高齢者虐待対応の支援と...

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高齢者権利擁護支援センター作成 講義2 1 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて 用語の確認 区市町村・・・高齢者虐待対応所管課 地域包括・・・高齢者虐待対応の委託を受けた地域 包括支援センター(同様の委託を受けた在宅介護支 援センターも含む) 関係機関・・・高齢者虐待対応に関わる機関で、上 記を除く関係機関(ケアマネジャー等介護サービス 事業者、社会福祉協議会や保健所、虐待対応につい て委託を受けていない在宅介護支援センター等) 2 1

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高齢者権利擁護支援センター作成

講義2

1

高齢者虐待対応の支援と基本的流れについて

用語の確認 区市町村・・・高齢者虐待対応所管課

地域包括・・・高齢者虐待対応の委託を受けた地域包括支援センター(同様の委託を受けた在宅介護支援センターも含む)

関係機関・・・高齢者虐待対応に関わる機関で、上記を除く関係機関(ケアマネジャー等介護サービス事業者、社会福祉協議会や保健所、虐待対応について委託を受けていない在宅介護支援センター等)

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高齢者虐待防止法の「虐待」の考え方〔虐待の種別〕

身体的虐待

心理的虐待

放棄放任

性的虐待

経済的虐待

一般的にイメージする虐待(事件性のある虐待)

高齢者虐待防止法が規定した高齢者虐待(自覚を問わない)

虐待の小さな芽から市町村が責任をもって防止的に対応!

※不作為責任を問われることもあります。

「自覚」「悪意」は問わない。「いじめてやろう」「虐げよう」と思っているかどうかは、無関係

3

高齢者虐待対応における留意事項

虐待に対する「自覚」は問わない

高齢者の安全確保を優先する

常に迅速な対応を意識する

必ず組織的に対応する

関係機関と連携して援助する

適切に権限を行使する

出典)厚生労働省マニュアルp.14より 4

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身体的虐待とは

暴力的行為で痛みを与えたり、身体にあざや外傷を与える行為

(例)

・平手打ちする。つねる。殴る。蹴る。やけど・打撲させる

・刃物や器物で外傷を与える など

本人に向けられた危険な行為や身体に何らかの影響を与える行為

(例)

・本人に向けて物を壊したり、投げつけたりする

・本人に向けて刃物を近づけたり、振り回したりする など

養護者が

5

⇒お役立ち帳P4-5「養護者による高齢者虐待類型の例」参照

本人の利益にならない強制による行為によって痛みを

与えたり、代替方法があるにもかかわらず高齢者を乱

暴に取り扱う行為(例)

・医学的判断に基づかない痛みを伴うようなリハビリの強要

・移動させるときに無理に引きずる。無理やり食事を口に入れる など

外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為(例)

・身体を拘束し、自分で動くことを制限する(ベッドに縛り付ける、ベッ

ドに柵を付ける、つなぎ服を着せる。意図的な薬の過剰服用により動き

を抑制する等)

・外から鍵をかけて閉じ込める。中から鍵をかけて長時間家の中に入れ

ない など

外傷の生じるおそれのある暴行6

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心理的虐待とは

脅しや侮辱などの言語や威圧的な態度、無視、嫌がら

せ等によって精神的に苦痛を与えること

(例)

・老化現象やそれに伴う言動などを嘲笑したり、それを人前で話すなどにより

高齢者に恥をかかせる

・怒鳴る、ののしる、悪口を言う

・侮辱を込めて、子どものように扱う

・排泄交換や片づけをしやすいという目的で、本人の尊厳を無視してトイレに

行けるのにおむつをあてたり、食事の全介助をする

・台所や洗濯機を使わせないなど、生活に必要な道具の使用を制限する

・家族や親族、友人等との団らんから排除する など

養護者が

7

放棄放任とは

意図的であるか、結果的であるかを問わず、介護や生活の世話を行っている者が、その提供を放棄または放任し、高齢者の生活環境や、高齢者自身の身体・精神的状態を悪化させていること

(例)

・入浴しておらず異臭がする、髪が伸び放題だったり、皮膚が汚れている

・水分や食事を十分に与えられていないことで、空腹状態が長時間にわたって続

いたり、脱水症状や栄養失調の状態にある

・室内にごみを放置するなど、劣悪な住環境の中で生活させる など

養護者が

8

4

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専門的診断や治療、ケアが必要にもかかわらず、高齢者が必要とする医療・介護保険サービスなどを、周囲が納得できる理由なく制限したり使わせない、放置する

(例)

・徘徊や病気の状態を放置する

・虐待対応従事者が、医療機関への受診や専門的ケアが必要と説明している

にもかかわらず、無視する

・本来は入院や治療が必要にもかかわらず、強引に病院や施設等から連れ帰る

など

同居人等による高齢者虐待と同様の行為を放置する(例)

・孫が高齢者に対して行う暴行や暴言行為を放置する など

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放棄放任(ネグレクト)の判断ポイント

放棄放任によって、高齢者の生活環境や身体・精神状態が悪化し見過ごせない状態か?

放棄放任の虐待では、虐待者の7割が虐待しているという「自覚なし」

介護・世話についての知識や技術、能力、時間が不十分であるために不本意ながら高齢者の尊厳を損なうような生活に陥っていることも多い

一方で、意図的に必要な介護・世話を行わない深刻な事例もある

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性的虐待とは

本人との間で同意が形成されていない、あらゆる形態の性的な行為またはその強要

(例)

・排泄の失敗に対して懲罰的に下半身を裸にして放置する

・排泄や着替えの介助がしやすいという目的で、下半身を裸にしたり、下着の

ままで放置する

・人前で排泄行為をさせる。オムツ交換をする

・性器を写真に撮る、スケッチをする

・キス、性器への接触、セックスを強要する

・わいせつな映像や写真を見せる

・自慰行為を見せる

養護者が

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経済的虐待とは

本人の合意なしに財産や金銭を使用し、本人が希望す

る金銭の使用を理由なく制限すること

(例)

・日常生活に必要な金銭を渡さない、使わせない

・本人の自宅等を本人に無断で売却する

・年金や預貯金を無断で使用する

・入院や受診、介護保険サービスに必要な費用を支払わない など

※経済的虐待だけは、虐待の主体に「別居の親族」が含まれる

養護者および別居の親族が

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経済的虐待の判断ポイント 家族が本人の財産を管理することについて高齢者が納得

しているか?

財産の管理について高齢者の意思に基づいているか?

合意せざるを得ない状況におかれていないか?

本人の意思が表面的なものである可能性は?

高齢者本人の生活や医療・介護に支障が出ていないか?

<高齢者の判断能力が不十分な場合>

財産を管理している本人との関係は良好か?

客観的にみて本人の利益にかなっているかどうか?

怯えは?

諦めは?

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マルトリートメントmaltreatment

についてマルトリートメントmaltreatmentは、

「虐待」「酷使」「冷遇」と訳されるものである。

Mal‐は「悪・不良」「不」「不完全」

treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」

(参考)マルトリートメント

諸外国では、「マルトリートメント」という概念が一般化している。諸外国における「マルトリートメント」とは、身体的、性的、心理的虐待及びネグレクトであり、日本での虐待に相当する。

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身体拘束と高齢者虐待との関係 「緊急やむを得ない場合」以外の身体拘束は、高齢者虐待に

該当する。(養護者による虐待、養介護施設従事者等による虐待、どちらも考えられ得る)

「緊急やむを得ない場合」とされる例外の3要件

1)切迫性 利用者本人又は他の利用者等の生命又は身体が危険にさらされる

可能性が著しく高いこと

2)非代替性 身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと

3)一時性 身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること

上記に加え、適正手続きが必要*個人ではなくチームでの判断*本人や家族への説明(目的、方法、時間帯、期間などできるだけ詳しい説明が必要)

「家族の同意」があれば、例外3要件が必要ないということはないので注意が必要*観察と再検討による定期的再評価(尊厳への配慮)⇒必要なくなれば、速やかに解除*記録の義務付け (2年間保存)

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身体拘束の例 ポイントは行動の自由を制限しているかどうか?

①徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。

②転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。

③自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。

④点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。

⑤点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。

⑥車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。

⑦立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。

⑧脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。

⑨他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。

⑩行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。

⑪自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。出典:「身体拘束ゼロへの手引き」(平成13 年3 月:厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」発行)

※部屋や家の外側から鍵をかけ、中から出られないようする所謂「外鍵」

も該当する 16

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ケガの予防や認知症の行動障害の防止策と思われがちな「身体拘束」だが、問題となっている行動の目的や意味が理解されず、適切な介護や支援が行われないことで、高齢者本人の状態はむしろ悪化し、心身に重大な影響が生じることが明らかになっている

身体拘束

悪循環

身体機能の低下

周辺症状の増悪

リスクの増大

さらなる身体拘束

身体機能の低下

周辺症状の増悪

リスクの増大

家族が「何に困っているのか」を具体的に尋ね、どうしたら身体拘束を外して適切なケアができるのかを、チーム(地域包括支援センターを含むチーム)で考えていく必要がある。家族に「身体拘束は虐待だ」と伝えることで家族の反発を招きやすいので、どのような伝え方をするかも含めて、地域包括支援センターに相談を!

・ベルト、柵、紐等による行動制限・つなぎ服やミトン型手袋の使用・立ち上がりを妨げる椅子の使用・向精神薬などの過剰服用・鍵付きの居室などへの隔離

筋力低下、関節の拘縮、心肺機能の低下などを招く

不安や怒り、屈辱、諦め等から、・ 認知症の進行や周辺症状の増悪を招く・ 意欲が低下し、結果的にADLの低下を招く

拘束しているが故に、無理な立ち上がりや、柵の乗り越えなどにより、重大な事故が起きる危険も

17

セルフネグレクト(自己放任)一人暮らしなどの高齢者で、認知症やうつなどのために生活能力・

意欲が低下し、極端に不衛生な環境で生活している、必要な栄養摂取ができない等、客観的にみると本人の人権が侵害されている事例

(「東京都高齢者虐待対応マニュアル」p.1より引用)

①判断能力が低下している場合②本人の健康状態に影響が出ている場合③近隣との深刻なトラブルになっている場合など

((社)日本社会福祉士会『市町村・地域包括支援センター・都道府 県のための

養護者による高齢者虐待対応の手引き』平成23年3月p.9より引用)

↓地域包括支援センターの権利擁護業務として関わる

「虐待に準ずる対応」を行う

例)事実確認をして計画的支援を行う

老人福祉法による対応として、必要に応じ「やむを得ない事由によ

る措置」や「成年後見制度の首長申立」を行っていく 18

厚生労働省通知あり(別紙2参照)

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虐待対応の支援とは

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介護保険のケアマネジメント

権利擁護虐待対応

介護保険主治医意見書

介護保険認定調査票

確実な情報が定形化されたものがない

依頼あり

依頼なし

依頼あり

ケアプラン作成

介入的支援

関わり開始

関わり開始

支援の必要性が不明な状況

支援の必要性や介入の根拠となる「事実の裏付け」が必要!

依頼なし

確実な情報が定形化されている

計画的支援が必要・・・

支援の必要性が

明らかな状況

支援の必要性が

明らかな状況

虐待の事実

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可能性

感性

個性

能力

生命力

競争比較

過剰な期待

差別

暴力

無視

【被害者の心理】

恐怖と不安

⇒安心ではない

無力感

⇒自信がない

選択肢がない

⇒自由でない

※森田ゆり『エンパワメントと人権』(2005)を参考に作成

「パワレスの状態」暴力や暴言を受け続けた人の特徴

二次被害に注意!21

現時点で把握している情報

気になること

何が起きていると予測されるか?その状態が続いた時にどうなるか(リスク)

訪問(面接)時に行う必要のあること

何が起きていて(気になることはなぜ起きたか)

その結果、どのような状態になっているか(本人・養護者の心身の状態等)

何を確認するか その場で対応する可能性のあることは?

(考え方)

あざだらけの高齢者をみかけた(近隣からの通報)

あざだらけ 暴力による可能性

乱暴な介護による可能性

転倒による可能性視力の低下・悪化ADLの低下

薬による可能性

あざによる痛み・腫れあざ以外の被害の可能性おびえの可能性悲鳴の可能性

おびえの可能性介護方法がわからなくて養

護者が困っている可能性関係機関も困っている可能

視力の低下・悪化やADLの低下から他の困りごとを抱えている可能性

困りごとに対応できない要因(サービス利用できない経済状況等)を抱えている可能性

あざができてしまうことを養護者が気にしている可能性

硬膜下血腫等

の重大な怪我

本人の自死

養護者が介護を止

めてしまう可能性

関係機関の指導

への反発(契約解除)

追い詰められた養護者による虐待行為の発生

本人の受傷部位の確認心身の状況確認、おびえの確認なぜ、あざができているのかを本人や養護者に尋ねる悲鳴等を聞いたことがある人がいるか確認警察が出動したことがあるかの確認関係している機関があるか、関係機関の今までのサポートを確認する

転倒のしやすさを確認するどこで、何にぶつけているのか?

どのような薬がいつ、どこから処方されているのかを確認する

緊急受診の支援

「家を出たい、保護してほしい」という本人からの訴えへの対応(緊急一時SS利用)

「殺してしまうかもしれない」等の養護者からの訴えに対しての対応

転倒リスクや受傷リスクを減らすための環境整備

どう裏付けをとるか?

具体的に何を把握するか?

対応のために確認しておくことは?

リスク回避の為に何をするか?

受診やSS利用についての本人の意向経済状況(使える現金)、保険証の確認

虐待対応における事実確認の思考プロセス

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現時点で把握している情報

気になること

何が起きていると予測されるか?その状態が続いた時にどうなるか(リスク)

訪問(面接)時に行う必要のあること

何が起きていて(気になることはなぜ起きたか)

その結果、どのような状態になっているか(本人・養護者の心身の状態等)

何を確認するか その場で対応する可能性のあることは?

(考え方)

あざだらけの高齢者をみかけた(近隣からの通報)

あざだらけ 暴力による可能性

乱暴な介護による可能性

転倒による可能性視力の低下・悪化ADLの低下

薬による可能性

あざによる痛み・腫れあざ以外の被害の可能性おびえの可能性悲鳴の可能性

おびえの可能性介護方法がわからなくて養

護者が困っている可能性関係機関も困っている可能

視力の低下・悪化やADLの低下から他の困りごとを抱えている可能性

困りごとに対応できない要因(サービス利用できない経済状況等)を抱えている可能性

あざができてしまうことを養護者が気にしている可能性

硬膜下血腫等

の重大な怪我

本人の自死

養護者が介護を止

めてしまう可能性

関係機関の指導

への反発(契約解除)

追い詰められた養護者による虐待行為の発生

本人の受傷部位の確認心身の状況確認、おびえの確認なぜ、あざができているのかを本人や養護者に尋ねる悲鳴等を聞いたことがある人がいるか確認警察が出動したことがあるかの確認関係している機関があるか、関係機関の今までのサポートを確認する

転倒のしやすさを確認するどこで、何にぶつけているのか?

どのような薬がいつ、どこから処方されているのかを確認する

緊急受診の支援

「家を出たい、保護してほしい」という本人からの訴えへの対応(緊急一時SS利用)

「殺してしまうかもしれない」等の養護者からの訴えに対しての対応

転倒リスクや受傷リスクを減らすための環境整備

どう裏付けをとるか?

具体的に何を把握するか?

対応のために確認しておくことは?

リスク回避の為に何をするか?

受診やSS利用についての本人の意向経済状況(使える現金)、保険証の確認

虐待対応における事実確認の思考プロセス

23

地域包括支援センターが行っている通常の支援でも、本人や介護者の心身の状態把握は行っている

緊急対応の必要性を見極めるには、より具体的な把握が必要とされる。

具体的事実の確認をしていくことも、虐待対応の場合には、重要となる

①今後の悪化リスク予測の為

②虐待の事実がある場合、家族の拒否があったとしても、行政が介入して支援を行う根拠となる

リスク回避のために、その場で行わなければならない可能性のあることを見立てておく必要がある

①その後の 介入拒否が起こる可能性

②費用をどうするかという問題

家族が反対していても、本人のサービス利用の意思表示や家を出ることの意思表示がしっかりと、ぶれずにある場合には、「本人の意向を尊重した支援」を行う①本人の意思・意向②本人の判断能力

※緊急性を判断するためには、医療情報が重要となる

※緊急対応を行う上で、経済情報が重要となる

支援計画とは

高齢者の権利擁護(虐待解消)とそのための養護者への支援を目的として、

区市町村の責任に基づき

正確な情報とアセスメント・要因分析に基づき作成

虐待対応における課題の明確化

課題が解消できたか評価できるもの・評価日の設定

具体的目標、支援や関与方法、役割分担等の提示

何をめざして、いつ(までに)、誰が、何を、どのようにするのか、誰に報告するのか(進行管理は誰か)

予測される事態の明確化と生じた場合の対応方法

緊急時や不測の事態に対する対応方法の提示(連絡方法、情報収集先等)

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支援計画について① 目標を持った、迅速で適切な支援の実施

生命と生活を護るための、法的責任に基づいた支援

終結を目指して、段取りや手順を踏んだ支援の実施

虐待の発生要因は複雑に絡み合っていることが多い

当事者が支援を求めていないことが多い

⇒段取り・順番を誤った対応を行うと、介入拒否にあいやすい

25

東京都パンフレット「高齢者虐待防止と権利擁護」を基に一部改変

虐待

認知症の無理解・無関心 孤立、指導的態度

単身、老老、認認老障、障老介護の増加

ニーズに合わない医療・介護サービスの提供

虐待の容認・あきらめ

社会環境などの要因

経済的・精神的依存力関係の変化折り合いの悪さ長年続く暴力世代間・家族間

連鎖

人間関係

介護負担、排泄介助のストレス心身の疾病・障害

依存、性格・パ-ソナリテイ-の偏り介護への一方的思い込み

就労困難・無職経済的困窮

支援拒否、消極的態度金銭ねらい

認知症の理解

介護をする方の息抜きの場づくり

支えあい・理解

適切なアセスメント

高齢者

心身の疾病・障害介護依存・医療依存

能力の低下(意思表出、判断、金銭管理

財産管理)性格・パ-ソナリティ-の偏り

暴力への慣れ、あきらめ、罪悪感支援の拒否経済的困窮

虐待者

(公財)東京都福祉保健財団『区市町村職員・地域包括支援センター職員 必携 高齢者の権利擁護と虐待対応 お役立ち帳』(以下、お役立ち帳という)p.52「高齢者虐待の要因」参照

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支援計画について② 関係機関と連携協働したチームとしての支援

「誰が、いつ、どのような役割で、何をするか、どのように連絡報告するか」について勘違いや洩れがないようにする

チームの一員として、支援の全体像を理解し、計画的な支援が提供できるように体制を整える(支援者の安心にもつながる)

信頼を得るためにも、高齢者と養護者の支援は、担当者を分けて実施

説明責任 根拠に基づく、合議によって決定した支援であることの記

録 訴訟リスク、情報開示請求に備える

⇒個別ケース会議での支援計画の策定が必要27

参考)ケース会議の参加メンバー

(厚労省マニュアルp.57より)

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虐待対応上の課題のとらえ方高齢者は深夜、頻繁に徘徊や異食を始める

高齢者は専門医を受診していない

長女は働きながら無年金の高齢者の介護をしている

高齢者の眼球が損傷している。

受診をさせていない。

☆虐待を引き起こした(す)要因で、支援が必要な状況

☆虐待によって生じている、対応が必要な事態どちらも

対応すべき課題

長女が高齢者を殴っている

課題を明らかにするためには

事実確認が重要

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虐待対応と同意 虐待対応は、区市町村の虐待対応の責任において行うもの

被虐待高齢者の意思の尊重は求められるが、必ずしも被虐待高齢者の同意を必要とするわけではない。

判断能力の低下が明らか、パワレス状態等があり、逃げられないようなADLの場合は保護を優先することがある

養護者には本人のことを勝手に決めてよい権限はなく、養護者の同意を得る必要はない。

例)被虐待高齢者が認知症等で市町村長による

成年後見の申立てが必要

例)被虐待高齢者が認知症、虐待によるパワレス

状態、健康状態の悪化などで自ら助けを求め

ることが困難で保護が必要

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緊急対応の必要性を見極める視点 今すぐに必要な対応は何か?

虐待の要因を分析する視点 何が虐待を引き起こしているのか?

今後予測される展開に備える視点 これから予測される展開と、そのために必要な対応は何か?

人権・権利を意識した救急医療的ソーシャルワーク 個人の状態、個人の権利をまずとらえる

「虐待をした人」を中心に考えるのではなく、「虐待を受けた高齢者」の権利をどう護るか、そのために必要な養護者支援は何か?を考える

利益衡量の視点での選択

アセスメントの視点

⇒お役立ち帳p.46 「課題分析・支援課題整理シート」参照

31⇒お役立ち帳p.34 「利益衡量」参照

緊急性が高いとされる状況例 生命が危ぶまれるような状況が確認される、もしくは予測される

すでに重大な結果を生じている。

頭部外傷(血腫、骨折)、腹部外傷、意識混濁、重度のじょく創、重い脱水症状、脱水症状の繰り返し、重症のやけど、栄養失調、全身衰弱、強い自殺願望など

感染症や重度の慢性疾患があるのに医療を受けさせていない。

うめき声が聞こえるなどの深刻な状況が予測される情報がある。

器物(刃物、ビン、食器など)を使った暴力の実施もしくは脅しがある。

年金、預貯金の搾取や財産の使用制限によって、電気・ガス・水道等がストップしている。食料が底をついている。医療や必要な介護を利用させないことで状態が悪化している。

自宅から締め出され、長時間戸外ですごしていることにより心身状況の悪化が見られる。

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本人や家族の人格や精神状態に歪みを生じさせている、もしくはそのおそれがある。

虐待を理由として、本人の人格は精神状態に著しい歪みが生じている。 うつ症状や解離状態の出現、養護者をみるとおびえる、震える等

家族の間で虐待の連鎖が起こり始めている。

虐待が恒常化しており、改善の見込みが立たない。

虐待が恒常的に行われているが、虐待者の自覚や改善意欲が見られない。

虐待者の人格や生活態度の偏りや社会不適応行動が強く、介入そのものが困難であったり改善が望めそうにない。

暴力や世話の放棄を繰り返し、支援機関との接触。助言に応じないまま状況を悪化させている。

深刻に高齢者本人の保護を求めている。

高齢者本人が明確に保護を求めている。

高齢者本人から「殺される」「○○(養護者)が怖い」「何も食べていない」等の訴えがあり、実際にその兆候が見られる。

養護者より「何をするかわからない」「殺してしまうかもしれない」等の訴えがあり、切迫感がある。

※「口に出して表現できているから大丈夫」というとらえ方をしないことに注意!

33

内容と対応段階の確認

I. 発見の段階

II. 相談・通報の受付の段階

III. 相談・通報内容の共有の段階

IV. 事実確認の段階

V. コアメンバーで方針決定する段階

VI. 緊急対応・更なるアセスメントの段階

VII. 終結に向けて支援体制を計画的に整えていく段階

VIII.支援の評価・見直しの段階

IX. 虐待対応の終結の段階

虐待が再発しないよう、虐待の要因に働きかけ、生活を安定させていく

プロセス

「緊急性」を見極め、必要な「緊急対応」を判断し、

実施していくプロセス

34⇒お役立ち帳p.2~3 「高齢者虐待対応の全体フロー図」参照

17

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発見の段階

35

事例(発見段階)

前任のケアマネジャーの退職により、新たに財田フクさん(85歳女性)を担当することになったケアマネジャーは以下の状況が気になりだしました。 財田フクさんの心身の状況に対して、長男の保さん(63歳)の介護

がうまくできていない気がする・・・

フクさんは保さんの「大きな声」に怯えているような気がする・・・

「何度言ったらわかるんだ!」「何度も同じことを言わせるな!」「こぼすな!」「汚すな!」

長年関わりのあるヘルパーが、「保さんは前から少し変わっているから・・・」と、不適切さに慣れてしまっているようなところが気になる・・・

36

18

Page 19: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

早期発見のための啓発 発見のきっかけは「介護サービス事業者からの連絡」

が 多

保健医療福祉関係者等が発見の目をもっていく必要がある

下記を伝えつつ、早期発見早期通報を促進する

早期発見努力義務(法第5条)

虐待のとらえ方(自覚を問わない)

通報義務(法第7条)

通報義務>守秘義務

「高齢者虐待を受けたと思われる高齢者」の発見で通報でき、通報の際に証拠はなくても良い

通報の際に高齢者本人の同意は必要ない

通報者についての秘密保持義務(法第8条)

誰からの通報かわからないように対応を開始している37

区市町村・地域包括・関係機関の役割

区市町村の役割

早期発見の努力

「発見の目」を育てる高齢者虐待防止啓発の体制整備 専門的に従事する職員の確保(第15条)

地域包括支援センターの役割

早期発見の努力

「発見の目」を持つ人とつながる「顔の見える関係づくり」

関係機関の役割

早期発見の努力38

19

Page 20: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

高齢者の支援チーム高齢者虐待?の発見

39

相談・通報の受付の段階

40

20

Page 21: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

事例(相談・通報受付段階) 介護保険の代理申請のため、地域包括支援センターに

ケアマネジャーが来訪し、以下を話しました。

「先週、転居のため退職されるケアマネジャーから担当の引継ぎを受けた財田フクさんのことで、気になることがあるのです。介護をしている長男保さんの、フクさんに対する態度や認知症への理解がどうも気になって・・・。医療機関への受診や介護サービスの利用に拒否的で、私も怒鳴られてしまい・・・フクさんに対してもきつい態度をしているようで、心配なんです。」

話を聞いた地域包括職員は「包括的・継続的ケアマネジメント支援」として相談を受け付けました。

41

相談の中での「気づき」 区市町村・地域包括支援センターは、日常の相談の

中で、「虐待かもしれない」「不適切なケアの状況があるかもしれない」と感じたら、虐待の通報としてとらえ、必要事項を聞き取ることが大切

不適切な介護や不十分な介護

サービスを利用したがらない状況 等

特にケアマネからの「困難事例」の相談は注意

高齢者虐待についての知識を地域包括支援センター等、通報窓口に立つ職員が全員がもつことが求められる

地域包括の三職種で、すべての総合相談の内容について確認し合い、通報の見逃しを防止する仕組みを整えておく必要あり

42

21

Page 22: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

区市町村・地域包括・関係機関の役割

区市町村の役割

通報窓口の設置(夜間・土日の対応のルールづくり)

関係機関への通報窓口の周知(庁内を含む)

苦情対応窓口や警察との連携体制が必要

相談・通報の受付窓口として通報を受ける

地域包括支援センターの役割

相談・通報の受付窓口として通報を受ける

関係機関の役割

通報の義務43

高齢者の支援チーム

相談

地域包括支援センター

44

22

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相談・通報内容の共有の段階

45

事例(相談・通報内容共有段階) その後の地域包括支援センター内での協議で、この相談

内容に「心理的虐待、放棄放任であると思われる」と判断。市へ通報を受付けたことを報告し、情報収集と事実確認の方法を協議して以下を決定しました。

関係機関(ケアマネジャー、訪問介護事業所、主治医、民生委員、社会福祉協議会など)からの情報収集を行う

庁内情報(世帯構成、経済状況、保健所との関わり)の情報収集を行う

「おむつ助成制度説明」を口実に、地域包括職員2名がケアマネと共に訪問する形で事実確認を実施する

この際、事実確認で訪問した際に受診の必要性が出た場合の受診方法や、受診を拒否された場合の方法についても、事前に協議

46

23

Page 24: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

相談・通報内容の共有 組織として相談・通報内容を判断する仕組み作り、「一人で

判断し決定しない」ように工夫 委託包括内で協議 → 区市町村担当者へ報告・協議の仕組みルール化

組織内で意見が異なる場合も、遅滞なく区市町村担当者へ報告する事が重要

以下の項目について、共有・協議する

① 相談・通報内容の確認

② 緊急対応の必要性の予測 110番対応や119番対応になる前の緊急性

③ どのような情報を集めるか、「情報収集項目」の選定 庁内情報を迅速にかき集められる体制を整備しておくと、初動期対応をス

ムーズに実施できる

④ 事実確認の方法等の協議 通報者が誰かが分からないように、別の理由をつけて訪問(法第8条)

47

区市町村・地域包括・関係機関の役割

区市町村の役割

相談・通報受付後の対応のルールを明確にしておく

通報内容を共有し、その後行う事実確認の方針を共有する

地域包括支援センターの役割

相談・通報受付後の対応のルールを明確にしておく

通報内容を共有し、その後行う事実確認の方針を共有する

関係機関の役割

(この共有はコアメンバー間での共有を指しているため、特に役割はない)

48

24

Page 25: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

高齢者の支援チーム

相談・通報内容の共有と協議

地域包括支援センター

49

事実確認の段階

50

25

Page 26: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

事例(事実確認段階) 地域包括職員2名とケアマネジャーとで本人宅を訪問し、

以下が把握できた。

本人について

脱水と低栄養による衰弱が見られ、受け答えの反応が前回のケア

マネ訪問時より悪くなっている(保健師によるバイタルチェック、全身の確認)

排泄介助が適切に行われておらず、褥そうが悪化する可能性が高い

長男から日常的に怒鳴られている可能性が高い(この訪問中も長男は怒鳴っていて、本人が何度も謝っている)

本人の意思表出は、衰弱もあるためか、困難。自分の健康状態に

ついて本人の認識ができる状況ではない

低栄養状態、ADL全介助の状況から、危機回避能力はない

長男について

長男の体調が、「 近良くない(長男談)」(不眠、イライラ、

無気力あり) 51

事実確認とは 事実確認とは

高齢者虐待に関する「客観的事実」の確認を行う調査のことで、通報があれば必ず区市町村の責任で、行わなければならないもの

※裏付けをとっていく作業→記録が大切

事実確認の内容

高齢者の安否確認(直接目視が原則)

虐待に関する情報、高齢者や養護者等の意向や状況の確認

関係機関からの情報収集

※ケアマネジャーや民生委員に依頼して、単独で行ってもらうものではないと、されています。

52

26

Page 27: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

区市町村・地域包括・関係機関の役割 区市町村

事実確認は地域包括への委託が可能であるが、区市町村が関与することが原則である

緊急対応の必要性が高い場合には、地域包括と一緒に訪問を実施する

情報が集めにくい関係機関からの情報収集や公用請求を行う役目もある(医療機関、年金事務所、他の自治体からの情報等)

地域包括支援センター 事実確認を中心的に実施していくことが期待されている。どのよ

うに高齢者や養護者、関係者から情報を収集し、分析していくかという点(アセスメント)について専門的役割を果たしていく

関係機関 事実確認に協力(訪問調査の同行、情報提供)する

53

⇒お役立ち帳p.30 「区市町村担当所管による直接訪問・・・」参照

高齢者の支援チーム

事実確認の調査

地域包括支援センター

連携

54

27

Page 28: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

コアメンバーで方針決定をする段階

55

事例(コアメンバーでの方針決定段階①)

訪問先から、電話で地域包括職員と市職員とで、医療機関受診について協議しました。

地域包括職員は、訪問先から「早急な受診と一時的分離を要する状態である」と市役所へ報告。市は、地域包括と協議の上で、受診支援後は一時的に分離(入院あるいはショートステイ先)を行い、健康状態と生活環境の組み立てなおしのための時間が必要と判断

市が、医療機関受診及び入院のための調整および、入院が必要ない場合のショートステイ先の確保を担当

高齢者を医療機関に受診させることに対して、長男の拒否が続いた場合の地域包括の訪問中の対応についても、電話であらかじめ協議した

56

28

Page 29: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

事例(コアメンバーでの方針決定段階②) その後、訪問中に医師の往診がすぐに入り入院の必要性を判

断、高齢者は治療および検査目的で4日間入院となりました。

訪問および入院支援の後、市役所にて以下を決定。• 心理的虐待と放棄放任の虐待がある

• 本人について

• 4日間では、在宅生活を支える支援の組み直しが難しいと判断し、緊急ショートステイの利用先を確保することとする。

• 病院との打ち合わせ(長男が連れ去ろうとした場合の対応や、本人が帰りたくなった状況での対応について)

• 長男について

• 健康状態がよくないため、安否確認が必要

• 長男へどのような支援が必要か、アセスメントが必要

57

コアメンバーで協議する内容 高齢者虐待についての判断

高齢者虐待の事実の有無

虐待が有るか、無いか、疑いがある状態か

高齢者虐待の構造

どの程度の虐待が、なぜ、どのように起こっているのか

高齢者虐待ではない場合の対応

予防的関与や地域包括の権利擁護業務としての関与が必要か

今後の対応・支援方針

緊急対応の判断

権限行使の必要性や、今すぐに対応しなければいけないことは何か?

今後の情報収集の方針

今後、確認しなければならない情報は何か?

役割分担や手順

初回のコアメンバー会議は、虐待の有無や構造が把握できていない状態で行うことも多い。「虐待があるかどうか不明」あるいは「疑いがある」という場合は事実確認・情報収集を続けることが必要

58

お役立ち帳 p.40-41「コアメンバー会議録」参照

29

Page 30: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

家族分離の方法①介護保険サービス等の契約利用

虐待対応への協力の場合、定員を5%超過した場合であっても介護報酬の減算対象とならない(措置でも契約利用でも)

費用負担発生、本人の契約能力や緊急連絡先が求められる(契約能力が無い場合には後見人が必要)

緊急一時保護事業 区市町村がそれぞれの要綱に基づき実施。費用負担、条件、利用期間等の仕組みが区市町村によって異なる

(状況に応じて、本人負担分を区市町村が負担できるようにしている区市町村あり)

養護老人ホームへの措置入所

出入りが自由なところが多いため、面会制限が必要なケースの場合には、本人の安全を守る上で困難を伴いやすい

軽費老人ホーム、サービス付き高齢者住宅の契約利用

費用負担発生、本人の契約能力や緊急連絡先が求められる(契約能力が無い場合には後見人が必要)

出入りが自由なところが多いため、面会制限が必要なケースの場合には、本人の安全を守る上で困難を伴いやすい

女性相談利用によるシェルター利用転居

ADL自立、判断能力の低下がない女性高齢者で配偶者間暴力を受けている場合には、女性相談の利用が可能

シェルター利用やアパート転宅について相談支援を受けることも可能

59

親族・友人宅への避難 協力者が養護者に攻撃されないようどう守るかという視点と、協力者から新たな虐待を受けないかという視点の両方が必要

本人に判断能力の低下がある場合、成年後見制度の活用が求められる

やむを得ない事由による措置での施設入所

講義3 講義資料を参照原則、本人の同意は必要になるが、家族の同意は不要

養護受託による分離 老人福祉法第11条第1項第3号の養護受託者に医療機関や老人保健施設等になってもらい、行政権限によって分離する

家族分離の方法②

分離を 終手段とは考えない

「一時分離」により支援体制を整えられるかどうか、見極める方法あり

一時分離後、自宅に戻す場合・・・「根拠」や「約束」

成年後見制度の活用の必要性の見極め

お役立ち帳 p.90-91 「高齢者と養護者の分離の方法」参照 60

お役立ち帳 p.126 「児童福祉の【一時保護】と高齢者福祉の【やむを得ない事由による措置】」参照

30

Page 31: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

区市町村・地域包括・関係機関の役割 区市町村

虐待の有無の判断や緊急性の判断、区市町村権限行使をするか否かについての判断は、区市町村に生じている法的責任に基づいて行われなければならない

緊急性が高い場合だけでなく、緊急性が低いという場合でもそのことを区市町村の責任で判断しておく必要がある

地域包括支援センター 区市町村が適切に上記の判断ができるよう、中心的に進めてきた

事実確認の結果について、専門性に基づいたアセスメントも含めて区市町村に報告する役割、および今後どのように動くかという方針を区市町村と共に協議する役割を担う

関係機関 虐待の有無や権限行使の判断には、関係機関等は「直接には」加

わらない。関係機関としての意見は、この前の事実確認・情報収集の段階で、区市町村・地域包括へ挙げておく 61

高齢者の支援チーム

コアメンバーでの方針決定

地域包括支援センター

62

31

Page 32: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

緊急対応・更なるアセスメントの段階

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事例(緊急対応と更なるアセスメント段階①)

• 緊急対応• 往診による緊急受診と検査入院(事実確認訪問中に実施済み)の後、

緊急ショートステイ利用支援を実施した。また、本人の入院・入所中も長男の安否確認を民生委員の協力の元で実施してきた

• 現在本人は緊急ショートステイ利用中(あと5日間で終了予定)

• 虐待の構造把握• 1か月前から本人の失禁が多くなり、排泄介助の負担が増えたことに

よって長男の心身に負担がかかり、長男の体調が悪化。そのため、精神的不安から長男が本人を怒鳴ることが多くなっていた

• 長男の体調が悪くなったことで、外出が困難になり、高齢者の食事の用意ができなくなっている

64

32

Page 33: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

• 今後の支援について

• 本人の状況

• 心身の状態が安定した中での高齢者本人の意思や生活状況確認した結果、本人は常時介護が必要な状況であること、息子との自宅での生活を希望していることを把握

• 長男の状況

• 長男は介護の意欲や母親との同居生活への意欲はあるものの「これからのことはまだ考えられない」と言う等、精神的に不安定な状態。ただし、地域包括職員への信頼は見せ始めている

• 支援の必要な課題について• 高齢者本人や長男の今の心身の状況を考えると、今の状態の長男が、本人が必要

としている介護のすべてを行うことは難しい

• 長男は他人が家に入ることに拒否的であり、必要な介護サービスの提供を受け入れることが難しい

• 長男が介護サービス利用を受け入れられるようにしなければ、本人の在宅復帰は難しい

• 緊急ショートステイ利用後の本人の生活場所を確保する必要がある

事例(緊急対応と更なるアセスメント段階②)

65

緊急対応と更なるアセスメント

対応の実施状況及び虐待が解消がしたかどうかの確認

虐待対応の初動期に集中的に実施する支援は、緊急対応であることも多い(一時的な虐待の解消の場合が多い)

例)緊急ショートステイの利用

配食サービスの導入による栄養確保

銀行口座の凍結による財産の保護 など

情報収集と虐待発生要因・課題の整理

虐待の構造(現在わかっている事実は何か、虐待がどのように起こっているのか、なぜ起こっているのか)をつかむ⇒虐待の解消のために必要な支援・課題の明確化

⇒お役立ち帳P52-53「要因分析」参照

66

33

Page 34: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

区市町村・地域包括・関係機関の役割

区市町村 緊急対応のキーコーディネートをしつつ、関係機関等から情報を

収集し、虐待の構造をつかむアセスメントを中心的に行う役割を持つ(区市町村が行うことが望ましい部分を担当)

地域包括支援センター 緊急対応のキーコーディネートをしつつ、関係機関等から情報を

収集し、虐待の構造をつかむアセスメントを中心的に行う役割を持つ(地域包括が行うことが望ましい部分を担当)

関係機関 虐待がどのように起こっているのか、なぜ起こっているのかは、

高齢者や養護者に関わってきた関係機関が把握している情報を総合し分析していく中で把握されることが多い。情報を提供し、専門性に基づいた本来業務での協力等を行う

67

高齢者の支援チーム

緊急対応と更なるアセスメント

地域包括支援センター

連携

68

34

Page 35: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

終結に向けて支援体制を計画的に整えていく段階

69

事例(終結に向けて支援体制を計画的に整えていく段階)

緊急ショートステイ利用中に、個別ケース会議(市、地域包括、ケアマネジャー、ショートステイ相談員、老健相談員、保健所)を実施し、以下を決定した。

本人について 緊急ショートステイ利用後は、老健へ3ヶ月間の入所を予定。

その間に在宅生活で必要なサービスについて検討(ケアマネ&施設職員)

息子の状態を見極めたうえで、第三者後見人が必要な状態かどうか考え、成年後見制度の活用について検討していく(地域包括・市役所)

長男について 在宅で本人が必要とする介護や医療について、長男へ説明(施

設職員)

長男の精神科受診支援(地域包括・保健所) 70

35

Page 36: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

「個別ケース会議は、個別の虐待事例に対する援助方針、援助内容、各機関の役割、主担当者、連絡体制等について協議を行う場であり、高齢者虐待の対応の中で中核をなすもの 」(厚生労働省マニュアルp.57より)

虐待の構造を把握し、終結に向けて支援体制を整えていく段階での個別ケース会議には、事例対応メンバーも参加していくことになる

個別ケース会議の開催

71

区市町村・地域包括・関係機関の役割 区市町村

区市町村の法的責任に基づいて支援計画を決定する個別ケース会議を招集する役割を担う

地域包括支援センター

個別ケース会議を実質的に進行する役割を担い、支援計画の作成の中心的役割を担う

実施する支援の「キーコーディネート」機関として、支援の進行状況を管理する役割を担う

関係機関

必要に応じて個別ケース会議に出席し、アセスメントや支援計画について意見を述べる役割を持つ

本来業務での支援を、計画に沿って提供する役割を担う72

36

Page 37: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

高齢者の支援チーム

地域包括支援センター

養護者への支援チーム

支援体制を整えていく段階

73

支援の評価・見直しの段階

74

37

Page 38: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

• 緊急ショートステイから老健に移り、入所して2か月経ったところである。個別ケース会議を招集し、支援の実施状況について確認し見直しを行った。

• 本人について

• 在宅復帰を目標に、起居動作や排せつ動作のリハビリも実施

• 「家に帰りたい」とよく口にするようになった

• 長男について

• 「母(本人)と一緒に暮らしたい」という思いが強まり、現在は本人の在宅復帰を目標に、現在月1回保健師(保健所)の付き添いの下、精神科を受診中。不眠やイライラについての服薬調整と保健師及び主治医への相談が定期的に行われている

• 支援の見直し

• 今後は長男と、長男にとって無理のない介護について話し合いながら、「在宅生活を行う上での約束事」について具体的に確認していく

• 長男が高齢者本人と一緒に暮らし介護をしていくことについて、積極的に考えるようになったため、成年後見制度の活用についてはいったん保留とする

事例(支援の評価・見直しの段階)

75

支援の評価・見直しの必要性 計画した支援が「計画どおりに実施されたか」「当初

の目的を達成するものとなりえたのか」を評価し、支援を見直す必要がある・・・訴訟リスク (計画)養護者の介護負担が重く、孤独やストレスから身体的虐

待や心理的虐待に至っていると考えられたため、介護者教室につなぐという支援を計画した

(実施)養護者を介護者教室につなぐことはできた。しかし、教室に通っても気の合う介護仲間を見つけることができず、結果として養護者のストレスの解消にはならなかった。虐待も解消されていない

(評価)計画どおりの支援は実施できたが、ストレス軽減という目標は達成できていないため、別の支援を考える必要がある

⇒お役立ち帳 p.116「在宅復帰の留意点」

p.48 「虐待対応支援計画書・モニタリング・評価票」参照 76

38

Page 39: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

区市町村・地域包括・関係機関の役割 区市町村

区市町村の法的責任に基づいて、支援を評価し見直す会議を招集する役割を担う

地域包括支援センター

支援の進行状況を管理してきた「キーコーディネート機関」として、その状況を会議で報告する役割を担う

支援の評価・見直しの会議を、実質的に進行する役割を担う

関係機関

支援計画に沿って支援を実施してきた場合には、その実施状況について個別ケース会議で情報提供する役割を持つ

必要に応じて個別ケース会議に出席し、支援の評価・見直しについて意見を述べる役割を持つ 77

進行管理について 多くの虐待対応を同時進行で行っている場合、緊急

性がそれほど高くないと思われる事例対応が後回しになりがちである

知らない間に緊急事態が!という事態を防ぐためにも、虐待対応ケース全体の進行管理を、地域包括支援センターごとに、あるいは区市町村ごとにおこなっていくことも大切である

⇒お役立ち帳p.104-105「進行管理会議録」参照

78

39

Page 40: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

高齢者の支援チーム

地域包括支援センター

養護者への支援チーム

支援の評価・見直しの段階

79

虐待対応の終結の段階

80

40

Page 41: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

事例(虐待対応の終結の段階)• 在宅へ復帰後、3週間経った時点で、地域包括職員はサービス担当者会

議と合わせて個別ケース会議を実施し、虐待についての情報収集を行った。

• 本人について

• 心身ともに健康な状態であり、表情等におびえもみられず、虐待の再発の予兆なし

• 養護者について

• 介護のストレスが高まってきた際には、高齢者のそばを離れたり、ケアマネジャーに助けを求めたりできるようになっている

• 「少し休みたいと思うときは、どうしたらいい?」

• 精神科受診は継続できている

• これらの情報を基に、コアメンバーで協議を行い、虐待対応としての関わりを終結することを決定した

81

いきなり終結か?? 虐待対応の支援

⇒支援の目標が達成された時点で虐待対応としての

関わりは終結(虐待が解消し、日常生活を支える

チームの支援が安定したら終結)

総合相談との関係

地域住民として総合相談を受けるという関係が切れるわけではない

包括的継続的ケアマネジメント支援との関係

「虐待は解消しているものの、ケアマネジャーがサービス提供に困難を抱える状況がある」等という場合には、包括的継続的ケアマネジメント支援として、関わりを継続する場合もある

82

41

Page 42: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

区市町村・地域包括・関係機関の役割

区市町村

虐待対応の終結の決定は、対応の法的責任が生じている区市町村の判断によるものである

地域包括支援センター

虐待対応の終結の段階であることについて、専門的見地に基づいて支援の進行状況を整理し、区市町村へ連絡し共に終結について協議する役割を持つ

関係機関

虐待対応の終結の決定そのものには関与しない

虐待対応が終結した事案については、本来業務での関与がある場合に、実質的に当事者を支える役割を持つ

83

高齢者の支援チーム

地域包括支援センター

養護者への支援チーム

虐待対応の終結の段階

84

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Page 43: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

虐待の発生

通報

地域包括・行政による事実確認

行政・包括による虐待・緊急性の判断

緊急対応とさらなる情報収集

ケース会議等での方針決定

見守り・介入・緊急対応など

支援の評価・見直し

終結

知らせる見たまま聞いたままを記録して知らせる

事実確認への協力

会議への出席

方針に沿った支援の展開

と報告

ケアマネジメントの継続

85

体制整備について

86

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Page 44: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

現時点で把握している情報

気になること

何が起きていると予測されるか?その状態が続いた時にどうなるか(リスク)

訪問(面接)時に行う必要のあること

何が起きていて(気になることはなぜ起きたか)

その結果、どのような状態になっているか(本人・養護者の心身の状態等)

何を確認するか その場で対応する可能性のあることは?

(考え方)

あざだらけの高齢者をみかけた(近隣からの通報)

あざだらけ 暴力による可能性

乱暴な介護による可能性

転倒による可能性視力の低下・悪化ADLの低下

薬による可能性

あざによる痛み・腫れあざ以外の被害の可能性おびえの可能性悲鳴の可能性

おびえの可能性介護方法がわからなくて養

護者が困っている可能性関係機関も困っている可能

視力の低下・悪化やADLの低下から他の困りごとを抱えている可能性

困りごとに対応できない要因(サービス利用できない経済状況等)を抱えている可能性

あざができてしまうことを養護者が気にしている可能性

硬膜下血腫等

の重大な怪我

本人の自死

養護者が介護を止

めてしまう可能性

関係機関の指導

への反発(契約解除)

追い詰められた養護者による虐待行為の発生

本人の受傷部位の確認心身の状況確認、おびえの確認なぜ、あざができているのかを本人や養護者に尋ねる悲鳴等を聞いたことがある人がいるか確認警察が出動したことがあるかの確認関係している機関があるか、関係機関の今までのサポートを確認する

転倒のしやすさを確認するどこで、何にぶつけているのか?

どのような薬がいつ、どこから処方されているのかを確認する

緊急受診の支援

「家を出たい、保護してほしい」という本人からの訴えへの対応(緊急一時SS利用)

「殺してしまうかもしれない」等の養護者からの訴えに対しての対応

転倒リスクや受傷リスクを減らすための環境整備

どう裏付けをとるか?

具体的に何を把握するか?

対応のために確認しておくことは?

リスク回避の為に何をするか?

受診やSS利用についての本人の意向経済状況(使える現金)、保険証の確認

情報収集体制整備の必要性

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関係機関からの情報

(介護サービス事業者、医療機関、警察、年金等の経済情報)が、

訪問の前に把握できると

予測される事態に対して、より

適切に準備をすることができる

訪問の前に把握できる情報量が多いほど、介入拒否を招かずに済む

この情報収集の体制整備状況が、区市町村によって違っている。

関係機関との協力体制整備 高齢者虐待防止ネットワークの3つの「機能」

早期発見・見守りネットワーク

虐待の予防・未然防止や早期発見、見守りを担うネットワーク

民生委員、介護相談員、家族会、自治体、社会福祉協議会、ボランティア・NPO団体等

保健医療福祉サービス介入ネットワーク

地域で日常的に活動する関係機関・関係者による虐待の早期発見・一次対応機能のネットワーク

居宅介護支援事業所等のケアマネジメント機関、訪問介護、訪問看護、短期入所生活介護等の居宅サービス事業所、特別養護老人ホーム等の社会福祉施設、病院等の医療施設等

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Page 45: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

関係専門機関介入支援ネットワーク

通常の相談や介護支援の範囲を超えて専門的な対応を行う。虐待の二次対応機能を担うネットワーク

警察、消防、保健所、精神保健福祉センター、精神科等を含む医療機関、弁護士会、権利擁護団体、家庭裁判所、消費者センター等

高齢者虐待対応のための体制整備は

委託できない区市町村の事務である

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警察との連携① 高齢者虐待の中には、「犯罪」に該当するものもある

「【犯罪】か【虐待】のどちらか」なのではなく、どちらにも該当する。そもそもの目的が違うため、警察対応と区市町村の虐待対応が並行して対応が行われることがある

警察は、高齢者を保護、権利擁護をしたり、養護者を支援したりはしない

「犯罪捜査」と「事実確認」が重なることがあり、適切な連携は必要だが、「警察にお任せ」ではない

「虐待対応中の養護者だから、何をやっても犯罪にはならない」という訳ではない。

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Page 46: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

警察との連携② 『通報』…「高齢者虐待事案通報票」(警察⇒区市町村

・地域包括支援センター)あり 警察から「通報」がある場合には、「通報票」の提出を求める

*「講義2別紙3」参照

『立入調査』…立入調査で援助を求めるときには 「高

齢者虐待事案にかかる援助依頼書」(区市町村⇒警察)を提出⇒お役立ち帳p.83「警察への援助依頼様式(例)」参照

どのように連携をするか、日頃からルールを確認しておく

区市町村の担当所管と生活安全課の連携、地域包括支援センターと交番との連携等、幾層ものネットワークを構築する

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項目 地域ケア会議 サービス担当者会議高齢者虐待対応の個別ケース会議

開催主体地域包括支援センターまたは市町村

介護支援専門員(本人との契約が前提)

市町村

目的

①ケース当事者への支援内容検討②地域包括支援ネットワーク構築③自立支援に資するケアマネジメ

ントの支援④地域課題の把握 等

①利用者の状況等の情報共有②サービス内容の検討及び調整等

高齢者虐待の解消と高齢者の権利擁護、そのための養護者支援

根拠

①「地域支援事業の実施について」(厚生労働省老健局通知)

②地域包括支援センターの「設置運営について」(厚生労働省老健局振興課長ほか連名通知)

③介護保険法第115条の48

「指定居宅介護支援等の人員及び運営に関する基準」13条第9号

高齢者虐待防止法第9条1項

参加者

行政職員、センター職員、介護支援専門員、介護サービス事業者、保健医療関係者、民生委員、住民組織、本人・家族等

居宅サービス計画の原案に位置づけた指定居宅サービス等の担当者、主治医、インフォーマルサービスの提供者、本人・家族等

事例に直接関係している者、関係する可能性がある者、助言する者

内容

サービス担当者会議で解決困難な課題等を多職種で検討

『地域ケア会議運営マニュアル』p44-47参照

①サービス利用者の状況等に関する情報の担当者との共有

②当該居宅サービス計画原案の内容に関する専門的見地からの意見聴取

高齢者虐待事例(疑いも含む)の検討

※長寿社会開発センター(2013)『地域ケア会議運営マニュアル』p.27-29を参考に(公財)東京都福祉保健財団高齢者権利擁護支援センター作成(池田恵利子・川端伸子・高橋智子(2013)『事例で学ぶ「高齢者虐待対応ガイド」』p152-153 を参考)

⇒お役立ち帳p. 49-50 「地域ケア会議と区別が必要な会議・・・」に下線部を追加

地域ケア会議と区別が必要な会議

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Page 47: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

守秘義務と情報漏洩高齢者虐待対応に関係しない、関係する可能性がない関係者と事例内容を共有することはできない

高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律

第17条2項

前項の規定による委託を受けた高齢者虐待対応協力者若しくはその役

員若しくは職員又はこれらの者であった者は、正当な理由なしに、その

委託を受けた事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

第29条

第十七条第二項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円

以下の罰金に処する。

関係しない人、関係する可能性がない関係者が参加する地域ケ

ア会議において、虐待対応の検討を行うのは適切ではない

→第29条の違反として、刑事罰を受ける可能性あり

93⇒お役立ち帳p. 152 「地域ケア会議での情報の取り扱い」参照

地域ケア会議にまぎれやすい事例

「養護者が、高齢者に必要な医療や介護サービスを拒否している」「介護する意欲はあるが、必要な介護が足りていない」といった養護者側に虐待の自覚がない放棄・放任の事例

「介護者自身に疾病や障害があり、虐待の自覚がないままに暴力や暴言に至ってしまう」という身体的虐待・心理的虐待の事例

「高齢者に年金はあるものの介護者が経済的に困窮しており、サービスを使いたくても使えない」という経済的虐待・放棄放任の事例

地域ケア会議で、これらを話し合ってしまうと区市町村の法的責任に基づいた対応ではなくケアマネジャーに高齢者虐待対応をさせてしまうことになるので、要注意!

94⇒お役立ち帳p. 49-50 「地域ケア会議と区別が必要な会議・地域ケア会議にまぎれやすい事例・権利擁護業務での地域ケア会議の活用」参照

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Page 48: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

権利擁護業務での地域ケア会議の活用

項目 内容

会議体種別日常生活圏域単位 及び 市町村単位の地域ケア会議

※個別ケースを検討する地域ケア会議で虐待事例を検討するのは不適切

目的虐待対応に必要とされる地域のネットワーク構築、施策の検討

虐待対応における地域の問題・課題の把握及び検討 等

把握及び検討

が想定される

地域課題

① 虐待事例の要因分析を通して、その要因が地域に共通する課

題になっているかどうかの検討と、その対応の検討

② 通報・相談の遅れや関係機関の協力拒否等、高齢者虐待の連

携協力体制上の課題の共有と対応の検討

③ 高齢者虐待防止・対応において緊急分離をする際の課題共有

と対応の検討

④ 成年後見制度を活用する際の課題共有と対応の検討

事例個人情報に配慮して終結した高齢者虐待事例を検討するのが

望ましい

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⇒お役立ち帳p. 49-50 「地域ケア会議と区別が必要な会議・地域ケア会議にまぎれやすい事例・権利擁護業務での地域ケア会議の活用」参照

自治体内のルール作り虐待対応マニュアル整備「誰が・何を・どのように」を決める

個人情報の収集・共有方法

共通の判断基準

記録・フォーマットの共有

役割分担

使われるマニュアルを作るために・・・

協議と更新

「何のために」という目的や、「虐待のとらえ方」や役割分担のイメージを共有しながら、虐待対応を行う人間が協議し、適宜更新しながら決定していくことが望ましい

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Page 49: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

早期発見と通報義務について 「住まい」と結託した囲い込みの中での、事業者に

よる虐待事案の発生

使いたいサービスを使わせず、限度額いっぱいの併設等のサービス利用をするよう強要・・・心理的虐待

無理に金銭を預かり、不透明な管理を行う。寄付を強要したり利用料を釣り上げる・・・経済的虐待

閉じ込める。身体拘束をする・・・身体的虐待

必要な医療・介護サービスを利用させない・・・放棄放任

生活保護、身寄りがない(縁がうすい)、医療依存度が高い、認知症、地元の人を入れない

よく似た名前のちょっと違う名称に注意97

所管外の地域でこれらに気付いた場合には、その事業所のある地域の区市町村へ通報を

通報は義務

「人の目を入れる」形での移動支援を

利用者の支援の中で、遠くのサービスを利用することになる場合、必ず人の目が入る形でつないでいく

地域ケア会議の活用も有効

良く調べ、契約等についても相談してから

「住宅」の登録状況は調べれば確認できる。消費生活センターを利用する方法もある。

なんでもパックはちょっとおかしい、危険という視点も必要

必要に応じて、成年後見制度や社会福祉協議会の地域福祉権利擁護事業を活用する

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Page 50: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

参考文献・資料長寿社会開発センター『地域包括支援センター運営マニュアル2012』平成24年3月

厚生労働省老健局『市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について』平成18年4月

東京都『高齢者虐待防止に向けた体制構築のために―東京都高齢者虐待対応マニュアル―』平成18年3月

(社)日本社会福祉士会『市町村・地域包括支援センター・都道府県のための養護者による高齢者虐待対応の手引き』平成23年3月

東京都福祉保健局『東京都高齢者権利擁護推進事業 高齢者虐待事例分析検討委員会報告書』平成25年3月

あい権利擁護支援ネット監修『事例で学ぶ「高齢者虐待対応ガイド」』中央法規、2013

北海道大学大学院文学研究科仲真紀子【司法面接研修 被害・事実確認面接研修 2013年度】

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Page 51: 高齢者虐待対応の支援と 基本的流れについて...treatmentは「待遇」「扱い」を意味すると考えられる。参考:研究社「新英和中辞典」 (参考)マルトリートメント

現時点で把握している情報

気になること

何が起きていると予測されるか?その状態が続いた時にどうなるか(リスク)

訪問(面接)時に行う必要のあること

何が起きていて(気になることはなぜ起きたか)

その結果、どのような状態になっているか(本人・養護者の心身の状態等)

何を確認するか その場で対応する可能性のあることは?

(考え方)

あざだらけの高齢者をみかけた(近隣からの通報)

あざだらけ 暴力による可能性

乱暴な介護による可能性

転倒による可能性視力の低下・悪化ADLの低下

薬による可能性

あざによる痛み・腫れあざ以外の被害の可能性おびえの可能性悲鳴の可能性

おびえの可能性介護方法がわからなくて養

護者が困っている可能性関係機関も困っている可能

視力の低下・悪化やADLの低下から他の困りごとを抱えている可能性

困りごとに対応できない要因(サービス利用できない経済状況等)を抱えている可能性

あざができてしまうことを養護者が気にしている可能性

硬膜下血腫等

の重大な怪我

本人の自死

養護者が介護を止

めてしまう可能性

関係機関の指導

への反発(契約解除)

追い詰められた養護者による虐待行為の発生

本人の受傷部位の確認心身の状況確認、おびえの確認なぜ、あざができているのかを本人や養護者に尋ねる悲鳴等を聞いたことがある人がいるか確認警察が出動したことがあるかの確認関係している機関があるか、関係機関の今までのサポートを確認する

転倒のしやすさを確認するどこで、何にぶつけているのか?

どのような薬がいつ、どこから処方されているのかを確認する

緊急受診の支援

「家を出たい、保護してほしい」という本人からの訴えへの対応(緊急一時SS利用)

「殺してしまうかもしれない」等の養護者からの訴えに対しての対応

転倒リスクや受傷リスクを減らすための環境整備

どう裏付けをとるか?

具体的に何を把握するか?

対応のために確認しておくことは?

リスク回避の為に何をするか?

受診やSS利用についての本人の意向経済状況(使える現金)、保険証の確認

虐待対応における事実確認の思考プロセス

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