演題2 交通外傷を契機に発症したearly stent thrombosisの一...

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演題2 交通外傷を契機に発症した early stent thrombosis の一例 施設名:群馬大学医学部附属病院 演者名:◎飯島貴史、船田竜一、藍原和史、増田くに子、村田誠、後藤耕作、高間典明、 小板橋紀通、新井昌史、倉林正彦 Case: 60th, male 【Coronary Risk Factor】DM、HT、Dyslipidemia、smoking 【History】 昨年 12 月に胸痛を主訴に緊急搬送。急性冠症候群の診断にて責任病変である LCX に BMS を留置した。 後日、残枝の石灰化を伴った LAD 対して Rotablator(1.5mm barr)後に DES を 2 本留置した。合併症は認めず、 治療 3 日後に退院となったが、退院 3 日後(LAD にステント留置後 6 日後)に、交通事故による頚椎損傷とし て当院救急部に搬送された。来院時心電図では V4-6 で ST 低下を認めたが胸部症状は認めなかった。しかし、 CT 撮影などを施行した 30 分後に胸部絞扼感が出現し、心電図上も V1-5 で ST 上昇を認めたため ACS を疑い 緊急造影検査を行うこととした。 【CAG】LAD(#7) ; 100%、RCA ; 有意狭窄なし、collateral flow (#4PD) → (#8) (Rentrope Ⅱ) 【Clinical course】 頚椎骨折に関しては、安静固定にて経過を見る方針(今後の経過によっては手術もあり得る)と なった。CAG 上は LAD(#7)の DES 内に early stent thrombosis が生じたものと考えられたため、緊急 PCI の 方針とした。 【Target lesion】LAD(#7) ; 100 %(in stent) 【Blood access】lt-femoral approach 【Device】GC [7Fr Launcher JL4.0]、GW [Neo’s Route ]、Thrombectomy [ThrombusterⅢGR 7Fr] Balloon [LAXA(15) 2.5mm, TREK(8) 3.0mm]、Stent [Integrity(22) 3.0mm] 【Procedure】 CAG では LAD stent overlap 部で stent 内完全閉塞となっていた。Route を LAD 末梢まで cross し、血栓吸引施行。吸引後 IVUS 施行したところ、前回留置した stentの再狭窄や圧着不良は認めておらず、stent overlap部付近に大量の血栓を認めていた。LAXA(15) 2.5mmでstent内の血栓付着部位をPOBAしたが、Angio 上ステント内の血栓は多量に残存していた。この時点で IABP 留置も検討したが、頚椎損傷に対して手術の可能 性もあったため留置は行わずに手技を継続した。血栓残存部位に Integrity(22) 3.0mm を 14atm で留置。 TREK(8) 3.0mm で後拡張を行い終了とした。peak CK 4045 U/L。ステント血栓症の原因として、抗血小板 2 剤の怠薬はなく、LAD stent recoil stent malapposition は認めず、末梢の flow limit も認めていなか った。交通事故時には意識消失などなく、来院後より胸痛と胸部誘導での ST 上昇が出現しているため、今回の イベントは交通外傷に伴うストレスから発症した early stent thrombosis と考えられた。 【Key film】 LAD 治療後 LAD 治療 6 日後 post-PCI 【Discussion のポイント】 頚椎骨折の手術の可能性を控え、治療方針をどうするか(IABP 留置、POBA alone? or Stent?) early stent thrombosis の原因は?交通外傷に伴うストレスなのか。他に原因は考えられるか?

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  • 演題2 交通外傷を契機に発症した early stent thrombosis の一例 施設名:群馬大学医学部附属病院 演者名:◎飯島貴史、船田竜一、藍原和史、増田くに子、村田誠、後藤耕作、高間典明、

    小板橋紀通、新井昌史、倉林正彦 Case: 60th, male 【Coronary Risk Factor】DM、HT、Dyslipidemia、smoking 【History】昨年 12月に胸痛を主訴に緊急搬送。急性冠症候群の診断にて責任病変である LCXに BMSを留置した。

    後日、残枝の石灰化を伴った LAD対して Rotablator(1.5mm barr)後に DES を 2 本留置した。合併症は認めず、治療 3 日後に退院となったが、退院 3 日後(LAD にステント留置後 6 日後)に、交通事故による頚椎損傷として当院救急部に搬送された。来院時心電図では V4-6 で ST 低下を認めたが胸部症状は認めなかった。しかし、CT 撮影などを施行した 30 分後に胸部絞扼感が出現し、心電図上も V1-5 で ST 上昇を認めたため ACS を疑い緊急造影検査を行うこととした。

    【CAG】LAD(#7) ; 100%、RCA ; 有意狭窄なし、collateral flow (#4PD) → (#8) (Rentrope Ⅱ) 【Clinical course】頚椎骨折に関しては、安静固定にて経過を見る方針(今後の経過によっては手術もあり得る)と

    なった。CAG上は LAD(#7)の DES 内に early stent thrombosis が生じたものと考えられたため、緊急 PCI の方針とした。

    【Target lesion】LAD(#7) ; 100 %(in stent) 【Blood access】lt-femoral approach 【Device】GC [7Fr Launcher JL4.0]、GW [Neo’s Route ]、Thrombectomy [ThrombusterⅢGR 7Fr]

    Balloon [LAXA(15) 2.5mm, TREK(8) 3.0mm]、Stent [Integrity(22) 3.0mm] 【Procedure】CAGでは LADの stent overlap 部で stent 内完全閉塞となっていた。Routeを LAD末梢まで cross

    し、血栓吸引施行。吸引後 IVUS 施行したところ、前回留置した stent の再狭窄や圧着不良は認めておらず、stent overlap部付近に大量の血栓を認めていた。LAXA(15) 2.5mmでstent内の血栓付着部位をPOBAしたが、Angio上ステント内の血栓は多量に残存していた。この時点で IABP 留置も検討したが、頚椎損傷に対して手術の可能性もあったため留置は行わずに手技を継続した。血栓残存部位に Integrity(22) 3.0mm を 14atm で留置。TREK(8) 3.0mmで後拡張を行い終了とした。peak CK は 4045 U/L。ステント血栓症の原因として、抗血小板剤 2剤の怠薬はなく、LADの stent recoil や stent malapposition は認めず、末梢の flow limit も認めていなかった。交通事故時には意識消失などなく、来院後より胸痛と胸部誘導での ST 上昇が出現しているため、今回のイベントは交通外傷に伴うストレスから発症した early stent thrombosis と考えられた。

    【Key fi lm】

    LAD 治療後 LAD 治療 6日後 post-PCI 【Discussion のポイント】 ① 頚椎骨折の手術の可能性を控え、治療方針をどうするか(IABP 留置、POBA alone? or Stent?) ② early stent thrombosis の原因は?交通外傷に伴うストレスなのか。他に原因は考えられるか?