都 市 農 業 の 現 状 と 課 題 に つ い て -...

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平成23年 10月 都市農業をめぐる情勢について (農村振興局) 資料2

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平 成 2 3 年 1 0 月

都市農業をめぐる情勢について

(農村振興局)

資料2

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目 次 1.都市農業の果たしている役割

(1)都市農業の多様な役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

(2)新鮮で安全な農産物の供給 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

(3)身近な農業体験・交流活動の場の提供 ・・・・・・・・・・・・・・ 4

(4)防災空間の確保 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

(5)やすらぎや潤いをもたらす緑地空間の提供 ・・・・・・・・・・・・ 7

(6) 国土・環境の保全 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

(7)都市住民の農業への理解の醸成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

2.都市農業の位置付けの変化

(1)都市計画法制定時における市街化区域内農地の位置付け ・・・・・・10

(2)バブル期における宅地化の促進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・11

(3)都市農業の振興・都市農地の保全に向けた対応 ・・・・・・・・・・12

(4)都市住民の都市農業・都市農地への期待の高まり ・・・・・・・・・13

(5)都市農業・都市農地の位置付けに関する議論 ・・・・・・・・・・・15

3.都市農業の振興のための施策

(1)税制上の措置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

(2)各種の支援施策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

4.都市農家の経営の現状と課題

(1)経営の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20

(2)農業を続ける上での課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21

(注) 本検討会の対象とする「都市農業」の範囲 ・・・・・・・・・・・・22

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1.都市農業の果たしている役割 (1)都市農業の多様な役割

○ 都市農業は、①新鮮で安全な農産物の供給、②身近な農業体験・交流活動の場の提供、③災害時の防災空間の確保、④やすらぎや潤いをもたらす緑地空間の提供、⑤国土・環境の保全、⑥都市住民の農業への理解の醸成といった多様な役割を果たしている。

新鮮で安全な農産物の供給

○ 消費者が求める新鮮で安全な

農産物の供給、「食」と「農」に関

する情報提供等の役割

災害時の防災空間

○ 火災時における延焼の防止や

地震時における避難場所、仮設

住宅建設用地等のための防災

空間としての役割

国土・環境の保全

○ 都市の緑として、ヒートアイランド

現象の緩和、雨水の保水、地下

水の涵養等に資する役割

都市農業の多様な役割

農業体験・交流活動の場

○ 都市住民や学童の農業体験・交

流、ふれあいの場及び農産物直

売所での農産物販売等を通じた

生産者と消費者の交流の役割

心やすらぐ緑地空間

○ 緑地空間や水辺空間を提供し、

都市住民の生活に「やすらぎ」や

「潤い」をもたらす役割

都市住民の農業への理解の醸成

○ 身近に存在する都市農業を通じ

て都市住民の農業への理解を醸

成する役割

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22

2

23

5

24

79

62

46

69

9

4

10

5

5

13

6

9

16

3

2

4

4

1

31

1

13

10

7

8

2

3

4

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

全国

東京特別区

横浜市

名古屋市

大阪市

野菜

果実

花き

いも類

畜産

その他

(%)

○ 都市での農業生産は野菜が中心であり、消費地の中で鮮度の高い農産物が生産されている。 ○ 特に、特別区のこまつな、えだまめ、横浜市のこまつな、きゃべつ、カリフラワー、名古屋市のみつば等については、全国的に

見ても有数の産地となっている。

○ 主要都市における農産物の部門別農業産出額の割合

資料:農林水産省「生産農業所得統計(平成18年)」

こまつな 特別区 横浜市 えだまめ 特別区 横浜市 名古屋市 きゃべつ 横浜市 特別区 みつば 名古屋市 カリフラワー 横浜市 特別区 シクラメン 横浜市 特別区 しゅんぎく 大阪市 名古屋市 特別区 ブロッコリー 特別区 名古屋市

○ 主要都市における農産物産出額の全国順位

資料:農林水産省「生産農業所得統計(平成18年)」 注 :全国1,817市町村(特別区を含む。)ごとの産出額の上位100位

以内に該当するもの。

(2)新鮮で安全な農産物の供給

こまつな(特別区) 2

52

41

21

96

47

65 68 46

52

1

7

10

10

11

20

2

15

きゃべつ(横浜市) しゅんぎく(大阪市) みつば(名古屋市)

○ 生産現場の様子

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○ 生産された農産物は、消費地の中での生産という特性を生かし、農協・市場へ出荷されるだけでなく、個人への直売や直売所を通じて流通している。(横浜市の例では、市内に農産物直売所が約1,000か所あり、市内で生産されている野菜の約4割が直売により販売されている。)

○ また、学校給食等に対し、新鮮で安全な野菜を納入する取組も幅広く行われている。

○都市農業における生産した農産物の出荷先 ○学校給食に地元産の食材を採用している学校数の割合

(東京都小金井市の例)

資料:東京都教育委員会「平成22年度東京都における学校給食の実態」より

東京都(平成21年度実績) 42 41

30 22

8 3

0

10

20

30

40

50

個人に

直接販売

JA

卸売市場

直売所

スーパー

小売業者

生協

(%)

資料:農林水産省「都市農業実態調査」

○自治体で作成している直売所マップ(例)

100.0%

98.8%

57.6%

72.1%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

町村部計

市部計

区部計

全都計

小 学 校

100.0%

96.9%

65.5%

76.7%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

町村部計

市部計

区部計

全都計

中 学 校

愛知県名古屋市では、市内で収穫した米や野菜を学校給食の献立に使用する「みんなで食べる!なごや産」の日を実施している。

○都市農業による学校給食への食材供給事例

(名古屋市の学校給食献立表の例) 3

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2,512

2,676

2,8192,904

3,0013,124

3,2463,273

3,382

3,596

1,8962,002

2,090 2,1292,232

2,3732,515 2,536

2,643

2,829

1,500

1,700

1,900

2,100

2,300

2,500

2,700

2,900

3,100

3,300

3,500

3,700

H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21

総農園数

うち都市的地域

(農園)

(年度)

市民農園の整備を促進するため、農地法、都市計画法等の特例を措置。

○ 都市農業は、都市住民による農業体験や生産者と消費者の交流の場としての役割を果たしている。 ○ 市民農園や体験農園での農作業体験を希望する都市住民は多く、これを背景として市民農園の開設は年々増加傾向にある。また、高齢者を対象とした福祉農園、子どもを対象とした学童農園など、特徴的な取組もみられる。

○ 一方で、特に東京都特別区等の市民農園は応募倍率が高く、需要に対して供給が追いついていない状況にある。

(3)身近な農業体験・交流活動の場の提供

○市民農園の開設数の推移 ○市民農園の応募率

応募率 (%)

全 国 129

東京都特別区 262

川崎市 382

名古屋市 415

大阪市 275

資料:農林水産省都市農村交流課調べ

○市区町村アンケート

◆市民農園の利用希望者が多いにもかかわらず、市民農園の開設が進まない 理由は何だと考えますか。

資料:農林水産省都市農村交流課調べ (平成22年)

~市民農園の需要に対して供給が追いついていない理由(上位5位)~

資料:農林水産省都市農村交流課調べ (平成20年4月)(回答市区町村数:121市区町村)

(平成22年3月末現在)

10.7

14.0

16.5

22.3

40.5

0 10 20 30 40 50

行政へのPR不足・手続が複雑

相続税納税猶予が適用されない

整備資金がない

管理が大変

適当な土地がない

(%)

4

○市民農園に関する法令の整備

平成元年 特定農地貸付法 制定

地方公共団体及び農業協同組合による市民農園の開設を可能に。

平成2年 市民農園整備促進法 制定

特区制度により、地方公共団体・農協以外の者により市民農園の開設を可能に。

平成14年 構造改革特別区域法 制定

特区制度を全国展開。農家個人、NPO法人、一般企業等による市民農園の開設が全国で可能に。

平成17年 特定農地貸付法 改正

○農作業体験の意向 ◆農作業の体験をしたいと思いますか。

資料:東京都都政モニターアンケート結果「東京の農業」 (回答者数:494名) (平成21年6月)

思う

55 .9%

思わない

15 .6%

どちらとも

言えない

28 .5%

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5

・練馬区「老人クラブ農園」

・国立市社会福祉協議会「やすらぎ農園」

練馬区では、土地の所有者から農園用地を借り入れ、周辺地域の老人クラブに無料で貸し付けを行っている。

国立市社会福祉協議会では、市内在住の70歳以上の方を対象に、現地スタッフの指導のもと、参加者全員で季節ごとにさまざまな野菜をつくる「やすらぎ農園」を開設している。

(参考) 多様な農業体験農園・交流活動の場の例

農業体験農園

屋上菜園

学童農園

福祉農園

高齢者などの利用に配慮した様々な農園が設置されている。

児童・生徒が自ら農作業を行うこ

とを通じて、地域農業の理解や食育の充実などの、豊かな体験活動の場となっている。 (写真:大阪府吹田市の小学校)

農地の不足する都心では、ビルの屋上を利用した貸し菜園の取組みも始まっている。 (写真:渋谷区フィル・パーク 表参道屋上での取組み)

東京都や横浜市などでは、農園主のきめ細かい指導のもとで利用者が農業体験を行う「農業体験農園」が広がりつつある。 (写真:練馬区内の体験農園)

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2630

3742

49

0

10

20

30

40

50

平成17年 平成18年 平成20年 平成21年 平成22年

単位:自治体

都 府 県 名 市区数

取 組 市 区

埼 玉 県 9 川越市、草加市、志木市、和光市、新座市、北本市、

八潮市、三郷市、吉川市

千 葉 県 5 船橋市、松戸市、習志野市、柏市、八千代市

東 京 都

24 世田谷区、杉並区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾

区、江戸川区、武蔵野市、三鷹市、青梅市、府中市、

調布市、町田市、小金井市、小平市、日野市、東村

山市、国分寺市、福生市、東久留米市、武蔵村山市、

稲城市、羽村市、西東京市

神 奈 川 県 4 横浜市、川崎市、藤沢市、秦野市

愛 知 県 2 小牧市、岩倉市

京 都 府 2 城陽市、向日市

大 阪 府 3 貝塚市、守口市、寝屋川市

合 計 49 計4,745ヶ所、1,275ha

(4)防災空間の確保

○防災協力農地の取組実施市区数の推移

○ 建築物の密集する都市において、農地は貴重な空き地でもあり、火災時における延焼の防止や地震の際の避難場所・仮設住宅建設用地等として多様な役割を果たし得る。

○ 平成7年の阪神・淡路大震災の際には、都市部において仮設住宅用地の不足という事態が生じた。このことを契機として、農家や農協、地方公共団体により防災協力農地の協定締結が進められている。

○防災協力農地の役割(全49市区)

○防災協力農地の案内標識(例)

○防災協力農地の取組実施市区(平成22年3月31日現在)

避難場所 35 資材置き場等への利用 27 生鮮食料品の優先供給 26 仮設住宅建設用地 24 その他 8

資料:農林水産省都市農村交流課調べ 注:各年3月31日現在。なお、平成19年は調査をしていない。

資料:農林水産省都市農村交流課調べ

資料:農林水産省都市農村交流課調べ(平成22年)

6

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(5)やすらぎや潤いをもたらす緑地空間の提供

○ 都市農地は、市街地の中で貴重な緑地空間、水辺空間を提供しており、都市住民の生活に「やすらぎ」や「潤い」をもたらす役割を果たしている。

○ 住宅政策においても、農地を市街地内の貴重な緑地資源としてとらえ、農地と住宅地が調和したまちづくりを進めるとの考え方が示されている。

第3 大都市圏における住宅の供給等及び住宅地の供給の促進 1 基本的な考え方 (2) 市街化区域内農地については、市街地内の貴

重な緑地資源であることを十分に認識し、保全を視野に入れ、農地と住宅地が調和したまちづくりなど計画的な利用を図る。

○都市住民の都市農地への期待

○住生活基本計画(全国計画) 平成23年3月15日閣議決定(抄)

○都市農業に触れるための散策マップ

資料:練馬区「練馬区区民意識意向調査」(平成19年度)。「都市農地の役割は何か」への回答(複数回答)

58 55.7 44.6

33.3 27.6 25.7 22.4

010203040506070

みどりや景観・

自然環境の保全

新鮮な農産物

生産の場所

区民農園や収穫体験

など土に親しみ自然と

触れ合う場所

季節を感じる場所

災害時の避難場所

など防災空間

住宅地の良好な

居住環境の保全

食や農業について

学ぶ場所

(%) (東京都国分寺市の例)

7

○都市農業の営まれている風景

(緑地空間を提供している練馬区内の農地の様子)

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○神奈川県横浜市の緑被率(平成21年) ○農地の貯水機能

8

(6)国土・環境の保全

○ 都市農地は、樹林地等とともに都市の緑を形成する主要な要素となっている。これらの都市の緑は、ヒートアイランド現象(都市の中心部における高温地域の発生)の緩和、大雨の際の雨水の保水、地下水の涵養等により、国土・環境の保全の役割を果たしている。

資料:横浜市調査結果(横浜市HPより)

面積 緑被率

緑被地全体 12,972ha 29.8%

うち樹林地 7,569ha (17.4%)

うち農地 2,815ha (6.5%)

練馬区による試算では、練馬区内の畑は、区内の全小学校71校のプールと同じ程度の水を蓄えることができるとされている。

○緑地・農地の地下水涵養に果たす役割

資料:小金井市環境基本計画(平成17年10月)

資料:練馬区ホームページ「都市農業・農地が持つ様々な役割」(平成22年9月)

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(7)都市住民の農業への理解の醸成

○ 農業・農地が身近に存在することで、都市住民が農業に触れる機会も増加する。都市農業には、このような関わりを通じて都市住民の農業への理解を醸成する役割も期待される。

資料:東京農業大学「平成17年農業体験農園の多面的効果と将来の利用に関する利用者調査」

注:練馬区内の農業体験農園の利用者410人を対象にしたアンケート調査

農業体験農園の利用者へのアンケート結果

○小学生記者による「こども農業新聞」の制作

東京都日野市では、市広報でこども記者を募集し、その取材による「こども農業新聞」を年1回発行、市内全小学校に配布している。

○農業体験農園への参加を通じた農業への理解の深まり

都内の農協では、青壮年部などが自主的に学童農園の開設を支援している

○農業者による学童農園拡大への取組

9

八王子市内の中学校でのダイコン収穫作業の様子

練馬区農業体験農園での親子による野菜収穫の様子

1830

3843

4952

6368

727374

79

0 20 40 60 80

子どもが農作業をとおして、野菜に興味をもった家族と農園でともに過ごす時間がふえた

運動不足が多少解消されたスーパーや八百屋で野菜を買わなくなった

家族が野菜をよく食べるようになった近所、農園内に友人がふえた自然環境の大切さを実感した

作物を規格に合わせてつくることは難しいとわかった農業の大切さを実感した

農園に来ることが生活の一部となった野菜についての基礎知識が豊富になった

作物への愛着が湧くようになった

(%)

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○ 高度経済成長に伴い都市への急激な人口流入と産業集中が進む中、無秩序な市街地の拡大を防止しつつ宅地開発需要等に対応して いくため、昭和43年、新都市計画法が制定された。 ○ 同法に基づき設定された市街化区域は、「おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」とされ、その区域内の農 地については、事前に届出を行えば転用が可能となり、同区域において講じられる農業施策も当面の営農継続に必要な効用が短期な措 置に限られることとなった。 ○ 一方、優良農地を主体とした農業地域を保全・形成し、農地の無秩序なかい廃等を抑制するため、翌昭和44年には農業振興地域の整

備に関する法律が制定された。同法に基づき指定された農用地区域は、「農用地等として利用すべき土地の区域」とされ、同区域内の農地の転用は原則として許可されないこととなり、主な農業振興施策はこの区域を対象として計画的・集中的に実施することとされた。

市街化区域

農 用 地 区 域

農業振興地域 1,752万ha <1,723万ha>

543万ha <482万ha> (うち農地面積421万ha

<420万ha>)

123万ha <144万ha>

○農振農用地区域内の農地と市街化区域内農地との関係(昭和49年当時)

資料:農業振興地域、農用地区域面積:農林水産省農村振興局調べ、都市計画区域面積等:国土交通省都市・地域整備局「都市計画年報」 注 :数字は、農業振興地域制度及び都市計画制度の導入初期に当たる昭和49年のもの。ただし、< >内は平成21年のもの。

線引き都市計画区域

概ね10年以内に優先的かつ計

画的に市街化を図るべき区域(農地転用は事前に届出を行えば可能)

農用地等として利用すべき土地の区域(農地転用は原則として許可されない)

各種の 農業振興施策を計画的・集

中的に実施

農用地区域内の農地 当面の営農継続に必要な農業施策に限り実施

〔農業振興施策の基本的考え方〕

市街化区域内の農地

農地面積27万ha <9万ha>

(1)都市計画法制定時における市街化区域内農地の位置付け

市街化調整区域 331万ha

<374万ha>

2.都市農業の位置付けの変化

10

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三大都市圏の 特定市

三大都市圏の特定市以外の市町村

市街化区域内農地 宅地並み評価 宅地並み課税

宅地並み評価 農地に準じた課税

生産緑地 農地評価 農地課税

○ 昭和60年代に入り、三大都市圏を中心として地価が高騰する中、市街化区域内の農地に対しては、その宅地化が強く求められることとなった。

○ これに対応するため、三大都市圏の特定市においては、平成3年以降、宅地化する農地と保全する農地の区分が行われ、宅地化する農地に対しては、固定資産税の宅地並み課税、相続税の納税猶予制度の不適用といった措置により宅地化の促進が図られた。

東京都の特別区並びに首都圏、中部圏及び近畿圏の既成市街地・近郊整備地帯などに所在する市(計213市区)

○相続税納税猶予制度の適用条件等

三大都市圏の 特定市

三大都市圏の特定市以外の市町村

市街化区域内農地 猶予の適用なし 20年継続で免除

生産緑地 適用あり(終身営農が

必要)

○市街化区域内農地における固定資産税の評価・課税

圏域名 都府県名 市 名 首都圏 茨城県(7市) 龍ヶ崎市、取手市、坂東市、牛久市、守谷市、常総市、つくばみらい市

埼玉県(37市) 川越市、川口市、行田市、所沢市、飯能市、加須市、東松山市、春日部市、狭山市、羽生市、鴻巣市、上尾市、草加市、越谷市、蕨市、戸田市、入間市、鳩ヶ谷市、朝霞市、志木市、和光市、新座市、桶川市、久喜市、北本市、八潮市、富士見市、三郷市、蓮田市、坂戸市、幸手市、鶴ヶ島市、日高市、吉川市、さいたま市、ふじみ野市、熊谷市

千葉県(23市) 千葉市、市川市、船橋市、木更津市、松戸市、野田市、成田市、佐倉市、習志野市、柏市、市原市、流山市、八千代市、我孫子市、鎌ヶ谷市、君津市、富津市、浦安市、四街道市、袖ヶ浦市、印西市、白井市、富里市

東京都(27市) 特別区、八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、青梅市、府中市、昭島市、調布市、町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山市、国分寺市、国立市、福生市、狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、多摩市、稲城市、羽村市、あきる野市、西東京市

神奈川県(19市) 横浜市、川崎市、横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、逗子市、相模原市、三浦市、秦野市、厚木市、大和市、伊勢原市、海老名市、座間市、南足柄市、綾瀬市

中部圏 愛知県(32市) 名古屋市、岡崎市、一宮市、瀬戸市、半田市、春日井市、津島市、碧南市、刈谷市、豊田市、安城市、西尾市、犬山市、常滑市、江南市、小牧市、稲沢市、東海市、大府市、知多市、知立市、尾張旭市、高浜市、岩倉市、豊明市、日進市、愛西市、清須市、北名古屋市、弥富市、みよし市、あま市

三重県(3市) 四日市市、桑名市、いなべ市

静岡県(2市) 静岡市、浜松市

近畿圏 京都府(10市) 京都市、宇治市、亀岡市、城陽市、向日市、長岡京市、八幡市、京田辺市、南丹市、木津川市

大阪府(33市) 大阪市、堺市、岸和田市、豊中市、池田市、吹田市、泉大津市、高槻市、貝塚市、守口市、枚方市、茨木市、八尾市、泉佐野市、富田林市、寝屋川市、河内長野市、松原市、大東市、和泉市、箕面市、柏原市、羽曳野市、門真市、摂津市、高石市、藤井寺市、東大阪市、泉南市、四條畷市、交野市、大阪狭山市、阪南市

兵庫県(8市) 神戸市、尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、川西市、三田市

奈良県(12市) 奈良市、大和高田市、大和郡山市、天理市、橿原市、桜井市、五條市、御所市、生駒市、香芝市、葛城市、宇陀市

○三大都市圏特定市(平成23年4月1日現在)

適用あり(20年継続で免除)

宅地並み評価 宅地並み課税 ただし、10年以上営農を継続することが適当であるものとして

市町村長の認定を受けた農地(長期営農継続農地)については宅地並み課税と農地課税の差を猶予(5年間営農で免除)

平成3年度税制改正

平成3年度税制改正

(2)バブル期における宅地化の促進

(従来)

(従来)

11

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12

○ 一方、市街化区域内にあって保全すべきものと区分された農地については、平成3年以降、生産緑地地区として指定され、同年改正後の生産緑地法に基づき長期間農地としての管理が求められることとなった。このことを受け、市街化区域内にあっても生産緑地については、効用が短期なものに限定せず農業施策を実施できることとなった。

○ その後、平成11年には食料・農業・農村基本法が制定され、国として都市農業について生産振興を図るために必要な施策を講ずることが規定された。これを受け、農林水産省においても都市農業の振興に向けた組織体制の整備が進められてきた。

○農林水産省における都市農業担当組織の整備

平成11年7月

平成13年1月

平成17年10月

平成20年8月

平成23年10月

① 良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷

地の用に供する土地として適しているもの

② 500㎡以上の規模の区域

③ 用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備え

ていると認められるもの

① 使用収益権者に農地としての管理を義務づけ

② 農林漁業を営むために必要となる施設の設置等に限り建築等が許可

③ 主たる従事者が死亡等の理由により従事することが出来なくなった場

合、又は告示日から30年経過後、市町村長に買取り申出可能

④ 買取り申出の日から3か月以内に所有権の移転が行われなかった場

合、行為制限が解除

○ 生産緑地地区の指定要件

○ 行為の制限、土地の買取り申出等

○ 市街化区域内農地の区分別面積

・食料・農業・農村基本法制定 「国は、都市及びその周辺における農業について、消費地に近い特性を生かし、都市住民の需要に即した農業生産の振興を図るために必要な施策を講ずるものとする」旨規定。

・農林水産省組織令改正 農村振興局及び地域振興課の所掌事務に

「都市及びその周辺における農業の振興に関すること」を位置付け。

・農林水産省組織令改正 都市農業の担当室として、「都市農業・地域交

流室」を新設

・農林水産省組織令改正 都市農業を専管する室として、「都市農業室」

を新設

・「都市農業の振興に関する検討会」設置

資料:総務省「固定資産の価格等の概要調書(平成21年)」、国土交通省「都市計画年報(平成21年)」 注1:表示単位未満を四捨五入したため計と内訳は必ずしも一致しない。 2:「宅地化農地」は、市街化区域内の農地のうち生産緑地以外を指す。

三大都市圏 特定市

左以外の 都市

宅地化農地 14,562ha (16.6%)

58,940ha (67.1%)

73,502ha (83.7%)

生産緑地 14,278ha (16.3%)

61ha (0.1%)

14,339ha (16.3%)

計 28,841ha (32.8%)

59,001ha (67.2%)

87,841ha (100.0%)

(3)都市農業の振興・都市農地の保全に向けた対応

○生産緑地法の概要(平成3年改正後)

当面の営農継続に必要な効果が短期な農業施策のみ実施

効用が短期なものに限定せず農業施策を実施可能

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40.2

22.4

48.6

48.8

2.4

4.4

8.9

22.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成22年

平成15年

全面的に農地として残す

べき ある程度は農地として残

すべき 積極的に宅地などに転用

していくべき 何ともいえない

66.4 49.2

40.1 30.8

28.7 16.4

15.4 13.0

10.1 9.1

6.1 3.0

0.8

0 10 20 30 40 50 60 70

新鮮で安全な農畜産物の供給

自然や環境の保全

食育などの教育機能

地域産業の活性化

農業への関心の呼び起こし

生活に潤いや安らぎを提供

地域の伝統・文化の継承

災害時の避難場所などの防災機能

良好な景観の形成

地域コミュニティーの場

身近なレクリエーションの場

その他

特にない

「東京の農業・農地に期待する役割」 (%)

(設問)農業や農空間の保全について、 最もあなたの考えに近いものは どれですか。

○都市住民の都市農業・都市農地への期待

資料:東京都都政モニターアンケート結果「東京の農業」(回答者数:494名)

(平成21年6月)

(設問)東京に農業・農地を 残したいと思いますか。

○ 都市農業に関する制度・施策面における対応等を背景として、市街化区域内農地のうち生産緑地地区内の農地はおおむね保全が図られてきたが、それ以外の農地は一貫して減少を続けた。

○ このような中、都市住民を対象とした各種のアンケート調査においては、都市農業の多様な役割を評価し、都市農地の保全を求める意見が多く見られるようになった。

資料:大阪府(平成18年度ネットパル (インターネット府政モニター)アンケート結果(回答者数:400名))

13

○都市住民の都市農業・都市農地への評価

資料:東京都都政モニターアンケート結果「東京の農業」(回答者数:494名)(平成21年6月)

(設問)あなたは足立区のような都市の中にある農地について、 今後どのようにしていくべきだと思いますか。

資料:足立区webアンケート調査(平成22年回答者数:1,692名、平成15年回答者数1,890名)

(4)都市住民の都市農業・都市農地への期待の高まり

0

2

4

6

8

10

12

14

16

H5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21

(万ha)

市街化区域内

農地面積

生産緑地地区

面積

143,258ha

87,841ha

15,164ha 14,339ha

資料:総務省「固定資産の価格等の概要調書」、国土交通省「都市計画年報」

○市街化区域内農地面積の推移

○都市住民の都市農業・都市農地への期待

あまり守る

必要はない

(1.5%)

大いに守って

いくべき

(59.0%)

ある程度守っ

ていくべき

(36.5%)

全く守る

必要はない

(0.5%)

わからない

(2.5%)

思 う (84.6%)

思わない (3.4%)

どちらとも言えない(11.9%)

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14

(参考) 食料・農業・農村基本計画等における都市農業の位置付け

○(旧)食料・農業・農村基本計画 (平成17年3月25日閣議決定)(抄)

第3 食料、農業及び農村に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策 3.農村の振興に関する施策 (3)都市及びその周辺の地域における農業の振興 新鮮で安全な農産物の都市住民への供給、身近な農業

体験の場の提供、災害に備えたオープンスペースの確保、ヒートアイランド現象の緩和、心安らぐ緑地空間の提供といった都市農業の機能や効果が十分発揮できるよう、これらの機能・効果への都市住民の理解を促進しつつ、都市農業を守り、持続可能な振興を図るための取組を推進する。このため、これまでの都市農地の保全や都市農業の振興に関連する制度の見直しを検討するとともに、市民農園や農産物直売所等の整備、都市住民のニーズをふまえた市民農園・体験農園等における農業体験や交流活動の促進等、都市農業振興のための取組を推進する。

第3 食料、農業及び農村に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策 3.農村の振興に関する施策 (3)都市と農村の共生・対流と多様な主体の参画の促進 イ 都市及びその周辺の地域における農業の振興 都市農業が、新鮮で安全な農産物の都市住民への供給、

心やすらぐ「農」の風景に触れ「農」の営みを体験する場の提供、更には災害に備えたオープンスペース(まとまりのある空地)の確保、ヒートアイランド(都市の中心部における高温地域の発生)現象の緩和といった都市住民のニーズに一層応えていくことができるよう、住民も参加した都市農業のビジョンづくりを支援する。また、農産物の直接販売、市民農園、学童農園等における農業体験や交流活動、心から落ち着ける緑地空間の形成、防災協力農地としての協定の締結等の取組を推進する。

○食料・農業・農村基本計画 (平成22年3月30日閣議決定)(抄)

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・都市政策としても、都市近郊や都市内における農 の位置付けについて、総合的に検討することが求 められている。 ・都市近郊や都市内の農地について、新鮮で安心な 地産地消の農作物を提供してくれる農業生産機能 を中心に、自然とのふれあい、憩いの場、防災機 能等の農地の多面的機能を、都市が将来にわたり 持続していくために有用なものとして、都市政策 の面から積極的に評価し、農地を含めた都市環境 のあり方をより広い視点で検討していくべき。

○社会資本整備審議会 都市政策の基本的課題と方向検討小委員会報告(平成21年6月26日)(抄) 第1回(平成21年7月30日)

・小委員会における検討事項 第2回(平成21年8月21日) ・都市計画における分権化の徹底と全体の調和の確保 第3回(平成22年5月24日) ・都市計画制度体系見直しの方向性の検討 等 第4回(平成22年6月15日) ・都市内部の有効利用と周辺部の保全を一体的に実現する仕組 第5回(平成22年7月22日) ・建築的土地利用と非建築的土地利用のバランスのとれた一体的な土地利用 のあり方 第6回(平成22年9月6日) ・建築的土地利用と非建築的土地利用のバランスのとれた一体的な土地利用 のあり方(その2) ※都市農地・都市農業も議題 第7回(平成22年10月8日) ・建築的土地利用と非建築的土地利用のバランスのとれた一体的な土地利用 のあり方(その3) 第8回(平成22年11月5日) ・郊外部における新市街地開発型事業の抑制(選択と集中)及び長期にわたり 実現していない都市計画の定期的見直し検討ルールの確立 第9回(平成22年12月10日) ・都市計画制度体系の見直しの方向性(全体的枠組)の検討(その2) 第10回(平成23年1月21日) ・都市計画制度小委員会のこれまでの検討の整理

第11回(平成23年2月17日) ・都市計画制度小委員会のこれまでの審議経過について(報告) 第12回(平成23年7月4日) ・都市計画制度見直しの視点と東日本大震災復興上の課題 第13回(平成23年8月2日) ・都市計画制度見直し検討の当面の進め方

○社会資本整備審議会 都市計画部会 都市計画制度小委員会の開催状況

○ 都市農業の振興及び都市農地の保全を図っていくためには、市街化区域内農地の取扱いを中心として、都市政策及び農業政策における都市農業・都市農地に関わる制度・施策の在り方について、総合的に検討する必要がある。

○ なお、国土交通省・社会資本整備審議会の都市計画制度小委員会においては、人口の減少、高齢化等が進む中、効率的でコンパクトなまちづくりを進めていく観点から、今後の都市計画制度の在り方について審議を行っており、その中で、都市農業・都市農地の位置付けについても議論が進められている。

(5)都市農業・都市農地の位置付けに関する議論

15

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3.都市農業の振興のための施策

○ 都市農地、特に市街化区域内農地は、一般の農地と比較して地価の水準が非常に高い。このため、経営に対する税の影響に配慮した仕組みが設けられている。

(1)税制上の措置

○農地売買価格の比較(10a当たり、平成22年度)

16

農用地区域内 農用地区域外

田 136万円 167万円 448万円 650万円 5,905万円

畑 96万円 125万円 428万円 605万円 6,104万円

田 - 80万円 - - -

畑 175万円 153万円 1,739万円 1,663万円 2億2,105万円

田 73万円 44万円 1,060万円 1,188万円 7,612万円

畑 48万円 30万円 1,067万円 1,209万円 8,110万円

田 - - 1,175万円 2,232万円 1億1,019万円

畑 - - 1,017万円 2,243万円 1億2,046万円

資料:全国農業会議所「田畑売買価格等に関する調査結果(平成22年)」 注:市街化区域の数値は住宅転用目的での売買価格、それ以外は耕作目的での売買価格。

全 国

東 京

愛 知

大 阪

田 畑区分

都市計画法の線引きをしていない市町村 都 市 計 画 法 の 線 引 き を し て い る 市 町 村

農用地区域内 農用地区域外

市 街 化 調 整 区 域

市街化区域

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①市街化区域内農地に係る相続税

※農業投資価格 農地等が恒久的に農業の用に供されるとした場合に通常成立すると認められる取引価格として国税局長が決定した価格。 東京都の畑の場合で、10a当たり84万円(平成22年分)

○相続税納税猶予制度の適用条件等

三大都市圏の 特定市

三大都市圏の特定市以外の市町村

納税猶予期間の終了事由 とならない貸付け

市街化区域内農地 猶予の適用なし 20年継続で免除

・精神障害者保健福祉手帳(1級)の交付を受けている ・身体障害者手帳(1級又は2級)の交付を受けている ・要介護状態区分の要介護5の認定を受けている ことにより営農が困難となり、貸付けを行っている場合 生産緑地 適用あり(終身営農が

必要)

相続 税率

= 猶予 税額

死亡時等に免除

相続時 の農地 資産評 価額

農業 投資 価格※

通常価 格によ る相続 税額

農業投 資価格 相続税 額

= × 譲渡した場合等は納税

資料:国税局「統計情報」 注1:全国は各国税局の合計値。 2:猶予額及び1人当たり猶予額は、公表数値(千円単位)を四捨五入

により億円、万円単位にしたもの。 3:平成21年中に相続が発生し農地等の相続税納税猶予制度の適用を受

けたものの総額であり、市街化区域外農地も含む。

○農地等の相続税納税猶予制度の適用状況(国税局別)(平成21年)

○ 市街化区域内農地に係る相続税に関しては、相続人が自ら相続した農地で引き続き農業経営を行う場合、経営継承に支障が生じないよう、相続税の一部の納税を猶予する仕組みが導入されている。

○ この制度の適用実績をみると、例えば、東京国税局管内での平均納税猶予額が1人当たり5,594万円となっている。

○農地等の相続税納税猶予制度の仕組み

17

相 続 人 数 猶 予 額

(人) (億円) (割合%)

2,301 585 (100.0) 2,543

東 京 485 271 (46.4) 5,594

名 古 屋 441 63 (10.8) 1,432

大 阪 580 100 (17.1) 1,730

そ の 他 795 150 (25.7) 1,892

1 人 当 た り猶予額 (万円 )

国 税 局

全 国

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950円 1,051円 1,404円 1,705円

187,604円

371,356円

160,834円137,513円

54,729円 53,061円85,546円

44,709円

0円

100,000円

200,000円

300,000円

400,000円

全国 東京都 愛知県 大阪府

②市街化区域内農地に係る固定資産税

○市街化区域内農地における固定資産税の評価・課税

○ 固定資産税に関しては、開発行為が制限を受ける生産緑地地区内の農地については、市街化区域外の農地と同様に農地として評価した価格に対し固定資産税が課税される。

○ 一方、生産緑地以外の市街化区域内農地については、宅地並み評価の対象とされる。ただし、三大都市圏特定市以外の都市では、税額の算出の際農地と同様の負担調整措置(税額の増を前年度比最大+10%までに抑制する措置)が講じられており、宅地並み課税は三大都市圏特定市に限られている。

○全国及び主要都府県の固定資産税額(10a当たり、平成22年)

三大都市圏の 特定市

三大都市圏の特定市以外の市町村

市街化区域内農地 宅地並み評価 宅地並み課税

宅地並み評価 農地に準じた課税

生産緑地 農地評価 農地課税

資料:総務省「平成22年度固定資産の価格等の概要調書(土地都道府県別表)」 注:数値は、10a当たり課税標準額を算出し、標準税率(1.4%)を乗じたもの。

18

生産緑地 生産緑地を除く市街化区域内農地(三大都市圏の特定市) 生産緑地を除く市街化区域内農地(三大都市圏の特定市以外の市町村)

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(2)各種の支援施策

○ 都市農業に関しては、各地方自治体において、施設整備や担い手対策等、各種の支援施策が講じられている。 ○ また、農林水産省においても、ハード、ソフト両面から支援を行っている。

〈地方自治体における各種の支援施策(例)〉

食と地域の交流促進対策推進交付金(ソフト事業) 市民農園の開設、農業体験農園の普及、都市農地の保全等に係る各

種の取組を支援。

都市農業経営パワーアップ事業(東京都) 認定農業者等の高い意欲と戦略的な経営マインドを有する者を

対象に施設整備等を支援し、都市の有利性を活かした農業経営力を強化

「大阪府都市農業の推進及び農空間の保全と活用に関す

る条例」の制定(大阪府) 都市農業及び農空間を積極的に守り育て、その公益的機能の

維持発展を図る趣旨で条例を制定

農業専用地区制度(横浜市) 都市農業の確立と都市環境を守ることを目的とする横浜市独自の

施策。指定地区に対しては、高率の補助等により優先的・重点的に農業施策を実施

「ひょうご都市農業支援センター」の設置(兵庫県) 阪神間の6市(尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、川西

市)に広がる市街化区域内農地を本拠とする農業に重点を置き、担い手育成、地産地消等を推進するための組織を設置

〈農林水産省における支援事業・「食と地域の交流促進対策交付金」(平成23年度予算額17億円の内数)〉

食と地域の交流促進対策整備交付金(ハード事業) 簡易な区画整理、市民農園、防災設備、水辺環境等の整備を支援。

19

(長津田台農業専用地区の風景)

(援農ボランティアの支援) (災害時にも利用可能な井戸の整備)

(無加温半促成トマトの栽培施設)

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○1戸当たり経営耕地面積

注:農家全体は、「2010年世界農林業センサス」の経営耕地面積による。

○ 都市農家の個々の経営をみると、経営耕地面積が全国平均の約6割であるなど一般に規模が小さく、販売金額についても「販売なし」又は「年間100万円未満」の農家が約6割を占めている。

○ 一方で、限られた農地を有効に活用して年間700万円以上の販売額を上げている農家も7%ある。 ○ 農家所得に関しては、農業所得が約25%、不動産経営所得が約65%を占めており、不動産経営所得の割合が大きい。

○農産物の年間販売金額(農家数割合)

注: 農家全体は、「2010年世界農林業センサス」の販売農家と自給 的農家を合計した総農家数による。このうち、自給的農家は、販 売なしのほか、50万円未満までの販売金額を有する場合があるが、 ここでは便宜上、販売なしに一括して算出・表記した。

○農家所得 【参考】農家全体

農業所得

約25%

不動産経営所得

約65%

その他の所得

農家所得

610万円

(100%)

農業所得

約25%

不動産経営所得を

含む商工鉱業所得

約10%

その他

の所得農家所得

460万円

(100%)

給与所得等

約30%資料:平成21年農業

経営統計調査

133

20 11 37 16 25

38 28 56

0 20 40 60 80

100 120 140

都市農家全体

うち、三大都

市圏特定市

うち、地方都

【参考】農家

全体

市街化区域以外

の農地

生産緑地

宅地化農地

【参考】

農家全体の経営

耕地面積

7564

93

(a)

22

39

18

13

7

42

32

13

6

7

0 10 20 30 40 50

販売なし・自給的農家

100万円未満

100~300万円

300~700万円

700万円以上

都市農家全体

【参考】農家全体

(%)

(1)経営の現状

4.都市農家の経営の現状と課題

20

資料:農林水産省「都市農業実態調査」

注:都市農業実態調査における農家所得は、農家の自己申告による大まかな数字を基に推計した試算値であり、あくまでも目安として示したものであることに留意。

市街化区域内に農地を所有する農家

4,707戸(61市区町)を対象としたアンケート調査。有効回答2,645戸(58市区町)、回答率56.2%。調査期間平成22年8月~23年8月。

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【農業を続ける上での支障】(農家数割合、複数回答) 【税制改正要望】 (自治体数割合・農家数割合、複数回答)

○ 都市農家に対し、農業を続ける上での支障を尋ねたところ、6割強が相続税や固定資産税の負担が大きいことを 挙げた。 ○ また、税制に関し、地方自治体や都市農家に改正要望を尋ねたところ、市街化区域内農地について相続税や固定 資産税の軽減を求める意見が上位となった。

(2)農業を続ける上での課題

21 資料:農林水産省「都市農業実態調査」

65

64

37

37

24

24

17

0 20 40 60 80

相続税の負担が大きい

固定資産税の負担が大きい

農産物販売価格が低く収益性が低い

周辺の市街化で営農環境の悪化

周辺住民からの苦情が多い

高齢化や後継者不在で労働力不足

規模が小さく拡大困難

(%)

(注:上位7事項)

42

40

35

31

26

80

79

19

48

15

0 20 40 60 80 100

市街化区域内農地の相続税評価額の軽減

市街化区域内農地に対する固定資産税の

軽減

市民農園等貸付時の相続税納税猶予の適

農業用施設用地に対する固定資産税の軽

農業用施設用地に対する相続税納税猶予

の適用

地方自治体

都市農家

(%)

(注:地方自治体要望の上位5事項)

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○ 「都市農業」は、広義では「都市とその近郊地域の農業」(農林統計における「都市的地域」)を、狭義では「市街化区域とその周辺の農業」を指す。

○ 広義の都市農業は、農地面積で全国の27%を占めるなど我が国農業で重要な位置を占めており、地域の特性を生かした多彩な営農が行われている。

○ 一方、狭義の都市農業は、全国の農業に占める割合は数パーセントにとどまるものの、消費地の中での生産という特色を生かした営農が行われている。

○ 本検討会においては、主として狭義の都市農業を対象として、農業振興や農地保全に関する施策の在り方について検討を行うこととする。

(注)本検討会の対象とする「都市農業」の範囲

農家戸数 農地面積 販売金額

全国 284.8万戸 460.9万ha 5兆8,366億円

広義の都市農業注1

(都市とその近郊地域の農業) (対全国比)

70.8万戸

(25%)

125.0万ha

(27%)

1兆0,675億円

(18%)

狭義の都市農業注2

(対全国比)

23.9万戸

( 8%)

19.8万ha( 4%)

4,676億円

( 8%)

うち市街化区域

8.8万ha( 2%)

うち生産緑地

1.4万ha( 0%)

○都市農業に関連する指標(試算)

(市街化区域とその周辺の農業)

資料: 「全国」の数値のうち、農家戸数及び販売金額は「農林業センサス」(平成17年)、農地面積は「耕地及び作付面積統計」(平成21年)による。

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注1:「広義の都市農業」の数値は、「農林業センサス」及び「耕地及び作付面積統計」のデータを、農林統計の「都市的地域」(次頁参照)について組替 集計したもの。 注2:「狭義の都市農業」の数値は、総務省「固定資産の価格等の概要調書」による市街化区域内農地面積(平成21年)と農林水産省におけるアンケート調 査(「都市農業実態調査」)の結果(平均耕地面積、農産物平均販売額)を用いた推計。都市農業実態調査の結果は農家の自己申告によるおおまかな数 字を基にしており、これを利用した試算も目安としての数字であることに留意が必要。また、同調査では、市街化区域内での営農を中心とする農家だけ でなく、市街化区域外での営農を中心とする農家(市街化区域内での営農は小規模)も対象としてデータを得ており、試算値を利用する際にはこの点に も留意が必要。

Page 25: 都 市 農 業 の 現 状 と 課 題 に つ い て - maff.go.jp...1.都市農業の果たしている役割 (1)都市農業の多様な役割 都市農業は、①新鮮で安全な農産物の供給、②身近な農業体験・交流活動の場の提供、③災害時の防災空間の確保、④

農林統計 の区分

都市的地域 平地農業地域 中間農業地域 山間農業地域

・可住地に占める人口集 中地区の面積が5%以上 で、人口密度500人以上 の旧市町村等

・耕地率20%以上かつ林野 率50%未満の旧市町村等

・耕地率が20%未満で、「都市 的地域」及び「山間農業地域」 以外の旧市町村等

・林野率80%以 上かつ耕地率 10%未満の旧 市町村

農地面積 125.0万ha(27%) 農家戸数 70.8万戸(25%) 販売金額 10,675億円(18%)

農地面積 136.9万ha(30%) 農家戸数 91.1万戸(32%) 販売金額 28,325億円(49%)

農地面積 155.5万ha(34%) 農家戸数 85.9万戸(30%) 販売金額 14,950億円(26%)

農地面積 43.4万ha(9%)

農家戸数 37.0万戸(13%)

販売金額 4,387億円(8%)

(参考)農林統計の地域区分と「都市農業」の範囲との関係

広義の「都市農業」

資料:農林水産省「2005年農林業センサス」、「耕地及び作付面積統計」(平成21年) 注: 市街化区域は、平地農業地域、中間農業地域及び山間農業地域にも一部賦存している。

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狭義の 「都市農業」

農地面積 :87,841ha

市街化区域内