第19章 労働事情 - JBIC第 19章 労働事情 1. 労働法の体系 トルコにおける雇用関係の主な法令は、労働法( 2003)である。労働法では、被雇用者
香港・シンガポールで働く 移住家事労働者女性 ~その労働と...
Transcript of 香港・シンガポールで働く 移住家事労働者女性 ~その労働と...
2
1.アジアにおける「移住労働の女性化」と移住家事労働者の導入
� アジアNIEsの発展と移住労働者への需要増加
� 受け入れ国…香港、シンガポール、台湾、マレー
シア
� 送り出し国…フィリピン、インドネシア、スリランカ
→サービス職、再生産労働部門への移住労働
者女性の集中
� 代表的には家事労働者(domestic worker)とエンターティナー部門
3
*移住家事労働者導入の論理
� 国内女性労働力の労働市場参加促進(女性の労働参加率の増加)
→家事労働部門での空白が生じる
→国家が福祉政策などで補完するのではなく、外部から安価な「女性」労働力を導入する
→家事労働の公平な分担、という議論を、移住家事労働者の導入によって回避
� 女性間女性間女性間女性間でのでのでのでの国境国境国境国境をををを越越越越えたえたえたえた階層化階層化階層化階層化のののの出現出現出現出現
4
<香港>
� 1969年から導入。(当初は外国人のみが雇用できた)2003年約21万人。(フィリピン13万人、インドネシア7万、タイ6,000)近年インドネシア人が増加(5年間で3倍に)
� 制度的保障…最低賃金制度、標準雇用契約の存在、結 社の権利、労働法の適用。� 「2週間ルール」…労働契約に基づく滞在資格� 他方で、アジア通貨危機後、最低賃金引下げ。
5
6
<シンガポール>
� 1978年より導入。現在、約14万人(6割がフィリピン人、その他インドネシア、スリランカなど。政府の公式統計はなし。)
� 保護措置(最低賃金制度・標準雇用契約)なし。 ←「雇用関係は、雇用主と労働者との私的な関係で、自由な市場
原理に基づくべき」との政府方針雇用主への外国人雇用税の課税(職種別) …家事労働者のみ頻繁な引き上げ →雇用主の負担感増→結果的に労働者への低賃金や虐待へ� 半年ごとの妊娠検査→妊娠判明の場合、本国送還。シンガポール人との結婚は禁止。
→「「「「必要必要必要必要なななな労働力労働力労働力労働力だがだがだがだが、、、、社会的社会的社会的社会的にににに定着定着定着定着させたくないしさせたくないしさせたくないしさせたくないし、、、、増増増増やしたくなやしたくなやしたくなやしたくな
いいいい」」」」
7
8
2.「移住住み込み家事労働」に おける制約
①受け入れ国での滞在が雇用主の存在に依存…法的地位・住居
②家庭という社会的に可視化されにくい場での労働…虐待などの温床に
③24時間の拘束・プライバシーの欠如
…労働力よりも「人間性」そのものを買われる
9
香港での具体的な仕事の内容の例
(Gonzalez 1998:115-116)
【毎日の仕事】 朝食準備/子どもの着替え・登校準備/子どもに食事を与える/子どもをバス停まで送る/そのほかの子どもの着替えと朝食/風呂掃除、ベッドメイキング、床磨き、家具磨き、照明ブラシかけ/昼食下ごしらえ/洗濯・乾燥/昼食調理/皿洗い・アイロンがけと整理/夕食の買い物、靴磨き、子どもの入浴/子どものおやつ準備/夕食準備/調理・給仕/皿洗い、台所の掃除と床磨き、明日の子どものためのおやつ準備
【毎週の仕事】 シーツの取替え/ベッドの下の掃除/タオルの煮沸/食器棚掃除/換気扇掃除【隔週の仕事】 冷蔵庫の掃除/食器棚の中敷取替え【毎月の仕事】 窓拭き/シーツ・テーブルクロスの洗濯/銀食器磨き/エアコン掃除/カーテンの洗濯
10
3.香港・シンガポールにおける移住家事労働者の組織活動とその意義
<移住家事労働者組織活動の内容>
� a. 社会運動的活動:ピア・カウンセリング、移住労働や権利に関するセミナー、シェルター運営、トレーニング、共同貯蓄、デモやアピールの実施
� b.技術向上的活動:スキル・トレーニング(裁縫・料理・音楽・手芸・コンピューター・看護助手・語学)
� c.宗教的活動:聖書勉強会、宗教的行事の実施d.文化的活動:音楽や舞踊、演劇などのイベント
11
受け入れ社会の文脈によって異なる
活動のあり方
<香港>
移住家事労働者も労働組合への参加・結成が認められている+NGOセクター
� 移住家事労働者組合の結成・最低賃金引き下げなどへの反対キャンペーン
� エスニシティの違いを乗り越えて、移住家事労働者が連帯
� 帰国後の再統合(re-integration)に向けた共同貯蓄活動
12
<シンガポール> 労組への参加は不可+NGOセクターも弱い+強い政府の規制
� フィリピン人コミュニティや教会をベースにしたスキル・トレーニング
ex. Nursing aid(看護助手)クラスの受講生 →「技術・知識を身につけて、将来はカナダなどで看護に関わる仕事で働きたい」
� 「自分が家事労働者として働いていることに反対していた両親も、看護助手の勉強をしている
と聞いて、喜んでいる」(Nursing Aidクラス受講生)
13
シンガポールの移住家事労働者グループのイベント
14
スキル・トレーニングで作った製品を販売
15
雇用主とのトラブルでシェルターで暮らす移住労働者(シンガポール)
16
香港・シンガポールに共通して見られる、移住家事労働者のボランティア活動
シェルターのボランティア・スタッフ、スキル・トレーニングの事務や講師など
→「家事労働者」として働くことでは得られない達成感
→無報酬だが、実際の自分の能力や技術を生かせる場として
17
� 「もちろん、ボランティアなので無報酬です。でも、それは問題じゃないんです。裁縫のクラスを教えることで、他のマイグラントを助けている、と感じています。自分のことを、‘家事労働者’ではなく、‘裁縫の先生’と呼びたいです」
(シンガポールのスキル・トレーニング・クラスで裁縫を教えるフィリピン人家事労働者・38歳)
18
移住家事労働者の組織活動の意義
①さまざまな制約の中で、自分たちの存在を社会的に可視化させる
→移住家事労働者の地位の向上へ向けて
②家事労働という仕事によって、生かされていないと感じている本来の自分の能力などを、活動とのかかわりの中で発揮できる
③個人的に②にあたる行為が、全体としては①を促していく
19
� Q1.「住み込み」移住家事労働という労働形態は、どのような問題を含んでいると思いますか。また、その問題を解消する方法としてどのような方法が考えられるでしょうか。
� Q2. 質問・感想・要望など何でもどうぞ。
20
<参考文献>
・小ヶ谷千穂「国際労働移動とジェンダー―アジアにおける移住家事労働者の組織活動をめぐって」梶田孝道編『国際化とアイデンティティ』
(講座・社会変動 第7巻)ミネルヴァ書房、2001年。121-147頁。
・小ヶ谷千穂「女性移民(移住女性)」、「書評Rhacel Salazar Parrenas,Servants of Globalization: Women, Migration and Domestic Work,」伊豫谷登士翁編『思想読本:グローバリゼーション』作品社。(2002年11月刊行予定。)
・ラセル・S・パレーニャス(小ヶ谷千穂訳)「グローバリゼーションの使用人―ケア労働の国際的移転」(原著:Rhacel Salazar Parreńas 2001, Servants of Globalization: Women, Migration and Domestic Work, Stanford: Stanford University Press.第3章およびconclusion)『現代思想』(特集:超高齢化社会)、2002年6月、第30巻第6号。158-181頁。
・Gonzalez, Jaquin L.Ⅲ, 1998, Philippine labour migration: critical dimensions of public policy, Singapore: Institute of Southeast Asian Studies.