第Ⅳ章 急性腹症の疫学 · 急性胃腸炎 19 3.0 消化性潰瘍 18 2.8 尿管結石 15 2.3 アルコール性胃炎 13 2.0 悪性腫瘍 13 2.0 他の泌尿器疾患 13 2.0
出血性胃潰瘍について - Japanese Red Cross Society...本日の内容...
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今回の症例は…
高齢女性が気分不良。救急車で搬送。バイタルは問題なし。
手足も冷たく、顔面も蒼白。まずは見た目の評価を。
(顔色悪いな~ もしかして貧血かな~ )
①血液検査 CBC、生化学、血液型。
②Hb低下を認め、まずは輸血。
③止血するため、緊急内視鏡検査。
貧血を認めたら…
まずは直腸診で黒色便を認めたら、消化器内科コール。 コール… の前に 大事なのは問診。 現在の状態の把握。内視鏡を準備するまでは、 原因究明のため、知りたいのは、HP陽性か、NSAIDs内服はないか?
整形外科受診歴、偏頭痛もち、扁桃腺がはれやすいなどなど。。。
あるある
術後の患者さん。気分不良で、バイタル安定も、血液検査でHb:5台。
→疼痛コントロール目的でロキソプロフェン頓服していた。
整形外科疾患で保存的加療中、心血管系疾患で手術歴あり。
もはや、医原性の病態!
本日の内容 NSAIDs潰瘍について
①胃十二指腸潰瘍の主要な原因はH.pylori 感染から、NSAIDsへと推移しつつある。
②NSAIDs潰瘍の治療はNSAIDs中止と、PPI投与が原則である。
③NSAIDsを処方する際は、NSAIDs潰瘍の危険
因子を評価する必要がある。高リスク群には予防のためにPPIの併用を考慮する。
非ステロイド性抗炎症薬 Nonsteroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs)
非アスピリンNSAID:解熱鎮痛を目的
(ロキソニン, ボルタレンなど)
低用量アスピリン(LDA):抗血小板療法を目的
(バイアスピリン, バファリン81など)
NSAIDs潰瘍の発生機序
NSAIDs潰瘍発症の原因として主にあげられるのがシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害の関与。
COXにはCOX-1とCOX-2があり、このうちCOX-1は細胞に常に存在している「構成型」で、胃粘膜や血管内皮などの生体に存在し、それらの機能を調節している。COX-2はサイトカインなどの炎症の刺激により産生される「誘導型」でマクロファージ、好中球、滑膜細胞といった炎症細胞によく発現する。
NSAIDs潰瘍の発生機序
NSAIDsはCOX-2を阻害することで、炎症に関与するプロスタグランジン(PG)の産生を抑制し、
消炎・鎮痛効果を発揮する。しかし、従来の一般的なNSAIDsでは、COX全体を阻害してしまうため、COX-2のみならず、胃粘膜保護などの役割を持つ、COX-1も阻害してしまう。そのため、
胃粘膜の障害を生じる原因となる。更にトロンボキサン(TXA)産生も抑制することで、出血傾
向を亢進させ、出血性潰瘍の合併症を引き起こす可能性もある。
NSAIDs潰瘍の発生機序
COX-2の発現上昇
胃酸分泌
COX-1による調節
Normal
粘膜治癒
粘膜欠損
Modulatory action NSAIDs action
直接障害
COX-1阻害
COX-2阻害
粘膜障害
胃十二指腸潰瘍1822例 (松山赤十字病院胃腸センター:2005年~2012年)
1822例
② H.pylori (+) /NSAIDs(+)
330例 (18.1%)
③ H.pylori (-) /NSAIDs(+)
318例 (17.5%)
④ H.pylori (-) /NSAIDs(-)
252例 (13.8%) ① H.pylori (+) /NSAIDs(-)
922例 (50.6%)
NSAIDs(+):35.6% HP(+):69.7%
胃十二指腸潰瘍1822例の 前期4年間(2005~2008年)と後期4年間(2009~2012年)の比較
0
200
400
600
800
1000
前期4年間 後期4年間
④
③
②
① HP(+) NSAIDs(-)
HP(+)NSAIDs(+)
HP(-)NSAIDs(+)
HP(-)NSAIDs(-)
①583例(57.9%)
①339例(41.6%)
②171例(17.0%)
③146例(14.6%)
④107例(10.6%)
②159例(19.5%)
③172例(21.1%)
④145例(17.8%)
②NSAIDs潰瘍治療はNSAIDs中止とPPI投与が原則。
• 消化性潰瘍治療ガイドラインにおいて、NSAIDs潰瘍の治療は「NSAIDsは中止し、抗潰瘍薬を投与する。NSAIDsの中止が不可能ならば、PPI投与」と記載されている。
• 出血を合併したNSAIDs潰瘍に対しては、内視鏡的止血術とPPIによる治療が有効である。
非アスピリンNSAIDsによる胃十二指腸潰瘍の危険因子
• 潰瘍の既往歴
• 高齢
• 抗血小板剤の併用
• 複数あるいは高容量のNSAIDs服用
• ステロイドの併用
• 重篤な全身疾患
確実な危険因子
可能性のある危険因子
H.pylori 感染、飲酒、喫煙