改訂のポイント総則の要点 学習指導要領改訂のポイ...

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新しい学習指導要領→ 2020 年〜 2030 年頃までの間,子供たちの学びを 支える 情報化,グローバル化の加速度的進展 人工知能(AI)の飛躍的進化      など →そのような予測困難な時代にあっても,未来の創り手となるために必要な 資質・能力を確実に子供たちに育むことが必要。 そのためには… よりよい学校教育を通じて,よりよい社会を創るという目標を学校と社会 が共有 学校教育のよさをさらに進化させるため,学校教育を通じて子供たちが身 に付けるべき資質・能力や学ぶべき内容などの全体像を分かりやすく見渡 せる「学びの地図」として,学習指導要領を示し,幅広く共有 社会に開かれた教育課程 急激な 社会的変化 学習指導要領改訂の方向性 教育内容の主な改善事項/その他の重要事項 ○言語能力の確実な育成 (例)学習の基盤としての各教科等における言語活動(実験レポートの作成など)の充実 ○理数教育の充実 (例)日常生活等から問題を見いだす活動や見通しをもった観察・実験などの充実により学習の質を向上 ○伝統や文化に関する教育の充実  (例)古典など我が国の言語文化,我が国や郷土の音楽・和楽器,武道などの指導の充実 ○道徳教育の充実 (例)道徳的価値を自分事として理解し,多面的・多角的に深く考えたり,議論したりする道徳教育の充実 ○体験活動の充実 (例)生命の有限性や自然の大切さ,挑戦や他者との協働の重要性を実感するための体験活動の充実 ○外国語教育の充実 (例)小中高一貫した学びを重視し,外国語能力の向上を図る目標の設定/国語教育との連携 ○初等中等教育の一貫した学びの充実  (例)学校段階間の円滑な接続や教科横断的な学習の重視 ○主権者教育,消費者教育,防災・安全教育などの充実 ○情報活用能力(プログラミング教育を含む) (例)コンピュータ等を活用した学習活動の充実 ○部活動 (例)教育課程との関連に留意/社会教育関係団体等との連携による持続可能な運営体制の構築 ○子供たちの発達の支援(障害に応じた指導,日本語の能力等に応じた指導,不登校等) 学習指導要領改訂の背景 ( 育成を目指す資質・能力の三つの柱/カリキュラム・ マネジメント/主体的・対話的で深い学び ) 育成を目指す資質・ 能力の三つの柱 学びに向かう力, 人間性等 どのように社会・世界と関わり, よりよい人生を送るか 知識及び技能 何を理解しているか 何ができるか 思考力,判断力, 表現力等 理解していること・ できることをどう使うか 「確かな学力」「健やかな体」「豊かな心」を 総合的にとらえて構造化 新しい時代に必要となる資質 ・ 能力の育成と,学習評価の充実 学びを人生や社会に生かそうとする 学びに向かう力,人間性等の涵養 生きて働く 知識及び技能の習得 未知の状況にも対応できる 思考力,判断力,表現力等の育成 何ができるようになるか 何を学ぶか どのように学ぶか よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し, 社会と連携 ・ 協働しながら,未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む 社会に開かれた教育課程」の実現 各学校における 「カリキュラム ・ マネジメント」 の実現 新しい時代に必要となる資質 ・ 能力を踏まえた 教科 ・ 科目等の新設や目標 ・ 内容の見直し 小学校の外国語教育の教科化,高校の新科目「公共」の新設など 各教科等で育む資質 ・ 能力を明確化し,目標や内容を構造的に示す 主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」) の視点からの学習過程の改善 生きて働く知識及び技能の習得 など,新しい時代に求められる 資質 ・ 能力を育成 知識の量を削減せず,質の高い理解 を図るための学習過程の質的改善 主体的な学び 対話的な学び 深い学び 本誌面については,新「学習指導要領」(文部科学省告示)の規定や答申の内容をもとに新学社編集部の責任において新たに作成したものである。 @Sing 1

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学習指導要領改訂のポイントと

総則の要点

改訂のポイント

新しい学習指導要領→ 2020 年〜 2030 年頃までの間,子供たちの学びを支える       情報化,グローバル化の加速度的進展       人工知能(AI)の飛躍的進化     

 など

→そのような予測困難な時代にあっても,未来の創り手となるために必要な 資質・能力を確実に子供たちに育むことが必要。●そのためには…

◆よりよい学校教育を通じて,よりよい社会を創るという目標を学校と社会が共有

◆学校教育のよさをさらに進化させるため,学校教育を通じて子供たちが身に付けるべき資質・能力や学ぶべき内容などの全体像を分かりやすく見渡せる「学びの地図」として,学習指導要領を示し,幅広く共有

社会に開かれた教育課程

急激な社会的変化

学習指導要領改訂の方向性

教育内容の主な改善事項/その他の重要事項

○言語能力の確実な育成(例)学習の基盤としての各教科等における言語活動(実験レポートの作成など)の充実

○理数教育の充実 (例)日常生活等から問題を見いだす活動や見通しをもった観察・実験などの充実により学習の質を向上

○伝統や文化に関する教育の充実  (例)古典など我が国の言語文化,我が国や郷土の音楽・和楽器,武道などの指導の充実

○道徳教育の充実 (例)道徳的価値を自分事として理解し,多面的・多角的に深く考えたり,議論したりする道徳教育の充実

○体験活動の充実 (例)生命の有限性や自然の大切さ,挑戦や他者との協働の重要性を実感するための体験活動の充実

○外国語教育の充実 (例)小中高一貫した学びを重視し,外国語能力の向上を図る目標の設定/国語教育との連携

○初等中等教育の一貫した学びの充実  (例)学校段階間の円滑な接続や教科横断的な学習の重視

○主権者教育,消費者教育,防災・安全教育などの充実○情報活用能力(プログラミング教育を含む) (例)コンピュータ等を活用した学習活動の充実

○部活動 (例)教育課程との関連に留意/社会教育関係団体等との連携による持続可能な運営体制の構築

○子供たちの発達の支援(障害に応じた指導,日本語の能力等に応じた指導,不登校等)

学習指導要領改訂の背景

 (育成を目指す資質・能力の三つの柱/カリキュラム・  マネジメント/主体的・対話的で深い学び )

育成を目指す資質・能力の三つの柱 学びに向かう力,

人間性等

どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか

知識及び技能

何を理解しているか何ができるか

思考力,判断力,表現力等

理解していること・できることをどう使うか

「確かな学力」「健やかな体」「豊かな心」を総合的にとらえて構造化

新しい時代に必要となる資質 ・能力の育成と,学習評価の充実学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力,人間性等の涵養

生きて働く知識及び技能の習得

未知の状況にも対応できる思考力,判断力,表現力等の育成

何ができるようになるか

何を学ぶか どのように学ぶか

よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し,社会と連携・協働しながら,未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む

「社会に開かれた教育課程」の実現

各学校における 「カリキュラム ・マネジメント」 の実現

新しい時代に必要となる資質・能力を踏まえた教科・科目等の新設や目標・内容の見直し

小学校の外国語教育の教科化,高校の新科目「公共」の新設など各教科等で育む資質・能力を明確化し,目標や内容を構造的に示す

主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」)の視点からの学習過程の改善

生きて働く知識及び技能の習得など,新しい時代に求められる資質・能力を育成知識の量を削減せず,質の高い理解を図るための学習過程の質的改善

主体的な学び対話的な学び深い学び

(本誌面については,新「学習指導要領」(文部科学省告示)の規定や答申の内容をもとに新学社編集部の責任において新たに作成したものである。)

@Sing 1

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★◆知・徳・体のバランスがとれた「生きる力」の

育成…確かな学力/豊かな人間性(道徳教育、

体験活動などの充実)/健康・体力

★◆新しい時代に必要となる資質・能力の育成

第1 

中学校教育の基本と教育課程の役割

            

何ができるようになるか

★は新規・大幅改訂

育成を目指す資質・能力の三つの柱❶生きて働く知識及び技能の習得各教科等において習得する知識や技能。個別の事実的な知識だけではなく,それらが相互に関連付けられ,さらに社会の中で生きて働く知識を含む。

❷未知の状況にも対応できる思考力,判断力,表現力等・物事の中から問題を見いだし,その問題を定義し解決の方向性を決定し,解決方法を探して計

画を立て,結果を予測しながら実行し,振り返って次の問題発見・解決につなげていく・精査した情報を基に自分の考えを形成し,文章や発話によって表現したり,目的や場面,状況

等に応じて互いの考えを適切に伝え合い,多様な考えを理解したり,集団としての考えを形成したりしていく

・思いや考えを基に構想し,意味や価値を創造していく

❸学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力,人間性の涵養「知識及び技能」「思考力,判断力,表現力等」をどのような方向性で働かせていくかを決定付ける重要な要素。・学びに向かう力,自己の感情や行動を統制する能力,自らの思考の過程等を客観的に捉える力

などいわゆる「メタ認知」に関するもの・協働する力,持続可能な社会づくりに向けた態度,リーダーシップやチームワーク,感性,優

しさや思いやりなどの「人間性等」

★◆資質・能力を育成するためのカリキュラム・マ

ネジメントの推進

★◆育成を目指す資質・能力を踏まえた各学校の教育

目標を明確にし、基本方針を家庭や地域と共有

★◆教科横断的な視点に立った資質・能力の育成

 

・言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力

等の学習の基盤となる資質・能力

 

・現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力

 

◆教育課程の編成における共通的事項

【内容】

 

・指導の順序の工夫

 

・複式学級、選択教科の開設

 

・道徳教育は特別の教科道徳に示された内容で、

道徳教育に関する配慮事項を踏まえて実施

【授業時数】

 

・年間35週以上にわたって行うよう計画

第2 

教育課程の編成    何を学ぶか

「カリキュラム・マネジメント」の三つの側面

❶各教科等の教育内容を相互の関係で捉え,学校教育目標を踏まえた教科等横断的な視点で,その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。

❷教育内容の質の向上に向けて,子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき,教育課程を編成し,実施し,評価して改善を図る一連の PDCA サイクルを確立すること。

❸教育内容と,教育活動に必要な人的・物的資源等を,地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。

 

・生徒会活動、学校行事は、内容に応じ、適切な

授業時数を特別活動の授業にカウント

 

・授業の1単位時間の適切な設定

★・モジュール学習は、内容(

単元や題材など)

時間のまとまりを見通した中で実施されるなど

条件が整っている場合は授業時数にカウント

 

・創意工夫を生かした弾力的な時間割の編成

 

・総合的な学習の時間で、特別活動(学校行事)

を実施可能(同様の効果が期待される場合)

【配慮事項】

★・主体的・対話的で深い学び(

※次ページ上段)

の実現に向けた授業改善を通して資質・能力を

育む効果的な指導ができるようにする

 

・内容(

単元等)

や時間のまとまりを見通しながら、

指導事項のまとめ方や重点の置き方を工夫

 

・各教科、各学年間の関連を図り、系統的・発展

的な指導を実施

★◆小中、中高の円滑な接続が図れるような工夫

★◆主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業

改善

★・各教科等の特質に応じた見方・考え方を軸とし

た授業改善の取り組みを活性化

 

・単元のまとまり(

単元・時間等)

を見通しなが

ら実施

 

・国語科を要とする、各教科の言語活動の充実

 

・コンピュータ、視聴覚教材などの活用

 

・見通しを立てたり、振り返ったりする活動の実施

★・体験活動の重視(家庭や地域社会と連携)

 

・生徒の自主的、自発的な学習の促進

 

・学校図書館の計画的な利用、読書活動の充実

★・地域施設を活用した、情報収集や鑑賞等の活動

の充実

第3 

教育課程の実施と学習評価

どのように学ぶか 

何が身に付いたか

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の視点【主体的な学び】学ぶことに興味や関心を持ち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しを持って粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。

【対話的な学び】子供同士の協働,教職員や地域の人との対話,先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。

【深い学び】習得・活用・探究という学びの過程の中で,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか。

◆学習評価の充実

 

・生徒の良い点や進歩の状況を積極的に評価

 

・目標の実現に向けた学習状況を把握する観点か

ら、単元や題材など内容や時間のまとまりを見

通しながら評価の場面や方法を工夫(パフォー

マンス評価、ポートフォリオ評価など)

 

・学習の過程や成果を評価し、授業を改善

★・学年や学校段階を超え、学習成果を円滑に接続

するように工夫

小・中・高の各教科を通じて,3観点に整理→目標に準拠した評価の実質化→教科・校種を超えた共通理解に基づく組織的な取組を促進

【現行】 【新しい評価の観点】

学習評価の4観点

学力の3要素(学校教育法)(学習指導要領)

関心・意欲・態度

思考・判断・表現

技能

知識・理解

知識及び技能

思考力,判断力,表現力等

主体的に学習に取り組む態度

「学びに向かう力,人間性等」に示された資質・能力には、観点別評価になじまないもの(感情や思いやり等)も含まれており,観点別評価と個人内評価の両面で見取る必要がある。

(本誌面については,新「学習指導要領」(文部科学省告示)の規定や答申の内容をもとに新学社編集部の責任において新たに作成したものである。)

総則の要点

第6 

道徳教育に関する配慮事項

第5 

学校運営上の留意事項

実施するために何が必要か 

第4 

生徒の発達の支援

生徒の発達をどのように支援するか 

 不登校生徒への配慮

 

・保護者や関係機関と連携を図り、専門家の助言

や援助を得て、社会的自立を目指す観点から

個々の生徒の実態に応じた情報の提供その他必

要な支援

 

・個別学習など、指導方法や指導体制を工夫改善

 学齢を経過した者への配慮

 

・年齢、経験、勤労状況などの実情を踏まえる

 

※「障害者の権利に関する条約」(平成26年批准)

 

※「障害者差別解消法」(平成28年施行)

◆教育課程の改善と学校評価、教育課程外の活動と

の連携等

★・各学校の特色を生かしたカリキュラム・マネジ

メントの実施。学校評価はカリキュラム・マネ

ジメントと関連付けて実施

★・食育やいじめ防止などの各分野における学校の

全体計画と関連付けし、教育課程を編成・実施

★・教育課程外の学校教育活動と教育課程の関連が

図られるよう留意する。特に、部活動は、教育

課程との関連に留意。地域の協力を得るなど、

持続可能な運営体制を整備

◆家庭や地域社会との連携・協働、学校間の連携

 

・世代を超えた交流(高齢者や異年齢の子供など)

 

・他の学校間との連携・交流

 

・障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習

 

・道徳教育の目標を踏まえ、全体計画を作成し、「道

徳教育推進教師」を中心に全教員が協力して実施

 

・職場体験やボランティア活動、自然体験活動な

ど、豊かな体験を充実

 

・家庭や地域社会との共通理解を深め、相互に連携

◆生徒の発達を支える指導の充実

 

・学級経営の充実を図り、教師と生徒との信頼関

係及び生徒相互のよりよい人間関係を育成

★・ガイダンスとカウンセリングの双方で発達を支援

 

・生徒の自己実現を図れるよう生徒指導を充実

★・組織的・計画的な進路指導(

キャリア教育)

実施

 

・個に応じた指導の充実(習熟度別学習など)

★◆特別な配慮を必要とする生徒への指導

 障害のある生徒などへの指導※

 

・個別の教育支援計画や指導計画を作成し活用

 

・個々の生徒の障害の状態等に応じた指導内容や

指導方法の工夫を、組織的、計画的に実施

 海外から帰国した生徒などへの指導

 

・学校生活への適応を図り、外国における生活経

験を生かす指導の実施

 ・日本語の習得に困難のある生徒については、個々

の生徒の実態に応じた指導内容や指導方法の工

夫を組織的かつ計画的に実施

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グローバル化やAI(人工知能)をはじめとする

技術革新が急速に進む中、これからの生徒には、こ

うした社会の変化に受け身に対応するだけでなく、

主体的に向き合って関わり合い、自ら新しい社会の

在り方を形作っていくことが求められる。こうした

理念の下、新しい学習指導要領では、「何ができる

ようになるか」という観点から、生徒にどのような

資質・能力を育んでいくことが求められるのかを、

各教科等において明らかにした。また、総則の構成

を従来のものから大きく変更し、各学校におけるカ

リキュラム・マネジメントの流れに沿って、①中学

校教育の基本と教育課程の役割(第1)、②教育課

程の編成(第2)、③教育課程の実施と学習評価(第

3)、④生徒の発達の支援(第4)、⑤学校運営上の

留意事項(第5)、⑥道徳教育に関する配慮事項(第

6)とした。これにより、各学校におけるカリキュ

ラム・マネジメントがより組織的・計画的に行われ、

教育の質的向上が図られることが期待される。実務

的にも、学校において教育課程を編成・実施する際

の基準となることは勿論、PDCAサイクルが円滑

に機能しているかを検討するためのチェックリスト

やその他各種の校内研修等においても活用されるこ

とが考えられよう。

 

総則の変更点は多岐にわたるが、以下では前回か

らの変更点を中心に要点を整理する。

【総則第1:中学校教育の基本と教育課程の役割】

 

上述のように、今回の改訂では①知識及び技能、

②思考力、判断力、表現力等、③学びに向かう力、

人間性等という3つの柱から資質・能力を整理して

おり、総則第1の3においても、道徳科や外国語活

動、総合的な学習の時間及び特別活動も含めた各教

科等の指導を通して、これらの資質・能力が偏りな

く育成されるべきことを明記している。

 

第1の4では、新たにカリキュラム・マネジメン

トについて記述している。カリキュラム・マネジメ

ントは様々な内容を含む概念であるが、その本質は、

①教科横断的な視点、②PDCAサイクルに基づく

教育課程の不断の改善、③教育課程の実施に必要な

人的・物的資源の確保、という3つの側面に集約さ

れる。このカリキュラム・マネジメントは、管理職

や教務主任等だけが行うものではなく、全ての教職

員が、それぞれの立場において実践していくべきも

のであることには十分留意しなければならない。例

えば、言語能力の育成については、国語科が中核的

な教科としてその要となるが、外国語科はもちろん、

文部科学省初等中等教育局教育課程課 教育課程企画室長

白井 俊

中学校学習指導

要領総則の要点

数学科において問題解決の過程や結果を図や式を用

いて表現すること、理科における観察・実験の結果

などについてのレポート作成や発表、特別活動にお

けるディスカッション等、各教科等の言語活動を通

じて育成されるものであり、国語以外を担当する教

員においても、自らの担当教科等においてどのよう

に言語活動の充実を図るか、国語科と相互に関連を

図った指導をどのように充実するか等、教科横断的

なカリキュラム・マネジメントが必要となるのであ

り、これらは教員一人一人の意識と実践があっては

じめて有効に機能するものである。

【総則第2:教育課程の編成】

 

第2の1では、各学校がその教育目標を明確にす

るとともに、教育課程の編成についての基本的な方

針を家庭や地域とも共有していくこととしている。

これは、教育の目標を、教育課程を通じて学校が社

会と共有していくという「社会に開かれた教育課程」

の理念に基づくものであり、特に家庭や地域との効

果的な連携を進めていく上で重要である。

 

第2の2では、言語能力や情報活用能力、問題発

見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を適

切に育成することができるよう、教科横断的な視点

から教育課程を編成すべきことについて規定してい

る。また、現代的な諸課題に対応する主権者教育や

食育、防災教育等についても、一つの教科等の枠組

みだけでなく様々な教科等にまたがっていることか

ら、教科横断の視点が必要となる。例えば、今回の

改訂は、未曽有の大災害となった東日本大震災後の

初めての改訂であり、放射線の科学的な理解等の充

実が課題となっているが、放射線の科学的な理解や

科学的に探究する態度(理科)、健康の成り立ちに

ついての理解(保健体育科)、食品の選択について

の理解(中学校技術・家庭科(家庭分野))、情報と

情報の関係や情報の信頼性の確かめ方(国語科)な

どの内容の充実を図っており、教科等横断的な視点

を持って教育課程を編成し、それぞれの教科等にお

いて必要な指導が適切に行われるようにすることが

求められる。

 

第2の3(3)では、指導計画の作成に際して、「単

元や題材など内容や時間のまとまりを見通す」こと

を重視している。これは、従来の教育実践や各種研

修等における授業改善の取組が、ややもすれば一回

一回の授業における指導技術の改善に力点が置かれ

過ぎる傾向があったことを踏まえたものであり、後

述する「主体的・対話的で深い学び」の実現に向け

た授業改善を行っていくためにも、複数回の授業に

わたる見通しを持った上での授業デザインが重要で

あることを示したものである。

【総則第3:教育課程の実施と学習評価】

 

第3の1(1)は、主体的・対話的で深い学びの

実現に向けた授業改善に関する規定である。主体

的・対話的で深い学びの視点は、各教科等における

優れた授業改善等の取組に共通する普遍的な要素で

あり、今回の学習指導要領改訂において、これを学

習指導要領上に明記したものである。近年、教員の

世代交代が急速に進む中で、若手の教員に優れた教

育実践を継承していくことが大きな課題となってい

るが、こうした普遍的な授業改善の要素を学習指導

要領に明記することで、これまでに蓄積された優れ

た教育実践がより円滑に若い世代に継承され、更に

発展していくことが期待される。

 

中教審答申においては、①学ぶことに興味や関心

を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けな

がら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学

習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」

が実現できているか、②子ども同士の協働、教職員

や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考

えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話

的な学び」が実現できているか、③習得・活用・探

究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じ

た「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に

関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考

えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えた

り、思いや考えを基に創造したりすることに向かう

「深い学び」が実現できているか、という視点に立っ

た授業改善を行うことが示されている。

 

このうち、上記の③に関して、「深い学び」を実

現していくための鍵となるのが「見方・考え方」で

あり、各教科等の特質に応じた物事を捉える視点

や考え方のことである。「見方・考え方」は、新し

い知識及び技能を既有の知識及び技能と結びつけな

がら習得したり、思考力、判断力、表現力等をより

豊かなものとしたり、社会や世界にどのように関わ

るかの視座を形成したりする上で重要なものである。

例えば、「1603年に江戸幕府が成立した」、「昆

虫の足は6本である」といった断片的な知識を生き

て働く知識としていくためには、「見方・考え方」を

働かせた学習活動が重要な役割を果たすこととなる。

 

なお、「主体的・対話的で深い学び」とは、外形

的な指導方法のみに着目するものではない。例えば、

ディスカッションやディベートといった指導法を取

り入れ、生徒間の対話が行われているとしても、そ

うした状態のみをもって良し悪しを判断すべき性質

のものではないことには十分に留意したい。

 

また、「主体的・対話的で深い学び」は、あくまで

も基礎的・基本的な知識・技能の習得の上に実現さ

れるものであり、基礎・基本がおろそかにされるよ

うなことにつながってはならないことは当然である。

【総則第4:生徒の発達の支援】

 

生徒一人一人の資質・能力を育成していく上で、

教師と生徒、また生徒間の良好な人間関係は、学習

や生活の基盤となる。そのため、第4の1(1)で

は、学級経営の充実を図るとともに、主に集団を対

象とするガイダンスと個々の生徒を対象とするカウ

ンセリングの双方を効果的に活用して、生徒の発達

を支援することを規定している。

 

また、第4の2では、特別な配慮を必要とする生

徒への指導に関する記述を大幅に充実させている。

特に、第4の2(1)では、障害のある生徒などに

ついて、特別支援教育に関する教育課程編成の基本

的な考え方や、個に応じた指導を充実させるための

教育課程実施上の留意事項などが一体的に分かるよ

うに整理し、一人一人の障害の種類や程度を的確に

把握した上で、それぞれに適切な指導が行われるよ

う求めている。また、第4の2(3)では、不登校

の生徒に対して、個々の状況に応じた適切な支援を

行うとともに、相当の期間にわたり欠席すると認め

られる生徒に対して特別の教育課程を編成する場合

の留意事項を示している。

【総則第5:学校運営上の留意事項】

 

第5の1では、校長の方針の下に、教職員一人一

人が、それぞれの役割に基づいて相互に連携しなが

らカリキュラム・マネジメントを行っていくととも

に、学校評価に際しても、カリキュラム・マネジメ

ントと関連付けながら実施すべきとしている。管理

職や教務主任等の限られた教員だけでなく、教職

員一人一人がカリキュラム・マネジメントを意識し、

実践しているかどうかについては、学校評価におい

ても重要な観点の一つとなるだろう。

 

第5の2では、学校と家庭・地域の連携等につい

て示している。前述の「社会に開かれた教育課程」

の理念を実現していく観点からも、学校の教育活動

について家庭や地域に対して適切な情報発信を行い、

その理解や協力を得ていくことが重要である。また、

世代間、学校間、障害ある子供との間の交流等の機

会の充実についても示している。

【総則第6:道徳教育に関する配慮事項】

 

道徳教育については、平成27年の学習指導要領の

一部改正により特別の教科化し、中学校については

平成31年から全面実施とされている。総則において

も平成27年の一部改正後の規定を受け継いでおり、

今後とも、道徳教育の着実な実施が求められる。

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※言葉による見方・考え方を働かせるとは、生徒が学習の中で、

対象と言葉、言葉と言葉との関係を、言葉の意味、働き、使い

方等に着目して捉えたり問い直したりして、言葉への自覚を高

めることであると考えられる。

*各学年の学習内容は、前後の学年で取り上げてもよい。

〔知識及び技能〕

(1)言葉の特徴や使い方

  

・事象や行為、心情を表す語句の量を増す。

  

・比喩、反復、倒置、体言止めなどの表現技法

 を理解し使う。

(2)情報の扱い方

  

・情報と情報との関係について理解する。

  

・情報の整理の仕方、引用の仕方や出典の示し

 

方について理解を深め、使う。

(3)我が国の言語文化

  

・共通語と方言の果たす役割を理解する。

  

・読書が、知識や情報を得たり、考えを広げた

 

りすることに役立つことを理解する。

〔知識及び技能〕

(1)言葉の特徴や使い方

  

・理解したり表現したりするために必要な語句

 の量を増す。

(2)情報の扱い方

  

・情報と情報との関係について理解を深める。

  

・情報の信頼性の確かめ方を理解し使う。

(3)我が国の言語文化

  

・長く親しまれている言葉や古典の一節を引用

 

するなどして使う。

  

・読書の意義と効用について理解する。

〔知識及び技能〕

(1)言葉の特徴や使い方

  

・抽象的な概念を表す語句の量を増す。

(2)情報の扱い方

  

・情報と情報との関係について理解する。

  

・情報と情報との関係の様々な表し方を理解し

 

使う。

(3)我が国の言語文化

  

・現代語訳や語注などを手掛かりに作品を読み、

 古典に表れたものの見方や考え方を知る。

  

・本や文章などには、様々な立場や考え方が書

 

かれていることを知り、読書に生かす。

〔思考力、判断力、表現力等〕

A 

話すこと・聞くこと

  

・根拠の適切さや論理の展開などに注意して、 

 

話の構成を工夫する。

B 

書くこと

  

・根拠の適切さを考えるなどして、自分の考え

 

が伝わる文章になるように工夫する。

  

・読み手の立場に立って、文章を整える。

C 

読むこと

  

・複数の情報を整理しながら適切な情報を得た

 

りして、内容を解釈する。

  

・文章と図表などを結び付けて内容を解釈する。

〔思考力、判断力、表現力等〕

A 

話すこと・聞くこと

  

・自分の考えや根拠が明確になるように、話の

 

構成を考える。

B 書くこと

  

・根拠を明確にしながら、自分の考えが伝わる

 

文章になるように工夫する。

  

・読み手の立場に立って、文章を整える。

C 読むこと

  

・事実と意見との関係などについて叙述を基に

 

捉え、要旨を把握する。

  

・心情の変化などについて描写を基に捉える。

〔思考力、判断力、表現力等〕

A 

話すこと・聞くこと

  

・多様な考えを想定しながら材料を整理し、伝

 

え合う内容を検討する。

  

・合意形成に向けて考えを広げたり深めたりする

B 

書くこと

  

・多様な読み手を説得できるように文章の構成

 

を工夫する。

C 

読むこと

  

・文章を批判的に読み、文章に表れているもの

 

の見方や考え方について考える。

     一年

三年

二年

中学校国語科の目標と

育成を目指す資質・能力

学習内容の主な改善点

表は新「学習指導要領」(文部科学省告示)の規定及び解説,「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(中央教育審議会第 197 号)の「別添 2-1」をもとに新学社編集部において作成。(1)〜等の記号は編集部にて加筆。

図・表は「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(中央教育審議会第 197 号)の「別添 2-3」をもとに新学社編集部において作成。

※必ずしも一方向,順序性の ある流れではない。

国語

例)・言葉の働きや役割,特徴 やきまり,使い方に関す る理解と使い分け・書写,伝統的な言語文化, 文章の種類,情報活用に 関する知識・技能

(2)思考力,判断力,表現力等例)・国語で理解したり表現したりするため の力・創造的・論理的思考の側面,感性・情 緒の側面,他者とのコミュニケーショ ンの側面において必要となる力・考えの形成・深化において必要な力

(1)知識及び技能 (3)学びに向かう力,人間性等例)・言葉によって困難を克服し,言葉を通して社  会や文化を創造しようとする態度・我が国の言語文化を享受し,生活や社会の  中で活用し,継承・発展させようとする態度・読書を通して知識を獲得するなどして,人生  を豊かにしようとする態度

目標 言葉による見方・考え方を働かせ,言語活動を通して,国語で正確に理解し適切に   表現する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

<資質・能力の例>

((

((

改訂のポイント

①教科・学年の目標が、資質・能力の三つの柱

に即した構成に。また、各学年の内容が、〔知

識及び技能〕、〔思考力、判断力、表現力等〕

の二項目に分けられた。

②〔知識及び技能〕においては、語彙指導の充

実が求められている。また、情報の扱い方や、

読書の意義や効用に関する事項が新設された。

 

〔思考力、判断力、表現力等〕においては、

各領域において、「考えの形成」が位置付け

られた。また、実際に話したり聞いたり書い

たり読んだりする活動が重視されている。

③漢字の習得や読書の指導など、他教科等と積

極的に関連させて指導することが求められて

いる。

主な改善点

①漢字…都道府県名で用いる漢字については、

小学校第四学年までの学習配当になった。

②言語活動…実用的な文章を書く例として「電

子メール」が挙げられ、また、引用して説明

したり解説したりする活動も例示された。

(1)社会生活に必要な国語について,その特質を理解し適切に使うことができるようにする。

テーマの設定

テーマの設定

考えの形成

話題選択

選書(本以外も含む)

構造と内容の把握

精査・解釈

考えの形成

他者の読むことへの評価,

他者からの評価

話題選択

集団としての考えの形成進行の計画

話すこと,聞くことの往還

関連する情報の収集

*読むこと,聞くことで

育成した力を活用

表現(発話の調整)

記述

推敲

情報収集*読むこと,聞くことで育成した力を活用

情報収集*読むこと,聞くことで育成した力を活用

内容の整理(必要に応じた質問)

記録,記録の整理

構造と内容の把握 精査・解釈

考えの形成・深化

考えの形成・深化

内容の検討

内容の検討

構成・表現形式の検討

構成・表現形式の検討

他者の話すことへの評価,

他者からの評価

他者の書くことへの評価,他者からの評価

他者の聞くことへの評価,他者からの評価

(2)社会生活における人との関わりの中で伝え合う力を高め,思考力や想像力を養う。

(3)言葉がもつ価値を認識するとともに,言語感覚を豊かにし,我が国の言語文化に関わり,国語を尊重してその能力の向上を図る態度を養う。

3学年を通して語彙指導を充実

3学年を通して語彙指導を充実

多様な考えがある前提に立つこと,文章を批判的に読むことが求められている

「読書」新設

「読書」新設

「読書」新設

2年から移行

「長く親しまれている言葉」追加

「情報の扱い方」新設

「情報の扱い方」新設

3学年を通して語彙指導を充実

「情報の扱い方」新設

「現代語訳」「語注」の活用を追加

表現技法の例を拡充

話すこと・聞くこと

学習目的の理解(見通し)

話すこと

聞くこと

話し合うこと

自分の学習に対する考察(振り返り)

次の学習活動(話すこと・聞くこと、書くこと、読むこと)への活用

書くこと

読むこと

国語科における学習過程のイメージ

※新「学習指導要領」(文部科学省告示)を新学社編集部にお

いて部分抜粋した上で加工。

全領域で「根拠」や相手の立場を意識することが求められている

「複数の情報を整理」「文章と図表などを結び付けて内容を解釈」追加。全領域で「根拠」を重視

@Sing 6@Sing 7

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改訂のポイント

①教科・各分野の目標が、資質・能力の三つの

柱に即した構成に。また、内容が、〔ア知識

及び技能〕、〔イ思考力、判断力、表現力等〕

の二項目に分けられた。

②高校での科目編成の変更を踏まえつつ、世界

の歴史に関する内容、主権者教育を目的とし

た民主政治の歴史に関する内容等を充実さ

せ、「歴史」を5時間増の135時間に(「地理」

を5時間減の115時間に)。

③防災教育や国土教育などの充実。

学習内容の主な改善点

①地理…現行の「世界の地域構成」と「日本の

地域構成」は、最初の大項目「世界と日本の

地域構成」として再構成。地形図等を使った

地域調査は三つ目の大項目の最初で、地域の

在り方の考察は分野のまとめとして最後に位

置付け。「日本の諸地域」の「中核となる考

察の仕方」が七つから五つに変更。

②歴史…日本の歴史と関連付けながら、世界史

の内容が充実した。日本の領土の画定や現在

の政治制度の来歴に関連する歴史的な事象を

詳しく扱うようになった。

③公民…「領域」や「政治参加」に関連する学

習の充実に加え、「人工知能」「仕事と生活の

調和」「起業」など、今日的な問題が事例と

して明記された。

社会

中学校社会科の目標と

育成を目指す資質・能力

(1)知識及び技能

(1)−①我が国の国土と歴史,現代の政治,経済,国際関係等に関して理解するとともに,

(1)−②調査や諸資料から様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

(2)思考力,判断力,  表現力等

(2)−①社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を多面的・多角的に考察したり,社会に見られる課題の解決に向けて選択・判断したりする力,

(2)−②思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

(3)学びに向かう力,  人間性等

(3)−①社会的事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度を養う とともに,

(3)−②多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵

かん

養よう

される我が国の国土や歴史に対する愛情,国民主権を担う公民として,自国を愛し,その平和と繁栄を図ることや,他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを深める。

目標 社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す。

社会的な見方・考え方とは

図・表は新「学習指導要領」(文部科学省告示)並びに,「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(中央教育審議会第 197 号)の「別添資料 1 / 3 別添 3-5」をもとに新学社編集部の責任において作成。( )

※「社会的な見方・考え方」は、小・中・高等学校の

社会科、地理歴史科、公民科の各「見方・考え方」

を総称する呼称である。

社会的事象

社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を

考察する力

社会に見られる課題の解決に向けて

選択・判断する力

社会科における思考力・判断力 学習活動

社会的な見方・考え方=考察,選択・判断[構想]する際の「視点や方法」

社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を

考察する

社会に見られる課題を把握して課題の解決に向けて

選択・判断[構想]する

表は新「学習指導要領」(文部科学省告示)をもとに新学社編集部の責任において作成。(1)〜,①〜等の記号は新学社編集部にて加筆。( )

文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官

杉本 直美

中学校国語科の改訂の要点

指導要領改訂の趣旨とポイント

資質・能力の三つの柱に沿った整理

 

今回の改訂では、育成を目指す資質・能力の明確

化を図るため、全ての教科等の目標及び内容につい

て、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学

びに向かう力、人間性等」の三つの柱で再整理を行っ

ている。このことを踏まえ、国語科の目標について

も、(1)に「知識及び技能」に関する目標を、(2)

に「思考力、判断力、表現力等」に関する目標を、(3)

に「学びに向かう力、人間性等」に関する目標を示

している。

 

冒頭にある「言葉による見方・考え方」とは、中

央教育審議会において、「主体的・対話的で深い学び」

における「深い学び」を考える鍵になるものとし

て議論されたものである。「言葉による見方・

考え

方を働かせ」るとは、生徒が学習の中で、対象と言

葉、言葉と言葉との関係を、言葉の意味、働き、使

い方等に着目して捉えたり問い直したりして、言葉

への自覚を高めることであると考えられる。様々な

事象の内容を自然科学や社会科学等の視点から理解

することを直接の学習目的としない国語科において

は、言葉を通じた理解や表現及びそこで用いられる

言葉そのものを学習対象としている。このため、「言

葉による見方・考え方」を働かせることが、国語科

において育成を目指す資質・能力をよりよく身に付

けることにつながることとなる。

 

また、国語科の内容についても、三つの柱に沿っ

た整理をしている。なお、三つの柱のうち「学びに

向かう力、人間性等」については、教科及び学年の

目標においてまとめて示し、指導事項のまとまりご

とに示すことはしていない。

学習内容の改善・充実

 〔知識及び技能〕、〔思考力、判断力、表現力等〕

の各指導事項については、国語科で育成を目指す資

質・能力が明確になるよう内容を改善した。主な改

善点は次のとおりである。

・言葉の働きに関する事項の新設

 

自分が用いている言葉の働きを客観的に捉えるこ

とは、国語科で育成を目指す資質・能力の重要な要

素であることから、第二学年に新設した。

・語彙指導の改善・充実

 

各学年に示した語句のまとまりを中心に、話や文

章の中で使うことにより、自分の語彙を豊かにする

指導を小・中学校を通して系統化して示した。

・情報の扱い方に関する事項の新設

 

話や文章を正確に理解するために、話や文章に含

まれている情報を取り出して整理したりその関係を

捉えたりすることや、話や文章で適切に表現するた

めに、自分のもつ情報を整理してその関係を明確に

することができる資質・能力の育成を目指し、小・

中学校を通して新設した。

・学習過程の明確化、「考えの形成」の重視

 〔思考力、判断力、表現力等〕の各領域において、

学習過程を一層明確化するとともに、各学習過程で

育成を目指す資質・能力が明確になるよう内容の改

善を図った。また、全ての領域において、自分の考

えを形成する学習過程を重視し、「考えの形成」に

関する指導事項を位置付けた。

授業改善のための言語活動の創意工夫

 〔思考力、判断力、表現力等〕の各領域において、

どのような資質・能力を育成するかを指導事項に示

し、どのような言語活動を通してそれらを育成する

かを言語活動例に示すという関係を明確にするとと

もに、各学校の創意工夫により授業改善が行われる

ようにする観点から、従前、示していた言語活動例

を言語活動の種類ごとにまとめた形で示した。

@Sing 8@Sing 9

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地  理 歴  史 公  民

視点の例

・位置や分布に関わる視点・場所に関わる視点・人間と自然環境との相互依存関係に 関わる視点・空間的相互依存作用に関わる視点・地域に関わる視点

・時系列に関わる視点・諸事象の推移に関わる視点・諸事象の比較に関わる視点・事象相互のつながりに関わる視点

・現代社会をとらえる視点・社会に見られる課題の解決を構想する 視点

 例)対立と合意,効率と公正 など

思考力、判断力

考察 選択・判断[構想] 考察 選択・判断[構想] 考察 選択・判断[構想]地域の特色や地域相互の関連を多面的・多角的に考察する力

地域に見られる課題の解決に向けて,複数の立場や意見を踏まえて選択・判断する力

時代の転換の様子や各時代の特色を多面的・多角的に考察する力

歴史に見られる諸課題について,複数の立場や意見を踏まえて選択・判断する力

社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を多面的・多角的に考察する力

複数の立場や意見を踏まえて構想する力

問いの例

・それはどこに位置するだろう。

・そこでの生活はまわりの自然環境からどのような影響を受けているだろう。

       など

・それはどのような場所とするべきなのだろう。

・それは他の場所とどのような関係を持つべきなのだろう。

       など

・いつおこったか。・前の時代とどのよ うに変わったか。・なぜおこったか。・どのような影響を 及ぼしたか。など

・なぜそのような判断をしたと考えられるか。

・歴 史を振り返り,よりよい未来の創造のために,どのようなことが必要とされるか。 など

・なぜ市場経済という仕組みがあるのか,どのような機能があるのか。

・民主的な社会を営むために,なぜ法に基づく政治が大切なのか。  など

・よりよい決定の仕方とはどのようなものか。

・社会保障とその財源の確保の問題をどのように解決していったらよいか。

など

中学校社会科の

「社会的な見方・考え方」の例

学習内容の主な改善点

地理

A世界と日本の地域構成

 

⑴地域構成

  

①世界の地域構成

  

②日本の地域構成

B世界の様々な地域

 

⑴世界各地の人々の生活と環境

 

⑵世界の諸地域

  

①アジア   

②ヨーロッパ

  

③アフリカ  

④北アメリカ

  

⑤南アメリカ 

⑥オセアニア

C日本の様々な地域

 

⑴地域調査の手法

 

⑵日本の地域的特色と地域区分

  

①自然環境 

②人口 

③資源・エネル

  

ギーと産業 

④交通・通信

 

⑶日本の諸地域

  (以下①〜⑤は考察の仕方の中核)

  

①自然環境 

②人口や都市・村落

  

③産業 

④交通や通信 

⑤その他

 

⑷地域の在り方

歴史

A歴史との対話

 

⑴私たちと歴史

 

⑵身近な地域の歴史

B近世までの日本とアジア

 

⑴古代までの日本

  (ア)世界の古代文明や宗教のおこり

  (イ)日本列島における国家形成

  (ウ)律令国家の形成

  (エ)古代の文化と東アジアとの関わり

※新学社編集部の責任において部分抜粋した上で加工。

 

⑵中世の日本

  (ア)武家政治の成立とユーラシアの交流

  (イ)武家政治の展開と東アジアの動き

  (ウ)民衆の成長と新たな文化の形成

 

⑶近世の日本

  (ア)世界の動きと統一事業

  (イ)江戸幕府の成立と対外関係

  (ウ)産業の発達と町人文化

  (エ)幕府の政治の展開

C近現代の日本と世界

 

⑴近代の日本と世界

  (ア)欧米における近代社会の成立と

    

アジア諸国の動き

  (イ)明治維新と近代国家の形成

  (ウ)議会政治の始まりと国際社会との関わり

  (エ)近代産業の発展と近代文化の形成

  (オ)第一次世界大戦前後の国際情勢と

    

大衆の出現

  (カ)第二次世界大戦と人類への惨禍

 

現代の日本と世界

  (ア)日本の民主化と冷戦下の国際社会

  (イ)日本の経済の発展とグローバル化

    

する世界

公民

A私たちと現代社会

 

⑴私たちが生きる現代社会と文化の特色

 

⑵現代社会を捉える枠組み

B私たちと経済

 

⑴市場の働きと経済

 

⑵国民の生活と政府の役割

C私たちと政治

 

⑴人間の尊重と日本国憲法の基本的原則

 

⑵民主政治と政治参加

D私たちと国際社会の諸課題

 

⑴世界平和と人類の福祉の増大

 

⑵よりよい社会を目指して

 

今回の中学校社会科の改訂で特筆すべきことの

ひとつに、「社会的な見方・考え方」の明確化が挙

げられます。「社会的な見方・考え方」については、

これまでも社会科各分野において重視され、授業改

善に成果を上げてきたところですが、このたび教科

を超えて「見方・考え方」の整理が行われる中、新

たに「社会的な見方・考え方」として、小中高等学

校の学校種を貫き、社会的事象等を見たり考えたり

する際の視点や方法と位置付けられました。これに

より、小学校での社会科学習を踏まえ、高等学校地

理歴史科、公民科の橋渡しを行う中学校社会科では、

地歴公の三分野の特性を勘案して、分野ごとに名称

を与え、「社会的な見方・考え方」を整理しています。

 「社会的な見方・考え方」は、もとより資質・能

力全体の育成に関わるものではありますが、中でも、

教科等の本質的な学びを促し、深い学びを実現する

ための思考力、判断力、表現力等の育成に関わって

は、大きな役割を果たすものです。今次改訂では、

課題を追究したり解決したりする学習の重要性が指

摘されていますが、そこで設定される「問い」には、

「社会的な見方・考え方」を働かせた考察、構想を

促すような視点を盛り込むことが求められています。

 

このことについては、学習指導要領改訂の方向性

について検討してきた中央教育審議会においても、

活発な議論がなされ、答申中にも「別添3‐5」と

して、「『社会的な見方・考え方』を働かせたイメー

ジの例」という資料が掲載されていますので、是非

一度ご覧いただければと思います。そこでは、「社

会的な見方・考え方」については、「小中高等学校

と校種が上がるにつれて視点の質やそれを生かした

問いの質が高まる」として、分野ごとに、「考えら

れる視点の例」や、「視点を生かした、考察や構想

に向かう『問い』の例」、「考察、構想した結果、獲

得する知識の例」などと併せて表にまとめています。

 

その一例を地理的分野について挙げると、「社会

的事象の地理的な見方・考え方」とは、「社会的事

象を、位置や空間的な広がりに着目して捉え、地域

の環境条件や地域間の結び付きなどの地域という枠

組みの中で、人間の営みと関連付けて」働かせる際

の「視点や方法」であると整理し、そこに現れる「位

置や分布」、「場所」、「人間と自然環境との相互依存

関係」、「空間的相互依存作用」、「地域」を着目すべ

き主要な視点としています。

 

このうち、「位置」の視点を生かした「問い」で

は、「それはどこに位置するのだろう、どこにある

べきなのだろう」といった例や、便宜上、高校の科

目内に示された「それはなぜそこに位置するのだろ

う、そこに位置する意味(意義、役割、影響)は何

だろう」といった例を挙げています。このような問

いをさらに具体化し、年間の授業計画に生徒の習熟

を見込んで適切に設定することで、生徒は「位置」

に関わる「見方・考え方」を働かせることを身に付

け、社会に出た後も「なぜそこに住宅地があるのだ

ろう。どこに住むべきだろう。」などといった形で、

課題を見いだし、考察・構想することが期待されます。

 

このことは、他の視点、他分野の視点においても

同様です。それぞれの視点を生かした「問い」の考

察、構想を重ねることで、現実の社会的事象等から

課題を見いだし、考察・構想する社会科ならではの、

生徒の将来に生きて働く「見方・考え方」を働かせ

ることができるようになると考えています。そのこ

とを通して、「広い視野に立ち、グローバル化する

国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び

社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基

礎」の育成にも結び付くものと考えています。

文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官

濵野 清

中学校社会科の改訂の要点

指導要領改訂の趣旨とポイント

図・表は新「学習指導要領」(文部科学省告示)並びに,「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(中央教育審議会第 197 号)の「別添資料 1 / 3 別添 3-5」をもとに新学社編集部の責任において作成。( )

「日本の位置」「領域」はここ

地形図等を使った地域調査はここ

「日本の地域区分」はここ

考察の仕方の中核の見直し

地域の将来像などの課題追究・課題解決活動

「ギリシャ・ローマの文明」「古代の人々の信仰やものの見方」などを扱う

「領土,国家主権」に関連付けて,「領土」をめぐる問題を取り上げる

「仕事と生活の調和」の観点から「労働保護立法」に触

れる

「情報化」について,「人工知能」や

「防災情報の発信・活用」を取り上げる

「アジアの交易やムスリム商人」などを扱う

「モンゴル帝国の拡大」などを扱う

「領土の画定」などを扱う。「現代の政治との

つながり」に関連付ける

州ごとに主題を設ける

@Sing 10@Sing 11

Page 7: 改訂のポイント総則の要点 学習指導要領改訂のポイ …改訂のポイント総則の要点学習指導要領改訂のポイントと 新しい学習指導要領→2020年〜2030年頃までの間,子供たちの学びを

算数・数学の問題発見・解決の過程

数学の事象について統合的・発展的に考え,問題を解決することができる。

日常生活や社会の事象を数理的に捉え,数学的に処理し,問題を解決することができる。

事象を数理的に捉え,数学の問題を見いだし,問題を自立的,協働的に解決することができる。

【現実の世界】 【数学の世界】数学化 数学化

活用・意味づけ 統合・発展/体系化

日常生活や社会の事象 数学の事象

結果

第1学年 第 2 学年 第 3 学年

数と式

△素数(小 5 から)△自然数を素数の積として 表すこと(3 年から)

△自然数を素数の積として 表すこと (1 年へ)

図形

●反例

関数

データの

活用

●累積度数△不確定な事象の起こり やすさ(統計的な確率) (2 年から)

●四分位範囲,箱ひげ図 △誤差や近似値, a× 10n の形の表現 (1 年から)

△平均値,最頻値,中央値, 階級(小 6 へ)△誤差や近似値,a× 10n  の形の表現(3 年へ)

△不確定な事象の起こり やすさ(統計的な確率) (1 年へ)

内容の付加→● 学年間での移動→△各セルの上段:他学年からの移動または新設内容。各セルの下段:他学年への移動内容。

数学的に表現した問題

焦点化した問題

改訂のポイント

①教科・各学年の目標が、資質・能力の三つの

柱に即した構成に。また、内容の各項目が、〔ア

知識及び技能〕、〔イ思考力、判断力、表現力等〕

に分けられた。

②小学校の領域が再編され、中学校の「数と式」、

「図形」、「関数」、「データの活用(現・資料

の活用)」と対応した形になるなど、学校段

階間の関連が強化された。

③統計的な内容の充実。

学習内容の主な改善点

①数と式…現行は第3学年の「自然数を素数の

積として表すこと」が第1学年に移動。

②関数…追加・学年移動の内容はなし。

③図形…第2学年の「用語」に「反例」が追加。

④データの活用…第1学年で「累積度数」、第

2学年で「四分位範囲」「箱ひげ図」が追加。「不

確定な事象の起こりやすさ」(統計的な確率)

が第2学年から第1学年に移動。「誤差」「近

似値」などが第1学年から第3学年に移動。

中学校数学科の目標と

育成を目指す資質・能力

算数・数学の

学習過程のイメージ

※各場面で,言語活動を充実。 ※これらの過程は,自立的に,時に協働的に行い,それぞれに主体的に取り組めるようにする。※それぞれの過程を振り返り,評価・改善することができるようにする。

数学

(1)知識及び技能

(1)−①数量や図形などについての基礎的な概念や原理・法則などを理解する とともに,

(1)−②事象を数学化したり,数学的に解釈したり,数学的に表現・処理したりする技能を身に付けるようにする。

(2)思考力,判断力,  表現力等

(2)−①数学を活用して事象を論理的に考察する力

(2)−②数量や図形などの性質を見いだし統合的・発展的に考察する力

(2)−③数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表現する力を養う。

(3)学びに向かう力,  人間性等

(3)−①数学的活動の楽しさや数学のよさを実感して粘り強く考え,数学を生活や学習に生かそうとする態度

(3)−②問題解決の過程を振り返って評価・改善しようとする態度を養う。

目標  数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動を通して,数学的に考える資質・能力を    次のとおり育成することを目指す。

表は新「学習指導要領」(文部科学省告示)をもとに新学社編集部の責任において作成。(1)〜,①〜等の記号は編集部にて加筆。( )

( )図・表は新「学習指導要領」(文部科学省告示)並びに,「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(中央教育審議会第 197 号)の「別添資料 2 / 3 別添 4-3」をもとに新学社編集部の責任において作成。

※新学社編集部の責任において部分抜粋した上で加工。

学習内容の主な改善点

@Sing 12@Sing 13

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今回の改訂では、数学的な見方・考え方を働かせ

た数学的活動を通して、生徒の主体的・対話的で深

い学びの実現を図るようにしている。主体的・対話

的で深い学びは、必ずしも1単位時間の授業の中で

全てが実現されるものではないことから、単元など

内容や時間のまとまりの中で、生徒や学校の実態、

指導の内容に応じて実現されるよう、指導計画の作

成等をすることが重要である。

 「数学的活動」とは、事象を数理的に捉え、数学

の問題を見いだし、問題を自立的、協働的に解決す

る過程を遂行することである。これは「生徒が目的

意識をもって主体的に取り組む数学に関わりのある

様々な営み」であるとする従来の意味をより明確に

したものである。数学的活動として捉える問題発見・

解決の過程には、主として二つの過程を考えること

ができる。13ページの「算数・数学の学習過程のイ

メージ」でも示したとおり、その一つは、日常生活

や社会の事象を数理的に捉え、数学的に表現・処理

し、問題を解決し、解決過程を振り返り得られた結

果の意味を考察する過程である。もう一つは、数学

の事象から問題を見いだし、数学的な推論などに

よって問題を解決し、解決の過程や結果を振り返っ

て統合的・発展的に考察する過程である。なお、数

学的活動を通して学習を展開する際は、数学の問題

発見・解決の過程を意識しつつ、指導において必要

な過程を遂行することが大切であり、単位授業時間

においてこれらの過程の全てを学習することを求め

るものではないことに留意する。

 

主体的・対話的で深い学びの実現を目指すに当

たっては、これらの二つの過程を反映した活動を意

識し、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」

の視点から授業改善を図ることが重要である。

 「主体的な学び」の視点から授業改善するに当たっ

ては、例えば、日常の事象や社会の事象を数理的に

捉え、数学の問題を見いだし、問題を自立的、協働

的に解決し、学習の過程を振り返り、概念を形成す

るなどの学習が充実されるようにする。このような

学習を基に、生徒自らが、問題の解決に向けて見通

しをもち、粘り強く取り組み、問題解決の過程を振

り返り、よりよく解決したり、新たな問いを見いだ

したりすることなどが授業において実現されるよう

にしたい。

 

また、「対話的な学び」の視点から授業改善する

に当たっては、例えば、言葉や数、式、図、表、グ

ラフなどを適切に用いて、数量や図形などに関する

事実や手続き、思考の過程や判断の根拠などを的確

に表現したり、考えたことや工夫したことなどを数

学的な表現を用いて伝え合い共有したり、見いだし

たことや思考の過程、判断の根拠などを数学的に説

明したりすることなどが授業において実現されるよ

うにしたい。

 

さらに、「深い学び」の視点から授業改善するに

当たっては、数学に関わる事象や、日常生活や社会

に関わる事象について、「数学的な見方・考え方」

を働かせ、数学的活動を通して、新しい概念を形成

したり、よりよい方法を見いだしたりすることなど

生徒の理解を広げたり深めたりする機会が授業にお

いて実現されるようにしたい。

 

このような活動を通して生徒の「主体的な学び」

「対話的な学び」「深い学び」が実現できているかどう

かについて確認しつつ授業改善がなされ、生徒が数

学を学習すること自体に楽しみを見いだし、学習の

状況に応じて自分なりに自信をもって問題発見・解

決の過程を遂行できるようにすることが大切である。

文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官

水谷 尚人

中学校数学科の改訂の要点

指導要領改訂の趣旨とポイント

「自然の事物・現象を,質的・量的な関係や時間的・空間的な関係などの科学的な視点で捉え,比較したり,関係付けたりするなどの科学的に探究する方法を用いて考えること」

中学校理科の目標と

育成を目指す資質・能力

理科の見方・考え方とは

表は新「学習指導要領」(文部科学省告示)並びに,「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(中央教育審議会第 197 号)の「別添資料 5-1」をもとに新学社編集部の責任において作成。(1)〜,①〜等の記号は編集部にて加筆。

理科

(1)知識及び技能

(1)−①自然事象に対する概念や原理・法則の基本的な理解

(1)−②科学的探究についての基本的な理解

(1)−③探究のために必要な観察・実験等の基本的な技能(安全への配慮,器具などの操作,測定の方法,データの記録・処理等)

(2)思考力,判断力,  表現力等

(2)−①自然事象の中に問題を見いだして見通しをもって課題や仮説を設定する力

(2)−②計画を立て,観察・実験する力

(2)−③得られた結果を分析して解釈するなど,科学的に探究する力と科学的な根拠を基に表現する力

(2)−④探究の過程における妥当性を検討するなど総合的に振り返る力

(3)学びに向かう力,  人間性等

(3)−①自然を敬い,自然事象に進んでかかわる態度

(3)−②粘り強く挑戦する態度(3)−③日常生活との関連,科学することの面白さや有用性の気付き

(3)−④科学的根拠に基づき判断する態度

(3)−⑤小学校で身に付けた問題解決の力などを活用しようとする態度

目標 自然の事物・現象に関わり,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,   実験を行うことなどを通して,自然の事物・現象を科学的に探究するために   必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

( )

( )図は新「学習指導要領」(文部科学省告示)並びに,「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(中央教育審議会第 197 号)の「別添資料 5-3」をもとに新学社編集部の責任において作成。

改訂のポイント

①教科・分野の目標が、資質・能力における三

つの柱に即した構成に。また、各分野の内容

が、〔ア知識及び技能〕、〔イ思考力、判断力、

表現力等〕の二項目に分けて示された。

学習内容の主な改善点

①第一分野…エネルギー(物理)領域では、「力」

の内容が再編成される。第1学年で「力のつ

り合い」を、第3学年で「水圧・浮力」を学

習する(「圧力・大気圧」は第2学年地学へ)。

「放射線の性質と利用」の一部を「真空放電」

と関連付けて第2学年で学習する。

 

粒子(化学)領域では、「プラスチックの性質」

を第3学年で学習する。

②第二分野…生命(生物)領域が全学年を通し

て再編成される。

 

第1学年で「分類の仕方」と「生物の体の共

通点と相違点」を、第2学年で「植物と動物

の体のつくりと働き」を学習する。「進化」に

ついては、第3学年で「遺伝の規則性と遺伝

子」の後で学習する。

 

地球(地学)領域では、「自然の恵みと災害」

を各学年の該当単元で学習する。「圧力・大

気圧」を第2学年の「気象要素」で学習する。

生命

地球

エネルギー

粒子

自然の事物・現象を主として量的・関係的な視点で捉える。

自然の事物・現象を主として質的・実体的な視点で捉える。

比較したり,関係付けたりするなどの科学的に探究する方法を用いて,事象の中に何らかの関連性や規則性,因果関係等が見いだせるかなどについて考えること

生命に関する自然の事物・現象を主として多様性と共通性の視点で捉える。

地球や宇宙に関する自然の事物・現象を主として時間的・空間的な視点で捉える。

各領域における特徴的な見方 考え方

@Sing 14@Sing 15

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学習内容の主な改善点

第 1 学年 第 2 学年 第 3 学年

1 分野

エネルギー

△「2 力のつり合い(3 年から。「力の働き」で学習。)」

△「電熱線の発熱(小6から。「電気とそのエネルギー」で包括して学習。)」

△「放射線の性質と利用(3年から。一部を「真空放電」と関連付けて学習。)」

△「水圧・浮力(1 年から。「水中の物体に働く力」で学習。)」

△「圧力・大気圧(2 年へ)」△「水圧・浮力(3 年へ)」

△「2 力のつり合い (1 年へ)」△「放射線の性質と 利用(一部,2 年

へ)」

粒子 △「プラスチックの性質 (3 年へ)」

(7)

△「プラスチックの性質(1 年から。

「様々な物質とその利用」で学習。)」

2 分野

生命

●「生物の特徴と分類の仕方」を新設。

△「動物の仲間(2年から。「植物の体の共通点と相違点」の後の「動物の体の共通点と相違点」で学習。)」

※ 1 年で,「分類の仕方」と「生物の体の共通点と相違点」を学習。

△「葉・茎・根のつくりと働き(1 年から。「生物と細胞」の後で学習。)」

※ 2 年で,「植物と動物の体のつくりと働き」を学習。

△「進化(2 年から。「遺伝の規則性と遺伝子」の後の

「生物の種類の多様性と進化」で学習。)」

△「葉・茎・根のつくりと働き (2 年へ)」

△「動物の仲間(1 年へ)」△「進化(3 年へ)」

地球

△「地球規模のプレートの動き(3 年から。「地震の伝わり方と地球内部の働き」で学習。)」

△「自然の恵みと火山災害・地震災害(3 年から)」

△「圧力・大気圧(1 年から。 「気象要素」で学習。)」△「自然の恵みと気象災害 (3 年から)」

(7) △「自然の恵みと災害(各学年へ)」

内容の付加→● 学年間での移動→△各セルの上段:他学年からの移動または新設内容。各セルの下段:他学年への移動内容。

※新学社編集部の責任において部分抜粋した上で加工。

(1)改訂に当たっての基本的な考え方

 

理科で育成を目指す資質・能力を育む観点から、

自然の事物・現象に進んで関わり、見通しをもって

観察、実験などを行い、その結果を分析して解釈す

るなどの科学的に探究する学習を充実した。また、

理科を学ぶことの意義や有用性の実感及び理科への

関心を高める観点から、日常生活や社会との関連を

重視した。

①内容の示し方の改善と「理科の見方・考え方」

 

内容については、育成を目指す資質・能力のうち

「知識及び技能」をアとして、「思考力、判断力、表

現力等」をイとして示し、両者を相互に関連させな

がら育成できるよう改善を図った。なお、「学びに

向かう力、人間性等」については、第1分野、第2

分野の「目標」に示した。

 

また、従来、理科においては「科学的な見方や考

え方」の育成を目標として位置付け、資質・能力を

包括するものとして示してきたが、今回の改訂では、

「理科の見方・考え方」は理科で育成を目指す資質・

能力を育む過程で働く、物事を捉える視点や考え方

として示した。

②学習内容の改善

 

自然の事物・現象に対する概念や原理・法則の理

解、科学的に探究するために必要な観察、実験など

に関する技能などを身に付けていくためには、学習

内容の系統性を考慮するとともに、資質・能力の育

成を図る学習活動が効果的に行われるようにするこ

とが大切である。この観点から学習内容を見直し、

一部を他の学年等へ移行したり、整理統合したりし

て、学習内容の改善を図った。

③指導の重点等の提示

 

生徒の「主体的・対話的で深い学び」の実現を図

り、中学校の3年間を通じて理科で育成を目指す資

質・能力を育むため、アにはどのように知識及び技能

を身に付けるかを含めて示し、イには重視する学習の

過程も含めて示した。その際、各学年で主に重視する

探究の学習過程の例を次のように整理して示した。

・第1学年:自然の事物・現象に進んで関わり、その

中から問題を見いだす。

・第2学年:解決する方法を立案し、その結果を分析

して解釈する。

・第3学年:探究の過程を振り返る。

(2)「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

 

次のような視点から授業改善を図ることが考えられる。

・「主体的な学び」:【自然の事物・現象から問題を見

いだし、見通しをもって課題や仮説の設定や観察、実

験の計画を立案したりする学習となっているか】、【観

察、実験の結果を分析・解釈して仮説の妥当性を検討

したり、全体を振り返って改善策を考えたりしている

か】、【得られた知識や技能を基に、次の課題を発見し

たり、新たな視点で自然の事物・現象を把握したりし

ているか】など。

・「対話的な学び」:【課題の設定や検証計画の立案、

観察、実験の結果の処理、考察・推論する場面などで

は、あらかじめ個人で考え、その後、意見交換したり、

科学的な根拠に基づいて議論したりして、自分の考え

をより妥当なものにする学習となっているか】など。

・「深い学び」:【「理科の見方・考え方」を働かせなが

ら探究の過程を通して学ぶことにより、理科で育成

を目指す資質・能力を獲得するようになっているか】、

【様々な知識がつながって、より科学的な概念を形成

することに向かっているか】、【新たに獲得した資質・

能力に基づいた「理科の見方・考え方」を、次の学習

や日常生活などにおける問題発見・解決の場面で働か

せているか】など。

文部科学省初等中等教育局 教育課程課 教科調査官

野内 頼一

文部科学省初等中等教育局 教育課程課 教科調査官

藤枝 秀樹

中学校理科の改訂の要点

指導要領改訂の趣旨とポイント

@Sing 16@Sing 17

Page 10: 改訂のポイント総則の要点 学習指導要領改訂のポイ …改訂のポイント総則の要点学習指導要領改訂のポイントと 新しい学習指導要領→2020年〜2030年頃までの間,子供たちの学びを

( )

改訂のポイント

①教科の目標が、資質・能力の三つの柱に即し

た構成に。英語の目標が「外国語を使って何

ができるようになるか」を明確化する形に変

更された。また、内容が〔知識及び技能〕と〔思

考力、判断力、表現力等〕の二項目に分けら

れた。

②「話すこと」が「やり取り」「発表」の2領

域に分けられ、「聞くこと」「読むこと」「話

すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」「書

くこと」の5領域となった。

③中学校では、小学校で扱う600〜700語

程度の語に加えて、1600〜1800語程

度を新たに取り扱うとされた。

④言語材料について、仮定法のうち基本的なも

のなどが新たに取り扱われることとなった。

⑤中学校では、生徒が英語に触れる機会を充実

するとともに、授業を実際のコミュニケー

ションの場面とするため、「授業は英語で行

うことを基本とする」と明文化された。

外国語

中学校外国語科の目標と

育成を目指す資質・能力

外国語によるコミュニケーション

における見方・考え方とは

(1)知識及び技能

外国語の音声や語彙,表現,文法,言語の働きなどを理解するとともに,これらの知識を,聞くこと,読むこと,話すこと,書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる技能を身に付けるようにする。

(2)思考力,判断力,  表現力等コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,日常的な話題や社会的な話題について,外国語で簡単な情報や考えなどを理解したり,これらを活用して表現したり伝え合ったりすることができる力を養う。

(3)学びに向かう力,  人間性等外国語の背景にある文化に対する理解を深め,聞き手,読み手,話し手,書き手に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。

目標 

 上の表は新「学習指導要領」(文部科学省告示)をもとに新学社編集部の責任において作成。(1)〜等の記号は編集部にて加筆。

 「外国語で表現し伝え合うため、外国語やその背

景にある文化を、社会や世界、他者との関わりに着

目して捉え、コミュニケーションを行う目的や場面、

状況等に応じて、情報を整理しながら考えなどを形

成し、再構築すること」であると考えられる。

 

左記のものなどが新たに追加される。

※新学社編集部の責任において部分抜粋した上で加工。

外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動を通して,簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

学習内容の主な改善点

言語活動及び言語の働きに関する事項

文,文構造及び文法事項

日常的な話題・社会的な話題に関するコミュニケーションにおいて,生徒が自分の考えや気持ちを表す表現をより豊かにするため,新たに下記の内容などが追加された。・「書くこと」 簡単な手紙や電

子メールの形で自分の近況などを伝える活動。

・「話すこと[やり取り]」相手からの質問に対し,その場で適切に応答したり,関連する質問をしたりして,互いに会話を継続する活動。 など

英語の特徴やきまりに関する事項として,新たに下記の内容などが追加された。・「感嘆文のうち基本的なもの」 (How ...!, What a ...!)・「主語+動詞+間接目的語+ that [what など]で始まる節」 (I’ll show you that ... . など)・「主語+動詞+目的語+原形不定詞」 (Will you let me try?など)・「現在完了進行形」 (I have been -ing ... . など)・「仮定法のうち基本的なもの」 (If I were ... , I would ~., I wish ~.など)・「主語 + be動詞 + 形容詞 + that で始まる節」   (I’m sure that ... . など)   など

小学校外国語活動・外国語科

の概要

●時数について

 

中学年・外国語活動で週1コマ、年間35単位時間。

高学年・外国語科で週2コマ、年間70単位時間。

●領域について

 

中学年では「聞くこと」「話すこと[やり取り]」「話

すこと[発表]」の3領域。高学年から「読むこと」

「書くこと」が加わり、5領域に。

●文及び文構造について

 

小学校では、「単文」「肯定、否定の平叙文」「肯

定、否定の命令文」「疑問文のうち、be

動詞で始

まるものや助動詞(can do

など)で始まるもの、

疑問詞(w

ho 

what 

when 

where 

why 

how

で始まるもの」「代名詞のうち、I 

you 

he 

she

などの基本的なものを含むもの」「動名詞や過去

形のうち、活用頻度の高い基本的なものを含むも

の」を扱うなどとされている。

 

文構造としては、「主語+動詞」「[

主語+動詞+

補語]

のうち、主語+be

動詞+{

名詞

代名詞

容詞}

」「[

主語+動詞+目的語]

のうち、主語+

動詞+{

名詞

代名詞}

」を扱うなどとされている。

●語数について

 

600〜700語程度を扱うこととする。

小学校中学年・外国語活動 小学校高学年・外国語 中学校・外国語

聞くこと

ア ゆっくりはっきりと話された際に,自分のことや身の回りの物を表す簡単な語句を聞き取るようにする。

イ ゆっくりはっきりと話された際に,身近で簡単な事柄に関する基本的な表現の意味が分かるようにする。

ウ 文字の読み方が発音されるのを聞いた際に,どの文字であるかが分かるようにする。

ア ゆっくりはっきりと話されれば,自分のことや身近で簡単な事柄について,簡単な語句や基本的な表現を聞き取ることができるようにする。

イ ゆっくりはっきりと話されれば,日常生活に関する身近で簡単な事柄について,具体的な情報を聞き取ることができるようにする。

ウ ゆっくりはっきりと話されれば,日常生活に関する身近で簡単な事柄について,短い話の概要を捉えることができるようにする。

ア はっきりと話されれば,日常的な話題について,必要な情報を聞き取ることができるようにする。

イ はっきりと話されれば,日常的な話題について,話の概要を捉えることができるようにする。

ウ はっきりと話されれば,社会的な話題について,短い説明の要点を捉えることができるようにする。

読むこと

ア 活字体で書かれた文字を識別し,その読み方を発音することができるようにする。

イ 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現の意味が分かるようにする。

ア 日常的な話題について,簡単な語句や文で書かれたものから必要な情報を読み取ることができるようにする。

イ 日常的な話題について,簡単な語句や文で書かれた短い文章の概要を捉えることができるようにする。

ウ 社会的な話題について,簡単な語句や文で書かれた短い文章の要点を捉えることができるようにする。

[やり取り]

話すこと

ア 基本的な表現を用いて挨拶,感謝,簡単な指示をしたり,それらに応じたりするようにする。

イ 自分のことや身の回りの物について,動作を交えながら,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合うようにする。

ウ サポートを受けて,自分や相手のこと及び身の回りの物に関する事柄について,簡単な語句や基本的な表現を用いて質問をしたり質問に答えたりするようにする。

ア 基本的な表現を用いて指示,依頼をしたり,それらに応じたりすることができるようにする。

イ 日常生活に関する身近で簡単な事柄について,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合うことができるようにする。

ウ 自分や相手のこと及び身の回りの物に関する事柄について,簡単な語句や基本的な表現を用いてその場で質問をしたり質問に答えたりして,伝え合うことができるようにする。

ア 関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて即興で伝え合うことができるようにする。

イ 日常的な話題について,事実や自分の考え,気持ちなどを整理し,簡単な語句や文を用いて伝えたり,相手からの質問に答えたりすることができるようにする。

ウ 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことについて,考えたことや感じたこと,その理由などを,簡単な語句や文を用いて述べ合うことができるようにする。

[発表]

話すこと

ア 身の回りの物について,人前で実物などを見せながら,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すようにする。

イ 自分のことについて,人前で実物などを見せながら,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すようにする。

ウ 日常生活に関する身近で簡単な事柄について,人前で実物などを見せながら,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すようにする。

ア 日常生活に関する身近で簡単な事柄について,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。

イ 自分のことについて,伝えようとする内容を整理した上で,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。

ウ 身近で簡単な事柄について,伝えようとする内容を整理した上で,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。

ア 関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて即興で話すことができるようにする。

イ 日常的な話題について,事実や自分の考え,気持ちなどを整理し,簡単な語句や文を用いてまとまりのある内容を話すことができるようにする。

ウ 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことについて,考えたことや感じたこと,その理由などを,簡単な語句や文を用いて話すことができるようにする。

書くこと

ア 大文字,小文字を活字体で書くことができるようにする。また,語順を意識しながら音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写すことができるようにする。

イ 自分のことや身近で簡単な事柄について,例文を参考に,音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を用いて書くことができるようにする。

ア 関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて正確に書くことができるようにする。

イ 日常的な話題について,事実や自分の考え,気持ちなどを整理し,簡単な語句や文を用いてまとまりのある文章を書くことができるようにする。

ウ 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことについて,考えたことや感じたこと,その理由などを,簡単な語句や文を用いて書くことができるようにする。

本誌面については新「小学校学習指導要領」「中学校学習指導要領」の規定

などをもとに新学社編集部の責任において新たに作成したものである。

5 つの領域別の目標

( ) 上の表は新「学習指導要領」(文部科学省告示)をもとに新学社編集部において作成。

@Sing 18@Sing 19

Page 11: 改訂のポイント総則の要点 学習指導要領改訂のポイ …改訂のポイント総則の要点学習指導要領改訂のポイントと 新しい学習指導要領→2020年〜2030年頃までの間,子供たちの学びを

「指導計画の作成と内容の

取扱い」の主な改善点

音楽

( )新学社編集部の責任において,部分抜粋した上で加工。

→「適宜、口唱歌を用いること」という文

言が追加。

目標「音楽に対する感性を働かせ、音や音楽を、音楽を形

づくっている要素とその働きの視点で捉え、自己のイ

メージや感情、生活や社会、伝統や文化などと関連付

けること」であると考えられる。

(1)知識及び技能

曲想と音楽の構造や背景などとの関わり及び音楽の多様性について理解するとともに,創意工夫を生かした音楽表現をするために必要な技能を身に付けるようにする。

(2)思考力,判断力,   表現力等音楽表現を創意工夫することや,音楽のよさや美しさを味わって聴くことができるようにする。

(3)学びに向かう力,  人間性等音楽活動の楽しさを体験することを通して,音楽を愛好する心情を育むとともに,音楽に対する感性を豊かにし,音楽に親しんでいく態度を養い,豊かな情操を培う。

音楽的な見方・考え方とは

( )新「学習指導要領」(文部科学省告示)並びに「中学校学習指導要領解説 音楽編」(文部科学省公表)をもとに新学社編集部の責任において作成。(1)〜等の記号は編集部にて加筆。

表現及び鑑賞の幅広い活動を通して,音楽的な見方・考え方を働かせ,生活や社会の中の音や音楽,音楽文化と豊かに関わる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

 

今次改訂においては、小学校の外国語活動及び外

国語科で身に付けたことを受け、また高等学校への

接続を視野に入れながら、言語活動の面から次のよ

うな改善・充実を重視した。

○小学校で学んだ語彙や表現などの学習内容につ

いては、具体的な課題等を設定するなどして、

意味のある文脈の中でのコミュニケーションを

通して繰り返し触れ、必要な語彙や表現などを

活用することができるようにする。

○生徒にとって身近なコミュニケーションの場面

を設定した上で、学習した語彙や表現などを実

際に活用する活動を充実させるとともに、高等

学校への接続の観点から、授業は英語で行うこ

とを基本とする。

 

こうした趣旨の下、日常的な話題や社会的な話題

について簡単な情報や考えなどを理解したり表現し

たり伝え合ったりすることができる能力の育成が求

められる。そのためには、互いの考えや気持ちなど

を即興で伝え合うといった対話的な言語活動を重視

するとともに、単に自分の考えなどを聞き手に伝え

たり、出来事などについて書いたりするだけでなく、

聞いたり読んだりしたことを基に意見を述べ合った

り、感想、賛否やその理由を書いたりするなど、複

数の領域を統合した言語活動を豊富に経験すること

が重要になってくる。

 

ここで、文部科学省が実施した平成28年度「英語

教育実施状況調査」の結果から、中学校における指

導等の実態に目を向けてみたい。例えば、教員・生

徒の授業での英語使用状況については、教員の発話

のうち英語によるものが半分以上を占める割合が

60%前半となるなど、ここ数年で改善されてきてい

ることがわかる。そうした現状の中で「授業は英語

で行うことを基本とする」という規定が導入された

わけであるが、「生徒が英語に触れる機会を充実す

る」ことと「授業を実際のコミュニケーションの場

面とする」ことがそのねらいであることを考えれば、

単にどれだけの英語を使うかという量的な問題だけ

ではなく、教員・生徒がどのような英語の使い方を

するのかという質的な問題に注目する必要がある。

 

また、各学校における学習到達目標の設定は着実

に進んできている一方で、設定はしたものの指導や

評価にそれを十分に活用できていない状況がある。

今回、領域別の目標を「~することができるように

する」と定めたことにより、実際の指導と評価にお

いては、単元など内容や時間のまとまりごとにどの

目標と関連付けるか、その目標を達成するためにど

のような言語活動を行うか、といった指導計画の策

定が重要になる。

 

さらに、今次改訂で小学校高学年に外国語科が導

入されることに伴って小中の接続がより重要になる

ことを踏まえると、小中連携の取り組みを一層推進

していく必要がある。特に、単なる「情報交換」や

「交流」にとどまらず、「小中連携したカリキュラム

の作成」の重要性を認識し、そうした取り組みが各

中学校区で進められることを期待したい。

 

外国語科における「主体的・対話的で深い学び」

の視点からの授業改善を行っていく上では、「コミュ

ニケーションを行う目的や場面、状況など」を適切

に設定することが必要となる。「目的や場面、状況

など」に応じた言語の運用を考えることで、思考力、

判断力、表現力等が育成される。外国語によるコ

ミュニケーションを通して、自分の思いや考えが深

まったり更新されたりすることを生徒が認識し、自

信を持つことができるようにするとともに、生涯に

わたって能動的に学び続けるような外国語教育を展

開していきたいと考えている。

文部科学省初等中等教育局視学官

平木 裕

中学校外国語科の改訂の要点

指導要領改訂の趣旨とポイント

→「知覚したことと感受したこととの関わ

りを基に音楽の特徴を捉えたり、思考、

判断の過程や結果を表したり、それらに

ついて他者と共有、共感したりする際に

は」と場面が具体的に示された。

改訂のポイント

①教科・学年の目標が、資質・能力の三つの柱に即

した構成に。また各学年の内容についても、三つ

の柱に即して整理され、より具体的に示された。

②「主体的・対話的で深い学び」の実現のため、

音楽の文化的・歴史的背景や社会との関わり

を考えたり、主体的・協働的に学習に取り組

んだりすることができるよう学習を充実させ

ることが示された。

学習内容の主な改善点

①「A表現」「B鑑賞」において、「知識及び技能」

と「思考力、判断力、表現力等」に係る内容

が一体的に示されていたものが、「A表現」で

は「知識」「技能」「思考力、判断力、表現力等」

に、「B鑑賞」では「知識」「思考力、判断力、

表現力等」に分けて示され、指導すべき内容

が一層明確になった。

②「知識」に関して、歌唱、器楽、創作、鑑賞

の領域や分野ごとに、指導内容が具体的に示

された。

③「A表現」の「技能」に関して、歌唱、器楽、

創作の分野ごとに指導内容が具体的に示さ

れ、音楽科における技能は「思考力、判断力、

表現力等」の育成と関わらせて習得できるよ

うにすべきであることが明確化された。

中学校音楽科の目標と

育成を目指す資質・能力

→「音楽科の特質に応じた言語活動を適切

に位置付けられるよう指導を工夫する

こと」という文言が追加。

音や音楽及び言葉による

 

コミュニケーション

体を動かす活動

→「(著作者の創造性を尊重する態度の形

成が)音楽文化の継承、発展、創造を

支えていることへの理解につながるよ

う配慮すること」という文言が追加。

知的財産権

我が国の伝統的な歌唱や和楽器の指導

→「他者と共に一つの音楽表現をつくる過

程を大切にするとともに、生徒一人一

人が、担当する声部の役割と全体の響

きについて考え、主体的に創意工夫で

きるよう指導を工夫すること」という

項目が新設。「内容」内の合唱・合奏に

関する技能の項目には「聴きながら他

者と合わせて」の文言が追加されてい

ることにも注目したい。

合わせて歌ったり演奏したりする

 

表現形態

@Sing 20@Sing 21

Page 12: 改訂のポイント総則の要点 学習指導要領改訂のポイ …改訂のポイント総則の要点学習指導要領改訂のポイントと 新しい学習指導要領→2020年〜2030年頃までの間,子供たちの学びを

目標 体育や保健の見方・考え方を働かせ,課題を発見し,合理的な解決に向けた学習過程を通して,   心と体を一体として捉え,生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを     実現するための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

保健体育

(1)知識及び技能

(1)−①運動の特性に応じた技能等及び個人生活における健康・安全について理解する。

(1)−②基本的な技能を身に付ける。

(2)思考力,判断力,  表現力等

(2)−①運動や健康について自他の課題を発見する。

(2)−②合理的な解決に向けて思考し判断する力を養う。

(2)−③他者に伝える力を養う。

(3)学びに向かう力,  人間性等

(3)−①生涯にわたって運動に親しむ。(3)−②健康の保持増進と体力の向上を目指す。

(3)−③明るく豊かな生活を営む態度を養う。

H体育理論

運動やスポーツの多様性(第1学年)

 

・運動やスポーツへの関わり方に「知

  

ること」を追加。

 

・生涯スポーツに関する内容が新設。

  

これに伴い、「運動やスポーツの学

  

び方」は第2学年に移動。

第3学年で取り扱っていた「健

康な生活と疾病の予防」を各学

年に分けて取り扱うよう変更さ

れた。また、第2学年で取り扱っ

ていた「健康と環境」が第3学

年へ移動された。

○第1学年

 

・心身の機能の発達と心の健康

 

・健康の成り立ち、疾病の発生要因

 

・運動、食事、休養及び睡眠の調和の

  

とれた生活

○第2学年

 

・傷害の防止

 

・生活習慣病と健康

 

・喫煙、飲酒、薬物乱用と健康

○第3学年

 

・健康と環境

 

・感染症の予防

 

・健康を守る社会の取り組み、保健・

  

医療機関の利用、医薬品の利用

表は新「学習指導要領」(文部科学省告示)をもとに新学社編集部の責任において作成。( )

新学社編集部の責任において部分抜粋した上で加工。 ( )

技能:応急手当・心肺蘇生法 技能:ストレスへの対処

第3学年より移動

第2学年より移動

中学校美術科における

育成を目指す資質・能力の整理

美術

目標 表現及び鑑賞の幅広い活動を通して,造形的な見方・考え方を働かせ,   生活や社会の中の美術や美術文化と豊かに関わる資質・能力を次のと   おり育成することを目指す。

( )表は「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(中央教育審議会第 197 号)の「別添資料 2 / 3 別添 9-1」をもとに新学社編集部の責任において作成。(1)〜,①〜等の記号は新学社編集部にて加筆。

( )表は新「学習指導要領」(文部科学省告示)をもとに新学社編集部の責任において作成。

感性や想像力を働かせ、対象や事象を、造形的な視点

で捉え、自分としての意味や価値をつくりだすこと。

(1)知識及び  技能

(1)対象や事象を捉える造形的な視点について理解するとともに,表現方法を創意工夫し,創造的に表すことができるようにする。

(2)思考力,判断力,  表現力等

(2)造形的なよさや美しさ,表現の意図と工夫,美術の働きなどについて考え,主題を生み出し豊かに発想し構想を練ったり,美術や美術文化に対する見方や感じ方を深めたりすることができるようにする。

(3)学びに向かう力,  人間性等

(3)美術の創造活動の喜びを味わい,美術を愛好する心情を育み,感性を豊かにし,心豊かな生活を創造していく態度を養い,豊かな情操を培う。

(1)−①対象や事象を捉える造形的な視点について実感的に理解を深めること 

             など

(1)−②感性や造形感覚を働かせて,材料や用具を生かし,表現方法を工夫して,創造的に表すこと 

など

(1)知識及び技能

(2)−①感性や想像力を働かせて,造形的な視点で対象や事象を捉え,造形的なよさや美しさ,意図と表現の工夫などについて考え,豊かに発想し,創造的な表現の構想を練ること 

など

(2)−②感性や想像力を働かせて,造形的な視点で対象や事象を捉え,造形的なよさや美しさ,意図と表現の工夫などについて考え,美術や美術文化などについて自分の見方や感じ方を深め,味わうこと 

など

(2)思考力,判断力,表現力等

(3)−①様々な対象や事象からよさや美しさなどの価値や心情などを感じ取る  感性

(3)−②美術の創造活動の喜び(3)−③美術の創造活動に主体的に取り  組む態度

(3)−④美術を愛好する心情(3)−⑤形や色彩などによるコミュニ  ケーションを通して,生活や社会と主体 的に関わる態度

(3)−⑥美術文化の継承と創造への関心(3)−⑦美しいものや優れたものに接し て感動する,情感豊かな心としての情操                など

(3)学びに向かう力,人間性等

改訂のポイント

①各学年の「目標」「内容」のあとに「内容の

取扱い」が新設された。

②教科・各学年の目標が、資質・能力の三つの

柱に即した構成になった。

③内容の「A表現」「B鑑賞」「〔共通事項〕」と

いう構成はこれまでと同じであるが、内容も、

目標同様、三つの柱に即した構成になった。

 「A表現」は、「(1)表現の活動を通して、次

のとおり発想や構想に関する資質・能力を育

成する」「(2)表現の活動を通して、次のと

おり技能に関する資質・能力を育成する」の

二つにまとめられた。「B鑑賞」は、アの「美

術作品など」と、イの「美術の働きや美術文化」

の二つに関する事項に分けて示された。

改訂のポイント

①教科・各分野の目標が、資質・能力の三つの

柱に即した構成に。また、各分野の内容も三

つの柱に沿って示されている。

②体育分野では、「武道」について例示の9種

目などを通して、我が国固有の伝統と文化に

より一層触れることが明記された。「体育理

論」の運動やスポーツへの多様な関わり方と

して「知ること」が追加された。

③現行では第3学年で取り扱っていた「健康な

生活と疾病の予防」を第1〜3学年に分けて

取り扱うよう変更された。第2学年で取り

扱っていた「健康と環境」が第3学年に移動

された。

学習内容の主な改善点

①体育分野…「体育理論」第1学年の「運動や

スポーツの学び方」は第2学年に移動された。

②保健分野…取り扱う学年が大きく変更され

る。「ストレスへの対処」「応急手当・心肺蘇

生法」が技能として新たに示された。

中学校保健体育科の目標と

育成を目指す資質・能力

中学校美術科における

造形的な見方・考え方とは

体育分野

保健分野

中学校美術科の目標と

育成を目指す資質・能力

学習内容の主な変更点

@Sing 22@Sing 23

Page 13: 改訂のポイント総則の要点 学習指導要領改訂のポイ …改訂のポイント総則の要点学習指導要領改訂のポイントと 新しい学習指導要領→2020年〜2030年頃までの間,子供たちの学びを

A 主として自分自身に  関すること

B 主として人との  関わりに関すること

C 主として集団や  社会との関わりに  関すること

D 主として生命や自然,  崇高なものとの  関わりに関すること

[自主,自律,自由と責任][節度,節制][向上心,個性の伸長][希望と勇気,克己と強い意志][真理の探究,創造]

[思いやり,感謝][礼儀][友情,信頼][相互理解,寛容]

[遵法精神,公徳心][公正,公平,社会正義][社会参画,公共の精神][勤労][家族愛,家庭生活の充実][よりよい学校生活,集団生活の充実]

[郷土の伝統と文化の尊重,郷土を愛する態度]

[我が国の伝統と文化の尊重,国を愛する態度]

[国際理解,国際貢献]

[生命の尊さ][自然愛護][感動,畏敬の念][よりよく生きる喜び]

家庭分野の学習内容の

主な改善点

技術・家庭科

目標 生活の営みに係る見方・考え方や技術の見方・考え方を働か   せ,生活や技術に関する実践的・体験的な活動を通して,よ   りよい生活の実現や持続可能な社会の構築に向けて,生活   を工夫し創造する資質・能力を次のとおり育成することを目   指す。

●「A材料と加工の技術」「B生物育成の技術」「Cエ

ネルギー変換の技術」「D情報の技術」の構成に。

BとCの順序が現行から変更。

● 第1学年の最初に、A〜Dの技術の内容について

触れ、第3学年でこれまでの学習を踏まえた統合

的な問題についても扱う。

生活や社会における事象を、技術との関わりの

視点で捉え、社会からの要求、安全性、環境負

荷や経済性等に着目して技術を最適化すること

技術

家族や家庭、衣食住、消費や環境などに係る生

活事象を、協力・協働、健康・快適・安全、生

活文化の継承・創造、持続可能な社会の構築等の視点

で捉え、よりよい生活を営むために工夫すること

家庭

(1)知識及び  技能

(1) 生活と技術についての基礎的な理解を図るとともに,それらに係る技能を身に付けるようにする。

(2)思考力,判断力,  表現力等

(2)生活や社会の中から問題を見いだして課題を設定し,解決策を構想し,実践を評価・改善し,表現するなど,課題を解決する力を養う。

(3)学びに向かう力,  人間性等

(3)よりよい生活の実現や持続可能な社会の構築に向けて,生活を工夫し創造しようとする実践的な態度を養う。

表は新「学習指導要領」(文部科学省告示)をもとに新学社編集部の責任において作成。( )

新学社編集部の責任において部分抜粋した上で加工。( )

新学社編集部の責任において部分抜粋した上で加工。( )

改訂のポイント

①内容項目のまとまりが、生徒にとっての対象

の広がりに即して

A 

主として自分自身に関すること

B 

主として人との関わりに関すること

C 

主として集団や社会との関わりに関する

 

こと

D 

主として生命や自然、崇高なものとの関

 

わりに関すること

の順に変更になった。

②内容項目の整理統合が行われ、全22の内容項

目にそれぞれ内容を端的に示すキーワードが

付された。

学習内容の主な改善点

①「第3 

指導計画の作成と内容の取扱い」に

おいて、情報モラルに関する指導の充実が求

められ、科学技術の発展と生命倫理との関係

や社会の持続可能な発展などの現代的な課題

の取扱いについて追加された。

道徳

特別の教科道徳の目標と

育成を目指す資質・能力

内容項目(キーワード)の整理

図は「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(中央教育審議会第 197 号)の「別添 16-2」をもとに,新学社編集部において作成。

目標 

( )

第 1 章総則の第 1 の 2 の(2)に示す道徳教育の目標に基づき,よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため,道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事を広い視野から多面的・多角的に考え,人間としての生き方についての考えを深める学習を通して,道徳的な判断力,心情,実践意欲と態度を育てる。

表は新「学習指導要領」(文部科学省告示)をもとに新学社編集部において作成。( )

中学校における道徳教育と資質・能力(イメージ)道徳科の学習活動を支える要素

道徳科

各教科等

道徳性を養うために行う道徳科における学習道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事を広い視野から多面的・多角的に考え,人間としての生き方についての考えを深める学習

道徳的価値の理解

を基に 人間としての生き方についての考え(思考)

自己を見つめる

多面的・多角的に考える

学習を通して

道徳教育・道徳科で育てることを目指す資質・能力

道徳性

道徳的な判断力,心情,

実践意欲と態度

基盤となる

各教科等で育成する資質・能力「学びに向かう力,人間性等」各教科等の目標に基づく固有の指導

自立した人間として他者と共によりよく生きる実践(行為・表現など)

中学校技術・家庭科の目標と

育成を目指す資質・能力

中学校技術・家庭科における

見方・考え方とは

材料と加工の技術

(1)生活や社会を支える材料と加工の技術

(2)材料と加工の技術による問題解決

(3)社会の発展と材料と加工の技術

家族・家庭生活

(1)自分の成長と家族・家庭生活

(2)幼児の生活と家族

(3)家族・家庭や地域との関わり

(4)家族・家庭生活についての課題と実践

生物育成の技術

(1)生活や社会を支える生物育成の技術

(2)生物育成の技術による問題解決

(3)社会の発展と生物育成の技術

エネルギー変換の技術

(1)生活や社会を支えるエネルギー変換の技術

(2)エネルギー変換の技術による問題解決

(3)社会の発展とエネルギー変換の技術

情報の技術

(1)生活や社会を支える情報の技術

(2)情報の技術による問題解決

(3)ネットワークを利用した双方向性のある

  

コンテンツのプログラミングによる問題解決

(4)社会の発展と情報の技術 

製作に必要な図では,主に等角図,第三角法による図法を扱う。

1年の最初にガイダンスとして履修

消費生活・環境

(1)金銭の管理と購入

(2)消費者の権利と責任

(3)消費生活・環境についての課題と実践

「金銭の管理」が追加

作物の栽培,動物の飼育,水産生物の栽培のいずれも扱う。

「高齢者」との関わりや交流が追加

新設

●「A家族・家庭と子どもの成長」「B食生活と自立」「C

衣生活・住生活と自立」「D身近な消費生活と環境」

の四項目から、「A家族・家庭生活」「B衣食住の

生活」「C消費生活・環境」の三項目に変更。

●「C消費生活・環境」にも「生活の課題と実践」が

追加され、A〜Cの三項目から一つ以上選択に。

「生活の営みに係る見方・考え方」の

うち、「協力・協働」を主として考察

衣食住の生活

(1)食事の役割と中学生の栄養の特徴

(2)中学生に必要な栄養を満たす食事

(3)日常食の調理と地域の食文化

(4)衣服の選択と手入れ

(5)生活を豊かにするための布を用いた製作

(6)住居の機能と安全な住まい方

(7)衣食住の生活についての課題と実践

「和食の調理」が追加

「布を用いた製作」が「住居」の前に

「生活の営みに係る見方・考え方」の

うち、「健康・快適・安全」「生活文

化の継承」を主として考察

「生活の営みに係る見方・考え方」の

うち、「持続可能な社会の構築」を

主として考察

    

はA〜Cのうち、

三年間で一つ以上を選択して履修

A

A

B

B

C

C

D 技術分野の学習内容の主な改善点

「生活の課題と実践」が追加

@Sing 24@Sing 25

Page 14: 改訂のポイント総則の要点 学習指導要領改訂のポイ …改訂のポイント総則の要点学習指導要領改訂のポイントと 新しい学習指導要領→2020年〜2030年頃までの間,子供たちの学びを

新学習指導要領と

入試の変化

(平成29年春入試概況)

改訂のポイント

●「人間関係形成」「社会参画」「自己実

現」の三つの視点で、育成を目指す

 

資質・能力を整理。

●キャリア教育や主権者教育、安全教

育などの充実を図る。

本誌面については,新「学習指導要領」(文部科学省告示)の規定や答申の内容をもとに新学社編集部の責任において新たに作成したものである。

特別活動(1)知識及び技能

●多様な他者と協働する様々な集団活動の意義の理解。

●様々な集団活動を実践する上で必要となることの理解や技能。

(2)思考力,判断力,  表現力等

●所属する様々な集団や自己の生活上の課題を見いだし,その解決のために話し合い,合意形成を図ったり,意思決定したり,人間関係をよりよく構築したりすることができる。

(3)学びに向かう力,  人間性等

●自主的・実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かし,人間関係をよりよく構築しようとしたり,集団生活や社会をよりよく形成しようとしたり,人間としての生き方についての考えを深め自己の実現を図ろうとしたりする態度。

( )

目標と育成を目指す資質・能力

目標  集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ,様々な集団活動に自主的,実践的に取り組み,互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決することを通して,次のとおり資質・能力を育成することを目指す。

◆「特別活動」における見方・考え方(集団や社会の形成者としての見方・考え方):各教科等における「見方・考え方」を総合的に活用して,集団や社会における問題を捉え,よりよい人間関係の形成,よりよい集団生活の構築や社会への参画及び自己の実現に関連付けること。

◆各活動・学校行事の目標:<学級活動> 学級や学校での生活をよりよくするための課題を見いだし,解決するため

に話し合い,合意形成し,役割を分担して協力して実践したり,学級での話合いを生かして自己の課題の解決及び将来の生き方を描くために意思決定して実践したりすることに,自主的,実践的に取り組むことを通して,目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。

<生徒会活動> 異年齢の生徒同士で協力し,学校生活の充実と向上を図るための諸問題の解決に向けて,計画を立て役割を分担し,協力して運営することに自主的,実践的に取り組むことを通して,目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。

<学校行事> 全校又は学年の生徒で協力し,よりよい学校生活を築くための体験的な活動を通して,集団への所属感や連帯感を深め,公共の精神を養いながら,目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。

 

近年の高校入試では、「思考力・判断力・表現力」

を問う問題の出題が目立っている。[複数の資料・

グラフ・図表などを読み取って答えさせる問題][実

生活に関連した問題]などは既に定番化しているが、

それ以外にも様々なパターンのいわゆる「活用問題」

が出題されている。また、記述量の増加も顕著であ

り、国語・英語に関してはもちろんであるが、それ

以外の教科でも、例えば数学では、解き方・求め方

を書かせる問題などが出題されている。

 

このような入試傾向の変化は、新学習指導要領の

方向性とも合致しており、新学習指導要領実施に向

けて、その変化はさらに加速していくと予想される。

また、現在進められている高大接続改革で検討中の

新しい大学入試においても、「思考力・判断力・表

現力」を問う問題、記述式の問題が重視されており、

そちらの影響も受けそうである。

 

ここでは、新学習指導要領の内容も踏まえて、平

成29年春に実施された最新入試の傾向について、教

科ごとに紹介する。

●出題傾向

 

指定字数の多い記述問題や、複数の資

料を読み取って書く課題作文など、応用

力を試す出題が増えた。

 

小説はスポーツをテーマにした作品が、説明文は

自然科学系の文章が多く出題された(例:蓮見恭子

「襷を、君に。」が5県、稲垣栄洋「植物はなぜ動

かないのか」が4県)。新学習指導要領で示される、

読書の意義と効用について理解し、普段から読書す

ることを心がけたい。

 

小説で主人公の心情を理解する問題や、説明文で

筆者の意見をとらえる問題などは例年通り出題され

ている。心情を表す語句の量を増やすなど語彙指導

の充実が、新学習指導要領で求められている。

●思考力・判断力・表現力を問う活用問題

 

文章とグラフなど、複数の資料を読み取って書く

課題作文の出題や、内容を読み取った上で、理由や

根拠を明らかにして意見文を書く出題が見られた。

新学習指導要領でも複数の情報を整理しながら内容

を読み取り、文章と図表を結び付けて考えることや、

根拠をもつこと、相手の立場を意識することが重視

されている。そのため、今後もこのような問題が出

題されることが予想される。

●出題傾向

【形式】 

全国的に、特に地理・公民を中

心に、資料読み取り問題が増加し、単純

な知識を問う問題が減少している。あわせて、解答

を文章で記述させる問題を出す県が増え、平成29年

の春の入試では46都道府県で出題された。県によっ

ては100字程度の記述を求める問題も見られ、新

学習指導要領で言語活動の一層の重視が掲げられて

いることから、文章記述問題を重視する傾向は今後

も続くと考えられる。

【内容】 

時事問題として、選挙権年齢の引き下げに

関する問題、新学習指導要領でも重視される「領域

をめぐる問題」に関して、日本の端に位置する島や

領海、排他的経済水域に関する問題が、複数の県で

出題された。

 

また、全国の半数以上の県で雨温図、地形図を読

み取らせる問題が、9割近くの県で歴史などの並べ

替え問題が出題されていることから、入試では、基

本的な知識はもとより、資料を読み取る能力や知識

を整理する能力が重視されていると言える。

●思考力・判断力・表現力を問う活用問題

 

例えば静岡県入試では、男女別の労働人口、勤続

年数、賃金の3つの資料から、女性の労働に関して

改善された点、課題点を70字程度で記述させる問題

が出された。

国語

社会

※「知識や資料を活用して解く問題」は全県で出題されており,グラフの県数は,そのうち 3 つ以上の資料を活用した問題等を出題している県を集計したものです。

0

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平成27年

平成28年

平成29年

平成27年

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平成29年

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平成28年

平成29年

平成27年

平成28年

平成29年

平成27年

平成28年

平成29年

47

41 41 43 18 24 27 27 27 33 43 44 44 34 35 36

(県)

(県) (県) (県)47(県)

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平成27年

平成28年

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平成27年

平成28年

平成29年

平成27年

平成28年

平成29年

平成27年

平成28年

平成29年

平成27年

平成28年

平成29年

47

41 41 43 18 24 27 27 27 33 43 44 44 34 35 36

(県)

(県) (県) (県)47(県)

学習指導要領で示す目標

探究的な見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して,よりよく課題を解決し,自己の生き方を考えていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(1)知識及び技能

●課題について横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して獲得する知識(及び概念)

●課題について横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して獲得する技能

●探究的な学習のよさの理解

(2)思考力,判断力,  表現力等

●探究的な学習を通して身に付ける課題を見いだし解決する力・課題設定・情報収集・整理・分析・まとめ・表現   など

(3)学びに向かう力,  人間性等

●主体的な探究活動の経験を自己の成長と結び付け,次の課題へ積極的に取り組もうとする態度を育てる。

●協同的(協働的)な探究活動の経験を社会の形成者としての自覚へとつなげ,積極的に社会参画しようとする態度を育てる。 など

◆「総合的な学習の時間」における見方・考え方(探究的な見方・考え方):各教科等における見方・考え方を総合的に活用して,広範な事象を多様な角度から俯

瞰かん

して捉え,実社会や実生活の文脈や自己の生き方と関連付けて問い続けること。

◆資質・能力の育成:「課題の設定」→「情報の収集」→「整理・分析」→「まとめ・表現」といった探究のプロセスを通して育成する。

◆各学校が設定する目標:学習指導要領が示す目標を踏まえて,各学校が目標を設定し,その目標を踏まえた内容を定める。

目標と育成を目指す資質・能力

改訂のポイント

●各学校が教科横断的な目標を定めて、

学校全体で育てたい資質・能力に対

応したカリキュラム・マネジメント

を行うようにする。

総合的な学習の時間

活用問題の出題県数

活用問題の出題県数

@Sing 26@Sing 27