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胃がん・大腸がんー手術に伴って起きうる日常生活の変化ー
(抗癌剤治療については含まれず)
長門総合病院
久我貴之副院長
平成27年10月17日(土)
あいの会定例会 資料
胃がん手術後の後遺症
• 腸閉塞
• ダンピング症候群
• 貧血
• 骨粗鬆症
• 逆流性食道炎
• 小胃症状
腸閉塞とは・・・・
• 手術したあとは、ほとんどの場合お腹の中で腸があちこちにくっつきます(癒着といいます)。そのため、腸が急カーブしたり、狭くなったりして腸閉塞が起こります。狭くなったところに食べ物がつまると、便もガスもでなくなります。時には腸がねじれて、腸の流れが閉ざされてしまうこともあります。
場合によっては入院したり、緊急手術になったりします
ダンピング症候群とは・・・・
• 胃を切除すると,いままで胃の中で攪拌(かくはん)されて少しずつ腸に移動していた食物が,一度に急に腸へ流れ込む状態になります。そのために起きる症状がダンピング症候群といわれます。食後30分以内に起こる場合(早期ダンピング症候群)と食後2~3時間で起こる場合(後期ダンピング症候群)があります。
• 早期ダンピング症候群・・・発汗、めまい、頻脈などの全身症状と悪心、腹部膨満感、下痢などの消化器症状があります。
• 後期ダンピング症候群・・・頭痛,冷や汗,頻脈,めまい,脱力感、ときには失神。低血糖が原因となることが多い。
• 早期ダンピング症候群・・・安静により数分~数十分で改善します。しかし、顕著な場合は抗セロトニン薬などの薬が有効な時があります。
• 後期ダンピング症候群・・・糖質の補給が必要になります。ブドウ糖の静注や、ビスケットやあめ玉,氷砂糖をとったり,甘い飲み物を飲んで下さい。予防するには,食後2時間あたりに何かおやつを食べることが有効です。ポケットやバッグに飴などのお菓子を用意しておきましょう。
貧血とは・・・・
• 胃の切除により,鉄分やビタミンB12や葉酸が吸収されにくくなるために貧血が起こります。前者は、鉄欠乏性貧血、後者は巨赤芽球性貧血(悪性貧血)といいます。
• 鉄欠乏性貧血
• 手術後数ヶ月から出現することがあります。治療は、鉄剤の補充を行います。鉄分の多い食事をとりましょう。
• 巨赤芽球性貧血(悪性貧血)• ビタミンB12は体内に蓄積されており、数年間はその蓄積したビタミン
B12でまかなうことができます。しかし手術後4~5年以降には蓄積がなくなり、巨赤芽球性貧血が発症することが多いです。治療法は、ビタミンB12の注射による補充です。同様に葉酸が欠乏して悪性貧血が起こります。定期的に血液検査をして,不足していれば薬をもらう必要があります。
骨粗鬆症とは・・・・
• 胃の手術をすると,カルシウムの吸収が悪くなるため骨のカルシウムが減少して骨が弱くなります。ときに骨折したりします。
• 定期的に骨のカルシウムの濃度(骨塩量)を測定(レントゲンなどで簡単に測定できます)し,必要であればカルシウムや,ビタミンDの投与が望ましいとされています。普段からカルシウムの補給には十分気を付けましょう。
• カルシウムは出来るだけ食事から取りましょう。
• 活性型ビタミンD3製剤という薬がありますが、これは慎重投与(十分注意して、投与しても良い患者だけに出すこと)の中に、悪性腫瘍患者や腎機能障害患者があります。こうした患者にこの薬を出すと、腎機能が悪くなって抗癌剤が使えなくなった患者がいました。この薬は主に整形外科で出されますので、自分の病気のことをちゃんと伝えて薬の変更や減量を相談しましょう。カルシウムだけのカルシウム製剤もあります。
逆流性食道炎とは・・・・
• 食道内へ胃や腸の内容物が逆流することです。これは手術によって胃の入口(噴門)の逆流防止の機能が損なわれたために起こります。特に胃全摘や,噴門側胃切除の術後に多く見られます。特に腸液の症状が強いことがあります。
• 症状
• 苦い水(腸液)や酸っぱい水(胃液)が口のほうへ上がってきたり,胸やけなどの症状が見られることがあります。
• 治療法• 上半身を20度くらい高くして寝るとよいのですが,病状に応じて粘膜保護剤,制酸剤,酵素阻害薬(有害な酵素作用を止める)など有効な薬があります。
小胃症状とは・・・・
• 胃を切除したために胃が小さくなり,あるいはなくなることによって起こってくるすべての症状特に貯留に関わる症状です。
• 症状
• 食事が少ししか入らない,あるいは,すぐにお腹が一杯になるといった症状は最も一般的な症状です。手術を受けられたほとんどの方が経験される症状です。
• 治療法
• お腹を順応させてやることが大切になります。そのためには,食事のとり方が大切です。
食事の仕方
• 1回の食事量は無理をせず少なめに、たくさん食べられないときは、回数を多くしましょう。
• 朝、昼、夕の3食を基本とし、午前10時と午後3時にビスケットと牛乳など、2~3回の間食を目安に。入院中は5回食という方法も行っています。
• 食べすぎないように気をつけましょう。
• よくかんで、ゆっくり食べましょう。よくかむことで、唾液と食べ物がよく混ざり、胃腸の負担が軽くなります。歯の悪い人や入れ歯のあっていない人はできるだけ早く治療しましょう。
生活・仕事
• 無理をし過ぎない、がんばり過ぎないようにしましょう(特に術後1年間、体力に自信がつくまでは)。周囲に伝え理解と協力を求めるなどしましょう。
• 日常生活で体を動かす(掃除、買い物など)ようにしましょう。
• お腹を切っていますので、重たいものを持つのは、術後3か月程度たってからのほうが無難です。鼠径ヘルニアでも1ヶ月ほど避けるようにしています。
• 事務などの軽作業は調子によって比較的早期に復帰できます。
• 自信がなければ、会社と相談することをお勧めします。
レジャー・スポーツ
• 最初は、ウォーキングなどから始めて下さい。
• ストレッチなどの軽い運動やラジオ体操をとり入れるのもよいでしょう。
• 個人の生活リズムに合わせて、日常生活の中で適度な運動を意識して行うのが良いでしょう。
• 体力を使う激しい運動、特にお腹の筋肉へ過度の負担のかかる動きは、術後3か月程度たってから行うほうが無難です。
• 疲れを残さない事が大切です。
• 気分転換も大切です。食事や体力の不安が少なくなってきたら、趣味やや旅行などを楽しむのもいいかと思います。
やせについて
• 術後に体重が減ること(いわゆる“やせ”)を気にする人は少なくないですが、術後の体重減少は必ずしも生活に影響しないことがわかってきました。
• 胃を切ったあとに体重が約5-10Kg程度減少することはあります。• あまり気にしないことも大切です(X一喜一憂)。• 肥満の人が普通の体重になり、脂質異常症や糖尿病がよくなることもあります。
• 体重を増やそうとして無理にたくさん食べようとするとかえって腸への負担が増えて調子をくずしてしまうことがあります。
• 通常は、1日3回の基本的食事+2回程度の間食が有効です。• 薬局やコンビニで売られているブロック状やゼリー状の栄養的にバランスの取れた補助食品を活用も有効です。
個人差について
• 胃を切ったあとの身体の回復の程度には、かなりの個人差があります。=人は人、自分は自分。
• 人により「強い内臓」と「弱い内臓」があるようです。
• 「強い内臓」を持つ人は、胃を切っても比較的短期間で慣れ、あまり食事の摂り方に気を付けていなくてもおいしく食べられ、体重もあまり減らないようです。
• 「弱い内臓」を持つ人は、胃を切って食物が急速に腸に流れ込むようになると、腸がこれに対応しきれず消化不良を起こしたり、腸が敏感に反応してお腹の張り、痛み、下痢などの症状が強く現れたりします。ダンピング症状などもこれに当たります。
大腸がん術後の後遺症
• 排便障害
–下痢
–便秘
• 腸閉塞
• 人工肛門について
術後の食事
• 原則的には、胃ほどの食事制限はありません。
• 何を食べてもかまいませんが、食物繊維が多く消化しにくいものは、術後しばらくは控えたほうがよいでしょう。
• 最も基本的なことはおいしく、ゆっくり、楽しく、食べることです。
下痢の対策
• 1)日常生活
• お腹は冷やさないこと、きつめのベルトなどはさける。
• 2)食事療法
• 脱水症状が出やすいので水分補給に注意し食事は食物繊維が少ない食事を、ゆっくり少量ずつ食べる。
• 3)薬物療法
• 下痢は整腸剤や下痢止めの薬を内服して調節する。
• 強い下痢が続く場合担当医にご相談ください。 水分補給が大切=脱水予防
便秘の対策1
• 便秘では水分を多くとり、バランスよく食物繊維をとることが勧められますが、不溶性食物繊維のとりすぎには注意しましょう。
• 食事の時間を規則正しく、トイレの習慣をつけることも大切です。
• 適度の運動も重要です。
• 担当医に相談してお薬でコントロールする方法もあります。
• ●不溶性食物繊維
• 水に溶けにくく、水を吸収してふくらみ腸を刺激するため,腸の動きが活発にします.
• ●水溶性食物繊維
• 水に溶けやすく、食物の吸収がゆるやかになります.便に水分を与えるほか糖やコレステロールの吸収も抑えます.
便秘薬の使用
• 同じ薬を飲み続けていると効果が薄れてくることがありますが癖になるわけではなく、症状にあわせて薬を処方してもらうといいでしょう。
• 便秘が癖になるということはあっても薬が癖になるということはないのです。
薬をくせにして、良い排便習慣をくせにすることも大切です。高血圧の人が降圧剤、糖尿病の人が糖尿病薬を飲むのと同じと考えてください。
直腸がん術後の排便障害
• 直腸は便をためるところなので、その部分を切除すると、術後の回数が増えたり、すぐにトイレに行きたくなります。
• 少しずつ改善してきますが、もとに戻ることは
原則としてありません。
• 自分の調子を医師にお話し、時には薬をもらうことも大切です。
人工肛門について1
• 身体障害者手帳申請
• ストーマ装具交付申請
• 障害年金の確認
• 医療費控除
• 介護保険サービス
• 患者の会(オストメイトの会)
人工肛門について2
• 食事制限なし(ガスや臭い発生しにくい物)。
• 入浴は自由(圧の関係で装具を外してもいいし、気になれば入浴用装具あり)。
• 仕事も今まで通りートイレのみ注意。
• スポーツはラグビーや相撲のようなぶつかり合うのは避ける。
• 衣服では締め付けやベルトに注意。
• 性生活では圧迫しないように。
• 飛行機では気圧の関係で注意。
大腸がんの術後の生活
• 大腸は便を調節する臓器、とれば不便になります。
• 食習慣と薬で排便コントロールが大切。
• 病気の状態と治療についてよく知ることも大切。
• 分からないことは病院で相談しましょう。
がんに対する三つの予防
• 一次予防:がんにならないための生活習慣。
• 二次予防:早期発見のためのがん検診。
• 三次予防:再発や転移に対する術後定期検査