能登泥岩の二・三の工学的性質Kobe University Repository : Kernel タイトル Title...

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Kobe University Repository : Kernel タイトル Title 能登泥岩の二・三の工学的性質(Some Engineering Properties of Noto Mudstone) 著者 Author(s) 尾崎, 叡司 / 近藤, 掲載誌・巻号・ページ Citation 神戸大学農学部研究報告,14(1):135-141 刊行日 Issue date 1980 資源タイプ Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 版区分 Resource Version publisher 権利 Rights DOI JaLCDOI 10.24546/81006442 URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81006442 PDF issue: 2020-07-09

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Kobe University Repository : Kernel

タイトルTit le

能登泥岩の二・三の工学的性質(Some Engineering Propert ies of NotoMudstone)

著者Author(s) 尾崎, 叡司 / 近藤, 武

掲載誌・巻号・ページCitat ion 神戸大学農学部研究報告,14(1):135-141

刊行日Issue date 1980

資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文

版区分Resource Version publisher

権利Rights

DOI

JaLCDOI 10.24546/81006442

URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81006442

PDF issue: 2020-07-09

神大震研報 (Sci.Rept. Fac. Agr. Kobe Univ.) 14: 135-141, 1980

能登泥岩の二・三の工学的性質

尾崎叡司*・近藤 武林

(昭和54年8月10日受理)

SOME ENGINEERING PROPERTIES OF NOTO MUDSTONE

Eiji OZAKI and Takeshi KONDO

Abstract

This paper presents a part of results obtained from experimental investigation which have been made

to elucidate the characteristics of weathering ofmudstones and its the engineering properties such as

shrinkage, swelling, freezing, thawing, compressive strength and propagation of elastic waves. Samples

used in all tests are of neogen tertiary mudstones collected from Noto peninsula (Suzu city in Ishikawa

prefecture) .

The results obtained in these tests are summarised as follows.

1) Without drying process, the slaking will not occur as the moisture contents of mudstone increase

in absorbing process. lt seems that the binding and cementing materials of the Noto mudstone are firm

and stable in water.

2) The slaking of the Noto mudstones depends much upon the freezing and thawing of pore water.

The volumetric strains of this material from freezing are relatively large compared the strains with swe-

lling.

3) The shear test results indicate that the internal friction angle varies from 190 to 260, and the

cohesion varies from 0.07 to 0.86 kgfcm2 • Also, dynamic Young's modulus and Poisson's ratio are

m回 suredby ultrasonic wave method.

1.緒言

第三紀層(中主「地,鮮新世〉に粘土あるいはシルトな

どヵ・唯積して,かなりの上載荷重を受けて悶結してでき

た岩状の固結物を泥岩と呼んでいる。この泥岩は一般に

准積環境によりその性質はかなりの差違がみられるが,

一軸圧縮強度で数kg/cm旬、ら 100kg/cm2程度を示し,ま

た含水比がかなり高く回給度が不充分であるため土砂と

も岩ともつかない中途半端な性質をもっている。泥岩は

ときには土木関係者‘によって土丹と呼ばれることもあ

る。泥岩は堆積後の上載荷重による圧密と粒子聞の間隙

に沈積したセメンテーション物質により図給している

が,このセメ γテーション物質が不安定であるため,他

の岩石と比較して団結度が低く,風化履歴をうけて非常

に鋭敏に反応して土砂化しているものも多く,湿度・温

度や応力条件などの外的作用によってその性質が大きい

変化を受けやすい特徴をもっている。

*土地利用工学研究室

判三重大学農学部農業土木科

我国においても第三紀層地域に広く泥岩の分布がみら

れ, 日本海側ではグリーンタフと呼ばれる火山噴出物の

堆積してできた凝灰質泥岩が多い。従来土木構造物とく

にダムなどの大規模構造物は,地質,地盤の良好なとこ

ろを選んで建設されてきたため,泥岩地帯でダム建設が

行われることは基礎地盤の点からも,また堤体材料の点

からもほとんどない状況で、あった。しかしながら,現在

ではダム建設に適する良好な条件のダムサイトも次第に

見出しがたくなり,各地での水需要の増大により泥岩地

帯においてもダム建設を行わなければならない状況にな

っている。また堤体材料についても良好な材料の欠乏に

より現地で得られる貧材料を使用する必要にせまられて

おり,泥岩もまた築堤材料として使用されるようになっ

Tこ。

先述したように泥岩は外的作用により風化を受けやす

いことが建設材料として最大の問題点であるが,さらに

堆積環境・堆積過程や堆積物の粒度などにより,また産

出場所によりそれぞれ大きく異った性質を示すため,泥

岩の工学的性質に関する研究はケース・パイ・ケースで

136 尾崎似司 ・近藤 it

行う必要がある。従ってここでは能主主半島の先端部で採

取された泥和材料を用いて乾燥 ・吸水による風化過程を

中心にニ ・三の工学的性質について実験的検討を行った

結果を報告する。

2. 実験に用いた泥岩材料

本実験に用いた泥岩材料は第三紀グリーンタフ地滅に

属する能笠半お(石川県珠洲市川坂川上流〉で採取され

たもので, プロック状にサンプリングされたものであ

る。

この泥岩材料の物:ml的性質は(図 1,表 1)に示す通

りである。

色は策褐色であって仮比重が小さく 0.9iiIi後を示し,

乾燥した泥岩塊は水に浮ぶ。これは泥ねが多量の珪藻を

含む結果ではないかと考えられる。泥岩粉砕物の粒)交分

析結果によれば,ほぼ粘土分30%,シノレト分40%,砂分

30%の組成をもってお り,三角座標分類によれば粘土に

属することになる。ア ッターベノレグ限界試験により求め

られた現性指数 IpはIp=16.55であって, 当'1性図より

MHあるいはOHの範囲に属する。この結果.より破砕き

れ細粒化した泥岩は高圧縮性であり,また凍結作用の可

能性が大きいことが予:t!.¥され,ij!投材料としては不安定

で締図め特性も悪〈不適な材料に入ることが予想され

るO

1∞ ~90 ~ 80

70 ω ~111tíjj日ア

凶,, 50

泊 40

漏30型車 20

5至10。。∞1 0.01 0 】1.0

粒径 (mm)

図l 粒度分析結集

表 1ー 1 粒度分析結朱

10.0

¥¥¥I rtÞC剥シこ訪問揚|統一分類17~競に

泥岩間I30 40 I 30 I MHI粘土ローム

|比重 |燃鰍炉支唾竺

脳同戸f94.90178.53卜6.55 I 0.89

3. 実験方法及び結果

a.風化実験及び結果

泥岩は乾燥 ・吸水を繰返すことによって急激に劣化し

破砕して土砂化する。このような軟化現象は水分,応力

の変化,凍結融解作用などの外的物理的要因と泥岩を構

成する粘土鉱物の特性,すなわちイオン吸着性の高い表

面活性な物質の存在が考えられ, これら粘土鉱物による

内的化学的要因との二つによるものと考えられる。また

構成土粒子表聞の吸着水と粒子間の間際水に働く毛管力

の作用によって生ずるサクションも大きく影響する。

風化実験は泥岩の風化の進行過程の特性を匁lるため実

際の風化過程を極く単純にシミュレートして人工的に設

定された条件,すなわち24時間, 110・C炉乾燥し統く 24

時間浸水するのをーサイクノレとして, このサイクノレを繰

返して泥むの崩峻してL、く状態を調べた。そして風化の

一つの指僚として崩唆した部分の4.76咽プノレイ通過郎分

の乾燥重量と全試料の乾燥重量との比をとって風化成と

した。これを式で示すと次式で与えられる心。

風化度=王・76型通過:ずるH岩波uこ部全ρ質検重盆全試料の乾燥重量

x 100 C%) (1)

(1)式で表わされる風化J立は人工的な風化条件が与えら

れる以前とそれ以後との相対的な破砕&合を表わすもの

で,通常風化作用に含まれる物理的要因に基づく崩撲に

着目している。また破砕された粒子径を4.76聞でも って

区分したのは,駒子径が4.76皿あるいはそれ以下の細粒

になると以俊は急激に微粒となり,全体としてのUUf材

料の工学的性質に大きい影轡を与えるからである。

風化実験の結果はかなりばらつきがみられ,風化が急

速に進行するものとかなり安定した性質を示すものの三

100

90

80

さ ω

50

塑40?

Ii! 30

20

10

0 ノイ

/ ど/

f /

ピv

ヒ士三トベγーペ

/ No.1

No.2 ..--l .........

/"

主主←o 2 4 5 6 8 9 10 11

風化サィヲル

同2 風化 試験結果

1抱王E泥岩のニ ・三の工学的性質 137

種類に大別できるο 風化の進行状況の一例を図2に示

す。この図からわかるように,急速な風化を示すものは

5サイクノレ自で風化度が 78.34%に達しており.11サイ

クノレ自ではほぼ風化度は 100%1こ達する。ー方風化の進

行の遅いものは11サイクルを経ても風化度が1%未満で

あって両者の聞の差異は非常に大きい。風化の進行が速

い泥岩は乾燥 ・浸水の風化サイクノレの初期からごく小さ

い亀裂が平行に多数入り平板状に分裂する。この後風化

サイクノレが進行するにつれて板状に破砕した泥岩がさら

に小さく割れて小粒化する。

b.吸水量試験

試料泥岩の吸水量測定結果を図 3に示す。政水量はコ

ンクリート骨材に用いられている定義に従って次式で計

算された。

吸水盈=一笥 F4の吸水後の重量)ー (試料の乾燥重量〉試料の乾燥重量

x 100 (%) (2)

本実験においては24時間あるいは96時間自然乾燥して

後24時間浸水するサイクノレを繰返すことにより 1サイ

クノレの問に泥岩が吸水して含水比が変化する状怨を調べ

ているむ実験に用いた多数の試料はそれぞれ初めの含水

比は呉るカ1乾燥~浸水の 1サイクルの問の合水比の変

化はほぼ等しく,乾燥~浸水のサイクノレ数の増加にと4

なって非常にゆるやかな含水比の増加がみられる。しか

し乾燥~浸水 1サイクノレ当りの吸水量すなわち含水比の

変化はほとんどみられな

い。乾燥時間を24時間から 70

96時間に延長した場合でも65

浸水によ って一定の合水比

に達するに要する時間はお。。

よそ一定で.浸水24時間で 55

ほぽ飽和点に達する。 50

乾燥~浸水サイクノレ数が =良 45

増加するとスレーキングに40

よる崩綾が急に進み,供試争ま毛4

体の全表面積が急に増大し 4111 35

て, このために吸水量の急 30

激な増加がみられることが 2S

ある。

泥広を浸水するときの時

間~吸水量関係を示したの

が図4である。吸水によ 。 5

る含水比の変化を縦軸に,

10

実験結果をプロットすると浸水初期では吸水速度がほ

ぼ一定となり. 30分位の時間経過で90%程度の飽和に

速するものが多い。それ以後は吸水量も少く吸水速度

も急激に減少する。 48時間浸水して重量変化がなくな

った状態を飽和度 1∞%として考えるとき,一般に飽和

合水比の高い供試体ほど吸水速度が大きく飽和合水比の

低いものほど吸水速度は小さL、。また飽和含水比の高い

ものほど自然含水比の高いことが見出されるc

C. 吸水膨脹及び凍結融解実験と結果

プロック状の泥岩ーから長方形断面をもった柱状の供試

体を切り出し,自然乾燥状態時及び吸水膨脹時の供試体

の各辺の長さを測定して膨脹ヒズミを算出した。その結

果の一例を示すのが表2である。供試体は数ヶ月聞に

わたって自然乾燥したもので,供試体内部まで一様に乾

燥したものを用いた。また吸水膨脹It供試体を長時間浸

水して,その重量の変化がみられなくなった時点で供試

体各辺長を測定し膨脹ヒズミ量を求めた。測定結果によ

れば吸水膨脹量は小さく,最大ヒズミが 2.4%であっ

た。

この実験に用いたものと同じ泥岩を粉砕し粒度調整を

行った材料によるCBR試験結果でも浸水膨脹盤は極め

て小さいものであった1)。

吸水及び乾燥による膨脹収縮は泥岩中に含まれる粘土

鉱物の一つであるモンモリロナイトの含有量に大きく影

'" X lf X

品 X: 肋 .8 ロ:陥.7 0: 肋. 1 ム: 肋. 4

..........J 1S 20 25 30 3S (日)

経過回数

横納に時間の対数をとって 図3 泥岩の自然乾燥 ・浸水繰返しによる含水比の変化

138 尾崎叡司 ・近嵐 武

{ぶ)

(凶宵科医)

剖AVTMW

。10'

30秒 1分 2分

10' 10・(秒)

5分 10分 30分 1時間 2時間 4時間 8時間

浸水時間

図4 泥岩の浸水時間と合水比(吸水率〉との関係

ないが,吸水膨脹主主の測定結果により塊状泥岩もち)作物

もともに吸水膨脹ヒズミ設が極めて小さいことが明らか

となったので,モンモリロナイトの含有量

の少いことが推測され.粕土鉱物の存否及

び量を確める実験は行わなかった。

泥岩が崩療する大きい原因と して吸水後

の凍結融解が考えられる。浸水して泥岩の

間隙を水でj筒して後一 5・Cに冷却して凍

結し, この場合に生ずる供試体の膨脹f誌を

測定した。供試体内部まで完全に凍結させ

ることは容易ではないが,完全に凍結した

と考えられる供試体の膨脹ヒズ ミ量は吸水

のみを行った場合の膨脹ヒズ 4量に比して

はるかに大きい測定結果がえられたc この

結果の一例を示すのが友 3である。

0秒

響されることが知られている5)。膨潤性粘土鉱物の存否

はX線解析や示差熱分析などの方法によらなければなら

表2 泥岩の吸水膨脹測定例

ト|合水A |468 (忽~,", I 7.455

IC自然乾燥状態)

A I 71.9 C%) 2.43

ト1 含

表3

1 0.0

凍結57.36

2 0.0

未凍結48.62

d.超音波の伝ぱ主主験とその結果

泥お塊から切り取った島}状供試体もど用い

て超音波伝ば迷皮測定機により ,Vp波(縦

波)及びV.i皮(横波)の伝ば速度をiJllJ定し

た結果の一例を;f¥すのが表4である。狽IJ定時

能登泥岩の二・三の工学的性質 139

の含水比は25%から46%の範囲で,この材料の自然含水

比より乾燥状態での測定値である。 Vp及びVs波はとも

に30KHz及び50KHzを用いている。これは超音波の透

過距離を大きくするために比較的低い周波数を選んだ。

測定結果によれば縦波速度がし 200m/sec~ 1.400m

/secであり, 横波速度は 600m/sec~ 8∞m/secくら

表4 泥岩の超音波伝ば速度

9 /crn3程度であるものを用いた。

一面セン断結果によれば内部摩擦角。が19度から24皮

程度の値がえられ,粘着力Cはかなり小さく 0.07~0.15

同/ω2程度の債がえられた。三軸圧縮試験においても内

部摩擦角。は一面セン断試験による値とほぼ同様の19度

から26度の範囲となったが,粘着力Cはやや大きく0.36

~0.86kg/crn2の値がえられているG 三軸庄

縮試験において側庄内を一定とする標準

縦 千干訂|寸十剖|片す十一tb叫山H判HZ!~は防M日:立刊ポ叩:iff|円問1写怒曾腎官明jj5祭祭到::5立司叩::?引子れr!子叩)1?円胃!~円阿崎i1Y普官:Y2古読計剖ff2祭佼針::芝ざ司::?引::1)1鴨|

ょせ|τ↑横試験と主応力比一定すなわち内/σ1=一定

の試験を行ったところ,σ3=一定試験にお

いては (σ1-a3)maxを過ぎても応力は急に

減少することなくヒズミ sは増加するが,

内/σ1=一定試験では応力~ヒズミ曲線が

b i川阿仲州川;と刊叶叩巾巾p介作作収|ド門M防1うτな引;2なお;2訂判:;1;1|叫引1;:2お叫:::出叫;:口判::引:i|叫1:ご::;::: かなりのコウ配をもって (σ1ーσ3)maxに

至り破壊して,急激に応力は減少する。内

/σ1=一定試験の場合は応力~ヒズミ曲線

の形が供試体合水比によって大きい影響を合水比 (ω) A: 38.2 (%) c : 34.0 (%) B : 25.6 (%) D : 46.0 (克〉 うけることが見出された。

表5 超音波伝ば法により測定された泥岩の弾性定数 4. 実験結果の考察

戸にA B C D

縦 横 縦 横 縦 縦

ヤシグ率K 5H0z 17.4

山 imlm13.6 I 19.8 I 17.0 14.0 I 13.0

乾燥~浸水を繰返す風化試験によって泥

岩が崩壊する原因のーっとしてスレーキγ

グ現象が挙げられる。泥岩は元来海底,湖

底,河底に堆積した粘土やシノレトのような

細粒土が,上載荷重である土かぶり庄によ

って圧密されると同時に土粒子間際に入る

間際水中に含まれる物質の作用により粒子

相互がセメンテーションされることによっ

30 0.28 0.24 0.29 ポアソン KHz

比 50 0.23 0.24 0.16 I 0.08 0.29 KHz

(ヤγグ率 X 106 lJ /crn2)

いの値を示し,岩としては伝ば速度がかなり遅いことが

わかる。また測定された Vp及びVs値より次式を用い

てヤング率とポアソン比を求めた。

E = Vp2(1+μ:) (1ー2μ〕p U-2VS2-Vp2 一一一一百二平ア一一f' 2(Vs2-Vp2)

(3) い)

ここで E:ヤシグ率, μ:ポアソン比,

p:密度

ャγグ率及びポアソン比の測定結果を示すのが表5で

ある。

e.力学試験及び結果

力学試験として一面セン断試験及び三紬圧縮試験を行

った。供試体は泥岩を粉砕して 4.7mフルイを通過する

材料を用い,自然合水比と考えられる近傍の合水比で締

固めて供試体を作成し{共試した。湿潤密度で1. 40~1. 44

0.36

0.32

て回結されたもので,一般に粒子聞のセメ

γテーショ γが泥岩の固結に大きく働いてい

ると考えられている。

細粒の土粒子が水中に堆積する際の土枝子の配列構造

は綿毛構造であって針状あるいは板状の粘土粒子が先端

部と平面部が接触結合した構造をとっている。その接触

点のところに結合物質が沈着して粒子間をセメンテーγ

ヨ γしているものと考えられる。従って粒子間結合物質

が間隙中を占める割合いの大小によって結合の強弱が生

じることになる。結合物質が多くなると結合力が強くな

り次第に岩石に近づくようになるの。泥岩の結合状態に

かなりの差異があり,風化に対しての抵抗の大小は土粒

子間のセメンテーション物質の多少によると考えてよい

であろう。土粒子聞の総合物質は土粒子を構成する鉱物

や間際水の化学的性状,温度・圧力などの諸条件に応じ

て次第に安定な鉱物に変化してゆく。このような現象は

地質学上の続成作用であって,これからも泥岩の堆積年

140 尾崎叡司・近藤 γ 武

代がその性質に大きい影響のあることが理解できる。

':f:粒子聞のセメソテーショ γは湿潤状態では水に対し

て一般に安定でかなり強固なものであることが知られて

いる。泥岩を乾燥さぜることなく水中に入れて放置する

ときは, 6ヶ月を経過してもほとんど変化することなく

最初の形状を保っていることが今回の実験で明らかにな

ったが,この理由は上述のように粒子聞のセメンテーシ

ョγ物質が水に対して安定であることによると考えられ

る。間隙水中に含まれる鉄, カノレシウム,マグネシウム

などの水酸化物や炭酸溢の沈殴物が粒子聞を結合し,さ

らに土粒子表面に不活性で難溶性の珪酸ゲルの被膜が形

成されて粒子聞をおおいつなげる。この注酸被膜は非常

に薄いものであるが開性的で強力な結合力をもっている

とされている。珪酸被践は高含水化合物であるため乾燥

すると収縮して微小な破れ目ができる。泥岩を乾燥して

後浸水する場合この珪酸被膜の亀裂から水が浸入して土

粒子表面に吸着水として吸着される2)。この結果すでに

仲野によって指摘されているように吸着水は自由エネル

ギーを放出して破壊作用を生じ,粒子聞の結合力を弱め

ることによりスレーキγグが生じると考えることができ

る3)。

従って泥岩は乾燥~浸水が繰返されるとき初めてスレ

ーキシグが発生することがわかる。このことから泥岩を

フィルダム材として利用する場合,泥岩の水分状態を変

えることは非常に危険であるといえよう。

土粒子表面をおおう非品質の珪酸ゲル被膜は,珪酸嵐

としての粘土粒子表面が加水分解してできる場合と間際

水中から沈殿して形成される場合が考えられている。こ

の珪酸ゲルは時聞の経過に従って安定な主主酸鉱物に移行

するため強度が増大し,乾燥~浸水の風化過程に対して

も建設被膜に亀裂が入りにくく,スレーキングにも抵抗

が大きくなる。

風化実験の結果にーよれば急速にスレーキシグを起し崩

壊する泥岩のグループがみられる杭これらの供試体は

挽状に採取された泥岩の外国に接する部分かあるいはこ

れに近い部分から成るもので,風化の遅いものは一般に

塊状泥岩の中心部から取り出されたものであった。泥岩

塊の表面近くでは外気に触れることによって水分の変化

も激しく, これによる影響に因ると考えられるが,さら

に外力によって生じていた応力の緩和の影響も大きく受

けると考えられる。泥岩は外圧から解放されるとき磁性

的に膨張することにより粒子間隙の増加がもたらされ,

セメ γテーション物質や珪酸ゲル被膜に亀裂が入り,浸

水による水の浸入の結果吸着水の増加がもたらされるた

め結合力が低下することが考えられる。従って泥岩材は

強い拘束力によって拘束されている方が安定であるとし

てよし、。

泥岩の間際が多量の水を保つとき外気温が降下して凍

結現象が起れば,間際水が結氷することにより体積増加

が生じ泥岩内部より引張応力が作用して結合物質を破

壊する。実験結果によれば,凍結による膨脹ヒズミは吸

水膨脹より大きいことが明らかであり,凍結による泥岩

の破壊は顕著である。温度が低下すると水の表面張力は

大きくなるため吸水作用の原因となるサクションは大き

くなる。従って冬期にはこれらの現象が相乗作用して泥

岩の破壊がもたらされる。さらに凍結された水が融解す

るとき土粒子に水分が供給されるため粒子結合は破撲さ

れ泥岩は軟化すると考えられる。実際,本実験に用いた

材料の採取地である珠洲市岩坂川上流地区では,泥岩の

露出層が越冬することにより非常にはげしい風化をうけ

る事実は凍結融解作用が大きく影響していると考えら

れ,実験結果からの推定と一致する。

5iii性波速度は泥岩の固結度を表わす示擦として用いら

れる。従って弾性波速度はまた風化度を示すとも考えら

れる。ーいま, 種々の風化状態に対応する岩のP波(縦

波〉伝ば速度は

(i) 図結度の低い岩盤または割目の発達したもの(岩

盤下部風化帯) 2.0-1. 5jsec

(ii)、間際割目が発達じ岩石も軟化したもの(上部風

化帯) 1.5-1.3 kmjsec

(iii) 風化甚しく粘土化する(上部風化帯)

1.3-1.0 kmjsec

(iv) 著しく風化,時に崖錐状を呈する(風化土及び

度錐) 1.0"--0.7 kmjsec

(v) ポカ土,耕土および崩積土(表土)

0.8kmjsec 以下

のように概略区分されている。この区分に従って供試泥

岩を判定すると(ii)ないしCiii)に相当し, 国結度は高く

ないことがわかる。泥岩においても合水比が増加するに

従って p波速度が変化する。飽和状態で最大速度を示

し含水比の低下にともなって速度が低下する杭その

変動は複雑である。弾性波速度に泥岩の間際部分とくに

国結部分の微細組織と水の作用は重要な影響を与えるこ

とは確かであるが,いまだ十分説明できるデーターが得

られなかった。今後の重要な問題といえる。

力学試験における結果については特別な問題点は見出

せないが,フィルダムの盛立て過程や完成後の内部応力

状態を想定した場合の材料強度試験法として考えられる

主応力比内/σ1=一定試験によれば,内=一定試験に比

してヒズミ量がかなり小さいところで破壊点に達するこ

能登泥岩の二・三の工学的性質 141

とが注意される。内=一定試験ではピーク強度が比較

的明確でないのに比して内/σ1=一定試験ではピーク強

度が明確に示される。そしてピーク強度以後のヒズミ楢

加が内=一定試験ではかなり大きくなっている。

5. 結 5否

能登泥岩の風化過程を中心に実験的検討を加えてきた

が,フィノレダム材として注意すべき点を挙げると

(i) 泥岩は水中におかれ乾燥することがない場合は

極めて安定している。

(ii) 泥岩を乾燥後水浸するとスレーキングを起し崩

演する。従ってフィノレダム材として使用するとき

は極力水分変化を防ぎ,外気に接触しないよう堤

体内部で使用することが必要で,泥岩材を被荷す

ることを考えるべきである。

(iii) 凍結融解による泥岩の崩壊は極めて大きい。従

って(ii)で示したように外気温の変化の少い堤体

内部で使用すべきである。

Civ) 吸水による膨張収縮は小さい。

(v) 泥岩を使用する場合外部より拘束圧を加えて使

用することが望ましL、。

以上の諸点に十分注意して使用するときは堤体材料と

しての使用は可能と考えられる。

本実験を行うに当り泥岩材料の採取に絶大なご協力を

いただいた北陸農政局設計課竹内魁技官,石川県珠洲土

地改良事務所新谷成昭主査に深〈感謝の意を表する次第

である。また実験に際しては高坂,宗岡両君の労に負う

ところが多い。ここに感謝の意を表する。

文献

1)近藤武・尾崎叡司:三重大学農学部学術報告,投稿

印刷中. 1979.

2)森麟:土質工学会編,土質工学における化学の基礎

と応用. 108・110.土質工学会. 1978.

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4)山野隆康:土と基礎. 21-3 ( 181). 25-37.

1973

5)吉中龍之進・安発智在:第5図岩のカ学国内シンポ

ジウム講演集 19・23.1977.