大規模造成における仮設防災・汚濁防止対策への取組事例に...

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大規模造成における仮設防災・汚濁防止対策への取組事例について 清水・名工・成瀬特定建設工事共同企業体 佐野 孝三 1.はじめに 本事業は、愛知県企業庁が事業者となり、トヨタ自動 車の新研究開発施設用地の造成を行うものである。 事業区域は、美濃三河高原の丘陵地で豊田市と岡崎 市にまたがる標高 350m~550m位の緩やかな山林に位 置し、その周辺には郡界川、保久川及びその支流が流れ ている。沿川には水田や集落が分布し、森林・谷津田で 構成された里山景観が形成されている。 用地造成工事は、工事区域の地形及び土地利用から 東・中・西工区の3工区に分けて工事を実施する。 全体の改変面積約266.4haのうち、東工区での改変 面積は約153.7ha(58%)となる。 2.工事概要(東工区) ・切盛土工量:867万 m 3 ・造成法面:盛土部 14.1ha、切土部 16.8ha ・橋 梁:3箇所 (高速評価路部:東1号橋 47m、東2号橋 50m、東3号橋 138m) ・トンネル:1箇所 (高速評価路部:687m) ・調整池:7箇所 豊田市 岡崎市 東工区 中工区 西工区 G1 G2 G3 G4-1 G5 H1 国道 301 G4-2

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  • 大規模造成における仮設防災・汚濁防止対策への取組事例について

    清水・名工・成瀬特定建設工事共同企業体

    佐野 孝三

    1.はじめに

    本事業は、愛知県企業庁が事業者となり、トヨタ自動

    車の新研究開発施設用地の造成を行うものである。

    事業区域は、美濃三河高原の丘陵地で豊田市と岡崎

    市にまたがる標高 350m~550m位の緩やかな山林に位

    置し、その周辺には郡界川、保久川及びその支流が流れ

    ている。沿川には水田や集落が分布し、森林・谷津田で

    構成された里山景観が形成されている。

    用地造成工事は、工事区域の地形及び土地利用から

    東・中・西工区の3工区に分けて工事を実施する。

    全体の改変面積約266.4haのうち、東工区での改変

    面積は約153.7ha(58%)となる。

    2.工事概要(東工区)

    ・切盛土工量:867万 m3 ・造成法面:盛土部 14.1ha、切土部 16.8ha

    ・橋 梁:3箇所 (高速評価路部:東1号橋 47m、東2号橋 50m、東3号橋 138m)

    ・トンネル:1箇所 (高速評価路部:687m)

    ・調整池:7箇所

    豊田市

    岡崎市

    東工区

    中工区

    西工区

    G1

    G2 G3

    G4-1

    G5

    H1

    国道 301 号

    G4-2

  • 3.仮設防災・汚濁防止対策への取組み

    3-1 工事中の対策

    1)矢作川方式の竹ソダ沈砂池による濁水処理

    一例として、対象とする改変面積が 3.5ha の場合、沈砂池の堆砂容量は 400Aとなるため、約

    1,400m3で計画している。

    沈砂池内のろ過材は、竹ソダを 350m3(堆砂容量の 25%)としている。

    また、多区画の構造にすることにより、沈殿除去率が高まるように配置計画を行った。

    2)仮設法面の保護による濁水抑制

    工事施工中の一時的な仮設法面を長い期間存置する場合は、工事期間中の降雨による法

    面浸食に伴う「濁水発生」を抑制するために保護工を施す。

    保護工として切土法面については、「浸食防止剤(クリコート)」を散布し、盛土法面については、

    「土のう抑えによるシート張」又は現地発生材の中硬岩や硬岩を破砕して「破砕材被覆」を行う。

    竹ソダ 竹ソダ

    L≒110m

    L≒33m

    釜場

    A - A 断面図

    <盛土法面>

    破砕材被覆(現地発生材転用)

    <切土法面>

    浸食防止剤の散布

    <盛土法面>

    土のう抑えによるシート張

  • 3)仮設水路、工事用道路等を使用する際に発生する濁水抑制

    工事施工中の仮設水路や工事用道路について、長い期間存置する場合は、期間中の降雨に

    よる洗掘や泥濘化に伴う「濁水発生」を抑制するために、「コンクリート張水路」や「砕石舗装・敷鉄

    板」による保護工を施す。

    4)非改変区域の雨水(清水せいすい

    )と改変区域の濁水を分離した濁水抑制

    地形の改変区域(造成に伴う切土・盛土エリア)への雨水流入や既存の沢部などの自然湧水

    の流入による「濁水の増加」を抑制するために、雨水や湧水を集水し「清濁分離対策」を施す。

    改変区域の端部付近に「集水シート」を尾根部から沢部に設置・集水し、「排水管(バイパス

    管)」を敷設して非改変区域の沢まで導水して直接放流する。

    コンクリート張水路

    仮設水路をコンクリートで被覆

    敷鉄板

    砕石舗装

    仮設道路を砕石・鉄板で被覆

    湧水導水配管

    排水管(バイパス管)

    集水シート

  • 3-2 工事完成後の対策

    1)切土・盛土法面(土砂部)をチップ材で被覆

    完成法面は、できる限り早期に法面保護工を行う。

    本事業では、現地伐採材の枝葉・根を破砕した「木チップ」をバークブローにて法面に吹付ける。

    なお、緑化を目的とした「種子」は混入せずに自然による「植生復元」としている。

    法裾の排水路脇に、降雨によって流出が想定される土砂を止める目的で、筒状のネット内部に

    木チップを充填した「フィルターソックス」を設置する。

    4.おわりに

    梅雨・台風のほか、近年の「ゲリラ豪雨」「局所強雨」など自然環境に変化が生じていますが、矢作川

    環境技術研究会の皆様からのご指導・ご助言を頂きながら、濁水の発生負荷を最小限に留めると共に

    清流を守るためのモニタリングや環境対策に創意工夫を図り、今後の工事を進めて参ります。

    チップ材

    (現地発生材流用)

    流砂止め

    フィルターソックス

    チップ材

    (現地発生材流用)

    流砂止め

    フィルターソックス