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Hitotsubashi University Repository Title Author(s) �, Citation �, 124(5): 574-590 Issue Date 2000-11-01 Type Departmental Bulletin Paper Text Version publisher URL http://doi.org/10.15057/10465 Right

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Hitotsubashi University Repository

Title 中国自転車工業の発展とイノベーション

Author(s) 関, 権

Citation 一橋論叢, 124(5): 574-590

Issue Date 2000-11-01

Type Departmental Bulletin Paper

Text Version publisher

URL http://doi.org/10.15057/10465

Right

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中国自転車工業の発展とイノベーション*

カン           ケン

関    権

1 はじめに

 解放後,中国の自転車工業は一貫して高度成長を続けてきた.1950~96

年に自転車の生産台数は実に22.O%の高成長が実現されたが,時期別に見

ると大躍進前の時期(50~57年)に68.8%,大躍進を合めた時期(58~65

年)に18.6%,.文化大革命期(66~76年)に13.3%,改革・開放期(77~

96年)に9.5%となっている.このような高成長が実現された要因は,主と

して企業の新設や規模の拡大などいわゆるr外延的成長(eXtenSiVe gro-

wth)」によるものであるが,技術革新や従業員の訓練などを合めたr内包

的成長(intensive growth)」による部分・も存在する,と筆者は別の論文で

主張している1).しかし,そこで「内包的成長」の内容についてはとくに論

じなかった.

 本稿では,その「内包的成長」の主要部分を構成する技術革新あるいは技

術進歩についてすこし詳しく検討したい2).経済学では,技術革新や技術進

歩を表す指標としてしぱしば総要素生産性(Tota1FactorProductivity,

TFP)あるいは技術進歩率(rateoftechnicalprogress)が利用される.

最近,中国の工業生産性および技術進歩に関する研究は数多く現れており,

しかも研究者の問で激しい論争が展開されている.例えば,Jeffersonθfα1、

[1992;1996]が国有企業の生産効率が大きく向上したと主張するのに対し

て,Wooαα1.[1994]はまったく反対の意見を示している3).しかし,そ

の論争は方法論や資料の使い方などに集中しており,技術革新あるいは技術

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申国自転車工業の発展とイノベーション (17)

進歩の内容や要因などより重要な問題についてはとくに論じられていない.

それらの研究に比べて本稿では,TFPの計測だけでなく,技術進歩の実態

およびその背後要因をも探る.計画経済期と改革期の双方を含めた長期分析

と,企業べ一ス資料の利用が本稿の特色である.なお分析対象は完成車メー

力一に限定する.

 以下第2節では,自転車工業における技術革新の実態を確認した上,その

特徴を探る.続いて第3節では,技術革新の効果と性質を生産関数論の観点

から論じる.さらに第4節では,技術革新を支える組織と政策を紹介する.

2技術革新の内容と特徴

 (1)技術革新の内容

 プ□ダクト革新 自転車は普通車,荷重車,軽便車,競輸車,スポーツ車,

小輸車,運動車,特殊車などに分類される.ここでは,最も一般的な普通車

と中国で特に重要な意味を持つ荷重車の2種類を上海の事例を取り上げて紹

介する4).

 普通車の研究開発はまず標準車の設計から始まった.55年に上海白転車

で28インチ自転車が1台作られ,自転車設計の無標準状態を終わらせた.

58年(大躍進)にr5年から8年にかけ寸イギリス車に追いつこう」という

スローガンが言い出され,そのために64年に「永久」と「鳳風」PA14型

高級車の開発に成功した.この2種類の自転車にはマンガン鋼,ニッケル・

メッキなどの技術が利用され,概してイギリス車の水準に達したと言われる.

ただし二,ケルと牛革が供給不足であったため,65年にPA14型とほぼ同

じレベルのPA13型を開発して大量生産に踏み切うた.また70年に上海第

3自転車では鳳風PA18型,71年に上海自転車では永久PA17型がそれぞ

れ開発され,有名ブランド品となって長い問供給不足な状態が続いた.49~

90年に,上海では38種類の普通車が開発された.

 荷重車は,おもに農村部での歩き代わりと荷物運搬に使われる.農村部の

道路整備が遅れていること,自動車産業が未発達であったこと,などが荷重

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(18)   一橋論叢 第124巻 第5号 平成12年(2000年)11月号

車の旺盛な需要を支えた要因であった(自転車生産量のほぼ半数を占める).

60年代初頭,自転車生産者は農村での調査を通じて,農民たちが肥料,食

            いち1{糧,農産物,親戚付き合い,市場行きなどに使いやすい自転車を望むことが

分かった.例えば,荷物を載せている際に前から自転車に乗るために車体の

パイプをより長くハンドルをより広くすること,安定性を保つために前フォ

ークの斜度をより大きくすること,安全と簡易修理のために安全フォークと

道具箱を増設すること㌧などが要請された.61~62年に,上海自転車と上

海第3自転車ではそれぞれ51型と91型荷重自転車が試作されたが,その中

で最も生産量が大きく最も愛用されたものは「永久ZA51型」であり,農

民たちに「不喫草的小毛駿(草を食わない小さいロバ)」と呼ばれた.61~

90年に上海だけでは20種類もの荷重車が生産された.・

 プOセス革新 解放前,自転車の生産技術はきわめて粗末なものであり,

労働者の体力に大きく頼っていた.例えぱ,パイプは古いディーゼル・オイ

ル樽を鋏で切って丸い形に巻いて溶接するという工程で作られていた.また,

リムに穴をあけるのに簡易穴貫盤で1つ1つ行われていた.ハンドルも簡単

な道具で曲げられていた.

 解放後の数十年に,自転車の生産技術は日進月歩のように発展した5〕.

1950年代の前半に工作機械のライン・シャフトを外したほか,多刃削りが

広く採用された.また,塩浴加熱が従来の熱処理工法を,合浸ワニスが流し

ワニスをそれぞれ代替した.59年に誕生した自動メッキ生産ラインが,自

転車メッキエ程を手作業から自動化・連続化生産に切り替えた.ドイツから

導入されたオーム・パイプ溶接機に対する消化・吸収・改良・普及を通じて,

手作業によるパイル製造の長い歴史に終わりを告げた.60年代に,日本か

ら導入された静電気塗装装置を基礎にして赤外線乾燥技術を備えた自動塗装

生産ラインが作られた.70年代に,サイリスター整流技術を用いたメッキ

電源が長い問使われた直流発電ユニットを代替した.熱処理工程では気体浸

炭に基づくコントローノレ可能な炭素・窒素同時浸透技術が,鍛造工程では冷

間鍛造がそれぞれ採用された.70年代末からパイプ製造,ハンドル管曲げ,

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中国自転車工業の発展とイノベーション (19)

表1主要メー力一の技術革新件数と学術論文数

プロダクト革新 プロセス革新 技術改造 学術論文

期間上海 上海第3 天津 藩陽 天津 藩陽 港陽 溝陽

49-57年 9 ■ 9 5 3 5 1 O58-65年 28 42 32 11 9 15 8 566-78年 16 24 22 9 28 18 38 279-91年 113 94 97 20 12 1 14 29

注: 1) 資料範囲:上海自転車は49-90年,上海第3自転車は58-91年,天津

   自転車は49-89年,藩陽自転車は49-85年.

  2)上海自転車(17件)と上海第3自転車(102件)の一部年次不明のも

   のについては筆者の判断で埋めた.

出所1上海自転車集団公司[1991],天津自転車歴史資料(謄写版)[1990],港

  陽自転車[1986コ.

溶接,塗装,メッキ,熱処理,車輪組立,リム成型などの生産工程に数多く

の技術導入が行われ,自転車の製造技術がいっそう進歩した.自転車協会の

調査によれば,78~89年に機械設備が753台(セット)導入されたという6).

 この一連の技術革新(技術導入を合む)を通じて,白転車工業の機械化・

白動化は90%以上に達した.90年に,自転車工業では機械設傭が12万台

(うち専門設傭が4万台),熱処理・塗装・メッキ白動生産ラインが1000台

(セット)にのぽっている、

 (2)技術革新の特徴

 表1では,主要メー力一(上海自転車,上海第3白転車,天津自転率,藩

陽自転車)の技術革新成果が示されている7).そこから次の3点が指摘でき

よう.第1に,全期間を通じて各メー力一では盛んに技術革新活動が行われ

た.上海白転車では166件(49~90年),上海第3自転車では160件(58~

91年),天津自転車では160件(49~89年),藩陽白転車では45件(49~85

年)もの新製品(プロダクト革新)がそれぞれ開発された.第2に,企業の

技術革新活動に高揚期と低迷期が存在する.プロダクト革新について言えば,

58~65年と79~91年は高揚期,49~57年と66~78年は低迷期と考えてよ

い.文化大革命期にも技術革新が行われたが,決して活発であったと言えな

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(20)   一橋論叢 第124巻 第5号 平成12年(2000年)11月号

い.しかしプロセス革新に関しては,天津自転車と藩陽自転車ではむしろ盛

んに行われた.これは明らかに政治情勢ξ深く関係している.第3に・メー

力一問に格差が存在する、上海自転車,上海第3自転車,天津自転車に比べ

て,溝陽自転車の技術革新があまり活発に行われなかった.これは企業成長

にマイナスの影響を与え,藩陽自転車がその後衰退した一因となったであろ

う、

3技術革新の効果と性質

 (1)技術革新の効果

 総要素生産性(TFP)は,労働生産性や資本生産性などの部分生産性(par-

tial productivity)と対応する概念であり,実質生産量の増加のうちに生産

要素の増加によって説明されない残差的部分を示す.一般に,この残差が大

きければ大きいほど技術進歩による貢献も大きいと言われるが,そこには規

模の経済性や組織的進歩など多くの要素が含まれているため,決してそのす

べてが(工学的意味の)技術革新の効果であるとはかぎらない.しかし,技

術革新が残差の重要な構成要素であることは疑いない.

 計測方法とデ タ 総要素生産性の計測には2通りの方法があるが,ここ

ではいわゆるr残余法」を利用する.自転車工業の実質付加価値γの成長

率は,従業員数ムの成長率と労働生産性γ/Lの成長率に分解されうる.G

()は成長率を表す.

           0(γ)=0(ム)十0(γ/L)

労働生産性成長率の一部は資本労働比率K/五の上昇によるものであり,そ

の効果はK/Lの成長率に資本の生産弾力性Eを乗じて求められる.しかし

生産性の上昇はそれだけによるものではなく,規模の経済性や技術進歩など

さまざまな要因が働く.それは成長率の「残余(residua1)」Rと呼ぱれる.

こうして次の関係が成立する.

           0(γ/ム)=R+EG(K/L)

 Rは実際には,(Gγ/L)からE0(K/L)を差し引いて計算される.

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中国自転車工業の発展とイノベーション (21)

 残余を計測する際に実質付加価値額,実質固定資本額,従業員数およぴ資

本(あるいは労働)の分配率などのデータが必要である.しかし現実に,自

転車工業に関するこれらのデータはきわめて限られている.したがってその

一部については,何らかの仮定に基づいて推計せねばならない.

 自転車工業の分析可能な長期資料はもともと少ないが,完成車メー力一に

限定すると一層厳しいものになる、さいわいr業界統計」という資料が利用

できる8).そこから企業別生産額・従業員数・粗固定資本額などの情報が得

られるが,一部の企業について欠けている部分がある.そのため,まずその

空白部分を埋めねぱならない.次に企業べ一スのデータを集計し,完成車メ

ー力一全体の生産額,従業員数,粗固定資本額に関する3つの系列を得る.

しかし,「業界統計」には付加価値額と分配率のデータがないため,別の資

料を利用して代替せねばならない.その前に,まず工業製品出荷価格指数を

利用して価格の影響を取り除く.次に,軽工業全体の付加価値率を使うて付

加価値額を計算する.

 残る問題は、最も厄介な分配率の推計である、分配率は資本の分配率と労

働の分配率に分けられるが,推計する方法にもr資本接近法」とr労働接近

法」がある.中国(とくに改革前)については賃金が比較的安定した値を示

すため,ここでは労働接近法を採用した.労働分配率とは付加価値に対する

労働の分け前(W/ア)であり、本来なら労働の分け前は賃金(w)のはずで

ある.しかし中国の場合,賃金だけでは労働の分け前を評価しきれない.賃

金以外に福祉厚生費や住宅などの施設から生まれる便益があるからである9).

工業全体の賃金総額および国有企業の福祉厚生費比率(賃金総額に占める福

祉厚生費の割合)が得られるが,それを加えてもかなり低い数値になってい

る.住宅に関する部分は反映されていないからである.ただし,住宅に関す

るデータが得られないだけでなく,得られてもその評価がきわめて難しい.

やむをえず,その部分を賃金十福祉厚生費に10%を加算した.それにして

も過小評価の可能性があるので,それにさらに1O%を乗じてみた.結局,

労働分配率は3つの系列が得られた.すなわち,賃金十福祉厚生費が系列①,

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(22)   一橋論叢 第124巻 第5号 平成12年(2000年)11月号

それに1O%を乗じたものが系列②,さらに10%を乗じたものが系列③であ

る.

 成長率の分解 上記r成長会計方式」によって,完成車メー力一の成長率

を分解してみた.その結果は表2に示されているが,そこから次のことが分

かる.

 1)全期問(50~90年)を通してみると,G(γ)は22.24%,G(L)は

12.41%,G(γ/五)は9.84%であるから,完成車メー力一の生産拡大は生産

性よりも労働力の増加に強く依存していた.これは,筆者が別稿でr外延的

成長」と「内包的成長」に関する主張と一致している、すなわち,完成車メ

ーカーの成長は主として資本や労働の投入によって達成されたが,技術進歩

を合めた生産性の向上も無視できない.

 2)全期間を通じて,Rは6.93~7.71%、EG(K/L)は2.13~2.91%であ

るから,生産性の向上は,資本労働比率の上昇よりも技術進歩による部分が

大きい.しかし,それはおもに文化大革命以前の時期に起きた現象であり,

後の時期についてはむしろその反対である.

 3) 資本関係の指標(0(K)や0(K/L)およびEG(K/五))を除いて,ほ

かの諸指標(G(17)やG(ム)およぴ0(γ/ム))は前の時期ほどその成長率が

高い、この傾向はとくに大躍進前の時期により明瞭である.すなわち大躍進

前の時期における生産性の成長は,資本投下以外の要因(例えぱ技術進歩)

による部分が相対的に大きい.

 4)第3点と対照的に,全期問を通して資本の投下が均等的に行われた.

そのため大躍進前の時期(50~57年)を除いて,資本労働比率の上昇が生

産性のそれより高くなってきた.その結果,技術進歩は低下したのである.

企業グループ別にみると、新設企業ほどより多くの珪本投下が行われた傾向

にある.大躍進企業群(58~65年)と文革企業群(70~77年)はその典型

であろう.

 5) 技術進歩は時期によづて大きく変わっているが,大躍進を境にしてそ

の前の時期には大きなプラスの数値を示しているのに対して,その後次第に

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中国自転車工業の発展とイノベーシ目ン (23)

表2企業類型別成長率の分解

完成車企業全体 1950-90年 1950-57年 1957-65年 1965-77年 1977■90年

o(γ) 22.24 66.81 15.33 12.37 11.61

o(ム) 12.41 30.20 7.93 8.10 9.55

o(K) 16.14 25,19 13.76 13.52 15.14

0(γκ) 9-84 36.61 7.40 4.27 2.06

G(K/L) 3-89 一2.69 5.72 5.03 5.25

EG(K/ム)① 2.91 一1.84 3.92 3.91 3.91

EG(Kノ五)② 2.52 一1.57 3.35 3.41 3-38

EG(Kノ五)③ 2.13 一1.30 2.78 2.90 2.86

R① 6.93 38.45 3-47 O.36 一1.85

1~② 7.32 38.18 4.05 O.87 一1.33

R③ 7.71 37.91 4.62 1.37 一〇.80

リーダー企業群 1950-90年 1950-57年 1957-65年 1965-77年 1977-90年

o(γ) 18.76 60.67 13.85 1O.59 6.77

o(L) 8.36 28.82 3.99 1.93 5.98

G(K) 12.08 21.90 11.16 7.07 11.97

G(γノム) 1O.40 31,85 9.86 8.65 O.80

G(Kノ五) 3.98 一4,42 6.81 5.06 5.77

R① 7.41 34,99 5.06 4.70 一3.49

R② 7.81 34.55 5.74 5.21 一2.92

R③ 8.21 34,11 6.42 5.72 一2.34

伝統企業群 1950-90年 1950-57年 1957-65年 1965-77年 1977-90年

G(γ) 20.64 86.70 8,17 10.10 2.48

o(五〕 7.88 28.12 4.02 1.55 5.21

G(κ) 12.O1 30.15 7,15 9.92 7.17

o(γ/L) 12.76 58.58 4.15 8.56 一2.72

G(K/ム) 4.65 3.02 3.51 8.33 2.84

R① 9.24 56.16 1.76 2.1O 一4.83

R② 9.70 56.46 2.11 2.93 一4.55

R③ 1O.17 56.76 2.46 3.77 一4.26

大躍進企業群 1958-65年 1965-77年 1977-90年

o(γ) 10.81 13.60 9.89

G(L) 7.11 5.36 8.65

o(K) 22.90 12.05 12.24

0(γ/L) 3.70 8.24 1.24

G(K/ム) 14.77 6.38 3,76

R① 一6.41 3.29 一1.53

沢② 一4.93 3.93 一1.15

R③ 一3.45 4.57 一〇.77

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(24)   一橋論叢 第124巻 第5号 平成12年(2000年)11月号

文革企業群 1970-77年 1977-90年

G(γ) 52,82 19.26

G(ム) 36.83 6.57

G(K) 54.61 13.64

G(〃ム) 15.99 12.69

G(K/五) 13.78 6.63

R① 5.19 7.72

R② 6.57 8.38

R③ 7.95 9,05

改革企業群 1982-90年

G(γ) 12.53

o(五) 6.04

G(K) 11-15

o(γ/ム) 6.49

G(K/L) 5.13

1~① 2.71

R② 3.23

R③ 3.74

機械企業群 1982-90年

o(γ) 9.90

G(L) 1O.40

o(K) 9.190(γ/ム) 一〇.49

θ(K/ム) 一〇.84

R① O.15

R② O.06

R③ 一〇.02

注:1) γ:1980年価楮粗付カロ価値額,K:1980年価格粗固定資本額,ム:従業員

   数,E:資本の分配率,R:成長率の残余=G(γノム)一亙0(κκ),G:成長率.

  2) 3年移動平均値による.

  3)①は分配率(1)=賃金十福祉厚生費,②は分配率(2)=分配率(1)×10%,

   ③は分配率(3)=分配率(2)×1O%.

  4)企業分類は関権[2000]を参照,リーダー企業の数は3,伝統企業は2,

   大躍進企業は8,文革企業は31,改革企業は36,機械企業は8. 1

出所1自転車工業の生産額,固定資本額,従業貞数はr業界統計」(本文参照).

   軽工業の付加価値率は国家統計局工業交通司[1992].

   工業全体の労働分配率は国家統計局社会統計司[1987],

   国家統計局社会統計司・労働部総合計画司[1992].

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中国自転車工業の発展とイノベーション (25)

低下し,改革期にむしろマイナスに転落してしまった.ただし企業類型別に

みると,文革前の時期(とくに大躍進前)にはリーダー企業群と伝統企業群

の双方では高かったが,大躍進前の時期に伝統企業ではリーダー企業よりも

高かった.文革期(65~77年)には各企業群では比較的安定した技術進歩

が実現された.しかし改革期(77~91年)には古い企業よりも比較的新し

い企業群(機械企業群を除いて)が優勢を示している.すなわち,技術革新

の主役は時代によって変わりつつあるのである.

 ここでは1つの問題が浮かぴ上がうている.第2節では,主要メー力一の

技術革新が改革期に前の時期よりも盛んであったと主張したが,その技術革

新の効果が総要索生産性(あるいは技術進歩率)に反映されていない.逆に

前の時期に技術革新がさほど盛んでなかづたにもかかわらず,総要素生産性

がかなり高い数値を示している.これは,資本の投下は時期的にほぼ均等に

行われたのに対して,生産の拡犬(成長率)は低下したためであると思われ

る.言い換えれば,改革期に技術進歩があったものの,要索(とくに資本)

投入の増大に及ぱなかったのである.

 (2)技術革新の性質

 それでは,自転車]二業の技術革新はどのような性質をもつものであったろ

うか、図1は,企業類型別技術進歩の過程を示したものである.また完成車

メー力一全体の技術進歩の性質を調べるために,資本係数を非説明変数,労

働係数を説明変数とする回帰分析を行づてみた(図1)m).

 完成車メー力一全体の技術進歩バターンを見よう.全期間を通じて労働係

数と資本係数の組み合わせが原点に向かって大きく移動した.すなわち,労

働生産性と資本生産性が共に上昇した.これはその期聞に何らかの技術進歩

が発生したことを意味する.しかし,その技術進歩は時期にようてだいぶ異

なる性質を持っている.最も注目すべきは,50~59年に起きたやや労働集

約的な技術進歩であり,それは完成車メー力一の生産性を大きく上昇させた

効果を持っている.しかし,その次の大躍進期(59~62年)には技術進歩

どころか,生産性は56~57年のレベルに戻づてしまった.次の62~72年に

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一橋論叢 第124巻 第5号 平成12年(2000年)11月号

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485

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中国自転車工業の発展とイノペーション (27)

はやや資本集約的な技術進歩が存在していたが,72~77年には資本は増加

したものの労働生産性はむしろ低下した.さらに,77~90年には資本集約

的技術進歩があったと考えてよい.

 次に,企業問における技術水準の格差を検討しよう.第1に,長期的に見

れば,リーダー企業は他の企業グループより一歩進んだ技術を持っていた.

例えば,90年時点での技術水準はリーダー企業が最も高く,その次に大躍

進企業,さらに改革企業,文革企業,伝統企業,機械企業の順である、第2

に,企業類型によづて技術進歩の発生時期と性質が異なる.文革企業では初

期には資本集約的,その次にやや中y的技術進歩がそれぞれ実現されていた

大躍進企業も似たようなパターンを示している.しかし,機械企業では初期

には大きく前進したが,その後元のレベルに戻った.第3に,皮肉的にも改

革期には目立った技術進歩が観察されない.文革企業と改革企業を除いて,

資本投入が大きいものの生産性があまり伸びなかった(表2を参照).

4技術革新の組織と政策

 技術革新の数量・質量が国によって異なることは,研究者のレベルの違い

にだけでなく,各国の技術政策やR&D組織にも深く関わる.とくに市場

が基本的に存在しない社会主義では,その技術革新は西側諸国よりも政府の

政策や研究組織のあり方に左右される.

 (1)R&D組織

 中国では,特許法が成立する(1985年)まで,個人の技術革新の成果が

保護されるシステムがなかったため,すべての技術革新活動が研究機関や大

学および企業といった組織の中で行われていた.しかも,技術革新活動と研

究組織は強く政治的変動の影響を受けた.自転車工業においては,50年代

末に藩陽,天津,上海などの自転車工場に研究組織が設立され,60年代の

前半まである程度の発展ができたが,文化大革命中にはそのほとんどが解散

された.78年以後,上海,天津,藩陽,広州,青島などで研究所が相次い

で成立(あるいは回復)した.ここでは天津自転車の事例を簡単に紹介しよ

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(28)   一橋論叢 第124巻 第5号 平成12年(2000年)11月号

う.

 解放前,天津自転車では4種類の製品しか生産できなかった.57年に初

めて新製品試作組が発足し,小輪車と女性用軽便車を試作した.64年に13

型屈曲フレーム女性用車,22型男性用軽便車,18型普通車,65年に23型

と24型の開発に成功した.文化大革命中,変速装置などプロセス革新に多

くの成果をあげている(表1).81年に科学研究科が成立し,81~90年に22

型普通卒,45型・48型軽便車,56型軽便車,82型・53型軽便車など,数

多くの優秀自転軍を作り出した.ブロセス革新としては,護謹押出成型,中

間周波誘導溶接,アルゴン・アーク帯接,マルチ火炎溶接などが挙げられ

る11〕.

 (2)技術政策

 鑑定・登録制度 国家科学技術委員会が59年に「新製品新技術の鑑定に

関する通知」,61年に「新製品新工程の鑑定に関する暫定方法」,63年に

r科学技術研究成果の報告と登録に関する規定」を相次いで公布し,新製

晶・新工程の技術水準,経済価値,応用範囲・条件などについて,国家鑑

定・部門鑑定・地方鑑定・下部組織鑑定の4級に分けて行い,鑑定で承認さ

れた技術は鑑定証明書が配られ,科学技術研究成果登録力一ドに登録される

ことを規定した.これらの条例に基づいて63~65年に1万件,66~77年に

2万件,78~85年に4万件の研究成果が鑑定・登録された12).第2節で紹介

された白転車の新製品一は,すべて軽工業部や地域および業界の鑑定で認めら

れたものである.

 奨励制度 50年代,国務院がr発明権と専利権を保障する暫行条例」,

「生産に関する発明・技術改進およぴ合理化建議奨励暫行条例」,「中国科学

院科学奨金暫行条例」を発布したが,57年に中止され,62年に回復され,

文化大革命中にまたも申止され,78年以後大幅に修正された.50~85年に,

上記条例に基づいて実施された奨励は1,392件もあづた13).自転車工業にお

いては,79~90年に13種類の自転車と3種類の部品が国家銀賞を獲得した

ほか,27種の自転車と71種の部品が軽工業部の優秀製品として表彰され

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中国自転車工業の発展とイノベーション (29)

表3 完成車品質の審査結果(1959-83年)

年次 第1位 第2位 第3位 第4位 第5位1959 上海(永久) 上海第3(鳳恩) 天津(飛鵠) 青島(金鹿〕 藩陽(白山)

1960 青島(金鹿) 上海(永久) 上海第3(鳳恩) 天津(飛鵠) 天津第2(紅旗)

1963 上海(永久) 上海第3(鳳鳳) 天津(飛鵠) 藩陽(白山) 青島(金鹿)

1965 上海第3(鳳恩) 上海(永久) 青島(金鹿) 天津第2(紅旗) 天津(飛鵠)

1971 上海第3(鳳風) 上海(永久〕 脅島(金鹿) 北京(火炬) 杭州(杭州)

1972 上海第3(鳳恩) 上海(永久〕 天津(飛鵠) 無錫(長征) 北京(火炬)

1975 上海第3(鳳恩) 上海(永久) 青島(金鹿) 天津(飛鵠) 南京(大橋)

1977 上海第3(風風) 上海(永久) 天津(飛鵠) 天津第2(紅旗〕 青島(金鹿)

1978 上海第3(鳳鳳) 上海(永久) 背錨(金鹿) 天津(飛鵠) 天津第2(紅旗)

1979 上海第3(風風) 天津(飛鵠) 天津第2(紅旗) 度門(武爽) 青島(金鹿)

1980 天津(飛鵠) 上海(永久) 天津第2(紅旗) 上海第3(鳳風) 常州(金獅)

1982 天津(飛鵠) 上海第3(鳳鳳) 一ヒ海(永久) 天津第2(紅籏) 安陽(飛鷹)

1983 鞍山(梅花) 天津(飛鵠) 上海第3(鳳鳳) 天津第2(紅旗) 上海(永久)

年次 第6位 第7位 第8位 第9位 第10位

1959

1960 藩陽(白山)

1963 天津第2(紅旗) 広州(五羊)

1965 藩陽(白山) 広州(五羊〕

i971 長春(梅花鹿) ハルピン(孔雀) 無錫(長征) 港陽(白山) 天津(飛鵠)

1972 青島(金鹿) 杭州(杭州) 天津第2(紅旗)

1975 天津第2(紅旗) 広州(五羊) ハルピン(孔雀)

1977 藩陽(自1」」) 広州(五羊)

1978 藩陽(白山) 広州(五羊)

1979 上海(永久) 広州(五羊) 鞍山(梅花) 無錫(長征) 南昌(井岡山)

1980 鞍山(梅花) 安陽(飛鷹) 江門(海鴎) 玉林(飛躍) 長沙(鯉鵬)

1982 無錫(長征) 常州(金獅) 広州(五羊) 無錫(長征) 藩陽(白山)

1983 常州(金獅) 安陽(飛鷹) 衡陽(喜鵠) 藩陽(白山) 紹興(飛花)

注1 表示は企業名,括弧内は製品,

   いる.

出所:天津自転車[1990].

企業名にはrO○自転車工場」が略されて

たM)、

 特許制度 50年に,特許法に当たる「発明権と専利権を保障する暫行条

例」が公表されたが,ほとんど機能せずに63年に廃止された15)、85年に

「中華人民共和国専利法」が制定された.特許法の成立を受けて,自転車工

業の技術革新活動は一層盛んになった.85~90年に出願された特許・実用

新案・意匠が合わせて1000件も超え,その中に優れる技術革新が合まれて

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(30)   一橋論叢 第124巻 第5号 平成12年(2000年)11月号

いる16).

 その他 業界・民問団体などでは,各種の技術革新促進活動を行っている.

展覧会の開催,研究成果の出版,生産許可証の認定や品質鑑定などがそれで

ある17).表3では;59~83年に行われた自転車の品質鑑定会の結果が示さ

れている.これによると,リーダー企業(上海自転車,上海第3自転車,天

津自転車)の製品が常に上位に位置することが分かる、しかし,第4位以下

は激しい変動を示している これは,社会主義中国にもある種の競争が存在

することを意味するであろう、

5 おわりに

 以上の分析で得られた結論は次の諸点にある.第1に,自転車工業では長

期にわたって数多くのプロダクト革新とプロセス革新が行われた.そして,

それらの技術革新活動は政治的変動の影響を強く受けている.

 第2に,技術革新の成果は一応生産活動に反映されている.すなわち,自

転車工業の(生産性の)成長は労働や資本などの生産要素の投入のみでなく,

技術進歩によっても支えられている.これは筆者の「外延的成長」・「内包的

成長」論を支持している.しかし,その技術進歩は時代と企業によって必ず

しも同様ではない.

 第3に,長期的に見ると,完成車メー力一全体では前期(50年代)に中

立的技術進歩,後期(80年代)には資本集約的技術進歩があうた.そして

前半と比べて,後半では技術進歩率は下がっている.これは資本が時期的に

均等的に投入されたことと深く関わっている.

 第4に,技術革新の変動にはその背後要因としての組織と政策が働いてい

るが,これも強く政治的変動の影響を受けている.また中国の技術政策は,

企業の競争意識を高める役割を果たしている.

 最後に,本稿で解決されなかった課題を3点挙げよう.1つは,技術革新

の要因あるいは条件として,人的資源や市場の役割などをも議論すべきであ

る.2つ目は,上海自転車などの優良企業あるいはリーダー企業はなぜ存在

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中国自転車工業の発展とイノベーション (31)

するのか,を検討すべきである.3つ目は,市場が基本的に存在しない社会

主義国の技術革新の源泉は何かである.資本主義国の技術革新については,

「デマンド・プル」説と「テクノロジー・プッシュ」説が存在する.また,技

術革新と市場構造との関係を示したrシュンペーター仮説」もよく知られる.

* 本稿の作成に当たウて,尾高僅之助氏(法政大学)から貴重なコメントをいた

 だいた.また片岡康子氏(一橋大学)に目本語のチェックをお願いした.ここに

含わせて謝意を表したい.

1) 関[2000コを参照.

2)技術革新と技術進歩はほとんど同義に用いられるが,多少異なる合意を持っ

ている.前者はプロダクト革新とブロセス革新を合めた工学的意味の強い概念で

 あるのに対し,後者は生産関数の上方へのシフトを指すが,そこには組織的改善

 や従業員の熟練など非工学的(経済学的)意味合いの強い表現である.

3) 劉[1999]は中国の生産性に関する最近の研究を整理している.

4)各車種のより詳細な内容については、上海市自転車集団[1991]13-21頁を

参照.

5)詳細は,中国自転車協会[1991]80-88頁,およぴ上海白転車集団公司

 [1991]61頁を参照.

6) メッキ(323台)・溶接(M7台)・塗装(141台)設備が最も多い(中国自転

車協会[1991]89頁).

関[2000]では,これらのメー力一の概要を紹介している.

業界統計の性格については,関[2000]を参照.

南・本台[1999]は1980年代の分配率を推計している.

この計測の意味については,佐久問[1986]第6章を参照.

天津自転車[1990コを参照.

当代中国叢奮編集部[1991]149-151頁.

当代中国叢審編集部[1991コ169-170頁、

中国自転車協会[1991コ163-170頁.

r資本主義工商業に対する社会主義的改造」が完了した1957年以後,私有経

 済が実質的に存在しなくなったため,個人の発明権を保陣する意義がなくなった

 のである.

16) 中国自転車協会[1991]128頁.

17) 当代中国叢書編集部[1991]153-165頁.

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(32)   一橋論叢 第124巻 第5号 平成12年(2000年)11月号

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                   (一橋大学犬学院商学研究科助教授)

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