文部科学省スーパーグローバルハイスクール研究開...

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文部科学省スーパーグローバルハイスクール研究開発学校 平成27年度指定スーパーグローバルハイスクール研究開発実施報告書 第1年次 (研究開発構想名) 科学技術系素養を持つグローバルテクニカルリーダーの育成 平成28年3月 国立大学法人 東京工業大学 附属科学技術高等学校

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文部科学省スーパーグローバルハイスクール研究開発学校

平成27年度指定スーパーグローバルハイスクール研究開発実施報告書

第1年次

(研究開発構想名)

科学技術系素養を持つグローバルテクニカルリーダーの育成

平成28年3月

国立大学法人 東京工業大学 附 属 科 学 技 術 高 等 学 校

本報告書に記載されている内容は,グローバル・リーダー育成に資する教育

を重点的に実施し,これに関する教育課程等の改善に資する実証的資料を得る

ため,現行教育課程の基準の下での教育課程等の改善に関する研究開発のほか,

学校教育法施行規則第85条(同規則第108条の第2項で準用する場合を含

む。)並びに第79条及び第108条第1項で準用する第55条に基づき,現行

教育課程の基準によらない教育課程を編成・実施するために,文部科学大臣の

委託を受けて実施した実証研究です。

したがって,この研究の内容のすべてが,直ちに一般の学校における教育課

程の編成・実施に適用できる性格のものでないことに留意してお読み下さい。

参照:平成26年1月14日文部科学大臣決定

「スーパーグローバルハイスクール実施要項」の6

はじめに 創立130年を迎えた本校は,わが国で唯一の国立大学法人附属の科学技術高校です。こ

れまで幾多の科学技術系人材を育成し,世に送り出してきました。時代は変わり,国土交通

省・観光庁の発表によれば,2015 年に日本を訪れた外国人旅行者は 1973 万人を越え,前年

比 47.1%増加しました。2000 年には 476 万人であったことを考えると,実に 4 倍を越えて

います。実際,浅草・上野や銀座・秋葉原を歩けば,外国人旅行者の多さを肌で感じること

が出来ます。それに加えて,外国人旅行者が滞在中に費やした買い物・飲食費・宿泊費など

の消費額も 3 兆円を超えており,日本の景気を支えていると言っても過言ではありません。

このことを無視した経済活動など出来ず,グローバル化の波は,否応なしに私たちを飲み込

み,国際的視野でものを見,考える時代となりました。 本校では従前より,科学技術人材育成プログラムにより,科学者・技術者として必要な知

識・能力・技能・スキルなどを身につけてさせてきました。さらに今年度より,スーパーグ

ローバルハイスクール(SGH)研究開発指定校となり,国際社会に通用する“グローバルテ

クニカルリーダー(GTL)”として育成する取り組みを始めました。 私たちが取り組むべき課題は,育てるべき生徒像の画定であり,将来GTLとなる人材の

全体的な能力をコンピテンシーとして定義し,高校段階ですべきことは何かを見極め,育成

すべき資質・能力の提案することが肝要と考えています。この生徒像は,これからの時代に

求められる人材育成という面を持つことから,21 世紀型能力における問題解決力,すなわち,

生活や実社会において知識や技能を活用して問題を解決出来る力にも,対応しうることが求

められます。そのため,SGH開発科目を,既存の教科・科目,および科学技術人材育成プ

ログラムと一体的に捉えることにより,目標を設定し,カリキュラムをデザインすることと

しました。 私たちは,GTL育成をきっかけとして,科学技術系人材にとって育成すべき資質・能力

とは何か,改めて考える機会を得ました。技術教育とは何か,グローバル人材とは何か,高

校生にとってそれらはどのように捉えていくべきなのか,整理すべき課題は多くありますが,

私たちはその第一歩を踏み出しました。まずは,私たちが培ってきた科学技術系人材の教育

方法,とりわけ本校が蓄積してきた課題研究の know-how を足がかりとして,問題解決力の

育成について提案することにしたいと思います。 研究第一年次は,可能な限りの方策により,グローバル化を図ろうとしましたので,豊富

な内容となっています。まずは、目標に向かってやれることを抽出し,そこから内容を精査

しながら,焦点を絞って行きたいと考えております。お読みいただく皆様方のご助言・ご感

想を頂戴できれば幸甚です。 最後になりましたが,SGH研究開発の機会を与えて下さった文部科学省の関係各位,ご

指導とご助言をいただいている運営指導委員会の関係各位に,厚く御礼申し上げます。さら

に,高大連携の推進に当たり多大なご協力をいただいた東京工業大学の教職員の皆様に謝意

を表します。

平成28年3月

東京工業大学附属科学技術高等学校 校 長 宮 本 文 人

目 次 A 平成27年度スーパーグローバルハイスクール研究開発構想調書(概要) B 平成27年度スーパーグローバルハイスクール研究開発目標設定シート C 実施報告書(本文) C−1 研究の概要 Ⅰ 研究開発の指定期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 Ⅱ 研究の概要および本校の概要等 1 研究開発構想名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2 研究開発の目的・目標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 3 研究開発の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 4 学校全体の規模 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 5 研究開発の内容等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 6 研究開発計画・評価計画 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 7 研究開発成果の普及に関する取組 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 8 研究開発組織の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

C−2 スーパーグローバルハイスクール研究開発の実施内容 Ⅰ グローバル社会と技術研究会の活動報告 1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 2 経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 3 内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及 ・・・・・・・・・ 36

Ⅱ グローバル社会と技術・応用研究会の活動報告 1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 2 経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 3 内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及 ・・・・・・・・・ 60

Ⅲ SGH課題研究研究会の活動報告 1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63 2 経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63 3 内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及 ・・・・・・・・・ 72

C−3 第1年次の研究のまとめと今後の課題・成果の普及 Ⅰ はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73 Ⅱ 第1年次の研究のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74 Ⅲ 今後の課題・成果の普及 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76

D 関係資料

Ⅰ 運営指導委員会の記録 Ⅱ 連絡協議会等の記録 Ⅲ SGH関連の出張の記録 Ⅳ 報道機関等による取材・報道の記録 Ⅴ 平成27年度教育課程表 Ⅵ SGH生徒意識調査

E 生徒成果物 Ⅰ フィリピン共和国海外調査研修 Ⅱ オーストラリア連邦海外調査研修

A 平成27年度スーパーグローバルハイスクール構想調書の概要

【別紙様式5】

平成27年度スーパーグローバルハイスクール構想調書の概要

指定期間 ふりがな とうきょうこうぎょうだいがくふぞくかがくぎじゅつこうとうがっこう

②所在都道府県 東京都 27~31 ① 学校名 東京工業大学附属科学技術高等学校

③対象学

科名

④対象とする生徒数 ⑤学校全体の規模

1年 2年 3年 4年 計 第1・第2・第3学年生徒全員を対

象に実施する。 科学・技術科 190 193 186 569

⑥研究開

発構想名

科学技術系素養を持つグローバルテクニカルリーダーの育成

⑦研究開

発の概要

科学技術系素養を持つグローバルリーダーを育成するため,資源産出国と国際交流を

行う。その際,備えるべきスキルと地政学的リスク回避能力,語学力を獲得するため,

新科目「グローバル社会と技術」「グローバル社会と技術・応用」および,SGH課題

研究を開発する。その際,東京工業大学との連携を強化し,育成プログラムを開発・実

践し,成果普及に努める。

-1

(1) 目的・目標

多様化する国際社会で活躍するリーダーを輩出する観点から,科学技術系素養を持

つ科学技術高校生徒に育成すべき資質と能力を提案し,資源産出国との国際交流を軸

に,地政学的な基礎知識を元にリスクを回避できる“グローバルテクニカルリーダー

”の育成を図る。その際,高大連携教育を大幅に増強し,高大を貫くグローバル人材

の育成を目指し,求められる資質と能力を提案すると共に,実現のための新科目「グ

ローバル社会と技術」「グローバル社会と技術・応用」および新たなSGH課題研究

を軸とした育成プログラムを開発・実践し,成果を普及する。

(2) 現状の分析と研究開発の仮説

本校は,科学技術高校生徒に必要な能力の開発に努めてきたが,グローバルリーダ

ーの輩出には力が及んでおらず,本校の調査においても,留学者数は 1割程度にとど

まり,将来の留学の可能性についても,その希望は50%程度にとどまる。

本校は,高校段階において育成すべき資質と能力を,「リーダーが備えるべきスキ

ル」(“インクルージョン力(多様性受容力)”・“バックキャスティング力(目標

から現在すべきことを考える力)”・“コンセンサスビルディング力(合意形成力)

”),「地政学的なリスク回避力」,「語学力」(英語によるコミュニケーション力)

の3点を提案する。そこで,新科目「グローバル社会と技術」「グローバル社会と技

術・応用」の開発・実践,エネルギー・環境問題の捉え方が異なるフィリピン・オー

ストラリア・サウジアラビア・アメリカ・中国・モンゴルといった資源産出国・韓国

などの東アジアにおける資源消費国との国際交流,マネージメントや費用便益分析な

どの考え方を取り入れたSGH課題研究の開発・実践により,科学技術の素養を活用

しながら,新しいタイプの先導者となりうる“グローバルテクニカルリーダー”を育

成することができるとする仮説を立てた。

(3) 成果の普及

校内における保護者に対する公開授業の実施,中学生を対象とした体験入学等での本

開発科目の試行,SGH研究開発中間報告会および成果報告会での公表に加え,新たに

開発した教材や指導法などをディジタルデータで記録し蓄積する。蓄積したディジタル

データを編集し,一連のアーカイブズとして制作する。制作するアーカイブズは「Tokyo Tech SGH アーカイブズ」としてICTなどの活用による普及を試みる。

-2

(1) 課題研究内容

第2学年において,新科目「グローバル社会と技術・応用」内で行われる

「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称する課題研究と

第3学年において,生徒が希望するテーマに応じて,従来の「課題研究」と振り

分け,SGH課題研究を実施する。前者は,フィリピン・オーストラリアなどの

資源産出国との国際交流を前提としたミニ課題研究で,エネルギー・環境問題の

捉え方の違いについて,国際交流時に英語で議論する。他方,後者は,定量的分

析等の結果などを踏まえた改善が前提にあり,その結果を課題研究として反映す

る。

(2) 実施方法・検証評価

REEI は,第2学年全員が行うが,国際交流の時期が夏休みから始まることか

ら,前期に集中して行う。また,SGH課題研究は,課題研究のテーマ設定の段階

で,30%程度を目標に,SGH課題研究に振り分け,教育課程の特例を受ける。

なお,時間割上は,すべての生徒が同一時間帯に課題研究を行うが,SGH課題研

究に指定された課題研究には,人文・社会系および体育科の教員,および東京工業

大学教員などが指導に加わる。

(3) 必要となる教育課程の特例等

SGH課題研究は,教育課程の特例を受ける。

-3

(1) 課題研究以外の研究開発の内容・実施方法・検証評価

新科目「グローバル社会と技術」では,グローバルな視野で,地球全体が抱えて

いる問題を取り上げ,科学技術に対する興味・関心を喚起し,自ら調べ,学ぶ態度

を育てることにより,創造的に問題解決を図ることができるような人材を育てると

ともに,科学技術を学ぶもののあり方を生徒自身に考えさせ,技術者としての倫理

観を涵養する。また,自らの主張を短い英語で行うことができるように指導する。

新科目「グローバル社会と技術・応用」では,高校段階において育むべき資質と能

力である“リーダーが備えるべきスキル”“地政学的リスク回避能力”“語学力”

の3要素を身につけると共に,「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称するミニ課題研究を通じて,必要なスキルと知識を自覚し,国際交

流によって,フィリピン・オーストラリアなどの資源産出国との立場の違いを検証

する。また,課題研究の成果を以て英語によるコミュニケーションを図ることから,

「語学力」の達成を図る。国際交流という実践の場において,学習内容を検証する。

(2) 課題研究の実施以外で必要となる教育課程の特例等

「工業技術基礎」に替え,「科学技術基礎」を実施する。その他,学校設定科目を実

施する。

(3) グローバル・リーダー育成に関する環境整備,教育課程課外の取組内容・実施方

東京工業大学グローバルリーダー教育院・学術国際情報センター・留学生センタ

ー・世界文明センター・教育工学開発センター等の協力により,グローバル化への

対応に明るい専門家による助言,外国人留学生の派遣など,人材の派遣を円滑に行

い,かつ英語によるコミュニケーションの鍛錬に協力いただく。また,東京工業大

学リベラルアーツセンターの協力により,国際情勢の教育に明るい著名な専門家を

招き,講演会の実施,新科目に対する講義内容への助言を戴く。さらに,東京工業

大学が実施しているSGU:スーパーグローバル大学創造支援事業に参加し,共同

で事業を進めることにより,相乗効果を狙う。

⑨その

他特記

事項

東京工業大学との連携により,特別推薦入試を実施している。

スーパーサイエンスハイスクール研究開発を13年にわたり受けている。(平成26年度

で終了,平成27年度は経過措置)

B 平成27年度スーパーグローバルハイスクール 目標設定シート

【別紙様式7】

1.本構想において実現する成果目標の設定(アウトカム)

f

(その他本構想における取組の達成目標)グローバルリーダに必要な、多様性に対する受容力を有する生徒の割合

- 48.77%

目標設定の考え方:外国人に対し、共通点,相違を乗り越えた異文化コミュニケーションできる態度の育成を行う。

-

40.00% 70%SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

c

将来留学したり、仕事で国際的に活躍したいと考える生徒の割合

49.50% 50.47%       %       %       %       %       %

目標設定の考え方:SGHの授業や講演会などを通して、グローバルリーダーとして国際的に活躍しようという意欲を養う。

55.20%

62.50%       %       %       %       % 90%SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

e

卒業時における生徒の4技能の総合的な英語力としてCEFRのB1~B2レベルの生徒の割合

23.90% 8.84%       %       %       %       %       %

目標設定の考え方:外国人教員や留学生TAとふれあうことで、英語学習に対する意欲を増進させる。

26%

22.50%       %       %       %       % 70%SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

a

自主的に社会貢献活動や自己研鑽活動に取り組む生徒数

    12人       人       人       人       人 100人

目標設定の考え方:SGHの活動を通し、リーダーとしての資質を育成するため、ボランティア活動や自己研鑽について考えさせる。

28人   24人    118人       人       人       人       人       人

SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

b

自主的に留学又は海外研修に行く生徒数

  7人     63人       人       人       人       人       人

目標設定の考え方:校内の国際交流の体験から、リーダーの備えるべき、真の交流のため、留学や海外研修に取り組みようすすめる。

  20人

    13人       人       人       人       人 50人SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

d

公的機関から表彰された生徒数、又はグローバルな社会又はビジネス課題に関する公益性の高い国内外の大会における入賞者数

   6人     47人       人       人       人       人       人

目標設定の考え方:授業等の中で各種大会を紹介し、積極的にかかわることで自己達成感を得る。

   6人

    8人       人       人       人       人  15人SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

平成27年度スーパーグローバルハイスクール 目標設定シート

26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 31年度 目標値(31年度)

ふりがな とうきょうこうぎょうだいがくふぞくかがくぎじゅつこうとうがっこう指定期間 27~31学校名 東京工業大学附属科学技術高等学校

25年度

1’指定4年目以降に検証する成果目標

目標設定の考え方:課題研究等の研究活動の楽しさややりがいを体験させることを通して専攻分野に影響を与える。

d

大学在学中に留学又は海外研修に行く卒業生の数

-       人       人       人       人       人       人-

目標設定の考え方:高校での経験を活かし、大学でも積極的に国際的な活動に取り組む態度を養成する。

      人       人       人       人       人 100人

c

SGHでの課題研究が大学の専攻分野の選択に影響を与えた生徒の割合

-       %       %       %       %       %       %-

      %       %       %       %       % 100%

b

海外大学へ進学する生徒の人数

   0人       人       人       人       人       人       人   0人

目標設定の考え方:グローバルな視点を養うことを通して、海外の大学への進学にも視野を広げさせる。

  5人

目標値(34年度)

a

国際化に重点を置く大学 へ進学する生徒の割合

19.50%       %       %       %       %       %       %

26年度 30年度 31年度 32年度 33年度 34年度25年度

21.10%

目標設定の考え方:SGUタイプA型のスーパーグローバル大学への進学をすすめる。

      %       %       %SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

      %       % 40%

      人       人       人       人       人

2.グローバル・リーダーを育成する高校としての活動指標(アウトプット)

<調査の概要について>1.生徒を対象とした調査について(生徒数は,平成28年1月現在)

目標設定の考え方:

目標設定の考え方: 現在TOPページのみの英語のページがあるが,これを全体に広げると共に英語でのタイムリーな情報を提供する。

j

(その他本構想における取組の具体的指標)

i

外国語によるホームページの整備状況

○整備されている  △一部整備されている  ×整備されていない

△ △ ○△

h

先進校としての研究発表回数

   1回      1回       回       回       回       回    4回

目標設定の考え方: 課題研究の発表会を拡充し、年2回の発表会を行うと共に研究発表大会を行う。

   0回

g

帰国・外国人生徒の受入れ者数(留学生も含む。)

   0人      2人       人       人       人       人  20人

目標設定の考え方:帰国・外国人生徒への選抜、対応方法も含め、徐々に拡大を目指す。

   0人

f

グローバルな社会又はビジネス課題に関する公益性の高い国内外の大会における参加者数

   0人      5人       人       人       人       人  20人

目標設定の考え方:スピーチコンテストや各種懸賞論文などの応募を促し,受賞による自己高揚感を得させる。

   0人

e

課題研究に関して企業又は国際機関等の外部人材が参画した延べ回数(人数×回数)

   0人      1人       人       人       人       人   5人

目標設定の考え方:テーマに応じ、外部の企業や、国際機関の方に指導、助言等を受ける。

  0人

d

課題研究に関して大学教員及び学生等の外部人材が参画した延べ回数(人数×回数)

 0人      3人       人       人       人       人  20人

目標設定の考え方:テーマに応じ、大学教員や大学院生のTA等に指導、助言等を受ける。

  0人

c

課題研究に関する連携を行う海外大学・高校等の数

  0校      1校       校       校       校       校  3校

目標設定の考え方:新たな国際交流提携校と連携を始めると共に、今後、1校交流先を増やす。

  0校

b

課題研究に関する国内の研修参加者数

  0人    187人       人       人       人       人 200人

目標設定の考え方:国内の高校との交流や、課題研究中間発表会などで、指導、助言等を行う。

  0人

a

課題研究に関する国外の研修参加者数

  0人     14人       人       人       人       人  20人

目標設定の考え方:国際交流校を通して、共通の課題研究テーマを設定し、競わせる。

   0人

26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 31年度 目標値(31年度)25年度

424

全校生徒数(人)

SGH対象生徒数

25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 31年度

584 568 572

148SGH対象外生徒数

− 1 −

C 実施報告書(本文)

C−1 研究の概要

Ⅰ 研究開発の指定期間

指定を受けた日から平成32年3月31日

Ⅱ 研究の概要および本校の概要

1 研究開発構想名

科学技術系素養を持つグローバルテクニカルリーダーの育成

2 研究開発の目的・目標

(1)目的

多様化する国際社会で活躍する人材を輩出する視点から,科学技術系素養を持つ科

学技術高校生徒に育成すべき資質と能力を提案し,高大連携教育を大幅に増強した“グ

ローバルテクニカルリーダー”プログラムを実践し,成果普及に努める。

(2)目標 多様化する国際社会で活躍するリーダーとしての資質と能力を身につけると共に,

資源産出国との国際交流を軸に,地政学的な基礎知識を元にリスクを回避できる“グ

ローバルテクニカルリーダー”の育成を図る。その際,高大連携教育を大幅に増強し,

高大を貫くグローバル人材の育成を目指し,求められる資質と能力を提案すると共に,

実現のための新科目「グローバル社会と技術」「グローバル社会と技術・応用」および

「SGH課題研究」を軸とした育成プログラムを開発・実践し,成果を普及する。

3 研究開発の概要

科学技術系の知識を有しながら,ビジネスフレームワークのような問題解決の枠組み

などのマネージメントスキルをも有する人材を育成するため,リスク回避の観点から,

ESD理解を深めるため,産油国・鉱物資源産出国(フィリピン・オーストラリア・サ

ウジアラビア・アメリカ・中国・モンゴル)との国際交流を行う。その際,国際社会で

活躍するリーダーとして育成すべき資質と能力を明確にし,備えるべきスキルと地政学

的リスク回避能力,語学力(英語によるコミュニケーション力等)を獲得するため,新

科目「グローバル社会と技術」「グローバル社会と技術・応用」および,マネージメント

の手法や費用便益分析などの定量的評価を取り入れた「SGH課題研究」を開発する。

その際,東京工業大学との連携教育を大幅に増強し,東京工業大学グローバルリーダー

教育院・リベラルアーツセンター・学術国際情報センター等や企業との連携を図りなが

ら,斬新な育成プログラムを開発・実践し,成果普及に努める。

4 学校全体の規模

課程・学科・学年別生徒数,学級数(平成28年2月現在)

− 2 −

課程 学科 第1学年 第2学年 第3学年 計

生徒 学級 生徒 学級 生徒 学級 生徒 学級

全日制 科学・技術科※ 197 5 187 5 187 5 571 5

計 197 5 187 5 187 5 571 5

※第1学年では全教科を共通に履修する。第2学年以降の専門教科では,

材料科学・環境科学・バイオ技術分野 (応用化学分野)

情報・コンピュータサイエンス分野 (情報システム分野) システムデザイン・ロボット分野 (機械システム分野)

エレクトロニクス・エネルギー・通信分野(電気電子分野)

立体造形・ディジタルデザイン分野 (建築デザイン分野) の5分野に分かれて履修する。(括弧内は各分野の略称である。)

5 研究開発の内容等

(1)全体について ① 現状の分析と課題

文部科学省(2014)は「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価

の在り方に関する検討会」の論点整理*1 や次期学習指導要領改訂の議論を踏まえた

文部科学大臣の諮問*2(2014)を公表し,我が国の子供たちにとって今後特に重要

と考えられる,何事にも主体的に取り組もうとする意欲や多様性を尊重する態度,

他者と協働するためのリーダーシップやチームワーク,コミュニケーションの能力

などの関係,および,それらの育成すべき資質・能力と,各教科等の役割や相互の関

係の構造化などの検討を求めている。

本校は,科学技術系の素養を育成する科学技術高校であり,国際社会で活躍でき

るグローバルリーダーを育成するためには,普通科の高校とはベースが異なるため,

新たな「育成すべき資質・能力」を提案して「生きる力」の育成を具現化する新し

い教育システムを構築しなければならない。本校では,科学技術系の素養を持つグ

ローバルリーダーを“グローバルテクニカルリーダー(GTL)”と称することとす

る。GTLは,たとえば,技術専門者をうまく使いながら,グローバルに生産・販

売拠点を置き,安定的(リスクを回避しながら)製品を生産し,流通させ,利益を

上げられるような生産・販売計画を立案できるような資質を想定しており,ある程

度の科学技術系の知識を有しながら,マネージメントスキル,すなわち,ビジネス

フレームワークのような問題解決の枠組みを使いこなせる人材である。このGTL

の人物像は,本校のスクールポリシーに掲げる生徒像とも合致すると考えている。

しかし,GTL育成のためには,新たに,学ぶべき内容の精査,学習・指導方法や

学習の成果を検証し,情報技術(ICT)を大幅に活用するなど指導方法の改善や

パフォーマンス評価方法を開発して,充実を図る必要がある。

いままでに,3 期 13 年にわたるSSH研究開発指定を受け,科学技術系人材に必要

な力として,第1期SSHでは,創造性の基盤となる「わかる」「えがく」「つくる」,

第2期SSHでは,第1期の発展型として「いどむ」「わかりあう」,そして第3期

SSHでは,さらに社会のニーズに応えるべく「伝え合い学び合う」を掲げ,コミ

− 3 −

ュニケーション力の育成(「科学技術コミュニケーション入門」の開発),課題研究

の実践によるチームワークの育成など,個別に必要な力を伸ばす努力を重ねてきた。

これらに加えて,国際交流による成果も着実に積んでいる。その結果,本校の独自

調査では,将来留学,あるいは仕事で国際的に活躍したいと思う割合が,55.2%(第

2学年)に達するが,実際に留学経験(短期も含む)がある割合は,13.6%に留まる

という現実がある。すなわち,今までの研究開発は,科学者・技術者としての素養

を身につけるものとして,一定の成果を上げながらも,グローバルリーダーの育成

という観点からは取り組んでこなかったといわざるを得ない。そこで本校では,G

TL育成のために,高校段階において育成すべき資質と能力を,「リーダーが備える

べきスキル」,「地政学的なリスク回避力」,「語学力」の3点を提示する。

「リーダーが備えるべきスキル」とは,“インクルージョン力(多様性受容力)”・“バ

ックキャスティング力(目標から現在すべきことを考える力)”・“コンセンサスビル

ディング力(合意形成力)”を備えるべき不可欠なスキルとして提案する。これら3

つの能力は,正課の中で明示的に育成されることはなかった。“インクルージョン力”

とは,ダイバーシティ&インクルージョンが可能な能力のことで,異文化理解を進

め,世界の文化,民族など様々な多様性を受容する能力を指すとともに,先入観な

く多様な情報を受け入れる情報収集力,情報活用力を含む。次に,“バックキャステ

ィング力”とは,持続可能な社会を目標として掲げ,それを実現するために現在を

振り返って,今は何をするべきかを考えることができる力であり,目標実現のため

の企画力である。この能力育成のためには,本校のスタッフの他,企業などで人材

育成をしている方(メーカーまたは,コンサルティング,JETRO など)の協力が必

要である。“コンセンサスビルディング力”とは,コミュニケーション過程において,

相手に納得してもらい,自らの意見に賛同してもらう合意形成力である。この

know-how を,本校ではかねてより“科学技術コミュニケーション”として蓄積して

おり,応用の準備は整っている。

「地政学的なリスク回避力」とは,地域に依存するリスクを理解した上で,リス

クを回避するための意思決定できる能力で,たとえば,世界各地から,どのように

部品を集め,どこで生産し,どこで売るのか,といったことをさまざまな経済情勢

やそれぞれの地域の抱えるリスクなどを,考慮しながら考えることができる能力で

ある。なかでも,リスクを回避するためには,地球全体が抱える様々な問題に精通

する必要があり,殊に,エネルギー問題や環境問題について理解を深める必要があ

る。本校では,新たなESD理解を図るため,産油国などの鉱物資源産出国の実情

を把握する必要性から,特に正課の中で学ぶことは少ない中東・中央アジアやイス

ラーム文化について,異文化コミュニケーションに必要な知識を補填する計画であ

る。また,我が国とは立場の異なるこれらの国々の,特に高校生の意識は,文献資

料では計りがたい。そのため,国際交流によって,直接肌で感じ取らせることを計

画した。これらの取組は,地理歴史科の世界史や公民科の政治・経済,倫理と関連

させ,東京工業大学リベラルアーツセンター等との連携を図りながら,内容を精選

する。

− 4 −

「語学力」とは,英語によるコミュニケーション力を指し,ツールとしての英語

力を充実させる必要がある。これらを具体的に活かす場として,国際交流を推進す

るが,エネルギー問題・環境問題の理解を深めるためには,産油国であるサウジア

ラビア王国・世界最大級の鉱物資源保有国であるアメリカ合衆国・中華人民共和国,

フィリピン・オーストラリア・そしてモリブデンの埋蔵量が世界屈指であるモンゴ

ル国といった資源産出国との交流が不可欠である。これにより,資源に対する考え

方の違いを理解しうると考えている。また,資源消費国についても,日本だけの考

えでは,グローバルな視野とは言えないため,日本と同じように資源を持たない東

アジア各国との交流(韓国など)が欠かせないと考えている。 GTL育成のために必要なこれらの資質や能力は,3つの新科目「グローバル社会

と技術」,「グローバル社会と技術・応用」および,マネージメントや費用便益分析

などの考え方を取り入れた「SGH課題研究」を開発する必要があり,東京工業大

学との連携教育の大幅増強,東京工業大学グローバルリーダー教育院・リベラルア

ーツセンター・学術国際情報センター等との連携が不可欠となる。 *1 育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会(2014) 論点整理 http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2014/07/22/1346335_02.pdf(参照日 2015.2.9) *2 初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問),文部科学大臣 (2014). http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1353440.htm(参照日 2015.2.9)

② 研究開発の仮説

高校段階において育むべき資質と能力について,「リーダーが備えるべきスキル」,

「地政学的リスク回避能力」,「語学力」の3要素を柱とする,新科目「グローバル

社会と技術」,「グローバル社会と技術・応用」の開発・実践,フィリピン・オース

トラリア・サウジアラビア・アメリカ・中国・モンゴルといった資源産出国・韓国

などの東アジアにおける資源消費国との国際交流および,マネージメントや費用便

益分析などの考え方を取り入れた「SGH課題研究」の開発・実践により,科学技

術の素養を持つことを活用しながら,新しいタイプの先導者となりうる“グローバ

ルテクニカルリーダー”を育成することができる。

(2)課題研究について

① 課題研究内容

a 「SGH課題研究」に向けた新科目「グローバル社会と技術」 新科目のうち,「グローバル社会と技術」は,グローバルな視野で,現在,地球

全体が抱えている問題を学ぶ。ここでの学びは,きっかけに過ぎず,これを種と

して,自らの主体的な調べ学習などにより,実を結ぶことを狙っている。そのた

めの方策として,テーマごとに,生徒個人の「問題解決への提案」を義務づける

ことから,「SGH課題研究」への入門の役割を担っている。本校では,「SGH

課題研究」における問題解決には一定の手順が存在するという仮説を掲げている

が,本科目では,4段階程度のラフな手順を生徒自身に考えさせ,課題に即した

解を埋めることで,「SGH課題研究」における問題解決スキルを磨くことを目指

す。しかしながら,この段階では,手順すべてに考えが及ぶのではなく,むしろ

− 5 −

問題発見のスキル向上に寄与すると考えている。従来,総合的学習の時間やアク

ティブラーニングでは,PDCAサイクルでいうD(do;行動)やC(check;評価)

に力を入れているが,本科目では,P(plan)の充実を図る。すなわち,「SGH課

題研究」を始めるには,本来,全体の目的を明示し,いま行える取組を下位目標

に設定して,目標達成の道筋をつけるといったプロセスが必要である。本科目は,

「SGH課題研究」の構成を考え,課題発見・問題解決を図るためのスキルを身

につけることを目指すことから,「SGH課題研究」の入門として重要な役割を担

う。

b 「SGH課題研究」に向けた新科目「グローバル社会と技術・応用」 図1は,「グローバル社会と技術・応用」のあらましである。

新科目のうち,「グローバル社会と技術・応用(AGST)」は,1年次に実施した

「グローバル社会と技術」の続編をなし,テーマ学習「中東・中央アジア理解」,「イ

スラーム文化研究」,「英語によるコミュニケーションスキル」をオムニバス形式で

実施する。これにより,地政学的リスク回避のための知識と語学力の鍛錬という

GTLに必要な新たなファクタを加え,得られた知見と既有の知識の再構築を促

す。これらの総仕上げが,「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」

と称するミニ「SGH課題研究」である。REEI は,エネルギー問題・環境問題な

ど私たちを取り巻く諸問題について,マネージメントの問題解決手法や定量的分

析などを援用しながら,自らの考えを提案する探求型学習である。この取組は,

単に法律による規制に頼るのではなく,新たな技術的開発の提案という帰結を目

指す。REEI は,提言に留まらず,国際交流の場においてベースとなる文化の違う

高校生に対して主張することを前提としている。それゆえ,国際交流相手校に対

しても同じテーマでの発表を依頼する。ミニ「SGH課題研究」の例としては,

図 1 新科目「グローバル社会と技術・応用」のあらまし

− 6 −

砂漠に太陽光発電をつくるべきか? 洗濯機に求められるものは何か? 飲む水

と食器を洗う水は分けるべきか? 砂漠で飲み水を忘れたら分け合うべきか?な

どが挙げられる。 本研究開発における国際交流は,資源産出国等を交流相手と考えており,フィ

リピン・オーストラリアとの交流事業を先行し,サウジアラビア・中国・アメリ

カ・モンゴルとの交流は,国際情勢を鑑みながら,徐々に進めていくことを計画

している。

~なぜフィリピン共和国なのか~

フィリピンは,東南アジア有数の資源産出国であり,エネルギー自給率は 2011年時点で 59.1%である。しかしながら,電力需給の逼迫が深刻化しており,輪番

制の計画停電も計画される事態となっている。このことは以前より予想されてお

り,原子力発電所を建設,ほぼ完成したが,アキノ政権時代に稼働を認可せず,

結局,原子力開発をあきらめた経緯がある。原子力に代わって地熱発電所を建設

し,その発電量はアメリカに次いで第2位となった。本校では,日本とはあまり

にも違う選択をしたこの国を重視し,フィリピン共和国・デ・ラ・サール大学附

属高校と新たに国際交流協定を締結し,私たちの交流の意図を理解していただく

予定である。原子力開発よりも輪番停電を選んだ国民,文献では知り得ない高校

生の意識を,REEI によるこの国際交流で是非とも明確にしたい。 ~なぜオーストラリアなのか~

オーストラリアは,鉱物資源が豊富な資源産出国で知られている。なかでも,

ウランが採掘されているのに,原子力発電所が一基もない。電力の大部分は,火

力発電によるもので,石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料は自給している。火

力発電に頼れば,CO2 の排出を減らすことは出来ない。もちろん,再生可能エネ

ルギーへの取組を行っているが,まだ開発途上である。本校では,日本とは大き

く異なる選択をしたこの国をフィリピンに次いで,重視している。そこで,鉱工

業と関連が深い西オーストラリア州のパースのカーティン大学における「資源開

発ビジネス研修」,および周辺の高校との REEI による国際交流を計画した。「資源

開発ビジネス研修」によりマネージメントの観点からこの国のエネルギー問題へ

の考え方を知り,また,現地の高校生との交流により,文献では伺うことの出来

ない国策に対する高校生の意識を,REEI によるこの国際交流で是非とも明確にし

たい。

なお,サウジアラビアについては,在日アラブ人学校と連携するほか,日本を

訪問するサウジアラビア王立学校校長等の訪問にあわせて,REEI によるこの国際

交流を開始する。中国については,東京工業大学が招聘するサマーキャンプに参

加する清華大学学生との交流を計画している。アメリカ・韓国・モンゴルについ

ては,東京工業大学との連携により,交流を開始する。 c 新科目「SGH課題研究」

従来の課題研究では,技術的な問題の解決や改善をテーマとすることが主であ

ったが,ここでは,マネージメントの問題解決手法や定量的分析などを援用し,

その結果,必要とされた改善をテーマとする。すなわち,ものを作ること自体が

− 7 −

目的なのではなく,コストを抑える,あるいは損失のリスクを回避するためには

どうしたらよいか,といった視点を大切にする。また,AGST における REEI を発

展させ,実験・実習によるデータを元に,エネルギー・環境問題等を題材とした

研究を行うことも想定している。その際も,マネージメントに基づく損益や費用

便益分析を念頭に置いた帰結を求める。「SGH課題研究」の例としては,「廃油

を利用した芳香効果を持つ石けんの製作」,「安価に製作できる電子式測定器具」,

「廃車を利用した電気自動車の製作」,「安価な電子部品による追尾式太陽光発電

装置の製作」,「廃材を活用した日本家屋の設計」などが挙げられる。

② 「SGH課題研究」の実施方法・検証評価

第1学年に配当される「グローバル社会と技術」では,オムニバス形式でテーマ

学習が進行するが,その最終回において,問題解決の手順をワークシートにまとめ,

テーマの文脈に沿った解を埋めて提出させる。これは,「SGH課題研究」に向けた

問題解決の第一歩となる。さらに,その内容は,テーマ;スピーチコミュニケーシ

ョンにおいて集約され,提言を英語化し,発表する。これは,「SGH課題研究」の

アブストラクトの英語化につながる。評価は完成した作品,発表の4観点評価,お

よびワークシートやレポートによる総合評価とする。

また,第 2 学年に配当される AGST 内で実施される REEI は,2年生全員に実施

する。AGST は,所属する分野ごとに実施され,オムニバス形式の講義とミニ「S

GH課題研究」から形成される。ただし,ミニ「SGH課題研究」そのものは,1

学期に集中的に行うことが望まれる。それは,国際交流が夏休み期間から始まるた

めである。本研究においては,「SGH課題研究」の成果を国際交流相手国の胸を借

りてコミュニケーションすることが,真の交流となり得ると考えている。なお,仮

説に対する検証は,ポートフォリオ形式の進捗報告書,最後にまとめる報告書およ

び評価テスト,意識調査により行う。また,外部のコンテストや発表会に積極的に

参加し,外部評価を受ける。

他方,本校は工業課程であることから,第3学年に配当される「課題研究」が必

修科目とされている。そこで,「課題研究」のテーマ設定の段階で,30%程度を目

標に,「SGH課題研究」に振り分ける。このとき「SGH課題研究」に所属した生

徒は,従来型のものづくりを目的とする「課題研究」には参加しないため,教育課

程の特例が必要となる。なお,仮説に対する検証は,担当教員による4観点評価,

「課題研究」・「SGH課題研究」発表会での参観者による評価,生徒・教員・保護

者に対して行う意識調査などによって行う。

<各研究開発単位について>

新科目「グローバル社会と技術」 a 研究開発単位の目的、仮説との関係、期待される成果

グローバルな視野で,地球全体が抱えている問題を取り上げ,科学技術に対す

る興味・関心を喚起し,自ら調べ,学ぶ態度を育てることにより,創造的に問題

解決を図ることができるような人材を育てるとともに,科学技術を学ぶもののあ

− 8 −

り方を生徒自身に考えさせ,技術者としての倫理観を涵養する。その際,問題解

決の手順を提案させ,「SGH課題研究」への道筋を学ばせ,発表や討議を英語で

行うことができるように指導する。 b 内容

各テーマは,科目横断的・総合的な学習をはかるものとし,技術者としてある

べき姿を考えさせるものとする。テーマは,メカニズム・電力・都市・環境と人

間といったESDに関するものや,技術者倫理・情報モラル・スピーチコミュニ

ケーション(英語)を予定している。

学習活動は,科学技術に対する興味・関心の喚起,学習の動機付け,問題解決

の手順を提案させ,「SGH課題研究」への道筋を学ばせること,英語による発表

と討議の4つの段階よりなる。科学技術に対する興味・関心の喚起では,科学技

術の現状,最先端の技術等を紹介し,各テーマを理解するために不可欠な基礎的

学習を行う。なお,問題点の指摘にあたっては,技術者のモラル・倫理観につい

ても自ら学ぶことができるよう配慮する。なお,グローバル化に対応するため,

発表や討議に英語による表現を導入し,1学年からの国際交流事業において,成

果を検証する。

c 実施方法

第1学年全員が履修し,担当教員はオムニバス形式で各クラスを巡回する。な

お,1テーマあたりの授業回数は,4回程度を想定している。最先端の技術によ

る興味・関心の喚起のため,東京工業大学の協力により,特別講義を年1回実施

する。また,フィールドワークの必要性から,年1回程度の校外学習を行う。 d 検証評価方法

知識理解そのものが目的ではなく,地球全体が抱えている問題の理解によって,

いま何をすべきかを考えることに力点を置くため,レポート形式のまとめをテー

マごとに行い,評価する。レポートでは,態度変容を問うこととし,意識の変化

やグローバル化への対応についても考慮することから,ワークシート形式を想定

する。

新科目「グローバル社会と技術・応用」

a 研究開発単位の目的、仮説との関係、期待される成果 それぞれの文化に根ざした「SGH課題研究」をまとめ上げ,資源産出国に対

する文化的理解を深めると共に,英語による科学技術コミュニケーションを行い,

国際交流を深めることを目的とする。本科目は,英語によるコミュニケーション

が必須であることから,仮説の「語学力」養成につながる。また,来日する資源

国あるいは他の消費国との間には,文化をベースとした差異があり,コミュニケ

ーションを通じて体験することにより,仮説の「地政学的リスク回避能力」につ

いても,強い印象で身につくことが期待される。このように「SGH課題研究」

をまとめ上げることや,フィリピンやオーストラリアなどの資源産出国,消費国

それぞれの文化に根ざした交流の実践を通して,GTLが身につけるべきスキル

の育成を期する。

− 9 −

b 内容

新科目におけるミニ「SGH課題研究」では,夏休み期間から本格化する国際

交流事業を,GTLが備えるべきスキル(インクルージョン力(多様性受容力),

バックキャスティング力(目標から現在すべきことを考える力),コンセンサスビ

ルディング力(合意形成力))の検証の場と捉えている。それゆえ,国際交流に耐

えうる英語による科学技術コミュニケーションが必須となる。これらの総仕上げ

が,「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称するミニ「SGH

課題研究」である。REEI は,エネルギー問題・環境問題など私たちを取り巻く諸

問題について,マネージメントの問題解決手法や定量的分析などを援用しながら,

自らの考えを提案する探求型学習である。この取組は,単に法律による規制に頼

るのではなく,新たな技術的開発の提案という帰結を目指す。REEI は,提言に留

まらず,国際交流の場においてベースとなる文化の違う高校生に対して主張する

ことを前提としている。たとえば,「砂漠に太陽光発電をつくるべきか?」,「洗濯

機に求められるものは何か?」,「飲む水と食器を洗う水は分けるべきか?」,「砂

漠で飲み水を忘れたら分け合うべきか?」などが挙げられる。本研究開発におけ

る国際交流は,資源産出国等を交流相手と考えており,フィリピン・オーストラ

リアとの交流事業を先行し,サウジアラビア・中国・アメリカ・モンゴルとの交

流は,国際情勢を鑑みながら,徐々に進めていくことを計画している。 c 実施方法

第2学年全員を対象に1~2単位で実施する。通年実施ではなく半期での実施

とし,ミニ「SGH課題研究」を想定して,4時間連続等の授業を実施する。ま

た,国際交流での「SGH課題研究」の成果の利用を前提としているため,前半

(4月~9月)に実施する。担当する教員は,専門分野の教員に加え,人文・社

会系,体育科の教員のティームティーチング(TT)による。なお,プレゼンテー

ションシートの制作・要旨の作成・発表原稿の作成は英語で行う必要性があるこ

とから,外国人講師,東京工業大学の外国人大学院生などとの TT を想定してい

る。 d 検証評価方法

実践の過程において,本校教員による4観点評価を行う。また,実践による成

果は,報告書としてまとめられ,本校教員および東京工業大学教員による評価を

行う。仮説に対する検証については,生徒の目標達成状況によって計ると共に,

意識調査および評価テストによって生徒・教員の態度変容を知る。なお,選抜さ

れた優秀な生徒は,SGH校で行われるコンテストや外部の発表会に積極的に参

加させることで,外部評価を受ける。

新科目「SGH課題研究」 a 研究開発単位の目的、仮説との関係、期待される成果

SGHの総仕上げとして,GTLのスキルを活かし,マネージメントに基づく

損益や費用便益分析の結果,必要な改善を施すことが,「SGH課題研究」の目的

である。その結果,GTLに必要なスキルを再確認しながら,リスク回避の必要

− 10 −

性を認識することが期待できる。また,「SGH課題研究」を進行するにあたり,

チームワークの形成などリーダーとして必要な資質の育成ともなりうる。なお,

「SGH課題研究」の成果を報告する際に,アブストラクトを英語によりまとめ,

将来の学会発表に寄与する。

b 内容

本校が科学技術高校であることを活かし,現在直面する問題を解決しながらも

のづくりや実験を行う。改善が前提としてあり,設計思想が重視されることから,

ものをつくること自体が目的の従来型課題研究とは大きく異なる。また,AGST

における REEI を発展させ,実験・実習によるデータを元に,エネルギー・環境

問題等を題材とした「SGH課題研究」を行うことも想定している。その際も,

マネージメントに基づく損益や費用便益分析を念頭に置いた帰結を求める。より

実用的な題材が求められることになることから,「SGH課題研究」の一例として

「廃油を利用した芳香効果を持つ石けんの製作」,「安価に製作できる電子式測定

器具」,「廃車を利用した電気自動車の製作」,「安価な電子部品による追尾式太陽

光発電装置の製作」,「廃材を活用した日本家屋の設計」などが挙げられる。 c 実施方法

本校は工業課程であることから,第3学年に配当される「課題研究」が必修科

目とされている。従来型のものづくりを目的とする「課題研究」が義務づけられ

ていることから,「課題研究」のテーマ設定の段階で,30%程度を目標に,「S

GH課題研究」に振り分け,教育課程の特例を受ける。なお,時間割上は,すべ

ての生徒が同一時間帯に「課題研究」・「SGH課題研究」のいずれかを行うが,

「SGH課題研究」では,人文・社会系および体育科の教員,および東京工業大

学教員などが指導に加わる。 d 検証評価方法

実践の過程において,本校教員による4観点評価を行う。また,「SGH課題研

究」の成果は,報告書としてまとめられ,本校教員および東京工業大学教員によ

る評価を行う。仮説に対する検証については,担当教員による4観点評価,「課題

研究」・「SGH課題研究」合同発表会での参観者による評価,生徒・教員・保護

者に対して行う意識調査などによって行う。

③ 課題研究に関して必要となる教育課程の特例

a 必要となる教育課程の特例とその適用範囲

工業教科科目「課題研究」に替え,学校設定科目「SGH課題研究」を科学・

技術科第3学年において,希望により振り分けた30%程度の生徒を対象に実施

する。本研究の総仕上げにあたる重要な科目であるが,従来の「課題研究」とは,

課題設定の方法や研究の進め方が大きく異なるため,教育課程の特例が必要であ

る。

新科目「SGH課題研究」

第1 目標

− 11 −

グローバルな視野で,工業に関する課題を設定し,マネージメントにおける

損益,費用便益分析等の検証によって,課題の解決を図り,専門的な知識と技

術の深化,総合化を図るとともに,問題解決の能力や自発的,創造的な学習態

度を育てる。

第2 内容

(1)分析,設計,(2)作品製作,(3)調査,研究,実験 第3 内容の構成及び取扱い

ア グローバルな視野に立ち,生徒の興味・関心,進路希望等に応じて,内容

の(1)はマネージメントの観点から分析を行い,改善の目標を設定すること。

(2)または(3)までの中から個人又はグループで適切な課題を設定させること。

なお,課題は内容の(2)から(3)までの2項目にまたがる課題を設定することが

できること。 イ 「SGH課題研究」の成果について発表をする機会を設けるようにするこ

と。

ウ 国際交流での活用を見据えて,英語による要旨の作成等を行うこと。 b 教育課程の特例に該当しない教育課程の変更

設定しない

(3)課題研究以外の取組

① 課題研究以外の研究開発の内容・実施方法・検証評価

図2は,研究開発全体のあらましを示している。各研究開発単位の取組のうち,

「SGH課題研究」を除く部分について,以下に記す。

<各研究開発単位について> 新科目「グローバル社会と技術」

a 研究開発単位の目的、仮説との関係、期待される成果

グローバルな視野で,地球全体が抱えている問題を取り上げ,科学技術に対す

る興味・関心を喚起し,自ら調べ,学ぶ態度を育てることにより,創造的に問題

解決を図ることができるような人材を育てるとともに,科学技術を学ぶもののあ

り方を生徒自身に考えさせ,技術者としての倫理観を涵養する。その際,問題解

決の手順を提案させ,「SGH課題研究」への道筋を学ばせ,発表や討議を英語で

行うことができるように指導する。

b 内容 各テーマは,科目横断的・総合的な学習をはかるものとし,技術者としてある

べき姿を考えさせるものとする。テーマは,メカニズム・電力・都市・環境と人

間といったESDに関するものや,技術者倫理・情報モラル・スピーチコミュニ

ケーション(英語)を予定している。

学習活動は,科学技術に対する興味・関心の喚起,学習の動機付け,問題解決

学習への導入,英語による発表と討議の4つの段階よりなる。科学技術に対する

興味・関心の喚起では,科学技術の現状,最先端の技術等を紹介し,各テーマを

− 12 −

図2 研究のあらまし

理解するために不可欠な基礎的学習を行う。なお,問題点の指摘にあたっては,

技術者のモラル・倫理観についても自ら学ぶことができるよう配慮する。なお,

グローバル化に対応するため,発表や討議に英語による表現を導入し,1学年か

らの国際交流事業において,成果を検証する。

c 実施方法

第1学年全員が履修し,担当教員はオムニバス形式で各クラスを巡回する。な

お,1テーマあたりの授業回数は,4回程度を想定している。最先端の技術によ

る興味・関心の喚起のため,東京工業大学の協力により,特別講義を年1回実施

する。また,フィールドワークの必要性から,年1回程度の校外学習を行う。 d 検証評価方法

知識理解そのものが目的ではなく,地球全体が抱えている問題の理解によって,

いま何をすべきかを考えることに力点を置くため,レポート形式のまとめをテー

マごとに行い,評価する。レポートでは,態度変容を問うこととし,意識の変化

やグローバル化への対応についても考慮することから,ワークシート形式を想定

する。

新科目「グローバル社会と技術・応用」

a 研究開発単位の目的、仮説との関係、期待される成果

− 13 −

GTL育成のために,高校段階において育むべき資質と能力である「リーダー

が備えるべきスキル」,「地政学的リスク回避能力」,「語学力」の3要素を身につ

けると共に,「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称するミニ

「SGH課題研究」を通じて,GTLに必要なスキルと知識を自覚し,国際交流

によって実践することを目的とする。また,「SGH課題研究」の成果を以て英語

によるコミュニケーションを図ることから,「語学力」の達成を図る。 フィリピンやオーストラリアなどの資源産出国との国際交流の場において,学

習内容の検証を自ら行うことにより,GTLに必要なスキルや知識を自覚するこ

とが出来る。 b 内容

テーマ学習「中東・中央アジア理解」,「イスラーム文化研究」,「英語によるコミ

ュニケーションスキル」をオムニバス形式で実施後,「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称するミニ「SGH課題研究」を実施する。「中

東・中央アジア理解」,「イスラーム文化研究」では,地球全体が抱える様々な問題

を提示し,殊に,エネルギー問題や環境問題について理解を深める。その際,新

たなESD理解を図るため,産油国などの鉱物資源産出国の実情を把握する必要

性から,特に正課の中で学ぶことは少ない中東・中央アジアやイスラーム文化に

ついて,異文化コミュニケーションに必要な知識を地理歴史科の世界史や公民科

の政治・経済,倫理と連携しながら学習する。

また,REEI は,エネルギー問題・環境問題など私たちを取り巻く諸問題につい

て,マネージメントの問題解決手法や定量的分析などを援用しながら,自らの考

えを提案する探求型学習である。この取組は,単に法律による規制に頼るのでは

なく,新たな技術的開発の提案という帰結を目指す。REEI は,提言に留まらず,

国際交流の場においてベースとなる文化の違う高校生に対して主張することを前

提としている。なお,本研究開発における国際交流は,資源産出国等を交流相手

と考えており,フィリピン・オーストラリアとの交流事業を先行し,サウジアラ

ビア・中国・アメリカ・モンゴルとの交流は,国際情勢を鑑みながら,徐々に進

めていくことを計画している。

c 実施方法

東京工業大学リベラルアーツセンターの協力の下で,中東・中央アジア・イス

ラーム文化に関して,GTLを目指す高校生に備えるべき内容を精選する。また,

リベラルアーツセンターに所属する著名な専門家による講演会を実施する。また,

東京工業大学グローバルリーダー教育院・学術国際情報センター・留学生センタ

ーの協力により,人材の派遣を円滑に行い,かつ英語によるコミュニケーション

の鍛錬に協力いただく。また,この分野は,企業などで能力開発などの仕事をし

ている方(メーカー,コンサルティング,あるいは JETRO などの組織)に協力い

ただくことを想定している。

生徒への実施にあたっては,第2学年全員を対象に1~2単位で実施する。通

年実施ではなく半期での実施とし,ミニ「SGH課題研究」を想定して,4時間

連続等の授業を実施する。また,国際交流でのミニ「SGH課題研究」成果の利

− 14 −

用を前提としているため,前半(4月~9月)に実施する。担当する教員は,専

門分野の教員に加え,人文・社会系,体育科の教員のティームティーチング(TT)

による d 検証評価方法

オムニバスの講義形式の講義については,レポートおよび成果物による評価を

行う。ただし,発表を伴うものについては,4観点評価を行う。また,実践の過

程において,本校教員による4観点評価を受ける。また,REEI については,報告

書としてまとめられ,本校教員および東京工業大学教員による評価を受ける。仮

説に対する検証については,生徒の目標達成状況によって計ると共に,意識調査

および評価テストによって生徒・教員の態度変容を知る。なお,選抜された優秀

な生徒は,SGH校で行われるコンテストや外部の発表会に積極的に参加させる

ことで,外部評価を受ける。

② 課題研究以外の取組で必要となる教育課程の特例等

a 必要となる教育課程の特例とその適用範囲 工業教科科目「工業技術基礎」に替え,学校設定科目「科学技術基礎」を科学・

技術科第1学年全クラスを対象に実施する。本科目は,第1期SSHから実践し

ている本校の科学技術教育システムにおいて,第1学年に設置した基礎的な科学

技術の理論と実験実習によって構成される科目であり,本研究開発を実施する上

で必要不可欠であるため設置する。

科学技術基礎

教 科:工 業

科 目 名:「科学技術基礎」 目 標:知識の活性化を狙い,実験・実習の手順を手本として,問題解決に必

要な基本的な技能や既習の知識と現実世界を「結びつける力」を身につ

ける。これらを活用して,自ら課題を設定し,既習の知識と問題解決を

結びつけ,自ら課題を解決する。なお,実験・実習にあたっては,工業

の各分野にわたる基礎的科学技術の理論を確かめながら体験させ,かつ,

各分野における技術と基本的な科学の概念や原理・法則の理解,問題解

決のための手法を獲得させ,科学技術に関する広い視野を養うとともに,

科学技術者としての必要な能力を養う。

履修学年:第1学年 単 位 数:3単位

内 容:(1)力学分野 (2)電気分野 (3)化学分野 (4)製図分野

(5)問題解決学習 各分野においてテーマを設定し,問題解決場面を体験する。

内容の取扱い:

− 15 −

(1) 科目の目標を達成するために,次の点に留意する。日常生活と関係

の深い科学技術に関する実験・実習を通して,科学技術への興味関

心を養うとともに,その理論を理解させる。 (2) 2年次の新科目「グローバル社会と技術・応用」と密接な関連を図

ること。

(3) 指導計画にあたっては,「工業技術基礎」との違いについて留意す

ること。

b 教育課程の特例に該当しない教育課程の変更 「グローバル社会と技術」

教 科:工 業

科 目 名:「グローバル社会と技術」 目 標:グローバルな視野で,地球全体が抱えている問題を取り上げ,科学技

術に対する興味・関心を喚起し,自ら調べ,学ぶ態度を育てることによ

り,創造的に問題解決を図ることができるような人材を育てるとともに,

科学技術を学ぶもののあり方を生徒自身に考えさせ,技術者としての倫

理観を涵養する。その際,問題解決の手順を提案させ,「SGH課題研究」

への道筋を学ばせ,発表や討議を英語で行うことができるように指導す

る。

履修学年:第1学年

単 位 数:1単位 内 容:各テーマは,科目横断的・総合的な学習をはかるものとし,技術者と

してあるべき姿を考えさせるものとする。

(1)メカニズム (2)電力 (3)都市 (4)環境と人間 (5)技術者倫理 (6)情報モラル

(7)スピーチコミュニケーション(英語)

内容の取り扱い: 学習活動は,(1)科学技術に対する興味・関心の喚起,(2)学習の動機

付け,(3)問題解決学習への導入,(4)英語による発表と討議の4つの段

階よりなる。 (1)科学技術に対する興味・関心の喚起

生徒の興味を沸きたてる授業,最先端の科学技術を体験する特別

講義や体験学習によって,生徒の目を科学技術に向けさせるため,

科目を横断したテーマの設定が望まれる。

(2)学習の動機付け

科学技術の現状,最先端の技術等を紹介し,各テーマを理解する

ために不可欠な基礎的学習を行う。

(3)問題解決学習への導入

問題解決学習は,「受ける学習」から「調べる学習」への転換を図

− 16 −

るものだが,そのためには,生徒自身が主体的にテーマを設定し,

取り組むことが望まれる。

(4)グローバル化に対応するため,発表や討議に英語による表現を導入

し,国際交流事業において,成果を検証する。

「グローバル社会と技術・応用」

教 科:工 業

科 目 名:「グローバル社会と技術・応用」

目 標:高校段階において育むべき資質と能力である「リーダーが備えるべき

スキル」,「地政学的リスク回避能力」,「語学力」の3要素を身につける

と共に,「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称する

ミニ「SGH課題研究」を通じて,GTLに必要なスキルと知識を自覚

し,フィリピンやオーストラリアなどの資源産出国との国際交流によっ

て実践することを目的とする。また,REEI の成果を以て英語によるコミ

ュニケーションを図ることから,「語学力」の達成を図る。 履修学年:第2学年

単 位 数:2単位

内 容: (1)リーダーが備えるべきスキル・地政学的リスク回避能力・語学力育

(2)テーマ学習「中東・中央アジア理解」,「イスラーム文化研究」,「英語

によるコミュニケーションスキル」の実施

(3)「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称するミニ

「SGH課題研究」の実施 指導方法:

(1)については,その育成を意識しながら,科目の全般にわたり指導す

る。 (2)については,専門家の意見を取り入れ,グローバルリーダーの資質

を育成する観点から内容を精選すること。また,専門家による特別

講義を企画すること。 (3)については,自ら導き出した成果を,協同学習の中で意見をすりあ

わせ,独善性を排除した知識の再構成をはかるように留意すること。

また,論理的な意見交換,質問とその回答のしかたなどを学ばせ,

討論や意見交換を通じて相互理解をはかること。また,そこから,

新たな発見ができる可能性があることを理解させること。情報通信

ネットワーク環境を活用して,遠隔地との交流を試み,外国語によ

る国際交流も実施する。

数理基礎

教 科:工 業

− 17 −

科 目 名:「数理基礎」

目 標: 理科及び工業教科を理解するために必要な基礎的数学知識を習得させ

ることにより,科学や技術の分野に興味・関心を持たせ,工業教科の学

習をスムーズに進められるようにする。

履修学年:第1学年

単 位 数:2単位 内 容:

(1)式の計算(2)指数の計算(3)有効数字(4)ギリシャ文字と単位

(5)三角比(6)ベクトルの計算(7)常用対数の計算(8)三角関数(9)式とグラフ 内容の取扱い:

(1)科目の目標を達成するために,高等学校の理科及び工業教科で使用す

る数式の基本を学習し,数式の理科及び工業教科への応用を学び,深

化を図る。また,理科や工業等の科学技術の基礎教育において,原理・

法則,未知の現象等に対して数理的な見方,考え方を自ら積極的に行

わせるとともに,実験・実習をより客観的に捉え,数理的処理方法の

要領を自ら会得できるようにする。

(2)指導計画の作成に当たっては,「工業数理基礎」との違いについて留意

する。

先端科学技術入門

教 科:工 業 科 目 名:「先端科学技術入門」

目 標: 工業の各分野における先端科学技術の研究や成果及びその基盤となっ

ている部分に触れさせ,基礎的な学力の必要性や重要性を認識すること

で,理数系科目の基礎力の定着を目指し,自然科学ならびに技術に対す

る意欲と挑戦への動機付けを図る。

履修学年:第2学年 単 位 数:1単位

内 容:

(1)各専門分野における工業技術及び科学技術 (2)各専門分野における先端科学技術の研究内容・研究成果

(3)各専門分野における具体的事例に深く関係する理科・数学

(4)各専門分野に関係する科学技術系英語文献を用いた技術系英語 内容の取扱い:

本科目は,先端の科学技術を研究・開発している大学教員や技術者が

講師として参画し,本校教員と協力して行う科目である。 第2学年以上で,1単位で実施することが望ましい。

(1)科目の目標を達成するために,次の点に留意する。

ア 年間を通して6テーマ程度と設定する。また,1テーマにつき授業

を4回程度実施し,第1,2回目を本校教諭による準備授業,第3

− 18 −

回目を講師による授業,第4回目を本校教諭によるまとめの授業と

なるように配慮する。

科学技術コミュニケーション入門

教 科:工 業

科 目 名:「科学技術コミュニケーション入門」 目 標:科学技術の背景となる理論や法則と科学技術との関連を理解させ,も

のつくりの過程の中で自ら課題を見つけ,主体的に判断・行動し,問題

を解決する資質や能力を育成するとともに,自ら導き出した成果を,協

同学習の中で意見の摺り合わせ,プライオリティを考えながら集団での

意志決定を行わせる。このようにして得られた結論及びその過程を,シ

ナリオのような詳細な計画にまとめられ,聴衆に発信される。これらを

1つの教育システムとした教育ゲームやICTを活用した表現発表会等

を行うことによってコミュニケーション力を引き出し『発信する力』を

育成する。 履修学年:第2学年

単 位 数:2単位

内 容: (1)理論・法則と科学技術との関連

(2)科学技術に関する課題の発見・設定と解決の方法

(3)知見・成果の表現と発信する方法 (4)討論と相互理解

指導方法:

(1)については,背景となる理論や法則と科学技術との関連を理解させる

とき,各専門分野の特色を生かした事象を例として扱うこと。同時に,

理数科科目との関連を理解させること。

(2)については,ものつくりの過程の中で,科学技術に関する事象を深く

観察させ,協同学習を通じて多面的に考察する力を養うこと。

(3)については,自ら導き出した成果を,協同学習の中で意見の摺り合わ

せ,集団での意志決定を行わせる。このようにして得られた結論及び

その過程を,シナリオのような詳細な計画にまとめて,聴衆に発信す

る力を養うこと。

(4)については,論理的な意見交換,質問とその回答のしかたなどを学ば

せ,討論や意見交換を通じて相互理解をはかること。また,そこから,

新たな発見ができる可能性があることを理解させること。情報通信ネ

ットワーク環境を活用して,遠隔地との交流を試み,外国語による国

際交流も実施する。

③ グローバルリーダー育成に関する環境整備,教育課程課外の取組内容・実施方法

− 19 −

東京工業大学グローバルリーダー教育院・学術国際情報センター・留学生センタ

ー・世界文明センター等の協力により,グローバル化への対応に明るい専門家によ

る助言,外国人留学生の派遣など,人材の派遣を円滑に行い,かつ英語によるコミ

ュニケーションの鍛錬に協力いただく。

また,東京工業大学リベラルアーツセンターの協力により,国際情勢の教育に明

るい著名な専門家を招き,講演会の実施,新科目に対する講義内容への助言を戴く。 東京工業大学が実施しているSGU:スーパーグローバル大学創造支援事業に参

加し,共同で事業を進めることにより,相乗効果を狙う。

6 研究開発計画・評価計画

(1)第一年次

新科目「グローバル社会と技術」において,オムニバス形式の実施のための授業編

成,内容の精選,英語化の方策などについて検討しながら,試行を進める。

新科目「グローバル社会と技術・応用」において,授業内容の精選,専門家による

助言等を加味しながら,試行を進める。特に国際交流の相手として,フィリピンとオ

ーストラリアを先行実施する。また,著名な人物による講演や助言等を企画する。

「課題研究」・「SGH課題研究」に対する意識調査を行い,「SGH課題研究」への

振り分け方法や実施方法を検討しながら,「SGH課題研究」を試行する。 国際交流校の拡充を視野に,在日アラブ人学校との交流,東京工業大学が招聘する

イベント等への参加,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等への参加を促し,

交流への第一歩を踏み出す。 新たに開発する教材や指導法などのコンテンツのディジタル化についての計画を検

討するとともに,データの蓄積を行う。

意識調査の内容・方法を検討し,年度内に研究対象外の生徒に意識調査を行う。S

GH研究開発の活動に関する意識調査を,本校教員に対して行う。

第一年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

(2)第二年次

新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」において,第一

年次に作成した教材を用いて,効果の検証をしながら,実施する。試行をもとにして

作成した教材,指導法の再検討を行い,授業形態・指導方法,成績評価の方法などの

確認と改善の検討を行う。また,著名な人物による講演や助言等の実現,企業との連

携を企画する。 「SGH課題研究」について,テーマや運営方法について校内での試行を重ねる。

また,「グローバル社会と技術・応用」において,計画に基づくテーマ学習について趣

旨説明を行い,交流校に打診し,REEI の現地校での実施,実現に向けて検討する。そ

の際,国際交流に関して大学との連携を深める。

国際交流校の拡充を視野に,在日アラブ人学校との交流,東京工業大学が招聘する

イベント等への参加を継続し,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等への参

− 20 −

加を促し,情報収集を行う。サウジアラビアに関しては,王立学校校長等に対する REEI

討議を実現する。

新たに開発した教材や指導法などのコンテンツのディジタル化についての計画を検

討するとともに,データの蓄積を行う。

意識調査の内容・方法を検討し,年度内に研究対象外の生徒に意識調査を行う。S

GH研究開発の活動に関する意識調査を,本校教員に対して行う。 第二年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

(3)第三年次 新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」において,第二

年次に作成した教材と指導法の確認と改善を行いつつ,第2年次全クラスにおいて本

格的な授業実践を開始する。実践を踏まえて,授業形態・指導方法,成績評価の方法

などの確認と改善の検討を行う。また,大学との連携について,第二年次の立案を試

行する。

「グローバル社会と技術・応用」について,REEI のテーマをフィリピン・オースト

ラリア両国の交流校に依頼し,来日時に討議を行う。また,在日アラブ人学校との交

流,東京工業大学が招聘するイベント等への参加,他校との交流プログラムについて,

具体的な行動計画を立案する。その際大学との連携を行い,モンゴルとの交流を具体

的に進展させる。また,著名な人物による講演や助言等の実現,企業との連携を企画

する。なお,サウジアラビアについては,王立学校校長等との交流を継続する。

「SGH課題研究」について,テーマ選定での振り分けを実施し,本格的な実施を

開始する。

国際交流校の拡充を視野に,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等への参

加を促し,情報収集を行う。 新たに開発した教材や指導法などのコンテンツのディジタル化のためのデータ蓄積

を引き続き行いながら,アーカイブズの計画と制作を行い,普及方法の計画を行う。

意識調査の内容・方法を検討し,年度内に研究対象外の生徒に意識調査を行う。S

GH研究開発の活動に関する意識調査を,本校教員に対して行う。

SGH中間報告会を実施し,成果を普及すると共に様々な意見を吸収し,研究にフ

ィードバックする。 第三年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

(4)第四年次 新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」において,授業

実践を行い,2つの科目が結びついているか,検証を開始する。また,引き続き実践

を踏まえた問題点等を検討し,必要に応じて改善を行う。なお,大学との連携を本格

的に行い,問題点を抽出する。

「グローバル社会と技術・応用」について,フィリピン・オーストラリア両国の交

流校にテーマを依頼し,来日時の討議を本格化する。在日アラブ人学校との交流,東

京工業大学が招聘するイベント等への参加の継続し,これをきっかけとして,他校と

− 21 −

の人的交流の実現,またはネットワーク環境による交流の可能性について検討する。

また,著名な人物による講演や助言等の実現,企業との連携を実現する。

「SGH課題研究」について,本格実施を継続し,アブストラクトの英語化など国

際交流への準備を進めるとともに,従来型の「課題研究」との違いについて,検証す

る。

国際交流校の拡充を視野に,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等への参

加を促し,情報収集を行う。

新たに開発したSGH科目等における開発教材や指導法などのコンテンツのディジ

タル化のためのデータ蓄積とアーカイブズの制作を継続しながら,一部制作したアー

カイブズの普及を試行する。

研究対象生徒への意識調査を行う。教員から見た生徒の変容を調査する。理工系大

学に進学した卒業生への追跡調査を行う。教員対象の意識調査を行う。 第四年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

(5)第五年次 新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」において,授業

実践を行い,教材・授業形態・指導方法・成績評価の方法などについて,完成を目指

す。また,大学との新たな連携を完成させる。 「グローバル社会と技術・応用」について,フィリピン・オーストラリア両国の交

流校との本格的国際交流を進め,来日時に討議を行う。他校との人的交流の実現,ま

たはネットワーク環境による交流の具体的な実現を期す。その際大学との連携を行う。

また,著名な人物による講演や助言等,企業との連携を円滑に行う。

国際交流校の拡充を視野に,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等へ参加

する。在日アラブ人学校との交流,東京工業大学が招聘するイベント等への参加をき

っかけとした直接交流を実現する。

新たに開発した教材や指導法などのコンテンツのディジタル化のためのデータ蓄積

とアーカイブズの制作を継続しながら,普及を図る。 大学に進学した卒業生への追跡調査を行う。生徒の変容についてのまとめを行う。

SGH研究開発の活動に関する意識調査を本校教員に対して行い,教員の変容につい

てのまとめを行う。研究全体の評価をまとめる。 「SGH研究開発発表会」を開催し,研究の評価のためのアンケート調査を行う。

第五年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

7 研究開発成果の普及に関する取組

校内における保護者に対する公開授業の実施,中学生を対象とした体験入学等での本

開発科目の試行,SGH研究開発中間報告会および成果報告会での公表に加え,新たに

開発した教材や指導法などをディジタルデータで記録し蓄積する。蓄積したディジタル

データを編集し,一連のアーカイブズとして制作する。制作するアーカイブズは「Tokyo

Tech SGH アーカイブズ」としてICTなどの活用による普及を試みる。

− 22 −

8 研究開発組織の概要(経理等の事務処理体制も含む)

SGHの取組には下の図3に示す研究組織に本校の教員が所属し,教育研究活動を行

う。また,これに伴う事務業務を事務員が全面的に支援する。

(1)各研究会・委員会の役割分担 校内の各研究会・委員会の役割分担は,次の通りである。また,研究開発成果等の

普及や成果等の普及を目的としたアーカイブズの開発も,それぞれの活動を通して継

続的に行う。

図3 「SGH研究開発研究組織図」

◎各研究会・委員会の役割分担 校内の各研究会・委員会の役割分担は,次の通りである。

〇グローバル社会と技術研究会 新科目「グローバル社会と技術」の開発

〇グローバル社会と技術・応用研究会

新科目「グローバル社会と技術・応用」の開発,海外国際交流校との連携,

東京工業大学国際室及び留学生センターとの連携

〇SGH課題研究研究会

「SGH課題研究」の開発,「課題研究」との連携を行う。 〇SGH研究開発委員会

SGH研究開発における全般的な企画立案,渉外活動,業務のとりまとめ

− 23 −

(2)研究担当者(〇印 研究主任)

氏 名 職 名 担当教科(分野)

宮本 文人 校長

仲道 嘉夫 副校長 工業(情報・コンピュータサイエンス分野)

遠藤 信一 主幹教諭 地理歴史・公民

井口実千代 教諭・SGH研究開発委員会幹事 英語

近藤 千香 教諭・SGH研究開発委員会幹事 工業(情報・コンピュータサイエンス分野)

早坂 健 教諭・SGH研究開発委員会幹事 数学

〇山口 正勝 教諭・SGH研究開発委員会幹事 工業(システムデザイン・ロボット分野)

鈴木 卓 教諭・グローバル社会と技術研究会幹事 英語

森安 勝 教諭・グローバル社会と技術・応用研究会幹事 工業(材料科学・環境科学・バイオ技術分野 )

稻用 隆一 教諭・SGH課題研究研究会幹事 工業(立体造形・ディジタルデザイン分野)

草彅 久男 事務長

(3)運営指導委員会

① 組織

氏 名 所 属・職 名 備考(専門分野等)

蟻川 芳子 (一社)日本女子大学教育文化振興桜楓会・理事長 教育 太田 幸一 富士通(株)・顧問 産業界

佐藤 義雄 元文部省・教科調査官 教育行政

辛坊 正記 エリーパワー株式会社・取締役常務執行役員 ビジネスマネジメント

(五十音順) ② 活動計画

1年に2回程度の運営指導委員会を開催し,研究内容に即した授業の参観,研究

内容に関する討議等を行い,指導と助言を受ける。

(4)学内指導者

① 担当者

氏 名 所 属・職 名 備考(専門分野等)

大竹 尚登 東京工業大学・教授 研究推進担当副学長 大即 信明 東京工業大学・教授 土木工学

佐藤 勲 東京工業大学・教授 国際企画担当副学長

髙田 潤一 東京工業大学・教授 留学生教育

松田 稔樹 東京工業大学・准教授 教育工学

水本 哲弥 東京工業大学・教授 教育運営担当副学長

(五十音順)

② 活動計画

1年に2回程度の報告会を開催し,研究内容に即した授業の参観,研究内容に関

する討議等を行い,指導と助言を受ける。

− 25 −

C-2 スーパーグローバルハイスクール研究開発の実施内容

Ⅰ グローバル社会と技術研究会の活動報告 1 概要

本科目は,科学技術系人材育成カリキュラムを履修している本校生徒が,現在の地球

全体,あるいは社会全体が抱えている諸問題を理解し,課題設定できるための知識とス

キルを身につけ,問題解決に向けて踏み出す第一歩とするために設置されている。

2 経緯 本科目の実施によって,”グローバルな視野で,地球全体が抱えている解決すべき問題

(テーマ)を理解し,科学技術による問題解決が求められる現状を理解する。さらなる

科学技術の発達が必要であることを認識すれば,自ら学ぶ意欲,思考力,判断力,表現

力などの育成が図られると考えた。

また,上記に加えて,グローバルリーダーとして必要な資質や科学技術を学ぶもののあ

り方を生徒自身に考えさせるため,技術の専門家としての情報モラル,技術者倫理を学

び,倫理観を涵養する。その際,問題解決の枠組みに沿った解決方法を身につけること

で,「SGH課題研究」における問題解決のスキルを獲得するとともに,自らの主張を

英語に変換し,より深い理解を促すこととする。 各テーマは,科目横断的・総合的な学習をはかるものとし,技術者としてあるべき姿

を考えさせるものとする。テーマは,メカニズム・電力・都市・環境と人間といったE

SDに関するものや,技術者倫理・情報モラルといった技術の専門家としてのモラル教

育や自らの主張を英語に変換し,理解を深めるスピーチコミュニケーション(英語)を

予定している。

3 内容

(1) 総論

学習活動は,①解決すべきテーマの理解,②問題解決の手順を習得,③具体的な解

決への提案,④英語による発表と討議の4つの段階よりなる。①では,ESD に関する

問題とそれに立ち向かう人類の英知を紹介し,各テーマを理解するために不可欠な基

礎的学習を行う。②では問題解決の手順を学ぶが,技術の専門家としての情報モラル・

技術者倫理を扱う授業の中での問題解決をこれにあてる。このようなモラルの問題は,

自分自身が学んだ内容に基づく意思決定が,現実の場面においても出来なければ意味

がないので,態度変容を目論んだ,疑似体験をベースとした教材を開発する。なお,

グローバル化に対応するため,発表や討議に英語による表現を導入し,1学年からの

国際交流事業において,成果を検証する。

(2) 実施方法 第1学年全員が履修し,担当教員はオムニバス形式で各クラスを巡回する。なお,

1テーマあたりの授業回数は,4回程度を想定している。最先端の技術による興味・

関心の喚起のため,東京工業大学の協力により,特別講義を年1回実施する。また,

フィールドワークの必要性から,年1回程度の校外学習を行う。

− 26 −

(3) 検証評価方法

知識理解そのものが目的ではなく,地球全体が抱えている問題の理解によって,い

ま何をすべきかを考えることに力点を置くため,レポート形式のまとめをテーマごと

に行い,評価する。レポートでは,態度変容を問うこととし,意識の変化やグローバ

ル化への対応についても考慮する。

(4) 各テーマの内容

第1章 電力 テーマの概要

代表的な二次エネルギーである電気エネルギー(電力)を題材として,その生産・

貯蔵・輸送・消費を概観することを通し,世界規模で発生しているさまざまな問題,

特にここではエネルギーに関する問題・環境に関する問題について理解し判断する

力を養う。 SGH の目的との関係

深刻化するエネルギー問題・環境問題に対処するためにはグローバルな連携・協

業が不可欠である。また,地域や国によって異なる事情を踏まえた対応を行うため

には問題についての広範な理解が必要である。このことについて電気エネルギーを

題材にして考えさせた。 授業の概略

第1時 瞬時に輸送が可能で,さまざまなエネルギー形態に効率よく変換が可能な

反面,貯蔵については不利な面があるといった電気エネルギーの特徴を理

解する。また,主要な発電方式の一つである水力発電のしくみを,エネル

ギー貯蔵を目的とした揚水式の水力発電をも含めて学ぶ。

第2時 枯渇性エネルギー資源の世界的な分布,生産・消費の状況について学ぶ。

また,現在中心的な発電方式となっている火力発電および原子力発電のし

くみを理解する。

第3時 枯渇性資源の保全や環境保護の観点から研究・導入が進んでいる再生可能

エネルギーの特徴および新エネルギーに関する政策とそれを用いた発電

のしくみについて学ぶ。

第4時 エネルギーに関する近年の日本と世界における動向について理解する。全

4 回の授業を踏まえて各自がテーマを設定し,それぞれの観点からの調査

に基づきレポートを作成する。 まとめ

平成 27 年度は生徒に提供する参考資料の内容・出典が限定的なものにとどまった。

今後は資料を多様な観点・情報源からのものに広げ、より多面的に問題を考えるこ

とができるようにしたい。 第2章 技術者倫理

テーマの概要

− 27 −

図 1-1 技術者倫理授業計画

日本は世界最高水準の技術をめざし,たゆまぬ努力と工夫を続けてきた。しかし,

利潤追求のみを先行し,安全に対する努力を怠れば,たとえ最高水準の技術を掲げ

ても,早晩消費者に見放される。ところが,技術は高度化・専門化し,直接消費者

がチェックすることが困難となった。それゆえ,モラルある技術者によって,企業

内のみならず利害関係者全体に,安全性確保の情報が行き渡らなければ,消費者の

合意は得られない。そこで本章では,グローバル社会に生きる技術者が備えるべき

資質という視点から「技術者倫理」を捉え直し,技術教育の導入として提案する。 SGH の目的との関係

生徒は将来企業内技術者となる可能性が高いことから,企業内技術者の在り方を

学ぶ必要がある。技術と社会との関係が変化した今日にあって,日本の技術が今後

も社会に必要とされ続けるためには,技術者はどうあるべきなのか。グローバルリ

ーダーには答えが必要である。 授業の概略

授業は,50 分授業4回という時間的制約が

あるため,状況理解させた上での判断演習と

なるため,図 1 のような授業計画とした。第

1回では,会社の立場,すなわち,社長・営

業部長・技術者・消費者からの苦情担当の立場

を体験させる ICT 教材「企業理解体験ゲーム」

を行う。第2回では,洗濯機の設計を題材と

して,技術的な見方・考え方や専門知識の重

要性を認識させる「技術的見方・考え方獲得

ゲーム」を行う。第3回では,リコール隠し

事件をモチーフとした「科学技術コミュニケ

ーション場面での判断演習ゲーム」を,第 4 回では,総合的な演習として,シティ

コープタワーの設計変更をモチーフとした「ジレンマ阻止ゲーム」を行う。そして,

全授業終了1週間後に,題材を個人に自由選択させたワークシートにおいて「会社

に勤める技術者のあるべき姿,技術者はどう意志決定するべきなのか」などを自由

記述させた。 まとめ

本テーマでは,ICT 教材の実施により,技術的知識を重視することに着目し,消

費者 vs 企業とは捉えず,可能な限り事前に検証し,事故を起こさないようにすべき

とする人数が大幅に増えた。この結果は,正しい知識による意思決定が望ましい結

果をもたらせば,これによって困難な問題でも解決できるという自己効力感(self- efficacy)が得られた結果である。また,技術的な見方・考え方と技術的知識が,技

術者としての意思決定には必要であることを自覚出来たものと考えている。これら

によって,専門知識を学ぶことへのモチベーションを高め,技術教育への導入教材

となっていると考える。

Practice ; Work sheet

企業理解体験ゲーム

技術的な見方・考え方獲得ゲーム

科学技術コミュニケーション場面で

の判断演習ゲーム

ジレンマ阻止ゲーム

− 28 −

図 1-2 授業の様子(情報モラル)

第3章 情報モラル テーマの概要

情報社会を生きぬくための見方・考え方を学び,何かに直面した際の思考力・判

断力を身につける。さらに自分でさまざまな課題を解決できる問題解決力を身につ

けるとともに、社会の一員として合意形成を図る力を身につける。 SGH の目的との関係

グローバルな視点を養うためには、社会を俯瞰してみる見方・考え方が重要であ

り、相互理解,他者への思いやりとともに、社会の一員として問題解決・合意形成

をする力を涵養する必要がある。これを,情報モラルを題材として考え,体験させ

た。 授業の概略

第1時 情報モラルの考え方を理解する。

第2時 問題解決に必要な見方・考え方を学ぶ。2 人一組となって,ロールプレー

を行い,問題解決のためのシミュレーションを行った。

第3時 シミュレーション&ゲーミング教材を活用して問題解決の難しさを体験す

る。一人一台のパソコンを用い,各自で課題解決に取り組んだ。 第 4 時 情報社会での問題点を踏まえ,ネットを活用する上での合意形成を図るた

めにルールを考える。4 人一グループでの協同作業となった。 まとめ

平成 27 年度は、クラス単位で合意形成を図るためのルール作りを実践した。今後

は、学校全体、あるいはグローバル社会全体でどのような合意形成が望ましいかと

いうことについて検討を進めていきたい。

第4章 都市 テーマの概要

都市は世界中に存在し,現代の人間活動の中心となる場所であるが,様々な問題

を抱えている。そんな都市を題材とし,その基盤となる技術・都市計画の目的と手

法・文化的歴史的背景などを概観することを通し,環境問題や世界の多様性につい

て理解し問題の解決方法を創造する力を養う。 SGH の目的との関係

第4時 ルール作りの様子

− 29 −

図 1-3 授業で使用したスライド

都市問題を解決し,「持続可能な都市」を実現させるためには,技術的アプロー

チだけではなく,一方ではグローバルな社会・経済問題等を,一方ではローカルな

風土や歴史・文化的な特色等を理解する必要がある。そうした都市を取り巻く多様

な要素を理解し,問題解決の手法を考えていくことで,自ら学ぶための広い視野を

獲得する。 授業の概略

第1時 「都市」とは何か,それを支える技術とは何かなど,現代の都市の成り立ち

を理解する。

第2時 自然環境や社会・経済など,都市を外部から規定する要素について学ぶ。 第3時 現代の都市計画の手法について,歴史的経緯や実際の例を通して理解する。

第4時 現代の都市に存在する様々な問題について,現状と原因及び実例を学び,

解決方法について技術的アプローチを中心に考える。都市に関する課題を設

定し,調査を行ってレポートにまとめる。

まとめ

平成 27 年度は各国の事例を紹介する形で資料を作成・提示したが,やや総花的か

つ題材の中には日常から乖離したものも少なくなく,生徒の興味・関心を喚起する

には不十分な面もあった。今後は身近な関心をグローバルな視点へとつなげられる

よう,提示する資料や提示方法を改善していきたい。

第5章 環境と人間 テーマの概要

科学技術の習得を志す 1 年生に共通するテーマとして,環境に関して以下の点に

ついて提示していく。

(ア) 環境に関する多くの情報について,科学的な視点で捉えることが大切である

こと。

(イ)新しいエネルギーの開発と同時に,作ったエネルギーをどのようなシステム

を構築し,どのように使うかが大切であること。また,リサイクルだけでな

く広い視点で物質の循環を捉え,資源の有効利用について考えることが大切

あること。

(ウ)「持続可能な社会の構築」を目指した科学技術であること。 SGH の目的との関係

− 30 −

環境問題は多くの異論が提示されている。新聞やテレビで放送されることが、必

ずしも正しいとは限らない。そこで,環境問題に対する基本的な視点を提示し,理

解させるとともに習得させることを目標とする。環境問題をグローバルに捉えそれ

を活用するためには,この基本的なスタンスは,必要不可欠である。 授業の概略

第1時 「科学技術」と「環境」の関係について生徒個々に図を書かせる。いくつ

かの事例を紹介し,互いの相関に気づかせ,その関係を理解させる。また,

「温暖化」をテーマに,「チームマイナス 6%」の問題点を提起する。

第2時 「京都議定書」,「チームマイナス 6%」,「IPCC AR4」から現状を理解

させ,COP21(2015)で採択された「パリ協定」について理解を深める。

第3時 「ペットボトルから見た環境」という自作の教材を用い,資源の有効利用

という視点からリサイクルだけでなく「物質循環」,LCA について理解を深

める。

第4時 エネルギーについて,「新しいエネルギー」や「再生可能なエネルギー」

について具体例を挙げさせ,化石燃料に変わるエネルギーとして活用するに

は何が必要かを考えさせる。小型分散化電源とそのシステムの構築,エネル

ギーの有効利用法としてコジェネレーションや地域冷暖房を紹介する。 まとめ

平均的な高校生と比較すれば,環境への興味・関心が強く,環境に対するリテラ

シーも高い生徒が多い。しかし,多くの生徒は教科書やニュースで得た断片的な知

識にとどまっており,「環境」と「科学技術」の関わりを正しく理解できていると

はいえない。環境に対する基本的なスタンス”sustainability”を提示することで,今

後の専門の学習とともに環境問題に対する「気づき」を育成できた。

第6章 スピーチコミュニケーション テーマの概要

グローバルな環境では,人々はそれぞれ違う母語,文化,価値観を持っている。

生徒たちが将来そのような環境下で人をまとめたり,プロジェクトを進めたりして

いくためには,今日国際共通言語として使われている英語を用いて,相手に自分の

考えをわかりやすく伝え,理解・納得してもらうことが求められる。そこで本章で

は,わかりやすく相手に伝えることの大切さとそのスキルを学ぶことを目的に,外

国人教員と日本人教員(英語科)とのティームティーチングによるスピーチ指導を

行った。 授業の概略

第1時 The Physical Message (Posture, Eye Contact)

第2時 The Physical Message (Gestures, Voice Inflection) 第3時 Speech Structure (Greeting, Introduction, Body, Conclusion)

第4時 Speech Giving

− 31 −

図 1-4 授業の様子(スピーチコミュニケーション)

スピーチのテーマは本章以前で扱った内容から自分が関心のあるものを1つ取り

上げ,授業の最終回でスピーチ発表を行う。第1時,第2時の授業では,非言語を

取り上げ,スピーチでの姿勢,アイコンタクト,ジェスチャー,声の抑揚を中心に

実際に体を動かしながら学んだ。第3時では,スピーチの構成を確認したあと,実

際に海外の高校生が国際会議で行ったスピーチ(動画)を分析した。第4時では,

一人2分の持ち時間が与えられ,全員がスピーチ発表を行った。 すべてが初めての試みで試行錯誤であったが,生徒たちが意欲的に授業に臨んで

いたのが印象的であった。また,発表では個人差そこあったが,自分の決めたテー

マで意見を伝えることができた。一方で,全4回という時間的制限の中で生徒自身

のスピーチ原稿・練習にまで時間を確保することが困難であった。今後の授業改善

への課題としたい。

英語による説明を聞く生徒たち アイコンタクトの練習 スピーチの姿勢の練習

国際会議のスピーチから学ぶ スピーチ発表 スピーチ優秀者発表

第7章 メカニズム テーマの概要

今年度からスタートした,新しいテーマである。各種の熱機関を取り上げ,その

工夫されたメカニズムを紹介した。熱機関には,今日の科学技術の最先端が生んだ,

常識を遥かに超えた機能が備っているが,これらのすばらしいメカニズムだけでは

なく,これまでの熱機関の開発過程における,エネルギー問題や環境問題との関わ

り合いや,技術者の苦悩と問題に立ち向かう姿勢も含めて,技術者はどうあるべき

なのかを考えさせる内容も盛り込んだ。 20世紀も終わりに近づくにつれ,エネルギーの有効利用と環境の保全という立

場から,熱機関も大きく見直されなければならなくなった。燃料として使う天然資

源は,無限に存在するものではない。従って,このような天然資源を有効に活用す

る事の出来る熱機関に注目させ,考えさせる事は,言うまでもなく重要な課題であ

− 32 −

る。ここでは,この学習を通して,資源を利用する技術と生活環境の調和を如何に

上手くはかるかについて考えさせている。エネルギー問題,環境問題はもとより,

国際関係,日本の将来に関する問題等,この章においては,SGH の目的に十分応え

る事の出来る内容となっている。 授業の概略

第1時 自動車の歴史と役割 自動車の世紀を迎えた人類の期待と苦悩,そして抱える諸問題と技術者の開発

力を紹介し,考えさせた。 第2時 外燃機関のメカニズム

省エネや環境問題対策で近年注目を浴びる,スターリングエンジンを紹介した。

このエンジンが世に登場したのは産業革命時であるが,なぜ近年再注目を浴びる

事になったのか,このエンジンが辿った数奇な運命的な話題を通して,この章と

SGH の目的内容を考えさせるきっかけを作った。 第3時 内燃機関のメカニズムとこれからの課題

4サイクルエンジン,2サイクルエンジン,ディーゼルエンジンそしてロータ

リーエンジンおよび新種・新型エンジンを紹介した。 第4時 最先端のメカニズムと熱機関の将来

各自動車メーカーが取り組んでいる近未来カーの紹介と最新メカニズムを紹介

し,これからの我々との関わり合いと目指すべきものを考えさせた。

熱機関が生活や産業の中で果たしている役割と将来性が理解出来たか,各種熱機関

の構成と動作原理が理解出来たか,動力を伝達するしくみが理解出来たか,および熱

機関の発達と生活環境の保全について,各種問題等に関心を持ち,理解したかという

点では,この授業で十分達成する事が出来たと考える。エンジンの模型や機構模型を

駆使して理解させ,課題について考えさせる手法を取ったが,あらたに興味深い映像

やデータ,各自動車メーカー等の社員研修用の教材を入手し,さらに効果を上げたい

と考えている。内容的には,専門高校の機械系で学ぶ自動車工学の要素も強いので,

さらに熱機関に興味の無かった生徒達にも大いに刺激を与えるきっかけとなる授業展

開も考えて行きたい。

(5) 外国人教員との取り組み

「グローバル社会と技術」の特徴的な授業の一つとして,第6章スピーチコミュニケ

ーションにおける外国人教員と日本人教員(英語科)とのティームティーチングが挙げ

られる。前述したように,第6章ではわかりやすく相手に伝えることの大切さとそのス

キルを学ぶことを目的に,生徒全員にスピーチ指導を行った。 役割分担

外国人教員を有効的に活用するという視点から役割分担を決めた。授業進行役に外

国人教員の Patricia McGahan 先生,生徒のサポート役に日本人教員2名という形で授

業を進めた。授業では英語で指示・説明を行った。全員が必ず理解しなければいけな

い連絡に限り英語科教員が日本語を使った。当初,生徒たちがどれほど英語の指示や

− 33 −

説明を理解できるのか懸念されたが,いざ授業が始まってみると生徒たちはネイティ

ブの先生との授業への期待と興奮からか一生懸命理解しようという姿勢が見られた。

わからないことがあっても自ら英語で質問する生徒が見受けられ,サポート役の日本

人教員側が心配するほど慌てることはなかった。

最終回のスピーチ発表の際は,クラスを前後2グループに分けてそれぞれ日本人教

員が入り評価した。McGahan 先生には広く両グループを見てもらい,最終的に教員全

員で相談し,生徒たちのパフォーマンスを評価した。また,生徒たちへのよい動機付

けを目的に,特に優秀なスピーチをした生徒を選び,McGahan 先生よりコメントをも

らった。 成果と今後の課題

他の章では生徒たちが提出するレポートを評価しているのに対し,本章では第4回

のスピーチ発表を評価している。4回完結という限られた時間の中で少しでも効率的

にスピーチの準備が進むよう事前にワークシートに取り組ませ,スピーチに必要な構

成要素を考えさせた。このおかげで,今まで完成させたワークシートの中から1つテ

ーマを選び,それに沿って原稿を作成するだけでよかったため,本章に入ってからの

スピーチ準備がスムーズであったように思われる。

当初,高校1年生の語彙力・英文法知識で自分の意見をどこまで伝えることができ

るのか懸念されたが,実際に生徒たちのスピーチを見てみると高校1年生でもそれが

できることがわかった。ただし,テーマごとに扱う専門用語によっては語彙レベルが

どうしても高くなり,発表者が専門用語のみ日本語の意味をはさまないと聴衆が理解

できないという状況があった。また,4回完結の授業の中でスピーチに必要なスキル

を紹介するだけで3回分の授業を必要とし,スピーチ原稿を見直す時間を授業内でと

ることが困難であった。実際に,専門用語をどう発音するのか調べきれていない生徒

や,英語として不自然な表現が目立つ生徒も見うけられた。スピーチ原稿を英語らし

くかつわかりやすいものにしていくためにどのようにすればよいのか今後工夫の余地

がある。

(6) 東京工業大学教員による特別講義

科学技術への興味・関心を喚起させ,社会と技術の関わりを考えさせることを目的で

として,東工大の先生方を講師として,平成 27 年 6 月 26 日(金)14:15~15:15「特

別講義」が行われた。それぞれの講義のテーマ,講義者,講義内容は以下の通りである(敬

称略)。

「高分子材料の構造と機能」有機・高分子物質専攻 野島 修一

プラスチック,ゴム,繊維などの高分子材料は,身の回りのあらゆる所で使用され

ています。最近では,その内部に適切な構造を作リ出して,有益な機能を発揮できる

“機能性高分子材料”もたくさんあります。どのようにして材料内部に構造を作るの

でしょうか?この構造を人間が一つひとつ作っていたのでは大変ですから,高分子が

勝手に(自発的に)作るようにさせる必要があります。高分子材料中に自発的に構造

を作らせる具体的方法(技術)を紹介します。

− 34 −

図 1-5 特別講義の様子

「日本の技術力が劣化すると何が起きるか考える」通信情報工学専攻 松本 隆太郎

外国が買ってくれる商品またはサービスがあれば,その対価として外貨が手に入る。

手に入れた外貨を両替すれば,異常な円安を引き起こさずにエネルギーと食糧の輸入

を行え,輸入品の価格だけが異常に高騰することは無い。外国が買ってくれる商品・

サービスを作る方法の主要なものの一つに,他国に比べて優れた技術力を日本の中に

保持することがある。日本の技術的優位性が外国から見て魅力ある製品に繋がった例

と繋がらなかった例を紹介し,技術が日本の生き残りに果たす役割を考える。

「宇宙に行きたいね」機械宇宙システム専攻 小田 光茂

宇宙に行けるのは選ばれた宇宙飛行士だけだと思われているかも知れませんが,今

でも数十億円という大金を払えば宇宙に行くことは出来ます。でも,世界一周旅行に

行く位のお金で宇宙に行けるようになるのでしょうか?多分,今の中学生が元気で働

いている間(20 年後か 30 年後)には行けるでしょう。講演では,旅行として宇宙に

行けるようになるにはどのようなこと(技術等)が必要かをお話しします。

「磁気浮上と磁気支持」 電気電子工学専攻 千葉 明

山梨のリニア実験線,名古屋のリニモ,上海のマグレブなどは磁気浮上して走る列

車だ。また,高純度の液体を搬送するポンプ,埋込型心臓補助ポンプなども非接触で

磁気力により支持され,回転する。21世紀では人々のために磁気浮上,磁気支持技

術が実用化しつつある。本講義で,いくつかの磁気浮上の教材を体験しつつ,非接触

磁気浮上技術とそれを取り巻くテクノロジーについて学ぼう。

「豪雨災害」土木工学専攻 鼎 信次郎

建築物は,しばしば洪水や土砂災害に巻き込まれます。言うまでもなく,洪水や土

砂災害は大雨,豪雨によるものです。たとえば昨年は広島で 70 人近くが亡くなった豪

雨・土砂災害がありました。毎年,世界中で様々な洪

水や土砂災害があり,建築物が巻き込まれます。しか

し,そういったことについては土木工学だけの話題の

ようで,他の分野にはあまり伝わっていないようです。

当日は,いくつかの例を皆さんに見てもらい,何かを

少しでも考えてもらいたいと思っています。それぞれ

の講義において,活発な質問が多数出され,生徒達も

有意義な時間を過ごす事ができた。

(7) 校外研修

日時:7月16日(木) 対象:第1学年全員

場所:横浜みなとみらい地区ほか

新科目「グローバル社会と技術」の授業の一環として校外研修を実施した。 「グローバル社会と技術」は,本年度より始まったSGH研究開発事業の要となる科

目であり,グローバルリーダー育成の第一歩となる科目である。

本科目では,自分が疑問に思ったことを課題設定の形で定義し,それをどのように解

決していくのか,その手法を考えることに重きを置いている。そのためのフィールドワ

− 35 −

図 1-6 三菱みなとみらい技術館にて 図 1-7 集合場所:荒天の山下公園

図 1-8 講演する玉田教授

ークを奨励しているが,正課の授業時間内では,なかなか実践できない。そこで,この

夏休み前の補講期間に,横浜みなとみらい地区~関内・山下公園地域をグループで巡り,

課題解決のためのフィールドワーク実習を行った。幸いこの地区には, 多くの技術館・

博物館・開港に関する港湾施設等があり,フィールドワークに適している。

生徒達は,地球環境の保全やエネルギー問題に関するテーマを事前に考え,フィール

ドワークによる調査を経て,レポートを提出した。レポートでは,8割以上の生徒が,

エネルギー問題または環境問題に関心を持ち,三菱みなとみらい技術館等の施設を利用

して,自ら設定した課題に対する解決策の提案を試みていた。その他,食の問題に興味

を持つ生徒(カップヌードルミュージアム)や技術そのものの進歩に興味を持つ生徒も

少なくなかった。SGH事業の一環として校外研修が行われているが,課題解決のため

のフィールドワーク研修と鱈得た場合には,幅広い課題設定の容認が求められると考え,

多様なテーマに是非を付けることを避けた。 当日は残念ながら,台風が接近し,断続的に強い雨が降るため,予定を1時間繰り上

げて終了となったが,この研修をきっかけに,本校の生徒が問題解決の手段を学んでく

れることを期待してやまない。

(8) グローバルリーダー育成講演会

平成27年度は,グローバルリーダー講演会を4回実施したが,そのうち第4回を1

年生を対象としたグローバルリーダー育成講演会とし,情報モラルをテーマとした講演

会を実施した。

第4回グローバルリーダー育成講演会

日時:2月19日(金) 15:10~16:00

対象:1年生全員 演題:「グローバルリーダーが備えるべき情報モラル」

講師:江戸川大学教授 玉田和恵 先生

今般,情報モラル教育のエキスパートとして,文部

科学省配布のパンフレット,私立大学連合の情報モラル関連事業,Yahoo!ほか様々なプ

ロバイダー関連の情報モラル事業などに参画し,ご活躍の玉田和恵江戸川大学教授を講

師としてお迎えした。 情報機器は日夜進化し,高校生がよく使うアプリなども変化が著しい。しかしながら,

情報モラルが目指すところに変わりはなく,常に自分自身でのチェックが必要である。

玉田教授は,3種の知識,すなわち,道徳的規範知識・情報技術に関する知識・合理的判

− 36 −

断に関する知識,によって判断がなされるという。たとえ,道徳的規範知識が,大人の

レベルであっても,情報技術特有の知識が欠落していれば,正しい判断は出来ないとい

う。それゆえ,情報技術について,正しい知識を学ぶ必要があるとする。 玉田教授の気さくな語りかけに,生徒は積極的に関わり,知識を吸収しようとする意

欲が見られた。講演会終了後に,簡単なアンケートを行った。結果は表 1-1 の通りであ

る。生徒の関心も高まり,専門家集団のグローバルリーダーとして,より厳しい情報モ

ラルが求められることに気づかされた講演会であり,有意義な学習となった。

表 1-1 講演会アンケート結果

4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及

研究1年次として,新規授業内容の構成,東京工業大学教員による特別講義,外部か

ら招聘した講演会,校外研修と多彩な授業展開となり,1単位科目とは思えない充実し

た内容となった。しかしながら,効果があるとされる教育方法に可能な限りチャレンジ

している嫌いはぬぐえない。

教室での授業展開において目指す生徒像は,「グローバルな視野で,地球全体が抱え

ている解決すべき問題(テーマ)を理解し,科学技術による問題解決が求められる現状

を理解」でき,「自ら学ぶ意欲,思考力,判断力,表現力などの育成が図」られた人材

である。最終的には,SGH課題研究にどのように反映されていくか,学年進行に沿っ

て追跡調査していくしかないが,今度どのテーマがどのような力の育成に寄与していく

か,分析する必要がある。その上で,本校で実施されている普通教科・工業教科との連携

を計画する必要がある。

他方,「技術の専門家としての情報モラル,技術者倫理を学び,倫理観を涵養」され

た人材については,独自のICT教材を開発しながら,実施を進めており,評価方法を

質問 1 2 3 4 5 Q1. 内容が理解できましたか いいえ ←――――――→ はい

2 人 1 人 14 人 65 人 108 人 1% 1% 7% 34% 57%

Q2. 興味が沸きましたか いいえ ←――――――→ はい

7 人 10 人 41 人 80 人 52 人

4% 5% 22% 42% 27% Q3. 印象に残ったことがありましたか いいえ ←――――――→ はい

10 人 5 人 43 人 75 人 57 人

5% 3% 23% 39% 30% Q4. 自分の進路を考える上で参考にな

ったと思いましたか いいえ ←――――――→ はい 17 人 20 人 49 人 56 人 45 人

9% 11% 26% 29% 24% Q5. 「グローバルテクニカルリーダー育

成」の授業を理解するのにプラスとなり

ましたか

いいえ ←――――――→ はい

6 人 9 人 44 人 65 人 57 人 3% 5% 23% 34% 30%

− 37 −

図 1-9 本科目と他科目との関係

含めて今後の課題としたい。また,これらのICT教材は,問題解決の枠組みに沿って

考える必要があることから,「問題解決の枠組みに沿った解決方法を身につけ」た人材

育成に一助している。また,外国人講師によるスピーチコミュニケーションの実施によ

り,自らの主張を英語に変換する試みを始めている。このことは,自分の考えの中に不

明確な部分があることを意識する機会ともなり,外国に対する発信というだけではなく,

問題解決場面においても役立っていることは言うまでもない。 本科目は,研究1年次より本格実施に踏みきったが,盛りだくさんの学習活動が,ど

のような力の育成と関連しているのか,効果的に力を引き出すには何をすべきか,考え

るべき課題は多い。一部のテーマについては,力との関係が明確であるが,すべてにお

いてクリアであるとは言いがたい。次年度以降,力との関連を明確にし,特別講義・講演

会や校外学習をさらに有効に考えていく必要がある。

− 39 −

Ⅱ グローバル社会と技術・応用研究会の活動報告

1 概要

本科目は,第3学年で実施する「SGH課題研究」をまとめ上げ,資源産出国に対す

る文化的理解を深めるとともに,英語による科学技術コミュニケーションを行い,国際

交流を深めることを目的として,設置している。

2 経緯

本科目では,グローバルテクニカルリーダー(GTL)育成のために,高校段階にお

いて育むべき資質と能力である「リーダーが備えるべきスキル」,「地政学的リスク回

避能力」,「語学力」の3要素を身につけると共に,「Response to Energy and Environmental

Issues(REEI)」と称するミニ「SGH課題研究」を通じて,GTLに必要なスキルと知

識を自覚し,国際交流によって実践することを目的としている。また,「SGH課題研

究」の成果を以て英語によるコミュニケーションを図ることから,「語学力」の育成も

行う。

国際交流の場として,フィリピンやオーストラリアなどの資源産出国との交流を通し

て,学習内容の検証を自ら行うことによって,GTLに必要なスキルや知識を自覚する

ことを目指している。

3 内容

(1) 総論および全体の計画 科学技術の素養を持つ人材が,グローバルリーダーとして活躍するための要となる科

目が「グローバル社会と技術・応用(AGST)」であり,1年次の「グローバル社会と

技術(GST)」の続編をなす。1年次の GST では,課題設定に必要な知識やスキルを学

び,問題解決の第一歩としたが,本科目では,さらに進んで,GTLに必要な知識やス

キルを習得する必要があることから,3種類のテーマ学習・各分野による「SGH課題

研究への道」・グローバルリーダー育成講演会等の講演会・学校行事による異文化理解等

の促進・国際交流事業(海外派遣・調査研修)を実践するといった多彩な授業形態を持つ。

表 2-1 は,本科目において育成したい能力と各授業・学校行事との関係を示している。

それぞれの能力を身につけるため,授業・講演会等が用意されている。 授業の展開では,第1に,テーマ学習を行い,「中東・中央アジア理解」,「イスラーム

文化研究」,「英語によるコミュニケーションスキル」をオムニバス形式で実施した。これ

により,地政学的リスク回避のための知識と語学力の鍛錬というGTLに必要な新たな

ファクタを加え,得られた知見と既有の知識の再構築を促した。

第2に,これらの総仕上げとなるものが,「Response to Energy and Environmental Issues

(REEI)」と称するミニ「SGH課題研究」である。REEI は,エネルギー問題・環境問

題など私たちを取り巻く諸問題について,マネージメントの問題解決手法や定量的分析

などを援用しながら,自らの考えを提案する探求型学習である。しかしながら,まずは

自分たちが学びの中で蓄積してきた知見を用いて,いかにして課題研究における問題解

決を図るのか,社会のニーズとして掲げられるエネルギー問題や環境問題の一助となる

− 40 −

ものつくりや実験をどのように展開していくのか,まずは手順を学ぶことから始めなけ

ればならない。本研究ではそれを「SGH課題研究への道」と呼ぶ。今年度は,従来の

「課題研究」が既に進行していたことから,『「課題研究」への道』として行った。 第3に,グローバルリーダー育成講演会の実施である。本講演会うち,本科目の対象

としたものは3回行われた。これらの講演会は,全員に対して行われ,東京工業大学 理

事・副学長 丸山俊夫教授,駐日アメリカ大使館外交官の Dana Barnhill 氏,東京工業大学

教授で,マス=コミ等での活躍がめざましい池上彰教授を招くことが出来た。また,希

望者による講演会やアメリカ合衆国ケネディ駐日大使の講演などの東京工業大学との連

携事業などがこれに該当し,地政学的リスク回避のための知識と語学力の鍛錬がなされ

た。

第4に,学校行事の参加による異文化理解の促進を図った。詳細は後述するが,例と

して,わが国の文化を知る「歌舞伎鑑賞教室」,修学旅行等における体験学習,来日し

本校に1週間程度留まった交換留学生と交流を図る文化祭などがこれにあたり,GTL

の備えるべき能力のインクルージョン力(多様性受容)を養う。

第5に,国際交流事業を行った。国際交流事業には,本校生徒の派遣と協定校交換留

学生の受入があり,それぞれが調査研修としての役割を負っている。なお,本研究開発

における国際交流は,資源産出国等を交流相手と考えており,フィリピン・オーストラ

リアとの交流事業を先行し,サウジアラビア・中国・アメリカ・モンゴルとの交流は,

国際情勢を鑑みながら,徐々に進めていくことを計画している。なお,サウジアラビア

に関しては,先方が受け入れやすいゲーム型教材を開発したので,報告する。

1)リーダーとしてのスキル 2)地政学的

リ ス ク 回 避

3)英語コミュ

ニケーション

①インクルージョ

ン力

②バック

キャスティング力

③コンセンサス

ビルデ ィ ン グ

国際交流事業 ◎ ○ ○ ◎ 学校行事 ○ △ 集

地 歴 科 教

員 ○ ◎

外 国 人 講

師 ○ ◎

課題研究への道 ◎ ◎ △ GTL 育成講演会 ◎ ◎ ○

表 2-1 育成したい能力と授業・学校行事との関係

◎能力向上に期待できる ○能力向上に寄与 △関係あり ・集中講義は,地歴科教員による「中東・中央アジア理解」・「イスラーム文化研究」,外国人講師によ

る「Global Awareness」を補講期間に実施予定。・SGH課題研究への道は,各専門分野ごとに実施予定 ・GTL:Global Technical Leader

− 41 −

(2) テーマ学習の取り組み

表 2-2 補講期間での集中講義

1 学期補講期間 2 学期補講期間 3 学期補講期間 計

中東・中央アジア理解 2 0 0 2 イスラーム文化研究 0 2 0 2 Global Awareness 4 2 6 12

計 6 4 6 16

①「中東・中央アジア理解」

1) 実施施内容

グローバルテクニカルリーダーに必要な知識として,エネルギー・環境問題と豊

富な天然資源を有する地域理解促すために,サウジアラビアと中央アジアについて,

1 時間ずつの授業を行った。世界でも最大級の産油国であるサウジアラビアについ

て,特有の政治体制と産業構造に関しての授業を行った。一方で中央アジアについ

ては,政治的影響力の大きさからウズベキスタン,天然資源を多く保有しているこ

とからトルクメニスタンの 2 ヵ国を取り上げた。

さらに授業後,授業内容の理解を深めるために,レポートを課題として課した。

興味を持ったテーマを 3 つの中から 1 つ選択した上で,それについて調べ,題名と

参考文献を付けた上で,レポート作成するように指導した。テーマは以下の通りで

ある。

レポートのテーマ

(ア) ウジアラビアの歴史・産業・政治制度について

(イ) 中央アジアのいずれかの歴史・産業・政治制度について

(ウ) 天然資源をめぐる問題

レポートの感想・考察に関しては様々なものがあった。そのうち,テーマの (ア)

と(イ)を選んだ生徒に関しては,「中東・中央アジアの国々についてはよく知らなか

ったが,エネルギーを供給する国であり,体制・文化の違いを知った上で,良好な

関係を保たなければならない。」「(複雑な政治的・地理的背景を知って)天然資

源の安定的な確保のためにも,これらの地域について,もっと知るべきだ。」とい

った感想が多く見受けられた。他にも授業を通じて,「今まで関心のなかった中東・

中央アジア地域について調べることができて,新鮮だった。」「エネルギー供給国

として日本にとって欠かせない国でありながら,知らないことが多かった。」など

の感想があった。

また,別の観点から,「(サウジアラビアの政治制度などを勉強して)宗教が王

族による暴走を止める場合もあることを知った。」などの感想もあった。シリアや

ヨーロッパをはじめとする世界でテロ行為が行われている中,イスラーム教(又は

イスラーム教徒)とテロ行為を安易に結びつけてしまいがちである。こうした中で,

イスラーム教の果たしている社会的役割に着目できたことは,思い込みや偏見を排

− 42 −

除した上で異文化を多面的に捉えることにつながったと思われる。これにより,グ

ローバルテクニカルリーダーにとって必要な物事を多面的に見ることの重要性を認

識する機会にもなった。

(ウ)のテーマを選択した生徒からは,エネルギー問題では天然資源の枯渇に言及した

上で,それら天然資源が枯渇する前に,代替エネルギーの開発・導入に早期に本格

的に着手すべきだなどの意見が多く見られた。

2) 今後の課題

今回は調べ学習のような形でレポートを提出させたものの,生徒によってレポー

トの質・量ともに大きな片寄りがみられた。今後は,授業内容に添った形でレポー

ト課題を課せば,レポート作成の助けとなると同時に,授業内容の定着をさらに促

すと思われる。

②「イスラーム文化研究」

イスラーム教に関して,日本人はとかく誤解が多い。誤解したままでは,真の国際

交流・異文化理解など出来るはずがない。本テーマ学習は,誤謬や先入観を排除し,い

かにイスラーム教徒との交流をなすべきかを考えさせることに意義がある。

文部科学省(2010)は,新しい高等学校学習指導要領解説・地理歴史編において,

「世界史A」の指導に当たっては,現代社会が直面する課題について,歴史的推移や

相互の因果関係などを多面的・多角的にとらえさせて考察させることを求めている。学

校教育において,歴史を公正に扱うことは当然であるが,歴史研究の段階で公正性が

失われた場合もある。たとえば,インド人は,歴史を書き残さない。これらの国々の

歴史は,植民地時代に支配者となったイギリスなどのヨーロッパ諸国によって,散見

する文献から歴史が組み立てられたという経緯がある。その成果を日本が無批判に取

り入れてきたため,ヨーロッパ中心の歴史観を鵜呑みにしている場合がある。この傾

向は,キリスト教国ではない地域に多く見られる。

イスラーム史における「聖戦」の扱いもその一つである。「片手に剣,片手にコーラ

ン」という言葉で知られるが,これは史実ではなく,教科書にもこの言葉を載せている

ものはない。現実の歴史の中では,現地司令官が熱心なイスラーム教徒であった場合,

改宗を迫ることが,一部ではあったかも知れないが,多くの場合は,人頭税を払うこ

とで従来の信仰を認めていた。すなわち,コーランを片手に征服地に改宗を迫ること

などなかった。このような誤解が生ずる背景には,キリスト教徒とイスラーム教徒が,

長きにわたって聖地の領有を巡り戦ってきたという歴史的経緯がある。それゆえ,ヨ

ーロッパのキリスト教徒側の立場から歪められた歴史が説かれることがあった。「片

手に…」という言葉は,まことしやかであり,イスラーム教徒に対する先入観となり

やすい。このような先入観を払拭させるためには,ただ単に知識を与えるだけでは修

正困難であり,征服者/被征服者の立場とそれらの相互作用を体験的に理解させるこ

とが必要である。

今年度の展開では,主に宗教の内容と生活習慣について学んだ。

・ムハンマドとその生涯 ・聖遷と領域の拡大

− 43 −

・スンナ派とシーア派の分裂

・六信五行

・礼拝の励行と食事の制限(ハラール(حالل Halāl)) すべてが終了したところで,ワークシートをレポートとして課した。この中で,講

義者が注目したのは,レポートの最後に課した「イスラーム教国と取引をしたり交流

をしたりすることは少なくありません。石油の多くはサウジアラビアなどのイスラー

ム国から輸入しているのが現状です。イスラーム教徒と円滑に取引をするためには何

が必要でしょうか?」という問である。これに対して多くの生徒が,イスラーム文化

を理解し,平和的な交流を進めるという優等生の回答をしている。 今年度の実践では,上記の項目を実践するのみであったが,リアルな疑似体験をさ

せ,優等生的な回答をする余裕がないようなゲーム型教材を体験させることを計画し

ている。講義者は「世界史相互作用体験ゲーム」を開発,実践しているが,そのイス

ラーム教版計画している。

1) 教材の概要

本教材は,2 人1組での使用を前提にしている。1名がイスラーム教徒側の軍事

司令官となり意志決定を行う。その結果に応じた選択肢が用意されており,もう1

名は征服される側の軍事司令官として意志決定を行う。そうすると,その結果とし

て起こりうる事態がフィードバックされ,次の設問に進む。すなわち,他人の意志

決定により,お互いの進路が決定され,双方の意志決定の結果が,結論としてフィ

ードバックされる。これによって相互の因果関係の結果,起こりうる状況をシミュ

レーションする。図 2-1 は,イスラーム征服ゲームの全体の構成を示している。第

1問について,流れを詳細に示しているが,第2問,第3問についても同様である。

図 2-1 イスラーム征服ゲームの構成

− 44 −

なお,それぞれの設問の終わりには,「もう一度やり直す」ためのボタンを配置す

る。 このゲームでは,第1問で図1の①にあたる時期の聖戦について問い,第2問で

②にあたる税制問題を問い,第3問で③にあたるインドのアクバル帝時代の政策を

問うている。全体として,力づくで改宗を迫ったり破壊だけを行ったりする方法で

は異教徒の地域の支配が困難であることを理解させようとしている。まずは自分が

折れた上で相手の出方を見ることや,双方が歩み寄ることで恒久的な平和が実現で

きることを示唆している。

③ 「Global Awareness」 Global Awareness Conference on Advanced Global Society & Technology (AGST)

グローバル社会と技術・応用

with a Focus on Discussing & Presenting leading to Analyzing Final Outcomes

through Fact Finding Missions & Treasure Hunting

while Developing Information Literacy, Research, Critical Thinking, & Leadership Skills

7 月 10 日(金 ) 8:40-9:30 + 9:30-10:30 P. McGahan, C. Kondo, M. Iguchi, & Manjiri

(3-401+) A 組+B 組前半 (応用科学 Applied Chem + 情報 システム Info Systems)

7 月 10 日(金)10:40-11:30 + 11:30-12:30 P. McGahan, C. Kondo, M. Iguchi, & Manjiri

B 組後半+C 組 (情報システム Info Systems + 機械システム Mechanical Systems

7 月 13 日 (月 ) 8:40-9:30 + 9:30-10:30 P. McGahan, C. Kondo, & M. Iguchi

D 組+E 組(電気電子 Electrical & Electronic Engineering + 建築デザイン Architectural Design)

7 月 13 日 (月 ) 10:40-11:30 + 11:30-12:30 P. McGahan, C. Kondo, & M. Iguchi

A 組+B 組前半

7 月 14 日 (火 ) 10:40-11:30 + 11:40-12:30 P. McGahan, C. Kondo, M. Iguchi, & Manjiri

B 組後半+C 組

7 月 14 日 (火 ) 13:15-14:05 + 14:15-15:05 P. McGahan, C. Kondo, M. Iguchi, & Manjiri

D 組+E 組

Agenda

1 学期 Class 1: Welcome & Keynote Session

+ Class 2: TTHS Community Awareness - student & teacher interviews, 3-401

primary sources, [Research skills - qualitative & quantitative research skills - interviews,

surveying, questionnaires]

1 学期 (Classes 3 & 4),2 学期 (Class 5 & 6), 3 学期 (Class 7)

[Leadership skills - inclusion, backcasting, consensus; critical thinking skills; analytical skills;

research skills; & discussion skills]

1 学期 (Class 1), 2 学期 (Class 5), 3 学期 (Classes 8, 9 & 10)

[Communication - discussion & presentation skills; research; critical thinking; analytical &

leadership skills]

− 45 −

* Themes & - Key Components 論題と主要成分

* Think Globally, Act Locally グローバルに考え現地 (と地元と地域的 )に行動する

* Global Awareness of Our World 私たちの世界のグローバル意識を持つ

* International Relations 国際関係

* Cultural & Intercultural Studies 文化と異文化研究

* Local & Global Collaborations & Cooperation

現地 (と地元と地域的 )とグローバル合作と協力

* International organizations of all kinds すべての種類の国際機関

* Models of Local & Global Science & Technological Projects

現地とグローバルの代表科学と技術プロジェクト

* World Heritage Stewardship

世界遺産スチュワートシップ . 「地球の宝を明日へとどける」 (UNESCO

* Global Awareness of Issues 世界の問題を意識する

- Global Health Issues グローバル健康問題

- Global Environmental Issues 地球環境問題

* Global Problem Solving 地球規模の問題解決

- International Conflict Resolution 国際紛争解決

- International Cooperation 国際協力

* Ask for all students cooperation in moving efficiently and punctually while coming & going to

the three conference locations.

* Please remember to bring all your conference materials (the SGH-GP Passport application

draft, interview questionnaire worksheet, assigned focus & independent focus summary

worksheets + pencils & pens), with you as you move between the three locations and

participate in activities and multi-tasking.

* Good Luck!! We sure are looking forward to your sharing of your fact finding, treasure

hunting, ideas and thoughts, + your final outcomes!!

(3) SGH課題研究への道

今年度は,従来の「課題研究」として既にテーマ設定が行われており,研究活動も始

まっていた。このような状況の中,SGH課題研究として研究に取り組むための準備と

いう位置づけで,現在の「課題研究」における各分野のテーマ設定の仕方などを再確認

し,「SGH課題研究」としてのテーマ設定方法等の参考にすることとした。

なお,分野によっては,SGH課題研究として,今年度実施したテーマが記述されて

いるが,「課題研究」として設定されたテーマの中から,SGH課題研究として実施が

可能と思われるテーマをSGH課題研究として認定し,試行という形で実践した。

① 応用化学分野 1) 準備

「課題研究」を行うためには,先ずテーマの設定が重要である。テーマ設定の

水準が低すぎても,逆に高すぎても限られた時間内で行われる「課題研究」は上

手くいかない。どんな動機で,何を目的として研究を行うのかを明確にする必要

− 46 −

がある。そのためには,自らの仮説を整理してみるとよい。次に,課題に関わる

先行研究の調査である。日本語の文献だけでなく,大学の電子ジャーナルを活用

して海外のいろいろな論文を調査することも必要である。この事前調査をしっか

り行うことにより,研究の背景が明確になり,研究の独創性が明確になる。

これらのことを効果的に行うには,「専門英語」と研究論文の構成・データの

まとめ方などについて,事前に学習しておく必要がある。 2) 必要な素養

課題に対する探究心,粘り強さ,客観的で多面的な視点などが生徒に求められ

る資質である。これらの資質は一度で身につくものではなく,繰り返し行うこと

で次第に身についてゆく。

3) 活動

今年度は得られた実験結果がどのようにまとめられているかを「気体の法則」

「アセチルサリチル酸の合成」「原子吸光分析」「アルコール発酵によるエタノ

ールの生産」「化学的酸素要求量」「飲料水中のカフェインの定量」の 8 テーマ

の既習の実験について,その結果・考察をもとに生徒の発表とディスカッションを

行った。生徒自身がより自主的に活動できるよう取り扱う内容に配慮し,生徒間

のコミュニケーションを活発にする上では,発表側のプレゼンテーション技術だ

けでなく,ディスカッションでの質問の質への考慮を促した(図 2-2)。

図 2-2 発表とディスカッションの様子 図 2-3 「課題研究」希望調査用紙

また,来年度の「課題研究」の希望調査は 12 月 14 日(月)に実施し(図 2),それ

らを調整して 1 月 15 日(金)に相談窓口開設し,生徒へ周知した。今後,個々の相

談を受けながら,課題を設定してゆく予定である。 ② 情報システム分野

1) 概要

「課題研究」を始めるにあたり,生徒各自が研究したいテーマや研究のやり方

をイメージしておく必要がある。本活動では,過去の「課題研究」の要旨や報告

書を参考に調べ学習を行うことで,自分たちが研究したいテーマの方向性を決め

る足がかりとする。 2) 内容

− 47 −

図 2-4 研究テーマ希望調査用紙

学校サーバー上にある「課題研究」一覧より,「課題研究」タイトルを見て興味

を持ったテーマを5つ選ぶ。5つの中からより興味を持ったテーマを3つに絞り,

研究概要が記載されている要旨を読む。研究概要をもとに自分が最も興味を持っ

たテーマ1つを決め,そのテーマの研究報告書を読み,研究の理論や使用されて

いる技術をワークシートにまとめる。

ワークシートに記載している内容は以下の通りである。 (ア)テーマ一覧を見て,現時点で自分が興味のあるものと近そうなものを5つ選

び記入する。

(イ)5つの中からより興味の高いものを3つ選び,マーク欄に○印をつける。 (ウ)3つのテーマについて要旨を読み,テーマを1つ選びマーク欄に◎印をつけ

る。

(エ) (ウ)で選んだテーマの報告書を読み,原理,理論,技術などをまとめる。 3) 評価と今後の活動

調べ学習の際の取り組み姿勢や,提出されたワークシートを元に,自分が研究

したいテーマの方向性をイメージできているか総合的に判断し,評価する。今後

の活動としては,類似したテーマごとにグループを作り,ディスカッションを行

う。

③ 機械システム分野 以下の 1),2)は,現在の「課題研究」を進めていくために実施している内容であ

る。「SGH課題研究」として行うに当たっては,以下を参考にして進めていく予

定である。 1) 「課題研究」を始めるにあたって

第1年次からの共通専門科目,第2年次からの所属分野専門科目における学習

内容を踏まえ,日常の生活から得られる情報や各自の興味・関心から,研究テー

マを設定する上での方向性を定めておくことが必要である。

2) テーマ設定

本分野では,社会に目を向けることを重視している。その中で,機械系分野に

おいて問題となっている事項を見いだし,その中から,課題として設定できるこ

とを抽出して,テーマ設定するよう

指導している。これらを前提に,研

究テーマ希望調査を行う。研究テー

マは,図 2-4 に示す調査用紙にて,

2テーマ(第2希望まで)提出する

ことができる。提出された希望する

研究テーマについて,第1希望テー

マを優先に教員側で検討を行い,妥

当と思われるテーマについては,研

究テーマとして認定する。検討が必

要と思われるテーマについては,生

徒と協議を行いながら,テーマ設定

− 48 −

を決めていく。テーマ内容によっては,大きな変更もありうる。

3) 「SGH課題研究」に向けて

本研究開発において,「SGH課題研究」では,社会のニーズとして掲げられ

るエネルギー問題や環境問題を取り扱うことが必要である。これらの問題を調査

し,その上で,興味・関心を持った調査内容から,研究課題として可能な問題を

抽出することを必要条件として,研究テーマを設定していくことを目指していき

たい。

④ 電気電子分野

1) 「課題研究」への準備

3年次科目の「課題研究」を実施するにあたり,生徒には調査・分析・問題解

決のスキルが要求される。また,本分野の「課題研究」における「ものづくり」

には,技術力だけはなく,利用者と同じ目線から物事を考える力が必要であり,

専門的な知識がない利用者に対して,説得・納得のゆく説明が不可欠となる。本

分野では,生徒によるプレゼンテーションを実施し,質疑応答などコミュニケー

ションを繰り返し行うことで,利用者と同じ目線で考える力の育成に努めている。

また,「課題研究」のテーマ設定時には,動画を中心とした新しい技法を用いる

プレゼンテーションを行い,聴衆への理解をより深めている。「課題研究」では,

専門的なスキルとは別に,このような相手を説得し納得させる交渉術が必要とな

る。本分野では2年次SSH学校設定科目「科学技術コミュニケーション入門」

で,エネルギーや環境問題を題材に,調べ学習及びプレゼンテーション等も行っ

ている。

2) 「課題研究」を取り組むために要求されるスキル

グローバル的な育成には,広い視野を持つことが重要であり,また異文化を知

るためには,語学力や積極性も必要であると考えられる。今年度は,10 月 6 日(火)

にフィリピン共和国デ・ラ・サール大学附属高校との国際交流が実施され,「東京

のおすすめ観光地」や「お薦めの発電方式」をテーマに,本校生徒との英語によ

るコミュニケーションが行われた。この中で,英語によるプレゼンテーションの

作成・発表・質疑応答だけでなく,同じ題材をテーマにすることで,異文化の考

えに触れる機会があった。慣れない発表に試行錯誤をしていたが,生徒はこの経

験を通じ,SGH型による課題研究を想定した活動を体感することができた。

3) 「課題研究」に向かわせるための活動

電気電子分野では例年,「課題研究」のテーマ設定は自ら企画・立案する。教

員と各グループの生徒がプレゼンテーションおよび質疑応答という形で,面接を

し,テーマの認定を行う。この面接を実施することで,テーマの趣旨および方向

性が適正であるか判断をする。これにより,複数の視点から事前に考えられる問

題点を洗い出し,完成への到達が難しい課題において,リスク回避を図っている。

来年度実施予定のテーマは以下の 6 つである。

「課題研究」:①視覚補助システムの作製 ② 電子オルガンの製作

③ 2 モード電動台車の製作

④ 災害救助支援ラジコンカーの製作

− 49 −

「SGH型課題研究」: ⑤ 起立補助椅子の製作 ⑥ 事故防止発光傘の製作

4) 次年度への課題

今年度のSGH型テーマ認定時において,ユニバーサル的なデザインが中心とな

り,グローバルの扱いが混同するなど,多くの懸念があった。グローバル化に向けて,

国の特質に合わせた,機能やコスト,材質にまで考えが及ぶよう,今後多くの異文化

交流が必要であると思われる。

図 2-5 フィリピンとの国際交流 図 2-6 番組制作の様子

⑤ 建築デザイン分野

1) 「課題研究」に取組むための準備

建築デザイン分野は,他の4分野と異なり,一人もしくは少人数で「課題研究」

に取組むことが大きな特色である。そのため,各個人の興味関心をダイレクトに

研究テーマに反映することができる。その反面,「研究」としての体をなすために

は,各個人が責任能力および研究を遂行する当事者意識をしっかりと持ち,毎回

の授業に取組むことが最低条件である。当分野では「意匠」,「計画」,「歴史」,「構

造」,「材料」,「施工」といった大きな枠組みの中から,自分の興味関心のあるテ

ーマを見つけ出し,各指導教員のもとで研究を行っている。そのテーマ選出が研

究を行ううえでの第一関門となる訳であるが,生徒達は以下のような方法でそれ

ぞれのテーマを選出している。

ⅰ) 既往の研究を参考にする。

ⅱ) パソコンを使用して情報収集を行う。

ⅲ) フィールドワーク,施設見学等を行う。

ⅳ) 設計競技等,高等教育機関が設定した課題を選出する。

いずれの場合も,級友や担当教員と何度も議論を繰返しながら,互いが納得し

たうえでのテーマ選出をするようにしている。

2) 「課題研究」に取組むために要求されるスキル

「課題研究」を取りまとめるためには, Word や Excel,Power Point,一太郎等

によるパソコンでの作業が必須である。そのため,生徒は各人で事前に操作方法

を学習しておく必要がある。また,近年では Illustrator,Vectorworks,Photoshop

等の CAD および画像編集ソフトも導入しており,パソコンを用いた編集能力が

求められるようになってきている。特に,設計競技への参加を「課題研究」のテ

ーマに選出する生徒は,上記の CAD および画像編集ソフトの習得は必須であり,

− 50 −

その習熟度が最終成果品の出来映えにも直結する重要なスキルとなってきている。

3) 「課題研究」に取組むための事前活動

各教員が「意匠」,「計画」,「歴史」,「構造」,「材料」,「施工」の,どの枠組み

を専門的に指導するかを事前に生徒にしっかりと説明することで,生徒が研究へ

の取組み方に対する理解を深めるようにした。また,それとともに研究内容の希

望調査を行い,生徒達の興味・関心の分布を総合的に集計した。 授業においては,上述のコンピューターソフトの一部を使用して,プレゼンテ

ーション資料の作成を行うなどの技術的な演習を行った。さらに,希望者を対象

に(例年,指導に多くの時間を費やしている)設計競技の演習指導を行っている。

(4) 学校行事

SGH事業にかかる学校行事等を,表 2-3 に示す。

表 2-3 SGH事業 授業と学校行事

時期 行事名 時間数

4/14(火) サウジアラビアからの訪問団受け入れ 4

6/19(金) 歌舞伎鑑賞教室 2

7/7(火) ガイダンス 1

9/2(水) サマーレクチャー 6

10/3(土) 文化祭におけるフィリピン留学生との交流 3

10/9(火) グローバルリーダー育成講演会(第 1 回) 2

10/9(火) グローバルリーダー育成講演会(第 2 回) 1

11/5(木) サマーレクチャーレポート発表会 1

1/14(木) グローバルリーダー育成講演会(希望者対象)

1/19(火) グローバルリーダー育成講演会(第 3 回) 2

1/20(水)~22(金) 修学旅行

平和学習 2

体験学習,博物館等 6

合計 30 その他,分野による見学会:「研究室見学・発電所見学」など,東工大との連携

事業:「Science & Engineering, Communication Project (SEC)」,「女子のための

著名人講演会」等への参加を関連行事として含む

① サウジアラビアからの訪問団受け入れ

日時:4 月 14 日(金) 対象:2 学年全員 場所:各分野実習室等

サウジアラビアの学校の校長先生 8 名が学校訪問に来られ,2 学年の科学技術の

授業,本校の施設の見学をされた。実験の見学では,生徒へ英語で質問される場面

もあり,生徒は緊張しながらも一所懸命応対していた。

② 歌舞伎鑑賞教室 日時:6 月 19 日(金) 対象:2 学年全員 於国立劇場

− 51 −

演目:「壺坂霊験記」主演:片岡考太郎,板東亀三郎他

「科学技術系 GTL」の素養として自国の伝統・文化への理解をさらなる促す。

③ ガイダンス 日時:7 月 7 日(火) 対象:2 学年全員 場所:体育館

本新科目について,生徒へ説明を行った。

④ サマーレクチャー 日時:9 月 2 日(水) 対象:2 学年全員

場所:東京工業大学大岡山キャンパス

午前中は全員がデジタル多目的ホールに集合し,「コンピュータはことばを理解

できるか?」というテーマで東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻の徳

永健伸教授の講演していただいた。午後は,研究室見学を行った。数理・計算科学

専攻,有機・高分子専攻,物質科学専攻,化学工学専攻,機械物理工学専攻,機械

制御システム専攻,情報環境学専攻,通信情報工学専攻,電子物理工学専攻,原子

核工学専攻,建築学専攻,土木工学専攻の研究室が本校生徒を受け入れて下さった。

生徒にとっては,少人数のグループで見学,質問などにも対応してもらえる貴重な

経験となった。また,昼休みには,大学生協の食堂を利用したり,百年記念館,も

のつくり教育研究支援センターの見学をしたり,キャンパスライフを楽しむ一面も

あった。 ⑤ 文化祭におけるフィリピン留学生との交流

日時:10 月 3 日(土) 対象:2 学年希望者 場所:校内

フィリピン共和国より留学生 6 名が来日しており,文化祭にてフィリピンフェア

を開催した。フィリピンブースでは,ポスターを用いたフィリピンの紹介,実際に

菓子を配付し食文化の紹介を行った。また,バンブーダンスを披露した。

多くの本校生徒が文化交流を行ったが,2 学年希望者 6 名は,ブースの設営から関

わり,校内における彼らの活動を積極的にサポートした。

⑥ サマーレクチャー発表会

日時:11 月 5 日(木) 対象:2 学年全員 場所:体育館 サマーレクチャー実施後,全員がレポートを提出した。その後,各分野より代表

生徒が 5 名選出され,東京工業大学より来賓を招いて,レポート発表会が行われた。

生徒投票により最優秀賞,優秀賞の表彰が行われた。 ⑦ 修学旅行

日時:1 月 20 日(水)から 22 日(金) 対象者:2 学年全員 引率教員:11 名

行先:沖縄本島

平和学習,博物館等の見学,体験学習を行った。主なスケジュールは以下の通り

である。

1 日目午後:南部戦跡(ひめゆりの塔,ひめゆり平和祈念資料館,沖縄県平和祈

念資料館,平和の礎)にて平和学習

2 日目午前:ニライカナイ・やまだ体験広場にて体験学習

2 日目午後:美ら海水族館見学

3 日目午前:首里城公園(守礼門・正殿等)見学

− 52 −

⑧ Science & Engineering, Communication Project (SEC)への参加

日時:7 月 31 日(金)から 8 月 7 日(金)まで 計 10 時間

対象者:希望者 14 名 引率教員:2 名 場所:東京工業大学大岡山キャンパス 東京工業大学では,「Science and Engineering, Communication Project (SECP)」と

いう留学生と東工大生が共に文化背景や社会の違い・問題解決へのアプローチの多

様性を学ぶ授業が展開されている。今回のテーマは,高齢化社会,環境問題,食糧

問題,ジェンダー(男女の差異)の4つであった。本校生徒はテーマごとに 2,3 名

ずつ各グループに加わり,ディスカッションに参加した。その後学生から英語によ

るプレゼンテーションの指導を受け,これを実践した。 ⑨ 女子のための著名人講演会 パネルディスカッションへの参加

日時:7 月 13 日(月) 対象者:希望者 20 名 引率教員:2 名

場所:東京工業大学大岡山キャンパス タイトル:「Women in STEM―理工系分野での女性の活躍をめざして」

ゲスト:キャロライン・ケネディ駐日米国大使

東京工業大学にてパネルディスカションが開催された。STEM とは Science,Technology,Engineering,Mathematics を指している。理工系分野へ進んだ女子学生

や女性研究者がパネラーとして登場し,直面する問題に焦点をあて議論した。冒頭

でケネディ駐日米国大使より女子学生が理工系分野で活躍することを期待するとの

エールをいただいた。

⑩ SGH 研究開発事業における講演会

日時:1 月 14 日(木)対象者:生徒(希望者)101 名 保護者(希望書)15 名 場所:大講義室

タイトル:“Anthropology and Konbini? – Studying Culture through the Convenience

Store –”

講師:Gavin H. Whitelaw 先生(国際基督教大学上級准教授) 外国人の視点から,コンビニエンスストアを日本の文化の一部として取り上げ,

文化人類学の見知から講演して頂いた。この講演会を通じて,グローバルテクニカ

ルリーダーに必要な素養を身につける機会を得た。

(5) グローバルリーダー育成講演会 ① グローバルリーダー育成講演会 第 1 回

日時:10 月 6 日(火) 対象者:2 学年全員 場所:大講義室

タイトル:「グローバルに活躍できる人材」

講師:東京工業大学 理事・副学長(教育・国際担当) 丸山 俊夫

グローバルリーダー育成講演会のキックオフ講演という位置づけであった。日本

をグローバルな社会からとらえ,グローバル人材を「相手に対する思いやり」を持

つ人というキーワードで解説された。「英語が苦手な人,嫌いな人は?」という発

問に本校では多くの生徒が手を挙げる。グローバル人材の素養についても触れなが

ら,英語学習も頑張らずに気楽に楽しむことが長続きのコツということであった。

表 2-4 にアンケート結果を示す。

− 53 −

表 2-4 アンケート結果

はじめてのグローバルリーダー育成講演会であったため,多くの生徒がまだその

開催の意義を認識していないようであった。

② グローバルリーダー育成講演会 第 2 回

日時:10 月 6 日(火) 対象者:2 学年全員 場所:大講義室

タイトル:“Study in the U.S.& Change Your Life!”

講師:駐日アメリカ合衆国大使館 米外交官 Dana Barnhill 氏

アメリカの各地域の特徴や学生生活が具体的に紹介された。留学することによっ

て多様な考え方や価値観にさらされ,異なる背景を持つ人々と接する経験が持て,

それがグローバルリーダーに,また自己発見につながるという内容であった。公演

は英語で行われたが,質問に挙手して答える形式で講演が勧められ,生徒にとって

は,英語を使い,楽しめる講演となった。表 2-5 にアンケート結果を示す。

表 2-5 アンケート結果

留学に興味関心を持った生徒は 18%であり,決して多くない。しかし,この講演

会が自分の将来を考える助けにはなったのではないかととらえることができる。

質問 1 2 3 4 5

Q1. 講義内容に興味や関心が持つこと

ができましたか

いいえ ←――――――→ はい

24 人 27 人 71 人 24 人 27 人 13% 15% 39% 13% 15%

Q2. 講義をきいて,考えさせられるとこ

ろがありましたか

いいえ ←――――――→ はい

25 人 34 人 64 人 25 人 34 人

14% 19% 35% 14% 19%

Q3. 自分の進路選択の参考になったと

思いましたか

いいえ ←――――――→ はい

40 人 31 人 66 人 40 人 31 人

22% 17% 37% 22% 17%

質問 1 2 3 4 5

Q1. 講義内容は理解できましたか いいえ ←――――――→ はい

3 人 13 人 37 人 3 人 13 人 2% 7% 20% 2% 7%

Q2. アメリカ留学に興味や関心が持つ

ことができましたか

いいえ ←――――――→ はい

13 人 20 人 49 人 13 人 20 人

7% 11% 27% 7% 11%

Q3. 自分の進路選択の参考になったと

思いましたか

いいえ ←――――――→ はい

33 人 27 人 50 人 33 人 27 人

18% 15% 28% 18% 15%

− 54 −

③ グローバルリーダー育成講演会 第 3 回

日時:1 月 19 日(火) 対象者:2 学年全員 場所:大講義室

タイトル:「グローバルリーダーを取り巻く国際情勢」

講師:東京工業大学 教授 池上 彰氏

わが国を取り巻く情勢,特にエネルギー供給問題や環境問題に関わる国際情勢に

ついての講演であった。パネルもモニターも使わず,黒板にチョークで板書しなが

らの授業は,目線をあわせながら,時には質疑を交えて行われ,生徒は集中して参

加することができた。

④ グローバルリーダー育成講演会 希望者対象

日時:11 月 5 日(木) 対象者:希望生徒 38 名 場所:LL 教室

タイトル:「グローバルに活躍するために,今” できること」

講師:オーストラリア総領事館(教育担当)商務官 松本文仁氏

すぐに役立つ英会話:please の重要性,オーストラリアの国章,文化,習慣の紹介

から始まり,グローバルな社会を踏まえ,今高校生に考え行動してもらいたいこと

までお話ししていただいた。

表 2-6 にアンケート結果を示す。アンケートにおける生徒のコメントから,印象

に残った言葉として「困難とは乗り越えるもの」,「異文化を知り,自分の可能性

を広げる」,「夢が大きければ大きいほど未来も大きくなる」,「未来は過去の延

長上になくてもよい」などが生徒より挙げられた。

表 2-6 アンケート結果

(6) 海外調査研修

① 総論

本研究開発事業における海外派遣は,すべて調査研修を目的としており,本研究

開発が目標としているエネルギー問題,環境問題に対する高校生の意識や現地企業

のスタッフの意識調査,課題に対する現地でのコミュニケーション,および現地で

質問 1 2 3 4 5

Q1. オーストラリア研修に興味や関心

が持つことができた

いいえ ←――――――→ はい

0 人 0 人 1 人 5 人 30 人 0% 0% 2.8% 13.9% 83.3%

Q2. 講演をきいて,考えさせられるとこ

ろがあった

いいえ ←――――――→ はい

0 人 0 人 0 人 4 人 32 人

0% 0% 0% 11.1% 88.9%

Q3. 自分の進路選択の参考になったと

思う

いいえ ←――――――→ はい

0 人 0 人 0 人 12 人 24 人

0% 0% 0% 33.3% 66.7%

− 55 −

の実地調査などを行った。渡航先はフィリピン共和国およびオーストラリア連邦で

ある。

~なぜフィリピン共和国なのか~ フィリピンは,東南アジア有数の資源産出国であり,エネルギー自給率は 2011

年時点で 59.1%である。しかしながら,電力需給の逼迫が深刻化しており,輪番制

の計画停電も計画される事態となっている。このことは以前より予想されており,

原子力発電所を建設,ほぼ完成したが,アキノ政権時代に稼働を認可せず,結局,

原子力開発をあきらめた経緯がある。原子力に代わって地熱発電所を建設し,その

発電量はアメリカに次いで第2位となった。本校では,日本とはあまりにも違う選

択をしたこの国を重視し,フィリピン共和国・デ・ラ・サール大学附属高校と新た

に国際交流協定を締結し,私たちの交流の意図を理解していただく予定である。原

子力開発よりも輪番停電を選んだ国民,文献では知り得ない高校生の意識を,REEIによるこの国際交流で是非とも明確にしたいためである。

~なぜオーストラリアなのか~

オーストラリアは,鉱物資源が豊富な資源産出国で知られている。なかでも,ウ

ランが採掘されているのに,原子力発電所が一基もない。電力の大部分は,火力発

電によるもので,石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料は自給している。火力発電

に頼れば,CO2 の排出を減らすことは出来ない。もちろん,再生可能エネルギーへ

の取組を行っているが,まだ開発途上である。本校では,日本とは大きく異なる選

択をしたこの国をフィリピンに次いで,重視している。そこで,鉱工業と関連が深

い西オーストラリア州のパースの西オーストラリア大学での研修,および Cecil Andrews 高校とのエネルギー問題・環境問題をテーマとした国際交流を計画した。

これによりマネージメントの観点からこの国のエネルギー問題への考え方を知り,

また,現地の高校生との交流により,文献では伺うことの出来ない国策に対する高

校生の意識を,この国際交流で是非とも明確にするための渡航である。

なお,サウジアラビアについては,在日アラブ人学校と連携するほか,日本を訪

問するサウジアラビア王立学校校長等の訪問にあわせて,REEI によるこの国際交流

を開始する。中国については,東京工業大学が招聘するサマーキャンプに参加する

清華大学学生との交流を計画している。アメリカ・韓国・モンゴルについては,東

京工業大学との連携により,交流を開始する。

② フィリピン共和国への派遣研修

日時:8 月 9 日(日)から 15 日(土) 対象者:希望生徒 6 名 引率教員:3 名

行先:フィリピン共和国 マニラ

グローバルな視野でエネルギー・環境問題に取り組む人材を育成するためのフ

ィールドワークや現地高校生との意見交換等の交流を行うため,デ・ラ・サール

大学附属高校への派遣研修を行った。今回の交流では参加生徒が環境やエネルギ

ーについて課題を設定し,考察した内容を英語でプレゼンテーションや意見交換

をした。他にも化学や体育,家庭,英語,日本語の授業への参加,国際稲作研究

所( International Rice Research Institute)や自然史博物館(Museum of Natural History)

− 56 −

の見学,デ・ラ・サール大学の研究室と東工大フィリピンオフィスを訪問した。

また,バターン原子力発電所(Bataan Nuclear Power Plant)を見学し,エネルギー

問題において日本と異なる意思決定をした経緯や理由について理解を深めた。

③ オーストラリア連邦への派遣研修

日時:12 月 12 日(土)から 19 日(土) 対象者:希望生徒 8 名 引率教員:3 名

行先:オーストラリア連邦 パース

資源国であるオーストラリアの人々とエネルギー・環境問題について意見交換す

る貴重な経験となった。スケジュールは以下の通りである。 1 日目:空路羽田空港からシドニーへ

2 日目:シドニーで乗り換えパースへ到着。 西オーストラリア大学(UWA)学生

寮泊 3 日目:UWA・物理学部でのエネルギー問題理解のための研修(鉱物資源や電気エ

ネルギーなど)

4 日目:Cecil Andrews 高校訪問。本校生徒によるエネルギー・環境問題のプレゼ

ンテーション,STEAM 関連授業に参加。ユネスコ下部組織 IOC 訪問

5 日目:Gravity Discovery Centre 他,エネルギー資源・環境問題理解のための研修

6 日目:企業訪問:INPEX パース事務所訪問,在パース日本総領事館訪問 7 日目:空路シンガポールへ チャンギ空港でトランジット

8 日目:空路シンガポールから羽田空港へ到着

④ サウジアラビアとの交流を行うためのゲーム型教材開発

1) 概説

高校生の国際交流は,体験を重視するあまり,予めわかり合える部分を示し合

い,外国の友人を作ることが目的となることが多い。交流自体は有益であるし,

高校段階での情操教育にも良い影響を与える。しかし,ここで終わってしまって

は,語学研修の域を出ないだろう。真の交わりは,友情をベースとしながらも,

文化や考え方の違いといった差分をぶつけ合い,結果として異なる考えを受容す

ることからはじまるべきであり,従来の体験では不完全である。そこで本研究開

発では,国際交流事業において,地球全体が抱えているエネルギー・環境問題を

討議することを目指した。しかし,立場が違えば考え方も異なる。先進国と発展

途上国,産油国と消費国など利害は対立する。もし,この差分をわかりあえれば,

真の国際交流となり得るはずである。 他方,我が国は資源消費国であり,自前で鉱物資源を調達出来ない現状がある。

それゆえ,国内のエネルギー問題への関心は高い。また,先進国であるがゆえに

CO2 の排出量が多く,その削減を求められており,環境問題への関心も高く,文

部大臣諮問(2014)に謳われるように,ESD(Education for Sustainable Development)

が充実している。すなわち,有限である地球をいかに有効に活用していくか,国

民一人ひとりが考える土壌を持っている。私たちは,CO2 削減や地球温暖化を阻

止することが当たり前のように思っているが,産油国はこの考え方に合意してい

− 57 −

るわけではない。損をしてでも正義を貫くといった勧善懲悪的な価値観は,すべ

ての国に通用するものではなく,この利害関係の違いは,わかりあうことが難し

い。特に産油国は,国の財政の大部分を石油による利益によって生み出しており,

石油が売れなくなることに賛成しない。これまで,サウジアラビア王国は,「CO2

対策=原油輸出の減少」と捉え,COP13(Conference of Parties 13)では,「温暖

化対策で石油消費量が減ることになったら,産油国の損失補填を求める」と地球

温暖化対策推進に逆行する立場をとってきた(IEEJ(2009))。この考え方は,政

府の立場に留まらず国民にも浸透しており,環境問題への関心が薄く,消費者に

はエネルギー節約の意識が育たなかった(JETRO(2011))。 本校は,サウジアラビア王国との国際交流を計画している。その際,交渉の中で,

エネルギー・環境問題に対する討議には関心を示さず,このテーマでの交流に難

色を示したが,相手側が唯一関心を持ったのが,「石油・貿易取引ゲーム」であ

る。原油の取引を仮想的に行うのであれば,交流の可能性があるという回答だっ

た。このチャンスを実現するため,本研究では,「石油・貿易取引ゲーム」を開

発し,国際交流において実施することを目指す。 関連する先行研究には,CO2 の排出量と取引するといった長坂・佐藤・大沼(2012)

の「排出取引ゲーム」や大沼(1997)の「産業廃棄物不法投棄ゲーム」などの社

会的ジレンマを考えさせる試みがあるが,これらは共通の価値観がベースにあり,

本研究で扱う対立した価値観をベースとする国際交流とは異なる。特に,わかり

あう試みとするためには,国際社会の共通認識に基づくことを意図した,ゲーム

内のルール作りが必要となる。そこで本研究では,アラブ人の反応を調査した上

で,本格的なゲームのルールを確定するために,

ⅰ)トランプなどを伝った手軽なカードゲーム(命令カード付き)の開発

ⅱ)その成果に基づき,ルールの自動化を図った ICT 教材の開発 の順に進めることとする。

2) 方法

(ア)ゲーム型教材の開発 「石油・貿易取引ゲーム」は,国際交流の手段として実施することから,ア

ラブ人側にも私たちの考えを学んでもらう必要がある。しかしながら,こちら

の意見を提示したところで関心は示さないだろう。そこで,ゲームの展開の中

で,地球温暖化対策などに配慮しなければ損をするようなルールを用意する。

ゲームの展開は以下の通りである(図 2-7 参照)。

・プレイヤーは 2~4 名。産油国側になるか,消費国側になるかを選び,宣

言する。この人数は同数でなければならない。

・プレイヤーにはよく切ったトランプが 5 枚ずつ配られる。産油国側は♠

と♣,消費国側は♡と♢を使う。トランプの数字は 100,000$を表す。同数

か,自分が損してもよければ多い数字のカードを渡すことで取引を行う。

ゲームが進行していれば,釣り銭を出してもよい。ただし,釣り銭は相

手のカードのみ有効。

− 58 −

・ゲームは,産油国側が売りたい分のトランプを 1 枚出すか,トランプの

束から 1 枚とるところから始まる。束からとった場合は,そのカードを

出してもよいし,提示せずにパスすることも出来る。 ・使うカードは,1~12。K(13)は相手に命令カード(表 2-4,2-5)

を引かせたい時に提示する。

・地球温暖化対策費は,500,000$以上。すなわち,5以上のカードを最初

に出す。再生エネルギー投資額は,1,000,000$以上。すなわち,10 以上

のカードを出す。後からは出せない。

・相手のカードをより多く持つものが勝ち。自分のカードは売れ残りなの

で,加算されない。消費国側も原油側のカードをより多く持つものが勝

ち。自分のカードは加算できない。

・ジョーカーを 1 枚入れる。これにより,命令カードを 1 度だけ無効に出

来る。

表 2-4 命令カード(産油国側) ⅰ)地球温暖化の進行で,沿岸部の油田が水没し,輸出量の 50%が輸出できず,

自分側のカードを 1 枚引き,50%割引で売らなければならない。

ⅱ)再生エネルギー開発が成功。投資していればもうけ,消費国側のカードを

1 枚引ける。投資していなければ,自分側のカードを 1 枚引き,50%割引で

売らなければならない。

ⅲ)地球温暖化が進行。対策費を払っていれば,地球温暖化の影響が先送りに

なり,自分側のカードを 1 枚引き,20%割引で売らなければならない。対策

費を払っていなければ,化石燃料への不買運動が起こり,自分のカードを 1

枚引き,50%割引で売らなければならない。 ⅳ)再生エネルギー開発が失敗。投資していれば投資額の半分を再度放棄。投

資していなければ,損失はないが,地球温暖化が進行するので,次の取引は

自分側のカードを 1 枚引き,20%割引で売る。 ⅴ)再生エネルギーの一部が実用化。投資していれば,相手側のカードの束か

ら 1 枚カードを引ける。投資していなければ,原油の売り上げが落ち込み,

自分側のカードを 1 枚引き,20%割引で売らなければならない。 ⅵ)産油国への国際的な批判が高まり,原油消費が 50%減へ。自分側のカード

を引き 50%割引で売る。温暖化対策費を払っていれば,20%減に留まるので,

自分側のカードを引き 20%割引で売る。 ⅶ)地球温暖化は進行速度が落ちる。温暖化対策費を払っていれば石油製品に

対する需要が確保され損失なし。払っていなければ,批判が高まり,自分側

のカードを 1 枚引き,50%割引で売らなければならない。 ⅷ)地球温暖化対策に積極的ではないことに批判が集中,対策費を払っていれ

ば損失なし。払っていなければ,自分側のカードを引き 50%割引で売る。

− 59 −

図 2-7 石油・貿易取引ゲーム

図 2-8 ICT 教材化した場合のフロー(産油国側)

表 2-5 命令カード(消費国側)

ⅰ)地球温暖化の進行で,沿岸部が水没。原油価格が上昇し,次の取引で,2

倍支払う。 ⅱ)再生エネルギー開発が成功。投資していれば相手のカードの束から 1 枚引

く。投資していなければ,500,000$放棄。

ⅲ)地球温暖化が進行。対策費を払っていれば,地球温暖化の影響が先送りに

なり,100,000$の放棄のみ,対策費を払っていなければ, 戦争となり,

500,000$放棄。

ⅳ)再生エネルギー開発が失敗。投資していれば投資額の半分を支払う。投資

していなければ,損失はないが,地球温暖化が進行するので,200,000$放棄。

ⅴ)再生エネルギーの一部が実用化。投資していれば,相手のカードの束から

1 枚カードを引ける。投資していなければ,300,000$放棄。 ⅵ)産油国への国際的な批判

が高まり,原油消費が 50%

減へ。相手のカードを引き

50%割引で買える。

ⅶ)地球温暖化は進行速度が

落ちる。温暖化対策費を払

っていれば損失なし。払っ

ていなければ,批判が高ま

り,500,000$放棄。 ⅷ)地球温暖化対策に積極的

ではないことに批判が集中,

対策費を払っていれば損失

なし。払っていなければ,

相手のカードを引き 50%

増しで買わなければならな

い。トランプを出すことで,

相手のトランプを得て,取

引を進める。ゲームは,ど

ちらかのトランプがなくな

った時点で終了する。束に

なっているトランプも 1 枚

ずつ引くことが出来るため,

これらを含めて,すべてな

くなることが必要。なお,

勝敗はトランプの数字の合

計で決める。自分側のトラ

ンプは無効。あくまで,相

− 60 −

手のカードをより多く獲得することで勝敗を決める。

3) ゲームの拡張

トランプによるカードゲームでは,特別なゲーム展開を表現できないため,命

令カードによって,一部ボードゲームの要素を加えた。これにより,カードゲー

ムの展開とは別次元で損得が発生し,配慮すべきことを学ぶことになる。

表 2-5 のゲームは,内容が原油取引に限られている。実際の国際経済の場面で

は,工業製品とのバーター取引が予想される。産油国側が必要とするプラントを

導入するためには,原油とのバーター取引を行える必要がある。ただし,その場

合には,国際関係を良好に保ち,戦争や革命,それに伴う不払いや接収などのリ

スクを排除しなければならない。この点は,命令カードを充実させていく必要が

ある。より現実に近づけるためには,原油の取引と工業製品取引を同時に行うこ

とが望ましいが,トランプによるカードゲーム内で行うと複雑になってしまう。

トランプによるカードゲームとするためにはルールがよりシンプルで進行しやす

いものが好ましい。それゆえ,この機能は ICT 教材に委ねたい。

4) ICT 教材化の可能性 図 2-7 は,ICT 教材化する場合のフローである。ICT 教材化する場合には,コ

ンピュータを相手とした個別学習型教材とし,対戦型とはせずスコアによって勝

敗を決める。対戦型とする場合には,通信機能が必要となるためであり,ゲーム

の展開を追う方法を検討した。また,トランプのカードを引くといった偶然性に

ついては,ランダムに数字を提示するという方法によって解決可能である。

5) 考察および今後の課題 本研究開発事業の教材は,国際交流を前提としており,原油取引をゲーム化し

ながらも,エネルギーや環境問題に配慮しなければ,損をするルールとなってい

る。実施はまだ先になるが,他国との国際交流事業において考察することとした

い。

なお,国際交流でのゲーム実施には,駐日サウジアラビア王国大使館の承認が

必要であり,教育の分野においても交流の難しさが表れている。

4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及

本科目は,SGH開発科目の中核をなし,GTL育成のための知識,スキル,第 3 学

年におけるSGH課題研究へのステップと幅広く,しかも内容も多彩なものとなってい

る。それだけ異文化交流のために必要な知識は多岐にわたるものであり,正課の授業枠

で収めるのは難しい。 今年度は,グローバルリーダー育成に関わる学校行事と講演会を,例年よりも可能な

限り増やし,本科目に取り込んだが,これらによる知識・スキル・能力の育成について

対応関係を整理する必要がある。本科目の成果については,次年度のSGH課題研究等

での応用にかかっているが,どのような取り組みが,どのような力の育成に有効であっ

たか,ということについては,アンケート調査では計れない点が多く,実際の成果によ

って計ることとしたい。

− 61 −

次年度は,「SGH課題研究への道」について,専門分野での取り組みを強化し,円

滑なSGH課題研究の運営への足がかりとしたい。また,その際「SGH課題研究」へ

の手順を一般化し,多幸への成果普及できるような取り組みを進めていきたい。他方,

地政学的リスク回避能力のための授業や英語によるコミュニケーション力育成のための

取り組みは引き続き強化していきたい。

なお,海外への調査研修については,フィリピンへの派遣は継続するが,オーストラ

リアに変えてマレーシアとの交流を模索している。スズなどの鉱物資源や天然ガス田を

有するマレーシアとエネルギー問題等について,討議したいと思っている。

参考文献 文部科学大臣諮問(2014)初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1353440.htm

IEEJ(2009)井上友幸・田上貴彦,サウジアラビア王国の CO2 削減ポテンシャル,国際協力機

構,東京電力.

JETRO(2011) サウジアラビアの環境に対する市民意識と環境関連政策,日本貿易振興機構.

長坂 , 邦仁 ; 佐藤 , 浩輔 ; 大沼 , 進(2012)排出取引ゲームの開発:社会的ジレンマ状況における

社会的現実感,シミュレーション&ゲーミング , 22(1): 122-136

大沼進 (1997) 「廃棄物処理ゲームと二次的ジレンマ」廣瀬幸雄編著『シミュレーション世界の

社会心理学-ゲームで解く葛藤と共存-』 ,ナカニシヤ出版 , 149-152.

- 63 -

Ⅲ SGH課題研究研究会の活動報告

1 概要

本研究開発は,グローバルリーダーを育成することに目的があり,1・2年次に学んだSGH

科目を総動員して,エネルギー・環境問題の解決に一助することやマネージメントを意識した問

題解決方法にチャレンジするのがSGH課題研究である。これにより,グローバルリーダーへの

道が開かれるものと考えている。

一般に,課題設定は必ずしも科学的・技術的興味による自由な意思から行われるわけではない。

社会のニーズや企業の方針などは,自分自身から見れば他律的であり,時に科学者・技術者の制

約条件となり得る。SGH課題研究は社会のニーズを意識するといういわば制約が課せられてい

ると言える。従来の課題研究では,技術的な問題の解決や改善をテーマとすることが主であった

が,ここでは,マネージメントの問題解決手法や定量的分析などを援用し,その結果,必要とさ

れた改善をテーマとする。すなわち,ものを作ること自体が目的なのではなく,コストを抑える,

あるいは損失のリスクを回避するためにはどうしたらよいか,といった視点を大切にする。また,

実験・実習によるデータを元に,エネルギー・環境問題等を題材とした研究を行うことも想定し

ている。その際も,マネージメントに基づく損益や費用便益分析を念頭に置いた帰結を求めるの

であって,ただ単にテーマ名が条件に合致していれば良いわけではない。

SGH課題研究は,本校が提案している上記の項目が,テーマ設定における制約条件となる。

しかも,これらの解決のためには,いままでとは異なる検証方法やまとめ方が必要であり,SG

H課題研究の円滑な実践が,いままでの課題研究を大きく変えるものであると考えている。

2 経緯

(1) 背景

本校は工業課程であることから,第3学年に配当される「課題研究」が必修科目とされてい

る。科目「課題研究」は,本校が昭和 58 年に文部省研究開発学校の指定を受けた際に開発し

たものであり,その後必履修科目となったことから,全国の工業高校等で実践が積まれてきた。

なお,現行の学習指導要領では必履修科目とはなっていないが,本校では必修科目として継続

している。

本校においても研究開発学校の指定以来,30 年あまりの間,実践を積んできた。本校が行

ってきた「課題研究」は,ものづくりや実験・実習に基づき,その過程において直面した課題

を解決するという方法で展開されてきた。

(2) 本校における取り組みと仮説

SGHにおける学習の総仕上げとして,いままで学んできたグローバルテクニカルリーダー

に必要なスキルを活かして問題を分析,課題を設定し,科学技術系人材育成プログラムによっ

て培ってきた知識や能力・スキルを総動員し,マネージメントに基づく損益や費用便益分析の

結果などを根拠としながら計画を立案,ものづくりや実験・実習によって実証的な研究を進め

ることが,「SGH課題研究」の目的である。

これらの取り組みにより,グローバルテクニカルリーダーに必要なスキルを再確認しながら,

リスク回避の必要性を認識することが期待できる。また,「SGH課題研究」を進行するにあ

- 64 -

たり,チームワークの形成などリーダーとして必要な資質の育成ともなりうる。なお,「SG

H課題研究」の成果を報告する際に,アブストラクトを英語によりまとめ,将来の学会発表に

寄与する。

3 内容

(1)SGH課題研究研究会の活動

今年度行った各活動について,内容ごとに示す。

①「SGH課題研究」と「課題研究」との違いを明確化する

両科目に関する経緯は前述であるが,本研究会ではそれらの違いを分かりやすくするた

め以下の表にまとめた。3年生やその保護者に対しては,9月下旬~10月上旬に本校で

分野ごとに行った学校行事“課題研究発表会”の要旨集に掲載し,定着をはかった。

表 1-1 「課題研究」と「SGH課題研究」

科 目 内 容

課題研究

自ら課題を設定し,目標を達成するまでに生じた問題を解決することによっ

て,専門的な知識と技術を深め,総合化を図るとともに,問題解決能力や

自発的,創造的な学習態度を身につける。

SGH課題研究

グローバルな視野から,社会が求める技術的な解決を要する課題を自ら設定

し,問題点を科学的・技術的な取り組みによって解決し,得られた結果が社

会に及ぼす影響・効果・損益などを成果として導くことによって,グロ

ーバルテクニカルリーダーとしての素養を身につける。

2年生,1年生には,科目選択や分野選択と関連づけて説明した。

②SGH課題研究を分野で認定し,研究会で公認する流れ

今年度行う「課題研究」は前年度の3学期頃から準備を行っていた。4月から「SGH 課題

研究」を実施することとなり,一部のテーマを「SGH課題研究」に振り分け,その内容,

指導に加わる普通教科教員,TA と外部講師について再検討した。5月に,各分野で内容等

を吟味し,研究会で公認した。公認したテーマは後述の通りである。

来年度実施するの「SGH課題研究」は,予算申請などが2月にはあるので,各分野に

おいて大まかなテーマと人数を2月中には決定する。4月にはテーマ,人数を確定する。

③5分野のスケジュールの現状確認と今後の年間日程の調整

「SGH課題研究」,「課題研究」に関して実施前の指導は2年生で実施する。その内容

や時期は,各分野で実施する他の専門科目の履修と平行して行うため,分野ごとにさまざ

まである。②はこれからも共通に行う予定である。

④講演会や調査旅費をはじめとする予算の活用(活動を拡張する方法)

- 65 -

講演会や調査旅費は各分野の「SGH課題研究」テーマごとに研究会に提案し,研究会

が検討の上,可否を決めた。

⑤分野教員と教科教員との協働

後述の通り,「SGH課題研究」のいくつかのテーマで専門教科教員と普通教科教員との

協働が実現した。今後も協働が促進されるよう,普通教科教員に課題研究の見学等を促す

予定である。

⑥SGH 課題研究要旨集の作成

「SGH課題研究」の要旨集は,「課題研究」の要旨集とまとめた一冊にするが,両者が

区別しやすいよう,中扉を設けた。

(2)講演会等の実施

SGH課題研究の活動の一環として,外部講師を招聘し,下記の講評会や講演会を行った。

今年度は,SGH課題研究のテーマ数が最も多かった建築デザイン分野の研究テーマに関連し

て実施された。講評会は,他の課題研究と合同で 10 月に行われた発表会においても行われた

が,広範なテーマの発表が多数あり,時間的な制約もあったのに対し,より専門性の高い講師

陣を迎え,まとまった時間をとって行われた議論及び講評は,生徒の理解を深めると同時に,

次年度につながる課題も得ることのできるものとなった。また,建築デザイン分野2年生及び

建築デザイン分野への所属の決まっている 1年生も参加可能とすることで,次年度以降にSG

H課題研究に取り組み得る生徒の学習意欲を高めるものともなった。

ただし,SGH課題研究には高い専門性が求められることから,全分野共通の講演会等の実

施は難しく捉えられた。今後は,講演等のテーマの選定や,参加可能な分野の選定など,公開

性より高いものとするための検討が必要であると考えられる。

① 外部講師によるSGH課題研究講評会

講師:早稲田大学理工学術院創造理工学研究科建築学専攻教授 輿石直幸氏

東京工業大学博物館特任講師 遠藤康一氏

対象:2015 年度建築デザイン分野SGH課題研究実施生徒(聴講:建築デザイン分野2年

生,及び,建築デザイン分野への所属が決まっている1年生)

日時:2015 年 12 月 14 日 13 時 15 分〜14 時 15 分

場所:本校2号館3階造形室

SGH 課題研究テーマ:

「日本工業大学建築設計競技『つながる家』応募作品<土でつながる家>(2等受賞)」

「空間を有効活用した積む避難所の提案(秋田県立大学高校生建築提案コンテスト 2015

『再利用が創る都市・建築の未来』応募作品<Palletized Shelter>佳作受賞)」

「版築土壁構法の製作条件に関する研究」

内容:

上記研究テーマの発表と質疑応答を行い,講評を頂いた。特に,地方都市における自然

環境を活かしたものづくりの建築のあり方や,日常時・非常時の両方において効率的か

つ有効に利用できる避難所設備の活用法,版築土壁の特性を評価するための製作条件や

実験環境の適切性などについてご講評頂いた。また,今年度の成果を踏まえ,製作した

- 66 -

版築土壁の模型及び実験室を視察して頂き,今後,耐久性などを評価するための実験方

法等の議論を行うことで,次年度以降に展開するためのご助言を頂いた。

② 外部講師による講演会

講師:早稲田大学理工学術院創造理工学研究科建築学専攻教授 輿石直幸氏

対象:2015 年度建築デザイン分野SGH課題研究実施生徒(聴講:建築デザイン分野2年

生,及び,建築デザイン分野への所属が決まっている1年生)

日時:2015 年 12 月 14 日 14 時 30 分〜16 時 00 分

場所:本校2号館3階造形室

題目:「建築における材料学の役割と研究テーマの概要」

内容:建築分野における材料学の位置づけ及び研究の重要性に関する概論や,当該研究室

で行っている研究テーマの紹介について講演頂いた。特に,自然素材を活用した再

生可能な建築材料に関する研究については,伝統小舞土壁構法の研究,土蔵の左官

技術に関する研究,非焼成ブロックを用いた組積造住宅の建設(ブロック作製のた

めの材料・調合の検討),アンコール遺跡の修復,スペイン伝統住宅(マジア)の修

復・再生など,実例を示しながら,それらの研究の意義やこれからの課題について

講演頂いた。

(3)各分野の活動

① 情報システム分野

(ア) 今年度の概要

情報システム分野では,単なる技術的な発展等の取り組みは従来の課題研究として扱

い,今年度は1グループ 6名がSGH課題研究に取り組んだ。

社会で使われている Web システムをベースに「いかにビジネスとして成り立たせる

か?」,「継続して Web サービスを提供するか?」ということをテーマに取り組んだ。そ

して,SGH課題研究の活動を通して生徒がビジネスに関する理解を高め,これまで学

んできた情報技術と融合させ,問題解決に有効な思考方法を養うことを目指した。具体

的には,Web でよく利用されるサービスは何か?サービスを継続して実施するにはどう

するか?必要な物や資金はどうするか?等,技術以外の側面も考慮しながら,実際に収

入を得るにはどのような方法があるのか?調査研究を含めながらシステムを実装して 1

写真 3-1 早稲田大学建築専攻の輿石直幸教授による講演会の様子

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ヶ月ほど運用し,様々な問題点をあぶり出した。

最終的には Google マップの APIを用いて,地図上に各種情報を登録できるシステム(シ

ステム名:arinpa)を作成した。また,収入を得るためにアフィリエイトを導入して広告

を表示させることとし,ユーザのアクセス履歴を解析して,効果的な Web デザインを考

えた。

(イ) 実施したテーマ

「ユーザ提案型 Web サービスの作成と運営」

(ウ) 今後の課題

今年度はビジネスということでSGH課題研究とした.しかし,情報システム分野に

は,各種センサーを利用して省エネシステムを構築するエコハウスといった,資源の最

適な使い方を求めるテーマも考えることができる。来年度以降はビジネスに限らず,情

報技術を活用した様々な取り組みを考えてみたい。そのためには,本校の課題研究は生

徒が主体となってテーマを設定しているが,テーマ設定を説明する段階においてSGH

課題研究に該当するテーマをサンプルとして提示し,生徒にSGH課題研究のイメージ

をとらえやすいようにしたい。

また,今回はビジネスをテーマとして設定したので,様々な Web サービスの利益追求

についての調査研究も行ったが,もともとそのような分野について得意でない生徒の集

まりであったので,本や Web のまとめサイトに書かれている以上のことはできなかった。

今後の課題としては,普通教科の先生の協力を得たり,外部の先生の話を聞いたりする

ことで,生徒へさらに深く,多角的な考え方や見方を身につけさせられると考える。

② 機械システム分野

(ア)今年度の概要

機械システム分野では,既に「課題研究」としての研究テーマが設定されている中で,

エネルギー及びコストの問題を背景として,既に世の中に存在し活用されている機械装

置・システムを対象として,異なるアプローチに基づいた機構,動力源などを採り入れ

ることによって,省エネルギー化,低コスト化を目指すことを目的とした2つのテーマ

を,今年度の「SGH課題研究」として実施することとした。

(イ)実施したテーマ

「動力源無搭載パワーアシストシステムの開発」

「リンク機構を用いた腕型縮小作業用デバイスの開発」

(ウ)今後の課題

グローバルリーダーの育成を目標とする本研究開発において,「SGH課題研究」は,

第1学年と第2学年における開発科目「グローバル社会と技術」及び「グローバル社会

と技術・応用」を学習することによって成立するものである。今年度は異例で,両科目

を学習していない第3学年に対して,「SGH課題研究」を取り組ませなければならなか

ったことにかなりの無理があったと思われる。そのような環境の中,エネルギーやコス

トといった,技術的な視点と経済的な視点の両視点から研究にアプローチすることを試

み研究を行った生徒に敬意を表す。生徒に与える学習環境から考えれば,年次進行で実

施すべきである。

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③ 電気電子分野

(ア) 今年度の概要

本分野では,現代の社会問題など様々な事項に関し,電気・電子技術によって,解決

または改善することを大きな目標として,製作型のSGH課題研究 を実施した。

本分野のテーマ設定時期は 2年次の 11 月中旬~12 月末である。2年次設定科目「科学技

術コミュニケーション入門」において,3 年次科目「課題研究/SGH課題研究」のテー

マ内容を題材に,調べ学習及びプレゼンテーションを行っているためである。また,テ

ーマ設定時には次のような条件を与え,生徒たちが自らグループを組み,内容の企画・

立案を行っている。

○ 電気・電子工作を必ず行う

本分野の特質より,ソフトウェアのみの課題研究テーマは認めていない。

○ 1 グループ 5人程度

グループ活動によって協調性を養う

○ 基本目標と応用目標の設定

基本的な動作をするための製作(基本目標)を終えた上で,追加機能など,各グル

ープの研究的な内容にかかわる製作(応用目標)を設定する。

○ 研究の意義の考える

技術だけを追求する「電子工作」としての完成だけで終えるのではなく,それが

「誰に」,「どのような影響を与えるか」を考えさせ,技術者としての広い視野を養

う。

テーマの認定は,本分野の教師が行う。各グループが教師に対し,プレゼンテーショ

ン及び質疑応答を行う。「研究内容として適正であるか」「グループとして作品の完成予

測ができるか」「研究に危険な作業などは伴わないか」など総合判断し,認定する。

今年度は,従来の課題研究テーマとして認定された中から,改めてSGH課題研究テ

ーマに変更するグループを募集した。その際SGH課題研究としての動機や目標を追加

して教師との話し合いを行い,認定した。

今年度実施したテーマは以下の 6つである。

従来の課題研究(4 テーマ)

①無人搬送形給仕車の作製 ②アンプの製作 ③マイクロマウスの製作

④ディジタルテルミンの製作

SGH課題研究(2 テーマ)

①心拍数・体温測定人形の作製 ②浮上式リニアモーターカーの製作

(イ) 実施したテーマ

○心拍数・体温測定人形の作製 ~Health Care Doll~

「高齢化社会」を背景に,老人の「孤独死」が増加傾向にある。これを抑える一つ

の手段として本テーマを行った。

機能としては

・人形の手を触れることによって,体温と心拍数を測定する。【基本目標】

・測定結果を視覚的に表示する(人形の目の色を変える)。【基本目標】

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・録音/再生機能を付加し,電源投入時に近親者の声で挨拶程度ができる。【応用目標】

・測定結果を予め登録したメールアドレスに送信する。【応用目標】

成果として,基本目標及び応用目標を達成すること

ができた。また,測定結果が一般値から大きく外れた

場合,人形の目の色を赤や緑に変化させ,視覚的に分

かるようにしたり,高齢者でも容易に測定が操作を行

えるよう「触るだけ」を中心に製作し,工夫した。

測定をする度に近親者(例:お孫さん)の声で人形と

挨拶をする程度でも癒やされる効果がある思い,この

機能を付加した。測定結果をメール送信することで,

遠方の家族や医療関係者との結びつきを図り,活動記録として機能し,孤独死の心配

を低減させることを狙った。

更には健康管理という概念がないと思われる国や地域でも使用することで長寿に結

びつき,高齢者に限らず,体調変化などを簡単に知ることができるものと期待できる。

○浮上式リニアモーターカーの製作

現在日本で開発されているリニアモーターカーは始動時及び停止時では車輪によっ

て走行している。本テーマでは常に浮上した状態で,走行できるようにすることで,

次のような効果が得られると考えた。

・車輪の摩耗が無くなりメンテナンスの軽減(運用コストの低減にもなる)

・車輪走行時の騒音が無くなる

・短距離運行の高速化(車輪走行から,浮上走行になる前に,目的地付近に到着する

ような近距離運用では運行速度を上げられない)

また,本体が走行している前後の短区間だけに電力を供給することで,省電力化及

び運用コストの低減を狙うことがでる。

全体的な設置から運用コストまで節減できれば,多

くの国でも採用され,例えばアフリカ大陸では,港が

無い内陸部に物資を大量にかつ高速に運搬できるよ

うになり,大陸内の貧富の差を無くすことができるの

ではないかと期待した。

成果として,コイルを自作し,約3mのレールにて走行させることができた。また

省電力化に成功した。完全浮上については,基本的に成功したといえるが,バランス

保持の難しさや,本体の重量問題など解決すべき問題が多々あった。

(ウ) 今後の課題

第1年次の今年度は,第 2 学年後半から従来型の課題研究テーマとして活動を開始し

ていたこともあり,SGH課題研究としては「後付け感」が払拭できない状態であった。

また,指導側である本分野の教員も,「SGH課題研究」を手探りで進んだように思われ

る。ものつくりを題材として,生産コストや多国籍のグループを想定した活動,更には

文化の違いなどを考慮したグローバル的な視野に立ち,技術の追求だけではない考え方

を教師/生徒,双方が学習していかなければならない。そのためには,文献やインターネ

ットによる調査だけではなく,様々な場所で体験する必要があるものと思われる。日本

写真 3-2 Health Care Doll

写真 3-3 リニアモーターカーの製作

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国内にも世界各国から企業が入り,グローバル的な考え方が求められている。身近な企

業訪問などから始め,知見を広めてこそ「グローバル化」という考え方に直結すると思

われる。

⑤建築デザイン分野

(ア) 今年度の概要

建築デザイン分野では,エネルギー問題をはじめとした現代の社会的な課題に対して,

その原因の解明や解決法の提案を建築的な視点から探求することで,生徒が社会問題に

関する理解を高め,その解決に有効な建築的思考を獲得することを目指した。

今年度扱った社会的な課題は,現在直面し早期解決の求められるものとして,自然素材・

自然エネルギーの活用,再生可能な材料の開発,防災,地方創生,早期離職,健康・ス

ポーツ促進,都市の国際化などがある。こうした多様な題材を取り上げることができた

要因のひとつに,建築あるいは都市が,科学技術に支えられた社会的な構築物であり,

本校におけるSGH課題研究の趣旨に沿いやすいことが挙げられる。一方で,建築の歴

史やイメージ,部材の強度などに関する建築学独自のテーマに主眼の置かれたものは,

SGH課題研究として認定せず,従来の課題研究として実施した。

その結果,生徒 11 名を対象として,研究型 4 テーマと提案型 6 テーマの計 10 テーマ

のSGH課題研究として実施した。そのうち研究型 2 テーマを普通教科教員(地歴・公

民科1名,体育科 1 名)と協働指導し,提案型1テーマも普通教科教員(地歴・公民科

1名)と協働指導を行った。そして,提案型のもののうち 4 テーマは,作品ポスターと

して成果をまとめ,高校生建築設計競技に参加した結果,3作品が入賞することができ,

学内外において高い評価を得ることができた。さらに,他2テーマについても,本校が

例年行っている港区芝浦小学校での総合学習や本校文化祭での公開展示ワークショップ

への活用を行うなど,成果を地域に公開し,楽しんでもらう試みを行われた。また,外

部講師を招き研究発表講評会及び次年度に接続するための講演会を行った。

(イ) 実施したテーマ

○自然素材・自然エネルギーの活用

「版築土壁構法の製作条件に関する研究(写真 3-4)」,「日本工業大学建築設計競技『つ

ながる家』応募作品<土でつながる家>(2等受賞)」

○再利用可能な材料の活用

「空間を有効活用した積む避難所の提案(秋田県立大学高校生建築提案コンテスト

2015『再利用が創る都市・建築の未来』応募作品<Palletized Shelter>(図 3-1,佳作

受賞)),「牛乳パックの再利用によるフォリーの提案(写真 3-5,港区芝浦小学校での

総合学習に参加)」,「牛乳パックの再利用による家具の提案」

○既存の建築ストックの活用

「旧東京市内の戦前竣工RC造小学校校舎の現状と分類(地歴・公民科教諭と協働指導)」

○早期離職の対策

「東北芸術工科大学全国高等学校デザイン選手権大会『明日の社会を見つめ,明日の

世界を創造する』応募作品<FIND WORK TRIP〜見つける旅〜>(地歴・公民科教諭

と協働指導)」

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○健康・スポーツ促進

「サッカーの練習環境が与える身体への影響(体育科教諭と協働指導)」

○都市の国際化

「日本工業大学建築設計競技『つながる家』応募作品<世界の厨房>(図 3-2,奨励賞

受賞)」,「駅のプラットホームから見た東京の都市景観」

(ウ) 今後の課題

第1年次の今年度は,年度途中からの実施となったことから,これまで本校で実施し

ていた課題研究同様,昨年度末に生徒が研究テーマを決定した上で,その中からSGH

課題研究に該当するものを選定した。その結果,多様なテーマを実施し成果を残すこと

ができたが,その一方で,次年度の生徒(現2年生)が,発表会などを参考に自分が取

り組みたいテーマを考える際,それがSGH課題研究に該当するか否かで迷う場面も見

うけられた。このことから,次年度は,テーマをもう少し限定し,建築デザイン分野に

おけるSGH課題研究の実施手法の確立に努めたい。特に,普通科教員との協働や外部

団体(地域の小中学校や大学,まちづくりに関わる方々)との協働については,様々な

協力や調整が不可欠のものではあるが,それで得られる学習成果が大きいと考えており,

毎年,恒常的に実施できる仕組みづくりの検討を行いたい。

また,授業計画において社会的な背景に関する学習が中心となり,新たな知見の獲得

や解決法の提案まで行うには時間が不十分であった例も見られた。そのため,双方の時

写真 3-4 製作した版築土壁の模型

写真 3-5 芝浦小学校における総合学習へ

図 3-1 木製パレットを活用した避難所

図 3-2 食を通した国際交流住宅の提案

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間配分を再考した上で,スケジュールの作成が必要だと考えられる。こうした時間的な

制約を解決するためにも,各年度の成果を次年度に接続し展開するための工夫や,1年次

の「グローバル社会と技術」や2年次の「グローバル社会と技術・応用」などとの連携

について検討を行いたい。例えば,SGH課題研究に取り組む前に外部講師を招聘し,

研究テーマに関連する講演を行うことで,SGH課題研究への導入となり,生徒の研究

意欲や学習・理解の向上につながると考えられる。

4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及

今年度は,実質的に年度途中からの開始となり,すでに研究を進めていたテーマが多数あった

なか,研究会での議論を踏まえ,分野で認定し,研究会で公認することにより15テーマを実施

できたことは,成果のひとつと言える。そして今年度は,各分野における課題研究の進め方につ

いて実状を調査し,研究会を通して調整することで分野共通の年間スケジュールを策定すること

もできた。次年度は,この年間スケジュールを実施し,SGH課題研究をより円滑かつ効果的に

実施するために検証する。

一方で,各分野においてテーマを認定する基準を明確にすると同時に,全分野共通の評価方法

の構築が可能であるかを検討することは,今後も引き続き求められる。また,マネージメントな

どを含めた多面的な視点からのテーマ設定や評価を可能にするには,普通教科教員とのチームテ

ィーチングによる協働指導が効果的であると考えられるが,現状では,時間割の組立てや普通・

専門の評価方法の違いから,すべての分野で行うことは難しい。同様に,英語アブストラクトの

作成についても,該当生徒に対する特別指導の枠組みが整備できず,十分な時間や教員が確保で

きなかったことから,今後の改善が求められる。

今後はまず,2年次を対象に実施しているグローバル社会と技術・応用などのSGH科目を通

して,SGH課題研究への導入となりうる学習を専門教科教員と普通教科教員とが協力して行い

充実させることで,生徒の自主性や理解を向上させ,SGH課題研究への接続を円滑にすること

が取り組み得る課題といえる。そして,英語アブストラクトの作成の実施時期や方法についても

検討を続ける。さらに,SGH課題研究で得られた成果の普及ために,各種発表会やコンテスト,

地域イベントなどで公開することで学術交流や地域交流に寄与する努力を続けながら,より効果

的な公開する場の獲得や公開方法について検討することが必要であると考えられる。

− 73 −

C−3 第1年次の研究のまとめと今後の課題・成果の普及

Ⅰ はじめに

本校では,このスーパーグローバルハイスクール研究開発に至るまでに,過去数回に

わたり文部科学省から研究開発学校に指定され,国立唯一の工業系専門高校として,そ

の役割を担ってきている。 昭和58年度から昭和61年度までの第1回目となる研究開発では,「課題研究」,「情

報技術基礎」を開発した。科目「課題研究」及び「情報技術基礎」は,平成6年度から

の学習指導要領において,工業課程の必修科目として採択され,現在では,主要科目と

して位置づけられている。さらに,科目「課題研究」においては,スーパーサイエンス

ハイスクールやスーパーグローバルハイスクールにおいて,研究開発の中心となる科目

として位置づけられ,全国多数の高等学校で実践されている。 また,平成7年度から平成9年度までの第2回目となる研究開発では,「人と技術」「数

理基礎」を開発するとともに,教科「科学技術」を提唱した。科目「人と技術」「数理基

礎」においては,その内容の一部が,当時の「工業基礎」「工業数理」に採り入れられ,

平成15年度からの学習指導要領において,それぞれ「工業技術基礎」「工業数理基礎」

に名称変更されて施行された。

さらに,平成14年度から平成16年度の3年間,第1期目となるスーパーサイエン

スハイスクール(SSH)研究開発学校に指定され,科学技術への意識が高い工業高校

の利点を活かした上で,最先端の科学技術を教材として取り入れ,理工系大学と連携を

図りながら,理数系教育における学力向上とともにセンス・創造性・独創性及び倫理観

を高める新しい科学技術教育システムの研究開発を行っている。新科目として,高大連

携科目「先端科学技術入門」や「科学技術」を開発した。平成17年度から平成21年

度までの5年間,引き続き第2期目となるSSH研究開発学校に指定され,国際性の育

成を目指した国際交流の実施,東京工業大学と連携しながら,「高大接続を活かして発展

的内容を取り入れた科学技術教育を行うことによる,未知な課題への挑戦力,国内外と

のコミュニケーション力の育成」を目指し,発展した科学技術教育システムの研究開発

を行っている。新科目として,「科学技術研究入門」を開発した。平成22年度から平成

26年度までの5年間,第3期目となるSSH研究開発学校に指定され,新科目「科学

技術コミュニケーション入門」の開発を行い,同時に,これまでのSSH研究開発で蓄

積した様々な成果をアーカイブズとして開発して,新たなディジタル教材としての活用

を試みるという実践を行っている。平成27年度は,1年間の経過措置校としてSSH

研究開発学校の指定を受け,第3期SSH研究開発で得られた成果の実践と普及を行い

ながら,引き続き「国際的に活躍できる科学技術系の人材の育成」に向けた取り組みを

行っている。

なお本校は,平成16年度まで,東京工業大学工学部附属工業高等学校であったが,

平成17年度に,現在の東京工業大学附属科学技術高等学校に改組している。

このような研究開発の実績を礎にして,今回,スーパーグローバルハイスクールに指

定され,工業・科学技術系の専門高校であるが故の視点から,グローバルリーダーの育

成を目標としている。

− 74 −

昨今の社会からの要請として,国際社会に通用するグローバル人材の育成が掲げられ

ている。地球全体が抱える様々な問題の中から,本校が科学技術高校である特徴を生か

すことのできるエネルギー問題や環境問題に焦点を当てることにより,科学技術系の素

養を持つグローバルリーダー,すなわち,正価の授業では不十分なエネルギー・環境問

題を理解するための基礎知識として,異文化コミュニケーションに必要な地政学的知識,

情報収集や英語によるコミュニケーション能力,自らの主張を発信するための英語力を

備え,これらの基盤となる知識やスキルによって,いままで蓄積してきた科学技術系の

知識や技能を再構成し,同時並行で習得してきた科学技術系の問題解決法を活用して,

エネルギー問題や環境問題等の解を導きだせる「グローバルテクニカルリーダー(Global Technical Leader: GTL)」の育成を目指している。そのため,新科目として,第1年次の

「グローバル社会と技術」,第2年次の「グローバル社会と技術・応用」,第3年次の「S

GH課題研究」を開発し,併せて,グローバルリーダー育成講演会や行事等を活用しな

がら,GTL の育成を行っている。

第1年次の今年度は,当初の予定では,年次進行により,第1年次の開発科目「グロ

ーバル社会と技術」の科目開発を主として行い,他の内容については順次実践していく

ための準備期間として予定をしていたが,指導により,第1学年から第3学年すべての

学年において,本研究開発での取り組みを実践することを求められた。そのため,すべ

ての学年において,科目開発も含めた研究開発の活動は,試行を交えながらの実践を行

っている。

このような背景から,活動内容によっては,1年間の研究成果として十分ではない面

も多々あると思われる。以下に,第1年次の研究まとめを記す。

Ⅱ 第1年次の研究のまとめ

新科目「グローバル社会と技術」について,本科目は,第1学年全員が履修する。本

科目の履修によって,グローバルな視野で,地球全体が抱えている解決すべき問題(テ

ーマ),科学技術による問題解決が求められる現状への理解を促し,さらなる科学技術の

発達が必要であることを認識すれば,自ら学ぶ意欲,思考力,判断力,表現力などの育

成が図られるという考えにもとづき,設置している。学習活動は,①解決すべきテーマ

の理解,②問題解決の手順の習得,③具体的な解決への提案,④英語による発表と討議,

の4つの段階で構成されている。テーマについては,専門分野と普通教科の特徴を活用

した,環境と人間(応用化学),情報モラル(情報システム),メカニズム(機械システ

ム),電力(電気電子),都市(建築デザイン),技術者倫理(地歴),スピーチコミュニ

ケーション(英語)を設定して,専門分野と地歴科・英語科との連携体制を構築し,こ

れらをオムニバス形式で学習する(括弧内の名称は,担当教科・専門分野を示している)。

なお,スピーチコミュニケーションでは,SGH予算で採用した外国人教員とともにテ

ィームティーチングで行った。加えて,東京工業大学教員による特別講義,外部講師に

よる講演会,校外研修による一連の学習内容とした。テーマ「環境と人間」では,環境

に関する多くの情報について,科学的な視点で捉えることが大切であること,新しいエ

ネルギーの開発と同時に,作ったエネルギーをどのようなシステムを構築し,どのよう

に使うかが大切であること。リサイクルだけでなく広い視点で物質の循環を捉え,資源

− 75 −

の有効利用について考えることが大切あること,科学技術は,「持続可能な社会の構築」

を目指すことが大切であることの理解を目標とした。テーマ「情報モラル」では,情報

社会を生きぬくための見方・考え方を学び,何かに直面した際の思考力・判断力を身に

つける。さらに自分でさまざまな課題を解決できる問題解決力を身につけるとともに、

社会の一員として合意形成を図る力を身につけることを目標とした。テーマ「メカニズ

ム」では,エネルギーを生み出す身近なものとして自動車に搭載されているエンジン,

すなわち,熱機関を取り上げ,熱機関の開発過程におけるエネルギー問題や環境問題と

の関わりを踏まえた技術者のあり方を理解することを目標とした。テーマ「電力」では,

二次エネルギーである電気エネルギー(電力)を題材として,その生産・貯蔵・輸送・

消費を概観することを通して,世界規模で発生しているさまざまな問題,特にここでは

エネルギーに関する問題・環境に関する問題について理解し判断する力を養うことを目

的とした。テーマ「都市」では,現代の人間活動の中心となる場所である都市が抱えて

いる様々問題を取り上げ,『都市』その基盤となる技術・都市計画の目的と手法・文化的

歴史的背景などを概観することを通して,環境問題や世界の多様性について理解し問題

の解決方法を創造する力を養うことを目的とした。テーマ「技術者倫理」では,会社の

立場に立って消費者からの苦情担当の立場を考える教育ゲーム「企業理解体験ゲーム」

やリコール隠し事件をモチーフにした「科学技術コミュニケーション場面での判断演習

ゲーム」など,4つの教育ゲームを通して,「技術者のあるべき姿,技術者はどう意志決

定するべきなのか」について考えさせる事を目標とした。テーマ「スピーチコミュニケ

ーション」では,グローバルな環境では,人々はそれぞれ違う母語,文化,価値観を持

っている。将来グローバルな環境下で人をまとめたり,プロジェクトを進めたりしてい

くためには,国際共通言語として使われている英語を用いて,相手に自分の考えをわか

りやすく伝え,理解・納得してもらうことの大切さとそのスキルを学ぶことを目的とし

た。 以上のような学習内容を軸とした試作版のテキストを作成する予定である。

新科目「グローバル社会と技術・応用」について,本科目は,第1年次の「グローバ

ル社会と技術」を学習した上で,さらに,GTL に必要な知識やスキルの習得を目指して

いる。今年度は,3種類のテーマ学習「中東・中央アジア理解」「イスラーム文化研究」

「英語によるコミュニケーションスキル」,各分野による「SGH課題研究への道」,グ

ローバルリーダー育成講演会等の講演会・学校行事を活用した異文化理解等の促進及び

国際交流事業(海外派遣・調査研修)を実践していくという構成としている。テーマ学

習については,3つのテーマをオムニバス形式で実施した。「SGH課題研究への道」に

ついては,3年次の「SGH課題研究」を取り組むための準備の総仕上げとして,

“Response to Energy and Environmental Issues (REEI)”,通称「ミニSGH課題研究」を行

う。REEI は,エネルギー問題・環境問題などの諸問題について,マネージメントの問題

解決手法や定量的分析などを援用しながら,自らの考えを提案する探求型の学習を実施

した。グローバルリーダー育成講演会については,東京工業大学との連携を活用し,学

会等で海外経験の豊富な丸山理事・副学長やリベラルアーツセンターの池上彰教授,外

部からの招へいでは,アメリカ大使館外交官をお招きして,地政学的リスク回避のため

の知識と語学力の鍛錬を目的に実施した。また,希望者のみであったが,アメリカ合衆

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国ケネディー駐日大使の講演会にも参加することができた。行事等を活用した異文化理

解のための学習については,自国の文化を知る「歌舞伎鑑賞教室」,沖縄修学旅行におけ

る体験学習,国際交流で来日したフィリピン共和国の生徒との交流などを活用して,イ

ンクルージョン力の育成を図った。

SGH課題研究について,まず「SGH課題研究」の目的・目標から確立することか

らはじめ,現在実施している従来の「課題研究」との相異を明確にすることから取り組

んだ。「SGH課題研究」は,第1学年の「グローバル社会と技術」,第2年次の「グロ

ーバル社会と技術・応用」を履修している事が前提で,それらを礎にして,エネルギー

問題・環境問題の解決に一助することや,マネージメントを意識した問題解決方法にチ

ャレンジすることを目指している。すなわち,ものをつくること自体を目的とはせず,

エネルギーや環境という視点にたった改善,コストを抑える,あるいは損失のリスクを

回避するためにはどのようにしたらよいのか,などといった視点を大切にしている。実

験データに関する定量的な議論についても,マネージメントに基づく損益や費用便益分

析を念頭においた帰結を目指すことによって,ビジネスフレームワークのような問題解

決の枠組みを活用できるようになると考える。 前述のように,今年度の3年生は,「SGH課題研究」に取り組むにあたり,基礎とな

る第1学年の「グローバル社会と技術」,第2年次の「グローバル社会と技術・応用」を

履修していない。また,ほとんどの専門分野において,従来の「課題研究」として実施

していく予定でテーマが設定されていた。このような状況の中において,「SGH課題研

究」を進めて行くにあたり,既にテーマが決定している分野においては,「SGH課題研

究」にふさわしいテーマをいくつか選び出すことによって,それらを「SGH課題研究」

として認定した上で,急遽研究を行っていくこととした。幸いにして,4分野から合わ

せて15テーマを「SGH課題研究」として実施することができたことは,十分な成果

と言える。 さて,3つの開発科目について,本来であれば,最低でも1年間をかけて年間授業計

画や指導案等について協議し,教材開発にも十分な時間をかけて作成するなどし,実施

に向けた準備を段階的に経た上で実践に踏み切りたかった。しかしながら,今日までの

蓄積を活用し,施行という形式ではあったものの,本格的な実施に近い形での実践を行

えたことは,今年度の大きな成果と言えよう。

Ⅲ 今後の課題・成果の普及

座学を主とする授業展開において,目指す生徒像は,「グローバルな視野で,地球全体

が抱えている解決すべき問題(テーマ)を理解し,科学技術による問題解決が求められ

る現状を理解」でき,「自ら学ぶ意欲,思考力,判断力,表現力などの育成が図」られた

人材である。最終的には,「SGH課題研究」にどのように反映されていくのか,学年進

行に沿って追跡調査を行っていく必要があると思われるが,今後,どのテーマがどのよ

うな力の育成に寄与しているのか,分析を行う必要があろう。その上で,本校で実施し

ている普通教科・工業教科との連携を計画する上での指針とする必要がある。また,第1

学年の「グローバル社会と技術」における7つのテーマなど,盛りだくさんの学習活動

− 77 −

が,どのような力の育成と関連しているのか,効果的に力を引き出すには何をすべきな

のか,など考えるべき課題は多いと思われる。

同様に,第2学年「グローバル社会と技術・応用」においても,テーマ別学習や学内

学外の有識者による講義・講演などの取り組みが,どのような力の育成に有効であった

のかなど,学習内容と学習効果との関連を明確にしていくことが,今後の課題と考えら

れる。 SGH課題研究については,様々な事情から,実質的に年度途中からの実施となった。

しかしながら今年度は,「SGH課題研究」として認定するテーマの選出の仕方から検討

をしはじめ,結果,15個のテーマで実践を行うことができたが,分野によってその数

に大きな差が出てしまうことの是非も問うて行く必要があるのかもしれない。これらを

踏まえ,テーマ設定については,次年度の実施に向けて,研究テーマを設定する基準を

各専門分野の特徴を生かしながら明確にしていくことが必要ではないかと考えられる。

併せて,「SGH課題研究」としての全分野共通の評価方法の導入も検討していくことが

必要となろう。さらに,第1年次の「グローバル社会と技術」,第2年次の「グローバル

社会と技術・応用」などのSGH科目を通した学習は,「SGH課題研究」への導入とな

りうる知識やスキルを身につける場として,専門分野教員と普通教科教員との連携の充

実化をはかり,一層の円滑な運営を目指すことが課題と言える。

本校におけるSGH研究開発がはじまり,1年が経過した。研究第1年次の今年度は,

科目開発については,年次進行ではなく,すべての学年においてSGH科目を実践して

いかなければならなかったが,研究を進める上では,それぞれの取り組みで成果を生み

出すことができ,研究2年次への接続を考えれば,十二分な結果といえる。その反面,

生徒の立場から考えれば,特に「SGH課題研究」においては,1年次,2年次の学習

で,身につけておくべき知識やスキルを与えられていない環境で,研究を行わなければ

ならなかった状況となってしまったことは,教育的に本来避けるベと考える。このよう

な境遇の中,「研究」としての成果を出すことができた15テーマの生徒達に敬意を表し

たい。

成果の普及については,ニューズレターなどの記事を掲載したホームページやSGH

研究開発SNSの活用,視察受け入れなどを通して行った。次年度も,様々な場面での

成果普及に努めていきたい。

− i −

D 関係資料

Ⅰ 運営指導委員会の記録 平成27年度に開催された第1回運営指導委員会及び第2回運営指導委員会について,

記載する。

1 平成27年度第1回運営指導委員会 (1)日 時:平成27年10月29日(木)15:30〜17:15

(2)会 場:田町キャンパス キャンパス・イノベーションセンター3階301室

(3)出席者: ① 運営指導委員

蟻川 芳子 委員(一社)日本女子大学教育文化振興桜楓会・理事長

佐藤 義雄 委員 元文部省・教科調査官 辛坊 正記 委員 エリーパワー株式会社・取締役常務執行役員

② 学内指導者

大竹 尚登 委員 東京工業大学・教授 大即 信明 委員 東京工業大学・教授

高田 潤一 委員 東京工業大学・教授

松田 稔樹 委員 東京工業大学・准教授 ③ 本校

校長,副校長,主幹教諭,SGH研究開発委員会幹事,各研究会幹事,

総務・管理グループ長,総務・管理グループ総務担当主査 (4)内 容:

① 校長挨拶

② 校長より運営指導委員会出席者の紹介 副校長より本校職員出席者の紹介

③ 研究開発の取組状況についての説明・報告

(i)研究開発の概要 遠藤 (ⅱ)各研究会からの報告

(ア)グローバル社会と技術研究会 鈴木卓

(イ)グローバル社会と技術・応用研究会 遠藤 (ウ)SGH課題研究研究会 稻用

④ 質疑応答,助言等(敬称略) 蟻川:私は,本運営指導委員会において最年長であり,かつ大学附属の高校校長経

験者という立場から申し上げたい。プランが大変練れている。このようなプラ

ンを作るペーパーワークがどれほど大変かということは,充分に理解している。

そのうえでこのプランは地に足がついており,また教科横断的である。教科を

横断することは垣根が高く,反対がつきものであるが,「グローバル社会と技

術」という科目は多くの教科の先生方の協力があってのことである。したがっ

てこのプランが採択されたのは当然であり,また実現可能なものと感じた。フ

ィリピン海外研修もとても印象的である。理工系の大学に進む生徒が多いと思

う。東工大もグローバル化を目指している。一足先に,高校でグローバルな体

験を持つことは,大変意義のあるものと思い,期待している。

− ii −

辛坊:リーダーのスキルを育成することは重要である。方向性は素晴らしい。が,

マネージメントという分野での指導を期待されていると考えるので,その観点

から,申し上げたい。「損益」「コスト」という観点に焦点を当てた課題研究を

行うということであるが,マネージメントはコストの問題だけではない。実際,

業界では「原価にこだわるな」ということで製品の開発をする傾向がある。現

在我が社はアメリカの会社と手を結ぼうとしている。近々報道されると思うが,

当初,製品を開発するために,身の丈に合わない投資を行った。(短いスパンで

は損失が大きくても,長期に見れば利益につながることもある。それゆえ, )コストばかりを意識すると,ありきたりのものになってしまう。(競合する製品

との)差別化が大切なのである。確かに技術者は「コスト」の感覚がない。しか

しながら,もう一つ違う観点から見たら,「コスト」のみを言及するのはどう

なのだろうか。 本校:高校生は,企業で働いた経験がない。それゆえ,企業内技術者の置かれた立

場を理解することが出来ず,正義感だけで意思決定をしようとする。そこで本

校では,1年配当の開発科目「グローバル社会と技術」の1テーマとして,「技

術者倫理」を教えている。生徒たちの多くは,企業に勤め,企業内技術者とな

る。企業は慈善事業ではないので,儲からなければ存立し得ない。この点をま

ず確認する必要がある。その上で,様々な状況に関する知識と照合しながら,

道徳的判断をしなければならない。しかしながら,私たち教員も企業での経験

がないため,是非,企業の現状やマネージメント,ベンチャービジネスなどに

ついて教えを請いたい。 佐藤:素晴らしい企画である。ここで3点指摘をしたい。第1点は,評価をどうす

るのか。5年後のまとめの構想,また落としどころは,どこだとしているのか。

その点を考えておく必要がある。どのレベルとするのか,おそらく本事業では

「グローバル化」になるのだろうが,どのようになれば「グローバル化」が実

現したとするのか。その点を明確にする必要がある。第2点として,進めてい

く際のゴールは何か。イギリスのパブリックスクールを訪問したが,そこでは

生徒会長が案内してくれた。彼らの対応は大変素晴らしいものだった。このよ

うな(外国からの訪問者に対する応対が出来ることを)仕上がりを目指すのか。

多民族国家としての身の処し方等どのようにしていくのか。第3点は,カタカ

ナと英語のニュアンスの違いに気をつけなくてはいけない。たとえば英語の

competency とカタカナのコンピテンシーは異なる。このような違いに留意し,

日本語では学ばないというふうにしないと概念負けすることも考えられる。全

体として,細かい到達点の設定,絞り込み,能力評価をどのように敷衍する(押

し広げる)のか,そのあたりを考える必要がある。アンケートをとることだけ

では評価にはならない。たとえば,「計量心理学」を学ばれてはどうか。 蟻川:東工大の「リベラルアーツ」のように,現在私が関わるプロジェクトでも言

われているが,グローバル人材の育成として,「教養」を持つことが重要であ

る。(教養の)再強化が叫ばれており,幅広い教養が必要である。特別な授業

を推進する一方,国語,社会にも力を入れる必要がある。まずは,自国のアイ

デンティティを持つということが最も重要だと考える。日本人としての教育も

大切だと考える。 大即:私の所属する「国際開発」でも,この事業ほどは達していない。しかしなが

らイスラーム圏と人々との交流は精神的にかなり違和感を覚えるものであろ

う。廃材を利用した課題研究は興味深い。今大学で「もったいない」をテーマ

にして研究を行っている。高校生と一緒に行っていくのも一考である。以前校

長をしている際にも強調してきたが,国際交流は常に限られた人数しか経験が

できない。修学旅行で学年全部が行うのは無理だとしても,200人のうちせ

めて50人程度までは増やすべきである。またこれも提唱していたが,生徒が

英語漬けになれる部屋,CNN が流してあるなどそのような設備も用意すべきで

ある。 大竹:SSH は指導してきているが,本日初めて SGH の話しを聞いた。SSH と SGH

− iii −

が切れ分けられており良いが,先生たちが大変だろうと察する。先生方の FD研修としてはどのようなことをされているのだろうか。3ヶ月の海外研修など

が実現すると良いが。 本校:初任者研修,10年研修がある。またそれぞれの分野の先生たちも毎年開か

れる発表会等に参加している。 本校:実際本日参加している3名は先日「教育工学」をベースとした全日本教育工

学研究協議会富山大会に参加し,発表した。 大竹:高校から大学に望むことはどのようなことだろうか。 本校:東工大に進んだ本校の卒業生は,大学では座学の講義が多く,もっと「もの

つくり」をしたいという希望もあるようだ。 本校:東工大の抱く(理想の)学生像とはどのようなものだろうか。 大竹:今回の改革でも掲げているが,高校の SGH と方向性は一緒である。「深い教

養力」などとしている。 本校:大学と単位互換が出来る高大接続教育が実現できるとありがたい。以前「衛

星授業」を実施していたが,あのような形で単位の互換を検討してもらいたい。

具体的には,AP や 「さきがけ」教育などでの単位認定を考えて欲しい。 高田:非常に積極的な取り組みである。ESD は(教育のための研究)開発自体を継

続させることが要である。プロジェクトを行い,そこで無理をすると後が続か

なくなる。これをルーティンにして行く事が重要である。留学生を派遣させて

もらっているが,この構想にもあるように,自分もモンゴルにはよく行くこと

がある。その点でも協力が可能だと考える。 松田:私の場合は高校側,大学側の双方からコメントしたい。高校側としてのコメ

ント。(イスラーム圏との交流の話が出たが)東工大にもイスラーム圏からの

留学生がいる。その人たちを積極的に活用し,日本人や日本そのものをどのよ

うに評価しているか,聞くこともできるだろう。次に「コスト」の概念を取り

入れていることについて,コメントする。これまで「コスト」という概念は SSHにはなかった。そこで「リスクの評価」「コスト」という概念を通じて,理系

の人間としてマネージメントを定量的にとらえることができるようにという

考えから,これらの観点を入れている。大学側としてのコメント。「育成すべ

き能力」とは何なのかを定義すべきである。いくつかの能力が示されているが,

それらの関係や全体像が見えていない。学校としての生徒モデルを打ち出した

上で,ものづくりのために必要な,専門分野などの領域固有の知識の分析(内

部知識・外部知識の切り分けなど)する必要がある。また,学校が考える,技

能とスキルの関係や評価の4観点との関係などについても明確にして,本校の

教育の中で,生徒に学ばせるものづくりのプロセスを設計する必要があるだろ

う。たとえば(課題研究を問題解決場面であると捉えた場合,)問題解決能力

とはどのような能力の組み合わせであるのか,そのために何を教えていくのか

ということを学校として明確にする必要があるだろう。また今回この事業を立

ち上げて,何かを削って新科目を増やしているわけだから,何を失ってしまっ

たのかということも考慮する必要がある。何がどれほど変わっているのかとい

うことも重要であろう。 本校:他大学の教授が本校と東工大との関係について興味をもたれるのは,大学か

ら先生が来られるのは当然として,高校生が大学に行っているのかという点で

ある。先ほどの単位互換の件も然り,その点について,日本女子大ではどのよ

うにしているのか教えて欲しい。 蟻川:選択の時間を利用して行っている。同じ生田の敷地内であるので難しいこと

ではないのだが,高校側としては授業終了後,伝統的に行っているホームルー

ムのため,生徒を一端高校に戻して欲しいということを言っている。そういっ

た点が折り合わないこともある。 本校:各運営指導委員の先生方からいただいてご指導・ご助言を踏まえ,真摯に取

り組んで参ります。その過程の中で,直接ご助言を賜りに参上することがある

かと思いますが,何とぞよろしくお願い申し上げます。

− iv −

本日はご出席賜り,ありがとうございました。

2 平成27年度第2回運営指導委員会 (1)日 時:平成27年2月29日(月)16:30〜18:15

(2)会 場:田町キャンパス キャンパス・イノベーションセンター3階301室

(3)出席者: ① 運営指導委員

蟻川 芳子 委員(一社)日本女子大学教育文化振興桜楓会・理事長

太田 幸一 委員 富士通(株)・顧問 佐藤 義雄 委員 元文部省・教科調査官

辛坊 正記 委員 エリーパワー株式会社・取締役常務執行役員

② 学内指導者 佐藤 勲 委員 東京工業大学・教授・国際企画担当副学長

松田 稔樹 委員 東京工業大学・准教授

③ 本校 校長,副校長,主幹教諭,SGH研究開発委員会幹事,各研究会幹事,

事務長,総務・管理グループ長,総務・管理グループ総務担当主査

(4)内 容: ① 校長挨拶

② 校長より運営指導委員会出席者の紹介

副校長より本校職員出席者の紹介 ③ 研究開発の取組状況についての説明・報告

(i)研究開発の進捗状況(全体) 山口

(ⅱ)各研究会からの報告 (ア)グローバル社会と技術研究会 鈴木卓

(イ)グローバル社会と技術・応用研究会 森安

(ウ)SGH課題研究研究会 稻用 (エ)意識調査集計結果 早坂

④ 質疑応答,助言等(敬称略) 太田:前回欠席のため初歩的な質問で恐縮である。文科省から与えられたというこ

とで,“資源産出国”,“地政学的な”というキーワードが入っているが,産業

全体から見ると“資源”というのはほんの一部であるが,それは文科省が各高

校に割り当てたものなのか。それとも文科省が全国の高校がこのことについて

学習するようにということなのか。 本校:そうではない。本校がそこに注目をして,実践して行こうと決定した。学校

に依って異なっている。本校は科学技術高校であるため,産業,エネルギー問

題のようなテーマを選んだ。他の学校は,たとえばグローバル化として“貧困”

等のテーマを選んでいる所もある。 太田:科学技術として,もっと大きな問題,たとえばシャープが鴻海に買われてし

まう。それはどういうことなのか。日産がルノーの傘下に入ってしまったとか,

また情報産業,東工大の西村先生が書かれ,数年前に出版された「電子立国は

なぜ凋落したか」など,先週先生の講演もうかがったばかりであるが,蔵前の

神奈川支部が主催したものだが,そういった観点で考える必要はないのか。

− v −

また,高校生の視点で言えば,なぜアップルとグーグルなのか,あるいはアマ

ゾンなのか。日本としては孫さんや楽天等でがんばってはいるが。でもなぜな

のか。 ということがありながら,なぜ“資源産出国”,“地政学的な”を選んだのか少

し理解できなかったから,質問をさせていただいた。 最後の課題研究でいろいろな分野に課題が与えられているのは良いのだが,

このようなバイアスがかかってしまった場合,課題研究は自由にできるのか。

構わないのであろうか。 本校:自由にできる。 太田:リンクしなくて良いのか。つまりは資源産出国プラス地政学等のキーワード

について研究しなくて良いのか。 本校:SGH 課題研究としてはそのテーマの範疇内にあるものを選んで研究する。そ

の他はこれまで通りの課題研究として進めていく。したがって従来の課題研究

の3割程度を SGH 課題研究として進めて行きたいと考えている。 太田:前回出席できなかったため,皆さんと同じ認識としたかったため,以上のよ

うな質問をした。 本校:文科省からの依頼として ESD 教育を入れなさいということがひとつあった。

「持続可能な・・・」Education for Sustainable Development それがテーマとし

てあり,それを入れる方向で本校のテーマを考えた。そこで,他の学校が選ば

ない“資源産出国”交流を選んだ。また加えて本校は科学技術高校であり,科

学系人材を育成している,その上でいかにグローバル人材の育成と関連づける

かということがこの研究の難しいところである。また技術者が狭い視点でもの

を見るのではなく,地球全体として何が求められているのかに目を向けられる

ようになれば良いかと考えている。 佐藤(義):関連して,そこに SSH と SGH の関係があると考える。SSH と SGH の

棲み分けをどのように行うのか。私なりに考えてみたが,SGH の概要を含めて,

発散,拡散しないように,一つ一つの役割,言葉,組織をよく精査していく必

要がある。たとえば日本はなぜ負け続けるのか。ここでグローバル化への対応

が悪いのではないかと考えられる。上が悪いのか下が悪いのか,誰が悪いのか

ということもさることながら,どこを改善するのか。そういう産業に入ってい

く人のために教育は何をするのか。資源というのは先行利益として確保するこ

とはできるのかもしれないが,しかしそれは下の方の考えであり,世界を牽引

していくような考え方ではない。したがって SSH で何をするかも重要だが「開

発と生産」戦略をどのようにするのか。その際に重要になるもう一つのキーワ

ードが,役割と関連するが,チームとしてどのように貢献するのかあると考え

る。育てたい子どもたちの資質が何であるのか。そしてそれがスタンダードで

あるのかどうなのか。そのうえで,人をリードしていく,開発している人達,

そのような人を育成してく全体像を考えていかなければいけない。先ほど太田

先生が心配されていたが,私もその点において同感である。もう少し背伸びを

しても良いのかと思う。そのような人をどのように育成していくのか他の方々

の意見をうかがいたいところである。 蟻川:理想的な内容だと思うが,自分の附属を見ていても,限られた時間の中でこ

のような横断的な内容を設けている点で大変素晴らしい。そこは評価したい。

高校生,特に技術系の生徒にとってはとても素晴らしい内容だと考える。質問

としては,1 年次が対象となっているが,2 年,3 年は対象とならないのか。1

年次は教科横断的ではあるが,他の学年はないのか。 本校:1 年は共通の科目を学習している。分野に分かれていないため,オムニバス

式が可能である。しかし2年からは横断的な形式は難しい。 蟻川:今年度の 2 年次以上は今年度は無理だということだろうか。つまり 2 年,3

年は 1 年のような授業は受けることができないということで,とても残念だと

思う。5年後は可能になっていくということだと考える。是非 5 年間で計画を

成し遂げて欲しい。また SGH としての支援がなくなっても,是非継続していっ

− vi −

て欲しい。 非常に細かいことではあるが,第一章“電力”が挙げられているが,SGH の

目標は科学技術のマネージメントとあるので,エネルギーとかコストといった

観点から考える。したがって“電力”は少し小さいとらえ方ではないだろうか。

広げてしまうと散漫になるとは思うが大きく捉えた方が良かったのではない

だろうか。 辛坊:もうご意見がでて,おさまった話しかもしれないが。太田さんと同じことを

思っていた。国際的な中で,技術を中心にして学んでいくということであれば,

中東,イスラムは続けてもらいたい。確かに役に立つだろう。ただ本当に今日

本にとって土台はどこなのか。経済的な収支は落ちたとはいえ,中味は中東,

オーストラリアを始めとする産油国,またイタリア,フランスなどブランド国

が中心で,アメリカの黒字を作って,ボトムを支えている。資源価格が上下し,

自動的に落ち着くような関係になっている。日本が20年成長できない。本当

に日本の幸せを考えると,せっかく作ったものが,日本を豊かにしていない。

確かにエネルギーは重要ではあるが,給料が上がらない。うっかりすると費用

の一部は稼いでいたとしても,国民の生活は豊かになっていない。そのあたり

の技術の使い方,企業の枠組み,そこで世界の枠組みの中で考えるべきか,技

術を取巻く枠組みを見るというのも意味があるのではないか。 佐藤(義):課題研究の中味も大切だが,偉人の伝記,会社の歴史,おおよそもって

30 年と言われている。送っている技術者が悪いのか。何が起きているのか。そ

の辺りを扱った方が良いのではないのか。池上さんはなぜあれだけ情報を集め

られるのか。それを調べるだけでも面白いのだが。SGH のこれからの 4 年間を

どのように展開させていくか。生徒の育ち方が違うのではないだろうか。いろ

いろたくさん知っていても仕方がないのでないのでは。一生懸命開発・生産し

ても仕方がない。「感覚・感じる能力」感受性を育成した方が良いのではない

か。育成できるのは「感受性」である。そういう人達同志が会った時,お互い

がわかり合うのではないだろうか。 今ベトナムが良い。タイより良いらしい。それを含め,整理するとあと 4 年は

何をするのか。絞り込めないだろうか。何かを捨て,何かを選ばなければなら

ない。捨てるのも必要なのでは。一つ一つの科目の役割,内容を厳選して,全

体の構造が見えるようにはっきりさせた方が良いのではないか。 本校:拝聴させていただいている。いい訳かもしれないが,本校の要は技術教育で

ある。それをグローバル技術教育の中に取り込みたかった。そしてより良い技

術者を育てたいと考えた。それでこのような取組とした。その中でも要は「技

術者倫理」である。企業の中ではいったい何が起こっているのか。もちろん事

故等は起こらない方が良い。そのような意志決定をしない人材を育成すること

が技術者教育の中で必要な部分である。それが技術教育でのスタートかと考え

る。本校の生徒は温室の中で育っている。石油が10円あがっても,実感がな

い。現地法人,企業で働く人が海外でがんばっている人がいるから,現在の日

本が成り立っている。国際交流等の授業の中で感じて欲しい。そのような観点

で特に資源産出国との交流を行った。 佐藤(義):中味を深めていく意味でグローバル人材という観点で,資源に関するこ

とで世界を牽引することはできない。下支えには良いかもしれない。中国がレ

アアースをあきらめた。なぜ諦めたのかといえば,中国が世界水準まで上がる

ことができるようになったから,もうレアアースが必要なくなってきたという

ことである。リーダーの備えるべきスキル,力,世界をリードする人材を育成

するという観点,バックキャスティングする時にエネルギーという観点は弱い

のではないだろうか。課題研究や他で興味を持った生徒は追求して良いことで

ある。全員にさせる必要はあるのか。元々のグローバル人材という意味も確認

しなければいけないが,世界戦略を考えたら,違ってくるのではないか。日本

をもっと良くしていく,日本国民がどのようになっていくのか,ということを

科学技術がどのように推していくのかということを考えるべきであろう。

− vii −

本校:質疑応答から講評へと移ってきているので,講評をお願いしたい。 佐藤(勲):大学院修士・博士でリーダーシップを育成を行ってきているが,とても

難しい。簡単に言ってしまえば,いろんな人がいて「多様性」が認識できて「自

分はどこにいる」「何をしたいか」認識しそれをサイクルさせることができれ

ば良いのだと考えてはいるが。大学生よりも高校生の方がスレていない。その

分感受性が強く育成しやすいのだと考える。立ち位置,self-awareness 自分とい

うものを認識したことがない。だから一番分かりやすいものとしてエネルギー

問題は理解させやすい。興味はもっている。3 学年を一度に行うのは大変だろ

うと驚いている。その中で課題研究では分野をまたいで,分野間で協力して助

け合うことが非常に有効だと思うが,いかがだろうか。 田町には文系の生徒

はいないかもしれないが,もしそういう機会があれば,人文系を協力し持ち寄

ってみたらどうか。よりスーパーグローバルな課題をこなせるのではないだろ

うか。イノベーションの核となるのは SSH でやったらどうか。そうすると SSHと SGH が明確になるのではないだろうか。可能であれば分野を混ぜてみたらど

うか。 本校:平成7,8年前で研究開発でそのようなことをした事がある。継続できなか

ったのは,難しかったのだと思う。 佐藤(勲):成果を出しにくいのは理解できる。 本校:平成16年の SSH で3足歩行ロボットを作成したことがあった。メカが機械,

制御が電子で賞を獲得したこともある。今後の課題としたい。 松田:質問として,技術系教育の本質がそもそも何なのか。もう少し深めた方が良

いのではないのか。1年生の科目は内容が仕組みの説明に重点がかかっている。

仕組みは重要なのだろうか。工学や技術は価値を創造することが重要である。

それ以前,なぜそれを作るのか。メリット,デメリット,それを作るためにど

うするのか。種々の選択肢があるはずである。メカニズムは後でも良いのでは

ないのか。そこに着目する必要がある。もしそれに興味を持てば自分で調べる

だろう。自分で勉強できるようになる必要がある。問題解決に本当に必要な知

識は限定的に考える必要がある。見方考え方について何を教えるべきなのか。

今文科省が教科横断的な資質の育成にいて検討している。考えた時に何が必要

なのか,それを調べる力がいるのではないか。そのあたりが教えられていない

のではないのではないだろうか,調べられる能力が大切なのではないか。 1年の学習が基礎になっているが,1,2,3年の科目がつながっているのか。

オムニバスのどの順番でも良いのか,本当にそうか。場合によって,実は順番

は必要かもしれない。最初に学ぶことと,いつでも良いことがあるのではない

か。 またグローバルの本質は何であるのか。それも考えなければならない。新しい

価値を創造する。理解する手段として協働学習,交流をする必要はあるが,新

しい価値を創造するために言語が必要となる。そのために交流が必要になる。

が,交流の仕方を学習する必要はないのではないか。その中で SSH と SGH を

考える際に上と下の設計をするのは2つある。上の方がグローバルで,下の方

が SSH,それを実現するのは SSH。そういう協力関係もあり得るのではないか。

つまりはすべての生徒を SGH にする必要があるのか。 評価についてはアンケートは止めた方が良い。もちろんとった方が良いが,

基本はどのように変容を見るか工夫が必要である。意識や態度の変容を見るた

めの工夫が必要である。学習の成果は「組織学習」,組織に学習の成果がどの

ように残っているのか。たとえば少人数の生徒が国際交流を経験した,その国

際交流で学んできたことを組織に波及させる,次の学年に伝える。その仕組み

を考えることが必要だと思っている,私自身はゲーミングが有効かと考えてい

る。 太田:講評として,SSH でがんばってきた先生達が SGH でもがんばっている。1

年間で推進してきたということで,先生達は大丈夫だろうか。SSH をここまで

進めてくるのは大変だったと思う。SSH は成果をあげてきている。

− viii −

1年生は世界史を習っているのか。習っている最中かと思う。欧州からロシア

までの歴史を学んだうえでの方が良いのでは。その様な背景を理解したうえで,

SGH を推進した方が良いのではないだろうか。50ページ以降高校の行事が

SGH に組み込まれている。池上先生をたのんだりもした。なかなか聞けない。

附属の「ブランド力」をつけることは大事ある。親へ与える影響が大きい。非

常に良くなっていくはずである。課題研究も含めて,広めていけば実現が可能

なのではないだろうか。 蟻川:人材育成は大切。大学でやるものだが,高校レベルでどのようにしていくか。

授業では難しい。まずは成功した企業,失敗した企業を講演という単発的な形

式で聞けばよいのではないか。感受性の高い生徒はなるほどと思うのではない

か。事例が共感を生むのではないだろうか。計画が素晴らしいので長く,温か

く見守りたいと思う。 佐藤(義):科目の構成についてはまたメールで申し上げたい。 辛抱:日本の競争力について,自分が知ることができたのは,やはり自分が行った

時だ。出向くことは大切である。 佐藤(勲):全世界の動きを見ていてリベラルアートの一環として理系の内容を行っ

ている訳である。リーディングハイスクールとしてがんばって欲しい。役目だ

と思うので引き続きがんばって欲しい。 松田:SGH と SSH との合流。企業と技術者として合流させることも必要かと考え

る。 本校:各運営指導委員の先生方から頂戴しましたご指導・ご助言を,今後の研究活

動に行かせるよう取り組んで参りたいと思います。本日はありがとうございま

した。

Ⅱ 連絡協議会等の記録

1 平成27年度第1回SGH連絡協議会・連絡会 (1)日 程:平成27年6月23日(火)

(2)出張者:仲道副校長,遠藤副校長補佐

(3)場 所:筑波大学文京校舎講堂 (4)内 容:本会は,午前中は,文部科学省が主催する連絡協議会,午後は,筑波大学

附属学校教育局が主催する連絡会であった。まず,午前中の連絡協議会では,

国立教育政策研究所・文部科学省初等中等教育局教育課程課・国際教育課の

向後秀明教科調査官より「スーパーグローバルハイスクールに期待するこ

と・求められること」についての講演があった。午後は,「情報共有のため

のネットワーク構築等について」の講演を拝聴した後,平成26年度SGH

指定校3校による事例発表があり,各校の取組状況の紹介があった。その後,

平成26年度SGH指定校56校によるポスターセッションが行われた。

2 平成27年度第2回SGH連絡協議会・連絡会

(1)日 程:平成27年12月2日(水)

(2)出張者:仲道副校長,草彅事務長,山口教諭 (3)場 所:筑波大学文京校舎講堂

(4)内 容:本会は,午前中は,文部科学省が主催する連絡協議会,午後は,筑波大学

附属学校教育局が主催する連絡会であった。まず,午前中の連絡協議会では,

− ix −

初等中等教育局国際教育課小林万里子課長からご挨拶の後,初等中等教育局

国際教育課長補佐荒井忠行氏より平成28年度に実施予定の中間評価等に

関する説明があった。午後は,筑波大学附属学校教育局が主催する連絡会が

開催され,附属学校教育局石隈利紀教育長のご挨拶後,2部構成で行われた。

第1部においては,「SGH指定校4校(宮城県仙台二華中学校・高等学校,

渋谷教育学園渋谷高等学校,京都府立嵯峨野高等学校,島根県立出雲高等学

校)による事例発表」が行われた。第2部においては,「次世代を担う高校

生のグローバル意識と行動」調査報告と題し、筑波大学大学院ビジネス科学

研究科教授永井裕久氏より「研究プロジェクトの全体像」の講演があった。

引き続き,以下の5つの分科会が行われ,参加者は関心のある分科会に参加

した。

「将来のグローバルな活躍に向けて期待される教育内容」 「課題解決に向けた PPDAC メソッド活用」

「筑波・UBC 研修プログラム内容と事務局運営」

「グローバルマインドセット発揮とグローバルコンピテンシーの活用」 「クリティカルインシデントと問題解決能力測定シミュレーション」

Ⅲ SGH関連の出張等の記録

平成27年度におけるSGH関連の出張について記載する。なお,海外研修については,

「グローバル社会と技術・応用研究会の活動報告」を参照されたい。

1 立命館宇治中学校・高等学校 SGH 研究発表会への参加

(1)日 程:平成27年12月17日(木) (2)出張者:山口教諭

(3)場 所:立命館宇治中学校・高等学校

(4)行事名:「平成27年度SGH研究発表会」

2 北海道登別明日中等教育学校SGH課題研究発表 2016 への参加

(1)日 程:平成28年1月21日(木)~22日(金) (2)出張者:遠藤副校長補佐,井口教諭,近藤教諭

(3)場 所:北海道登別明日中等教育学校

(4)行事名:「第3回『あけびの日』*及びSGH課題研究発表 2016」 *『あけびの日』とは,保護者向け「授業参観」の日

3 神戸市立葺合高等学校SGH中間発表会への参加 (1)日 程:平成28年1月29日(金)

(2)出張者:井口教諭,ミギャン・パトリシア講師

(3)場 所:神戸市立葺合高等学校 (4)行事名:「平成27年度神戸市立葺合高等学校SGH中間発表会」

− x −

4 筑波大学附属高等学校SGH報告会への参加

(1)日 程:平成28年2月6日(土) (2)出張者:多胡教諭,早坂教諭

(3)場 所:筑波大学附属高等学校

(4)行事名:「筑波大学附属高等学校「第 1 回 SGH 活動報告会」」

5 島根県立出雲高等学校SGH研究発表会への参加

(1)日 程:平成28年2月10日(水) (2)出張者:早坂教諭

(3)場 所:島根県出雲市民会館

(4)行事名:「島根県立出雲高等学校「SSH 並びに SGH 研究成果発表会」」

Ⅳ 報道機関等による取材・報道の記録

平成27年度は,報道機関等による取材・報道の記録に該当するものはなかった。

-xi-

Ⅴ 平成27年度教育課程表

平成27年度入学生教育課程履修科目

教科 科 目 必修 選択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

国語 国 語 総 合 4 4

0,2,4 国 語 表 現 現 代 文 B 2 1 3 古 典 A 2

地理 歴史

世 界 史 A 2 2

0,2,4 日 本 史 A 2 2 世 界 史 B 日 本 史 B 2 地 理 A

公民 現 代 社 会 2 1 3

0,2,4 倫 理 政 治 ・ 経 済

数学

数 学 Ⅰ 3 3

0,2,4 数 学 A 1 1 数 学 Ⅱ 4 4 数 学 B 2 2 数 学 Ⅲ 3

理科

物 理 基 礎 2 2

0,2,4

物 理 1 1 3 化 学 基 礎 2 2 化 学 1 1 3 生 物 基 礎 地 学 基 礎 科 学 と 人 間 生 活 2 2

保健 体育

体 育 3 2 2 7 保 健 1 1 2

芸術 音 楽 Ⅰ

2 2 美 術 Ⅰ 書 道 Ⅰ

外国語

コミュニケーション英語Ⅰ 2 2

0,2,4 コミュニケーション英語Ⅱ 4 4 コミュニケーション英語Ⅲ 4 4

英 語 表 現 Ⅰ 2 2 英 語 表 現 Ⅱ 2

家庭 家 庭 基 礎 2 2 小計 23 21 13 57 3,6 0,2,4

工業

科学技術基礎*(特例対象) 3 3

数 理 基 礎* 2 2 グローバル社会と技術* 1 1 情 報 技 術 基 礎 2 2 科 学 技 術* 2 2

科学技術コミュニケーション入門* 1 1 先端科学技術入門* 1 1

グローバル社会と技術・応用* 2 2 課 題 研 究 4 4 S G H 課 題 研 究* 各 分 野 科 目 ※ 5 4 9 3,0 0,2,4

小計 8 11 8 27 3,0 0,2,4 ホームルーム活動 1 1 1 3

合計 32 33 22 87 6 0,2,4 卒業時単位数 93,95,97

表中の「*」は,学校設定科目を示し,太斜字はSGH開発科目を示す。

-xii-

平成26年度入学生教育課程履修科目

教科 科 目 必修 選択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

国語 国 語 総 合 4 4

0,2,4 国 語 表 現 現 代 文 B 2 1 3 古 典 A 2

地理 歴史

世 界 史 A 2 2

0,2,4 日 本 史 A 2 2 世 界 史 B 日 本 史 B 2 地 理 A

公民 現 代 社 会 2 1 3

0,2,4 倫 理 政 治 ・ 経 済

数学

数 学 Ⅰ 3 3

0,2,4 数 学 A 1 1 数 学 Ⅱ 4 4 数 学 B 2 2 数 学 Ⅲ 3

理科

物 理 基 礎 2 2

0,2,4

物 理 1 1 3 化 学 基 礎 2 2 化 学 1 1 3 生 物 基 礎 地 学 基 礎 科 学 と 人 間 生 活 2 2

保健 体育

体 育 3 2 2 7 保 健 1 1 2

芸術 音 楽 Ⅰ

2 2 美 術 Ⅰ 書 道 Ⅰ

外国語

コミュニケーション英語Ⅰ 2 2

0,2,4 コミュニケーション英語Ⅱ 4 4 コミュニケーション英語Ⅲ 4 4

英 語 表 現 Ⅰ 2 2 英 語 表 現 Ⅱ 2

家庭 家 庭 基 礎 2 2 小計 23 21 13 57 3,6 0,2,4

工業

科学技術基礎*(特例対象) 3 3

数 理 基 礎* 2 2 人 と 技 術* 1 1 情 報 技 術 基 礎 2 2 科 学 技 術* 2 2

科学技術コミュニケーション入門* 2 2 先端科学技術入門* 1 1

グローバル社会と技術・応用* 2 2 課 題 研 究 4 4 S G H 課 題 研 究* 各 分 野 科 目 ※ 5 4 9 3,0 0,2,4

小計 8 12 8 28 3,0 0,2,4 ホームルーム活動 1 1 1 3

合計 32 34 22 88 6 0,2,4 卒業時単位数 94,96,98

表中の「*」は,学校設定科目を示し,太斜字はSGH開発科目を示す。

-xiii-

平成25年度入学生教育課程履修科目

教科 科 目 必修 選択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

国語 国 語 総 合 4 4

0,2,4 国 語 表 現 現 代 文 B 2 1 3 古 典 A 2

地理 歴史

世 界 史 A 2 2

0,2,4 日 本 史 A 2 2 世 界 史 B 日 本 史 B 2 地 理 A

公民 現 代 社 会 2 1 3

0,2,4 倫 理 政 治 ・ 経 済

数学

数 学 Ⅰ 3 3

0,2,4 数 学 A 1 1 数 学 Ⅱ 4 4 数 学 B 2 2 数 学 Ⅲ 3

理科

物 理 基 礎 2 2

0,2,4

物 理 1 1 3 化 学 基 礎 2 2 化 学 1 1 3 生 物 基 礎 地 学 基 礎 科 学 と 人 間 生 活 2 2

保健 体育

体 育 3 2 2 7 保 健 1 1 2

芸術 音 楽 Ⅰ

2 2 美 術 Ⅰ 書 道 Ⅰ

外国語

コミュニケーション英語Ⅰ 2 2

0,2,4 コミュニケーション英語Ⅱ 4 4 コミュニケーション英語Ⅲ 4 4

英 語 表 現 Ⅰ 2 2 英 語 表 現 Ⅱ 2

家庭 家 庭 基 礎 2 2 小計 23 21 13 57 3,6 0,2,4

工業

科学技術基礎*(特例対象) 3 3

数 理 基 礎* 2 2 人 と 技 術* 1 1 情 報 技 術 基 礎 2 2 科 学 技 術* 2 2

科学技術コミュニケーション入門* 2 2 先端科学技術入門* 1 1 課 題 研 究 4 4 S G H 課 題 研 究* 各 分 野 科 目 ※ 5 4 9 3,0 0,2,4

小計 8 10 8 26 3,0 0,2,4 ホームルーム活動 1 1 1 3

合計 32 32 22 86 6 0,2,4 卒業時単位数 92,94,96

表中の「*」は,学校設定科目を示し,太斜字はSGH開発科目を示す。

-xiv-

また,前ページの表で「※」の部分詳細は,次の表のようになる。 材料科学・環境科学・バイオ技術分野の科目

科 目 必 修 選 択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

工 業 物 理 化 学 1 2 3

0,2,4 有 機 工 業 化 学 2 2 4 地 球 環 境 化 学 2 2 工 業 技 術 英 語 1 生 物 工 学 2

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4 情報・コンピュータサイエンス分野の科目

科 目 必 修 選 択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

電 気 基 礎 1 1

0,2,4 電 子 回 路 2 2 ハ ー ド ウ ェ ア 技 術 1 1 ソ フ ト ウ ェ ア 技 術 2 2 プログラミング技術 2 1 3 コンピュータシステム技術 3

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4 システムデザイン・ロボット分野の科目

科 目 必 修 選 択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

実 習 3 3 2

0,2,4 製 図 2 2 機 械 設 計 2 2 機 械 工 作 2 2 自 動 車 工 学 1

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4 エレクトロニクス・エネルギー・通信分野の科目

科 目 必 修 選 択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

電 気 基 礎 4 2 6

0,2,4

電 子 技 術 1 1 実 習 2 2 電 子 計 測 制 御 2 電 気 機 器 1 電 力 技 術 通 信 技 術

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4 立体造形・ディジタルデザイン分野の科目

科 目 必 修 選 択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

製 図 2 2 4

0,2,4 建 築 構 造 1 1 2 建 築 構 造 設 計 1 1 建 築 計 画 1 1 2 建 築 施 工 2 建 築 法 規 1

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4 類型選択(6単位)の4コース

教科 コース 専門 数学 理 科 国語 地理

歴史 英語 物理 化学

専門系 a 3 3 理科系 b 3 3 理科系 c 3 3 文科系 d 2 2 2

-xv-

Ⅵ SGH生徒意識調査 この意識調査は生徒の意識の変容を客観的にとらえ,本校における状況を理解し,本校におけ

る今後の SGH 研究開発に資する目的で実施した。 1 調査内容

(1) 調査対象: 全校生徒 (2) 調査回数: 1 学年 …… 年 2 回(平成 27 年 6 月と平成 28 年 1 月) 2 学年 …… 年 2 回(平成 27 年 6 月と平成 28 年 1 月) 3 学年 …… 年 2 回(平成 27 年 6 月と平成 27 年 12 月) (3) 回答方法: 5 段階の間隔尺度による自己評価で,マークシートを利用する。

2 調査項目

グローバルテクニカルリーダーとして育成すべき資質と能力に関して,以下の項目を調査し

た。 ① リーダーが備えるべき 3 つのスキル

【Q1】インクルージョン力(多様性受容力) 世界の文化の違いに気づき受け入れること

ができる。 【Q2】バックキャスティング力(目標から現在すべきことを考える力)

持続可能な社会を実現するために過去を振

り返って,今は何をすべきか企画できる。 【Q3】コンセンサスビルディング力(合意形成力)

相手を納得させながら自分の意見に賛同し

てもらうことができる。

② 【Q4】地政学的なリスク回避力(地域に依存するリスクを理解した上で,リスクを回避

するための意思決定できる能力) 地域特有のリスクを理解した上で,リスクを

回避するための決定ができる。

③ 語学力(英語によるコミュニケーション力) 【Q5】英語での成果の発信

英語で自分の意見・考え・探求の成果を

多くの人に伝えたい。 【Q6】英語のスピーチ力

探求した結果を英語でスピーチができる。 【Q7】英語のプレゼンテーション力

探求した結果を英語でプレゼンテーション

ができる。

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

① ② ③ ④ ⑤ 伝えたい

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

-xvi-

【Q8】英語の質疑応答力 英語で発表した内容の質問に英語で応答が

できる。 【Q9】英語による議論力

興味・関心のあるトピックなら英語で議論

ができる。 【Q10】英語による文章力

興味・関心のあるトピックなら英語で文章

にできる。 3 調査結果

(1) 学年ごとの調査結果と検定 事前・事後の調査結果をまとめ,学年ごとに,対応のあるサンプルの母平均の差の検定

(t 検定)を行った。 1 学年

検定結果:1 学年では,【Q1】インクルージョン力(多様性受容力)が 5%水準で有意,【Q2】

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q1 インクルージョン力 47 77 48 20 5 197 3.72 1.04

Q2 バックキャスティング力 13 47 83 43 12 198 3.03 0.96

Q3 コンセンサスビルディング力 32 55 82 25 4 198 3.43 0.94

Q4 地政学的なリスク回避力 21 53 80 36 8 198 3.22 0.99

Q5 英語での成果の発信 39 47 55 39 17 197 3.26 1.50

Q6 英語のスピーチ力 9 23 64 69 31 196 2.54 1.07

Q7 英語のプレゼンテーション力 8 25 63 65 36 197 2.51 1.11

Q8 英語の質疑応答力 10 26 52 75 34 197 2.51 1.16

Q9 英語による議論力 14 26 70 61 26 197 2.70 1.16

Q10 英語による文章力 23 51 64 40 19 197 3.10 1.31

1学年(事前)・平成27年6月

質問項目有効回答数と平均・分散

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q1 インクルージョン力 56 79 45 8 5 193 3.90 0.91

Q2 バックキャスティング力 17 51 93 26 7 194 3.23 0.84

Q3 コンセンサスビルディング力 21 57 84 25 7 194 3.31 0.90

Q4 地政学的なリスク回避力 23 59 78 28 6 194 3.34 0.93

Q5 英語での成果の発信 33 50 68 32 11 194 3.32 1.23

Q6 英語のスピーチ力 14 31 65 59 25 194 2.74 1.20

Q7 英語のプレゼンテーション力 7 35 69 57 26 194 2.69 1.06

Q8 英語の質疑応答力 13 21 65 67 28 194 2.61 1.15

Q9 英語による議論力 13 48 55 53 25 194 2.85 1.28

Q10 英語による文章力 26 55 63 34 16 194 3.21 1.28

1学年(事後)・平成28年1月

質問項目有効回答数と平均・分散

-xvii-

バックキャスティング力(目標から現在すべきことを考える力)が 1%水準で有意であった。

また語学力に関しては【Q6】英語のスピーチ力と【Q7】英語のプレゼンテーション力がとも

に 5%水準で有意であった。 2 学年

検定結果:2 学年では,【Q1】インクルージョン力(多様性受容力)および【Q2】バックキ

ャスティング力(目標から現在すべきことを考える力)が 5%水準で有意であった。 3 学年

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q1 インクルージョン力 55 71 40 16 6 188 3.81 1.10

Q2 バックキャスティング力 20 46 65 39 17 187 3.07 1.24

Q3 コンセンサスビルディング力 20 47 84 27 10 188 3.21 0.99

Q4 地政学的なリスク回避力 22 52 68 38 8 188 3.22 1.07

Q5 英語での成果の発信 29 40 65 32 21 187 3.13 1.44

Q6 英語のスピーチ力 14 32 52 55 34 187 2.66 1.38

Q7 英語のプレゼンテーション力 15 31 51 59 31 187 2.68 1.36

Q8 英語の質疑応答力 11 20 54 60 42 187 2.45 1.26

Q9 英語による議論力 17 28 51 57 34 187 2.66 1.43

Q10 英語による文章力 22 50 52 37 26 187 3.03 1.49

2学年(事前)・平成27年6月

質問項目有効回答数と平均・分散

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q1 インクルージョン力 63 74 40 6 3 186 4.01 0.83

Q2 バックキャスティング力 23 50 72 33 8 186 3.25 1.05

Q3 コンセンサスビルディング力 20 57 76 25 7 185 3.31 0.93

Q4 地政学的なリスク回避力 21 61 76 22 6 186 3.37 0.89

Q5 英語での成果の発信 26 43 67 27 23 186 3.12 1.42

Q6 英語のスピーチ力 12 22 58 57 37 186 2.54 1.27

Q7 英語のプレゼンテーション力 11 29 51 54 41 186 2.54 1.36

Q8 英語の質疑応答力 8 17 53 67 41 186 2.38 1.12

Q9 英語による議論力 10 28 53 52 42 185 2.52 1.33

Q10 英語による文章力 16 55 43 39 32 185 2.91 1.54

2学年(事後)・平成28年1月

質問項目有効回答数と平均・分散

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q1 インクルージョン力 57 63 48 14 6 188 3.80 1.10

Q2 バックキャスティング力 19 56 67 34 11 187 3.20 1.08

Q3 コンセンサスビルディング力 22 54 75 28 8 187 3.29 1.00

Q4 地政学的なリスク回避力 17 63 73 26 9 188 3.28 0.95

Q5 英語での成果の発信 23 47 61 34 23 188 3.07 1.40

Q6 英語のスピーチ力 10 27 53 58 40 188 2.52 1.28

Q7 英語のプレゼンテーション力 11 20 56 57 43 187 2.46 1.28

Q8 英語の質疑応答力 12 21 42 59 54 188 2.35 1.41

Q9 英語による議論力 11 23 48 57 49 188 2.41 1.36

Q10 英語による文章力 21 30 53 53 31 188 2.77 1.50

3学年(事前)・平成27年6月

質問項目有効回答数と平均・分散

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q1 インクルージョン力 67 54 43 17 4 185 3.88 1.14

Q2 バックキャスティング力 19 51 79 24 14 187 3.20 1.07

Q3 コンセンサスビルディング力 19 62 82 20 4 187 3.39 0.78

Q4 地政学的なリスク回避力 17 68 74 22 6 187 3.36 0.84

Q5 英語での成果の発信 30 49 55 33 19 186 3.20 1.45

Q6 英語のスピーチ力 12 23 51 63 36 185 2.52 1.28

Q7 英語のプレゼンテーション力 7 25 56 60 37 185 2.49 1.15

Q8 英語の質疑応答力 7 17 49 65 46 184 2.32 1.13

Q9 英語による議論力 8 19 65 60 33 185 2.51 1.07

Q10 英語による文章力 19 36 63 44 22 184 2.92 1.32

3学年(事後)・平成27年12月

質問項目有効回答数と平均・分散

-xviii-

検定結果:3学年ではいずれの項目においても有意差はみられなかった。

(2) 海外研修および SGH 課題研究に関する調査結果と検定 事後調査に関して,対象(参加)生徒と対象外(不参加)生徒の2つのグループに分け,

独立したサンプルの母平均の差の検定(t 検定)を行った。(Levene による等分散性の検定

を含む) フィリピン・オーストラリア海外研修 全校生徒をフィリピン・オーストラリア海外

研修に参加したグループ(14 名)と不参加のグ

ループに分けて t 検定を行った。 検定結果: 母平均の差の検定においては, 1%水準で有意:【Q2】,【Q5】,【Q6】,【Q7】 5%水準で有意:【Q3】,【Q8】,【Q9】,【Q10】 有意差なし:上記以外 (等分散性については,有意水準を 5%として

等分散性を採択:【Q1】~【Q7】,【Q9】,【Q10】等分散性を棄却:【Q8】) 特に,語学力(英語におけるコミュニケーション力)のすべての項目において有意差がみ

られた。

-xix-

SGH 課題研究 第 3 学年の生徒を SGH 課題研究のグループ

(40 名)とそれ以外のグループに分けて t 検

定を行った。 検定結果: 母平均の差の検定においては, 5%水準で有意:【Q6】,【Q8】 有意差なし:上記以外 (等分散性については,有意水準を 5%として

等分散性を採択:【Q1】,【Q2】,【Q4】~【Q10】等分散性を棄却:【Q3】)

-xx-

4 スーパーグローバルハイスクール目標設定シートに関する調査 全校生徒のうち,「SGH 対象生徒」を SGH 課題研究の対象生徒(40 名)とし,「SGH 対象

生徒以外」をそれ以外の生徒として集計を行った。

【Q-a】社会貢献活動や自己研鑽活動に取り組んでいる。 ①いいえ ②はい 【Q-b】留学または海外研修に行った。 ①いいえ ②はい 【Q-c】将来留学したり,仕事で国際的に活躍したいと考えている。

①いいえ ②はい

【Q-d】公的機関から表彰されたり,公益性の高い国内外の大会で入賞した。 ①いいえ ②はい

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

SGH対象生徒 3年 12 28 40 30.00 70.00 100.00

3年 33 114 147 22.45 77.55 100.00

2年 43 143 186 23.12 76.88 100.00

1年 42 152 194 21.65 78.35 100.00

1年~3年合計 118 409 527 22.39 77.61 100.00

SGH対象生徒以外

割合(%)

a. 自主的に社会貢献や自己研鑽活動に取り組む生徒

回答数(人)

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

SGH対象生徒 3年 13 27 40 32.50 67.50 100.00

3年 15 132 147 10.20 89.80 100.00

2年 28 158 186 15.05 84.95 100.00

1年 20 174 194 10.31 89.69 100.00

1年~3年合計 63 464 527 11.95 88.05 100.00

SGH対象生徒以外

b. 自主的に留学または海外研修に行く生徒

回答数(人) 割合(%)

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

SGH対象生徒 3年 25 15 40 62 .50 37.50 100.00

3年 72 75 147 48.98 51.02 100.00

2年 90 96 186 48.39 51.61 100.00

1年 104 90 194 53.61 46.39 100.00

1年~3年合計 266 261 527 50 .47 49.53 100.00

回答数(人) 割合(%)

SGH対象生徒以外

c. 将来留学したり,仕事で国際的に活躍したいと考える生徒

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

SGH対象生徒 3年 8 32 40 20.00 80.00 100.00

3年 17 130 147 11.56 88.44 100.00

2年 13 173 186 6.99 93.01 100.00

1年 17 177 194 8.76 91.24 100.00

1年~3年合計 47 480 527 8.92 91.08 100.00

回答数(人) 割合(%)

SGH対象生徒以外

d. 公的機関から表彰されたり,公益性の高い国内外の大会で入賞した生徒

-xxi-

【Q-e1】次の「実用英語技能検定」に合格した。(複数回答可) ①いいえ ②英検準 2 級 ③英検 2 級 ④英検準 1 級 ⑤英検 1 級 【Q-e2】「TOEIC」または「TOEIC S&W」で次のスコアをマークした。(複数回答可) ①受験していない ②TOEIC 225~545 ③TOEIC 550~780 ④TOEIC 785~940 ⑤TOEIC 945~ ⑥TOEIC S&W160~230 ⑦TOEIC S&W240~300 ⑧TOEIC S&W310~350 ⑨TOEIC S&W360~ ⓪他の資格試験を受験した ※CEFR と実用英語検定・TOEIC との対照は,以下の表に基づく。(文部科学省:英語力

評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会(第 1回)配付資料より)

A1 A2 B1 B2 C1 C2 実用英語検定 3~5 級 準 2 級 2 級 準 1 級 1 級 - TOEIC L&R 120~ 225~ 550~ 785~ 945~ - TOEIC S&W 80~ 160~ 240~ 310~ 360~ -

【Q-f】外国人に対し,文化の違いを理解しながらコミュニケーションできる。 ①いいえ ②はい

満たす 満たさない 合計 満たす 満たさない 合計

SGH対象生徒 3年 9 31 40 22 .50 77.50 100.00

3年 13 134 147 8 .84 91.16 100.00

2年 0 186 186 0.00 100.00 100.00

1年 0 194 194 0.00 100.00 100.00

1年~3年合計 13 514 527 2.47 97.53 100.00

SGH対象生徒以外

e. 生徒の4技能の総合的な英語力としてCEFRのB1~B2レベルの生徒

回答数(人) 割合(%)

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

SGH対象生徒 3年 16 24 40 40 .00 60.00 100.00

3年 60 87 147 40.82 59.18 100.00

2年 105 81 186 56.45 43.55 100.00

1年 92 102 194 47.42 52.58 100.00

1年~3年合計 257 270 527 48 .77 51.23 100.00

(外国人に対し,文化の違いを理解しながらコミュニケーションできる生徒)

回答数(人) 割合(%)

SGH対象生徒以外

f. グローバルリーダーに必要な,多様性に対する受容力を有する生徒

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5 調査結果と検定

(1)成果を示す根拠・学年ごとの調査結果と検定 1 学年および 2 学年の生徒において,「リーダーが備えるべきスキル」のうち,

インクルージョン力(多様性受容力)とバックキャスティング力(目標から現在す

べきことを考える力)の 2 項目について,生徒の自己評価の平均値が上昇した。こ

れは 1 学年の「グローバル社会と技術」において,地球全体が抱えている解決すべ

き問題を理解し,情報モラル・技術者倫理をふまえて,課題設定および問題解決に

至る段階的な学習活動の成果と解釈することができる(参照:p.37(4)研究開発

実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及)。また 2 学年の「グローバ

ル社会と技術・応用」においては,「集中講義」の①「中東・中央アジア理解」や

②「イスラーム文化研究」のテーマ学習の効果,サウジアラビアからの訪問団受け

入れや文化祭におけるフィリピン留学生との交流により多様な文化と接する機会

があったことと,歌舞伎鑑賞教室や修学旅行等により自国の文化を再認識する機

会があったことなどが理由として考えられる(参照:p.40(2)テーマ学習の取り

組み,p.49(4)学校行事)。 一方で,コンセンサスビルディング力(合意形成力)と地政学的なリスク回避力

については意識の変容の有意差を示す客観的な資料は得られなかった。コンセン

サスビルディング力は「SGH 課題研究への道」の中で育成される能力,地政学的

なリスク回避力は「集中講義」および「グローバルテクニカルリーダー育成講演会」

で育成される能力として計画されていたが,その効果を十分に立証できなかった。

今後はそれらの能力育成の方策について,再検討を試みる必要がある。 語学力については 1 学年の生徒のみ,英語のスピーチ力および英語のプレゼン

テーション力の自己評価の平均値が上昇した。これは「グローバル社会と技術」の

第 6 章スピーチコミュニケーションの実施の効果,外国人講師と英語科教員のテ

ィームティーチングの効果と解釈することができる(参照:p.31 第 6 章スピーチ

コミュニケーション,p.33⑤外国人講師との取り組み)。一方で 2 学年の生徒の語

学力については,いずれの項目においても意識の変容を示すことができなかった。

「グローバル社会と技術・応用」の集中講義は引き続き 3 学期補講期間にも実施

予定であるため,調査時期も影響している可能性がある。 3 学年全体を 1 つの母集団ととらえて事前・事後の比較を行ったが,すべての項

目について意識の変容を示す客観的な資料を得ることができなかった。研究開発

一年次において SGH 研究開発の対象となる「SGH 課題研究」の生徒が 40 名と限

定的な人数になり,母集団の中で有意差を示すだけの変容を立証できなかったと

考え,対象生徒とそれ以外の生徒の 2 つの集団の母平均の差の検定に進む。

(2)成果を示す根拠・海外研修および SGH 課題研究に関する調査結果と検定 海外研修に参加した生徒(14 名)は,参加していない生徒(537 名)と比較し

てほとんどの項目で有意差がみられた。「リーダーが備えるべきスキル」のうち,

バックキャスティング力とコンセンサスビルディング力の 2 項目と語学力のすべ

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ての項目において,参加した生徒の平均が参加していない生徒の平均を上回った。

特に語学力については,事前研修や渡航しての実地研修,現地の高校生との意見交

換などの効果と解釈することができる(参照:p.54(6)海外調査研修)。一方で

学習効果を期待した地政学的なリスク回避力については,効果を示す十分な資料

を得ることができなかった。 SGH 課題研究の生徒は,現行の課題研究の生徒に比べて語学力の英語のスピー

チ力と英語の質疑応答力において意識が高かったが,他の項目において有意差は

見られなかった。「SGH 課題研究」の内容として掲げた「グローバルな視野から,

社会が求める技術的な解決を要する課題を自ら設定し,問題点を科学的・技術的な

取り組みによって解決し,得られた結果が社会に及ぼす影響・効果・損益などを成

果として導くことによって,グローバルテクニカルリーダーとしての素養を身に

つける」ことに向けて,生徒の涵養されるべき能力と質問項目との対応について整

理する必要がある(p.70(4)研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・

成果の普及)。

平成28年3月31日発行

スーパーグローバルハイスクール研究開発学校

代表者 校長 宮 本 文 人

所在地 〒108-0023

東京都港区芝浦三丁目3番6号

学校名 東京工業大学附属科学技術高等学校

(TEL 03-3453-2251) (FAX 03-3454-8571)