外国語教師の動機づけと動機の喪失、その関連要因...

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国際シンポジウム「グローバル時代における外国語教育の未来を考える:動機づけと教師の役割」 2017 年 12 月 10 日(日) http://www.ier.u-toyama.ac.jp <招待講演 2> 外国語教師の動機づけと動機の喪失、その関連要因と実践的意義: 韓国における英語教師の事例 金 兌英 (韓国 中央大学校) 【要旨】 外国語教師の動機づけは、外国語学習者の動機づけと比較したとき、特に外国語と しての英語(EFL)環境下では、過去 50 年間、研究にあまり進展が見られなかっ た。それが学問としての興味・関心の対象となってきたのは、実に 21 世紀を迎え る頃になってからのことである(Peninngton,1995)。しかし、外国語の授業にお いて、教師と学習者間にある動機づけの特徴を象徴的に捉えると、教師の教える情 熱が学習者に伝わり、その結果、外国語を学ぶ動機づけが高まる。本講演では、ま ず教師の動機づけの特徴を教育全般にわたる視点から概観し、次に外国語教師の動 機づけと動機の喪失に、その関連する社会的・教育的要因とともに焦点を当てる。 講演の主要ポイントは3つあり、いずれも言語教師の動機づけと動機の喪失に関す る先行研究で、これまでに示唆されている内容である。それらは、1)教員養成課 程の学生および現職教員研修の新任教員に見られる教師の初期段階での動機づけ要 因、2)ベテラン現職教員に見られる動機の喪失要因、特に教師の感情労働 (emotional labour)面に焦点化した知見、そして 3)教育への示唆と今後の研究 動向への提言の 3 つである。金(講演者)と共同研究者によって行なわれた定量・ 定性研究を提示した上で、教師の動機づけの複雑な諸相について論じるとともに、 東アジア諸国における様々な教育段階で言語教育に携わる教師の動機の喪失を回避 するために、その実践的な提案についても議論したい。 兌英(キム・テヨン)博士 韓国ソウル市、中央大学校英語教育学科教授、同大学大学院教育学部 英語専攻プログラム主任。ソウル大学校で学士・修士修了後、トロン ト大学オンタリオ教育研究所にて PhD 取得。2008 年より中央大学 校にて英語教育専攻の学部生および大学院生(MA、MEd、PhD)を 指導。主な研究分野は、第二言語学習における学習者・教師の動機づ けと動機の喪失、ヴィゴツキーによる活動理論、初等・中等教育にお ける動機づけ主導による言語活動の活用である。国内外で 100 本以 上の論文を学術誌で発表しており、学術書の共著もある。論文が掲載 されている学術誌には、 System 、 Language and Intercultural Communication 、 Educational Gerontology Educational Studies 、 The Asia-Pacific Education Researcher、The Journal of Asia TEFL などがある。現在、木村裕三氏と楊魯新氏と共 に学術書 Second Language Teacher Motivation, Autonomy, and Development in the Far East(Springer 社より出版予定)の共同編集に取り組んでいる。 個人ホームページ: https://works.bepress.com/taeyoungkim

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国際シンポジウム「グローバル時代における外国語教育の未来を考える:動機づけと教師の役割」 2017 年 12 月 10 日(日) http://www.ier.u-toyama.ac.jp

<招待講演 2>

外国語教師の動機づけと動機の喪失、その関連要因と実践的意義: 韓国における英語教師の事例

金 兌英(韓国 中央大学校)

【要旨】 外国語教師の動機づけは、外国語学習者の動機づけと比較したとき、特に外国語としての英語(EFL)環境下では、過去 50 年間、研究にあまり進展が見られなかった。それが学問としての興味・関心の対象となってきたのは、実に 21 世紀を迎える頃になってからのことである(Peninngton,1995)。しかし、外国語の授業において、教師と学習者間にある動機づけの特徴を象徴的に捉えると、教師の教える情熱が学習者に伝わり、その結果、外国語を学ぶ動機づけが高まる。本講演では、まず教師の動機づけの特徴を教育全般にわたる視点から概観し、次に外国語教師の動機づけと動機の喪失に、その関連する社会的・教育的要因とともに焦点を当てる。講演の主要ポイントは3つあり、いずれも言語教師の動機づけと動機の喪失に関する先行研究で、これまでに示唆されている内容である。それらは、1)教員養成課程の学生および現職教員研修の新任教員に見られる教師の初期段階での動機づけ要因、2)ベテラン現職教員に見られる動機の喪失要因、特に教師の感情労働(emotional labour)面に焦点化した知見、そして 3)教育への示唆と今後の研究動向への提言の 3つである。金(講演者)と共同研究者によって行なわれた定量・定性研究を提示した上で、教師の動機づけの複雑な諸相について論じるとともに、東アジア諸国における様々な教育段階で言語教育に携わる教師の動機の喪失を回避するために、その実践的な提案についても議論したい。

兌英(キム・テヨン)博士 韓国ソウル市、中央大学校英語教育学科教授、同大学大学院教育学部英語専攻プログラム主任。ソウル大学校で学士・修士修了後、トロント大学オンタリオ教育研究所にて PhD 取得。2008 年より中央大学校にて英語教育専攻の学部生および大学院生(MA、MEd、PhD)を指導。主な研究分野は、第二言語学習における学習者・教師の動機づけと動機の喪失、ヴィゴツキーによる活動理論、初等・中等教育における動機づけ主導による言語活動の活用である。国内外で 100 本以上の論文を学術誌で発表しており、学術書の共著もある。論文が掲載されている学術誌には、System、Language and Intercultural Communication、Educational Gerontology 、 Educational Studies 、 The Asia-Pacific Education Researcher、The Journal of Asia TEFLなどがある。現在、木村裕三氏と楊魯新氏と共に学術書 Second Language Teacher Motivation, Autonomy, and Development in the Far East(Springer 社より出版予定)の共同編集に取り組んでいる。 個人ホームページ: https://works.bepress.com/taeyoungkim