公共施設マネジメントの状況 - pref.shizuoka.jp · 産業振興施設 59 79...

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静岡県・市町FM研究会 公共施設マネジメントの状況 平成 29 年 3 月

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静岡県・市町FM研究会

公共施設マネジメントの状況

平成 29 年 3 月

1

目 次

はじめに ・・・・・1

第1部 静岡県内の公共施設を取り巻く環境

第1章 供給(人口減少)

1 人口減少 ・・・・・4

2 公共施設と人口 ・・・・・8

第2章 財務(厳しい財政状況)

1 充足率 ・・・・・11

2 公共施設面積と地方債残高 ・・・・・12

第3章 品質(施設の老朽化)

1 老朽化状況 ・・・・・13

第2部 公共施設マネジメントの課題

第1章 仕組面の課題

1 台帳整備 ・・・・・14

2 マネジメント計画の策定 ・・・・・15

第2章 体制面の課題

1 マネジメント組織 ・・・・・16

2 技術者不足 ・・・・・16

第3章 手法面の課題

1 総量適正化策 ・・・・・17

2 長寿命化策 ・・・・・19

2

第4章 合意形成面の課題

1 住民との合意形成 ・・・・・20

第3部 県内公共施設(図書館・文化ホール)の状況と今後の方向性

第1章 図書館

1 概要 ・・・・・21

2 相互利用 ・・・・・21

3 施設の配置 ・・・・・23

4 施設の老朽化 ・・・・・25

5 施設の利用度 ・・・・・26

第2章 文化ホール

1 概要 ・・・・・27

2 施設の利用者数・稼働率 ・・・・・27

3 施設の運営費・自主企画 ・・・・・28

4 施設の配置 ・・・・・29

5 施設の老朽化 ・・・・・30

第4部 FM研究会での課題解決の方向性

第1章 FM研究会での課題解決の方向性

1 概要 ・・・・・31

2 広域連携 ・・・・・32

おわりに ・・・・・34

1

はじめに

1 はじめに

全国的な公共施設を取り巻く環境について、建築後 30 年以上経過した施設の割合が過半

数を超え、また、将来の人口減少による施設ニーズの変化への対応など、大きな課題に直

面している。本県においても、市町・県問わず、施設の老朽化に直面し、厳しい財政状況

が続く中、限られた経費で将来にわたって施設を良好な状態で維持していくことが喫緊の

課題となっている。

これらの課題に対応するため、静岡県と県内市町が参加するファシリティマネジメント

に関する研究会を設置し、全国に先駆けた形で平成 26 年度にスタートした。

今回、FM研究会では公共施設やそのマネジメントの状況について整理してきたデータ

を用いて見える化し、そこから見えてくる様々な課題を踏まえたうえで将来的なマネジメ

ントの方向性を探りながら、今後の県市町の連携の促進へとつなげていく。

2 公共施設のオープンデータ化の取組

FM研究会では連携に向けての環境整備として、各自治体で把握した施設情報について、

「公共施設情報共有化実施要領」を定め、共通フォーマットを作成した。この要領に基づ

き、平成 26 年度から施設情報のオープンデータ化による自治体間の情報共有に取り組んで

いる。

公共施設マネジメントは、一般的には①現状把握、②課題認識・共有、③方針作成、④

具体的取組という流れで展開するものとされている。公共施設等総合管理計画の策定や固

定資産台帳の整備に関して、総務省から要請がある中、県内自治体では公共施設情報の把

握・整理が進んできており、オープンデータ化はそれらの情報を共有する取組である。

図1 オープンデータ化実施自治体(H29.3) 図2 公共施設情報共有化実施要領

実施済み,28

今後

実施,8

2

表1 オープンデータ化実施施設

施設分類(※) 施設数 棟数 施設の具体例

行政施設 1,309 2,533 庁舎、消防施設、警察施設、研究施設

公衆衛生施設 295 482 ごみ処理場、し尿処理場

集会施設 545 608 コミュニティセンター、公民館

学校施設 1,362 6,223 小学校、中学校、高等学校

児童施設 565 740 保育園、認定こども園、学童保育所

高齢者施設 144 179 福祉施設、特別養護老人ホーム

保健・福祉施設 133 195 保健所、保健センター

文化施設 278 442 図書館、博物館、文化ホール

スポーツ施設 293 516 体育館、武道館、プール

保養・観光施設 294 854 キャンプ場、宿泊施設、観光施設

居住施設 836 2,687 公営住宅、職員住宅

産業振興施設 59 79 産業振興会館、農業研修所

病院施設 38 125 病院

その他 1,680 2,196 倉庫、駐車場、公衆便所

合計 7,831 17,859

※「公共施設情報共有化要領」における分類

図3 オープンデータのイメージ

3

3 GISの活用による施設の見える化

オープンデータ化した施設情報をもとに、GIS(地理情報システム)の活用による施

設の見える化にも取り組んでいる。オープンデータを見やすく表示させるため、施設カル

テ(PDF形式)を作成し、GISに位置情報とともに表示させることとしている。平成

28 年度は、床面積 200 ㎡以上の約 3,800 施設について作成し、今後、インターネットでの

公開についても予定している。

図4 GIS公開

施設カルテが表示される

クリックすると

4

第1部 静岡県内の公共施設を取り巻く環境

第1章 供給(人口減少)

1 人口減少

今後の人口減少や少子高齢化は公共施設の需要に影響を与えるなど、公共施設マネジメ

ントを実施するうえで極めて重要な要素であると考え、人口分析を実施した。

図5 市町別人口減少率(平成 22年~平成 52年)

(出典:国立社会保障・人口問題研究所)

-22%

-16%

-28%

-43%

-20%-17%

-32%

-22%

-17%-20%

-17%-18%-18%

-3% -4%

-41%

-7%

-19%

-41%

-20%-17%

-25%-25%

-44%

-35%

-38%-42%

-52%

-22%

-12%

-27%

-2%

-51%

-28%

-19%-16%

5%

-60%

-50%

-40%

-30%

-20%

-10%

0%

10%

熱海

磐田

藤枝

殿

西

牧之

西伊

函南

吉田

図6 高齢化率(平成 22 年及び平成 52年)

(出典:国立社会保障・人口問題研究所)

37% 37%39%

53%

37%35%

48%

37%36%

37%36%

37% 38%

31% 32%

47%

32%

37%

48%

37%35%

40%38%

52%

43%

49% 48%

52%

39%

34%

28%

35%32%

53%

39%37% 36%

25%23%

25%

39%

23% 23%

33%

26%

22% 22% 24% 22%24%

19% 19%

33%

19%21%

32%

23% 22%

26% 25%

34% 34%

37% 37%

41%

25%

21%19%

22%21%

42%

28%

24% 23%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

殿

西

西

H52

H22

静岡県内では、今後 30 年間で 20%程度の人口が減少し、高齢化率が 40%程度まで上昇

すると推計されている。特に賀茂地域については、今後、人口減少や少子高齢化が深刻化

することが想定されている。

5

御前崎市の人口推計(御前崎市公共施設等総合管理計画(方針編))

御前崎市では、国勢調査の結果から年齢別の純移動数を算出し、人口動態の傾向を分析して

いる。10 歳台後半の転出超過とともに、20 歳台後半から 40歳台前半の子育て世代の転出超過

が特徴であると分析している。

図7 御前崎市の人口動態の傾向

ポイント

・ 県内では、今後 30 年で約 20%の人口が減少

・ 特に賀茂地域の人口減少・少子高齢化は深刻

6

小地域別(町丁・字別)人口集計

政府統計の総合窓口のホームページ「e-stat※」には、国勢調査の小地域別人口集計結果が

掲載されおり、csv 形式だけでなく、GISで利用可能な形式のデータのダウンロードが可能

になっている。(図8はこれらのデータをダウンロードしGIS上に反映したもの)

※ e-stat ホームページ:http://www.e-stat.go.jp

図8 地区別人口密度

小地域別(町丁・字別)の将来推計人口

公共施設は地区単位で設置されている小学校や公民館等があり、公共施設等総合管理計画を

策定する際、小地域別人口の将来推計を実施することが推奨されている。FM研究会では、静

岡県統計利用課で公開している市町別将来人口推計ソフト(EXCEL)を小地域別将来人口推計

ができる形に応用したものを開発しており、上記の小地域別データとGISとを組み合わせる

ことにより、将来の公共施設のあり方を詳細に企画する環境を整備した。

図9 将来人口推計ソフト(EXCEL)

7

小地域将来人口推計の例

「e-stat」で提供されている小地域人口データを小地域別将来人口推計ソフトに取り込み、

GIS上に表示したものが図 10 及び図 11 である。このように市町単位ではなく、より細かな

地区単位での将来人口推計が地図を活用しながら可能となっている。

図 10 A市中心部

平成 22 年 平成 52 年

図 11 B市中心部

平成 22 年 平成 52 年

8

2 公共施設と人口

(1)公共施設の延床面積と人口

各自治体が保有する公共施設の延床面積と人口の関係についての全国自治体との比較を

したものが図 12、図 13である。

図 12 公共施設延床面積と人口

(出典:公共施設状況調(H25 総務省)、国勢調査(H27))

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

0 200 400 600 800 1,000

人口(万人)

総床面積

(千㎡

静岡県

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

0 50 100 150 200 250 300 350 400

人口(万人)

総床面

積(千

㎡)

静岡市

浜松市

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

0 10 20 30 40 50 60 70

人口(万人)

総床

面積(千㎡)

沼津市

富士市

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1,000

0 5 10 15 20 25 30

人口(万人)

総床

面積(千

㎡)

磐田市

藤枝市

焼津市

富士宮市

掛川市

三島市

島田市

0

100

200

300

400

500

600

700

0 2 4 6 8 10

人口(万人)

総床

面積

(千㎡

御殿場市

袋井市

伊東市

湖西市裾野市

伊豆の国市菊川市

牧之原市

熱海市

御前崎市

伊豆市

下田市

0

50

100

150

200

250

0 1 2 3 4 5

人口(万人)

総床面

積(千㎡

長泉町

清水町

函南町

吉田町

小山町

森町

東伊豆町

川根本町

西伊豆町南伊豆町

河津町

松崎町

都道府県 政令市

特例市 中都市

小都市 町村

施設量が多い

少ない

9

図 13 公共施設延床面積と人口減少率

(出典:公共施設状況調(H25 総務省)、国勢調査(H27)、国立社会保障・人口問題研究所(H22))

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

-40% -30% -20% -10% 0% 10%

人口減少率(H22-H52)

1人あたりの総

床面積(㎡

静岡県

都道府県平均

都道府県平均

0

1

2

3

4

5

6

-25% -20% -15% -10% -5% 0% 5%

人口減少率(H22-H52)

1人あた

りの総

床面

積(㎡)

静岡市 浜松市

政令市平均

政令市平均

0

1

2

3

4

5

6

-40% -30% -20% -10% 0% 10%

人口減少率(H22-H52)

1人あたりの総床

面積

(㎡)

沼津市富士市

特例市平均

特例市平均

0

1

2

3

4

5

6

7

8

-50% -40% -30% -20% -10% 0% 10% 20%

人口減少率(H22-H52)

1人あたりの総

床面積

(㎡

島田市

磐田市

富士宮市

掛川市

三島市

焼津市

藤枝市

中都市平均

中都市平均

0

5

10

15

-60% -50% -40% -30% -20% -10% 0% 10% 20% 30%

人口減少率(H22-H52)

1人あ

たりの

総床

面積

(㎡

御殿場市

袋井市伊東市 湖西市

裾野市

伊豆の国市

菊川市牧之原市

熱海市

御前崎市

伊豆市

下田市

小都市平均

小都市平均

0

5

10

15

20

25

30

35

40

-80% -60% -40% -20% 0% 20% 40%

人口減少率(H22-H52)

1人あ

たりの

総床

面積

(㎡

長泉町吉田町

清水町

函南町

小山町

森町

河津町

南伊豆町松崎町

東伊豆町

西伊豆町

川根本町町村平均

町村平均

県内自治体は、現状の公共施設の総量は全国的にみると少ない傾向にある。(図 12)その

一方で、公共施設の延床面積と人口減少率の関係をみると、今後の人口減少が深刻な地域

も多く、「総量の適正化」が課題となってくる。(図 13)

都道府県 政令市

特例市 中都市

小都市 町村

ポイント

・ 県内自治体は公共施設の保有量が少ない。

・ 人口減少は今後深刻化するため、「総量の適正化」が課題

人口減少が深刻 深刻でない

施設量が多い

少ない

10

地区別の施設配置状況及び人口・世帯数の分析(富士市公共施設等総合管理計画)

富士市では、人口と公共施設の状況を地区別・施設類型別に整理することで、施設の状況を見

える化し、今後のマネジメントに結びつけることとしている。

図 14 富士市の人口と公共施設の状況

地区別人口・世帯数

施設類型

地区別の

施設設置状況

11

第2章 財務(厳しい財政状況)

1 充足率

公共施設等総合管理計画では、公共施設等の維持管理・修繕・更新等に係る中長期的な

経費見込みやこれらの経費に充当可能な財源の見込みを記載することとなっている。それ

らの経費の割合(充足率)を示す。

充足率=これまでの維持管理・修繕・更新等経費/今後の維持管理・修繕・更新等経費

図 15 県内自治体の充足率(H28.10 調査)

38%

64%

49%

60%

43%38%

28%

49%

66%

38%

83%

13%

49%

63%58%

97%

67%

39%

85%

49%

57%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

島市

西

の国

自治体によって算出方法が異なるため単純には比較できないが、どの自治体でも今後財

源不足となることは明らかであるため、公共施設マネジメントの取組が必要となってくる。

浜松市の目指す資産経営(浜松市公共施設等総合管理計画)

浜松市では、公共施設の運営を通じた安全・安心で質の高い市民サービスの提供と持続可能

な行財政運営を両立するため、充足率 100%を目標に掲げて、一世代(30 年)先の目指すべき

資産経営のすがたを明確に意識し、実現するために、今何をすべきか、というアプローチをと

ることとしている。

ポイント

・ このままでは、公共施設の維持管理によする費用は、今後不足することは明らか。

持続可能な

資産経営

保有資産にかかる将来の改修・更新経費試

算値と改修・更新の投資実績額との均衡

充足率

100% = =

12

2 公共施設面積と地方債残高

公共施設延床面積と地方債残高の関連性について示す。

図 16 公共施設延床面積と地方債残高

(出典:公共施設状況調(H25 総務省)、決算状況調(H26 総務省)、国勢調査(H27))

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00

1人あたりの面積(㎡)

1人あ

たりの

地方債

残高

(千円

静岡県

都道府県平均

都道府県平均

浜松市

静岡市

0

200

400

600

800

1000

0 1 2 3 4 5 6

1人あたりの面積(㎡)

1人あ

たりの地

方債

残高

(千

円)

政令市平均

政令市平均

0

100

200

300

400

500

600

700

0 1 2 3 4 5 6

1人あたりの面積(㎡)

1人あ

たりの

地方

債残高

(千円

沼津市

富士市

特例市平均

特例市平均

0

100

200

300

400

500

600

700

800

0 1 2 3 4 5 6 7

1人あたりの面積(㎡)

1人あた

りの地方債残

高(千円)

島田市掛川市

磐田市

三島市

富士宮市

藤枝市

焼津市

中都市平均

中都市平均

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

0 2 4 6 8 10 12

1人あたりの面積(㎡)

1人あたりの地

方債残高

(千

円)

熱海市

伊豆市

御前崎市

伊東市

湖西市

伊豆の国市

菊川市

牧之原市

裾野市

下田市

御殿場市

袋井市

小都市平均

小都市平均

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

0 5 10 15 20

1人あたりの面積(㎡)

1人あたりの地方債残高(千円)

川根本町

長泉町

松崎町

河津町

小山町

西伊豆町

東伊豆町

南伊豆町

森町

吉田町

函南町

清水町

町村平均

町村平均

県内自治体は全国自治体と比較すると、地方債残高は少ない傾向にある。また、延床面

積が大きい自治体ほど地方債残高が多い傾向があることも伺える。

都道府県 政令市

特例市 中都市

小都市 町村

地方債残高

多い

少ない

施設量が少ない 多い

13

第3章 品質(施設の老朽化)

1 老朽化状況

県内自治体別の築 30 年以上の公共施設の割合を図 17 に示す。

図 17 築 30 年以上の公共施設の割合

54% 54%50% 52% 53% 51%

47% 47%

56%

71%

49%46%

54%49%

53%

46%

30%

52% 54%

29%

47%

68%

42%45% 45%

48%

55%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

西

御前

の国

築 30 年以上の割合は 50%程度の自治体が多い。高度経済成長期に建設した建物について、

更新の時期が迫ってきている状況にあり、今後、大規模改修や建替えなど計画的な老朽化

対策が必要になる。

減価償却累計額による老朽化状況の見える化

老朽化率を減価償却累計額と取得価格で算出し、老朽化状況を施設類型別に見える化するこ

とで、今後のマネジメントにつなげていくことができる。今後、各自治体で固定資産台帳の整

備が進み、類型別の老朽化比率の横比較などが可能となると考えられる。

図 18 減価償却累計額による老朽化比率の算出例(県有施設の試算)

図 17 御殿場市の老朽化比率

ポイント

・ 50%程度の公共施設が築 30 年以上となり、老朽化対策が必要

-

500

1,000

1,500

2,000

2,500

学校等

公営住宅

公園

ホール・研修所等

庁舎・事務所

警察施設

職員住宅

研究施設

体育施設

文化施設

未利用施設・貸付地

福祉施設

その他

再取

得価

格(億

円)

現在価値 減価償却累計額

66%

35%

63%

47%

68%

60%

34%

53%

64%61%

64%

38%

58%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

減価償却率

老朽化比率(%)

老朽化比率=減価償却累計額/再取得価格

14

第2部 公共施設マネジメントの課題

第1章 仕組面の課題

1 台帳整備

公共施設マネジメントを行うためには、保有する公共施設の状況把握が必須となる。そ

のため、総務省から公共施設等総合管理計画の策定とともに、資産の把握のための固定資

産台帳整備についても要請されているところである。

これまで県内自治体では、台帳が電子化されていないなど状況把握が十分ではなかった

が、平成 28 年度末の時点では、すべての自治体の台帳が電子化され、公共施設マネジメン

トを行う環境が整ってきている。

図 19 台帳整備の状況(H26.4 及び H28.11)

36

212 21

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H28

H26統一的把握なし

紙台帳

電子台帳

固定資産台帳の活用

総務省から要請のあった固定資産台帳については、県内自治体でも整備が進んでいるが以下

の2点が課題と考えられる。

① 固定資産台帳は、マネジメント単位で把握することが基本となっている。例えば、建物

については躯体と設備機器は更新周期が異なるため、それぞれに分けて把握することで

マネジメントの効率化につながる。

② 建物の価値については、減価償却していく一方、修繕等を実施した場合には、建物の価

値に資本的支出としてそれを付加することで、正確な現在価値を算出できるようになる。

そのためは、財務会計システムとの連携など、修繕等の会計情報と固定資産情報をリン

クさせる仕組づくりが必要となる。

図 20 財産の把握 図 21 現在価値の算出

躯体

更新周期 50 年

設備機器

更新周期 15年

建物の価値

減価償却 価値を付加

(修繕等)

設備機器

更新周期 20 年

別々に把握

15

2 マネジメント計画の策定

平成28年度までの策定を総務省から要請されている公共施設等総合管理計画については、

FM研究会で連携して取り組んでおり、平成 28 年度までに策定が完了する見込みである。

図 22 公共施設等総合管理計画策定状況(出典:総務省調査 H28.3 現在)

441 1337

14 22

10

0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

全国

静岡県 H27年度までに策定済み H28年度までに策定(予定含む)

H29年度以降策定

また県内自治体では、施設の状況を見える化した「施設白書」の作成や、具体的な施設

の将来配置計画を示す「施設再編(再配置)計画」の策定に取り組んでいる自治体もあり、

公共施設等総合管理計画策定後の具体的な取組に移行してきている。

表2 県内自治体の計画及び方針の策定状況(H28.10 調査)

自治体名

静岡市

浜松市

沼津市

熱海市

三島市

富士宮市

伊東市

島田市

富士市

磐田市

焼津市

掛川市

藤枝市

御殿場市

袋井市

下田市

裾野市

湖西市

伊豆市

御前崎市

菊川市

伊豆の国市

牧之原市

東伊豆町

河津町

南伊豆町

松崎町

西伊豆町

函南町

清水町

長泉町

小山町

吉田町

川根本町

森町

静岡県

施設白書 〇 ○ 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 ○ ○ ○ ○

実施方針 〇 ○ 〇 ○ ○ ● ○

公共施設等総合管理計画 〇 〇 〇 〇 ○ 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 ○ 〇 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

施設再編(再配置)計画 〇 ● ● 〇 〇 ● ● ○ ● ○ ● 〇H28 までに策定、●H29 以降策定予定

富士市公共施設再編計画

富士市の公共施設再編計画では、建築年度をもとに具体的な再編時期を想定し、再編手法や

再編にあたってのポイントを取りまとめている。例えば小学校については、小中一貫校化や近

隣小学校との統合、他用途との複合化などを大まかに想定した計画となっている。

図 23 富士市公共施設再編計画

16

第2章 体制面の課題

1 マネジメント組織

公共施設マネジメントを担当する組織については、一定規模以上の市では設置されてい

るが、小規模な市や町では、担当職員のみ配置されている状況にある。今後、公共施設等

総合管理計画に基づき具体的なマネジメントを実施していくためには、マネジメントを担

当する組織を中心とした全庁的な体制づくりが必須であり、その点において課題がある。

図 24 マネジメント組織の状況(H28.10 調査)

担当のみ,20

マネジメント組織あり,

7

担当課あり,8

2 技術者不足

県内自治体の営繕技術職員の配置状況については、半数近い自治体において技術職員の

配置がない状況にあり、今後、老朽化した施設の適切な維持管理や更新などの取組を具体

的に実施していくことを考えると課題があると言える。

図 25 営繕技術職員の状況

(出典:H27.4 調査、全国営繕主管課長会議調査)

0人

0人

1~4人 5~9人 10~49人

10~49人1~4人

5~9人 50人以上

50人以上

0% 20% 40% 60% 80% 100%

全国市町村

静岡県

17

第3章 手法面の課題

1 総量適正化策

公共施設等総合管理計画には、施設の総量等の管理目標を記載することが望ましいとされ、

県内自治体でも 16 市町が総量削減目標を掲げている。今後 30 年~40 年で 20~30%の削減を

目標としている自治体が多いが、目標達成のための具体的な方法やそのロードマップを示す

ことが難しいことが想定され、今後どの自治体でもその点が大きな課題となる。

図 26 県内自治体の総量削減目標(H28.10 調査)

なし, 13あり, 15設定予定

検討中, 7

0% 20% 40% 60% 80% 100%

現状

以下

30年

-20%

30年

-29%40年

-30%

40年

-21%

40年

-20%

30年

-18%

30年

-30%

30年

-20% 30年

-25%

20年

-20%

40年

-15%

-40%

-20%

0%

西

30年

-25%

18

三島市の総量の目標設定(三島市公共施設等総合管理計画)

三島市では、今後 30 年間の充当できる一般財源の見込みと、公共施設で必要となる額を比

較した結果、26.2%の不足する結果であった。その結果と今後の人口推計から、今後 30 年で

29%の総量の削減を目標としている。

三島市のように 30 年という長期の財政見通しを作成し、充当できる一般財源を推計したう

えで削減目標を設定している例は全国的にも少ない。

表3 三島市の総量に関する目標の設定手法

年度 充当できる一般財源 必要となる一般財源 差額

H27~H31 2,265,000 1,888,118 376,882

H32~H36 2,265,000 2,953,923 -688,923

H37~H41 2,165,000 2,631,035 -466,035

H42~H46 1,725,000 2,503,387 -778,387

H47~H51 2,115,000 4,374,109 -2,259,109

H52~H56 2,265,000 2,996,587 -731,587

合計(30 年) 12,800,000 17,347,159 -4,547,159

△26.2%

19

2 長寿命化策

施設の長寿命化の取組を推進することにより、公共施設の安全・安心を担保するととも

に、厳しい財政状況に対応するため、公共施設の保全や更新の費用の削減につなげていく

必要がある。

施設を長寿命化させるためには、①部位部材・設備機器の種類・量とそれらの劣化状況

を把握し、②中長期にわたる維持保全計画を策定して、③計画的に修繕工事を実施してい

く必要がある。県内自治体のほとんどの施設は、計画的な修繕が実施できている状況では

ないと推定され、具体的な長寿命化の取組をどのように実現していくかが課題である。

図 27 長寿命化の取組イメージ

静岡県の長寿命化の取組

静岡県では、建築物の目標耐用年数を 80 年とし、これまでの不具合が発生してから保全を

実施する「事後保全」から、予防的な保全を含めた「計画保全」の考え方を導入する方針であ

る。具体的には今後も維持すると判断した建築物に対して、部位部材を「計画保全」、「監視保

全」、「事後保全」に分類して劣化状況を把握しながら、中長期保全計画を策定し、保全してい

くこととしている。

図 28 静岡県の長寿命化の取組イメージ

部位部材・設

備機器の把握

劣化状況の把

維持保全計画

の策定

計画的な修繕

工事の実施

《計画保全》

今後も維持

廃止等の予定

計画保全部材

重要度による分類

事後保全部材

監視保全部材

施設評価 部位部材

集中と選択

長寿命化

目標耐用

RC:80年

中長期保全計画の策定

長寿命化

劣化状況の把握

20

第4章 合意形成面の課題

1 住民との合意形成

再配置などの具体的な計画を作成し実行していくには、公共施設の課題について行政と

住民が情報を共有し、合意形成を図っていく必要がある。一般的には、ワークショップや

市民説明会などにより、行政と住民の合意形成を図ることが考えられるが、それらを実施

している県内自治体は少なく、手法等も含めて今後の大きな課題である。

図 29 市民との合意形成の実績(H28.10 調査)

実施せず, 32

実施せず, 34

実施せず, 29

実施, 4

実施, 2

実施, 7

0% 20% 40% 60% 80% 100%

市民説明会

ワークショップ

市民アンケート

牧之原市の「対話による協働のまちづくり」の取組

牧之原市では、「対話による協働のまちづくり」を掲げており、その一環として、公共施設

の老朽化問題に対して市民全体で学んで、考えて、取り組むこととしている。対話の場では、

「20 年先の将来を見据えたまちづくりの視点で賢く使う」ことをポイントに話し合いを進め、

市長への答申を行っている。

図 30 牧之原市の住民との対話

対話の場の流れ(議事録) 会議運営は市民ファシリテーター

対話の場のまとめの例

項目 期間 内容

大切にする視点

(基本理念) 20 年間

①未来志向、②賢く使う、③共感を大事に、④みんなで、

⑤まちづくりの視点の 5つの基本的な考え方

施設分類別の方向性 20 年間 行政、学校、コミュニティ施設など施設分類別の方向性

先導的な施設 4年間 学校、庁舎施設の活用など 2つの重点的なプロジェクト

21

第3部 県内公共施設(図書館・文化ホール)の状況と今後の方向性

第1章 図書館

1 概要

「平成 28 年度静岡県の図書館」(静岡県立中央図書館)を参考に、静岡県内の図書館の

状況を分析し、広域連携など今後の方向性について検討する。

(出典:http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/kento_public/)

2 相互利用

(1)図書の貸し出し

図書館については、すでに相互利用のかなり取組が進んでいる状況である。図書の貸し

出しについては 66%の図書館が近隣市町の住民まで認めている。その内容としては、利用

制限自体のない(富士市、牧之原市)、近隣市町との相互利用協定を結んでいる(静岡市、

浜松市、沼津市等)となっている。

図 31 貸出制限

在住者、近隣

市町村, 2

在住・在勤・在

学者、近隣市

町, 55

制限なし, 13

在住・在勤・在

学者のみ, 27

近隣市町

住民利用可

66%

22

(2)図書の横断検索

他の図書館の図書を検索する「横断検索」について 96%の図書館が利用可能であり、他

の図書館の図書を借りる「相互貸借」については、すべての図書館で可能であった。

図 32 横断検索 図 33 相互貸借

対象, 93

非対象, 4

非対象, 0

対象, 97

図 34 横断検索ホームページ「おうだんくん」

http://mets.elib.gprime.jp/oudankun-search_pref_shizuoka/basic_table.php

23

3 施設の配置

静岡県内の図書館の配置について、小地域別人口密度と重ねてみると、人口密度に応じ

て均等に配置されており、比較的バランス良く配置されていることが伺える。(図 35)

一方で今後の人口推計を重ねてみると、全般的に利用者の減少が見込まれるが、特に図

書館が多くある都市部については、利用者の減少が課題となることが予想される。(図 36)

図 35 図書館の配置と平成 22 年度小地域別人口密度

西部地域・中部地域

東部地域 賀茂地域

24

図 36 図書館の配置と小地域別人口密度の変化

平成 22 年度 平成 52 年度

都市部に図書館が集中 人口減少への対応

25

また、半数以上の図書館は公民館・生涯学習センターなどと複合化している状況にある。

また築 10年以内の比較的新しいものは複合化しているものが多いことも伺える。(図 37)

図 37 複合化の状況

複合化施設の割合 複合化している機能

複合化,53

単独,44

その他公共

施設, 10

民間, 4

学校, 2

公民館・生涯

学習セン

ター, 25

文化会館, 9

市役所・町役

場支所, 4

築年数別の複合化状況

2

11

21

9

12

11

20

9

単独, 1 複合化, 1

0% 20% 40% 60% 80% 100%

10年以内

11~20年

21~30年

31~40年

41~50年

築年数

4 施設の老朽化

図書館の築年数をみると約 80%が築 30年未満の建物であり、他公共施設よりも老朽化が

深刻でないことが伺える。また、築 21~30 年の建物が多いため、今後、老朽化の課題が顕

在化してくるものと考えられる。

図 38 図書館の築年数

41~50年, 2

21~30年, 41

11~20年, 22

10年以内, 14

31~40年, 18

26

5 施設の利用度

延床面積や貸出冊数について、市町別に集計したものを住民 1 人あたりに換算すると、

延床面積は市町によって違いがあるが、延床面積と貸出数は概ね相関関係にあると言える。

図 39 住民 1人あたりの図書館面積(㎡/人)

0.00

0.05

0.10

0.15

岡市

松市

津市

海市

島市

士宮市

伊東市

島田市

士市

田市

津市

川市

枝市

殿場

井市

田市

野市

西市

豆市

御前

川市

の国市

之原市

伊豆

南伊豆

松崎

西

伊豆

南町

田町

根本

図 40 住民 1人あたりの貸出数(冊/人)

0.0

5.0

10.0

15.0

岡市

松市

沼津

熱海市

三島市

富士

宮市

伊東

島田市

富士市

磐田市

焼津

掛川

藤枝市

御殿場市

袋井

田市

裾野

湖西市

伊豆

御前

崎市

菊川

伊豆

の国

之原市

東伊

河津

南伊

松崎

西伊

函南

清水

長泉

小山

吉田

川根

森町

27

第2章 文化ホール

1 概要

静岡県内の固定席 500 席以上のホールを有する文化会館・ホールの状況(H28.7)を分析

し、今後の方向性について検討する。

2 施設の利用者数・稼働率

利用者数は、施設の規模(床面積等)によるが、アクトシティ浜松、静岡県コンベンシ

ョンアーツセンター、静岡市民文化会館、富士市民文化会館の順に利用者が多く、静岡市、

浜松市、富士市など人口が多い地域において、利用者が多い傾向にある。(図 41)

また、大ホール・会議室の稼働率については、算出方法が異なると考えられるため単純

には比較できないが、静岡市、浜松市など人口が多い地域において、稼働率が高い傾向に

ある。(図 42)

図 41 利用者数(単位:万人)

0

10

20

30

40

50

60

70

下田市民文化会館

伊東市観光会館

伊豆

の国市長岡総合会館

伊豆

の国市韮山文化

ンター

函南町文化

ンター

長泉町文化

ンター

ベルフ

ォー

小山町総合文化会館

御殿場市民会館

裾野市民文化

ンター

三島市民文化会館

沼津市民文化

ンター

富士宮市民文化会館

富士市文化会館

静岡県

コン

ベンシ

ョンアー

ツセ

ンター

静岡市民文化会館

静岡音楽館

AOI

静岡市清水文化会館

焼津文化会館

焼津市大井川文化会館

藤枝市民会館

藤枝市民

ホー

ルお

島田市民総合施設

プラザおおるり

島田市川根文化

ンター

牧之原市相良総合

ンター

御前崎市民会館

御前崎市文化会館

菊川文化会館

エル

掛川市文化会館

シオー

掛川市生涯学習

ンター

大須賀中央公民館

森町文化会館

磐田市民文化会館

磐田市竜洋なぎ

の木会館

浜松市福祉交流

ンター

アク

トシテ

ィ浜松

浜松市浜北文化

ンター

浜松市天竜壬生

ホー

浜松市雄踏文化

ンター

浜松市三

ヶ日文化

ホー

80

90

28

図 42 大ホール・会議室の稼働率

0%

20%

40%

60%

80%

100%

市民

会館

東市

会館

の国市

長岡

会館

の国市

山文

ンタ

ンタ

ンタ

ベルフ

山町

殿

市民

会館

野市民

ンタ

市民

会館

市民

ンタ

士宮

市民

士市

会館

コン

ベンシ

ンア

ーツ

市民

会館

音楽館

川文

会館

市民

市民

市民

ラザ

川根

ンタ

市相

ンタ

前崎

市民

会館

前崎

会館

川文

エル

会館

ーネ

生涯

ンタ

中央

公民

市民

会館

の木

会館

松市

ンタ

シテ

松市

ンタ

松市

天竜

生ホ

松市

雄踏

ンタ

松市

大ホール

会議室

3 施設の運営費・自主企画

運営費については、静岡県コンベンションアーツセンターやアクトシティ浜松など 10 億

円以上の施設と、1億円以下の小規模施設で大きな差がある。運営費は、施設規模だけなく、

自主企画件数にも比例していることがわかる。また、多くの施設が指定管理となっている。

図 43 運営費と自主企画件数

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1,000

下田市民文化会館

伊東市観光会館

伊豆

の国市長岡総合会館

伊豆

の国市韮山文化

ンター

函南町文化

ンター

長泉町文化

ンター

ベルフ

ォー

小山町総合文化会館

御殿場市民会館

裾野市民文化

ンター

三島市民文化会館

沼津市民文化

ンター

富士宮市民文化会館

富士市文化会館

静岡県

コン

ベンシ

ョンアー

ツセ

ンター

静岡市民文化会館

静岡音楽館

AOI

静岡市清水文化会館

焼津文化会館

焼津市大井川文化会館

藤枝市民会館

藤枝市民

ホー

ルお

島田市民総合施設

プラザおおるり

島田市川根文化

ンター

牧之原市相良総合

ンター

御前崎市民会館

御前崎市文化会館

菊川文化会館

エル

掛川市文化会館

シオー

掛川市生涯学習

ンター

大須賀中央公民館

森町文化会館

磐田市民文化会館

磐田市竜洋なぎ

の木会館

浜松市福祉交流

ンター

アク

トシテ

ィ浜松

浜松市浜北文化

ンター

浜松市天竜壬生

ホー

浜松市雄踏文化

ンター

浜松市三

ヶ日文化

ホー

運営費

(百万

円)

1,303

2,039

1,300

2,000

2,100

0

20

40

60

80

100

自主企

画件数

29

4 施設の配置

施設の配置について、小地域別人口密度と重ねてみると、人口密度に応じて比較的バラ

ンス良く配置されていることが伺える。(図 44)

現状は、賀茂地域以外は概ね市町ごとに配置されているが、今後、人口減少に伴って利

用者の減少が見込まれるため、広域連携の視点での取組が必要となると考えられる。

図 44 文化会館・ホールの配置と平成 22 年度町丁目・字別人口密度

西部地域・中部地域

東部地域 賀茂地域

□ 固定席 1,000 席以上

○ 固定席 1,000 席未満

30

5 施設の老朽化

築年数をみると、約 40%が築 30 年以上の建物であり、老朽化が深刻であることが伺える。

また、築 20 年以内の建物約 20%であり、施設の更新が進んでいない状況であることも伺え

る。今後は老朽化対策、施設の更新が大きな課題となると考えられる。

図 45 築年数

41~50年, 1

31~40年, 15

10年以内, 3

11~20年, 4

21~30年, 16

静岡市民文化会館 静岡県コンベンションアーツセンター

31

第4部 FM研究会での課題解決の方向性

第1章 FM研究会での課題解決の方向性

1 概要

県内自治体の公共施設は、人口減少や少子高齢化、財源不足、施設の老朽化など厳しい

環境にある。また、マネジメントを実施する上で、取り上げてきたような仕組面・体制面・

手法面・合意形成面での大きな課題がある。FM研究会ではこれまで様々な課題のうち、

主に仕組面の課題に対応するため、施設情報の把握・整理・共有などの取組を行ってきた。

今後、取組を具体化していく必要があり、広域連携をさらに進めることが求められる。

図 46 FM研究会での課題解決の方向性

FM研究会での課題解決の方向性

広域的連携(今後の取組)

公共施設の環境 公共施設マネジメントの課題

人口減少

少子高齢化

仕組面の課題

手法面の課題

体制面の課題

マネジメント組織の整備

庁内人材の確保・技術職員不足

施設情報の整理・活用

マネジメント計画の策定

施設の総量適正化策

施設の長寿命化策

維持経費の 適化策

施設の有効活用策

合意形成面の課題

住民(議会)との合意形成

マネジメント機関の共同設置公共施設をマネジメントする機関を市町の域を

超えて一本化(機関等の共同設置)

施設の相互利用の促進どの市町の施設でも等しく利用できる環境を整

施設の共同設置大規模改修、建替えなどのタイミングで、隣接

市町と施設を共同設置

供給

財源不足

財務

施設の老朽化

品質

H26からの取組

施設情報の共通フォーマット化

公共施設等総合管理計画の策定支援

施設情報のオープンデータ化

サービス・維持管理の広域化サービス体制・維持管理体制を市町の域を超

えて一本化。

32

2 広域的連携

広域的連携の具体的なパターンは、①施設の相互利用、②サービスの広域化、③維持管

理の広域化、④施設の共同設置、⑤マネジメント機関の共同設置 が考えられる。これら

の中から、まず取り組みやすい①施設の相互利用から行い、広域連携の環境を整えていく

必要があると考えられる。

図 47 広域連携の具体的なパターン

①施設の相互利用

②サービスの広域化

施設の相互利用によって、サービス部分を広域

化。組織や施設の見直しを伴わないで住民サー

ビスを向上できる一方で、コスト削減効果は期

待できない。

事務の委託等によって、サービスの実施体制を

一本化。施設の見直しを伴わないため取り組み

やすい一方で、コスト縮減効果は限定的。

③維持管理の広域化 ④施設の共同設置

事務の委託等によって維持管理業務(清掃委託、

警備委託等)を一本化。施設の見直しを伴わな

いため取り組みやすい一方で、コスト縮減効果

は限定的。

自治体間での施設の統合や共同保有により施設

を共通化。施設を見直すのでコスト縮減効果が

大きい一方で、自治体間での調整が困難な場合

がある。

A市施設 B市施設

C町施設

保有

維持管理

サービス

保有

維持管理

保有

維持管理

A市住民 B市住民 C町住民

A市施設 B市施設

C町施設

保有

維持管理

サービス

保有 保有

A市住民 B市住民 C町住民

サービス サービス

共同設置施設

保有

A市住民 B市住民 C町住民

維持管理

サービス

保有

維持管理

サービス

保有

維持管理

サービス

保有

維持管理

サービス

A市住民 B市住民 C町住民

A市施設 B市施設

C町施設

33

⑤マネジメント機関の共同設置

公共施設マネジメント機関を共同設置。マネジメント部署を一本化することで、技術職員の不足

へ対応し、事務の効率化・高度化を図る。施設の見直しを伴わないため取り組みやすい一方で、

コスト縮減効果は限定的。

A市施設

保有

維持管理

サービス

A市施設

保有

維持管理

サービス

A市施設

保有

維持管理

サービス

共同の公共施設マネジメント機関

B市施設

保有

維持管理

サービス

B市施設

保有

維持管理

サービス

B市施設

保有

維持管理

サービス

C市施設

保有

維持管理

サービス

C市施設

保有

維持管理

サービス

C市施設

保有

維持管理

サービス

A市住民 B市住民 C町住民

34

おわりに

FM研究会では、平成 26 年度から県内 35 市町と県の担当者が参加し、公共施設マネジメン

トに係る研究を行ってきました。研究会は、主に地域ごとに少人数で実施して、緊密なコミュ

ニケーションを図っています。

平成 29 年度以降は、公共施設等総合管理計画の実行段階に移行しますので、一層、担当者

の連携を図り、静岡県内の自治体が一体となって公共施設マネジメントを進めていきたいと考

えています。