電機設備アフターサービスにおける予知保全技術特 集 1 富士時報 Vol.78 No.6...

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1 富士時報 Vol.78 No.6 2005 451( 49 ) 電機設備アフターサービスにおける予知保全技術 西山 和男 一石 健三 福島 宗次 西山 和男 電力系統 電機設備 業務 従事 現在 富士電 株式会社 技術 電気学会会員 一石 健三 電機設備 業務 従事 現在 富士電機 株式会社 本部 技術 部主任技師 福島 宗次 計装制御 試験 保守 技術支援 保守用情報支援 構築 従事 現在 富士電 株式会社 本部 技術 部長 まえがき 電力系統 監視制御装置 発電装置 多種 電機設備 電力 産業 各分野 運用 設備運用 長期 安定的 維持管理 不可欠 富士電機 要求 予知保全技術 支援 開発 24 時間 365 日 体制 強化 取組 紹介 予防保全技術の体系と最近の予知保全技術 2.1 予防保全技術の体系 富士電機 電機設備 円滑 信頼性向上 蓄積 研究開 異常 劣化診断技術 余寿命診断技術 確立 最近 手法 余寿命推定 精度向上 対象範囲 拡大 油入変圧器 油中 分析診断法 余寿命 予測 回転機 圧巻線絶縁 装置 停止 状態 非破壊 絶縁診断試験 部分放電測定 情報機器 半導体素子 腐食劣化調査 IC 開封調 劣化診断法 実用化 基板 洗浄 延命化策 実施 電機設備 表的 診断技術 表1 2.2 最近の予知保全技術 代表例 油入変圧器 余寿命予測 回転機 高圧 巻線絶縁余寿命推定 最新技術 紹介 1構造化 油入変圧器 精度余寿命診断技術 油入変圧器 寿命 巻線絶縁紙 機械的強度 低下 絶縁紙 平均重合度 評価 均重合度 絶縁紙 主成分 結合具合 指標 推定 代表的 方法 絶縁紙 生成物 測定 方法 方法 寿命推定 精度 正確 予防保全 課題 最新 士電機独自 解析技術 構造化 構造化 NN 手法 455 参照 適用 高精度 余寿命推定技術 開発 特許出願中 開発手法 複数 油中成分 運転状況 設計諸元 入力 平均 表1 電機設備予知保全技術の体系 変電所 電気的絶縁診断 直流試験 tan 試験 交流電流試験 部分放電試験 高圧回転機の 信頼性評価法 物理化学的絶縁 劣化診断法 高圧回転機の 余寿命診断 Webリモート メンテナンス 配電盤, 制御装置の 余寿命診断 絶縁紙重合度 CO+CO 2 フルフラール 油入変圧器の 余寿命診断 (構造化 ニューラル) 回転機 配電盤 コントロール センタ バッテリー 情報制御装置 可変速制御装置 半導体劣化診断 (漏れ電流) 電子部品 劣化診断 プリント基板 洗浄・コーディ ングサービス RAS解析 遮断器 劣化診断 開閉器 劣化診断 コントロール センタ 劣化診断 油入変圧器 劣化診断 油中水分 全酸価 絶縁破壊電圧 ガス分析 モールド変圧器 診断 部分放電 開閉装置診断 開閉特性 最低動作電圧 主回路抵抗 測定 ケーブル診断 活線直流重畳 寿 環境診断 オンライン診断・リモートメンテナンス 中長期保全計画 δ

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特集1

富士時報 Vol.78 No.6 2005

451(49)

電機設備アフターサービスにおける予知保全技術

西山 和男(にしやま かずお) 一石 健三(いちいし けんぞう) 福島 宗次(ふくしま そうじ)

西山 和男

電力系統,電機設備のエンジニア

リング業務に従事。現在,富士電機システムズ株式会社サービス本部ライフサイクル技術センターカ

スタマーサポート部マネージャー。

電気学会会員。

一石 健三

電機設備のエンジニアリング業務に従事。現在,富士電機システム

ズ株式会社サービス本部ライフサ

イクル技術センターカスタマーサ

ポート部主任技師。

福島 宗次

計装制御システムの試験,保守,

技術支援および保守用情報支援シ

ステム構築に従事。現在,富士電機システムズ株式会社サービス

本部ライフサイクル技術センター

コールセンター部長。

 まえがき

 電力系統の監視制御装置から新エネルギーの発電装置ま

で多種にわたる電機設備が電力・産業など各分野で運用さ

れている。設備運用にあたっては,ライフサイクルの長期にわたる安定的かつ低コストでの維持管理が不可欠である。

富士電機では,これらの要求に応えるべく予知保全技術と

その支援ツールを開発するとともに,24時間 365日にわ

たったサポート体制を強化してきた。その取組みを紹介す

る。

 予防保全技術の体系と最近の予知保全技術

2.1 予防保全技術の体系

 富士電機は電機設備のライフサイクルにわたる円滑な運用や信頼性向上のため,フィールドデータの蓄積や研究開発を行い,異常・劣化診断技術および余寿命診断技術を数多く確立してきた。最近では新しい手法により余寿命推定の精度向上を図るとともに,対象範囲の拡大にも取り組ん

できた。油入変圧器では油中ガス分析診断法を早くから確立し,余寿命まで予測できるようになった。回転機では高圧巻線絶縁について装置を停止した状態で行う非破壊での

絶縁診断試験やオンラインでの部分放電測定を行ってきた。

情報機器では半導体素子などの腐食劣化調査,IC開封調査による劣化診断法を実用化するとともに,プリント基板洗浄による延命化策も実施してきた。電機設備における代表的な診断技術を表1に示す。

2.2 最近の予知保全技術

 代表例として,油入変圧器の余寿命予測と回転機の高圧巻線絶縁余寿命推定の最新技術を紹介する。

(1) 構造化ニューラルネットワークによる油入変圧器の高精度余寿命診断技術

 油入変圧器の寿命は主として巻線絶縁紙の機械的強度の

低下により決まり,絶縁紙の平均重合度で評価される。平均重合度とは絶縁紙の主成分であるセルロースの結合具合

の指標であり,それを推定する代表的な方法として絶縁紙からの生成物であるフルフラール量を測定する方法がある。

しかしながらこの方法は,寿命推定の精度が低く,正確な

予防保全の課題となっていた。このために,最新でかつ富士電機独自の解析技術である構造化ニューラルネットワー

ク(構造化 NN)とアンサンブル手法(455ページの「解説」参照)を適用した高精度な余寿命推定技術を開発した

(特許出願中)。開発手法はフルフラールを含む複数の,そ

の他の油中成分,運転状況や設計諸元などを入力し平均

表1 電機設備予知保全技術の体系

変電所

電気的絶縁診断�直流試験�tan 試験�交流電流試験�部分放電試験

高圧回転機の 信頼性評価法

物理化学的絶縁  劣化診断法

高圧回転機の  余寿命診断

Webリモート メンテナンス

配電盤, 制御装置の 余寿命診断

絶縁紙重合度CO+CO2, フルフラール油入変圧器の  余寿命診断(構造化 ニューラル)

回転機配電盤コントロールセンタバッテリー

情報制御装置可変速制御装置

半導体劣化診断(漏れ電流)

電子部品   劣化診断

プリント基板洗浄・コーディングサービス

RAS解析

遮断器  劣化診断

開閉器  劣化診断

コントロールセンタ  劣化診断

油入変圧器   劣化診断�油中水分�全酸価�絶縁破壊電圧�ガス分析

モールド変圧器     診断�部分放電

開閉装置診断�開閉特性�最低動作電圧�主回路抵抗     測定

ケーブル診断�活線直流重畳

劣化診断

余寿命診断

環境診断

オンライン診断・リモートメンテナンス

中長期保全計画

δ

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富士時報 Vol.78 No.6 2005

特集1

電機設備アフターサービスにおける予知保全技術

452(50)

重合度を推定し,それを基に余寿命を推定する。図 1に予測の流れ図を示す。39台の変圧器を解体して平均重合度を実測しシステムを構築するとともに,開発手法の評価を

行った。その結果,従来のフルフラール法推定精度 15年に対して,開発手法では誤差 3年で推定できた。図 2に比較結果を示す。高精度な寿命予測により,最適な延命化対策と更新計画ができる。

(2) 高圧回転機の余寿命診断 固定子巻線の非破壊絶縁診断データから残存絶縁破壊電圧を推定し,余寿命を求める方法がある。富士電機は余寿命を高精度で予測するために,稼動実績のある実機での非破壊試験データや破壊電圧などのマスターデータを蓄積し

てきた。この非破壊データと破壊電圧の統計的な相関関係を算出し,この関係から余寿命を予測する方法を開発して

きた。図 3に余寿命推定流れ図を示す。1999年にコイル

単体真空含浸絶縁(Fレジン/F絶縁)方式の回転機でこ

の方式による余寿命予測法を確立し,多数の診断実績を上げている。さらに近年は対象を広げ,レジンリッチ絶縁(Fレジン/S絶縁)方式の回転機でも 30台以上の回転機の蓄積データからこの方式による余寿命予測法を確立した。

これらの寿命予測により高圧回転機での適正な更新時期を

明示することができる。

 長期稼動する設備の老朽化が進む中,ライフサイクルに

わたる保全も時間計画保全から状態監視保全が重要になる。

今後,さらなる劣化データの蓄積と最新技術の活用により

予知診断技術の向上と対象機種の拡充を図っていく。

 アフターサービスの支援ツール

 設備の経年劣化に伴う効率低下を最小限に抑え,長期に

わたり安定運用させるためには,設備診断結果に基づく最適な保全計画とメンテナンスが必要である。それを支える

ための支援ツールは重要であり,最近の自動診断装置や支援システムを紹介する。

3.1 受変電設備劣化診断装置

 受変電設備は第一に安定性,信頼性が求められる一方,

高稼動化による停止時間の減少,点検間隔の延長が進んで

いる。上記の課題を解決するための 2例を紹介する。

(1) 受変電開閉器用劣化診断装置 遮断器・開閉器の劣化診断用に開発した「CB-DEC」と

コントロールセンタ用の「CC-DEC」がある。開閉動作特性(速度・波形),絶縁特性,接触抵抗の各値の傾向管理により劣化診断を行う。試験用電流発生,測定・結果判定,報告書作成までが自動で行われ,従来と比較して 1/2〜 1/3の時間で診断でき,点検時間の短縮に寄与する。保全計画者はこの結果を中期保全計画立案時に容易に反映す

ることができる。装置の構成を図 4に示す。

(2) 受配電設備診断機能付自動試験システム

 あらかじめ受配電設備に点検回路を組み込み,停電条件などを判断して,安全に受電回路から点検回路へ切り換え

る。2系統受電では受電を停止させる必要がなく,1系統受電でも試験準備が不要となり,点検時間は従来の 1/7と大幅に短縮できた。試験結果は履歴トレンドとしてデータ

ベース化し,劣化具合いの傾向管理により精密点検対象機

フルフラール

平均重合度

平均重合度推定

平均重合度推定用ニューラルネットワーク油劣化防止方式

余寿命予測

重合度

寿命レベル(JEM1463)

推定時点

推定値に基づく寿命=推定寿命

推定余寿命

新品の変圧器

CO+CO2

水分

稼動年数

稼動年数運転温度負荷率冷却方式水分量CO+CO2フルフラール

1,000

450

0

重合度推定

図1 構造化NN適用変圧器の余寿命予測

0

推定平均重合度から求めた余寿命(年)

実測平均重合度から求めた余寿命(年)

従来手法(平均予測幅) 15年

平均重合度450を「寿命レベル」とした。(JEM1463)

50 10 15 20 25 30

-10

-20

-30

10

20

30

40

50

60

70

80

従来手法による余寿命値(フルフラール法)

実測平均重合度から求めた余寿命値

新しい手法による余寿命値(構造化NN法)

構造化NN法(平均予測幅) 3年

図2 変圧器余寿命予測の比較

稼動実績のある実機の非破壊試験データと破壊試験データの蓄積によりこの相関関係をとらえて,残存破壊電圧を算出する重回帰式を誘導した。

①稼動年数初期値100%

破壊電圧②

(交流電流)ΔI 12

③ tanδ(誘電正接)Δ 12

④ (コロナ)Qmax12

2 +1E

余寿命年

電気的絶縁診断

重回帰式で残存破壊電圧を

算出

劣化カーブを算出

運転に必要な絶縁耐力(2 +1kV)E

破壊電圧平均レベル

破壊電圧下限レベル

図3 高圧回転機の余寿命予測

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富士時報 Vol.78 No.6 2005

特集1

電機設備アフターサービスにおける予知保全技術

器の絞込みと精密点検実施周期の最適化を可能とした。

 なお,自家発電設備制御装置のシミュレーション試験機能も装備している。システム構成を図 5に示す。

3.2 リモート診断システム

 設備故障時の復旧時間の短縮と故障予知の要求に応える

ため,遠隔から予防保全と異常監視ができるリモート診断システムの充実を図ってきた。富士電機では,無停電電源装置(UPS),DCS(Distributed Control System)装置,

燃料電池などを対象に,これまでに 200システムの実績を

持つ。なかでも燃料電池発電装置のリモート診断システム

は,主にガス会社,電力会社に 20システムを提供し,安定運用,トラブルの波及の未然防止に寄与し,高い信頼を

得てきた。以下に特長を述べる。

(1) 運転データは装置側とサーバ側で二重に保持され,

サーバダウンなどの不測事態にも対応でき,ユーティリ

ティ設備に要求される高い信頼性の維持に応えている。

(2) 運転データや異常情報は電子メールで通知されるとと

もに,リモートメンテナンスセンターで履歴管理され,

保全計画の見直し,最新の保全計画の策定に反映される。

 システム構成を図 6に示す。

3.3 長期保全計画最適化支援システム

 長期にわたり,より経済的で信頼性の高い設備運用を図

るためには,機器の劣化度,重要度,設置環境,運用状態,

予算計画などを総合的に考慮した最適な長期メンテナンス

計画が必要となる。富士電機では,これまで開発してきた

余寿命予測などの設備診断技術と,予算計画などの資産管理情報とを融合させた,新たな視点の「長期保全計画」を

構築するための最適化支援システムを改良・開発中である。

 この最適化支援システムにより,

(1) 今後の予算計画,運用計画に基づく,最適な更新計画の提案(繰上損失,事故損失の防止)

(2) 最適な保全方案とその実施時期の提案ができ,安定運用を維持すること,各年度でのコストの平準化,ライフ

サイクルコストの最小化が可能となる。新たな視点の

「長期保全計画」のイメージ図を図 7に示す。

 ライフサイクルサービスを支える基盤整備

4.1 サービス基盤の概要

 富士電機は以下の三大サービス基盤を整備してきた。

サービス基盤構成を図 8に示す。

(1) お客様からの問合せや,障害支援を受け付け 24時間365日稼動するコールセンター

453(51)

中長期保全計画書受変電開閉機器用劣化診断装置

パソコン部

電源部

VCB

診断報告書

測定部診断

診断 MCC

図4 受変電開閉器用劣化診断装置

受電

負荷

トリップ信号

保護継電器Ry

CB入/切指令整定値読出し

受電/試験回路切換

試験電圧・電流

(他フィーダ盤)

検測用PLCMICREX-F

制御用PLCMICREX-F

停復電連動試験

保護連動試験

操作連動試験

マルチパワーソース・大電流アンプ

遮断器

5150

2764

67

52

Ry52

試験成績表

整定値一覧表

図5 受配電設備自動試験システム

装置

データ収集

公衆電話回線

公衆電話回線

データ収集システム+WWWサーバ

社内LAN

クライアント

パソコン

プロバイダー

RAS接続

電子メール

異常通知

サイト状況表示ホームページ閲覧

携帯電話iモード

運転状況通知異常通知

ポケットベル

装置

クライアント

クライアント

パソコン

パソコン

携帯電話iモード

インターネット接続

図6 燃料電池発電装置リモート診断システム

①現状の長期保全計画〈イメージ図〉

予防保全事後保全

Plan

Do

改善Action

設備診断余寿命予測劣化度評価 

Check

②最適化された長期保全計画〈イメージ図〉

図7 長期保全計画のイメージ図

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富士時報 Vol.78 No.6 2005

特集1

電機設備アフターサービスにおける予知保全技術

(2) 障害修復用緊急部品を供給するために,東京と大阪に

配置した部品ロジスティクスセンター

(3) 全国約 80の拠点と約 800人の保全サービスマン

 サービスマンはお客様設備の主治医として,稼動状況に

合わせた最適な保全計画を立案し,設備の安定稼動のため

に 24時間対応の保全サービスを提供する。

 コールセンターは,サービスのシンボル的位置づけにあ

り,①お客様問合せ窓口となるコールセンター機能,②データセンター機能,③リモートメンテナンスセンター機能を有する。図 9にコールセンターの機能を示す。自社製品にとどまらず,コール受付代行サービスも提供している。

データセンターではコールセンター支援情報システムの運用から得たノウハウを生かし,インターネット接続サービ

ス,ハウジングサービス,リモート運用監視サービスなど

多様化するニーズに応えるために機能の充実を図っている。

 ロジスティクスセンターは富士電機が納入したシステム

の長期安定稼動の実現に向けて,24時間出庫体制で運営

454(52)

東京部品センター

:本社

サービス拠点数:87

大阪部品センター

コールセンター

:支社:支店:工場

図8 サービス基盤

稼動システム

コールセンター

データセンター リモートセンター

CRM24Web centuryUNICUMロジスティクスCFA

機能障害受付機能問合せ受付機能部品出庫機能

接続形態電話,ISDN,   インターネット

対象装置IAサーバDCS(MICREX-PⅢ,IX,AX,NX)UPS燃料電池CPU自家用発電設備約200システム

図9 コールセンターの機能

情報公開サービス

いつでもどこでもお客様の設備の状況をインターネット上で確認できる。

お客様装置一覧

プラント設備・システムの装置,ユニット,プリント板の実装稼動状況が管理できる。

Action

設備保全計画Plan

設備の安定稼動・保全費用管理にとって重要な保全計画をWebで確認できる。

保全履歴Do

定期保守,故障/障害などの緊急保守および過去の設備オーバホールなどの履歴を管理できる。

契約内容一覧

お客様設備単位の保守内容が閲覧できる。

修理状況/履歴Check

現在修理中の故障品・部品の修理進行状況と修理結果を閲覧することができる。

コール受付履歴

障害やお問合せなどコール受付した案件の進捗状況,対応を閲覧することができる。

図10 保全情報提供サービス

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富士時報 Vol.78 No.6 2005

特集1

電機設備アフターサービスにおける予知保全技術

している。緊急対応用部品とメンテナンス用部品はロジス

ティクス支援システムにより製品稼動状況のタイムリーな

調査と,生産終了部品も含めて適正在庫運用を行っている。

 サービス拠点での活動では,コール受付情報,ロジス

ティクスの部品在庫状況確認,製品品質などの情報が不可欠であり,サービス部門情報ネットワークシステムによっ

て高品質なサービスを実現している。

4.2 コールセンターの高機能化

 保全情報提供サービス(F-Mains)は,インターネット

の普及に対応した新しいサービスである。内容は,①お

客様に納入した設備仕様や保全サービス利用履歴などを

Webサイトから閲覧できる情報公開サービスと,②富士電機の「サービスキャンペーン」や「保守に関する情報」

などを電子メールにより通知する情報配信サービスがある。

 図 に F-Mainsの情報公開サービスの一例を示す。保全計画とその保全実績から,保全計画をブラッシュアップ

することで PDCA(Plan-Do-Check-Action)を回し,最適な設備保全を実現する。Webサイトでお客様と情報を

共有することで保全効果の確認がタイムリーとなり,修理の進捗(しんちょく)状況が閲覧できるなどニーズに応え

たきめ細かいサービス向上を図った。

 コールセンターではお客様の設備情報を扱うことから情

報セキュリティの強化は必須であり,財団法人日本情報処理開発協会の情報セキュリティマネジメントシステム適合性評価制度の認証取得により,万全な情報セキュリティマ

ネジメントを実施している。

 今後とも変化するニーズと技術進歩に合わせ,インター

ネット利用サービスの拡大などサービス基盤の充実を進め

ていく。

 あとがき

 電機設備アフターサービスを支える予知保全技術とその

支援ツールならびにそれを支えるサービス基盤を紹介した。

設備の安定稼動と運用費の低減は永遠のテーマであり,今後とも技術開発と基盤整備の充実を図り,ライフサイクル

にわたったサービス品質の向上を追求していく所存である。

参考文献

(1)  松井哲郎ほか.構造化ニューラルネットワークを適用

した油入変圧器劣化診断方法の検討.電気学会全国大会.

no.4-208, 2005.

(2)  梶原浩行ほか.遮断器,保護継電器の自動点検・診断ツー

ルの紹介.産業と電気.no.635, 2005, p.7-14.

455(53)

解 説 アンサンブル手法

 予測精度を向上させる手法の一つである。複数の予測結果を加重平均し,最終的な結果を算出する。平均化により誤差のばらつきを少なくし,予測精度を向上

させる手法であり,予測モデルを作るためのデータが

少量の場合でも精度向上の効果が期待できる。

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