英語音声指導における「カタカナ発音 の影響と そ...

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-65- 英語音声指導における「カタカナ発音jの影響と その払拭を目指した指導法の一例 はじめに 時代とともに国家が社会が英語教育に求めるものは変化している。しかし直接英語教育の現場に 携わる教員連は,彼らに求められるものがコミュニケーション能力の脊成だろうが碁礎的総合的な 英語カの保証だろうが,それ以前の問題に相も変わらず夜磁しているのではないだろうか。つまり, f 日本人はなぜ英語(外国語)学習が苦手なのかJ という明治以来の膝史的命題にである。この命 題の解決のため様々な試行錯誤が行われてきたが明快な解決法はなく,未だ我々は教授j 去をめぐる ぺンジュラム・シンドローム(振り子現象)のただ中にいると忠われる。 筆者は一昨年より大学で、の英語指導に携わっているが,それ以前の二十数年は高校現場での英語 教育に身を置いてきた。「英語を教えることの難しさ j に関して筆者が今までそして現在も痛感して いることは,日本入学潔者の外国語学調の基礎としての音韻識751 )能力が極めて低いことである。具 体的には,初めて公教育の場で英語学脅を始める中学 1 年生は,すでにこの段階で「カタカナ発音J と呼ばれる日本諮の音韻を用いての英語発音に「汚染J されており,英語の音綴を識別する能力が 「化石化J していることがあげられる。さらに高校生や大学生におけるこの傾向はより一層強圏で, その払拭は極めて国難に思える。ことほど左様に「カタカナ発音jの影響は執劫で広範囲に及ぴ, 英諾担当教員にとってはまさに「頭痛の穏J である。筆者は,音韻識別能力の欠如が歴史的命題へ の答のすべてではないにしろ,極めて重要な要因の一つであると確信している。 外国語学習において外国語の背を背として識別できないということは,今更言うまでもなく大変 な弊容で、ある。その影響は,認葉の識別と湾得,簡単な発話の理解と発信,一文の音読からパラグ ラフの音読に始まり,ひいては 4 技能すべての領域の習得にまで及ぶと考えている。本稿では,改 めて英語音韻識別能力の欠如を象徴する「カタカナ発音」の諸相を明らかにし,その払拭を跨指し た提案と指導i 去の提示を試みたい。 1.英語教膏をめぐる動向と音声指導 (小学校への英語教育導入に望むこと) 日本の英語教育界では相変わらず「音声E 重視」の{頃向が続いている。特に f 聴くこと J 「話すこと J

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英語音声指導における「カタカナ発音j の影響と

その払拭を目指した指導法の一例

中 井 英 民

はじめ に

時代とともに国家が社会が英語教育に求めるものは変化している。しかし直接英語教育の現場に

携わる教員連は,彼らに求められるものがコミュニケーション能力の脊成だろうが碁礎的総合的な

英語カの保証だろうが,それ以前の問題に相も変わらず夜磁しているのではないだろうか。つまり,

f日本人はなぜ英語(外国語)学習が苦手なのかJ という明治以来の膝史的命題にである。この命

題の解決のため様々な試行錯誤が行われてきたが明快な解決法はなく,未だ我々は教授j去をめぐる

ぺンジュラム・シンドローム(振り子現象)のただ中にいると忠われる。

筆者は一昨年より大学で、の英語指導に携わっているが,それ以前の二十数年は高校現場での英語

教育に身を置いてきた。「英語を教えることの難しさ j に関して筆者が今までそして現在も痛感して

いることは,日本入学潔者の外国語学調の基礎としての音韻識751)能力が極めて低いことである。具

体的には,初めて公教育の場で英語学脅を始める中学 1年生は,すでにこの段階で「カタカナ発音J

と呼ばれる日本諮の音韻を用いての英語発音に「汚染J されており,英語の音綴を識別する能力が

「化石化J していることがあげられる。さらに高校生や大学生におけるこの傾向はより一層強圏で,

その払拭は極めて国難に思える。ことほど左様に「カタカナ発音j の影響は執劫で広範囲に及ぴ,

英諾担当教員にとってはまさに「頭痛の穏J である。筆者は,音韻識別能力の欠如が歴史的命題へ

の答のすべてではないにしろ,極めて重要な要因の一つであると確信している。

外国語学習において外国語の背を背として識別できないということは,今更言うまでもなく大変

な弊容で、ある。その影響は,認葉の識別と湾得,簡単な発話の理解と発信,一文の音読からパラグ

ラフの音読に始まり,ひいては 4技能すべての領域の習得にまで及ぶと考えている。本稿では,改

めて英語音韻識別能力の欠如を象徴する「カタカナ発音」の諸相を明らかにし,その払拭を跨指し

た提案と指導i去の提示を試みたい。

1. 英語教膏をめぐる動向と音声指導

(小学校への英語教育導入に望むこと)

日本の英語教育界では相変わらず「音声E重視」の{頃向が続いている。特に f聴くことJ「話すことJ

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- 66 ー 外国語教育

の総合的な運用能力としてのコミュニケーション能力育成の必要性がTIJJ. ばれて久しい。例えば高校

では, 1989 年の文部省による学習指導婆領の改訂に伴い,新科目 Oral Communication A, B, C が

導入され必修となった。中・高・大を賞き,コミュニカティブ・アプローチ, もしくはそれを意識

した英諾指導が望まれ,また程度の差はあれ実践されている。今回告示された新学習指導要領( 1:j1

: 1998 年告示2002 年実施,高校: 1999 年告示2003 年実施)でも, i:j1 ・iおとも「聴くこと J r話すこ

とj への傾斜には拍車がかかり,総目棋は f実践的なコミュニケーション能力」というキーワード

に集約されている。今後ますます音戸活動を指導することが求められるだろう。しかし音声活動液

視の傾向に対する反発も根強く,昨今問題になっている日本入学沼者の「英語学力低下j の大きな

要因は,「表商fl 句な発話能力しか保証しないコミュニケーション活動重視の指導Jにあるとの八つ当

たり的な見解もある。公教育での英1¥'/f 教育を担う中. ;認の現場ーでは,事態はもっと複雑で、ある。文

部省の指導要領に忠実な学校もしくは教員がコミュニケーション能力の育成に取り紐んできた事実

がある反原,例えば高校現場の多くでは OCG (Oral Communication Grammar )という呼び名で叩

検されるように,必修科目である Oral Communication の代わりに「閣でj 文法指導を行っている

という実態がある。特に大学受験を意識した高校においてこの傾向は強い。同時に,現行の指導要

領には f文法Jが科目から外されていることに対する反発も相変わらずあり,「文法if 注視j は受験の

観点からだけでなく基礎的な英語力の低下.を扱いているとの意見もある。我が国の英語教育をめぐ

るぺンジュラム(振り子)は,理論と現実の間で米だに揺れ統けているようである。

しかし上記の二つの立場に言えることは,その両者において音声指導の「基本J がi際視されてい

ることではないだろうか。まず指導要領では総呂標として奇声活動やコミュニケーション能力を重

視してはいるが,筆者の経験からは斎戸指導の基本となる segmentals ( iml 々の音素)の指導につい

ては, J: 十I ・高を通じて具体的な指導内容と方法が明確にされていない。今岡告示の新学習指導要領

でも,中学では f音から入る j ことを強調しながらも指導の具体例はなく,発斎記号の導入もオプ

ション扱いになっている。高校でも発音記号については「音声指導の補助として,指導することが

できるJ 干呈!支となっている。もちろん TESOL (Teaching English to Speakers of Other Lan-

guages )の現在の研究においては?音声指導の重点は, segmentals から surprasegmentals (ストレ

ス, リズム,イントネーション等,つながりとしての斎)へ,また指導法も bottom-up (音声を庶

接的に教えること)から top-down (音声を総合活動の中でi資格的に学ばせること)に移っている

(Pennington, 1987 )。筆者もこれに賛同するが,それは決して segmentals の指導を経視するもので

はない。むしろ英語に比べ帝京数が遥かに少ない日本誌を第一言語とする話者への指導で、は,

segmentals の指導は等しく軍要だと考える。また総合的な英語学力の低下を懸念する側にとって

も,奇声指導の視点は欠かせないだ、ろう。それは segmentals を含めた音声指導は,インプットとア

ウトプットの両方に波るすべての技能の湾得を促進すると考えるからである。いや,むしろそれな

しでは外国語の習得は始まらないと考えている。本稿では以下に「諮葉の認知!とスペルの習得J を

例にしてその関係を見てみたい。

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英語音声指導における「カタカナ発音J の影響とその払拭を目指した指導法の一例 - 67 ー

今回の指導要領改訂の最大の柱は,小学校での英語教育が事実上容認されたことであろう。具体

的には2002 年より「総合的な学習の時間J において外国語会話等を行うことができるようになった。

i言語習得における critical period (臨界期) (Lenneberg, 1967 )の観点からも,音声濁の指導も合め

早い11 寺期から英語学習が始められることには大いに期待できる。しかし日本に先がけて小学校で、の

英語学習を始めた韓悶(16 年間の準備期間を経て, 1997 年開始)とは違って,日本ではまだ指導内

容や方法については具体的な指針が示されていない。(現代英語教育1999 年 1月号「特別記事,韓国

のノj、・中学校における英語教育J)それどころか文部省は,英語教育の一部を民間の塾に委託する方

針を打ち出すなど(毎日新開1999 年 9 月14 日),主体的,体系的な言語政策を持っていない。実際に

は,「誰が何をどう教えるかJについての議論也教育者,研究者を含めた広い祝野から始めなくて

はならないだろう。その議論には是非,より早い年齢からの基本的な音声認識能力を促進する指導

内容と方法の検討を含めてもらいたい。以下は小学校での英語教育を念頭に霞いた,英語音声指導

に関する策者の提案である。{隙々呉体的な内容については本稿で扱うことにする。

1. まず小学校での英語教育では,無理のない方法で楽しく英語の音声に親しませること。特に英

語の音韻が日本誌のそれとは決定的に迷うことについての consciousness raising (意識付け)

を徹底すること。

2. ごく身近な詩葉を限定し, sound spelling correspondence (音韻とスペルの相関関係)につい

ての基礎的な現解を培うこと。

3. 国語教育における「ローマ字Jの導入には英語教育の観点から細心の注意を払い,「ローマ字J

はあくまで日本語表記の一部であることを押さえ英諮学習での混乱を避けること。

また中学・高校での継続的・発渡的な音声指導を可能にする指導指針の設定も必要だ、と考える。そ

れに含めるべき観点についても以下に列挙する。

1. 音声面の認識をより発展させるために,できれば中学より発音記号については限定的に導入を

,~ること。

2. sound-spelling correspondence についての発展的理解を培うこと。

3. surprasegmentals の現解についても top-down, bottom-up 両方式の要素を取り入れた指導

により,小学校より徐々に積み上げ,高校段階で基本的理解の完成を目指すこと。

上記の観点のうち発音表記の問題,特に現在日本の英語教材でほぼ独占的に使用されているダニ

エル・ジョーンズ記号(以下DJ記号)の問題点とその改善点についても以下で議論したい。ただし

本稿では議論進行上,便宜的に DJ記号を主に使用することとする。

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- 68 - 外国務教脊

2. 学習者と「カタカナ発音J の実態

2-1 音声指導を目的としたテストとその結果

以下は,本年度筆者が英詩関連科告を担当する 2つの大学 (1 つは本学)の 6 クラスで実施した

テストの内容である。このテストは,学習者に対する音声指導の一環として行ったものであり,ヱド;

稿の最後で示す音韻指導のための consciousness raising tasks (意識付けを目的としたタスク)の

前半部分にあたる。要は学生速に,彼らに染みついた「カタカナ発音」の惑癖が英語学滑に及ぽす

影響i,特にその f被害J を認識させることが主たる目的である。設!?司 No. 1 は,基本的なカタカナ

諮から元の英単語を綴らせる問題であり,「カタカナ発音Jはごく身近な英黙認のスペル習得をもj庄

害するという仮説に基づいた設問である。設問 No. 2 は,学習者の音声識別能力を調べる設fHJ であ

り,日咲|渇いたことのあるカタカナ諮を,その意味を日本語で示しながら,英語の発音で陪かせ,

各認を英語で縮らせた。ここでは morpheme (形態素)を決定するニつの違った青葉を合むぺア(例

えば hathe/-hut/ A /)の片方の語を,識別させたい青葉に強調を設いて発音し,その語を香取らせ

た。発音は筆者がGA (一般アメリカ英語)を心がけて行った。この設問は,「カタカナ発音j は学

調者の英諮奇声聞き取り能力に被害を与えるという仮説に基づく。設問 No. 3 は,日常生活で頻繁

に使われるカタカナ語のうち,英語での発音とスペルの両方にやや難易度の高いものを示し, 1学生

達のスペルカを調べた。この設問は,学習者の意識を英単語の「スペルと発背部の変HIJ性や例外j

に向けさせ,「カタカナ発音J を疑う姿勢を培うことを B 的としている。

Check your spelling ! Consciousness raising Tasks Part 1

No. 1:次の若手認を英語の綴りにしなさい。 スコア(

1. トラック(車両) 2. アルバム 3. ライブラリ

5 ノfラレ/レ

9. シアター(劇場)

6. オートマチック

10. スムーズ

7. クロール

4. アンプレラ(傘)

8目ストーカー

No. 2:次に発音される谷認を聞き取って,正しい英語の綴りにしなさし、。 スコア(

1. (hut) 2. (bug) 3. (punk) 4. (ankle) 5. (first)

6. (worm) 7. (crab) 8. (glove) 9. (bowl) 10. (hall)

[( )内はそれぞれ発音される英単誇]

No. 3:次のおなじみのカタカナ諾を英語で綴りなさい。 スコア(

1. コンビニ 2. アクセス

7. リズム

3. キャリア 4. シンナー

6. ボディコン

氏名(

8. エネルギ- 9. アマチュア

合計

30

5. サイコロジ-

10. アドノfイス

以下に,学留者における「カタカナ発音J の影響を見るため,全被験者から特定の検査集団を選

定し,そのテスト紡巣を揚げる。この集団の選定にあたっては,まず高校卒業直後の学生の実態を

知るため l年生クラスに限定した。次にその 4 クラス(会クラスが専攻学科別編成)をそれぞれ入

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英語音戸指導における「カタカナ発音J の影響とその払拭を凶指した指導i去の一例 - 69 一学試験で英語を選択したグループとそうでないグループに分け,英語を選択した 4 グループを残し

た。最後にその中から当該テストの平均点が上位で、ある 2 グループ(グループA24 名,グループ8

22 名)を合わせ 1つの集団(46 名)とした。これとは別に,本年度の初授業で「英語診断テスト J

(諮菜,文法,語法に関する50 開の客綴テスト,英語検定試験の過去問題より準 2 級問題 7 答I], 2

級j問題 3 害I]を選び出題)を会クラスで実施しており,検査集団の得点平均は50 点満点中の26,7 点で

あった。従って検査集団は比較的安定した英誠学力を持つと考えられる。データ分析からそれ以外

のグループを外した理由は,当該テストに対する正答率が低く白紙解答が多いため,誤答例の分析

が凶難であったからである。ただ除外したグループでは「英語診断テスト j の結果も同様に低く,

当該テストと英語学力の相関関係は明らかに認められる。ここでは「カタカナ発音J が及ぽす影響

の一般的傾向を見ることが呂的であるので,クホルーフ。間の比較は行わない。特に注目したいのはス

ペルと音声認識での誤答の内答であるので,設II~ No. 1,2 とも各諾の誤答例とその人数を付記し

た。また問題となる音素を含むスペルには下線をH けておく。

結果(正解, 1E答率, i浜答例)

'.J.UJ!!il999:tf'. 4 月

検査集団: 46 名(大学 I年生;男子29 名,女子17 名)

総平均点: 10.4 点(30 点満点;)

総正解率: 34.7%

最高点: lU.t (56.7%)

最低点. 4点(13.3%)

No. 1 (平均点: 3.9/10.0 正解率: 39%)

(Tl;角卒) UE 答率とその人数)

I 目 truck: 47.8% (22 人)

2. album: 80.0% (37 人)

3. library: 58. 7% (27 人)

4 . umbrella: 28.3% (13 人)

5. parallel: 4.3% ( 2 人)

6. automatic: 67 .4% (31 入)

7. crawl・ 17.4% ( 8 人)

8. stalker: 2.2% ( 1 人)

9. theater: 47.8% (22 人)

10. smooth: 32.6% (15 入)

(誤答例)

track 23 人(はぽ会議答)

alubum (母子手将入) 5 人, albam 2 人

libraly 12 名,他も I, r の混同

!era, -rera ,一lella 等の I, r のi昆|汚が17 人, am が12 人

I, r のitU,J がほとんど

autmatic 6入, automatick 5人

crol 12 人, crow! 12 人, croul 4 人

storker 13 人, stoker 11 人, stouker, sturker 各3 人

seater 8 人, dater 6 人, sheater 2人, tiater 2 人

smoos 12 入, smooz 9 人

No. 2 (平均点: 3.4/10.0 正解率: 39%)

(正解) UE :答率とその人数) (談答例)

1. hut: 15.2% ( 7 人) hat 35 人(ほぽ会談答)

2. b!!g: 41.3% (19 人) b旦g 19 人, yag, yug 各 l人

3. P!!nk: 56.5% (26 人) pank 15A

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- 70 一

4. ankle:

5. first:

6. worm:

7. crab:

8. g担ye:

9. bowl:

10. hall:

13.0% ( 6 人)

78.3% (36 人)

13.0% ( 6 人)

6.5% ( 3 人)

21.7% (10 人)

54.3% (25 人)

37.0% (17 人)

外国語教育

uncle 7人, encol 7人

fast 5人, furst 2人

warm 29 人, walm 2人

club 14 人, cram 12 人, crub 6人

gr 等 I, r の混同が22 人, g1£ 6 人,セ 4人

boul 10 人, ball 4 人, bawl 2 人

hole 10 人, holl 7人, hool 3人

No. 3 (平均点: 3.2/10.0 正解率: 32%)

(正解) GE答率とその人数)

1. convenience: 21. 7% (10 人)

2. access: 76.1% (35 人)

3. career: 41.3% (19 人)

4. thinn 巴r: 6.5% ( 3 人)

5. psychology: 6.5% ( 3 人)

6. body conscious: 2.2% ( 1 人)

7. rhythm: 17.4% (8 人)

8. energy: 67.4% (31 人)

9. amateur: 0.0% ( 0 人)

10. advice: 76.1% (35 人)

2-2 テスト結果の分析と授業での指導

このテストはあくまで音声指導の一環であるので,「カタカナ発音Jとすべての青葉との関係を系

統的に調べたものではない。しかしそれでもこのテストの結果からは,「カタカナ発音j が日本入学

習者に与える影響についての一般的な傾向が読みとれる。

設問 No. 1 からは,「カタカナ発音j がごく基本的な語裳の習得に与える影響の大きさが伺える。

album (アルバム)の正答率が80% と高いことは,この語が中学での英語学習のごく当初に現れるこ

とと関係があるだろう。しかし同じく初期に自にする library (ライブラリー)では正答率は58.7%

に, umbrella (アンプレラ)に至っては28.3% に落ちている。この 2 語では決定的に l とr の混同

が起こっており,さらに複雑な parallel (パラレル)では正答率が4.3% と極端に低い。正答の多かっ

た album/&lbdm /にしても, Ire /と IA/ (/d /)の識別ができた上で、のスペル習得で、ないことは,

幼児期から身近な語である truck (車両のトラック)が別の語である track と様度に混同されてい

ることに現れている。日本語の青葉を英単語の発音に代用する特徴は,子青・母音の両方に起こっ

ている。子音では l とr の混同のほかにも, .fueater (シアター)での /el と/s/, smooth (スムー

ズ)での lo !と/z/の混同が典型的で,その他このテストでは扱わなかったが, ship/ f I sip/s /の

混同もよく起こる。次に母音では,/コ:/と/ou /の混同が著しく,その理由としては元の音素の識

別がカタカナ語からはほぼ不可能なことが上げられる。例えば自にする頻度の高い automatic は正

答率が高いものの, er笠~!/:>:/ (「クロール」英語で、は水泳用語で、はない)や stalker /::,・/(ストーカー)

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~詩音声指導における fカタカナ発音J の影響ji とその払拭を目指した指導法の一例 一 71 ー

などでは, /:J:/が/ou /と混同されることが様めて普通で、,カタカナ訟で党えている限りは元の音

家の子がかりが得られない。これらのことから,簡単に言えば「カタカナ発音j のために学習者は

スペルの習得に大変な苦労をしていることが伺える。

設11rl No. 2 ではr1r1 き取りを通じた英語音素の識別を求めているが,ここでも「カタカナ発音j か

らの transfer (転移)は著しい。ここでは主に母音の混同を調べたが,学習者における /o2 /と/A/,

/コ:/と/ou /の混同以外に,/ei/ と/エー/も問題であり,これら母音レベルでの transfer が

morpheme の識別を阻害していることが伺える。テスト II 寺に, hut では Pizza Hut (ピザ店の名)

を, bug では Bug ’s Life (テスト実施さ1時公1mrJ1 のアメリカ映画)を引き合いに出して発1ましたに

も隣jわらず, h旦t/ A/-h 豆t/ <£/, b!,!g/ A/ b豆g/犯人の混同は著しい。 hd と/ou /についても同様に,

h豆!l/;):/-h2le/ou/, b豆!1/8:/-b~l/ou /の混乱を起こすなど,意味の伝達に支障をきたしている。さ

らに日本語活者の弱点として/or /と/ar /の識別力が弱しこれはどちらの音素もカタカナでは

/アー/と発音されるせいである。このように「カタカナ発音J の影響により,認レベルでの開き取

り能力も大きく被害を受けているものと考えられる。

このテストの結果を知iた学生速は,一様に自分達のスペルカ,開き取り力の低さに驚いていた。

その反応を利用して,今後の英語学潟H寺には以下のことに留窓することを指導した。つまり, 1)英

語学習時には「カタカナ発青J を極力除外し,英語の各語を「英語としてJ 発音すること, 2)特に

誌の発言号はその際の f口の形,舌の位置等」(place of articulation )を絶えず意識して行うこと。ま

た次に,本稿の最後に揚げる一連の consciousness-raising tasks (part 2)を実施し,「英語の青葉と

スペルrM1 のルール」を各自で演繰させ,その後 sound spelling correspondence の基礎的な知識を与

えた。これらの活動を通じて音声に対する学習者の意識を高めることが,よりスムーズな語葉習得

と音声理解に繋がると考えている。ただこの指導例は基本的な英語音声認識から取り残されてきた

学習者に対する remedial work (矯正作業)であり,ヱf-(31 えはもっと早い段階から系統的に指導がな

されるべきであり,その意味でも小学校の英諸学溜の抱える課題は大きい。

3. 「カタカナ発音J 払拭を国難にしている要医

:l 1 「カタカナ発音j の原因

日本入学常者に fカタカナ発音j の傾向をもたらしている要出は,言うまでもなく英語の発音に

おける日本語サウンドシステム全般から来る transfer である。 fカタカナ発音Jとはまさに日本語の

長官員を用いた発音形態に過ぎない。日本語と英語の間には,まず音素レベルの数的,質的な違いが

ある。母音一つを見ても,日本語には/ア,イ,ウ,エ,オ/という明確な 5つの母音音素しかない

のに比べ,英語では20 の音素が英認の母音としてあげられている。(DJ 記号使用の場合。使用する

phomenic symbol (造二案記号)ごとで数え方は迷う。)従って「カタカナ発音」では,複数の英語母

音がそれぞれ Iつの日本語1#:沓で、代用され,例えば,/記, a, A, al の 4つの音素はすべて日本語の

/ア/一つでで置き換えられる。また日本認の母背資案は,同等の記号で表される英語の音素とは微

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- 72- 外 国語 教育

妙に質が違っており,このことも英語母音音支の認知と発音を倒難にしている。例えは、日本語の /u/

は phonetic symbol (音声記号)では[m ]と表記され,英諮の/u/の持つ特徴である lip …rounding

(問答)を伴わない(Ladefoged, 1975 p. 200 )。さらには英語の diphthongs (二重母音)に似た El

本諮の vowel clusters (母音の重なり,例えば/アア,アイ,アウ,アエ,アオ/)も,発音の強弱

や glide (音の波り)の有無等で日英i習で相違があり,また日本語の vowel clusters には/エイ/

と/エー/,/オウ/と/オー/等のような帝京的なれ暖昧さJ (例えば,「英語Jは/エイゴ/と明確に

発音されることは希で,カジュアルになればなるほど/エーゴ/と発音される)を起こし,上記の調

査でも見たように,英語発青11 寺の/ei/ と/エー/, /;>・/と/ou /におけるような混乱を起こしている。

また音素を越えたレベルでも,まず音節構造の遠いが大きく, open syllable (母背で終わる奇節)

で構成される日本語では「ひらがな」 48 字そのものが音色!ri であるが,英語の音節での母音(V )と子

音(C)の組み合わせは V,CV,VC,CVC,VCC ,から CCCVCCC(C )に至るまで様々にあり,母

音で終わることは少ない。この影響で英語の consonant clusters (子音の述統)の発音が被寄を受

け,「カタカナ発音j の典型としての子背の後ろに母音を付ける発音(例えば, l音節の desk は3

1苦節の/de-su …ku /と発音される)を引き起こしている。さらに日本訟は syllable-timing (各音節

が同等の長さで発音される)を取り英語は stress timing (stress のある部分のみが長〈強く発一資さ

れる)を取るので, fカタカナ発音J で発音される語,句,文はそれぞれ実Ii%~の英語よりも間延ぴし

てしまう。その他 suprasegmentals に関わるすべての要素,例えばストレス,ピッチ,リズムでの

遠いも「カタカナ発音j を作り出す原因となっている。これらの習性は中学入学段階ではすでに「化

石化」しておりその払拭は極めて難しい。英語教育の早期化が必要な埋出はここにもある。

3 2 fカタカナ発音」を助長する 3 つの要国

さてこのような音韻上の違いを指導する時,「カタカナ発T§fJを助長しその払拭を国難にしている

様々な要図があることに気づく。まずはピア・プレッシャー(1111 間から受けるプレッシャー)

情意的要素による問題がある。個人指導をもとに改善が見られる学習者でも,教室内での発声にお

いては他の学習者を意識し敢えて fカタカナ発音J に執着することは,英語相当教員であれば誰し

も経験があるだろう。また「いじめJ の問題とも関係するが,英語間からの帰悶生徒がlfJ 分を目立

たなくするため,現地で習得した発育を捨て意関的に他の学習者の発奇形態にすり寄ることも,多

く報告されている。『正しく発音すれば「絡好を付けているjと思われるjという意識(恐怖心) U:

中学入学以降徐々に強くなり,高校段階では一般的なものとなる。この意識の払拭には,教室を越

えて社会全体の意識改革が必要で、あるかもしれない。ただ Krashen (1981 )が Monitor Model

う,教室内の情意フィルターを下げ学習:ti・ が安心して取り組める環境を作ることが言語潔得を促進

させるという考えは,音声指導においても適応、されるものと考える。

さらに「カタカナ発音j を助長しているものに,国語教育での「ローマ字J指導がある。{ローマ

ヲー:j はアルファベットを使うものの,ぞれはあくまで背節文学である fひらがな(カタカナ)」と!日i

Page 9: 英語音声指導における「カタカナ発音 の影響と そ …...英語音声指導における「カタカナ発音Jの影響とその払拭を目指した指導法の一例

~il努E千戸指導における「カタカナ発音J のtt;響とその払拭を IJ指した指導法の一例 一 73 -

じ日本諸表記に過ぎない。「ローマ字」は国有名詞の表記やキーボード入力では必要だが,英語学習

の観点からは桜めて有害である。「カタカナj の長所は48文字ですべての日本誌が,またすべての外

国語の音韻がそれにより様似的に,表せることだ。このため外来語の表記も極めて簡単で,三嶋

(1999 )の研究によれば,表音文字を持たないrt, III認での外米誌の表記は日本語より進かに困難で,

漢字による泊二訳,漢字を使った意訳者2様々な工犬がなされている。つまり日本認ではすべての外国

語を「カタカナj で筋単に表記することができ,外来諮がma 置する結巣となった。明治の初期,ま

だ英語が文学として身近でなかった頃,人々は背7討を頼りに外米誌の表記をしていた。例えば, fメ

リケン」は英認の American/ ;:imerik ;:in /から作られたが,話j)jlf の弱iリー音/;:i /は!拐さ取られないた

めに落としている。またジョン・万二郊の静書によれば水のことは「ワタJ とあり, GA (米音)に

より j互い表記をしている。福沢諭吉の有名な造訟である「簿記J t,英語の book keeping を聡党

的に表したもので,弛緩母音の/u/ (bQQk )を/ウ/ではなく/オ/ (/bQki /)と取ったことは,おそら

く彼が耳から情報を得たためだろう。しかしその後「ローマ字」が身近になると,英語からの外来

語は実際の泊二から外れ,スペルを「ローマ字J 的に読み替えて作られ始める。ココア(cocoa/

koukou /),メートル(metre イギリス英語/mi:t;::ir /)のような初期の外来諮から,その後の外米諸,

例えばウルトラマン(ultra/ Altra /),モザイク(mosaic/ mouzeiik /),ランドリー (laudry /b:ndri/)

など,スペルを元にした英語としては不正確な音訳が現代まで続けられてきた。学資者が,英語の

スペルから受ける情報を「ローマ字」として背に変える傾向は今も根強く, fローマ字J,つまり「ア

ルフアベットを使った音節文字」の学潟がその傾向をより確かなものにしている。現在のところ,

英語を学び始める前の小宇校で「ローマ守:」学習が徹底されているため,英語学溜の開始時にはす

でにこの悪癖が回定化してしまっている。「ローマ字」については,導入のl時期を遅らせるか,指導

の際には英訟との混乱を避ける何らかの手だてをし,英語としての音とスペルに慣れさせることが

必要だ‘と考えている。今後の小学校への英語学P習の導入で、は,この点についても考成がほしい。

最後に英諾奇声指導をi議難にしている要悶として,日本の英語教育でほぼ独占的に使用されてい

るDJ 記号の問題点と,発・Tf記号の指導についての実態がある。これは「ローマ字Jの指導以上に英

語:JI[ 当教員にとって重要であると忠われるので,以下に別の項として扱いたい。

4. 日本における「発音記号J使用の問題

(ダニエル・ジョーンズ式音素記号の使用をめぐって)

音戸指導の補助としての発音記号の使用については,これまでその意義と問題点についてあまり

議論がなされてこなかった。しかし学習者の英録音声認識を向上するためには,現在の課題を経理

し,より効果的な発音記号に閲する指導i去を探ることが必要だと考える。現:l'EH 本で使われる静香・

教材ではダニエjいジョーンズ式帝京記号(以下 DJ 記号)がほぼ独 1:1:i ((]に使用されているが,我々

が慣れ来日しんでいるその発音記号の表記方法が, 日本入学習者の「カタカナ発音J傾向を助長して

いる側面があると考えている。またこれは使用されている記号の問題だけでなく,はたして El*で

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一 74 一 外国諮教宵

は音声指導の補助として発音記号が必要かどうか,また必要であればいかにそれが現場で指導され

ているかという問J認にも関わっている。以下にその問題点と改善方法について議論する。

4-1 発背記号は必要か

はたして日本の英語教育にとって発資記号は必要だろうか。文字(ひらがな)と音声が一致する

臼本語を話す我々には,元々発表記号はその概念すら身近なものではなく,隣諸:にも日本語の発音

記号を見つけることはなし、。これでは当然英語の発音記号を指導することには悩難が伴う。奇声学

者の養成を主]fl 守とする訳ではない一般的英話教育の現場では,実踏の青をもとに音素の識別ができ

さえすればいいので,発音記号はあまり fil. 婆ではないと考える人もいるだろう。新学苦手指導要領で

も「奇声指導の補助J としての発音記J寸は,その導入自体がオプション扱いになっている。しかし

極めて少ない音素数しか持たない日本語を話す学税者が,社会的に英語音声への抜触が限られてい

る中で,発育記号のll)J けなしで学習することには限界があるのではないか。いやむしろ,発音記号

は行本入学習者にとって不可欠ものではないかと考えている。

竹林(1988 )も,過去の発音記号不要論の趨旨を認めながらも,発音記号の使用は必婆だとしてい

る。ただ彼は, DJ 記号には問題点が多く,代わりにアメリカの小学校で普及しているフォニックス

(実際に綴られるスペルをもとにした記号)を使用することを提H目している。フォニックス提JI副長

の論拠は,難解な資案記号よりもスペルをもとにした表記の方が簡素であるということだが,実際

の音とスペルに日々接しているネイティブ話者とは違い,日本人が憤雑で複雑な補助記号で成り立

つフォニックスのルールを学ぶことはそれだけで負担が多いだろう。(詳しくは竹林[英語の

フォニックスJ 参照)それならば昭和当初より現在までほぽ独占的に使用され,また慣れ親しんで

きた DJ 記号を,その欠点に配慮:を加えながら使用するほうが問題が少ないと忠われる。また竹林は

フォニックス導入の第一の利点として,それにより英語のスペルと膏の聞の規則性(一致)を教え

られることあげているが,これについても 11/1 崎(1998 )のように,現行のまま(DJ 記号を用いなが

ら)スペルと発浩二の仕組みを教えることに重点を置く考えもある。筆者もこの考えに賛同する。

4-2 発i長表記をめぐる Conundrum (なぞなぞ)ーなぜ DJ 記号か

発斎記号には大きく,意味の識別に必要な音2誌を表したが1onemic symbol (帝京記号)と実際5使

用される背戸の細部を表す IP A (International Phonetic Alphabet )のような phonetic symbol (音

声記号)があるが,基礎的な奇声指導をする英語教育の現場では音素記号の使用で卜分自的が巣た

せるだろう。また音素記号の 1:1~ でも,より紘iかな allophone (呉音)まで示す必要もなく,要は学潔

者が意味の識別をするのに必婆な最小限の音素を示すことが求められる。ところが奇索記号には学

派や学者により様々に奥なったものが使用されており,音声学のテキストではその使用が研究者ご

とで、違っている。例えば背案記号の中には, IPA をもとにしたイギリス系の Jones (1956) , Gimson

(1962 )の記号,アメリカ系の Trager & Smith (1951), Avery & Ehrlich (1992 )の記号などがあ

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英語音声指導における「カタカナ発音」の影響とその払拭を民指した指導j去の一例 - 75-

Table 4.1

A comparison of some systems for transcribing vowel sounds.

Ke 目yo 目& Trager & Prator & This book 蕊nott Smith Robinette Jo 田es Webs 畑、

beat IY IY ロ 邑1. bit I l l

Cl. bait e ey ey e1 a ll bet ll e ll e e 2e bat お 2e 2e 魯 a Q father α a a Q 基。 bother a a 乱 宮 a 司 bought 司 古h 由 a: 。OQ boat 。 ow ow OU 。Q put u u む u 古

u boot u uw uw u: il A butt A 司 宮 宮 3

ai bite Bl ay ay Bl

BQ bout au aw aw au au :11. boy :>I :>y :,y :>I δi

(Ladefoged, 1975, p. 64)

り,また IPA に拠らない記号でもウエブスターlfi 「2書式などがある。それらの表記は母音一つを見て

も,上の表のように細部の違いがあり,またそれは音素の捉え方と数え方の違いに拠るもので,そ

れぞれに長所も短所ーもある。音声学に関する文献を読む時,様々に使用される発音記号の様相はま

さに conundrum (なぞなぞ)に近い。

さて問題はそれらの音素記号のうち,どれを一般的な日本の英語教育で使用するかであるが,な

ぜ日本では DJ 記号が辞書?を初め一般的英語教育でほぽ独占的に使用されてきたのだろうか。おそ

らくそれは,明治以降日本の英語教育がパーマ一等から受けたイギリス学派の影響(パーマーと

ジョーンズは友人でもあった)とジョーンズの音声学確立者としての知名度があったからではない

だろうか。しかし DJ 記号が内包する問題点,特にそれが日本入学習者に与える混乱についてはあま

り議論がなされてこなかった。

4 3 ダニエル・ジョーンズ式音素記号の問題点と指導法の改苦ー

筆者が考える DJ 記号の第一の問題点は,母音記号,特に;長時音 /i:/, /u:/, /α:/と中舌母音/A/

の存在とその認識である。筆者の経験からもこの二つの母音形態が学穏者に与ーえる影響は大きいと

考える。これらはまた奇声学的にも大きな議論を呼んで5きた。まず長母音をめぐっては,現在二つ

の立場がある。一つは,長母音は短母音と比べ長さと賓の両方に遠いがあり,その両者を意識させ

るために長音記号を用いることが必要だとする立場(Roach, 1996. p. 21 )である。もう一つの立場

は,音ーの length (長さ)はあくまで allophonic (異者的)な要素,つまり音素を決定する要素では

ないとする考え方で, Brown (1990 )等が強く長斎記号の使用に反対している。日本語のような言語

では,母音の長短が諾の意味を左右する。例えば日本語では「ユキ(雪) J と「ユーキ(勇気)」,「オ

サカ(小坂) J と「オーサカ(大阪) J は違うものを指す。ところが英詩のEえff はあくまで supra 句

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一 76 ー 外国語教育

segmentals に関わる要素で,従って英語話者が日本語を学ぶII 寺,「病院,美容院j の医7]1 )に苦労する

ように,これら日本認の長短時音の習得に混乱をきたすことはよく知られている。長辞記号の使用

に反対する研究者(特にアメリカの研究者)達は,!~l号奇と二重HJ: '/奇の代わりに tense vowel (張り

HJ :背),短母音の代わりに lax vowel (弛緩母音)という用認を汗iい,切:t去の音素的違いを決定する

のはこの, tense か lax かという性質によるとしている。この両者の立場に共通していることは,

長背記号とは多くの日本人'.'y :習:者が考えるような背の長さだけを示すものではないということであ

る。ところが臼本入学関者のほとんどは,日本訟の長短Fi}:音の属性を英語に当てはめて浬W?し,タ1)

えば, /i/。と /i:/は質的にもまったく違ったほ音であるにも関わらず,/i/の発背には日本語の/イ/

を,/i:/の発音には/イ/を1111 ばしただけの/イー/を使うという間違いをおかしている。同じこと

は/u/と/u:/にも言える。このように長背記号の勺二える視覚的影響で,ごく基本的なffJ:i 苦の識別が

阻害されている。であるならば,英語千若葉表から長母音を排除し, iヨ背は tense か lax かという Jι準で認識させる方が迩かに有意で、あると考える。またこの概念を使えば,それぞれの母音を tense/

lax のセット(例えば/ei/ /e/, /ou /…/コ:/)で意識することが可能になる。英誌の母音ではこの

tense か lax か(強いか弱いか)の認識が極めて重要であり,それを際立たせるためにも上記の表の

ような』美々な音索記号が研.究%r ごとで

わりに/I/, /ei/ の代わりに/ey, e/, /e/の代わ』)に/ε/等)ところが日本語で、は F,~:牟j苦の長卸.が

morpheme を決定するだ、けで、なく,すでに述べたように連続母音と長母音をめぐる「i慶昧さJ (英

語/エイゴ,エーゴ/行動/コウドウ,コードー/)もあり,日本入学習者に英認のHJ:ff と日本語の母

音の違いを理解させることは元々難しい。 DJ 記号は長背記号を用いる立場を取る点で,この傾向を

助長している。

DJ 記}%の二つ!CJ の問題点は, 1:j:1 舌資資 /A /の存夜である。これについても議論は大きく分かれて

おり, /A /と la /は違った青葉であり両者の使用は必要だとする立場と, /A /と la /は資案的にほ

ぽ同質であり,/a/だけの使用でこと足りるとする立場の二つがある。/A /の使仰を否定するのはア

メリカの研究者に多く,例えば Ladefoged は自らは便宜的に/ム/を使用しながらも,その使用はイ

ギリス英語の表記の関係で必要なだけであるとしている(p. 29 )。アメリカでは例えばウエブス

ターのような一般向けの際書でも発音表記に /A /はなく,多くの話者に取っては /A /と/a/の識別

は無意味であろう。筆者も指導の経験から,アメリカ発資,イギリス発音に関係なく, /A /と/a/

の識別にはあまり意義を感じない。それどころか fカタカナ発音j で区別なく一律に/ア/と発音さ

れる母帝が DJ 記号では/re, a, A, cJ /と 4つもあり,それだけでも学習者には煩雑で、あり,アメリ

カ発奇の/α/は別にすれば,/a/ (/A /)と/re /の識別さえできれば十分だと考えている。極めて広

範闘に使用される schwa (/a /)は元々 i慶l味背であり,厳筏な区別は一般的学視者には不必要と考え

る。

では発背記号の使用はどのように改帯することができるだろうか。三ff: 者は個人的には長音記号と

『j:i舌f司令官 /A /を持たない記号・の使用が望ましいと考えるが,普及率やおlじみの点からも DJ 記号の

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英話11 戸ま指導における「カタカナ発音:jの影響とその払拭を目指した指導j去の一例 一 77 -

使用をやめることは現実的で、はない。残念ながら我々はこれからも DJ 記号を使用し統けるだろう。

であれば我々にできることは,発音記号に関する指導法を改善することしかない。現在 DJ 記号につ

いては,その導入が始まる中学時,そして日常的にそれを目にする高校時においても系統だった指

導がなされておらず,その結来,大学生でも DJ 記号が「読める j 者は多くない。まずは小学校で自

然と英語の音韻に触れさせ, r/-1 学以降 DJ 記号に親しませるような指導が望まれる。次にその指導の

中身に関わっては,それぞれの音素記号を実際の音と結び付けさせ,日本誌の資案との違いを強調

することが必要で、ある。その際,母音の tense/lax の質的遠いを意識させ(長I母斎と二重母音は

tense vowel (張り母背)として,短母音は lax vowel (弛緩母音)と意識させる),長音記号の誤解

を解いておくことも大切である。また日本語の/ア/と間違って発音される 1:/:1 司令母音については,

/ad と/;a/の遠いを強調し, /Al は /di とほぼ同質であり,その区別に意識を払う必要はあまりな

いことを押さえ,学潔者の負担を •Iをくしておくことも効果があると考える。残念なことに日本で奇

声指導の基礎である segmentals すらまともに教えられてこなかったことは,発音記号がどう指導

されているかを充ても推illlJ できる。

4-4 指導する英語の ACCENT をどうするか RP か GA か

DJ 記号に関わってはもう一つのことを提起しておきたい。それは教室ではどの accent (特定地域

の発音)に準拠して指導をするかである。 accent といえば大きく RP (英悶容認発背)と GA (一般

アメリカ発音)があり,一般的には RP は英資, GA は米音を指すと考えられている。 DJ 記号はま

さに RPを基にした表記である。ところがRPとはイギリスの!二流階級を中心としたごく一部の

人々(文献により差はあるが, 3 ~10% )が使用する発密であり,英音の総称ではない。逆にアメ

リカでは発音に地域差があまりなく, GA =米音という認識は可能である。問題は現在日本で使用さ

れている教材のほとんどがアメリカ英認を基にしていることであり,この点でも RP を基にした DJ

記号の使用は矛腐している。日本の標添的な学習英和f庁翠

之Jまhot [hat, hAt ]と米音を先に立てている。ところが特定の王子案については米吉二のみを採用(例

えば, bird [bard ]における/ar /など)するなど,米音への傾斜が強い。もし米背を優先するなら,

jjij 述の /Al の扱いにも問題がある。

では日本の教案ではどちらの accent を用いて指導されているだろうか。おそらくある教員は米

青を,ある教員は英帝を使用し,またある教員は]単認や音素により英音・米長を使い分け,他はそ

れこそ何の意識もなく混同した使用に終始しているだろう。指導する accent の選択について五十

嵐(1981 )は,話すためには英音,米苦手のくせを抜いた「両方の長所をとった穏健な発沓」の指導

会提案し,また聴解的には世界のあらゆる accent に備える必要を説いている(pp. 20 …21 )。しかし

テープ教材の authenticity や accent ごとの帝京の相違を考えると,発音函,総解rm でこれらのこと

を一度に求めるには無理があり,指導者による偏りも出るだろう。筆者は音素の混同を避けるため

には,救急”での指導は英帝,米音のどちらかに限定すべきだと考えている。まずどちらかの accent

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- 78 - 外国語教育

に慣れさせ,その後初:界の様々な英語のバラエティーに対する理解と尊重の念を培えばいいのでは

ないか。そしてまず最初に使用するのは,音韻理解への誤解が少ない米奇ではないかと考えている。

これは決してアメリカ英語至上主義の観点からではない。まず前記したように RPが英音を代表すー

るものではないことがあげられる。次に英背の日本入学習者に与える困難点がある。例えば元々

/£/を用いて発音されていた約600 詩は,米音ではそのまま/re /を残しているが,英音ではその内

約150 語が現在では/a:/を用いて発音されており(例:英斎で/re /から/a:/に変化した認は ask,

half 等),語を見るだけではどちらの音素を取るのかを知る手がかりはない。この点米音ではすべ

て/re /で、済み,学習者には混乱がない。米音に執者するつもりはないが,英音,米音の子t意的な使用

については,それが.Ej-える混乱からも統ーした使用を提案したい。

5. 「カタカナ発音J の払拭を目指して一一音声指導の一例

5 1 英詩音声指導において f何J を「どのようにJ 教えるか

最後に,音声指導を行う英語狙当教員として最大の関心事である指導方法に関して,「カタカナ発

音」払拭を目的とした指導例を示したい。その前に,「何J を「どのようにJ教えるかについて現在

の英語教授法の動向を見ておく。まず f何」を教えるかについては, segmentals (個々の音素)の

理解に重点を置いてきた従ヨ!との指導への反省から, suprasegmentals (全体としての音のつながり)

を理解させることがより重要であるとする考えが現在趨勢を占めている(Wang, 1999 )。次に「ど

のように」教えるかについても,コミェニカティブ・アブローチの影響で,音韻についてi直接的に

教授する bottom-up 形式に代わり, 4技能すべての学習のぶ11 で,特にコミュニケーション活動を通

じて,学習者にi寅線させる top-down 形式が主流となってきている(Pica, 1984 )。ただこれら 4つ

のアブローチにはそれぞれ長所があり,できればすべての要素を盛り込んだ指導法が最善であろう。

問題は,授業という限られた時間の中で発音指導にかけられる割合には限界がある。つまり f何を

どのようにJ教えるかの 4 アブローチの内どれを採用しょうが,教えられることには限界がある。

それであれば Krashen (1982 Krashen & Terrell 1984 )がその Monitor Model で提起するよう

に,教室でのフォーマルな指導はその後学習者が自ら広い吐界で自学していくためのあくまで準備

に過ぎないと認識することが必要で、あろう。筆者は,限られた授業時間の中では,まず学習者の英

語奇声に対する意識を高め,後は計二される範囲内で指導したい内雰を適切な指導法で教えることが

最善であると考える。この意識を高めること(consciousness …raising )が第二言語潔得において来

たす役割については近年注目が集まっており(Schmidt, 1990 ),このことは音戸指導においても適

応されると考える。以下の指導例はまさに consciousness-raising のための活動であり,その後の学

習者の音声理解に対するレディネスを培うことを目指している。

5-2 Consciouseness-raising Tasks を用いた奇声指導の一例

以下は教室での英語背戸指導で,学習者における consciousness raising を目的として設定した

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英語辞戸指導における「カタカナ発音J の影響とその払拭を臼指した指導i去の一例 - 79-

活動の一部である。この活動は, :4 又稿ですでに提示した学習者に対する「カタカナ発音」傾向を明

らかにするテストを Jg,j 半とし,以下をその後半とする。これは筆者が高校及ぴ大学での音}全f指導で

実擦に使用してきたものでもある。その 13 的は, 1)英認の音韻と「カタカナ発背J との相違点に対

する学習者の意識を高めることであり,具体的には,タスク 1でリズムの違い(syllable timing か

stress-timing か),タスク 2で外米諸の発音様式から米る英語発王子の誤りに焦点を当てている。また

目的2)は,タスク 3 を用いて学習者に sound-spelling correspondence (スペルと長案の一致関係の

規則)を演締させることである。要は学習者に fカタカナ発音j の弊害を印象付け,それを防ぐた

めのスペルから受ける視覚的手がかりを穏得させることを意図している。

特にタスク 3では, t学1現者A が母背識別において transfer を被りやすい 3つのセット/コ:/…/ou/,

/ei /…/エーI, /ar /一/';; r/とあいまい母音 /';JI を扱う。指導する音素を母音だけに限定したのは,子

音については, f日本人は iとrの発音が弱いJ 等の自党があるように,日本語にない斎索,例え

ばIf/一/v/,/e /…/ろ/等の存在は学習者に比較的筏易に認識されやすく,従って教案での音声指導

では,違いが認識されにくい母音のほうに重点が置かれるべきだと考えたからである。 3 つの母音

のセットについては,そのどれもが本稿で度々扱ってきたように,その習得が El 本入学務者には重

要と足、われる。また Catford (1987, p. 89 )は,音素識別上より重要なのは各音素個々の使用頻度よ

りも, minimal pair (例: catcut )における意味の違いを決定するニつの青葉の使用頻度であると

し,これに functional load (機能上の負荷)という用訟を用いて,各音韻のセットに l から 100 ま

での負荷依を付け,指導時の優先準を示している。彼のjQJJ 定からも上記 3 セットの内/コ:I/ou/

と/ar /一/訂/はそれぞれ負荷が, 88, 64 と高い。また/ei /一/エー/については, El 本入学資者特有

の母語からの transfer があり,特に指導が必要だと考える。最後の hi /はまさに英語らしさを決定

する母if であり,発話レベルでは諾ストレスのないすべての母背はこれに reduced (弱化)される可

能生があり,極めて使用頻度が高い。 Quakenbush (1998 )の研究によれば,標準的アメリカ映画を

調べた結果,会発話中の総使用母音の約 6害I]までもが/8/であった。従ってこの母子子の理解は不可

欠だと考える。

この指導例の対象は,発音記号を学ぴ活字書:~用いた指導に耐えうる高校生以上の学欝者である。

もちろん第二言語のif 韻習得における臨界期の研究からは,それよりも早い時期での学習開始の必

要性が示唆されている。例えば Long (1990 )は,ネイティブ話者と同等の発音潔得を求めるなら,

U く見積もっても 12 歳がその臨界期になるだろうと結論付けている。その観点からも英語教育の早

期化は必要だ‘ろう。ただ英語教育の現状を見るとき,高校段階以上での修復も必要である。 EFL(外

国語としての英語)環境にある我が閣の英語教脊に求められるのは,ネイティブ裁の発音ではなく

コミュニケーションが可能な発背能力であり,この点では高校生以上の学溜者に対する指導の可能

性は十分あると考えている。

Page 16: 英語音声指導における「カタカナ発音 の影響と そ …...英語音声指導における「カタカナ発音Jの影響とその払拭を目指した指導法の一例

80 - 外国諸教育

Consciousness raising Tasks Part. 2

(以下の活動はネイティブ話おとの共同授業を恕乏しているため,英泌を使用言認とする)

Task 1 (Understanding the difference between syllable timing and stress-timing.)

Dir 巴ction: Read the ルllou ing sentences iη the way you would ρronounce them naturally.

What would you do if I sang out of tune, would you stand up and walk out on me.

L巴nd me your ears and l’II sing you a song, and I'll try not to sing out of key.

I get by with a little help from my friends, I get high with a little help from my friends,

I'm gonna try with a little help from my friends.

(From the B巴atl 巴S’song ,“With A Little Help From My Friends ”)

Procedur 巴: d)Hav 巴 some students read the song.

②Write down their pronunciation in Katakana on the blackboard.

③Play the record.

④Have them feel the difference between Katakana pronunciation and authentic sounds.

⑤Hav 巴 them practice singing.

⑤Give the students an assignment: tape-r 巴cording.

“'Play you ,γJavo γite English so γzg 、sing ala, 屯E,αγzd reco γd it. '’

Recomm 日ndation; the Beatles, Simon and Garfunkel, Carpenters, etc.

Not 巴s: The important point of this activity is that we have to make the students fully aware of the

different timing patterns of the two languages by comparing the actual sounds 岨

E.g.; Japan 巴se- ー“ai ge-tto-ba-i-u …トzu-a-ri to ru-he-ru-pu-fu-ro-mu-ma-i fu-ren-zu '’

(23 timings)

English -“I get by / with a little help / from my friends ”(3 timings)

They may not sing along in th 巴 classroom, but they enjoy r巴cording their singing at home.

Karaoke is their second nature!

Task 2 (Understanding the pronunciation patterns of common Katakana words.)

Di1τection: Use 抑制’ dictio 加 γy and fぬd the co γγeel English sj;elli 抗野 Jo γthe followi 時間γds, and com-・

争且γe Katakana 争ro γzuncia ,抗on with actual sounds ‘

Words ;コイン・ランドリー,メートル,ホット・コーヒー,ウルトラ?ン,キャリア・ウーマン,

ホース, トンネル,ビタミン,ウール,カップ。ボード

(coin laundry, met 巴r, hot coff 田, Ultraman, hose, tunnel, car 巴er woman, vitamin,

wool, cupboard)

Notes: After having them write down the phonemic transcription of those words, it is necessary to

d巴monstrate th 巴 actual sounds by the native speaker. The aim of this activity is to have the

students under ‘stand that many of the loanwords are bas 巴d on visual perception of English

words. So the moral is: DOUBT KATAKANA WORDS! DOUBT YOUR KATAKANA

PRONUNCIATION!

Task 3 (Und 巴rstanding som 巴 significant differ 巴nces of English vowel phonemes. )

No. 1. (/コ:/-/ou/)

Direction :日E your dz ・ctionmy and write down English ρhonemic transcriptions (DJ) for the followz ・ng

Katalwna words and some English words.

Page 17: 英語音声指導における「カタカナ発音 の影響と そ …...英語音声指導における「カタカナ発音Jの影響とその払拭を目指した指導法の一例

英語字千戸指導における「カタカナ発音」の影響とその払拭を目指した指導J去の一例 - 81-

/;,:/;,オーカやスト(」泊五れ1st ),オートメーション(fil!tomation ),チョーク(chg.!k ),フェスティ

パル・ホール(festival hg.!l) , c~旦ght, b四位t,旦~kward

/ou /;ローン(恒例,コート(C.Q.1!t ),ボート(b旦 t),ウエスト・コースト(West C旦st ),ロ

リング・ストーンズ(R2llingSt2nes)

Procedure :①Have the students use the dictionary and writ 巴 down the transcriptions.

②Pronunciation demonstration by the native speaker. Have them notice the diff 巴rence

between Iコ:/…/ou/.

③Have them find the spelling rule by themselves :/コ:/-"au ”,“aw ぺ“ough ”,“al ”

/ou /“o”,“oa ’\

No. 2. (/ei/ 一/エー/)

Direction: th 巴 same as above:

/巴i/ ;エース(ace ),ベースボール(baseball) ,ケーキ(cake ),スケート(skate ),テープ(tape),

ペーパー(paper)

Procedure :①Have the students use the dictionary and write down the transcriptions.

②Pronunciation demonstration by the native speaker. Have them notice the difference

between /巴i/ 一/エー/.

③Have the students notic 巴th 呂t there ’s no Iエー/ sound in English.

④Have them find the sp 巴lling rul 巴:/ei/-"a ’\

No. 3. (/;;r /…/or/)

Direction: the same as above:

/;;r /;ノfーソン(person ),バード(bird ),ノfースデー(birthday ),パール(pearl) ,サード

(third ),ターン(turn ),アース(earth ),ドクター(doctor)

/or /;,ハードトレーニング(hard training ),カード(card ),ノfーティ(party ),ハート(heart)

Procedure :①Hav ,巴 the students use the dictionary and write down the transcriptions.

②Pronunciation demonstration by th 巴native sp 巴ak 巴r. Have them notice the difference

b巴tween /;;r /一/or/.

③Have the students notice that there ’s no distinction between /。r/ and /ar/ in Japanese.

The words with both sounds are pronounced with /アー/ in Japanese.

④Have them find the spelling rule: /;;r /-"己 r”,“ir ぺ“ur ’\“ear ”,“or ”

/ar /一“ar ’,. (Bewar 巴of 巴xceptions :巴.g./ar/in ‘'h盟rt. ”)

No. 4. (Reduced Vowel/;;/

Dir 巴ction: Read the following word 旨 Write dow ηKαIαhσ na ρronu ηci αtion of each word (e.g. Iアパウ

ト/) and com ρare with the English ρhonemic transcn ρtion (e.g. /;;baut/).

Words; Am 巴rican, neggtive, unbeliev 豆ble, gbout ,旦ppointment, boom 旦rang, independ~nt,

family, fav2rite, minim 旦m (underlin 巴d letters: a, e, i, o, u)

Procedure :①Have the students use the dictionary and write down the transcriptions.

②Pronunciation demonstration by the native sp 巴ak 巴r. Have them notice the difference

between Katakana pronunciation and authentic English sounds.

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- 82 - 外国誇教育

③Have them find the rule for the reduction: a vowel without a stress on it tends to be

reduced to /。/

おわりに

本稿では,日本入学習者の英語奇声認識を阻害している「カタカナ発音J を取り上げ,その払拭

を目指した提案と指導例の提示を試みた。それは「カタカナ発音」を払拭することが,学習者の英

語音声認識,さらには英語運用能力全般の向上に繋がると考えたからである。指導例では,学習者

の意識向上(consciousness-raising)に焦点を当て,奇声認識に課題を持つ高校生以上の~:潔者を

対象とした一連の活動を示した。本稿では全体として主に語レベルでの音素の認識や習得を中心に.

論じてきたが,これは決して supr 噌asegmentals の指導を軽視するものではない。むしろ最終的には,

コミュニケーションを可能にする総合的な英語発音能力を学習者に保証していく必要があるだろう。

さらには,小学校への英語教育の導入も視野に入れ,小・中・高・大を通じたより体系的な音戸指

導の構築が,今後の英語教育‘に求められるだろう。これらについては別の機会に論じたい。なお本

稿は筆者の授業実践を基にした英語音声指導に関する概観に過ぎず,ここで指摘したそれぞ、れの仮

説については調査と研究を続け,個々に実証していくことが今後の諜!盟であると考えている。本稿

が,英語音声指導への関心をおめる一助になればと願っている。

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