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自動走行ビジネス検討会 「自動走行の実現に向けた 取組報告と方針」 Version 3.0 令和元年 6 26 自動走行ビジネス検討会

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自動走行ビジネス検討会

「自動走行の実現に向けた

取組報告と方針」

Version 3.0

令和元年 6 月 26 日

自動走行ビジネス検討会

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目次

1. はじめに .......................................................................................................................... 1

2. レベル 4(遠隔操作無し)の実現に向けた取組 ............................................................. 4

3. 自動走行における競争・協調の戦略的切り分け(取組方針) .................................... 16

(1) 重要 10 分野全体の関係性 .......................................................................................... 16

(2) 重要 10 分野における取組方針 .................................................................................. 17

4. 安全性評価環境づくり検討 WG ................................................................................... 31

5. 人材戦略 WG ................................................................................................................. 36

6. 実証プロジェクト ......................................................................................................... 42

(1) トラックの隊列走行 ............................................................................................... 42

(2) ラストマイル自動走行(無人自動走行による移動サービス等) ......................... 48

(3) 自動バレーパーキング ........................................................................................... 54

7. ルール(基準・標準)への戦略的取組 ........................................................................ 58

(1) 基準の検討体制 ...................................................................................................... 58

(2) 標準の検討体制 ...................................................................................................... 58

(3) 基準・標準の横断的な情報共有と戦略検討 .......................................................... 59

8. おわりに ........................................................................................................................ 61

自動走行ビジネス検討会 委員等名簿 ................................................................................ 62

検討の経緯 ............................................................................................................................ 64

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1. はじめに

都市を中心に世界の人口が増加する中、自動車の更なる普及拡大が

想定され、交通事故の削減、交通渋滞の緩和や環境負荷の低減等がよ

り必要となる。今後、既存の取組だけでは抜本的な解決が困難と予想

されるため、新たな取組である自動走行への期待は高く、関連する市

場の拡大も見込まれる。

自動走行は、我が国にとって、成長が期待される分野であり競争力

を確保することが重要であるが、我が国自動車メーカーは、欧米自動

車メーカーとともに世界をリードする一方で、例えば、部品やサービ

ス等については、欧米勢の取組が極めて活発であるなど、決して楽観

できない状況である。また、従来の自動車技術以上に、業界内、業界

間や産学の協調、更にはユーザーの理解向上が求められることから、

我が国がこの分野で世界をリードするためには、関係者による戦略的

な取組が必要である。

政府の「未来投資戦略 2018」(平成 30 年 6 月 15 日)1及び「官民

ITS 構想・ロードマップ 2019」(令和元年 6 月 7 日)2においても、交

通事故の削減、地域の人手不足や移動弱者の解消といった社会課題を

解決するために、自動走行プロジェクト実現に向けた議論がなされて

いる。特に、実証プロジェクトに記載している「トラックの隊列走行」、

「無人移動自動走行による移動サービス(ラストマイル自動走行)」に

ついては、その実現に向けて、具体的な工程表が策定されている。

「自動走行ビジネス検討会」は、我が国が自動走行において競争力

を確保し、世界の交通事故の削減をはじめとする社会課題の解決に積

極的に貢献するため、現状の課題を分析し、必要な取組を検討するこ

とを目的に、経済産業省製造産業局長と国土交通省自動車局長の検討

会として 2015 年 2 月に設置された3。

産学官オールジャパンで検討が必要な取組を確認4した上で、その具

1 首相官邸 日本経済再生本部 「未来投資戦略 2018(全体版)」

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/miraitousi2018_zentai.pdf

において記載がある。 2 首相官邸 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議

「官民 ITS 構想・ロードマップ 2019」

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20190607/siryou9.pdf

において記載がある 3 2015 年 2 月に第 1 回を開催して以降、検討を重ね、同年 6 月に「中間とりまとめ」、2016 年

3 月に「今後の取組方針」、2017 年 3 月に「自動走行の実現に向けた取組方針」を公表した。

2018 年 3 月には同取組方針で示した取組の推進及び進歩管理を行い「自動走行の実現に向け

た取組方針 Version2.0」を公表した。 4 「中間とりまとめ」において、関係者が自動走行の将来像を共有した上で、その実現に向けて、

競争領域と協調領域を戦略的に切り分け、今後の取組方針を策定すること、協調領域の基盤と

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体化を図るため 2015、2016 年度に、①一般車両の自動走行(レベル

2,3,4)等の将来像の明確化、②協調領域の特定、③国際的なルール

(基準、標準)づくりに戦略的に対応する体制の整備、④産学連携の

促進に向けた議論を行い、「自動走行の実現に向けた取組方針」(2017

年 3 月)5を提示した。

2017 年度は、「自動走行の実現に向けた取組方針」で定めた工程表

に基づく取組の推進及びその進捗管理を行うとともに、「自動走行ビ

ジネス検討会」の下に、「安全性評価環境づくり検討 WG」を設置し、

これまでの研究開発の成果を活用した安全性の評価方法の在り方等

について検討を開始した6。

また、2018 年度には、「自動走行ビジネス検討会」のもとに、「将来

課題検討 WG」を設置し 2020 年以降の自動走行の進展に向けた制度

やインフラ等を含めた環境整備等に関わる課題・論点について検討を

行った。また、「人材戦略 WG」を設置し、自動走行に係るソフトウェ

ア人材の不足解消を目指し、産官学の取組の共有や、ソフトウェア人

材にとって魅力ある人材育成・評価の仕組みについて議論を行った。

本報告書は、これまでの検討結果を踏まえて、「自動走行の実現に向

けた取組方針」(Version3.0)として整理したものである。引き続き、

とりまとめた具体的取組の進捗状況等を関係者において確認し、必要

に応じて柔軟に取組の見直しや新たな対応を検討すること等により、

自動走行の発展に我が国が積極的に貢献するとの検討会の目的達成

に向けて取り組んでいく7。

なお、本報告書は、車両側の技術及び自動車メーカー、サプライヤ

ー等との議論を通してまとめたものであり、制度・インフラ側からの

検討や、実際に自動走行技術を用いて物流・移動サービスを提供する

事業者の発掘等の検討は別途必要である。

また、本報告書における自動走行レベルの定義は、「官民 ITS 構想・

ロードマップ 2018」において採用され自動車技術会において発行さ

れた JASO TP-18004(2018 年 2 月 1 日発行)の 6 段階(L0~5 ま

で)の定義8を用いている(表 1)。

なる国際的なルール(基準・標準)づくりに戦略的に対応する体制の整備や産学連携を促進す

ることを基本的な方向として確認した。 5 ①、②については、「将来ビジョン検討 WG」を設置して検討を行った。 6 工程表の進捗については「自動走行ビジネス検討会」の下に「非公式フォローアップ」会合を

設置し管理を行った。 7 2018 年 3 月 18 日に米国アリゾナ州において、米 Uber 社が開発を進める自動走行車が、実証

実験中に、車道横断中の歩行者と衝突し死亡させる事故が発生。我が国においても多くの実証

実験が行われている中、自動走行については安全を第一に考え、今後、技術の進展等を見極め

て、適切なルールを整備していくことが重要である。 8 SAE(Society of Automotive Engineers)International の J3061(2016 年 9 月)を和訳した

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表 1:自動走行レベルの定義

レベル 概要 操縦の主体

運転者が一部又は全ての動的運転タスクを実行

レベル 0

運転自動化なし • 運転者が全ての運転タスクを実施 運転者

レベル 1

運転支援

• システムが縦方向又は横方向のいずれかの車両運転制御のサブ

タスクを限定領域において実行 運転者

SAE レベル 2

部分運転自動化

• システムが縦方向及び横方向両方の車両運転制御のサブタスク

を限定領域において実行 運転者

自動運転システムが(作動時は)全ての動的運転タスクを実施

レベル 3

条件付運転自動化

• システムが全ての動的運転タスクを限定領域において実行

• 作動継続が困難な場合は、システムの介入要求等に適切に応答

システム

(作動継続が困難な場

合は運転者)

レベル 4

高度運転自動化

• システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への

応答を限定領域において実行 システム

レベル 5

完全運転自動化

• システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への

応答を無制限に(すなわち、限定領域内ではない)実行 システム

※ ここでの「領域」は、必ずしも地理的な領域に限らず、環境、交通状況、速度、時間的な条件

などを含む。「操縦」は、認知、予測、判断及び操作の行為を行うこと。

<Connected Industries 自動走行分科会>

2017 年度に、これまでの自動走行ビジネス検討会の枠組みに加

え、様々な繋がりによって新たな付加価値の創出や社会課題の解決

をもたらす「Connected Industries」9を推進するために、

「Connected Industries 自動走行分科会」の位置づけを追加し、特

に、(1)データ収集・利活用、(2)AI システム開発、(3)人材

育成強化に焦点を当て、取組の強化、加速化等の検討を行った。

もの。 9 2017 年 3 月に、ドイツ連邦共和国(ハノーバー)で世耕経済産業大臣とツィプリースドイツ

経済エネルギー大臣が、第四次産業革命に関する日独協力の枠組みを定めた「ハノーバー宣言」

に署名したことを受け、提唱したもの。

<ハノーバー宣言>http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170320002/20170320001.html。

<「Connected Industries」概要>

http://www.meti.go.jp/press/2017/10/20171002012/20171002012.html

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2. レベル 4(遠隔操作無し)の実現に向けた取組

走行エリアや走行方法が運転者に委ねられる自家用車(オーナーカ

ー)と企業側で走行エリアや走行状況をコントロール可能な限定区画

における事業(移動・物流サービス)用車(サービスカー)によって、

自動走行の実現の仕方・時期が異なる10。

「官民 ITS 構想・ロードマップ 2018」においては、「遠隔型自動運

転システム」を活用した移動サービスが「無人自動運転移動サービス」

と定義されており、2020 年までに「限定地域での無人自動運転移動サ

ービス(レベル 4)」の実現することを目指すこととされている。加え

て、2025 年目途に「高速道路での自家用車のレベル 4」を市場化する

ことが目標として示されている。

こうした中、2018 年 9 月に開催された国連 WP1 においていわゆる

レベル4以上の高度・完全自動運転車両について非拘束文書が出され、

ODD 等に関して言及されると共に、自動運転システムの利用者に求

められる事項についても述べられた11。

レベル4の実現に向けて国内外の技術開発は進んでおり、米国アリ

ゾナ州において waymo は「waymo one」12というエリア限定での有

償タクシーサービス(ただし現時点では対象者も限定)を開始してお

り、我が国においても自動運転サービスの公道実証が始まっている。

国内外の動向やニーズを踏まえると、サービスカーにおいては2025

年以前に国内でも限定領域において遠隔操作を伴わない地域限定型

無人移動サービス(レベル 4、走行エリア・ルートを限定した無人自

動運転サービス等)が実現する可能性があると考えられる。

しかしながら、2020 年から 2025 年の間の日本政府の目標年限がな

く、具体的な目標が必要との指摘もある。

10 事業(移動・物流サービス)用自動走行車は、自家用車と異なり、人件費を削減することがで

きればコストの制約が緩くなるため、センサー等を数多く搭載することが可能であり、雨天時

など走行環境が優れない場合は、必要な安全確保措置を講じる等、走行方法の工夫が可能であ

る。また、サービス事業者側で走行状況をコントロールできることから、サービスとして提供

した車両の運転実績を蓄積しやすい。一方、自家用車は、個人所有となるため、車両データの

扱いには考慮が必要であり、開発にあたっては、事業用車で蓄積したデータの活用が考えられ

る。 11 道路交通条約(1949 年ジュネーブ条約)では、①車両には運転者がいなければならない、②

運転者は適切かつ慎重な方法で運転しなければならない、等と規定されているが、2016 年 3

月に国際連合欧州経済委員会(UNECE)道路交通安全作業部会(WP1)の了解事項として

「自動運転車両の実験について、車両のコントロールが可能な能力を有し、それが可能な状

態にある者がいれば、その者が車両内にいるかどうかを問わず、現行条約の下で実験が可

能」とされている。 12 サービスの対象は200名程度であり、運転席にドライバーを乗せた限定したサービスに留

まる

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このような状況の中、サービスカーにおけるレベル 413の導入タイ

ミングや導入の際の制度整備やインフラ整備等に関わる課題・論点に

ついて検討を行うため、自動走行ビジネス検討会の下に「将来課題検

討 WG」を本年度設置し、議論を行った。

(1) 国内外のレベル 4に関する動き

レベル 4 のサービス実現に向けては、国内外において複数の走行

環境にて実証実験やサービスが実施/計画されている。総じて 2020

年代前半にはレベル 4 実現という目標を掲げ活動するプレイヤーが多

数存在。

【国外】

Waymoについては、2018年 12月 5日に「Waymo One」と称して、レ

ベル 4の有償サービスを開始。ただし、当初は訓練された従業員が

運転席に同乗すると共に、対象も Early Riderプログラムの中の 200

人とその同乗者に限定。

GM Cruiseについては、基本的に人が運転に関与しない高度なレベ

ル 4 システムを搭載した自動運転車でのタクシーサービスを 2019

年にも実用化する方針を 2018年 1月に公表

Sensible4については、フィンランドのベンチャー企業であり、2018年

には雪道での特定ルートのレベル 4 の走行実験を実施。2019 年内

にバス「Gacha」による試験走行、2020年の実用化を目指す

Smart Shuttle Project については、スイスのシオンにて、運転手が

乗車し、ハンドルやペダルを装備しないバスにより、特定ルートを周

回するバスサービスを 2016年夏より実施し、現在も継続中。

【国内】(国内の実証事例はレベル4を目指しているがレベル 2 として実施中)

永平寺町については、廃線跡の遊歩道「参ろーど」を活用し、カート

にて参ろーどを往復するルートの実証実験を 2018年に実施

日立市については、廃線跡を活用したバス専用道である「ひたち

BRT」の一部路線にて、バスを活用した実証実験を 2018年に実施

日の丸交通、ZMP については、2020 年実用化を目指し、大手町-

六本木間の特定ルートにおいて、トヨタのミニバンを改造した自動運

転タクシーによる公道での営業サービス実証実験を実施。

トヨタ、ソフトバンクについては、共同出資によりモビリティーサービ

スを行う新会社を設立。「e-Palette」による自動運転サービス事業

13本年度議論したレベル 4 とは「システムがすべての動的運転タスク及び作動継続が困難な場

合への応答を限定領域において実行するもの」であり、運転者が不在であることを想定。

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を 2020年代半ばまでに実施予定。

(2) 事業者からの意見

事業者が考えるサービス開始タイミングや政府への要望を把握す

べく、将来課題検討 WGでは、自動運転でのモビリティーサービス実現

を目指す事業者にヒアリングを実施。概ね以下の様な意見があった。

(「いつ、どのような走行環境を、どのようなクルマで、どのようなサービ

スを実現しようとしているのか」について)

自動運転に対応した小型車両を用いたサービスの 2020 年代早期

の実現を目指し、遠隔操作は行わず遠隔監視のみで対応可能なレ

ベル 4 が目標。現在はその目標に向け、実質レベル 4 を目指す実

証実験の中で、事業性や社会システム構築に取組んでいる。自動

運転サービスのニーズは特に地方部で大きく、自動運転サービスの

実現によって、「ドライバー不足」「高齢化による免許返納が進まず

危険運転が増加」「出歩かないことによる経済縮退」などの課題に応

えていく。

車内に人が乗らない状態で、特に小型電動カートと小型バスを活用

した完全無人の自動運転サービスを実現すべく、実証実験を行って

おり、廃線跡などのような専用道に近い公道ではレベル 4 に近いこ

とが既に実現できている。今後、技術面に関しても地域の運用事業

者主体で実施可能な方法を検討している。ビジネスの観点では、過

疎地移動サービスは収益性に課題がある。

ハードウェアのコストの問題を除いて、BRT路線であれば 2020年に

は技術的にはレベル 4 ができる。インフラ協調の方法として、磁気マ

ーカー埋設を想定しており、現在は磁気マーカーを使用した実証実

験を実施している。なお一度埋設した磁気マーカーに関しては、ひ

び割れ等が起きても問題なく利用できるため堅牢である。

(各社の事業実現に向けて政府に求めることについて)

2019 年にレベル 2、3 を進め、また、必要となる制度やインフラ等含

めた環境整備が整えばレベル 4 へと切り替えることを目指す中、「ド

ライバーという概念が無くなった際の保安基準」、「インフラ協調の際

の初期/維持管理コストの負担方法」、「一般車両等に対する周知」

の 3 点について、政府からの説明がほしい。特に周知に関しては

「初心者マークを付けた車に対する配慮事項」等と同様に、決められ

たルートを走行する自動運転車についてもルールを策定する必要

がある。

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優先道路と同様の発想で、自動運転車を優先するルールを作れな

いか。決められたルートを走行する自動運転車が走行する地域では、

地域のコンセンサスを得て、駐車車両を置かないというルールを作

ることも一案。また、インバウンドの多い沖縄等では、自動運転車を

理解してもらう上で、多言語対応なども必要になるか。

安全性評価について、限定エリアを低速で走る生産台数が少ない

車両においては、OEM 同様のシミュレーションを用いた安全性評価

が必要かについては議論の余地があるのではないか。走行ルート・

エリアがより幅広な OEM のオーナーカーにおいては、シミュレーショ

ンを用いなければあらゆる環境における検証が実質不可能な一方

で、限定ルートのみを走る車両においては、同様のシミュレーション

の要否について議論の余地がある(生産台数が限定されていること

から、OEM 同様のシミュレーションを行うことはコスト的に厳しいとい

う背景も存在する)。

(3) レベル 4への工程

レベル 4 の本格実現に向けては、その実現するエリア・タイミングが

異なると想定され、本 WG ではクルマを「ルートが固定されたサービス

カー」「特定エリア内を走るサービスカー」「より広範に走るオーナーカ

ー」の 3種類に大別し、工程を検討し以下、方向性を示した。

特定ルートを行き来するバスのような「ルートが固定されたサービス

カー」が廃線跡やBRT路線などの限定された公道においては複数の

事業者が 2020 年にはレベル4(遠隔操作無し)の技術が確立するとし

ていることからその後の実証、インフラ整備などを経て 2022年頃14に実

現する可能性がある。その後、ニーズに応じてルートが固定されたサ

ービスが広がるとともに、複数の走行ルートを組み合わせた形で特定

のエリア内を走るサービスカーが 2025 年頃に向けて実現する可能性

があると考えらえる。

オーナーカーにおいてレベル 4(遠隔操作無し)が実現するのは、従

来の政府目標通り高速道路にて 2025年以降となると考えられる。

なお、オーナーカーに先立ち、固定されたルートであってもサービス

カーの社会実装を先行させることは、レベル 4(遠隔操作無し)に係る

技術や HMIの進化や情報蓄積などにも資するものであり、結果オーナ

ーカーへの自動運転の実装を円滑・加速する効果があると考えられる。

また、オーナーカーへの波及を想定したうえで、サービスカーへの取

組を行うことが必要である。

14 実現時期については引き続き将来課題検討 WGにて検討を進める。以下、「特定のエリア内を

走るサービスカー」の実現時期に関しても同様。

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(1) 将来課題検討 WGの中間報告

実際に自動運転車が走り出すタイミングを正確に予測することはで

きないものの、複数の事業者がレベル 4の早期実現に向けて動いてい

る。また、自動運転車に対するニーズは「公共交通や配達等のドライ

バー不足」など、過疎化が進む地方部を中心に確実に存在している。

よって、「4.レベル 4 への工程」のとおり、たとえ極めて簡易な限定さ

れたエリアでも、公道でのレベル 4 の自動運転車の走行が始まること

が想定され、メーカーや運行事業者が遅滞なくレベル 4 の自動運転車

の走行を開始させるための準備を先回りして行っておくことが必要とな

る。

これらを踏まえ、中間報告としては以下のとおりの結論となった。な

お、市場化期待時期の記載もあるが、これは官民が各種施策を取り組

むにあたって共有する共通の努力目標の時期であり、官民ともコミット

メントを表す時期ではないことに留意。

2022 年頃15に限定地域において遠隔操作を伴わない地域限定型無

人移動サービス(システムがすべての動的運転タスク及び作動継続

が困難な場合への応答を限定領域において実行する、SAE レベル

4に相当するものであり、運転者が不在であることを想定、以下レベ

ル4)が BRT や廃線跡などにおいて実現する可能性があることを想

定して、今後、その実現に当たって解決すべき課題を特定した上で

技術開発の動向を踏まえながら、必要となる制度やインフラ等を含

めた環境整備を進めるべき。

2022 年頃に想定されるサービスの実現には、事前の準備が必要で

あることから必要となる制度やインフラ等を含めた環境整備に向け

た方針(例えば次期「自動運転に係る制度整備大綱」)は 2020 年頃

に、採算性も踏まえた民間事業者によるサービスの実現時期を見

極め計画的に策定することが必要。

レベル 4導入の際には、運転者が不在となるところ、従来は運転者

が担っていた乗客の乗降、非常時の対応等を担う運転に関与しな

い自然人を乗車させる必要があるとの声が運送事業者にあること

も踏まえつつ、運送事業者が対応すべき事項等についてガイドライ

ンを作成した。今後、車両が停止した際の車両対応・乗客対応はど

のように行うのか、遠隔操作を伴わない遠隔監視をどのように行う

のか等を含めて、運転者が乗車しない場合でも従来と同等の安全

性・利便性を確保するための具体的な対応方法の検討が必要。ま 15 実現時期については引き続き将来課題検討 WGにて検討を進める。以下、同様。

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た、当該自然人が道路交通法における運転責任を負わないことを

明確にすることも必要であり、法的な位置付け等の検討が必要で

はないか。

レベル 4 早期実現に向けインフラ(磁気マーカー、信号、V2X 等)に

よる支援は有効と考えられるが、インフラの種類・整備時期・場所・

利用方法や、その検討の枠組みをどうするか、より一層の検討が必

要。

その際、レベル 4 の導入目的や目指す姿の明確化と共に、レベル 4

のニーズ・需要の所在、社会課題への貢献、事業性や経済性など、

モビリティサービス(Maas)としての在り方や、安全を担保する技術

等の検討が必要であり、可能な範囲で議論が必要。

なお、レベル 4 の社会実装は、サービスカーが先行する見通しであ

り、そのためのビジネスモデル開発も世界的に進んでいるが、当面

の間、事業性・経済性確保は必ずしも容易ではないと考えられる。

他方、世界的には効率的な配車システムの開発や顧客接点の改善

などが進められており、そうした新たなモビリティーサービス、いわゆ

る Maas の活性化が、将来的な自動走行ビジネスの事業性や社会

的受容性の向上に繋がっていくと考えられる。自動走行ビジネスを

普及させていくためには、それ単体ではなく、地域のモビリティーサ

ービス全体の中に位置づけて検討を進めることが重要である。

レベル 4 のオーナーカーについては、技術的・環境的・経済的・制度

的に課題が多く、実現するのは、従前通り「高速道路にて 2025 年以

降」となると考えられる。

図 2:想定するレベル4の実現イメージ(左:BRT・廃線路、右:公道またぎ・インフラ協調)

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参考:海外における近年の具体的な動き(※一部本文と重複)

欧米勢は、自家用車中心の考え方ではなく、事業用車も対象にサー

ビス事業者とも連携して自動走行の早期実現を狙う。欧州勢はインフ

ラも活用した実現、米国勢は車両の技術を優先した特定エリアにおけ

る自動走行の早期実現を狙っている。

我が国と同様に、IT 系はじめとする新しいプライヤーによる、モビ

リティーサービスの提供を視野に入れ自動走行を活用する動きがあ

る。

<ドイツ企業>

●BMW

自動走行を高速道路、駐車場から導入し、その後、事故/渋滞の

多い都市部中心に V2I を整備することで、一般道路における自

動走行を導入。前提として、まずは、走行精度と社会受容性を向

上させ、その上で、限定地域から普及。

具体的には、2021 年までに「iNEXT」の名で自動走行車を発売

することを公表するとともに、Intel・Mobileye・Delphi・

Continental 等の企業と iNEXT パートナーシップを結び、技術

開発を推進。2017 年 3 月に、損害保険会社のアリアンツとの提

携を発表し、事故時に保険会社と自動車メーカーが共同で因果

関係と責任関係について調査する予定。2017 年下期には 40 台

の 7 シリーズをベースとした自動走行車を使ったテストをミュ

ンヘンの公道で行うことを発表。そして、2017 年 12 月にチェ

コに自動車性能試験場の新設を発表し、ここを電動化、車両のデ

ジタル化、自動走行や先進運転支援システムなどの先進技術の

研究開発拠点とする計画。2018 年 2 月には、レベル 5 の完全自

動走行車のプロトタイプも公開。

レベル 4、5 の導入目標について、現在レベル 4 を実現し得る段

階に到達してきているものの、それをそのまま一般に現時点で

販売する考えはない模様。また、レベル 5 の実現へは今後 10 年

はかかるとの見立て。なお、2018 年 2 月には Daimler と自動運

転の技術開発で提携すると発表した。共同開発した技術を 2020

年代半ばまでに市販車に搭載することを目指すとのことで、限

られた場所で無人走行ができる「レベル4」の技術の確立を目指

して連携する。

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11

●Daimler

事故ゼロの社会の創造を志向し、2020 年以降のレベル 4 の導入

を狙うが、2030 年までは、一般道路における右左折を含む自動

走行の導入は困難と想定。前提として、まずは、技術向上とイン

フラ整備により、顧客、政府に対する安心/安全を醸成。その後、

法律や V2I の整備により高レベルの自動走行を実現。

具体的には、足元は運転支援機能の拡張を続けるとともに、ボッ

シュとのパートナーシップを通じたレベル 4、5 の開発を計画。

2017 年 1 月、Uber と自動走行車の供給と配車サービスの事業

運営で提携することを発表。2017 年 4 月には、ボッシュと開発

における提携を発表し「2020 年代始めに市街地を走行できる自

動運転タクシーなどを市場に投入できるようにする」とし、2017

年 11 月には子会社の car2go が都市部での自動走行 EV による

カーシェアリングの実現に向けた準備開始を発表するなど、モ

ビリティーサービスに関する動きが活発化。また、2017 年 10 月

には、自動走行除雪車を使った実証実験をドイツの空港で開始。

レベル 4, 5 の導入目標について、2020 年代の早期にレベル 4、

5 の発売開始を計画している。

●Audi

レベル 3 以上の自動走行において、責任を自社で取れるレベル

での安全性に鑑み、高速道路、駐車場のレベル 2,3 から導入。

次に、事業者向け限定エリアからレベル 4 を導入し、その後、

一般消費者への展開を想定。前提として、まずは、安全に係る技

術を向上させ、法整備の可能なドイツの高速道路から導入。その

後、法律、インフラ整備の拡張に合わせ、対象顧客と地域を拡大

させる見込み。

2017 年 12 月の NIPS(神経情報処理システム)カンファレンス

において、AI を用いて極めて精密な 3D 環境モデルを構築する

単眼カメラに関する研究報告を行い、クルマの周囲状況をより

正確に把握する技術開発を推進。

レベル 4, 5 の導入目標については、2020 年から 2021 年にかけ

て高速道路の特定速度にて車線変更や追い越しが可能な限定的

なレベル 4 搭載の車の発売を目指している。

<米国企業>

●Ford

インフラが整備済、かつ、法整備、安全性の担保出来る地域を選

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12

定し、需要の大きい事業者向けから導入することでイニシアテ

ィブ獲得を狙う。前提として、まずは、車載の自動走行に係る技

術を確立し、安全かつ法改正の可能な地域から事業用車として

早期導入。その後、実証を重ねて世論を形成し、法改正の早期化

を志向。

具体的には、3D マップ・LiDAR・画像処理やディープラーニン

グ等のアルゴリズム開発等への投資を発表するとともに、Lyft

と共同で自動走行車を事業化する方針。2018 年 2 月、自動走行

車を使った宅配の実証実験開始を発表し、ドミノピザと食品宅

配スタートアップのポストメイトの宅配を受託。

レベル 4, 5 の導入目標について、2021 年までにハンドルやアク

セルの無い完全自動運転車の量産を始めると発表。特に、自動運

転を使ったサービス開拓に力を入れるため、引き続き顧客との

連携を深める目的で、自動運転を使った宅配の実証実験に取組

む。

●GM

2016 年 3 月、自動運転関連ベンチャーの米 Cruise Automation

を買収。2017 年 8 月、傘下のクルーズオートメーションは、自

動運転車でシリコンバレーを往復するアプリベースサービスを

試行実施するとともに、同年 9 月に「自動走行車の量産体制が

整った」と発表し、完全自動走行に必要な全てが搭載済みで、あ

とはソフトウェアと規制の問題がクリアされるのみと発表。

2017 年 10 月、2018 年初めにニューヨークでレベル 4 のテスト

を行うと発表。また、2017 年 10 月、カリフォルニアで登録さ

れた自動走行車の数が 100 台を超えたと発表。

更には、2018 年 1 月、ペダルやハンドルのない自動走行レベル

4 の運行許可を NHTSA に申請したと発表。

レベル 4, 5 の導入目標については、GM Cruise 搭載の無人運転

タクシーを 2019 年にも実用化する方針を公表。米国の主要都市

にて低速運転での走行を想定している。

●FCA

2016 年 5 月、米グーグルの持ち株会社アルファベット(現

Waymo)と自動運転車の開発で提携すると発表。車両を FCA が

提供。また、2017 年 8 月、BMW と Intel、Mobileye、Delphi

Automotive、Continental が共同開発している自動運転プラッ

トフォームに参加を発表。

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13

レベル 4, 5 の導入目標については、2023 年をめどにレベル 4 以

上を実現するとしている。

●Google

これまで法整備と安全性の担保出来る地域を選定し、自動走行

を早期導入することで、データ蓄積によるアドバンテージ獲得

でスピーディな技術進化を志向。前提としても、まずは、車載技

術を確立し、安全かつ法的許可の可能な地域に導入。その後、実

証による利用者の効果実感から世論形成と法改正の早期化を志

向。昨今は自社としての自動走行の開発は継続しつつも、市場投

入の実現性に鑑みた提携を推進。

具体的には、自動走行ライドシェア車両への利用を想定し、クラ

イスラーのミニバンを千台単位で発注済であり、500 台をウェ

イモへ供給済で 2017 年 5 月に累計 300 万マイル以上を走行し

たと発表。2017 年 6 月には、年内に 600 台の体制で公道実験を

開発すると発表し、2017 年 11 月には、「数ヵ月後には運転手が

いないライドシェアサービスを開始する」と CEO が発言。2018

年1月にはアトランタでも自動走行のテスト走行を開始。また、

2018 年 12 月には Waymo one というエリア限定・対象顧客限

定での有償タクシーサービスを開始している。なお、完全無人で

はなく、訓練を受けた従業員が運転席に乗車している。

レベル 4, 5 の導入目標については、2020 年に無人自動運転車を

公道で走らせることを目標としている。センサーとソフトウェ

アは自社開発、車両は OEMと提携し供給を受ける計画であり、

「世界で最も経験豊かな運転手」を生み出すことをゴールとし

ている。

●TESLA

2017 年 7 月、モデル 3 販売を開始し、自動走行機能を利用する

ためのハードウェアが 5,000USD から購入可能であり、今後の

バージョンアップにより完全自動走行に近づける見込み。2017

年 12 月には、AI チップの内製化を強化すると発表。今後、2019

年には自社開発 AI チップ搭載システムをリリースし、レベル 4

以上の自動運転技術の実用化を目指す予定。

●UBER

2016 年 9 月に、自動走行車による配車サービスをピッツバーグ

にて試験的に開始し、2017 年 3 月にはアリゾナとカリフォルニ

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14

アでも試験を開始。2018 年 1 月、自動走行システムに NVIDIA

の技術を採用すると発表。

2019 年 4 月には、トヨタ自動車、ソフトバンクグループの投資

ファンド、デンソーが同社の自動運転開発部門(今後、分社化)

に計 10 億ドル(約 1,100 億円)を出資することを発表。トヨタ

自動車は今後 3年で最大 3億ドルの開発費も負担するとのこと。

トヨタ自動車、ソフトバンクグループの投資ファンドからは分

社化後の新会社に取締役を 1 名ずつ派遣する予定。

●Lyft

2017 年 6 月に、ソフトウェア企業の nuTonomy と連携し、自動

走行車の配車サービスをボストンにて試験的な開始を目指すこ

とを公表。2017 年 9 月には、サンフランシスコ市内の路上にて

自動走行させるため、Drive.ai との提携を発表。また、2018 年

1 月に、Aptiv と共同でラスベガスにて完全自動走行タクシーの

運行を目指すことを発表。

レベル 4, 5 の導入目標については、遅くとも 2022 年までに無

人タクシーを商用化する見通し。まずは、政府が自動運転の普及

を後押しするシンガポールから始め、東南アジアの複数都市で

の展開を目指す。

●NuTonomy16

2017 年 8 月、シンガポールにて自動走行車による配車サービス

の商業化を 2018 年の実現を目指すことを公表。

<仏企業>

●Navya

2017 年 6 月、パリにて自動走行シャトルバスの試験走行を実施

し、2017 年 11 月にはラスベガスでも試験運転を開始。2018 年

の CES においても、自動走行シャトルバスを公開。また、スイ

ス南東部の都市シオンにおいて、2016 年 6 月より特定ルートに

おいて運行を開始。ここでは歩行者や他の自動車との混在交通

において実証が行われている。ハンドルやペダルはないが、従業

員が乗車している。

●Easymile

2017 年 7 月独コンチネンタルから出資を受け、ドライバーレス

16 2017 年に 10 月に米 Delphi により買収された。

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車両の最先端を開発し、新たな能力分野の開拓を狙う。2017 年

10 月に、ドイツにて自動走行バスを導入。2017 年 12 月には、

IVECO、Sctor、Transpoil、ISAE-SUPAERO、Ifsttar、Inria、

Michelin とバスの自動走行の技術開発の提携を発表。

<中国企業>

●SAIC(上海汽車)

2017 年 6 月、SAIC はカリフォルニアにて自動走行の試験の許

可を取得。2018 年 1 月には、高解像度マップにおいて DeepMap

と提携を発表。

レベル 4, 5 の導入目標については、2025 年を目途にレベル 3 –

5 を実現するとしており、モビリティーサービスを含む、総合プ

ロバイダーとなるとしている。

●Baidu

2021 年までに、BAIC(北京汽車)と共同でレベル 4 の自動走

行車の大量生産を計画。2019 年までにレベル 3 の機能を有する

車両の製造を行い、その後 2021 年までにレベル 4 へ移行するこ

とを計画。Baidu は画像認識、サイバーセキュリティ、自動走行

技術を提供し、BAIC がその技術を車両に統合する計画であり、

2019 年までに 100 万台以上の BAIC の車両が Baidu の技術を

搭載する予定。

●Pony.ai

2016 年設立。2017 年 6 月に米カリフォルニア州において走行

テスト許可を取得。2018 年 2 月から広州(南沙)において 6 台

の自動走行試乗サービスを一般市民に提供予定。2019 年末には

200 台以上の自動運転車両を用意しサービス開始を目指してい

る。

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3. 自動走行における競争・協調の戦略的切り分け(取組方針)

2017 年度に公表した「自動走行の実現に向けた取組方針」において

定めた重要 9 分野に加え、2018 年度に公表した「自動走行の実現に

向けた取組方針 Version2.0」においては「安全性評価環境づくり検討

WG」において議論した「安全性評価」を 10 分野目に加えることとし

た。

(1) 重要 10 分野全体の関係性

<必要な技術等>

レベル 3~5 の実現に向けては、まず、高精度地図と車載センサー

により得た情報から自車位置を特定17した上で、車線情報を得つつ、

目的地を設定する技術【地図】が必要となり、車載センサーにより周

辺環境を認識しながら走行する技術【認識技術】が必要となる。その

際、必要に応じ、通信インフラにより合流や右折時等の死角情報を認

知する技術【通信インフラ】が有用となる。

走行に当たっては、周辺車両等の挙動を先読みし、障害物が無いと

判断する技術【判断技術】が必要である。

走行中は、アクセル、ブレーキ、ステアリングの制御技術に加え、

車両システムの故障時、センサー等の性能限界時、ユーザーによる誤

操作・誤使用(ミスユース)時には、車両システムが確実にトラブル

を検知し安全を確保する技術【セーフティ(機能安全18等)】が必要で

あり、また、サイバー攻撃等を受けた場合にも、車両システムが確実

にトラブルを検知し安全を確保する技術【サイバーセキュリティ】が

必要である。

また、レベル 2 はもとより、レベル 3 でも、運転者は引き続き安全

運転の義務等を負うことから、運転者の居眠り等を防ぐため、車両シ

ステムが運転者の状態を把握する等の技術【人間工学】が有用である。

これらの技術開発には、核となるサイバーセキュリティを含めたソ

フトウェアに関する人材確保・育成等に係る開発環境の整備【ソフト

ウェア人材】が必要である。更には、自動運転車を社会実装するため

には、責任論を含めた社会受容性の向上【社会受容性】が必要である

とともに、これら技術が組み合わさって構成されたシステムの安全性

を評価する手法【安全性評価】が必要である。

17 冗長性を確保するため、測位衛星(GPS や準天頂衛星等)による高精度な自車位置特定技術

も検討が進められている。 18 故障時における安全設計を指す。

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17

<協調分野の特定>

今後、我が国が競争力を獲得していくにあたり、上記必要な技術等

のうち、現時点において、企業が単独で開発・実施するには、リソー

ス的、技術的に厳しい分野を考慮し、昨年度までに自動走行に係るテ

ーマから重要となる 10 分野を協調領域として特定した19。

※10 分野=地図、通信インフラ、認識技術、判断技術、人間工学、

セーフティ(機能安全等)、サイバーセキュリティ、

ソフトウェア人材、社会受容性、安全性評価

更に、重要 10 分野に対して、我が国として協調すべき具体的取組

を抽出するにあたり、大きく「技術開発の効率化」と「社会価値の明

確化・受容性の醸成」の 2 つの分類から具体的取組の抽出を行った。

「技術開発の効率化」については、更に、アセット(試験設備、デ

ータベース、人材)の共通化と開発標準や開発段階における評価方法

の共通化という 2 つの協調内容に分けることができる。

アセットの共通化については、基盤地図のデータ整備・更新、認識・

判断技術に活用できるデータベース等の整備と民間における運用、自

動走行用テストコースの活用、更には、ソフトウェア人材の獲得に向

けたイニシアティブの検討等の協調が考えられる。

開発標準や開発段階における評価方法の共通化については、組込ソ

フトウェアのスキル標準の活用拡大、モデルベース開発、モデルベー

ス評価など開発・評価手法の効率化、業界ガイドライン、サプライヤ

ーからメーカーへの技術が提供される際の認証の仕組みの策定、更に

は、セーフティ/サイバーセキュリティに関する国際共通ルール及び

開発ツールの整備等の協調が考えられる。

「社会価値の明確化・受容性の醸成」については、事故低減効果の

明確化などの社会的意義の提示、ユーザーの自動走行システムの理解

度向上、民事/刑事上/行政法上の責任論の整理や必要なインフラの

明確化といった個社では決めることのできない課題への取組が協調

領域として挙げられる。

特に、アセットの共通化については、産学官が協調しながら、どの

ようなデータが共通化・共有できるのか重点的に検討を進め、今後の

産業競争力強化につなげることが重要となる。

(2) 重要 10 分野における取組方針

19 「今後の取組方針」において重要 8 分野を協調領域と位置づけ、「自動走行の実現に向けた取

組方針」においてソフトウェア人材の重要性が高まってきたことを踏まえ 9 分野に拡充し、「自

動走行の実現に向けた取組方針 Version2.0」において、安全性評価を 10 分野目に加えた。

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18

自動車メーカー、サプライヤー等のニーズ及び車両側の技術から検

討した工程表を作成し、既存の取組を継続、必要に応じて拡充するこ

とで自動走行の将来像の実現を加速させる。この重要 10 分野に関し

ては、取組の進捗状況について定期的に点検し、海外動向や技術の進

展、産業構造の転換等状況の変化に応じて柔軟に取組の見直しや新た

な対応を検討・実行していく。また、10 分野は完全に独立しているわ

けでなく分野の関係性の認識も重要となる。そのため、分野毎の進捗

含め、全体を俯瞰して取り組むことが重要となる。

Ⅰ.地図

自動走行に活用する高精度地図の整備に向けては、①ビジネスモデ

ル(整備範囲、仕様、費用負担(整備主体の決定含む)、更新頻度)の

明確化、②データ整備・更新に係るコスト低減のための技術開発、③

データフォーマットの国際標準化やグローバルに自動車を商品化す

るための海外展開が必要となる。なお、DMP 社は 2019 年 2 月 13 日

には INCJ 等からの増資を得て高精度三次元地図を整備・保有する米

国企業(Ushr 社)の買収手続に入ったことを発表している。

(協調のポイント)

ビジネスモデルの明確化

地図データ整備・更新に係るコスト低減

海外展開

<進捗状況と取組方針>

高速道路については 2016 年度に方向性(ビジネスモデル)が概ね

合意20され、一般道路については 2017 年度に特定地域(東京 2020 実

証地区)21での実証を通して整備範囲や仕様等を決定していく方向性

を提示したところ。

2020 年頃の高速道路における実用化及び特定地域(東京 2020 実証

地区)での実証に向け、DMP 社は 2018 年度中に高速道路全道路のデ

ータ整備を終了した。また、内閣府 SIP 第2期及び DMP 社等は 2019

20 高速道路については、自工会自動運転検討会がとりまとめた、「自動運転用 高精度地図に関す

る推奨仕様書(2016 年 11 月)」に基づき、ダイナミックマップ基盤株式会社(DMP 社)が地

図データを整備しており、2017 年度は日本の主要な高速道路 1.4 万 km を整備した。2018 年

度中に日本全国の高速道路 3.0 万 kmを整備、販売を開始した。 21 日本自動車工業会において検討している、東京 2020 オリンピック・パラリンピックにおける

自動運転実証地域を想定。羽田地区、臨海副都心地区を予定。

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19

年度中に一般道路における特定地域(東京 2020 実証地区)のデータ

整備を完了する。

また、一般道路における整備方針を早期に決定することが協調にお

いては重要であることから、特定地域(東京 2020 実証地区)での実

証を踏まえた整備方針を 2021 年までに決定することが求められる。

更には、引き続き、高速道路、一般道路それぞれについて自動図化更

新技術等の開発を推進し、コスト低減に取り組むことが重要である。

同時に、データフォーマットの国際標準化を推進するとともに、海外

展開22や海外における地図データとの整合性を図っていく。

また、高精度な地図の検討に併せて、サービス性、リアルタイム性

を持ったダイナミックマップの構築に向けては、①プローブデータ等

の自動走行に活用する動的情報等の取り扱いを決定、②費用負担の効

率化を図るため高精度地図データを含めた地図データの自動走行分

野以外への展開、③データを収集・配信するダイナミックマップセン

ター機能の在り方、主体の決定が必要となる。

(協調のポイント)

プローブデータの活用方法(自動走行分野)

データの他分野展開

ダイナミックマップセンター機能の在り方

<進捗状況と取組方針>

2017-18 年度の大規模実証23におけるダイナミックマップ等の実証

を通して、プローブデータの活用方法、仕様、更にはダイナミックマ

ップセンター機能の在り方の検討を 2016-18 年度で実施。プローブデ

ータに関しては、活用目的含め、現時点では未決定事項が多い一方、

個社で実施できる部分は限られるため、活用目的を明確化し協調する

ことが早期の整備には重要となる24。

内閣府 SIP 第2期及び DMP 社においては、道路変化情報や車両プ

ローブ情報等を活用した道路変化点抽出技術、高精度三次元地図との

22 北米地域において、DMP が同社仕様に基づくサンプル地図をデータ化し、国内外の OEM・

主要サプライヤーへ配布した(シリコンバレー地区幹線道路 40km)。欧州についても、DMP

が(独)HERE と議論を開始。 23 内閣府 SIP による大規模実証実験において、整備した基盤地図約 758km を活用して 2017 年

度に実験を実施。2018 年度は、基盤地図の更新やダイナミック情報の配信に係る実験を実施。

2020 年度の東京臨海部実証に於いても引き続き検討を推進。 24 地図の不良による事故時の対応についてもコストに大きく影響するため、ビジネスモデルの

中で合意を図ることが必要。

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紐付け処理及び更新箇所特定技術など、地図更新の必要箇所を効率的

に特定する技術を開発することで、高精度三次元地図のメンテナンス

サイクル短縮、そのコストの低減を図る事としている。また、内閣府

SIP 第2期においては、道路の車線レベルでの道路交通情報(動的情

報等)の収集と活用に関する技術使用を作成し、自動車・ナビメーカ

ー等の有する民間のプローブ情報を加工し、道路の車線レベルの道路

交通情報を提供する実証実験を実施する。いずれも 2020 年度末を目

標に実施予定。

Ⅱ.通信インフラ

通信インフラとの協調の確立に向けては、どのような場面において

情報が必要となるのか具体化を図る必要があることから、①高速道路

における合流や一般道路における右折時等の死角情報の必要性につ

いてユースケースを設定した上で、②実証場所、車両とインフラ設備

との路車間通信等の必要となるインフラ・仕様を決定し、③環境整備

に取り組む必要がある。

(協調のポイント)

ユースケースの設定

必要となるインフラの選定

<進捗状況と取組方針>

2020 年頃の高速道路における実用化及び特定地域(東京 2020 実証

地区)での実証に向け、実証場所・ルート案の策定、ユースケースの

整理、必要な情報の整理を日本自動車工業会において行い、関連団体

に提示したところ。関連団体と連携し、2018 年度中に実験仕様・設計

要件を設定した。

今後は、内閣府 SIP 第2期において遅くとも 2019 年中に特定地域

(東京 2020 実証地区)において必要となるインフラの整備を行って

いく必要がある。その際、様々な通信技術の活用を視野に入れながら、

インフラの機能や装備が過多にならないように、グローバル化の波に

遅れないようセルラー系の技術25も見据えて、仕様等を検討すること

が協調した取組において重要となる。

25 ハードウェアについても、周波数帯の変化に応じて対応できるような開発が必要。

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Ⅲ.認識技術、Ⅳ.判断技術

認識技術、判断技術の高度化に向けては、①海外動向に鑑みた最低

限満たすべき性能基準とその試験方法を順次確立し、②試験設備や評

価環境等を整備するとともに、③開発効率を向上させるために走行映

像データ等のセンシング情報、運転行動や交通事故等のデータベース

を整備していく必要がある。

(協調のポイント)

最低限満たすべき性能基準とその試験法の確立

試験設備や評価環境等の整備

活用目的に沿ったデータベース整備

<進捗状況と取組方針>

性能基準とその試験方法については、JARI(一般財団法人 日本自

動車研究所)が、2017 年 3 月に整備した⾃動運転評価拠点「Jtown」26を活用して、「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイ

ドライン」27に基づく安全確保措置を評価する、事前テストサービス28を 2018 年 2 月に開始したところ。また、データベースについては、

JARI において認識・判断データベース29の構築を検討してきており、

このうち、走行映像については他業界の多用途への適応に向け、サン

プルデータの公開30を行ったところ。

今後、性能基準とその試験方法に関しては、現在高速道路で検討が

進んでいる自動操舵に対する国連法規を一般道路用の基準に拡大す

る等の国際的動向等に鑑みつつ、自動運転評価拠点「Jtown」を活用

しながら、2020 年頃の一般道路における自動走行導入を見据えて、試

験方法の検討を順次推進し確立していく。認識・判断データベースや

交通事故データベースについては、後述する安全性評価に活用するシ

ナリオデータの策定等を目的として活用していくことに加えて、利用

26 産官学連携による自動運転技術の協調領域の課題解決と将来の評価法整備に取り組むため、

経済産業省の補助事業を活用して、既設の模擬市街路を刷新し、自動運転評価拠点として建

設したもの。 http://www.jari.or.jp/tabid/142/Default.aspx 27 警察庁が、自動走行システムを用いて公道実証実験を実施するにあたって、交通の安全と円

滑を図る観点から留意すべき事項等を示したもの。

https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/gaideline.pdf 28 http://www.jari.or.jp/Portals/0/resource/press/Press_2018_1_15.pdf 29 「認識・判断データベース」は、SIP-adus、経産省委託事業により構築してきたもので、走

行映像等のセンシングデータや運転行動データのデータベースを構築。 30 http://www.jari.or.jp/tabid/599/Default.aspx

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希望者の負担の下、データベースの活用を進めていく。なお、ドライ

ブレコーダーの記録に関しては、今後、事故原因特定のための証明等

に活用されることが考えられるが、書き換えや流出のリスクを抑える

仕組みづくりが必須となる。

内閣府 SIP 第2期及び経産省では、2020 年度末を目処に、運転自

動化レベル 3、4 の自動運転技術を装備した試験車両を開発し、東京

臨海部等の公道における走行実証実験を通じて、市街地の一般道での

レベル 3、4 相当の自動運転車の安全な走行に有用な交通インフラの

技術水準及び配置の在り方の検討に資するデータを得るとともに、当

該交通インフラの下での自動運転システムに関する認識及び判断の

技術的な要件を明らかにする予定。2020 年度末の成果を確認し、内閣

府 SIP 第2期の終了予定年度である 2022 年度末目途に必要な検討を

進める予定。

Ⅴ.人間工学

レベル 2 においては、システムが運転者の状態を把握し、運転への

関与を確保する技術を確立することが安全性確保に有用であるが、レ

ベル 3 においても、システムから運転者に運転操作の引継ぎ要請が生

じ得るため、システムが運転者の状態を把握し、運転への関与を確保

する技術を確立することが安全性確保に有用であるとともに、運転者

によるシステム理解を向上する必要がある。また、他の交通参加者と

の円滑な交通を実現するため、システムと他の交通参加者とのインタ

ラクションを確立していく必要がある。開発効率を向上させるため、

開発・評価基盤の共通化を協調領域として進めることが重要であり、

①運転者の生理・行動指標を同定し、運転者モニタリング要件や安全

な運転操作引継ぎのための必要条件等の検討、②運転者によるシステ

ムに関する知識及び状態の理解度向上方法の検討、③自動走行車両と

他の交通との意思疎通方法の検討を進める必要がある。更には、①~

③の検討結果を踏まえた、④国際標準化・基準化を推進する必要があ

る。

(協調のポイント)

運転者モニタリング要件

運転者によるシステム理解

自動走行車両と他の交通との意思疎通方法

国際標準化

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23

<進捗状況と取組方針>

2016 年度末までに、運転者の生理・行動指標の同定、運転者のモニ

タリングシステムの基本構想が完了し、2017-18 年度の大規模実証に

おいて検証を実施。また、運転者の Readiness 状態の指標化やシステ

ムから運転者への運転操作引継ぎに関わる HMI31など検討中のもの

も含め国際標準化32提案を推進しているところ。

2018 年度には、大規模実証実験の結果を踏まえつつ各種要件検討

を完了し、国際標準化を引き続き推進することで設計基盤を協調して

確立。

また、内閣府 SIP 第2期においては、2020 年度末を目処に自動運

転車とその周囲の交通参加者(歩行者、自転車・自動車等の運転者)

との間、自動運転車と運転者との間における人と自動運転車のコミュ

ニケーションに関して、国際的な動向も考慮しつつ、適切な提示、教

育(レベル 3 の教育を含む)等の方法を含む HMI についての在り方

を調査し、必要な技術の開発等に向けた検討を行う。

基準化については、HMI や運転者のモニタリングシステムに求め

られる機能を始めとする自動運転車の国際基準作りに向けた優先検

討項目リストが、2019 年 3 月の WP29 において合意された。今後、

具体的な要件の議論について、我が国が主導する。

Ⅵ.セーフティ(機能安全等)

安全確保のための機能安全等に係る開発効率を向上させるため、開

発・評価方法の共通化を目指す。開発・評価方法の検討に当たっては、

①ユースケース・シナリオを定めた上で、②車両システムの故障時、

センサー等の性能限界時、ミスユース時における安全設計要件の抽出

とその評価方法を確立する必要がある。また、これらの設計要件は③

国際調和を図っていく必要がある。 31 Human Machine Interface の略。システムと運転者とのインタラクションとなる内向き HMI

(運転者の状態把握、運転者への運転操作引継ぎ要請等を行う)、システムと他の交通参加者

とのインタラクションとなる外向き HMI(他の交通参加者の挙動把握、他の交通参加者へ自

動走行車の挙動提示を行う)に大別される。 32 内向き HMI(Road Vehicles: Human Performance and State in the Context of Automated

Driving: Part 1 – Terms and Definitions)について ISO/TR21959 Part1 と、外向き HMI

(自動走行車と他の交通参加者とのインタラクション)(Road Vehicles – Ergonomic aspects

of external visual communication from automated vehicles to other road users)について

ISO/TR23049 が 2018 年に発行。なお、外向き HMI の関連(自動走行車の外向き発信時に

おける他の交通参加者行動の評価方法)(Road Vehicles – Methods for evaluating other road

user behavior in the presence of automated vehicle external communication)について ISO

/TR23720 が 2020 年度に掛けて発行予定。

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24

(協調のポイント)

ユースケース・シナリオ策定

安全設計の要件とその評価方法

国際調和

<進捗状況と取組方針>

2017 年度中に、ユースケース・シナリオ33策定を実施し、センサー

目標性能の導出、設計要件の抽出を完了し、国際標準34へ提案してい

るところ。

今後は、後述する安全性評価とも大きく関係してくるが、車両シス

テム等の故障時、性能限界時、ミスユース時の評価方法を確立・検証

するために、バーチャル環境及びシミュレーターを構築し、実車での

検証も行いながら、評価手法を確立していく。2018 年度は、当該検証

の知見・事例を広く一般で利活用可能なハンドブックとしてまとめた

ところ、2019 年度以降活用を推進していく。なお、本研究で得られた

知見等を用いた自動運転の安全性評価(後述)体制については、車両

技術の知見や技術を評価するテストコースを有し、かつ、ユーザー視

点でも安心のおける中立機関として、JARI が主体として体制を構築

することが期待されている35。

Ⅶ.サイバーセキュリティ

安全確保のためのサイバーセキュリティに係る開発効率を向上さ

せるため、開発・評価方法の共通化を目指す。開発・評価方法の検討

に当たっては、①最低限満たすべき水準を設定し、②要件や開発プロ

セス、評価方法を確立する必要がある。これらの設計要件等は③国際

調和を図っていく必要がある。また、④部品レベルで性能評価を行う

評価環境(テストベッド)を構築し協調した対策を向上させる。更に

は、⑤市場化後の運用面において発生したインシデント情報、脆弱性

情報の共有・分析体制を構築し、業界協調により対策を向上させるこ 33 ユースケース・シナリオの定義については後述する安全性評価の項目を参照。ユースケース・

シナリオは網羅性を確保することが困難なため、この時点においては代表ケースを抽出したも

ので、順次修正・追記していく必要がある。 34 機能安全について ISO26262(第 2 版)、性能限界及びユーザーの誤操作・誤使用について

SOTIF(ISO/PAS21448)が 2018 年に発行。 35 体制の構築に向けては、国際標準も視野に入れ、自動車業界や国内外の大学等の知見等を得つ

つ、連携拠点として設備面や人材面の強化を進める必要があるとともに、セーフティ、セキュ

リティ、ソフトウェア等に係る人材育成の場としても機能することが求められる。

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とが重要である。

(協調のポイント)

最低限満たすべきセキュリティ水準

安全設計の要件とその評価方法

国際調和

テストベッドの実用化(評価認証体制の構築)

運用面における情報共有・分析体制の構築

<進捗状況と取組方針>

2016 年度末までに、最低限満たすべき水準を設定し、国際標準36へ

提案するとともに、国際標準に先行して我が国における業界ガイドラ

イン37の策定を進めているところ。また、国際基準については、WP2938

傘下のサイバーセキュリティタスクフォース39において、業界も積極

的に参加し、自動車安全基準とリンクした議論が進められているとこ

ろ。

今後は引き続き、国際基準・国際標準の議論に積極的に関わるとと

もに、2018 年度に構築したテストベッドの活用方法を 2019 年度に検

討し実用化していく。また、日本自動車工業会に確立した情報共有体

制40について情報共有・分析機能を強化する観点で必要となる体制拡

大を進めることが重要であり、検討が進められている。更には、自動

車に特化されたものではないが、米国において Cybersecurity

Framework 41 が 策 定 さ れ 、 欧 州 に お い て も Cybersecurity

Certification Framework42を検討していく方針であり、これを受け、

36 ISO21434 が 2020 年に発行予定。サイバーセキュリティについては、米国 SAE との JWG

(Joint Working Group)により進行中。 37 JASPAR において、OEM サプライヤーが実施する評価ガイドラインを策定予定。 38 国連欧州経済委員会(UN-ECE)の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)。 39 WP29 において策定されたガイドライン「Cybersecurity And Data Protection」(2016 年 11

月の ITS/ADで合意、2017 年 3 月の WP29 で成立)の技術的要件を定めるために、2016 年

12 月に設置されたタスクフォース。 40 日本自動車工業会において J-Auto-ISAC WG を設置し、2017 年 4 月より活動を開始。 41 2014 年 2 月に Version1.0 が公表され、サイバーセキュリティ対策の全体像を示し、「特定」、

「防御」、「検知」、「対応」、「復旧」に分類して対策を提示した。2018 年 4 月に、Version1.1 が

策定された。この改訂では、“サプライチェーンリスク管理”“サイバーセキュリティの自己評

価”の重要性が強調されている。 42 ICT 機器とサービスについて、サイバーセキュリティ認証フレームワーク(Cybersecurity

Certification Framework)を構築し、欧州内におけるサイバーセキュリティ認証制度を確立

することで、欧州におけるデジタル単一市場の信頼性、セキュリティを確保する。なお、これ

は、法の定めがない限り自主的なもの(Voluntary)であり、直ちに事業者に規制を課すような

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我が国においても業界横断型のフレームワークが提案され、業界ごと

にフレームワークを検討している。自動車についても Connected、自

動走行技術が進展する中、サイバーセキュリティリスクは増大するた

め、自動車業界が活用できるリーズナブルなフレームワークを検討し

ていくことが重要である。

なお、評価方法や評価環境の整備等は、IT 業界等の専門家を加え、

他業界での知見、ノウハウを獲得した上で、自動走行に必要なサイバ

ーセキュリティを担保していくことが重要となる。

Ⅷ.ソフトウェア人材

開発の核となる自動車工学とサイバーセキュリティを含むソフト

ウェアエンジニアリングの両方を担える人材は、我が国において圧倒

的に不足しているため、その発掘・確保・育成に向けた早急な取組が

必要となる。そのため、①自動車業界に必要なソフトウェア・セキュ

リティ人材像の明確化、②人材の確保・育成を進めるための学におけ

る連携に向けた仕組みづくり、③講座やイベントを通じた、若手を対

象とした人材育成必要となる。

(協調のポイント)

必要な人材像の明確化

産学官連携に向けた仕組みづくりの検討

若手人材の育成

<進捗状況と取組方針>

ソフトウェア人材について、2017 年度は、自動車向けソフトウェア

のスキル分類と整理(制御系・知能系・情報系・基盤系)並びに国内

及び海外におけるソフトウェアの人材育成・引き付け・生産性向上に

関するベストプラクティスの調査を実施したところ。2018 年度は自

動走行ソフトウェアに関する技術体系を整理し、特に必要性が高い 3

分野(認知系、システムズエンジニアリング、新しい安全性評価)に

ついて求められるスキルを体系整理した標準(スキル標準)および活

用事例集を作成した。来年度はこれらのスキル標準に準拠した民間・

大学講座の開発及び受講者のインセンティブ向上策を検討するとと

もに技術の成熟に応じた分野別のスキル標準など今後の運用体制に

ついて検討を行う。2019 年 3 月には国内で AI エッジコンテスト(映

ものではない。

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像データベースを活用した認識アルゴリズム精度を競う)の上位者に

より、試験路における自動走行時のアルゴリズム精度を競う大会(自

動運転 AI チャレンジ;Japan Automotive AI Challenge)を開催。来

年度以降も継続して実施。なお、自動走行ビジネス検討会の下に人材

戦略 WG を立ち上げ、各種施策の議論については同 WG にて実施(詳

細は 5.の記載参照のこと)。

セキュリティ人材について、2018 年度は、IPA が主体となり産業サ

イバーセキュリティ講座を、自動車技術会が主体となり自動車サイバ

ーセキュリティ講座を実施したところ。2019 年度も引き続き、取組を

継続する。今後は、海外人材の発掘・中途採用を含めた積極的な取組

が必要であり、その際には、人材を確保するために雇用体系の検討は

もちろんのこと、業界が協調して、製造現場におけるサイバーセキュ

リティ人材の必要性や職の魅力を発信することが不可欠である。

Ⅸ.社会受容性

自動走行システムへの社会受容性の向上に向けては、①自動走行に

よる効用とリスクを示した上で、②社会・消費者の意識・関心を高め

つつ、技術開発と制度整備を進める必要があり、ユーザーのニーズに

即したシステム開発を進めることが重要である。

(協調のポイント)

自動走行の効用とリスクの発信

責任論を含め、必要に応じた制度整備

<進捗状況と取組方針>

責任論を含めた制度整備については、各省庁における議論が進捗し

ており、2018 年 6 月に政府全体としての制度整備の方針を示す「自

動運転に係る制度整備大綱」43が策定された。自動走行レベルについ

ても「官民 ITS 構想・ロードマップ 2018」でとりまとめたレベルが

世間的に共通認識されつつある44。国民理解促進のための情報発信に

43 「自動運転に係る制度整備大綱」

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20180413/auto_drive.pdf 44 一般消費者目線では、自動走行レベルが分かりにくいとの指摘もあるため、分かりやすい周知

による国民の理解度向上を図っていく必要がある。

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ついては、シンポジウム45や市民参加型受容性イベント46などを通し

て、政府として発信を継続しているところ。

なお、「自動運転に係る制度整備大綱」に基づく取組・検討の結果、

2019 年 5 月 17 日に道路運送車両法(国土交通省)、5 月 28 日に道路

交通法(警察庁)の改正法が国会審議を経て成立し、47今後、施行に

向けて政省令の整備が行われていくこととなる。本法が施行されれば、

一定の条件下でのレベル 3 のシステム使用が認められることになり、

これまで官民が取り組んできた様々な実証実験の成果を社会実装し

ていく大きな一歩となる。今後も、「自動運転に係る制度整備大綱」に

基づき、関係省庁における制度整備を加速することが重要である。

また、自動走行の実用化に当たっては、ユーザーの誤認識や過信を

防ぐ必要があることから、国民の自動走行システムへの理解が必須と

なる。そのため、国民の理解度向上を促進するために、社会への情報

発信の強化がより重要となる。

さらに、2018 年度には、自動走行による事故低減効果、省エネルギ

ー効果や CO2 排出削減効果等を定量化し、自動走行の効用を明確化

したが、今後、これらの点についても社会への発信強化につなげてい

くことが重要である。

加えて、後述する実証プロジェクト、関係省庁における実証プロジ

ェクトや民間による実証プロジェクトが 2017 年度から頻繁に開始さ

れていることを踏まえ、その内容を積極的に発信することで社会によ

り身近になりつつあることを国民に認識してもらい、社会受容性を向

上させていくことが重要である。

Ⅹ.安全性評価

2020 年以降に実用化が見込まれている高度な自動走行の実現に向

けて、自動走行に関する様々な分野に関し、国際基準の議論が WP29

45 経済産業省・国土交通省委託事業「自動走行の民事上の責任及び社会受容性に関する研究」に

おいて、2017 年 3 月 7 日、2018 年 3 月 5 日、2019 年 3 月 6 日に開催。自動車業界、移動・

物流サービス事業者、法律家、保険団体、一般消費者等が参加。 46 SIP-adus においても、市民を交えた議論を数回実施している。また、内閣府 SIP においては、

ワークショップを毎年開催している。 47レベル3の実用化に対応する道路運送車両法・道路交通法の改正法案が国会審議を経て可決

(道路運送車両法についてはレベル4も包含)。

○道路運送車両法の一部を改正する法律案(参議院審議終了年月日:令和元年 5 月 17 日、公布

年月日:令和元年 5 月 24 日)

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DCBEFA.htm

○道路交通法の一部を改正する法律案(衆議院審議終了年月日:令和元年 5 月 28 日、公布年月

日:令和元年 6 月 5 日)

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DCBDDA.htm

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において、また国際標準の議論が ISO において行われている中、これ

ら基準・標準を見据えた安全性の評価方法等について早急に議論が必

要である。そのため、自動走行ビジネス検討会の下に、安全性評価環

境づくり検討 WG を設置し、関係者において議論を行っている(詳細

は 4.を参照のこと)。

自動走行システムに係る安全性評価については、これまでのドライ

バーによる認知・予測・判断・操作をシステムが行うこととなるため、

実車による評価に限界がある。そのため、バーチャルによるシミュレ

ーションにより評価を行う必要があり、評価に必要となる①安全性評

価用シナリオ48、①の作成に必要な②データ収集及び③ユースケース49の研究が必要となる。

(協調のポイント)

シナリオ

データ収集の仕組み

ユースケース

<進捗状況と取組方針>

日本自動車工業会(JAMA)や JARI(「Ⅵ.セーフティ」参照)が

業界協調として、2016 年度からユースケースの整理を行っており、こ

れらを活用するとともに、認識・判断データベースや交通事故データ

ベース(「Ⅲ.認識技術、Ⅳ.判断技術」参照)のデータを活用しつつ、

高速道路は 2018 年度に JAMA が作成したユースケースから暫定的

なシナリオを作成、複数個のシナリオを選定し、適切に安全性評価に

活用できるのかテストケースを作成した(なお、「暫定的なシナリオ」

は「前方に他車両が割り込んだケース」のみに対して作成したシナリ

オであり、シナリオ作成の一連の手順を実施・確認するために作成し

たもの。他ユースケースから考えられるシナリオ作成については、

2019 年度以降の課題である)。一般道路は 2018 年度に JAMA が整理

48 シナリオとは、一連の行動(動作)の初めから終わりまでを指す。また、シーンとは、一連の

行動(動作)における一部分のくり抜いたものを指す。なお、ドイツ PEGASUS プロジェクト

においては、Functional Scenario、Logical Scenario、Concrete Scenario の 3 種類を定義し

ている。

Functional Scenario:車両が走行する際の交通環境の構成要素を指す

Logical Scenario:構成要素のパラメーターの範囲を定義したものを指す

Concrete Scenario:構成要素を特定しパラメーターを一つに決めた、いわゆるテストに使用す

るものを指す

Scene についても同様に存在する。 49 ユースケースとは、ドイツ PEGASUS プロジェクトの Logical Scene に対応するもの。

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したユースケースから 2019 年度より暫定的なシナリオ作成の検討を

開始する。また、日本独特の道路事情を踏まえたシナリオ作成を進め、

国際連携を進めながら 2019 年度にはシナリオの体系化を目指す。

安全性評価については、国際調和50を図る必要があり、海外の検討

グループとの意見交換を進めるため、我が国の典型的な交通事情が分

かるユースケースを抽出し、意見交換に活用。

今後は、シナリオ策定及び国際調和を進めるとともに、バーチャル

シミュレーションを行うために必要なツール51の構築や、運用面にお

いて発生する事故・インシデント52に関するシナリオのデータ共有の

在り方について検討を進める。また、高度な自動運転システムを有す

る車両が満たすべき安全性についての要件や安全確保のための方策

の整理53を進める。

50 「7.ルール(基準・標準)への戦略的取組」で後述するように、自動車の国際的な安全基準

は、国連欧州経済委員会(UN-ECE)の政府間会合(WP29)において議論されており、我が

国も積極的に参加して国際調和活動を行っていることから、安全基準を見据えては、シナリオ

についても国際調和を図っておく必要がある。 51 ツールについては、①データベースからシナリオを抽出するもの、②①で抽出したシナリオ

DB を各社の評価環境(シミュレーター)へ変換するものが想定される。なお、内閣府 SIP 第

2期において「センサー性能評価を中心としたシミュレーションツールの開発及びインターフ

ェースの標準化」等に取り組む事としている。前述の各社シミュレーターとインターフェース

等を共通化することにより自動運転車及びシステムの安全性評価技術の業界全体としてのレ

ベルアップと効率化を両立し、産業競争力の向上を図る。 52 本報告書においては、事故(アクシデント)には至らないヒヤリハットの状況を指すものとす

る。 53 平成 30 年 1 月に国土交通省の車両安全対策検討会の下に設置した「自動運転車車両安全対策

ワーキング・グループ」において、レベル 3 以上の高度な自動運転システムを有する車両が満

たすべき安全性についての要件や安全確保のための方策について、平成 30 年 9 月にガイドラ

インとして取りまとめた。

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4. 安全性評価環境づくり検討 WG

(1)背景

自動走行に関する様々な分野に関し、国際標準の議論が ISO におい

て、また国際基準の議論が WP29 において行われている中、基準・標

準を見据えた安全性の評価方法等について議論するため、2017年度に

自動走行ビジネス検討会の下に、本 WG を設置した

(2)本年度の成果

安全性評価について

自動走行車の安全性評価に向けては、各国で同時多発的にプロジェ

クトが立ち上がっている状況にある。ドイツでは政府の標準化戦略の

方針に基づき、Pegasus Method を推し進める方針にある。フランス

はドイツの Pegasus に対して警戒感を持つと共に、日本との協力体制

へは好意的な反応を示している。また、米国では SAE の Small Group

にて検討を開始しているものの、DOT や NHTSA は実行力のある規

制を設けることに慎重であり、OEM としてまとまった動きも見受け

られない。

このような国際的な動向もふまえ、日本においては JAMA、Jaspar、

JARI にて活動を立ち上げることで基礎検討体制を築き、JAMA が横

串の連携を行うことで、国際的なトレンドであるシナリオベースの評

価手法の検証・確立にむけた研究開発を実施している。ドイツの

Pegasus とは連携を進める中で「Pegasus WorkShop」を今年度日本

で開催し、安全性評価における日本のプレゼンスを高めるなど、国際

協調を進めている。また、海外で安全性評価の検討を進めているグル

ープと安全性評価手法を記載したホワイトペーパー(WP)を作成す

ることで合意した。さらに WP をもとに ISO 提案のためのドラフト

を作成し、議論をしていく予定。引き続き、海外の検討グループとの

国際連携を強化していく。

シナリオの作成について

高速道路は、レベル 3 以上の安全性評価の在り方を検討するために

JAMA が作成したユースケースから 2018 年度に暫定的なシナリオを

作成。その際、暫定シナリオから複数個のシナリオを選定し、適切に

安全性評価に活用できるのかテストケースを作成(なお、「暫定的なシ

ナリオ」は「前方に他車両が割り込んだケース」等限られたユースケ

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ースに対して作成したシナリオであり、シナリオ作成の一連の手順を

実施・確認するために作成したもの。他ユースケースから考えられる

シナリオ作成については、2019 年度以降の課題である)。2019 年度か

ら本格的なシナリオの作成・収集・共有を開始すると共に、日本の

OEM 自身がどのようにシナリオの作成・収集・共有を図るか、運営

の在り方も含めた検討を開始する。

一般道路は、レベル3以上の安全性評価の在り方を検討するために、

2018 年度に JAMA が整理したユースケースをもとに、2019 年度か

ら暫定的なシナリオ作成の検討を開始する。

また、日本独特の道路事情を踏まえたシナリオ作成を進め、国際連

携を進めながら 2019 年度にはシナリオの体系化を目指す。

国際基準

自動運転車の認証手法に係る国際基準については、専門家会合

(VMAD)で検討が行われており、国交省の安全ガイドラインをもと

にした評価手法・プロセスを VMAD にて提案し、各国から大筋前向

きに受け入れられた。引き続き、官民一体となって日本提案の検討等

を進めていく。

セキュリティ

自動車のセキュリティに関する国際動向として、ITS 世界会議にお

いて、第三者認証の一つである Common Criteria54の負担を軽くする

と共に、評価項目を自動車に特化して項目数を減らし、評価を短縮す

る方式の提案がフランスよりなされた。また、Escar Europe 会議55の

EPOCHE&ESPRI56の講演において、車両部品の評価に Common

Criteria を、車両の暗号機能評価に FIPS140-257を使用することや、

制御システムセキュリティ規格 IEC62443 を評価基準に適用するこ

とも検討する予定があるとの発表があった。

国内においては、セキュリティ評価のためのテストベッド(車両模

擬システム)のベース開発は終了し、テストベッドの活用に向けプロ

54 「Common Criteria」とは、情報技術セキュリティの観点から、情報技術に関連した製品及

びシステムが適切に設計され、その設計が正しく実装されていることを評価するための国際標準

規格(ISO/IEC 15408)。 55 Escar は 2003 年に創設された大手メーカー、アフターマーケット企業、報道関係者、アナリ

ストが参加して議題に関する協調を行う場。 56 IT セキュリティの評価。試験サービス会社。 57 米国連邦情報処理規格(FIPS)140-2 は、暗号化製品及び仕様に関する第三者検証のために

広範に使用される基準。暗号化ハードウェアの有効性を検証するものとして広く認識されてい

る。法律、金融、ユーティリティ(電気、ガス、水道)などの規制が厳しい産業では特に広く使

用されている。

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モーション活動を行っている。具体的には機能安全カンファレンスや

Automotive World 等のセミナー等でのデモ展示を行うことで、研究

や教育に使いたいというユーザー候補を徐々に増やしている。このテ

ストベッドを活用することで、自らテスト環境を持たないサプライヤ

ー、研究室、ベンチャー等の技術レベルアップや人材育成への効果が

期待される(「Ⅶ.サイバーセキュリティ」「Ⅷ.ソフトウェア人材」

参照)。

事故データベース

事故データベースは本年度までの 3 か年で構築し、事故事例を詳細

に分析したミクロデータ収集方法の確立・データ管理システム仕様の

作成・事故再現技術の確立を行った。具体的な成果として、ミクロデ

ータ活用の事業化判断に必要な情報を検討し ITARDA へ提供した。

また、東京圏で 40 件の特定ミクロ調査を実施し、ミクロデータを収

集した。さらに、OEM が導入している主要市販シミュレーションソ

フトに対して、事故現場の 3D 点群データ等を活用した事故再現事例

とマニュアルを作成し事業終了後に公開を予定している。

本年度以降は、ITARDA にて事業化を検討していく。

工程表

これらをふまえ、認識・判断技術、セーフティ、セキュリティ、安

全性評価等の各分野の工程表を更新した。

参考:PEGASUS を中心とした独の自動走行関連の取組

ドイツの PEGASUS プロジェクトは、自動走行の考え方及び評価

フレームワークの定義を一義的な目的として、2016 年 1 月から 2019

年 9 月までの期間で実施されるプロジェクト。自動走行車の市場投入

に向けた安全性評価の拠り所を必要とするドイツ OEM3 社(Daimler、

BMW、VW)及び認証機関 TUV の 4 者が中核となって立ち上げた。

あらゆる自動走行レベルや道路環境を対象としたジェネラルな枠組

み作りがスコープであるが、当面は高速道路の SAE レベル 3 に主眼

を置いている。2017 年 11 月の中間報告では評価フレームワークが示

された。 Requirements Definition & Convert for Database: 自動走行車は何がど

の程度できるべきか、その要件定義が行われデータ化。

Data Processing: 実際の走行データや事故データをもとに、この世に存

在し得る走行環境/走行状況をデータ化。

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Scenario Compilation / Database: 自動走行車に求められる機能と、実

際の走行環境/走行状況をインテグレートし、シナリオを作成。

Assessment of Highly Automated Driving Function: テストシナリオを

もとに、シミュレーションや実走行によるテストにて安全性を評価。評

価された安全性に係るリスク許容性も検討された上で、最終的に安全で

あるか否かを判断。

PEGASUS プロジェクト自体が認証制度や車両規格をアウトプッ

トするものではなく、それらを検討するためのインプットを提供する

役割を担っており、適宜 BASt やドイツ自動車局といった規格作りを

行う機関と連携。ドイツではアウトバーンにおける自動走行レベル 3

を対象とした認証の導入について、2019 年までをターゲットとした

検討を行っており、この検討に大きく貢献しているのも PEGASUSプ

ロジェクトである。

PEGASUS プロジェクトに始まる安全性評価については、今後、独

では一般道を対象としたプロジェクトについても立ち上げることが

発表された。

参考:走行映像データ・事故データ等の利活用の基本方針

(Ⅲ.認識技術、判断技術、Ⅹ.安全性評価参照)

自動走行の鍵を握る技術である認識・判断技術の競争力を抜本的に

強化するため、研究開発を加速するとともに、安全性評価と関連付け

た質の高いデータ整備・利活用を進める観点から、開発を加速する走

行映像データ・事故データ等の利活用の現状と基本的な方針は以下の

とおり。

1. 走行映像データ

(1) 走行映像データとは

国からの委託を受け、JARI がカメラによる認識システムの開

発や性能評価に必要な歩行者の映像データを共有・実用化する

ための DB 構築技術を確立することを目的に、2014 年度~2016

年度に収集した約 1500 時間、4.2PB、14 万シーンの歩行者映像

データベース及び特定の目的のために車両の走行時に収集する

映像データベース。

(2) 利活用の基本方針

AI 開発等新たな技術研究の裾野を拡大すべく、企業だけでな

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く大学や研究機関等が走行映像データを機械学習やディープラ

ーニング等に用いることも想定し、2018 年 1 月からサンプルデ

ータ(9 シーン)を無料公開するとともに、説明会を開催した。

加えて、3 月から機密保持契約等の一定要件を満たすことを条件

に、産官学の有識者委員会において選定された 288 シーンのサ

ンプルデータを JARI が自主事業として有償(実費のみ負担)で

提供を開始している。

その後、288 シーンのサンプルデータ購入者等を始めとする

走行映像データベースの活用を希望する者と JARI が個別に協

議し、原則として活用希望者の費用負担の下、AI 開発等への応

用を個別に進めている。

2. 事故データ

(1) 事故データとは

交通事故時に事故関係者の協力が得られる場合に、事故関係

者へのヒアリング、事故現場の 3D データ、事故時の映像等に基

づき、事故シーンをシミュレーション上で再現するためのデー

タ。2016 年度~2018 年度の 3 ヵ年事業として国がデンソー及

び交通事故分析センター(ITARDA)を始めとする研究開発グル

ープに委託し、データ収集の方法及び事故データベースの構築

技術を開発。

(2) 利活用の基本方針

ⅰ) 各自動車メーカー等における活用

各自動車メーカーが事故データベースを活用して、自動走行

車の設計・開発・検証を行えるよう、早ければ 2019 年度内にデ

ータベースの提供を商業化することを目指し、2018 年度に事故

データ収集及びデータベース構築技術の開発を行った。

ⅱ) 安全性評価技術の開発・検討における活用

自動走行車の市場導入にあたり必要となる安全性評価技術の

開発・検討が急務となっている。安全性評価にあたっては、これ

までの実車走行による評価だけでなく、シミュレーション上で

の走行評価を行うべきとの考え方が国際的に提示されている。

安全性評価技術の開発・検討におけるシナリオ作成にあたって

も、事故データを踏まえる必要があり、2019 年 10 月を目標に

ITARDA の独自事業として、事故データベースの試行的な提供

を始める。

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5. 人材戦略 WG

(1)背景

人材戦略 WGの設置

自動車業界の IT 人材(自動車ソフトウェア開発に関わる人材)に

ついては、開発の核となる自動車工学とサイバーセキュリティを含む

ソフトウェアエンジニアリングの両方を担える人材は、我が国におい

て圧倒的に不足している。こうした状況を踏まえ、自動走行ビジネス

検討会において、企業が単独で開発・実施するにはリソース的、技術

的に厳しい分野を考慮し、「ソフトウェア人材」を協調領域として特定

した。

2017 年度は自動車向けソフトウェアのスキルを分類(制御系、知能

系、情報系、基盤系)し、人材不足感について推定し、自動走行ビジ

ネス検討会「自動走行の実現に向けた取組方針」Version2.0 において、

他業界から自動車業界への人材の引き付けや人材育成講座の活用も

視野に入れた自動車ソフトウェアに関するスキル標準を策定してい

くものとし、自動走行ビジネス検討会の下に人材戦略 WG を立ち上

げ、各種施策の議論を加速させていくこととした。

人材戦略 WG では、スキル標準策定、自動運転 AI チャレンジ等の

産官学の取組の進捗状況に加え、国内外の自動車業界や国内の他業界

での IT 人材の育成・確保に関する取組を共有するとともに、産学官

連携の在り方や IT 人材にとって魅力ある人材育成・評価の仕組みづ

くりの在り方等を議論した。

現状認識

自動化やコネクテッド化等の自動車業界の潮流に伴い、制御系に加

え、知能系(認識、判断、パス計画等)、情報系(地図情報、マルチメ

ディア等)、基盤系(OS、セキュリティ、数学等)の IT 人材について、

具体的な規模感推定には不確実性が大きいものの、自動車メーカーに

おいては、知能系、情報系を中心に外部委託先も含めて 1,000 人程度

のオーダーで人材が不足する(2020 年~2023 年頃を想定)と見る企

業も存在する(2017 年度 自動走行に関するソフトウェア人材の実

態調査及び求める人材像の調査)。

特に、AI 人材不足は自動走行の競争力を左右しうる喫緊の課題で

あることに加え、コネクテッド化が進み、自動走行の安全を担保する

上でも重要な課題となったセキュリティ分野は高度な専門性を要し、

人材不足感が強いと考えられる。加えて、自動車開発プロセスの上流

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でシステムの全体理解に基づく要求分析のできるアーキテクト、機能

安全(ISO26262 への対応)、自動走行時代を見据えた新しい安全性評

価など業界の地力を高める上で基盤となる分野でも引き続き、人材を

確保していくことが重要である。

自動車業界の IT 人材育成・確保施策の展開にあたって、ニーズの

高い技術領域の重点化を進め、日本の自動車業界の IT 人材育成・確

保のエコシステムの目指すべき姿とそれに向けた産官学の取組の方

向性を示していくことが必要。このため、まずは、本 WG で紹介のあ

った取組内容(以降参照)を中心に、海外、日本の自動車業界、他業

界における IT 人材の育成・確保に関する産学官の取組について整理

した。

(2)海外及び他業界における取組

海外事例

海外では、学生等による自動走行車両による走行競技の開催を通じ

た人材育成への期待から、自動走行車を使用した製作・コースでの実

走競技や自動車のハッキングイベントを通じたセキュリティ人材の

発掘・育成の取組が行われている。

産学連携については、米国では自動車会社と協力し、自動運転オン

ライン教育コースを提供し、学生を育成しつつ、自動車業界に引き込

む事例がある。独は大学の講義と企業の実践教育を組み合わせたデュ

アル教育等により、人材エコシステムを形成している。また、中国精

華大学では、国家戦略に沿って、海外チームとの連携などにより、戦

略的教育・研究を実施している。

国内自動車業界の動き

今後の自動車業界を牽引する技術者の発掘育成のため、2019 年 3

月には国内でも AI エッジコンテスト(映像データベースを活用した

ん認識アルゴリズム精度を競う)の上位者により、試験路における自

動走行時のアルゴリズム精度を競う大会(自動運転 AI チャレンジ;

Japan Automotive AI Challenge)を開催した。

また、産学連携による自動車ソフトウェアエンジニア育成の取組は

国内でも加速し、エコシステムの萌芽になりつつある。さらに、自動

運転システムを明確に目的に据え、オープンなプラットフォームを活

用した実践的な活動の事例もみられる。

個社レベルでも大学と自動車 OEM の連携やトップレベルのソフ

トウェア企業を目指し、環境を整え、トップ人材採用へ動く企業が出

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てきている。

国内他業界の動き

日本の IT 業界、自動車以外のメーカーなどを見渡すと、IT・テク

ノロジー企業は、「一緒に働きたいと思うカリスマ人材の採用」「高額

インターンの実施」等により、「トップ人材」を引き付けるとともに、

幅広い教養や論文執筆などスキル向上と世の中への発信を求める傾

向がある。大手メーカーは、特に日本での新卒一括採用の流れもあり、

「大学への早期のアプローチ」や「社員のスキル転換への教育」が多

く見られる他、特別な人事・給与制度の設定や買収を通じた人材確保

の動きも見られる。

(3)今後の取組の方向性

背景にある自動車業界の IT 人材の状況や国外・他業界の状況を踏

まえ、2018 年度に引き続き、トップ人材(AI 等)の引き込み・育成

やマス分野での自動車業界×IT の人材エコシステム構築を目指し、自

動車ソフトウェア分野の人材プールを強固にしていく。特に、人材不

足が深刻なサイバーセキュリティは業界協調の取組を後押しする他、

自動車×IT の人材エコシステムのグローバル化を意識して取組を推

進していく。

トップ人材(AI 等)の引き込み・育成

自動運転の競争力を左右しかねないトップ AI 人材については、喫

緊の課題である一方で、自動車業界・国内で一朝一夕に育成すること

は困難であることから、2018 年度に実施した自動運転 AI チャレンジ

のように情報系の学生や自動車業界外のトップ人材を引き付けるイ

ベントを、引き続き、産学の連携をいっそう強化しつつ、業界大で実

施し、国際的な取組につなげていくなど、他業界・海外からの AI 人

材の引き込みを狙っていく。

さらに、政府の各種戦略で AI 人材育成が位置付けられ、様々な施

策が行われていることを自動車業界としても好機ととらえ、2018 年

度は、未踏アドバンスト事業のプロジェクトマネージャを自動車業界

から推薦する等の連携を進めたところ。中長期的に国内の AI 人材を

自動車業界に引き込むことを狙って、トップ AI 人材の育成に係る各

種施策との連携の在り方について検討していく

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マス人材の自動車×IT の人材エコシステムの構築

自動化やコネクテッド化等の自動車業界の潮流に伴い、顕在化する

IT 人材の不足感に対し、2018 年度は、自動走行に焦点を当て自動車

ソフトウェア人材に求められる新しいスキルを体系的に整理・見える

化し、産学官が共通のラベルでスキル領域について認識して人材の育

成・確保の取組を進めるインフラとして、自動走行ソフト開発スキル

標準(以下、「スキル標準」)を策定した。スキル標準の最上位のスキ

ル階層においては、自動走行ソフトウェアのスキル全体を網羅しつつ、

JASPAR 版 ETSS(JASPAR 版組込みスキル標準、2010 年)からの

差分を対象として、技術動向調査、有識者意見を参考に主要なスキル

項目を特定し、スキル標準最上位の第1階層に対して、技術の成熟度、

緊急性、必要性に基づき3領域(認知系技術、システムズエンジニア

リング、新しい安全性評価)を特定して具体化した。

策定にあたっては、自動車業界(OEM、サプライヤー)、組込ソフ

トウェアベンダー、自動車業界内外の関連団体、大学等の有識者から

成る「自動走行ソフト開発スキル標準策定作業部会(以下、「スキル標

準策定部会」と呼ぶ)」を本 WG の下に設置し、内容について議論、

承認を得た。また、有識者ヒアリングに基づき網羅性の検証、スキル

の粒度設定などの妥当性を検証している。さらに、スキル標準策定部

会においては、学生や他業界からの自動車業界への人材の引き付けや

人材育成講座・スキル診断/定量化サービスへの活用、社内での人材育

成・活用、外部との協業などのユースケースを議論し、スキル標準の

活用法としてまとめた(「2018 年度 自動走行に関するソフトウェア

スキル標準策定に係る調査」)。

今後は、スキル標準の運用体制について検討を進めるとともに、関

連分野の研修講座を提供する組織と連携し、スキル標準に準拠した民

間・大学講座の開発を進め、学生・他業種から引き込みや自動車業界

内での新領域へのリソースシフトを促してく。講座開発にあたっては、

特定の職種(キャリア)に対して求められるスキル項目の集合とそれ

らのレベルを定義したキャリア基準(求められる人材像に相当)を明

確にするとともに、第4次産業革命スキル習得講座認定制度や各種資

格試験制度との連携、社内評価への反映等の受講者のインセンティブ

向上策も同時並行で検討して行くことが必要である。特に、サプライ

ヤー領域においては、サプライヤー応援隊における地域支援団体等と

も連携しながら IT 人材の育成、確保を進める。これらの取組により、

引き続き、国内での自動車 IT の人材エコシステム構築を目指してい

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く。

セキュリティ人材については、2017 年度から、IPA が主体となり産

業サイバーセキュリティ講座を、自動車技術会が主体となり自動車サ

イバーセキュリティ講座を実施するなど業界協調の取組が進んでい

る。今後は、2018 年度末に整備したテストベッド(部品レベルで性能

評価を行う評価環境)のサイバーセキュリティ人材育成に向けた活用

や内閣府 SIP が策定した車両に対する車外からの攻撃に関する評価

ガイドラインを活用し、将来的には外部の優秀なハッカーと手を組ん

だ「White Hat Hacking」等の取組を検討するとともに、他分野につ

いても業界による取組を後押ししていく。

加えて、自動車ソフトウェア領域への学生や IT 人材の引き込みに

向け、業界大で IT 人材にとっての自動車業界の魅力を発信していく

ことも重要である。この他、人材戦略 WG では主な議題とはしていな

いものの、デジタルエンジニアリングの導入拡大や日本の開発プロセ

スになじむ国際標準化戦略により、ソフトウェア開発工数そのものを

削減することや、ソフトウェア分野での付加価値が高まる中、中長期

的には、工数に応じた価格付けを行う商品取引慣行の見直しによる人

材の給与水準の底上げが人材不足の解消に資する可能性があり、今後

関係省庁や関係団体で議論を進めていくことが必要である。

自動走行×IT の人材エコシステムのグローバル化

今後国内の労働力市場もひっ迫し、ソフトウェア・IT の分野も例外

ではないことから、自動車業界においても、国内にとどまらず、海外

での IT 人材の育成・確保を視野に入れることが必要である。

とりわけ、AI 人材が量・質ともに豊富な米中印等からの引き込みを

意識し、自動車業界による海外のトップ大学でのジョブフェア、寄付

講座といった人材確保・育成の取組を後押しするとともに、海外の AI

系のスタートアップとの協業機会の創出を図っていく。

さらに、今後インド、ASEAN 等のアジア諸国が巨大な IT 人材プ

ールとなってくることを見据えながら、将来的なアジアでの自動車 IT

の人材エコシステムにつなげていく視点が必要である。その際は、米

国等で高度 IT 人材育成のためのオンライン講座や評価体系としてイ

ンフラになりつつある民間の取組(Udacity、Kaggle)などグローバ

ル動向を参考にしながら、同時に整合を図っていく。

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来年度の人材戦略 WG の進め方について

今年度は、人材戦略 WG で、産官学の取組の進捗状況に加え、国内

外の自動車業界や国内の他業界での IT 人材の育成・確保に関する取

組を共有するとともに、産学官連携の在り方や IT 人材にとって魅力

ある人材育成・評価の仕組みづくりの在り方等を議論し、「第 2 回 WG

で自動走行 IT 人材戦略」を示し、公表した58。来年度は、スキル標準

を踏まえた講座開発の検討状況等「3.今後の取組の方向性」に示した

施策の進捗をフォローアップし、第 4 次産業革命スキル習得講座認定

(リカレント教育講座)との連携等の受講者のインセンティブの在り

方を議論していくとともに、トップ人材(AI 等)の引き込み・育成や

マス人材での自動車業界×IT の人材エコシステム構築を目指し、自動

車ソフトウェア分野の人材プールを強固にしていくための業界とし

ての取組の在り方や産学官連携の役割について、引き続き議論してい

く。

58 自動走行 IT 人材戦略を取りまとめました(2019 年 4 月 8 日)

https://www.meti.go.jp/press/2019/04/20190408001/20190408001.html

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6. 実証プロジェクト

「トラックの隊列走行」と「ラストマイル自動走行」については、

政府一体となっての議論が進められ、具体的な工程表が策定されてい

る。

ニーズが顕在化してきている分野での実証を実施することが重要

である。

具体的には、①運転者不足が深刻な問題となっている貨物輸送につ

いて、高速道路での後続車両無人隊列走行59による物流サービス、②

過疎化による事業性悪化が課題となっている地域交通について、無人

自動走行による移動サービス、③安全性の向上や待ち時間の短縮等が

課題となっている駐車場内での自動バレーパーキングの実現を先行

事例として実証を進める60。

(1) トラックの隊列走行

ⅰ)将来像と実証目的

我が国のトラック物流事業者には、経営効率の改善や運転者不足

への対応、安全性の向上等の観点から、隊列走行への期待が大きい。

とりわけ、運転者不足問題は深刻で、運転者の年齢構成が高齢化す

る中、今後、業界の存続に関わる問題とも認識されており、特に運

転者の確保が最も難しい夜間の長距離幹線(東京-大阪間)輸送等

を隊列走行によって省人化する強いニーズがある。

また、燃費改善61による省エネルギー効果や既存の機械牽引等の

手段には無い汎用的な運用62を行える等の効果が期待されている。

これらニーズや効果に応じる後続車両無人の隊列走行の実現に向

け、「高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事

業:トラックの隊列走行の社会実装に向けた実証」63事業において、

59 後続車両無人隊列とは、先頭車両にのみ運転者が存在し、後続車両は人が乗車していたとして

も運転者としては扱わず、運転とは異なる業務を行える。ただし、後続車両に乗車している人

がどのような業務を行うことができるかは今後の議論で決まるものである。 60 「今後の取組方針」で示された 3 つのアプリケーションについてプロジェクトを進めている。 61 「エネルギーITS 推進事業(経済産業省・NEDO、2008~2012 年度、予算総額 44.5 億円)」

では、3 台の隊列走行(空積)を車間距離 4m で実施した場合、後続車両における空気抵抗が

低減されることによって、1 台当たり平均約 15%の燃費向上が期待できると試算。 62 既存の機械牽引と比べて、隊列走行においては、隊列を形成する前や解除した後に各々のトラ

ックが独立して走行できる。 63 経済産業省、国土交通省委託事業として、豊田通商を代表とする企業連合体が実施。2016 年

度は、「スマートモビリティシステム研究開発・実証事業:トラックの隊列走行の社会実装に向

けた実証」事業と称していた。

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2016 年 8 月からプロジェクトを開始し、技術開発、実証実験及び各

種事業環境の課題検討を進めている。

ⅱ)海外動向

欧米では、我が国とは異なり運転者の負担軽減、燃費改善、交通

円滑化等を目的とした後続車有人隊列走行へのニーズが高い。

そこで欧州では、2016 年 4 月に複数の OEM が参加する大規模デ

モンストレーション64が実施された。また、2018 年 2 月に発表され

た欧州全体の取組となる「ENSEMBLE」プロジェクト65においては、

2021 年までにクロスボーダーかつマルチブランドでの隊列走行の

公道実証の実現を目指し、2023 年までに商業化する目標を掲げてい

る。更に、Daimler においては、高速道路で長時間運転する運転者

の負担を軽減させる目的の「Future truck 2025」66構想において、

トラック単体での自動走行の実用化に向けた取組を進めている。

米国では、Peloton Technology67が 2017 年から高速道路において

CACC68を活用した 2 台後続車両有人の隊列走行の商業運行を推進

している。

加えて、シンガポールにおいては、運転者不足の解消と港湾物流

の効率化を目的として、2017 年より、我が国と同様の後続車両無人

隊列走行の実証事業69を進行している。

こうした海外の動向を踏まえて、日本・欧州・米国の三極間で情

報共有を行う取組み70が加速している。各国の実証実験等の取組を

64 「European Platooning Challenge 2016」:オランダ政府が中心となり、各国政府/OEM が連

携し、複数拠点から隊列を形成しアムステルダムまで走行するデモンストレーションを行っ

た。トラックメーカーからは、DAF, Daimer, Iveco, MAN, Scania, Volvo が参画し、各社の既

存技術である CACC を用いた後続車有人の隊列走行を実施。 65 ENSEMBLE: Enabling SafE Multi-Brand pLatooning for Europe.

EU 域内におけるマルチブランドでの後続車有人隊列走行の実現を目的とした研究開発・実証

プロジェクトが 2018 年 6 月に発足。主要 OEM6 社、システムサプライヤー、研究機関等が

参画し、隊列走行の技術要件の検討、実証実験の実施、インフラや物流への影響調査を進め

る。 66 「ハイウェイパイロット」と呼ばれる自動走行システムを大型トラックに搭載し、レベル 3 を

実現させる構想。2015 年に米ネバダ州、独でデモンストレーションが実施された。 67 隊列走行サービスを提供するシリコンバレーのスタートアップ企業、スタンフォード大学を

中心としたメンバーにより 2011 年に創業。 68 CACC(Cooperative Adaptive Cruise Control): センサーにより前方車両との距離を把握す

ることであらかじめ設定した車間距離を維持する ACC(Adaptive Cruise Control)に加え、

通信技術を活用して前方車両と加減速情報を共有することで、前方車両との車間距離をより

円滑に制御する、協調型車間距離維持支援システム。 69 日欧米のプレイヤーが入札に参加し、Scania 及び豊田通商を代表とするコンソーシアムが選

定された。走行場所として、港湾間を結ぶ約 10km のルートが想定されている。 70 日本からは経済産業省と豊田通商。欧州からは TNO、IDIADA、Scania。米国からは USDOT

が参加した。

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纏める文書の共同作成を進めるほか、ITS・自動走行関連の国際会議

の場を用いて、三極合同会議が開催される。今後我が国が取組を進

めるにあたって、引き続き留意が必要である。

ⅲ)進捗状況と実現に向けた取組方針

2017年度には世界初となる国内メーカー4社が開発したトラック

による CACC を用いた高速道路における後続車有人システムによ

る隊列走行の実証実験を開始した。

2018 年度は、後続車有人隊列走行システムの実証事業の一環とし

て、走行距離の拡大と高低差やトンネルなどの多様な道路環境に加

えて、積載条件を変えて技術検証を行うために、2018 年 11 月 6 日

~11月22日で、上信越自動車道藤岡JCT~更埴JCT(片道約120km)

において、CACC のみを用いた実証実験を行った。また、新東名高

速道路浜松 SA~遠州森町 PA 間(片道約 15km)において、同年 12

月 4 日~12 月 6 日に CACC に加えて新たな技術として LKA71を用

いた後続車有人隊列走行システムの実証実験を行った。

実験の結果として、トンネル、勾配、カーブが多数ある上信越自

動車道においても CACC は正常に動作し、隊列を維持できた。一方

で、各社の制御の違いや通信の応答遅れ等により後続車の車速が低

下するケースが見られた。空車条件でも登坂路で車間距離が拡大す

るケースが見られ、積車条件では登坂路における車間距離の拡大、

降坂路における車間距離の縮小が、空車条件以上に顕著であったた

め、トラック自体の動力性能差も関わっているものの車車間通信や

車両システムの改良を検討する必要がある。新東名高速では CACC

及び LKA が正常に動作した一方で、白線の掠れや側線が連続しな

いところなどは検知しにくい課題があった。

2車線区間の上信越自動車道では約120km×27回の走行中に135

回の割り込みが発生した他、合流部においてトラック隊列が車間を

空けて一般車両の合流を促すも流入せず、両車ほぼ停車に至る事象

が見られたことからインフラによる合分流時の安全支援や合分流時

等の走行方法の検討に加えて後続車有人システムによる隊列走行に

おいては、車間を開けて合流を促し安全な走行を確保するために周

辺走行車両に周知する必要もあると考えられる。

なお、後続車無人システムにおいては、開発を進めテストコース

での検証を重ねてきたところ、新東名高速道路浜松 SA~遠州森町

71 LKA (Lane Keeping Assist):車線維持支援システム。

白線を検知して車線内での走行を維持できるようステアリングを調整する機能。

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PA 間(片道約 15km)において 2019 年 1 月 22 日~2 月 26 日に後

続車無人システムを用いた実証実験を後続車有人状態で実施した。

この実験では、実走行環境において、開発中のシステムの実現に向

けて必要となる機能が設計通り作動することの確認を行うとともに、

トラック隊列が周辺走行車両へ及ぼす影響なども確認した。

実験は安全に行うため、三段階(第一段階は IC 合流部を除く本線

区間のみ隊列し、第二段階は IC 合流部を含む本線区間で隊列を継

続、第三段階では、駐車場内で隊列を形成し、SA/PA エリア内や合

分流ランプ部を含む全てのシーンを走行)に分けて段階的に実施し

た他、合流部に LED 情報板を設置し、本線走行中の一般車両にトラ

ック隊列が合流してくることや、合流ランプを走行中の一般車両に

トラック隊列が本線を走行中であることの注意喚起も行った。

実験の結果として、直線走行及び車線変更は安全に行われ、SA/PA

エリア内のクランク部も後続車は先行車を追従した。一方で、位置

情報を元に切り替えられる多重系が組まれているトラッキング制御

の切替直後や横風の影響により多少蛇行する場面もあり、今後更な

るシステムの改良が必要である。

また、観測車両より走行中のトラック隊列を観測した一般モニタ

ーからは、車間距離並びに速度が一定であったことを安全に感じら

れ、想像よりも小さく 3 台まとまって走っていたことから走りやす

そうとの意見も出た。車外 HMI については、隊列走行していること

の明示、隊列している台数の明示に関する情報提供の要望が多い傾

向にあった。

2019 年度は、後続車有人システムにおいてマルチブランドによる

隊列走行の制御精度を向上させるため、車車間通信及び車両システ

ムの改良を行った上で実証実験を実施する。また、2018 年度実験時

の車間距離条件(車間時間 1.6 秒)から最小車間距離を規定した状

態で実証を行う事を目指す。

加えて、後続車無人システムによる隊列走行は、国土交通省自動

車局の定める技術的要件に対応するため、2018 年度に引き続き後続

車無人システムの開発を進める。その後、システム搭載車両の実走

行環境下での技術検証及び一般車両やドライバーに対する受容性、

道路交通への影響等の検証を行う実証実験を実施する。

これら実証実験を進めながら、今後、2020 年の高速道路(新東名)

での後続車両無人の隊列走行の実現、その先の事業化につなげるた

め、必要となる技術を確立し、社会受容性を醸成し、その先の社会

実装につなげる。

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表 2:トラックの隊列走行における技術面の課題

基本制御

隊列走行システム全体

(車両、管制センター含む)

○システム全体の仕様の具体化、システム開発、国際標準化(対応する体制の検討含む)

○テストコース等での実証試験(安全性、信頼性の検証)

○管制技術の向上

○一般交通との混流方法の検討(電子連結時の制御技術、後続車両監視技術・方法の確立、

制度的取扱(安全基準や道路交通法の適用の在り方等)の検討)

○割り込み防止方法の確立

○先頭車両用 HMI基本要件の検討

機能安全

○ECU(アクチュエータ)、EBS ブレーキ(二重化、保安ブレーキの開発)、車車間通信(無線通信二

重化、光光通信と無線通信併用による二重化)のフェールセーフ化

○電子連結が途切れた場合の検知・対応方法の確立

セキュリティ ○セキュリティの要求事項の整理、対策の確立(特に、なりすまし、DoS攻撃への対策)

縦方向制御

(車間距離制御)

通信 ○車車間通信におけるデータ送信の周期の検討、通信器の開発

ブレーキ制御 ○EBS ブレーキ学習性能のばらつきを抑制(車間距離性能向上)する研究開発

横方向制御 先行車トラッキング制御 ○3D LIDAR及び画像認識を用いた操舵制御用アルゴリズム開発

表 3:トラックの隊列走行における事業面の課題

運行形態

○車両(単車、セミトレーラー等)の種類の選定

○適用場所の選定

○隊列形成方法(走行開始時マッチング or走行時マッチング)の選定

○ユースケース(合分流、車線変更、PA/SA における駐車、出入等)ごとの走行方法(車間距離、隊列間距離等)の確立

隊列運行管理

サービス

○隊列運行管理サービスのビジネスモデルの確立(事業の担い手の具体化、事業性の確立、国際競争力強化 等)

○運転者に求められる運転技能の整理、教育方法の確立

社会受容性

○実証試験(可用性の検証を含む)

○テストコース、ドライビングシミュレーター等を活用した他の交通参加者の研究(運転操作や心理面への影響等)

○隊列走行に関する法整備(道路交通法、道路運送車両法、道路法 等)

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図 1:トラック隊列走行のロードマップ

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(2) ラストマイル自動走行(無人自動走行による移動サービス等)

ⅰ)将来像と実証目的

新たな移動サービスであるラストマイル自動走行は、運営コスト

を抑制72し、運転者不足を解消するため過疎地等において自治体や

地域交通事業者からのニーズが高く、また、徒歩移動の負担軽減や

集客を目的とした話題づくり等の観点から、観光地やテーマパーク

事業者の関心も高い。

これらニーズに応じた移動サービスの実現に向けて、「高度な自動

走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業:専用空間に

おける自動走行等を活用した端末交通システムの社会実装に向けた

実証」73事業を 2016 年 9 月から開始した。

究極的には、歩行者や一般車両との混在下におけるレベル 4、5 が

実現できれば、サービス提供範囲の最大化が期待できる一方、車両

システムだけで安全を確保するのは技術的難易度が高く、社会受容

性の醸成も大きな課題となる。そのため、現実のニーズに応じた早

期の実用化に向けて、初期投資や運営コストの最小化に留意しつつ、

技術的難易度が比較的低い、専用空間での自動走行、一般道路での

低速自動走行を検討する。

ⅱ)海外動向

欧州では、我が国同様、運営コストが低い移動サービスの実現に

対するニーズがある他、都市部において、渋滞緩和、高齢化社会に

向けた公共交通の充実、環境負荷低減の貢献への期待が高い。欧州

の ERTRAC74によると、欧州は、技術等の実証を目的として限定エ

リア75におけるレベル 4 の試験運行を 2020 年までに実施後、2023

年から商業運行する計画76を立てている。更に、2025 年以降を見据

72 高齢化が進む過疎地域では、高齢者等の移動手段の確保が重要な課題であり、仮に事業性が

成立しない場合でも、他の手段と比較して最も赤字が少なければ、新たな移動手段として導

入を検討する余地がある。 73 経済産業省、国土交通省委託事業として、国立研究開発法人 産業技術総合研究所を代表とす

る企業連合体が実施。2016 年度は、「スマートモビリティシステム研究開発・実証事業:専用

空間における自動走行等を活用した端末交通システムの社会実装に向けた実証」事業と称して

いた。 74 ERTRAC(European Road Transport Research Advisory Council:欧州道路交通研究諮問

評議会)は、EU における共同技術研究プラットフォーム(主要企業、政府機関等が参画)で

あり、EU 全体の交通システムの高度化に向けた研究基盤の確立をミッションとしている。 75 低速走行であれば周囲への影響が少ない空間(一般交通混在下の公道含む)。 76 ラストマイル自動走行導入の前提として、事業としての持続可能性(税金投入は最小限)確保

のため、①初期投資や運営コストの低減(小型車中心、既存のインフラの活用、厳密な需要想

定)、②都市近郊・産業エリアでの導入、③短距離かつ小規模の運行等を基本的な考え方とし

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えた一般道路・普通速度でのより技術的難易度の高い自動走行の検

証も進める予定である。スイスでは Postbus(国営バス会社)が 2016

年 6 月からシオン市で 2 年以上の長期公道実証プロジェクトとして

11人乗りの最高速度 20km/hの小型シャトルバスを用いた公共交通

機関としての試験運用(オペレータ乗車)を行っている。ドイツで

はドイツ鉄道が 2017 年 9 月からフランクフルトで従業員向けの実

証を行っている。2016 年から欧州では実証が盛んに実施され、フラ

ンスではパリやリヨン、フィンランドではヘルシンキ、イギリスで

はグリニッジなどでの低速小型シャトルバスなどの自動運転の試験

運行などが行われていたが、現在は継続していないものがほとんど

である。しかし、交通事業者の取組も先行している。事業モデルと

しては、利用者からの料金徴収による回収に加え、自治体からの資

金支援やサービスエリアの間接的受益者からの資金回収等が前提と

して考えられる。最適な機能分担の実現に向けて、運行管理システ

ム(BestMile77等)や車両(EasyMile78等)の開発も欧州は先行して

いる。

シンガポールでは、政府が強く関与し、これまで複数の公共交通

を主に自動走行関連のプロジェクトが推進されてきた。2016 年 8 月

に世界初の自動走行タクシーの試験サービス(エンジニアが同乗)

を行った米ベンチャー企業 NuTonomy は、2018 年には自律型オン

デマンドの輸送サービスを完全実用化することを最終目標としてい

たが、まだ、実用化には至っておらず、英国の Aptiv に買収され、

2018 年 1 月にはタクシー配車の米国 Lyft と共にラスベガスでの自

動運転によるタクシー配車を実証実験している。米国では 2017 年

11 月よりアリゾナ州で Waymo が自動運転による無人タクシーの試

験走行を行い、無人による営業運転を目指したが、現在はまだ、オ

ペレーターが乗車した形のままの運用である。こうした海外の動向

については、特に実運用、事業化への実証実験の進展や運用形態な

どについて、今後我が国が取組を進めるにあたって、引き続き留意

が必要である。

ⅲ)進捗状況と実現に向けた取組方針

ラストマイル自動走行は、既存の事業モデルがなく、実現に向け

ては、社会課題の解決を主な目的に取組を進める必要があること、

ている。 77 自動走行車両のフリートマネジメントソリューションを提供するスイスのスタートアップ企

業、スイス連邦工科大学からのスピンオフとして 2014 年 1 月に創業。 78 自動走行小型モビリティの開発・販売を行うフランスのスタートアップ企業、LIGIER(小型

車両等の製造メーカー)と robosoft(産業用ロボットの製造・開発会社)が合弁で 2014 年に設立。

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制度面も含む重要な課題が多いことから、必要な取組を協調領域と

して推進する。

地域によって求められる移動サービスは多様であり、自動走行や

専用空間化の実現方法、新しい移動サービスに対する社会受容性も

異なるため、なによりもまず適用地域の選定が重要となる。なお、

「スマートモビリティシステム研究開発・実証事業:専用空間にお

ける自動走行等を活用した端末交通システムの社会実装に向けた実

証」事業では、モデル地域として、2017 年 3 月に、茨城県日立市(コ

ミュニティバスモデル)、石川県輪島市(市街地モデル)、福井県永

平寺町(過疎地モデル)、沖縄県北谷町(観光地モデル)の 4 箇所に

決定し、実証評価に向け事業を進めている。

これまでに、官民協議会及び関係省庁の協力を得て、2017 年には、

石川県輪島市(市街地モデル)において、遠隔型自動運転システム

を用い、日本初となる公道での車両内無人自動走行を実施した。

2017 年度は特に短期間の技術的な検証等を主に実施してきた。

2018 年度は、モデル地域において、特に事業の成立性・ビジネス

モデルの検証を主とした以下のような実証評価を実施した。

まず、地域の事業者(担い手となる交通事業者等を含む)が自動

走行システムを導入して事業化できるかを見極めていくため、地域

事業者の運用による実証評価を実施し、地域により長期(一カ月)

実証評価を行った。茨城県日立市(コミュニティバスモデル)では、

2018 年 10 月 19 日~28 日に、廃線敷利用のバス専用道路及び一般

道での自動運転バスの社会受容性実証を実施した。ここでは、特に

車両等の技術検証と共に、遠隔監視、信号機や路側センサーとの連

携、新たな決済方法等を試行するなど、サービス技術も含めた実運

用に近い形での実証を行った。実証の結果として、544 名が試乗し、

移動サービス、車両と周辺技術の有効性を確認し、8 割以上が自動

運転の BRT 導入に前向き、バス専用道の受容性が高いことがわか

った。また、位置認識のロバスト化、ブレーキ制御や右左折時速度

の改善などの課題を把握した。

福井県永平寺町(過疎地モデル)では、2018 年 10 月 29 日~11 月

30 日の約 1 か月間に、過疎地モデルとして地域事業者の長期連続実

証による運用面・システム面に関する課題の把握を行った。実証の

結果として、738 名が試乗し、移動サービス、車両と周辺技術の有

効性を確認し、約 7 割が実証ルートは便利であるとし、約 7 割が本

格運行時の利用意思を示した。また、利用者数の増加策としての移

動販売等との組合せ、観光利用の促進などの効果が示されている。

運用に関して、マニュアル、車両やシステムのユーザーインターフ

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ェースの改善、付加価値による収益確保の工夫を図ることの必要が

分かった。

沖縄県北谷町(観光地モデル)では、2019 年 1 月 15 日~2 月 12

日の約 1 か月間に、観光地モデルとして地域事業者の長期連続実証

による運用面・システム面に関する課題の把握を行った。実証の結

果として、1,214 名試乗し、移動サービス、車両と周辺技術の有効性

を確認し、8 割以上が導入への好感触を示した。インバウンドのレ

ンタカー運転や歩行者等も多い観光地であることもあり、低速の自

動運転車両に対する右折時の右側からの追い越しや無理な割り込み

などもあり、自治体との協議において、地域における合意等の検討

が必要であることを確認している。ここでは、車道左端を低速の自

動運転車が走行したところ、他車両への影響に対し、非常に有効で

あることが判明した。今後は、周辺事業者の人的・経済的負担等を

含めた事業化会社の準備など、インバウンド対応強化、付加価値検

討、社会実装に向けたビジネスモデルと体制の具体化を図っていく

ことが必要であることが判明した。

石川県輪島市(市街地モデル)では、2019 年 2 月 12 日~17 日に、

市街地モデルの実運用を想定した地域事業者の実証による事業面・

運用面・システム面に関する課題の把握を行った。実証の結果とし

て、338 名が試乗し、移動サービス、車両と周辺技術の有効性を確

認し、本格運行時には約 9 割が利用希望であることが分かった。今

後の事業性の向上には、観光利用の促進、需要の高い時間帯の運行

など課題が把握された。上記の実証評価では、安全性重視の観点か

ら、レベル4相当車両でドライバー乗車のレベル2で実証を行った。

そのため、停留所や交差点の発進、駐車車両対応は、車内のドライ

バーによる操作とした。

ドライバー不足解消やコスト削減に資する少人数で複数台の運用

の自動運転電動カートによる移動サービスの実現に向けた遠隔監

視・操作、管制技術の検証として、福井県永平寺町の走路の一部で、

2018 年 11 月 19 日から、遠隔ドライバー1 名が 2 台の車両を運用す

る遠隔型自動運転システムの世界初の公道実証を開始した。実証の

結果として、通常の遠隔ドライバーによる操作は、2 点間移動での

停留所乗降確認と開始時の発進操作のみとし、本実証環境で運用す

ることの技術的な有効性を確認した。また、遠隔ドライバーが 1 台

の自動運転車両の操作を行った場合の対応について、操作対応外の

自動停止と対応後の同時発進機能、追加遠隔ドライバーへの操作、

監視移譲機能等の検証を行い、有効性を検証した。さらに車両周囲

音対応として、緊急自動車のサイレン音検知支援による遠隔停止、

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すれ違い待避所での自動停止と発進を管制システムで実現性が示さ

れた。今後は、走行検証の継続による車両内無人での走行実証実験

や、自動運転機能の高度化等により自動運転レベル 4 相当での走行

実証に向けた自動運転機能の高度化と、複数台車両の運用への拡張

等を図っていくことが考えられる。

2019 年度は、①「地域事業者によるサービス実証」として、6 カ

月程度の長期の移動サービス実証を実施し、評価検証を実施する。

また、②「自動運転レベル 4 での運用に向けた開発と実証」として、

自動運転機能をより高度化した車両構築と環境等の難易度や制約条

件を変化させた検証を実施する。さらに、③「中型自動運転バスの

実証評価」として、バス事業者からの自動運転化の要望の多い中型

自動運転バスの開発、自動運転コーディネーターの企画選定、実証

事業者の公募・選定、小型バスを用いたプレ実証を実施する79。これ

らと共に、民間において事業化に向けた準備を進め、2020 年の無人

移動サービスの実現、事業化につなげる。なお、技術面、事業面の

課題について、引き続き、検討を行いつつ、運営コストの精査やビ

ジネスモデルの具体化を進め、実証で得られたデータの分析・有効

活用等を進めていく。

表 4:ラストマイル自動走行における技術面の課題

システム全体

縦方向(車間距離)、

横方向制御

○システム全体の仕様の具体化、基準化、標準化・国際標準化(体制含む)、システム検証方法の確立

○自動走行車両や管制システム等の低コスト化、車両等の量産体制の検討

○周辺認識技術の確立、障害物に対する衝突回避などの自律制御等の検証

○遠隔監視・制御等を含め効率的な運行を可能とする管制技術の検証、基準化

○テストコース、実公道等での実証試験(安全性、信頼性、耐久性、メンテナンス性の検証)

〇自動運転レベル4での移動サービスの実現に向けた車両機能の確立と利用や周辺の受容性の検証

機能安全 ○自律制御や管制制御不能に陥った場合の対処方法の確立

セキュリティ ○セキュリティ要求事項の整理(通信、車両盗難等を含む)、対策の確立(特に、なりすまし、DoS攻撃への対策)

表 5:ラストマイル自動走行における事業面の課題

運行形態

○適用場所による運行方法等の検討

〇事前予約、定時運行、デマンド運行などの地域にあった運行の検討

○専用空間の要件の整理や標準化、公道等での運行の検討

移動サービス/運行事業者

○移動サービス/運行事業者のビジネスモデルの確立(事業の担い手の具体化、事業性の確立 等)

○実証試験(コストや可用性等の検証)

○運行管理技術(需給バランス等を考慮した効率的な運行管理、最適な充電マネジメント)の向上

〇付加価値の検討、利用者数増への対応策

移動サービス用高精度地図

○用途に関する認識の共有

○位置や環境認識技術の検証、基準化

○仕様(必要な先読み情報の内容(動的情報の種類含む)、構造、制度、収集・分析・配信方法、国際協調 等)

の標準化

79 中型自動運転バス実証実験事業を開始します(平成 31 年 4 月 19 日)

https://www.meti.go.jp/press/2019/04/20190419004/20190419004.html

※自動運転コーディネーターの公募は終了。

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○ビジネスモデル(事業の担い手、事業性、整備、更新、国際競争力)の確立

社会受容性

○より長期の実移動サービスを模擬した実証試験(可用性の検証を含む)

○適用場所におけるリスクとメリットの明確化及びそれを踏まえた導入の在り方の合意形成

○他の交通参加者との共存空間の実現、親和性の検討、ステークホルダーとの調整

図 2:ラストワンマイル自動走行のロードマップ

2016年度 2017年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度以降

サービス地域の拡大

実証実施場所選定

実現したい姿

走行実証

制度整備

車両開発

専用空間の要件、走行方

法の具体化

サービス確立

事業性の見通しの確認

サービス提供方法の検討

サービス提供準備

信号情報配信の準備

貨客併用

インフラ整備

無人自動走行機能の様々な類型毎の実証・民間での事業化に向けた準備

1:n遠隔運行1:1及び1:Nが

可能なガイドライン整備

官民連携コンサルテーション

旅客車両による貨物運送のための要件整理、試行、試行結果を踏まえた検討

遠隔運行・管制機能及び車両開発、テストコース実証

(経産省・国交省連携事業)

遠隔運行車両開発、テストコース実証(民間)

(経産省・国交省連携事業)

(経産省・国交省連携事業) (警察庁)

(警察庁)

(国交省)(民間)

(民間)

(経産省・国交省連携事業)

中型自動運転バスの車両開発、テストコース実証(経産省・国交省連携事業)

モデル地域での実証 社会

受容性の確認(経産省・国交省

連携事業)

遠隔運行1:2以上の実証 無人回送等実施

モデル地域実証地域事業者による長期実証(1ヵ月)、移動サービスを考慮した実証

モデル地域でのサービス実証実移動サービスを模擬した長期実証(6カ月

等)による信頼・受容・事業性等の検証

レベル4相当の実証評価移動サービスの実現に向けた

周辺技術等を含めた検証と

社会受容性等の評価(経産省・国交省連携事業)

(経産省

・国交省連携業)

(経産省・国交省連携事業)

(経産省・国交省連携事業)

モデル地域での実証

無人自動走行による移動サービス等の実現

(内閣府実証等)(民間等)

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(3) 自動バレーパーキング

ⅰ)将来像と実証目的

我が国の駐車場事業者には、安全性向上、顧客満足度の向上(駐

車待ち時間の短縮、徒歩移動の負担軽減)、経営効率の改善(稼働率、

駐車効率の向上、人件費の削減)等の観点から、自動バレーパーキ

ングへの期待が高い。特に、駐車場所から目的地入口まで距離があ

る駐車場(郊外のショッピングセンターやテーマパーク等の平面式、

日本・アジア特有の都市部のビル、マンション等の機械式)において

強いニーズが存在する。

これらニーズに応じた自動バレーパーキングの実現に向けて、「高

度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業:一

般車両による自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実

証」80事業を 2016 年 8 月に開始した。

究極的には、歩行者や(自動走行機能を有しない)一般の車両も

混在するあらゆる駐車場で自動バレーパーキングが実現できること

が望ましいが、実際には、一般の駐車場において車両側の装備のみ

による安全確保は、技術的に困難である。よって、まずは、車両及

び駐車場双方の負担の最小化に留意しつつ、自動バレーパーキング

専用の駐車場(歩行者や一般車両等の一般交通と分離し、駐車場内

監視装置や管制センター等が設置された専用空間)を整備し、車両

と駐車場の管制センターとの協調81により安全性を確保する。

ⅱ)海外動向

海外においても、自動バレーパーキングの実用化を目指す動きが

ある。例えば、Daimler が推進する car2go82は、カーシェアリング

サービスと自動バレーパーキングを組み合わせたサービスの実現に

向けた Bosch との提携を 2015 年 6 月に発表している。Bosch が開

80 経済産業省、国土交通省委託事業として、一般財団法人 日本自動車研究所を代表とする企業

連合体が実施。2016 年度は、「スマートモビリティシステム研究開発・実証事業:一般車両に

よる自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実証」事業と称していた。 81 車両と駐車場の管制センターの協調事例として、次のような役割分担が考えられる。入庫時

は、①運転手降車後、②管制センターは車両に対して駐車場内の地図を配信するとともに、

走行経路、速度や駐車位置等を指示し、③車両は低速で周辺の安全を確認しながら指示され

た位置に駐車する。出庫時は、①運転手が管制センターに対して出庫の意思や出庫希望時間

等をリクエストすると、②管制センターは車両に対して走行経路、速度や停車位置(運転手が

待ち受けている乗車位置/待機場所)を指示し、③車両は低速で周辺の安全を確認しながら指

示された位置に停車する。駐車場側は、歩行者や一般車両との分離を確実にするなどの安全

対策を行う必要がある。 82 参照 URL:http://www.bosch.co.jp/press/group-1506-02/

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発する駐車場管理システム83(駐車場インフラと管制センター)は実

証段階にあり、2017 年 7 月には、Daimler と Bosch が共同で実施

する Mercedes-Benz Museum における自動バレーパーキングのデ

モビデオが公開84され、一般者が試乗できるレベルにある。これらを

実現するために、今後、セキュリティ対策を含めたシステムの標準

化(デファクト化)を推進する可能性がある。また、EU で実施され

ている FP7 プロジェクト V-Charge85においては、VW、Bosch 等が

参画し、2015 年 7 月に実施された電気自動車の充電システムと自動

バレーパーキングを組み合わせたデモにおいて、その実現の可能性

が示された。更に、欧州 Horizon2020 プロジェクト UP-Drive86で

は VW が中心になり、FP7 で開発した自動バレーパーキングシステ

ムを都心部へサービスとして組み込むために必要な技術開発を推進

している。今後我が国が取組を進めるにあたっては、こうした海外

の動きに留意するとともに、スピード感を持って対応する必要があ

る。

ⅲ)進捗状況と実現に向けた取組方針

自動バレーパーキングの開発と普及に向けては、「車両」、「管制セ

ンター」、「駐車場インフラ」の役割分担を明確にしつつ、それぞれ

の導入の見通しや技術の標準化等について、関係者間の合意形成が

不可欠である。それらの仕様については、国際標準化提案を行い、

2017 年 10 月開催 TC204/WG14 オークランド総会にて、ドイツ、

アメリカ、イギリス、韓国の賛同を得て予備業務項目(PWI)とし

て正式登録され、各国との議論が始まり、現在も提案段階(NP)の議

論中である。(なお、管制センターを介さない「部分的自動駐車シス

テム」(ドライバーが運転席に座った状態で作動させるタイプと、遠

隔操作端末を用いて作動させるタイプの 2 種類のシステム)につい

ては、機能要件及び性能確認試験の方法が規定された ISO20900 が

83 「アクティブパーキングロットマネジメント」。駐車スペースの中心に設置されたセンサーに

より、定期的に駐車場の空き状況を確認し、管制センターにその情報を送信。管制センター

はその情報等を元に駐車場の空き状況をリアルタイムでマップに反映し、駐車場利用者や管

理者に配信するサービスを開発・実証中。 84 参照 URL:

Mercedes-Benz presents AVP: Bosch and Daimler realised Automated Valet Parking.

https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=Y1Y1ChYabWw

https://www.daimler.com/innovation/case/autonomous/driverless-parking.html 85 参照 URL:http://www.v-charge.eu/?cat=5 86 参照 URL:

Up-Drive: Automated Urban Parking and Driving, Horizon2020 Project ID: 688652

https://cordis.europa.eu/project/rcn/199138_en.html

http://up-drive.eu/

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2019 年 5 月 13 日に発行された。87)また、概ね時速 10km/h 以下

で作動し、運転者が動作をいつでも終了できること等を要件に定め

た自動駐車に関する国際基準が 2017 年3月に国連の議会で採択さ

れ、これを反映した保安基準を 2017 年 10 月に公布した。

また 2018 年度は、東京・台場にて機能実証実験を実施し、自動車

関連・駐車場関連から 1000 名以上の参加者を集め盛況なものとな

ったが、その実証実験を通じて問い合わせがあった自動バレーパー

キングに関連した事業に関心が高い関係者を中心にビジネスモデル

の具体化を進めている。

こうした取組を通じ、民間における準備を進めつつ、2021 年以降、

観光地でのレンタカーサービスや営業用カーリースサービス等、自

動バレーパーキング対応車両の展開と、自動バレーパーキング専用

駐車場の整備を同時に進められるケースから自動バレーパーキング

サービスの開始を目指す。将来的には、一般交通混在下で、レベル

4,5 の自動走行が社会実装された段階で、一般駐車場での自動バレ

ーパーキングへと発展し、我が国の駐車場が抱える課題の解決に広

く貢献したい。なお、車両内に運転者がいない自動走行に関しては、

関係省庁と連携し制度的取扱の検討等を行う必要がある。

表 6:自動バレーパーキングにおける技術面の課題

システム全体

(車両、管制センター、駐車場インフラ)

○システム全体の仕様の具体化、システム開発、国際標準化(車両はインフラ協調制御部分、体制の検討

含む)

○管制技術の向上

○管制方法の標準化(車両の走行経路や駐車位置等の配信方法 等)

○テストコース等での実証試験(安全性、信頼性の検証)

機能安全 ○管制制御不能に陥った場合の対処方法の確立

セキュリティ ○セキュリティの要求事項の整理、対策の確立(特に、なりすまし、DoS攻撃への対策)

○運転操作の引継ぎ方法の確立

表 7:自動バレーパーキングにおける事業面の課題

運行形態 ○ビジネスモデルの具体化

インフラ ○駐車場等インフラの整備

87 参照:https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190527004/20190527004.html

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図 3:自動バレーパーキングのロードマップ

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7. ルール(基準・標準)への戦略的取組

ルール(基準・標準)の策定は、ビジネスに直結するため、自動走

行分野で世界をリードし競争力を強化する観点から、戦略的な取組が

求められる。検討会の「中間とりまとめ」では、ルールづくりに戦略

的に取り組むため、基準・標準横断的な情報共有や戦略検討を行う仕

組みについて、経済産業省と国土交通省が共同で、基準・標準の関係

機関と連携しながら検討を行うこととし、検討を進めている。

(1) 基準の検討体制

自動車の国際的な安全基準は、国連欧州経済委員会(UN-ECE)

の政府間会合(WP29)において策定されており、我が国も積極的に

参加して国際調和活動に貢献している。

この中で、自動走行については、自動走行全般をとりまとめる「自

動運転専門分科会」、その下に、「自動操舵専門家会議」、「自動ブレ

ーキ専門家会議」、「サイバーセキュリティタスクフォース」、「自動

運転認証専門家会議」が設置され、議論が進められている。我が国

は、各分科会等において、共同議長又は副議長として、国際的な議

論を主導している。最近では、2018 年3月に国連の議会で採択され

た高速道路における自動車線変更(ウインカー操作を起点)に関す

る基準を策定し、同年 10 月に公布したところ。

さらに、2019 年 3 月の WP29 において、日本及び欧州の共同提

案を基に、自動運転車の国際基準作りに向けた優先検討項目リスト

が合意された。

これら国際的な活動に臨むにあたり、我が国の方針を検討するた

め、政府、(独)自動車技術総合機構交通安全環境研究所、自動車メ

ーカーの他、サプライヤーも参加した産学官連携の体制を整え、そ

の体制の充実を図っている88。

(2) 標準の検討体制

自動走行に関係する国際標準についても、重要な会議89に我が国 88 自動車基準認証国際化研究センター(JASIC)が、このような国際基準化活動の場を提供して

いる。 89 ITS(Intelligent Transport System)の国際標準化は、ISO(International Organization for

Standardization)、IEC(International Electrotechnical Committee)及び ITU(International

Telecommunication Union)等で行われている。特に、ISO/TC204(TC:Technical Committee)

は、ITS の標準化を専門に行っている委員会。ISO の組織では、通常、TC の下部に SC(Sub

Committee),更に WG(Working Group)が設置されるが、TC204 では TC の下に直接 WG

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から議長が選出される等、我が国は議論を主導できる立場にあるが、

国内の検討は、従来は国際的な検討の場(SC や WG)ごとに行われ、

横断的な情報共有や戦略検討が必ずしも十分ではなかった。そこで、

ISO/TC204(ITS)と TC22(車両)の関係が複雑になってきたこと

も踏まえ、この分野の国内審議団体である(公社)自動車技術会に

「自動運転標準化検討会」90を設置し、TC22・TC204 間も含め横の

情報共有を円滑にする体制を構築した。

自動運転標準化検討会では、(一社)日本自動車工業会から提示さ

れた「戦略的標準化領域と重点テーマ」91に基づき、具体的な標準化

項目を整理した上で、日本自動車工業会等とも連携しながら、日本

として積極的に取り組むべき標準化項目の選定等、標準化戦略の検

討・立案を行っている。

なお、自動車技術全体にわたる NP(New Work Item Proposal)92の提案数が近年は顕著に増加しており、TC22では17件(2005年)

から 45 件(2015 年)へ増加(10 年間で約 2.6 倍)、TC204 では 10

件(2005 年)から 27 件(2015 年)に増加(10 年間で約 2.7 倍)

している。これに対応するため、自動走行のみに関わらず標準化活

動を行う専門家人材や予算といったリソースの確保の仕組みの強化

についても引き続き検討する必要がある。

(3) 基準・標準の横断的な情報共有と戦略検討

自動走行の発展に向けて基準や標準の整備は大きな役割を果たす

ことになるが、ルールを基盤に展開される自動走行を巡る競争の

中、国際的に優位に立つには、基準と標準を俯瞰した国際戦略を持

つことが不可欠である。

そこで、2016 年度は、「今後の取組方針」に従い、基準と標準を

つなぐ戦略的な検討を行う場として、自動運転基準化研究所93が新

が設置されている。TC22 では、情報セキュリティや機能安全等を扱う SC32(Electrical &

Electronic components and general system aspects)の議長・幹事国、TC204 では、地図情

報を扱う WG3(ITS Database technology)、自動車走行制御を扱う WG14(Vehicle/Roadway

warning and control systems)のコンビナ(議長相当)が我が国から選出されている。 90 2015 年 3 月に「自動運転標準化連絡会」として設置した後、2015 年 12 月に本名称に改称。 91 「自動車専用道路 Lv3 自動運転システム(モーターウェイショーファーシステム)」や「安全

性検証」,「サイバーセキュリティ」等が重点テーマとされている。 92 新たな規格制定、現行規格改訂のための作業項目提案。 93 本研究所は、2016 年 5 月 24 日に自動車基準認証国際化研究センター(JASIC)内に設置し、

(独)自動車技術総合機構交通安全環境研究所を所長とし、(一社)日本自動車工業会(自動車

メーカー)、(一社)日本自動車部品工業会(サプライヤー)、(公社)自動車技術会、(一財)日

本自動車研究所、経済産業省、国土交通省等にて構成されている。

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設された。

2018 年度は、レベル 3 以上の高度な自動運転車を対象とした安

全性評価等に係る動向などを調査・整理を行うとともに、これらを

踏まえ、レベル 3 以上の高度な自動運転車の実用化に向けて、基準・

標準に関するロードマップを作成した。

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8. おわりに

自動走行ビジネス検討会は、2019 年 3 月 4 日に第 10 回会合を開催

した。2015 年 2 月 27 日に第 1 回会合を開催して以降、委員を始め、

関係者の方々に精力的に議論を進めていただくとともに、各方面で自

動走行技術の社会実装に向けた取組を加速していただき、改めて感謝

申し上げたい。

2016 年 2 月に取りまとめた「今後の取組方針」以降、警察庁が策

定した「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライ

ン」を始め、自動走行の実現に向け様々な取組が行われた。

特に 2018 年度には、公道上での自動運転レベル 3 を実現可能とす

る「道路運送車両法」及び「道路交通法」の改正案が閣議決定される

(2019 年 5 月に国会にて成立)とともに、ダイナミックマッププラ

ットフォーム基盤株式会社が日本全国の高速道路の高精度三次元地

図の整備・提供を開始しており、2020 年の高速道路での自動運転レベ

ル3実現に向けて大きな進展があった。

また、自動走行ビジネス検討会の下での公道実証では、世界初とな

る「CACC と LKA を用いたマルチブランドによるトラックの隊列走

行」や「公道において車両外に存在する 1 名の遠隔監視・操作者が 2

台の車両を走行させる実証」を実施し、世界に向けて我が国の優れた

自動運転技術を発信することができ、当初の目標に向けて一つの区切

りを迎える 1 年となった。

本検討会では昨年秋からレベル4の実現に向けた課題を検討する将

来課題検討 WG を開催し、中間報告を取りまとめた。本年秋には内閣

府 SIP が関係省庁と連携しつつ東京臨海部の道路インフラを整備し、

レベル 4 の実現に向けた公道実証が開始される予定であり、2020 年

の東京オリンピック・パラリンピックの直前には日本自動車工業会が

レベル 4 相当の技術を実装した車両によるデモンストレーション「東

京 2020 実証」が実施される予定である。

今後も検討会(事務局)は、関係省庁、関係団体等と連携し、海外

動向や技術の進展、産業構造の転換等状況の変化を踏まえつつ、高齢

者の安全安心な移動手段の確保及び運送業等におけるドライバー不

足解消等に向けて必要となる将来の自動運転レベル 4の社会装実現に

向けて、サプライヤーを含めた我が国自動車産業に加えて、関連する

業界が協調して世界をリードし、自動走行の発展に積極的に貢献でき

るよう努める。

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自動走行ビジネス検討会 委員等名簿(平成 31 年 3 月 4 日時点)

<委員> (敬称略、五十音順、下線:座長)

有本 建男 政策研究大学院大学 客員教授/科学技術振興機構 上席フェロー

大平 隆 いすゞ自動車株式会社 常務執行役員

小川 紘一 東京大学 政策ビジョン研究センター シニアリサーチャー

奥田 茂雄 パナソニック株式会社 執行役員

加藤 洋一 株式会社 SUBARU 取締役専務執行役員

加藤 良文 株式会社デンソー 専務役員

鎌田 実 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授

河合 英直 独立行政法人 自動車技術総合機構

交通安全環境研究所 自動車安全研究部長

木村 巌 日野自動車株式会社 常務執行役員

工藤 秀俊 マツダ株式会社 執行役員 R&D管理・商品戦略担当

鯉渕 健 トヨタ自動車株式会社 先進安全領域 領域長

重松 崇 株式会社デンソーテン

清水 和夫 国際自動車ジャーナリスト

周 磊 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員

パートナー

須田 義大 東京大学 教授(生産技術研究所 次世代モビリティ研究センター)

モビリティ・イノベーション連携研究機構長

高田 広章 名古屋大学 未来社会創造機構 教授

永井 正夫 一般財団法人日本自動車研究所 代表理事 研究所長

中畔 邦雄 日産自動車株式会社 専務執行役員

中野 史郎 株式会社ジェイテクト シニアフェロー

松本 宜之 本田技研工業株式会社 取締役専務執行役員

山足 公也 日立オートモティブシステムズ株式会社 執行役員 CTO 兼技術開発

本部長

山本 信吾 ルネサスエレクトロニクス株式会社 執行役員常務兼オートモ

ーティブソリューション事業本部長

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<オブザーバー>

一般社団法人日本自動車工業会

一般社団法人日本自動車部品工業会

公益社団法人自動車技術会

一般社団法人 JASPAR

日本自動車輸入組合

一般社団法人電子情報技術産業協会

一般社団法人日本損害保険協会

独立行政法人情報処理推進機構

国立研究開発法人産業技術総合研究所

特定非営利活動法人 ITS Japan

<事務局>

経済産業省

国土交通省

株式会社ローランド・ベルガー

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検討の経緯

自動走行ビジネス検討会本会合

○第 1 回検討会 2015 年 2 月 27 日(金) ・開催趣旨等

・自動走行に係る我が国自動車産業の現状

・自動走行に係る我が国の産学連携の現状

○第 2 回検討会 2015 年 4 月 14 日(火) ・自動走行の将来像

・自動走行に係る協調領域

・自動走行に係る産学連携

○第 3 回検討会 2015 年 5 月 14 日(木) ・これまでの振り返りと今後のスケジュール

・自動走行の将来像の共有

・自動走行に係る産学連携の促進

・自動走行に係るルールメイク(基準・標準等)への戦略的関与

・自動走行に係る IT 業界との連携のあり方

・中間とりまとめ骨子(案)

○第 4 回検討会 2015 年 5 月 29 日(金) ・中間とりまとめ(案)

○第 5 回検討会 2016 年 2 月 15 日(月) ・今後の取組方針(案)

○第 6 回検討会 2017 年 2 月 17 日(金) ・自動走行の実現に向けた取組方針(案)

○第 7 回検討会 2017 年 10 月 4 日(水)

第 1 回「Connected Industries 自動走行分科会」 ・データ協調における取組

・AI システム開発における取組

・人材育成における取組

・自動走行におけるサイバーセキュリティ対策の取組

○第 8 回検討会 2018 年 3 月 15 日(木)

第 2 回「Connected Industries 自動走行分科会」 ・Connected Industries 強化・加速・着手項目とりまとめ

・安全性評価環境づくり検討 WG 成果・今後の取組

・自動走行の実現に向けた取組方針 Version2.0

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○第 9 回検討会 2018 年 10 月 26 日(金)

第 3 回「Connected Industries 自動走行分科会」 ・今後のレベル4(遠隔操作無し)自動走行車について

・経産省・国交省の取組

・オリパラ実証とSIP実証に向けた取組

・自動運転基準化研究所の取組

・安全性評価に向けた取組

・人材育成 WG での議論状況

・年度末に向けたビジネス検討会の議論の方向性

○第 10 回検討会 2019 年 3 月 4 日(月)

第 4 回「Connected Industries 自動走行分科会」 ・自動運転の高度化に向けた取組

・国際的な取組

・人材戦略の取組

・制度整備に向けた取組

・2019 年度に向けた議論の方性

自動走行ビジネス検討会下部 WG/会合

<平成 27 年度>

○平成 27 年度第 1 回将来ビジョン検討 WG 2015 年 9 月 29 日(火) ・開催趣旨等

・自動走行の将来像及び実現に向けて取り組むべき課題

・基準・標準に関する最近の国際動向

○第 1 回将来ビジョン検討 SWG-A,B 2015 年 10 月 29 日(木) ・開催趣旨等

・隊列走行、限定空間での自動走行の将来像及び事業イメージ

・実現に向け取り組むべき課題

○平成 27 年度第 2 回将来ビジョン検討 WG 2015 年 11 月 10 日(火) ・自動走行の将来像

・実現に向けた協調領域

・自動走行(レベル 4)の扱い

○第 2 回将来ビジョン検討 SWG-A,B 2015 年 12 月 2 日(水) ・隊列走行、限定空間での自動走行の事業モデル

・実現に向けた協調領域

○平成 27 年度第 3 回将来ビジョン検討 WG 2015 年 12 月 15 日(火) ・自動走行の将来像

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・実現に向けた協調領域と取組方針

・SWG-A(隊列走行)の検討状況

・SWG-B(限定空間でのレベル 4)の検討状況

・自動走行(レベル 4)

○第 3 回将来ビジョン検討 SWG-A,B 2016 年 1 月 20 日(水) ・隊列走行、限定空間での自動走行の海外ベンチマーク

・隊列走行、限定空間での自動走行の将来像

・将来像の実現に向けた協調領域と取組方針

<平成 28 年度>

○平成 28 年度第 1 回将来ビジョン検討 WG 2016 年 10 月 5 日(水) ・開催趣旨等

・自動走行による将来像の明確化

○平成 28 年度第 2 回将来ビジョン検討 WG 2016 年 11 月 14 日(月) ・自動運転に係る国際基準の動向

・将来像を実現するための協調領域テーマの抽出

○平成 28 年度第 3 回将来ビジョン検討 WG 2016 年 12 月 20 日(火) ・産学連携に向けた取組

・協調領域テーマの工程表の取り纏め

・混在交通下を含む自動走行(レベル 4,5)

<平成 29 年度>

○平成29年度第1回非公式フォローアップ会合 2017年4月11日(火) ・フォローアップ方針

○ 平 成 2 9 年 度 第 1 回 安 全 性 評 価 環 境 づ く り 検 討 W G 2 0 1 7 年 7 月 1 9 日 ( 水 ) ・安全性評価に関する各取組の共有

○平成29年度第2回非公式フォローアップ会合 2017年7月20日(木) ・自動走行用高精度三次元地図の検討

○ 平 成 2 9 年 度 第 2 回 安 全 性 評 価 環 境 づ く り 検 討 W G 2 0 1 7 年 9 月 7 日 ( 木 )

第 1 回「Connected Industries 自動走行分科会」安全性評価 WG ・他業界、海外動向

・データベース構築事業の共有

○ 平 成 2 9 年 度 第 3 回 安 全 性 評 価 環 境 づ く り 検 討 W G 2 0 1 7 年 1 2 月 1 8 日 ( 月 )

第 2 回「Connected Industries 自動走行分科会」安全性評価 WG ・ペガサスプロジェクト中間報告会の共有

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・サイバーセキュリティ戦略

・戦略 SWG の設置

○ 平 成 2 9 年 度 第 1 回 安 全 性 評 価 環 境 づ く り 検 討 W G 戦 略 S W G 2 0 1 8 年 1 月 1 9 日 ( 金 )

第 1 回 「 C o n n e c t e d I n d u s t r i e s 自 動 走 行 分 科 会 」 安 全 性 評 価 W G 戦 略 S W G ・安全性評価に関する業界協調への取組

○平成 29年度第 3回非公式フォローアップ会合 2018年 2月 1日(木)

第 1 回「Connected Industries 自動走行分科会」課題検討 WG ・一般道路における高精度地図

・通信インフラ

・認識・判断データベース

・ソフトウェア、セキュリティ人材

・社会受容性

○ 平 成 2 9 年 度 第 2 回 安 全 性 評 価 環 境 づ く り 検 討 W G 戦 略 S W G 2 0 1 8 年 2 月 2 0 日 ( 火 )

第 2 回 「 C o n n e c t e d I n d u s t r i e s 自 動 走 行 分 科 会 」 安 全 性 評 価 W G 戦 略 S W G ・中間とりまとめ案(工程表含む)

○ 平 成 2 9 年 度 第 4 回 安 全 性 評 価 環 境 づ く り 検 討 W G 2 0 1 8 年 2 月 2 1 日 ( 水 )

第 3 回「Connected Industries 自動走行分科会」安全性評価 WG ・データベース構築事業の活用

・戦略 SWG 中間報告

・安全性評価工程表

・次年度の取組

○ 平 成 2 9 年 度 第 3 回 安 全 性 評 価 環 境 づ く り 検 討 W G 戦 略 S W G 2 0 1 8 年 3 月 1 日 ( 木 )

第 3 回 「 C o n n e c t e d I n d u s t r i e s 自 動 走 行 分 科 会 」 安 全 性 評 価 W G 戦 略 S W G ・業界における取組状況共有

・次年度の取組

<平成 30 年度>

○平成 30年度第 1回非公式フォローアップ会合 2018年 7月 5日(木) ・自動運転基準化研究所

・高精度地図

・通信インフラ

・社会受容性

○平成 30 年度第 1 回人材戦略 WG 2018 年 10 月 2 日(火) ・スキル標準策定

・自動運転チャレンジ構想

・自動走行に関する人材育成の取組み

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○平成 30 年度第 1 回将来課題検討 WG 2018 年 10 月 26 日(金) ・今後のレベル4(遠隔操作無し)自動走行車

・議論すべき論点

○ 平 成 3 0 年 度 第 1 回 安 全 性 評 価 環 境 づ く り 検 討 W G 2 0 1 8 年 1 0 月 2 9

日(月)

第 4 回「Connected Industries 自動走行分科会」安全性評価 WG ・安全性評価の取組みについて

・セーフティ

・セキュリティ

・事故 DB

・人間工学

○ 平 成 3 0 年 度 第 2 回 非 公 式 フ ォ ロ ー ア ッ プ 会 合 2 0 1 8 年 1 2 月 1 2 日 ( 水 ) ・高精度地図

・ユースケース

・通信インフラ

・社会受容性

・トラックの隊列走行

・ラストマイル自動走行実証実験

・自動バレーパーキング

○平成 30 年度第 2 回将来課題検討 WG 2018 年 12 月 12 日(水) ・今年度の論点

・事業者・開発者の視点からのご意見

○平成 30 年度第 3 回将来課題検討 WG 2019 年 1 月 23 日(水) ・将来課題課題検討 WG の中間報告(案)

・限定「面」での自動運転サービス事業者・開発者の視点からのご意見

○ 平 成 3 0 年 度 第 2 回 安 全 性 評 価 環 境 づ く り 検 討 W G 2 0 1 9 年 1 月 2 9

日(火)

第 5 回「Connected Industries 自動走行分科会」安全性評価 WG ・安全性評価の取組みについて

・セーフティ

・セキュリティ

・事故 DB

・人間工学

・今年度の取り纏め(案)

○平成 30 年度第 2 回人材戦略 WG 2019 年 2 月 27 日(水) ・スキル標準

・自動運転チャレンジ ・今年度の取り纏め(案)