問題発見・解決の全過程を問う問題は,大問(中問)1題程度€¦ ·...

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今後の方向性(数学ⅠA,数学ⅡB) 問題発見・解決の全過程を問う問題は,大問(中問)1題程度 共通問題において,数学的な問題発見・解決の過程の全過程を問う問題は,大問もしくは中問 1題程度とし,他の問題は,過程の一部を問うものにする。 ・数学ⅠA,ⅡBともに,3年生の平均得点率は約35%(目標は5割程度) ・全体の分量と試験時間のバランスに課題が残る。 実施結果 概要 【マーク式問題】 文章を読解するために要する時間の軽減 思考に必要な時間が確保できるよう,文章を読解するために要する時間を試行調査よりも軽減す る。そのため,用いる題材は主として数学の事象とする。 現実事象の出題は,数学ⅠAの共通問題で最低1題,ⅡBで1題程度 日常生活や社会の事象などを題材とする問題については,数学ⅠAの共通問題においては最低 1題出題することとし,数学ⅡBについても1題出題するように努める。

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今後の方向性(数学ⅠA,数学ⅡB)

問題発見・解決の全過程を問う問題は,大問(中問)1題程度共通問題において,数学的な問題発見・解決の過程の全過程を問う問題は,大問もしくは中問1題程度とし,他の問題は,過程の一部を問うものにする。

・数学ⅠA,ⅡBともに,3年生の平均得点率は約35%(目標は5割程度)・全体の分量と試験時間のバランスに課題が残る。

実施結果概要

【マーク式問題】

文章を読解するために要する時間の軽減思考に必要な時間が確保できるよう,文章を読解するために要する時間を試行調査よりも軽減する。そのため,用いる題材は主として数学の事象とする。

現実事象の出題は,数学ⅠAの共通問題で最低1題,ⅡBで1題程度日常生活や社会の事象などを題材とする問題については,数学ⅠAの共通問題においては最低1題出題することとし,数学ⅡBについても1題出題するように努める。

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今後の方向性(数学ⅠA)

難易度は,試行調査と同程度を念頭に作問数学の記述式問題は試行調査と同程度の問題の難易度を念頭におきつつ,全体の難易度や解答に要する時間等を配慮して作問していく。

・記述式問題の正答率は3問とも約1割以下と低かった。・正答の記述量に対して解答欄が広かったため,受検者が混乱した可能性。

実施結果概要

【記述式問題】

数式等を記述する問題を3問出題することを検討大規模採点の観点から,共通テスト開始当初は数式等を記述する問題を3問出題することも視野に検討を行い,将来的には問題解決のための方略等を短文で記述する問題なども出題できるよう検討していく。

記述する内容に合わせて解答欄の大きさを変更する数式を記述する問題については,解答欄の大きさを変更するとともに,解答すべき内容が受検者にわかりやすくなるように問い方の更なる工夫などを行う。

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《得点の分布図等》 《設問別正答率グラフ》

科目別分析結果 【数学ⅠAマーク式問題】

設問数 数学Ⅰ・数学A

⑤ ④

⑤ ⑤ ④

④ ④ ⑤ ④5 ④ ⑤ ③ ② ⑤ ④

④ ④ ③ ② ⑤ ③

④ ③ ③ ② ② ④ ③

② ① ② ② ① ② ③ ②

1 ① ① ① ① ① ② ③ ②

100 0 正答率

受検者数(人) 平均得点率(%) 平均点(点) 平均正答率(%)

全体 65,764 30.12 25.61

34.54

3年生 13,407 36.17 30.74

《大問別層別正答率グラフ》

《受検者数・平均得点率等》

50

・平均得点率は5割程度に達せず,設問正解率で5割を超えた問題が全体の約2割にとどまった。そのため,50点を超えている受検者は1割に満たず,低得点層に偏る結果となった。・今回の得点率の低さの原因を,「問題文を読み解く量が多かった」「問題発見・解決の過程の全過程を重視した問題により思考に要する時間が不足した」と指摘しており,これを受けて,全体量と出題内容等について改善が検討される。

※グラフは,大学入試センター公表の《設問正答率幹葉図》を,ラーンズにてグラフ加工した。※丸数字は大問番号を表す。

※グラフは,大学入試センター公表の大問ごとの《五分位図》を,ラーンズにおいてグラフ加工した。棒グラフの長さで各群の差を見ることができる。

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《得点の分布図等》 《設問別正答率グラフ》

科目別分析結果 【数学ⅡB】

設問数 数学Ⅱ・数学B

④ ④

⑤ ② ⑤ ③

④ ② ④ ⑤ ③

5 ④ ② ③ ⑤ ④ ③

⑤ ② ② ② ④ ④ ③

② ① ① ① ② ③ ③ ③

② ① ① ① ① ② ③ ②

1 ① ① ① ④ ① ① ① ② ② ①100 0 正答率

受検者数(人) 平均得点率(%) 平均点(点) 平均正答率(%)

全体 4,935 36.06 36.06

44.89

3年生 4,110 35.49 35.49

《大問別層別正答率グラフ》

《受検者数・平均得点率等》

50

・平均得点率は5割程度に達せず,設問正解率で5割を超えた問題が全体の約3割にとどまった。そのため,50点を超えている受検者は約1.5割で,低得点層に偏る結果となった。・数学ⅠAと同様に,思考に要する時間の不足が指摘されており,第5問の無回答率が高いことの原因とも考えられる。これを受けて,全体量と出題内容等について改善が検討される。

※グラフは,大学入試センター公表の《設問正答率幹葉図》を,ラーンズにてグラフ加工した。※丸数字は大問番号を表す。

※グラフは,大学入試センター公表の大問ごとの《五分位図》を,ラーンズにおいてグラフ加工した。棒グラフの長さで各群の差を見ることができる。

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記述式問題_結果概要と出題の方向性【数学ⅠA】

・記述式問題は3問とも正答率が非常に低かった。記述式問題の難易度はそれほど高くはなかったと考えられるが,マーク式問題も含めた全体の分量と試験時間のバランスが影響したと考えられる。・正答の記述量に対して解答欄が広かったため,記述すべき内容について受験生が混乱した可能性がある。

採点結果と自己採点の一致率

①試行調査と同程度の問題の難易度とし,全体の難易度や解答に要する時間を配慮した作問をする。②数式等を記述する問題等を3問出題することも視野に検討を行う(共通テスト開始当初)。③解答欄の大きさを変更し,解答すべき内容がわかりやすい問い方の工夫などを行う。

一致率

問(あ) 90.0%

問(い) 83.3%

問(う) 88.8%

出題の方向性(記述式問題) 解答欄の変更

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ピックアップ問題_数学ⅠA第4問

数学的な問題発見・解決の全過程を問う問題

天秤ばかりで質量を量るという事象を通して,不定方程式の整数解を考察する問題で,課題解決の全過程を問う構成。現実事象を題材にしており,読解力が必要となる。さらに,[チツテト]では,前問までの考察を拡張・一般化することが求められたが,振り返っての考察は難度が高く,上位層の得点率も伸びなかった。

振り返っての考察は難度が高い

※グラフは,受検者の得点を,小さい順にLo,LM,M,HM,Hiの5群に等分割したもの(以下同様)。

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ピックアップ問題_数学ⅠA第1問〔2〕(2)エオ

コンピュータのグラフ表示ソフトを題材として,グラフの動的変化を基に方程式や不等式の解を定性的に考察する問題。係数の値の変化とグラフの移動の関係,グラフの状態と方程式・不等式の解の関係を同時にとらえる必要があり,全体として差がつきやすい問題だといえる。

グラフの変化を基に,解を定性的に考察する問題

グラフ変化と解の考察は差がつく

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ピックアップ問題_数学ⅠA第2問〔1〕(1)カキク

自ら変数を設定して線分の長さの式をつくり,グラフを用いて考察する問題。「すべて選べ」という形式で問われる力は,すべての選択肢について個別に処理できるかどうかというより,包括的に判断して処理できるかどうかが重要で本質の理解が必要。

※「すべて選べ」の問い方は,同じ趣旨の問い方に変更される方向。

当てはまる選択肢をすべて選択する問題

「すべて選べ」は包括的判断が必要

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ピックアップ問題_数学ⅡB第1問〔3〕(2)ト

対数ものさしの目盛が一致するときに成り立つ関係を対数の性質を基に考察する問題。具体的な事象の特徴をとらえて数学化するという考察の過程は,条件把握などが必要で差がつきやすい。

具体的事象を基に一般的性質を考察する問題

事象を数学化する過程は差がつく

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記述式問題の正答率,誤答の傾向分析

・問題(あ)は集合の記号についての簡単な設問であるが,正答率は5.8%と非常に低い。・主な誤答例からも,基礎の定着が低いことや,正確に記述することが意外とできないことが伺える。

主な誤答例

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【数学】指導に向けて(まとめ)

①問題解決という探究的考察の全過程を意識した指導

・問題発見・解決の全過程を問う問題は,数学ⅠA,ⅡBともに,少なくとも大問か中問で1題程度出題される。また,過程の一部を問う問題においては,焦点化された問題に限らず,事象の数学化,問題解決の構想,思考過程を振り返って考察する資質・能力が問われる。問題発見・解決の全過程を意識した指導が求められる。

②日常生活や社会の課題の考察を通して,知識・技能の活用力を養成

・文章読解に必要な時間は試行調査よりも軽減され,数学事象が主になるが,日常生活や社会の事象についての問題も数学ⅠAで最低1題,数学ⅡBでも1題を目指す方向。日頃から,日常や社会を題材にした課題を考察することで活用力を身につけたい。

・自ら変数を設定するなどの練習も必要になる。

③定義,定理,公式などを正確に記述できる丁寧な理解

・記述式問題は,短文記述が3題となる方向である。配点は各5点と大きく,部分点の方針は示されていない。

・試行調査に見られるように基礎事項の定着率は非常に低く,正確に理解して記述することが求められる。

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問題解決という探究的考察の全過程を意識した指導

ラーンズ教材 「オーダーシステム 数学 新傾向問題」 指数・対数関数 常用対数の考察

「オーダー問題集 数学 新傾向問題」とはとは課題解決の全過程を意識した問題で,考察力が身につく

本教材では,上記のような,数学の事象を探究考察する問題に加え,日常生活や社会の課題を解決する過程を問う問題などを66題収録しています。知識・技能の定着も問いつつ,探究活動の考察過程を扱う内容になっているので,教科書の履修と合わせてご活用いただくことが可能です。

-数学的性質や原理についての探究を通して,探究的考察力を高める-試行調査数学ⅡB第1問〔3〕では,対数ものさしの原理について理解して事象を数学化したり,解決過程を振り返ってさらに深く考察する力が求められました。この力は,数学的性質や原理について探求することを通して身につけていきたい力です。日頃のご指導に加えて,次のような考察場面を設定した問題に取り組むことで,効果的に考察力を高められます。

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現実事象の課題の考察を通して,知識・技能の活用力を養成

ラーンズ教材 「進研 WINSTEP数学Ⅱ・B 改訂版」 現実事象の課題を数学的に解決する

「進研 WINSTEP数学Ⅱ・B 改訂版」とはとは日常の課題を数学的にとらえ,解決する力が身につく

本教材では,探究活動を通して知識・技能を深めたり,上記のような日常の課題を解決する力を養成する問題を取り上げています。分野別に,定理公式の確認,重要解法についてステップ学習で定着させた後,探究考察する問題に取り組むことで,数学の見方・考え方を確実に広げ深めることができます。

-現実事象を通して,事象を数学化して考察する力を養成する-試行調査数学ⅠA第4問では,天秤ばかりを用いて物体の質量を量ることを通し,現実の課題を解決したり,得られた結果を一般化するなどの力が問われました。下の問題では,「現実事象の特徴をとらえて数学化」したり,本質を見いだして「得られた結果を一般化」したりする力を身につけることができます。