四重極型ICP-MSの現状と その限界 · 2020. 5. 31. · 四重極型ICP-MSの現状...

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四重極型ICP-MSの現状と その限界 (公財)環境科学技術研究所 高久 雄一

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四重極型ICP-MSの現状とその限界

(公財)環境科学技術研究所高久 雄一

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誘導結合プラズマ(ICP)

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誘導結合プラズマ(ICP)

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ICPの特徴プラズマ

試料粒子

イオン化

原子化

脱水

10 MHz 以下 10 MHz 以上

1. 穴の開いた構造(ドーナツ構造)プラズマの中心に試料が導入可能

2. 高温で多元素を励起効率の良い発光(イオン)源

3. 電気的に中性化学干渉が少ない

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ICP質量分析試料導入部 質量分析部

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ICP質量分析

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ICP-MSの検出下限

DL =単位濃度あたりのシグナル強度

ブランクシグナルの変動の3s

簡易計算法

DL =単位濃度あたりのシグナル強度

(ブランクシグナル)3*√

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検出下限を改善する為には?

1.バックグラウンドを下げる。

2.装置の感度を向上させる。

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検出下限の理論値(バックグラウンド)(感度:106 cps (1ng g-1)の場合)

0

0.03

0.06

0.09

0.12

0.15

0.1 1 10 100

バックグラウンドカウント(C P S )

検出

下限

(pg g

-1)

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検出下限の理論値(装置感度)(バックグラウンド:1cpsの場合)

0.0001

0.001

0.01

0.1

1

10

1 10 100 1000 10000

1 pg g-1 での装置感度(C P S )

検出

下限

(pg g

-1)

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感度を向上させる方法は?

イオンの透過効率を改善させる。

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Detector

ICPNebulizer

Sample interfaceIon optics

Quadrupole

Spray chamber

装置の透過効率

1~5 %<10 % <1 %<10 %100 % 100 %

赤字の部分は改善の余地あり

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Detector

ICPNebulizer

Sample interfaceIon optics

Quadrupole

Spray chamber

1~5 %<10 % <1 %<10 %100 % 100 %

試料導入系の改良

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Aridus

利点:感度向上(約一桁)

欠点:価格

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DSN

利点:感度向上(2~5倍)、試料消費量欠点:メモリー、安定性、酸化物

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Desolvating Nebulizer Systemの利点と欠点

利点

1. 感度向上

2. 酸化物の低減

欠点

1. シグナル安定性

2. メモリー効果

3. 消費試料量(USN)

4. 酸化物の低減?

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試料導入系の改良

約1桁の感度向上

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Detector

ICPNebulizer

Sample interfaceIon optics

Quadrupole

Spray chamber

1~5 %<10 % <1 %<10 %100 % 100 %

Sample interface の改良

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Sample Interface

Mach disk

Barrel shockwave boundary

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2nd Expansion rotary pomp

2nd Expansion rotary pomp

OFF : 1.6 mbarON : 0.8 mbar

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Sample Interface高真空

低真空

低真空用サンプリングコーン

高真空用サンプリングコーン

イオンビーム

イオンビーム

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Sample Interface

1. Cone のデザイン変更(組み合わせを含む)

2. Expansion 領域の真空度の向上(2nd Expansion rotary pomp)

2~5倍の感度向上

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バックグラウンドシグナル

0

1

2

3

0 10 20 30 40 50 60

Tim e (sec)

Counts

バックグラウンドノイズ 13 count / 60 sec (0.22 cps)

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Ion Optics

1. Ion Lens 条件の最適化(洗浄、アライメント調整を含む)

2. Extraction lens の電圧変更(-100V から-2kVへ)

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改良後

1. 試料導入系の改良2. Sample Interface の最適化3. Ion Optics の改造及び最適化

感度 :1010 cps (1µg g-1当たり)BKG :0.3 cps (mass 220)

販売当初に比べて感度が10000倍、BKGが1/100

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y = 7.5983x + 12.639

R² = 0.9999

0

20

40

60

80

100

120

140

0 3 6 9 12 15

counts (cps)

fg g-1

Ra226

検出下限 : 1.6 fg g-1 : 60 µBq g-1

( 226Ra : 3.7 E-10 Bq g-1 )

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装置感度の向上だけでは解決できない問題点

バックグラウンドシグナルの上昇

分子イオン干渉

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マトリックス起源の分子イオン

通常発生する分子イオン

a) 水素化物 : MHb) 酸化物 : MOc) 水酸化物 : MOH

溶媒に起因する分子イオン

a) 塩化物 : MCl, MClO, MClOHb) 硫化物 : MS, MSO, MSOH, MSO2, ….c) 燐化物 : MP, MPO, MPOH, MPO2, ….

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Collision-Reaction Cell

Iron

Argon

OxygenHelium

導入ガス

CollisionHe, He+H, O2, NH3, etc.ReactionCH3, NH3, O2, etc.

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Collision-Reaction Cell

DL : 2.4 pg g-1

BEC : 30 pg g-1DL : 4.3 pg g-1

BEC : 8.3 pg g-1

56Fe

y = 51.226x + 1512.1

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

0 20 40 60 80 100 120

C onc (ppt)

Count (cps)

Conc (pg g-1)

80Se

y = 3.905x + 32.625

0

100

200

300

400

500

0 20 40 60 80 100 120

C onc (ppt)

Count (cps)

Conc (pg g-1)

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Collision-Reaction Cell

利点①Ar起源の分子イオンの妨害を除去できる。② マトリックス効果がNormal時とほぼ同じ。

欠点①分子イオンに応じてガスを使い分ける必要がある。

②妨害分子イオンを完全には除去できない。

③下がりにくい分子イオンがある。(例 MO, ClO (Vへの妨害)等)

④感度が低下する。(多くの装置の場合 1/10以下)

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ブランク管理

ブランク管理の方法

試料導入系をフードで覆い局所的にブランクを管理する

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四重極型ICP-MSの現状

四重極型ICP-MSの限界

①感度、バックグラウンドは、ほぼ、Sector型と同等まで向上。

② ppt レベルであれば、多くの元素で分析が可能。(Cool plasma とCollision-Reaction Cellの併用)

③誰でもデーターが出せる。

①分子イオンの完全除去は、現時点では不可能。

② マトリックス効果。

③誰でも正しいデーターが出せる ???(装置のブラックボックス化、装置の操作環境)