも一因と考えられる。今後は、圧力スイッチの交換、及び冷却塔ファンが瞬停で停止しないよう、設定を変更することとした。

2010/10/24製造事業所(コ)

バルブに残留していた薬液が飛沫

フルオロカーボン21、フルオロカーボン22、フッ化水素

その他 一般化学 無<定修中>

事業所内のフルオロカーボン22製造施設の整備中、施設より取り外していた自動バルブ(ボールバルブ)の内部洗浄のため、バルブを開とした際に工事事業者の1名に、残存していた酸性の薬液(フッ酸等を含む)が飛沫し、右腕などにかかり薬傷した。原因は、この自動バルブは、過去一年間は閉止状態(自動バルブの為、DCSに開閉の記録がなし。これまでバルブ本体は閉止状態)で開放されておらず、バルブのボール部に薬液が浸透し、バルブの中に蓄積されていったものと判断(バルブボールの容量100ml:50φ×50mm)推定される。また、手順書に基づき、施設からの自動バルブ取り外し前に、「バルブ開を確認し残留物がないことを確認する手順」になっていたが、バルブ取り外し後に確認することとし、その作業を失念していたためであった。今後は、工事の確認体制を強化し工事全数を再チェック、安全性の確認を取ってから着工することとした。更に、設備引渡し時の安全確認について再徹底(バルブは開放状態で渡す)するとともに、専門家による安全作業確認のパトロール強化を実施することとした。

2011/3/10製造事業所(冷凍)

冷凍設備の配管から冷媒漏えい

フルオロカーボン

漏洩 機械 無<製造中>(定常運転)

事業所内で、恒温室の温度が上昇したため、取扱責任者が状況を確認したところ、冷凍設備の圧縮機圧力が低下していた。翌日、メンテナンス事業者と確認したところ、配管部にピンホールが3箇所発生しており、冷媒が漏えいしていることが判明した。原因は、配管を固定していた結束バンドが切れていたため、配管が振動により接触し、減肉してピンホールが発生したと推定される。

2012/5/27製造事業所(冷凍)

誤って冷媒の入っている配管を切断し、漏えい

フルオロカーボン22

漏洩 食品 無<停止中>(工事中)

事業所内で、冷凍機の切り離し工事のため、冷媒配管内のガス処理後、配管の切り離しを行っていた。その際、誤って冷媒の入っている配管を切断したため、フルオロカーボン22が噴出した。漏えいを止めようと元弁に近づいた作業員1名が、酸欠症となった。

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添付資料 3

二酸化炭素の規制合理化要望の立証資料

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1.CO2冷媒の規制緩和の必要性について

1.1 規制緩和の必要性

CO2冷媒は特性上、中温域の空調用途には不向きであるが高温域の給湯用途には適しているた

め家庭用給湯機として2000年代に入り急速に普及した。

そして近年、冷凍サイクルの工夫により低温域の冷凍・冷蔵用途として5冷凍トン未満の超臨界

サイクルのCO2コンデンシングユニットが国内で流通し始めている。また安全性の向上と省エネ

ルギーの観点から大型冷凍・冷蔵倉庫用としてアンモニア直膨システムに代わってCO2を2次冷媒

としたアンモニア/ CO2冷凍システムも普及し始めている。

しかしながら過去の冷媒規制緩和時に、CO2冷媒を使用する商品が市場に出回っている数が少

なかったため、CO2冷媒は不活性ガスであるにも関わらず、プロパンなどと同じ“その他のガス”

として第3グループに分類に据え置かれたままである。

そこで省エネルギー性を確保しながら、高GWPの不活性フルオロカーボンの使用を削減し、安全

でかつ低GWPの冷媒を普及させると言う国策推進のためにも普及が進みつつあるCO2冷媒の規制

緩和が望まれるところである。

1.2 規制緩和の内容

広範囲の用途に使用できるフルオロカーボンと異なり、CO2冷媒はその特性から現在は給湯用途

や冷凍・冷蔵用途に限られている。人が通常滞在する空間の直膨式空調用途としても国策として

CO2やその他GWP100未満の冷媒を利用した冷凍空調機器の開発推進を行っているが商品開発のハ

ードルは高く数年以内に実現する見通しはまだ立っていない。また既に従来の不活性フルオロカ

ーボンの代替用として比較的に安全な低GWPフルオロカーボンを使用する高効率な冷凍空調機器

が開発されつつあり、将来もCO2冷媒の空調用途の可能性は低く、現在の用途に限られると考えら

れる。

CO2冷媒の規制緩和は、ヒートポンプ給湯機と冷凍・冷蔵用冷凍機を対象として

3冷凍トン以上5冷凍トン未満を[第2種製造者]から[その他製造者]に緩和することである。

CO2冷媒の3~5冷凍トンをR404Aの5~20冷凍トンと同様に[その他製造者] 扱いにすること

により、冷凍設備使用開始日(高圧ガス製造開始日)の20日前までに高圧ガス製造届出書を事業所

を管轄する都道府県知事に届出なければならないこと、また、冷媒設備の修理の際に都道府県知

事への届出が必要なこと等が免除され、大手および中小スーパーマーケット事業者等にとって大

きなメリットとなる。

20冷凍トン以上の大型領域のCO2蒸気圧縮サイクル冷凍設備は未だ市場実績がないが、大型領

域でユニット型アンモニア冷凍設備と圧縮機構を持たないCO2自然循環式冷凍設備の組み合せシ

ステムが存在している。このシステムはユニット型アンモニア冷凍設備として扱われているので

今回の規制緩和審議の対象外とした。

CO2冷媒の規制緩和に当たって、安全上注意すべき点は高圧であることと漏えい冷媒管理にお

ける限界濃度が小さいことである。これら安全上の注意点が3から5冷凍トンでどの程度考慮す

べきかを評価しておく必要がある。

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2.CO2冷媒に関する国際規格の動向

平成25年度の当事業報告書に記載のように昨年度はCO2冷媒活用が先行しているEUの規制体系

を中心に調査し、CO2冷媒に対する特別な規制はなくR410A、R404A、R134aと同等の基準で扱われ

ていると報告した。本年度はISO、IEC、ANSI/ASHRAE、ULを含めて調査を行った。

CO2冷媒に関しANSI/ASHRAE-15で、CO2冷媒の特殊なサイクル[自然循環(ポンプ搬送)サイクル

やアンモニア/ CO2などのカスケードサイクル]における設計圧力の余裕の取り方[設計圧力は系

内で想定される最高圧力の2割増し以上の値とする]の規制はあったが、通常のサイクルでは特別

な規制はなかった。また海外規格の動向としては冷凍設備の強度確認試験圧力は高圧ガス保安法

の3/4倍、即ち設計圧力の3倍に統一される方向である。[参照:別紙 表1]

3.CO2冷媒を使用した冷凍設備の市場実績

2013年度までのCO2冷媒の冷凍機器の市場実績数は下記のようになっているが,これまで人身事

故の発生の情報は無く,安全に稼働している.

海外;スーパー向けCO2 transcritical冷凍機

・欧州:2,885店舗 (冷凍能力20冷凍トン前後のものもある)

・北米:4店舗

・カナダ:64店舗

日本;

・家庭用エコ給湯機:400万 台以上

・業務用エコ給湯機:21,000 台以上

・別置型冷凍機(コンデンシングユニット) 約300台(3トン未満)、約200台(3トン以上5トン未満)

2014年度末には累計1,100台を超える予定

・内蔵ショーケース:5,000台以上

・自動販売機:30万 台(推定)

・アンモニア/ CO2システム:1,000台超 (内約30%が20冷凍トン~50冷凍トン)

4.CO2冷媒を使用した冷凍設備の事故例

高圧ガス保安協会(KHK)の高圧ガス事故データベースに、昔ではあるが事故内容を分析するため

に1990年以前の事故情報も集約して【1965年~2013年】におけるCO2冷媒を用いた冷凍設備に係

わる事故を調査した[表4.1]。報告義務のある3冷凍トン以上の冷凍設備について人身事故は0件

で、その他の事故5件 [全て運転中の漏えい事故。3件は機器の異常発報により発見され、1件は

熱交換された水溶液の変色により発見され、残りの1件はアンモニア冷凍機異常停止によるCO2系

統の安全弁作動]のみであった。アンモニア冷凍設備における人身事故は多く97件であった。

また各ガスについて冷凍設備に限定せず高圧ガス事故全体として見た場合に各ガスの人身事故

者数を見てみると総計5,483名に対して炭酸ガスは140名(2.6%)、フルオロカーボンは103名(1.9%)、

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アンモニアは336名(6.1%)であった。人身事故件数で見ても同様の傾向にある。以上より炭酸ガス

はフルオロカーボンほど安全ではないが、少なくともアンモニアより安全と考えて良い。

表4.1 KHK高圧ガス事故データベース〔1965年~2013年〕

この他に報告義務のない3冷凍トン未満の冷凍設備に関して、環境に起因する異常状態想定ミ

スが原因の全面腐食による家庭用CO2ヒートポンプ給湯機の圧縮機シェル破損事故が発生してい

る。

この事故の発生メカニズムは,

①ドレン排水管施工の不具合や、枯葉、泥などによりヒートポンプユニット底部の排水口および

排水穴が詰まることにより、機内空気熱交換器で発生するドレン水が圧縮機下部に溜まる異常な

状態になること。

②この溜まったドレン水に設置環境により塩分などが溶け込むこと。

③圧縮機周囲に巻かれた防音材がその下端からこの塩分を含んだ水を吸い上げること。④圧縮機

の運転で防音材に含まれた水分が蒸発し、塩分などが圧縮機シェル表面で濃縮。

⑤ヒートポンプ給湯機運転のたびに圧縮機シェル表面は高温となるため塩分などが濃縮した水分

による腐食が促進されシェル全周にわたり減肉が進行し内圧に耐えられなくなり破損に至る。

これまでこの破損事故は14件発生しているが、人的な被害はなく、またメーカのリコール対応によ

り安全に収束している。

5.CO2 を安全に使用するために必要な技術基準の考え方

5.1 3 冷凍トンから 5 冷凍トンの小型冷凍設備での安全性の考え方

CO2冷媒は高圧ガス保安法でも不活性ガスの筆頭にあげられ、国際基準の枠組みでもA1冷媒と

して位置づけられているが、冷媒の特質および安全性の両面から配慮すべき事項を抽出し安全に

使用するために必要な技術基準の考え方を検討した。

5.1.1 CO2冷媒の特質

CO2ガスは市中においてドライアイスや液化炭酸ガスとして一般の人々に広く扱われている

物質である。飲食店や縁日でも見かけられる緑色の液化炭酸ガスボンベは高温にさらされると

急激に圧力が上昇し安全弁が作動するため商売の妨げになるとの陳情もあり、2007年に安全弁

の作動上限圧力は、「耐圧試験圧力の8/10」から「耐圧試験圧力」まで高くすること、つまり、

15.68MPaから19.6MPaに引き上げて使用されるに至っている。(付帯条件は無い)

CO2ガスの冷媒としての熱・物理的特性について一般的に使用されているフルオロカーボン

表5. KHK高圧ガス事故デ タ ス[1965年 2013年]人身事故 その他事故 事故総数

死者 重傷 軽傷 計 件 件 件事故全体 328 747 4,408 5,483 1,803 10,071 11,874炭酸ガス事故全体 19 11 110 140 54 278 332炭酸ガス冷凍設備事故 0 0 0 0 0 5 5フルオロカーボン事故全体 5 9 89 103 34 683 717フルオロカーボン冷凍設備事故 3 3 82 88 20 624 644アンモニア事故全体 22 35 279 336 127 490 617アンモニア冷凍設備事故 16 28 224 268 97 374 471

人身事故(名)

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(R410A・R134a)と比較した結果を表5.1.1に示す。CO2冷媒は自然冷媒でありオゾン破壊係数

がゼロ、地球温暖化係数(GWP)は1と環境にやさしい冷媒であり、また飽和蒸気密度が高く単

位体積当たりの冷凍能力が大きいことを特徴とする。一方で常温の飽和蒸気圧はR410Aの

1.65MPaに比べ6.4MPaと約4倍と高圧となる。また、臨界温度が31.1℃とフルオロカーボンに比

べ低い。

31.1℃以上の超臨界状態では圧力を高くしても液化しなくなる性質があるため、臨界温度以

上での冷媒圧力は回路内の冷媒充填量と冷媒の温度によって決まり、高圧側設計圧力は一般的

に12~15MPaになる。最新のコンデンシグユニット型冷凍機では冷凍機と蒸発器間の高圧側冷媒

搬送管路を中間圧化し、高圧発生部分を冷凍機本体内のみとして、冷凍機外部の配管内圧力を

運転時は常時6MPa以下に減圧にしたシステムもあるが、広く普及しているヒートポンプ給湯機

では高圧14MPa、低圧9MPaとして、また、コンデンシグユニット型冷凍機では高圧12MPa、中・

低圧8MPaで設計されている。フルオロカーボンに比べると設計圧力は高いが、単位体積当たり

の冷凍能力が大きいことから冷媒充填量は少なくすることができる。

表 5.1.1 CO2 の熱-物理的特性(R410A・R134a との比較)

項目 CO2 R404A R410A R134a 地球温暖化係数(GWP) (-) 1 3920 2090 1340 オゾン層破壊係数(ODP) (-) 0 0 0 0 飽和蒸気圧(絶対圧)

-20℃ (MPa) 1.97 0.30 0.40 0.13 0℃ (MPa) 3.49 0.60 0.80 0.29 20℃ (MPa) 5.73 1.08 1.44 0.57 25℃ (MPa) 6.40 1.25 1.65 0.67 30℃ (MPa) 7.21 1.41 1.88 0.77

0℃での飽和蒸気密度 (kg/m3) 97.64 30.47 30.44 14.42 9℃での蒸発した場合の単位体積当たりの冷凍能力

(※1) (MJ/m3) 14.70 4.51 6.40 2.90

沸点 (℃) -78.4 -46.1 -51.4 -26.5 臨界点 (℃) 31.10 72.0 71.4 101.03

(MPa) 7.377 3.72 4.900 4.056 (※1:空調 JIS C9612 に準拠したシミュレーション条件で算出)

5.1.2 CO2冷媒の安全性

CO2冷媒自体は無害であるが、高濃度のCO2冷媒を吸入すると人体に影響があるため、空気中

のCO2濃度が人体に与える影響(表5.1.2)と不活性冷媒に共通する酸素欠乏の危険性(表5.1.3)

を考慮し、不活性ガスのフルオロカーボンと同様に冷媒漏えいに対する安全配慮が必要である。

高濃度のCO2冷媒の影響と酸素欠乏双方の点を加味した冷媒漏えい時の限界濃度はKHK施設

基準KHKS0302-1に示されている。KHK施設基準及びANSI/ASHRAEの規格からフルオロカーボンと

CO2にて冷媒ガスの限界濃度及び限界濃度時の酸素濃度を比較した結果を表5.1.4に示す。職業

暴露限界(OEL)はフルオロカーボンに比べ約5倍ではあるが、漏えい時の限界濃度はフルオロ

カーボンに比べ1/3~1/3.5(ppmベース)である。

設置に際しては漏えいした冷媒ガスが滞留しないように開口部または機械換気装置の設置、

または漏えい検知警報設備などを設置し、安全を確保する必要がある。

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表5.1.2 CO2濃度と人に対する作用

CO2 濃度(vol%) 人体への影響 0.5 長期安全限界 3.0 生理機能の変化が体重、血圧、心拍数等の変化として表れる 5.0 呼吸困難が極度に困難になる。30 分暴露で中毒症状になる。

7~9 許容限界。激しいあえぎの症状となり約 15 分で意識不明となる 25~30 呼吸低下、血圧低下、昏睡状態になり数時間後に死に至る。

出典:Kent,A.D :Occupational Health Review, Vol.21 No.1-2 1970, p.1 Canada

表 5.1.3 酸素欠乏の危険性

出展:酸素欠乏「船員災害防止協会」

表 5.1.4 冷媒ガスの限界濃度および酸素濃度

冷媒 ANSI/ASHRAE_Standard 34-2013 KHKS0302 安全区分 職 業 暴 露 限 界

OEL(ppm(v/v)) 冷媒濃度限界 RCL(ppm(v/v))

限界濃度 (ppm(v/v))

限界濃度における酸

素濃度(%) R744 A1 5,000 40,000 40,000 20.14 R32 A2L 1,000 36,000 28,500 - R134a A1 1,000 50,000 60,000 19.70 R404A A1 1,000 130,000 120,000 18.45 R410A A1 1,000 140,000 140,000 18.00

5.1.3 冷媒の特質上安全を考慮すべき項目とその対応の考え方

冷媒の特質および安全性の両面から検討した結果、CO2冷媒を冷凍機として扱う場合の配

慮すべき事項は次の点であり、それら項目に対する技術基準の考え方を示す。

(1)フルオロカーボンに比べ設計圧力が高い

・CO2 冷媒は他の冷媒と比べて圧力は高いが、他の冷媒と同様に用途によって用いる材料に

生じる応力が許容応力以下となるように高圧ガス保安法に適合した設計がなされ、耐圧設

計上は安全と言える。 ・小容量の CO2 冷凍設備(3冷凍トン以上5冷凍トン未満)においては圧力容器に該当する容

器(内径が高圧ガス保安法では 160mm を超えるもの、ISO、ASHRAE では 152mm を超

えるもの)を持たない設計が行われている。 ・CO2 冷凍設備の高圧側熱交換器[ガスクーラ]は細管の集合体であるため、一部が破損して

も瞬時に高圧ガスの全エネルギーが放出されることは無く、安全と言える。

酸素濃度 状況 21% 通常濃度 18% 安全限界。しかしながら、連続換気が必要。 16% 呼吸、脈拍増加、頭痛、悪心、はきけ 12% めまい、はきけ、筋力低下、体重支持不能、墜落(死につながる。) 10% 顔面蒼白、意識不明、嘔吐(吐物が気道閉塞で窒息死) 8% 失神昏倒、7~8 分以内に死亡 6% 瞬時に昏倒、呼吸停止、けいれん、6 分で死亡

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・CO2 別置型ショーケースシステムにおいて、不特定多数の人が接近するショーケース蒸発

器の圧力は R410A エアコンにおける暖房時の室内熱交換器の圧力と比較して同等以下で

ある。 ・高圧な CO2 冷媒を使用する場合は、耐圧設計のために単に肉厚を上げるだけでなく、配管

や熱交換器に使用する伝熱管の細径化を図り、内容積を小さくしている。 一例として表 5.1.5 でコンビニエンスストアの冷凍冷蔵システムにおける配管および熱交

換器の比較を示す。CO2 ではフルオロカーボンに比べ比体積が約 1/4 と小さく、前述した

ように冷媒配管の細径化により限界内圧が高くなり、また、熱交換器内容積も約 1/3 程度

まで小型化されている。その結果、冷凍設備で使用する冷媒量は R404A に比べて 50%以

下になる(冷媒充填量に関しては次項(2)にて記述)。 表 5.1.5 コンビニエンスストアにおける冷凍冷蔵システムの配管および熱交換器比較

冷媒配管寸法(mm) 低圧側熱交換器回路内容積 (cm3)

低圧側 高圧側 店内ケース A 店内ケース B 店内ケース C 店内ケース D

R404A 外径:31.75 外径:15.88 2569 8639 3680 6222

CO2 外径: 9.35 外径: 6.35 683

(0.27)※

1708

(0.20)※

1708

(0.46)※

3147

(0.51)※

※( )内の数値は回路内容積の R404A 比を表す

・高圧ガス保安法の技術基準よりも低レベルの基準(設計圧力の 3 倍圧の強度確認試験)を

安全の担保とした国内の CO2 家庭用ヒートポンプ給湯機や海外の CO2 低温用冷凍機の市

場実績はある。 ・最新の CO2 システムでは屋外の冷凍機と屋内のショーケース間の高圧側冷媒搬送管路を中

間圧化[4~6MPa(R410A エアコンの 2 倍以下) と]し、高圧発生部を屋外の冷凍機内部の

みとする技術開発や 2 段圧縮機構により圧縮機シェルにかかる圧力を中間圧化した圧縮機

構造の採用が進められている。

(2)漏えい冷媒の限界濃度が低い 漏えいした冷媒ガスの濃度管理については KHK 施設基準(不活性ガスを冷媒とする製

造施設においては施設基準 KHKS0302-1 または KHKS0302-2)により運用が図られてお

り、CO2 冷媒においても不活性のフルオロカーボンと同様に、限界濃度を指標とし、冷凍

設備に充てんされている冷媒ガスの全量が(当該冷媒設備が設置されている)最小の室内に

漏えいした場合において、当該室内にいる人に危害を及ぼすことなく、避難等緊急措置が

支障なくとれるような措置を講じ、維持・管理されている。 また「4.CO2冷媒を使用した冷凍設備の事故例」で示したようにCO2冷凍設備での事故

(全5件)はすべて漏えい事故であるが、人身事故につながるような重大事故は発生していな

い。限界濃度を指標としたKHK施設基準に準拠して安全性が確保されていると考えられる。

冷媒充填量は冷媒漏れ時の濃度を左右する重要な因子である。CO2冷媒は表5.1.1で示し

たように単位体積当たりの冷凍能力が高い事に加え、分子構造上配管径を細くしても圧力

損失がつきにくく耐圧面から細管を採用しているためフルオロカーボンに比べ冷媒充填量

を低く抑えることができる。

そこで今後CO2冷媒の普及が見込まれる冷凍・冷蔵分野における対象設備にて、CO2冷

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媒を用いたシステムと不活性のフルオロカーボンR404Aを用いたシステムとの冷媒充填量

比較と限界濃度以下にするための必要面積の比較を行う。実際的な比較とするためCO2冷

凍機は5冷凍トン未満[“第2種製造者”、“適用除外”]で構成し、R404A冷凍機は20冷凍ト

ン未満[“その他製造者”、“適用除外”]で構成している。(表5.1.6及び表5.1.7)。

表5.1.6はコンビニエンスストアで用いられる一般的な冷凍冷蔵システムでの事例であ

り、R404Aに比べ4割程度の充填量となる。また、不特定多数の人が滞在する売り場で1系統

が全量急速漏えいしても、限界濃度条件を満足するために必要な面積は、CO2システムは

複数系統に分かれているためCO2システム(17.4m2)とR404Aシステム(15.4m2)の必要面

積は同程度で、167m2の売り場面積に対して約10%以下程度と小さい。

表 5.1.6 コンビニエンスストアにおける冷凍冷蔵システムの冷媒充填量比較例(一例)

店舗面積(167m2)

R404A CO2

システム構成 ・冷蔵ショーケース 28 尺

・ウォークイン

・冷蔵ショーケース 28 尺

・ウォークイン

冷凍システム系統 1 系統 3 系統

冷凍機能力 (法定トン別台数)

・3.16 冷凍トン 1 台

[適用除外]

(法定トン別台数) ・1.56 冷凍トン 2 台 ・0.72 冷凍トン 1 台

全て[適用除外] 冷媒充填量 全 20.0kg 全 8.3kg

1 系統当り充填量

MAX3.6kg 平均 3.3kg

充填量 R404A 比 1(-) 0.4(-)

平均容量の 1 系統が漏

えいした場合に限界濃

度以下とするために必

要な空間

・41.6m3

高さ 2.7m として

・15.4m2[売場面積の 9.2%]

・47.1m3

高さ 2.7m として

・17.4m2[売場面積の 10.4%]

設計圧力 2.8MPa 12MPa

表 5.1.7 は大型スーパーマーケットにおける冷凍冷蔵システムでの事例であり、CO2 シ

ステムの 1 系統あたりの冷媒充填量は従来の R404A 比で 1/3 程度まで抑えられている。

・不特定多数の人が滞在する売り場で 1 系統が全量急速漏えいしても、限界濃度条件を

満足するために必要な面積は、3000m2 を超える売り場面積に対して、表 5.1.7 のよう

に5%程度と十分小さく、また建築基準法やビル衛生管理法に基づいた CO2 濃度管理

基準[1,000ppm 以下:CO2 冷媒限界濃度の 1/40 以下]で換気も行われているので、冷

媒漏えいに対しては十分安全と言える。

・CO2 システムにおいてもまた従来の R404A システム[その他製造者]においても冷凍

機が複数個の小型プレハブ冷蔵庫(冷凍庫)に接続される場合には限界濃度管理が必要と

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なる場合がある。 これら特定作業者が短時間しか滞在しない冷凍・冷蔵倉庫内空間については労働安

全衛生面から、漏えい冷媒に関係のない事故にも対応できるように、作業者の正常状

態または正常反応を2~3分おきにセンサー等で確認する方法なども考えられるが、

これまでフルオロカーボンにおいても CO2 においても事故例がないことより、従来

通り施設基準 KHKS0302-1,2 の運用[特定作業者が短時間しか滞在しない冷凍・冷蔵

倉庫内空間に対しては冷媒漏えい検知警報設備を可能な限り設置すること]で良いと

考える。 また実際に取扱説明書や機器貼付ラベルで漏えい冷媒に対する注意喚起を行うと

ともに、まだ市場性の少ない低温環境用 CO2 センサーを冷凍機メーカがユーザーに

供給していることも見受けられる。

表 5.1.7 大型スーパーマーケット冷凍冷蔵システムでの冷媒充填量比較(一例)

売り場面積(3000m2超)

R404A CO2

システム構成 ・冷蔵ショーケース 全 858 尺

・冷凍ショーケース 全 230 尺

・冷蔵プレハブ 6 個

・冷凍プレハブ 4個

・冷蔵ショーケース 全 858 尺

・冷凍ショーケース 全 230 尺

・冷蔵プレハブ 6 個

・冷凍プレハブ 4個

冷凍システム系統 12 系統 20 系統

冷凍機能力 (法定トン別台数)

・15.8 冷凍トン 2 台 ・10.9 冷凍トン 4 台

・8.93 冷凍トン 4 台

・6.98 冷凍トン 2 台

5トン以上 20トン未満の

「その他製造者」で構成

(法定トン別台数) ・3.89 冷凍トン 12 台 ・2.99 冷凍トン 8 台 3 トン以上は届出が必要な

「第 2 種製造者」 冷媒充填量 全 1,103kg

1系統当たり充填量

Max140kg、平均 92kg

全 580kg

1系統当たり充填量

Max35kg、平均 29kg

1系統当たり充填

量の対 R404A 比 1(-) 0.3(-)

平均容量の 1 系統

が漏えいした場合

に限界濃度以下と

するために必要な

空間

・192m3 高さ 2.8m とすれば ・69m2[売場面積の 2.3%]

・403m3

高さ 2.8m とすれば ・144m2[売場面積の 4.8%]

設計圧 2.8MPa 12MPa

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(4)CO2冷媒を使用した冷凍機システムを安全に使用するための仕組み

CO2冷媒を用いたコンデンシングユニットに対しては,日本冷凍空調工業会にて低温冷媒

調査WG/別置型CO2サブWGにてサービスマニュアルを作成し、設置工事及びメンテナンスサ

ービスを安全に実施するため、CO2冷媒の特徴と取り扱い、及び工事要領と作業上の留意事

項をまとめている。さらに、コンデンシングユニット「CO2冷媒サービスマニュアル」での

講習会を始め、設置工事業者やメンテナンスサービス業者に対してCO2冷媒冷凍設備の安全

運用の周知徹底を図っている。

冷凍機外部の冷媒管路に設置する配管部品(弁や冷媒乾燥器[ドライヤー及びストレーナ

ー]はろー付け接続とし、屋外の冷凍機近傍に設置するよう指導し、且つ実行されている。

6.まとめ

高圧ガス保安法で規定する圧力容器を持たない3冷凍トン以上5冷凍トン未満の CO2 冷凍設

備に対して技術要件の緩和ではなく、管理要件の緩和(第2種製造者から届出義務のないその他

製造者とする緩和 )では、

CO2 冷媒に関し ANSI/ASHRAE-15 で、CO2 冷媒の特殊なサイクル[自然循環(ポンプ搬送)サイク

ルやアンモニア/ CO2 などのカスケードサイクル]における設計圧力の余裕の取り方[設計圧力は

系内で想定される最高圧力の 2 割増し以上の値とする]の規制はあったが、通常のサイクルでは

特別な規制はないこと、高圧ガス保安法で規定する圧力容器を持たない比較的小容量の CO2 冷凍

設備において、材料に生じる応力が許容応力以下となるように高圧ガス保安法に適合した設計が

なされていることから、耐圧設計上は安全と言える。

漏えい冷媒の限界濃度に関し、第5項の表5.1.6および表5.1.7でコンビニエンスストアや大型ス

ーパーマーケットの具体例で示すようにCO2冷媒はR404Aと比較して限界濃度は低いが、冷媒充填

量が少ないため実際の施設における漏えい冷媒の影響はCO2冷凍設備[5冷凍トン未満]とR404A

冷凍設備[その他製造者:20冷凍トン未満]で大差ないと考えてよい。

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参考資料

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高圧ガス保安法に基づく冷凍保安規則における冷媒の種類による冷凍設備の扱い

備考:使用する冷媒や冷凍能力に応じ、都道府県知事に対し、製造時の許可や届出が必要。    「法の適用は受ける」については、技術上の基準への適合が必要であることを示している。    冷凍能力は1日当たりの能力。

届出(第2種製造者)

届出(第2種製造者)

許可(第1種製造者)

法の適用は受ける。許可・届出は不要

届出(第2種製造業者)

許可(第1種製造者)

許可・届出は不要許可

(第1種製造者)

フルオロカーボン(不活性ガス)R22、R410A等

フルオロカーボン(不活性ガスを除く。)

アンモニアR32、R1234yf、

R1234ze(E)

上記以外のガス二酸化炭素等

法の適用を受けない。

許可・届出は不要

法の適用を受けない。

許可・届出は不要

冷媒の種類

冷凍能力

3トン未満3トン以上5トン未満

5トン以上20トン未満

20トン以上50トン未満

50トン以上

アメリカ 欧州

冷凍保安規則一般高圧ガス

保安規則ASHRAE34

(2013)EN378-1(2008)

DIN EN378-1(2008)

TRGS407 DOT EU法

プロピレン

プロパン

ブタン

R32 不活性ガス 可燃性

R1234yf -

R1234ze(E) -

二酸化炭素 不燃性 不燃性 不燃性 窒息性

TRGS407 Technical Rules for Hazardous SubstancesDOT Depatment of TransportationEU European Union

EN378-1(2008) Refrigerating systems and heat pumps - Safety and environmental requirements - Part 1:Basic requirements, definitions, classification and selectioncriteria

ASHRAE 34-2013 Designation and Safety Classification of RefrigerantsISO817-2014 Refrigerants - Designation and safety classification

DIN EN378-1(2008) Refrigerating Systems and Heat Pumps - Safety and Environmental Requirements

GHS Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals

不燃性

冷媒の分類状況

高圧ガス保安法 アメリカ

不燃性

不活性ガス

強燃性

可燃性

該当無

「フルオロカーボン(不活性のもの

を除く。)」

微燃性

参考

GHS

高爆発性

不燃性 非分類

強燃性

微燃性

強燃性可燃性

可燃性ガス -

可燃性ガス 強燃性

ISO 欧州

817(2014)

強燃性

微燃性

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