設計製図 I 授業計画-2003B-1.等角投影(isometric projection)...

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1 夏休み期間内における作業はオープンスペースを利用のこと ただし、716日は実習室2の利用は終日利用可 機械システム、エネルギー機械の利用期間中に利用できるよう交渉の予定 1 設計製図 I 授業計画-2003 担当:石田・下村・牛尾 必要品(第一、二週目および十一週目):方眼紙(A4)、鉛筆、消しゴム、定規(あれば、三 角定規も)、図形科学のテキスト 第一週目(4/14):投影法の説明と演習(立体と三面図)(5-305) 課題1:立体イメージから三面図へ(提出) 課題2:三面図から立体イメージ(アイソメトリック)(提出) 第二週目(4/21)JISに基づく製図法(5-305) 寸法の入れ方、各種記号の説明と実習 課題3:寸法未記入三面図への寸法記入!(提出) 第三週目(4/28)3D CAD Pro/ENGINEERの概要説明と三次元イメージの作成(5-305/習室2) 5-305室にて3D CAD Pro/ENGINEERの概要を説明し、総合情報センター実習室 2Pro/ENGINEERの起動・終了等の実習を行う。 第四週目(5/12)Pro/ENGINEERを用いた三次元イメージの作成(以下、実習室2) 簡単な三次元イメージの作成(直方体、円柱()など)、その他必要な機能の練習 第五・六週目(5/195/26)課題3の図面に基づいた三次元イメージの作成、三面図の作成 課題4:寸法記入済み三面図!(提出) 第七・八週目(6/026/09):フランジ型たわみ軸継手の三次元イメージの作成 フランジ型たわみ軸継手本体A,B、座金三種類、ブッシュ、締結ボルト、ナットの計8 種類の部品の三次元イメージの作成 第九・十週目(6/166/23):アセンブリと組立図 簡単なモデルを使ったアセンブリの基礎とフランジ型たわみ軸継手のアセンブリ 課題5:アセンブリ図面(三面図とアイソメトリック)と寸法を記入した部品図(提出) 第十一週目(6/30):機械部品の製図(1)(5-305) 実際の機械部品のスケッチと採寸を行う。 第十二-十五週目(7/07,7/14-9/10):機械部品の製図(2-5)(実習室2) 1 第十一週目にスケッチと採寸を行った機械部品について、Pro/ENGINEERを用い て三次元イメージを作成し、図面を作成する。 課題6:スケッチ(寸法を記入したもの)と最終図面(部品図・組立図)(提出) 教科書: 大西 清、基礎製図、理工学社 大西 清、基礎製図、理工学社 大西 清、基礎製図、理工学社 大西 清、基礎製図、理工学社(生協で販売)

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1夏休み期間内における作業はオープンスペースを利用のこと

ただし、7月16日は実習室2の利用は終日利用可

機械システム、エネルギー機械の利用期間中に利用できるよう交渉の予定

1

設計製図 I 授業計画-2003

担当:石田・下村・牛尾

 必要品(第一、二週目および十一週目):方眼紙(A4)、鉛筆、消しゴム、定規(あれば、三

角定規も)、図形科学のテキスト

第一週目(4/14):投影法の説明と演習(立体と三面図)(5-305)

課題1:立体イメージから三面図へ(提出)

課題2:三面図から立体イメージ(アイソメトリック)(提出)

第二週目(4/21):JISに基づく製図法(5-305)

寸法の入れ方、各種記号の説明と実習

課題3:寸法未記入三面図への寸法記入!(提出)

第三週目(4/28):3D CAD Pro/ENGINEERの概要説明と三次元イメージの作成(5-305/実

習室2)

5-305室にて3D CAD Pro/ENGINEERの概要を説明し、総合情報センター実習室

2でPro/ENGINEERの起動・終了等の実習を行う。

第四週目(5/12):Pro/ENGINEERを用いた三次元イメージの作成(以下、実習室2)

簡単な三次元イメージの作成(直方体、円柱(筒)など)、その他必要な機能の練習

第五・六週目(5/19・5/26):課題3の図面に基づいた三次元イメージの作成、三面図の作成

課題4:寸法記入済み三面図!(提出)

第七・八週目(6/02・6/09):フランジ型たわみ軸継手の三次元イメージの作成

フランジ型たわみ軸継手本体A,B、座金三種類、ブッシュ、締結ボルト、ナットの計8

種類の部品の三次元イメージの作成

第九・十週目(6/16・6/23):アセンブリと組立図

簡単なモデルを使ったアセンブリの基礎とフランジ型たわみ軸継手のアセンブリ

課題5:アセンブリ図面(三面図とアイソメトリック)と寸法を記入した部品図(提出)

第十一週目(6/30):機械部品の製図(1)(5-305)

実際の機械部品のスケッチと採寸を行う。

第十二-十五週目(7/07,7/14-9/10):機械部品の製図(2-5)(実習室2)1

第十一週目にスケッチと採寸を行った機械部品について、Pro/ENGINEERを用い

て三次元イメージを作成し、図面を作成する。

課題6:スケッチ(寸法を記入したもの)と最終図面(部品図・組立図)(提出)

教科書: 大西 清、基礎製図、理工学社大西 清、基礎製図、理工学社大西 清、基礎製図、理工学社大西 清、基礎製図、理工学社(生協で販売)

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参考書: 大西 清、JISにもとづく標準製図法、理工学社

大西 清、JISにもとづく機械設計製図便覧、理工学社

太田幹郎、Pro/ENGINEERの基礎から応用へ、山海堂

太田幹郎、Pro/ENGINEERの基礎から応用へII、山海堂

太田幹郎、入門Pro/ENGINEER、日経BP社

David S. Kelley, Pro/ENGINEER Instructor, McGraw-Hill 等

注意事項

特に、課題三面図について、以下の点が減点対象になるので、注意しておくこと。

1.組立図・分解図

隠線がある場合(特にワイヤフレームの場合は減点が大きい)

ボルトまたはネジの頭部がおかしい場合

   組立図・分解図それぞれについて評価

2.部品図

基本的に、全ての寸法が入っていることを基本とする。

減点対象

2.1寸法不足

主要寸法(部品製作上必要な寸法)不足は一個所毎

その他の寸法(例えば、面取り、角R)不足は一個所毎に

2.2不要な線

隠線がある場合

ワイヤフレーム

2.3必要な線

必要な隠線がない場合

2.4断面図

ない場合

寸法不足の場合:一ヶ所毎に(主要寸法、その他の寸法不問)

2.5引き出し線、寸法線

不適切な引き出し線、不適切な寸法線

2.6その他

寸法の矛盾、ネジ山なし など軽微なミス。

寸法記入については、Pro/ENGINEERの寸法記入はJISの規格とは異なるため、手

書きでもよい。

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図図図図1 投影の種類

1. 投影と製図の基礎 投影と製図の基礎 投影と製図の基礎 投影と製図の基礎

1.1 投影 投影 投影 投影

 物体を平面上に図示することを投影(projection)といい、この図を投影図(projection

drawing)という。投影図を描く平面を投影面(plane of projection)、目の位置を視点(point of

sight)、視点と物体の各点を結ぶ直線が物体の各点と投影面間にある線分を投射線

(projection line)という。投影面は視点と物体との間におかれる。投影は、図1のように大別

できる。

 機械製図には多くの場合正投影が用いられ、軸測投影や斜投影は見取図などに用い

られる。標高投影は地図や土地の造成図に、透視投影は建築製図などに多く用いられる。

 以下、各投影について簡単に説明する。

1.2 平行投影 平行投影 平行投影 平行投影

 視点と物体との間の距離が無限に長い場合、視線は平行になる。視線が互いに平行な

投影法のことを平行投影という。図2左に平行投影の概念を示す。

1.2.1 垂直投影 垂直投影 垂直投影 垂直投影

図2右のように、投影面と視線とが常に垂直になるような投影法である。この中には、正投

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図図図図2 平行投影と垂直投影

図図図図3 正投影(第三角法)

影、軸測投影、標高投影が含まれる。

A.正投影正投影正投影正投影   異なる方向からながめたいくつかの図を組み合わせて物体を表現する方

法である。一般的には、透明な箱の中に物体をおき、互いに垂直な三つの面とそれらに

平行な三つの面の合計六面を投影面とする方法である。図3に正投影の例を示す。左は

投影対象の物体であり、右が第三角法によって作成した正投影である。この投影法は製

図において使われる投影法である。製図においては、通常、互いに垂直な三面(正面、

平面、右側面)を選んで表現する。第三角法のほかに第一角法もあるが、これらについて

は後で少し詳しく述べる。

 図3はPro/ENGINEERを用いて作成した。この図において、TOP、FRONT、RIGHTと表現されて

いるものがデータム面と呼ばれる基準面である。左の図は、後で述べる軸測投影のうちの等角投

影を用いている。)

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図図図図4 傾斜した台にのせた立方体と投影面への投影

B.軸測投影軸測投影軸測投影軸測投影  図4のように、傾斜した台の上にのせた物体を箱の中に入れて、一つの方

向から眺めて写しとると、三つの面を同時に表現することができる。このような図の表現を

軸測投影と呼ぶ。物体をのせる台の傾斜角度や垂直軸回りの回転角度によって、等角

投影、二等測投影、不等角投影に分けられる。

B-1.等角投影等角投影等角投影等角投影(isometric projection)  軸測投影の中でよく用いられるものとして、等角

投影(Pro/ENGINEERでは、ソリッドモデル作成時のデフォルト方向として、この等角投影

と不等角投影がある。)がある。等角投影を図5に示す。この投影法では、立方体のひとつ

の頂点(図5の点O)に集まる三本の稜線が同じ角度( )で交わるように立方体を傾斜さ120°

せる。このとき、投影面上では線分OA、OB、OCの長さはすべて等しい。特に、立方体の

一つの面に向かって東南の方向から対角線方向に(すなわち、 の角度で)見下ろ35.26°

した場合の見え方と同じであることから、東南等角図と表現する場合もある。

 等角投影と呼ばれるものには二種類あり、ひとつは投影面での長さの実長に対する比

 図4はPro/ENGINEERを用いて作成した。投影面はASM\_FRONTと書かれている面内にある。

ASM_FRONT面はアセンブリを行う際のデータム面である。その他、ASM_TOP、ASM_RIGHTが

ある。この例では、傾斜した面に立方体の面をのせるために、上に述べた三つのデフォルトデータ

ム面の他にADTM1やADTM2というデータム面も作成してある。なお、通常、部品のデータム面な

ども表示されるが、煩雑さを避けるために[レイヤー]機能を使って表示していない。

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図図図図5 等角投影

図図図図6 三面図(第三角法)と等角投影

率(縮率)が になっているものであり、もう一つは実際の長さと同じにとるもの0.8165(' 2/3)

である。後者を等角図と呼ぶ。後者は前者に比べて投影された図は大きくなる。立体イ

メージとして三面図とともに表示する場合は、前者のほうがよいようである。

 等角投影については、後で詳しく述べる。参考までに、図6に、立方体の三面図とともに

表示した等角投影を示す。この図には、対応する面がわかりやすいように、数字を入れて

ある。

 図6はPro/ENGINEERを使って作成したものである。第三角法による三面図と等角投影に同じ縮尺を指定している。実際に長さを測ってみると、縮率0.8165は保たれている。)

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図図図図7 二等角投影

図図図図8 不等角投影

B-2.二等角投影二等角投影二等角投影二等角投影(dimetric projection)  図7に二等角投影を示す。二等角投影では、

が保たれるが ではない。したがって台の傾斜角も 以外の値をとる。21'22 30° 35.26°

 縮率などは、傾斜角が決まれば一意に決まる。たとえば、傾斜角が であるとするNy'20°

と、縮率は

lx/L'ly/L'0.7473 , lz/L'0.9397

である。また、投影面内において、水平線と線分OAがなす角度 は、後に示すように21

21'tan&1(sin Ny)

で与えられるから、 を代入すると、 となる。Ny'20° 21'22'18.88°

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図図図図9 Pro/ENGINEERにおける等角投影と不等角投影

図図図図10 三面図(第三角法)と不等角投影

B-3.不等角投影不等角投影不等角投影不等角投影(trimetric projection)  図8に不等角投影を示す。不等角投影では、

立方体の三本の稜線OA、OB、OCの投影面上での長さはすべて異なる。また、これらが

なす角度も異なる。この投影は、上に述べた等角投影や二等角投影でz軸回りの回転角

が 以外になった場合と考えればよい。45°

 Pro/ENGINEERが等角投影のほかにデフォルトとして用意している投影には不等角投

影がある。図9に、Pro/ENGINNERの等角投影と不等角投影を示す。左が等角投影で、

右が不等角投影である。この図には、対応する面がわかりやすいように、数字を入れてあ

る。左の等角投影はすでに述べたものと同じルールに従っている。

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図図図図11 標高投影

 参考までに、図10に、第三角法による三面図とともに表示した不等角投影を示す。

C.標高投影標高投影標高投影標高投影  地図などのように、上から見おろした平面図に高さを表す情報(等高線)を

描き加えたものである。例としては、地形図がある。その他、広い範囲にわたっての気圧

の状態を表す情報(等圧線)を描き込んだ気象観測図などがある。図11に標高投影の例

を示す。

1.2.2 斜投影 斜投影 斜投影 斜投影

 代表的な一つの面を投影面と平行に置き、視線と投影面とのなす角を斜めにしたもの

である。斜投影に属するものとしては、カバリエ投影(cavalier projection)、キャビネット投

影(cabinet projection)、一般斜投影がある。これらは、投影図の上での奥行きの表し方の

違いである。

 図12に、三種類の斜投影を示す。(A)はカバリエ投影であり、角度 は任意角、視線と"

投影面とのなす角度は である。(B)のキャビネット投影は、角度 は任意角、視線と投45° "

影面とのなす角度は である。(C)の一般斜投影は、角度 は任意角、視線と投影63.43° "

面とのなす角度も任意角、xはL、L/2以外の任意の長さである。

 カバリエ投影では、立方体の稜線の長さはすべて等しく表現される。このことによって、

稜線の長さを直接測ることができるという利点がある。これは、描く上での利点でもある。し

かし、すこし間延びしたように見える点が欠点である。キャビネット投影では、投影面に垂

直な稜線は実長の1/2で描かれる。そのため、カバリエ投影に比べてリアルに見える。

 Pro/ENGINEERの日本語版では「斜投影」となっている。英語版はtrimetricと表現されており、明

らかに不等角投影である。誤訳であると考えられる。

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図図図図12 斜投影

図図図図13 透視投影

1.3 透視投影 透視投影 透視投影 透視投影

 透視投影は、視線が視点に集中する投影法である。図13に示すように、視点の数に

よって、(A)一点透視投影(one-point perspective)、(B)二点透視投影(two-point

perspective)、(C)三点透視投影(three-point perspective)がある。この図を見る限り、「視

点」というより、「消点」と表現した方が適切かもしれない。この投影法は機械系の設計製

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図図図図14 円柱、角柱、板

図ではあまり用いられることはなく、マンションのパンフレットのように、建物の完成予想図

などビジュアルな要素が重視される図に用いられる。

 一点透視では、三次元空間の物体の一つの軸に平行な線は全て一つの消点(vanishing

point)に集まる。この軸に垂直な面内における互いに垂直な残りの二つの軸は互いに垂

直なままである。この透視投影を作成するためには、一つの軸を主軸として、それに垂直

な面を投影面とする。二点透視では、二つの消点をとり、二本の主軸に平行な線は、そ

れぞれの消点に集まる。消点に集まる主軸方向の線はすべてその主軸方向の消点に集

まる。残りの軸方向に平行な線だけが平行を保つ。三点透視では、すべての主軸方向の

線が対応する消点に集まる。

1.4 再び、正投影 再び、正投影 再び、正投影 再び、正投影

 ここでは、正投影について、描き方や製図との関連を中心にもう少し詳しく述べる。

 すでに述べたように、異なる方向からながめたいくつかの図を組み合わせて物体を表

現する方法を正投影という。一般的には、透明な箱の中に物体をおき、互いに垂直な三

つの面とそれらに平行な三つの面の合計六面を投影面とする方法である。図3に第三角

法による正投影の例を示した。この投影法は製図と密接な関わりあいがある投影法であ

り、製図においては、特に必要でなければ、互いに垂直な三面(正面、平面、右側面)の

みを用いて表現する。もう少し詳しく考えてみよう。

 図14に示す円柱、角柱、板を投影する場合を考える。こ

の三つの物体を一つの投影面Verticalに投影すると、図

15の左の図のように投影図(ハッチングで示す)はすべて長

方形となり、三つの物体の区別がつかない。そこで、図

15の右の図に示すように平面Ver t i ca lに垂直な平面

Horizontalを追加し、この面に投影すればその奥行が示さ

れる。物体の形状などを表す場合、一般に最低二つの投

影面が必要であるが、便宜上その一つを水平に、他をこれ

に垂直にとる。この水平な平面を水平投影面(horizontal plane

of projection)または単に水平面(horizontal plane)、垂直な

平面を垂直投影面(vertical plane of projection)あるいは単

に垂直面(vertical plane)といい、その両投影面の交わりを

基線(grand line)という。

 水平面上の投影図を水平投影図(horizontal projection drawing)あるいは単に平面図

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図図図図15 円柱、角柱、板の投影(1)

X Y

Vertical

Horizontal

図図図図16 円柱、角柱、板の投影(2)

(plan)または上面図(top view)といい、垂直面上の投影図を垂直投影図(vertical projection

drawing)あるいは単に立面図(elevation)または正面図(front view)という。水平面と垂直面

に垂直な側面(profile plane)上の投影図を側面図(profileまたはside view)という。

 図15の右の図の投影面Horizontalを基線まわりに 回転させ、水平投影面と垂直投90°

影面とを同一平面に置くと、図16に示すように平面図は基線XYの上方に、立面図は下

方に描かれる。(特に、このような単純な形状の物の場合、機械製図では図17のように、

単一図で物体の形を示すことができる。図で、N50(「まる50」と読む)は直径50mmの円

柱、□50(「かく50」と読む)は一片の長さが50mmの角柱、t5は厚さ5mmの板を表す。)

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図図図図17 円柱、角柱、板の投影(機械製図での表現)

図図図図18 空間内での物体と投影面

1.4.1 第一角法と第三角法 第一角法と第三角法 第一角法と第三角法 第一角法と第三角法

 空間は水平・垂直両投影面によって図18に示すように四つに区分され、水平面の上方

(z>0)で垂直面の前方(x>0)を第一角(first angle)、(z>0で)垂直面の後方(x<0)を第二角

(second angle)といい、水平面の下方(z<0)で垂直面の後方(x<0)を第三角(third angle)、

(z<0で)垂直面の前方(x>0)を第四角(fourth angle)という。

 物体を第一角(x>0、z>0)に置いた場合の正投影を第一角法(first angle projection)、第

三角(x<0、z<0)に置いた正投影を第三角法(third angle projection)という。図18はこの場

合の物体、投影面と視線(矢印で示す)の関係を示す。この図からわかるように、第一角法

「角」を「象限」と表現している本もある。

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正面図 左側面図右側面図

下面図

平面図

1 2

4 3

5 1

8 4

2 6

3 7

4 3

8 7

5 6

1 2

4 3

12

5 6

78

正面図左側面図 右側面図

下面図

平面図

1 2

4 3

5 1

8 4

2 6

3 7

4 3

8 7

5 6

1 2

4 3

12

5 6

78

図図図図19 第一角法投影(左)と第三角法投影(右)

では、物体の背後と下方に投影面が存在する。一方、第三角法では、物体の前方と上方

に投影面が存在する。言い換えれば、第一角法と第三角法の基本的な違いは、前者は

物体の入った箱の内壁に映った形状を写しとるのに対して、後者は箱の外から形状を写

しとる方法であるということができる。

 図19に第一角法と第三角法を示す。左の図は、物体が図18の第一角に置かれた場

合、すなわち第一角法である。この図で、たとえば正面1234は物体の後方にある投影面

に描かれる。平面図1256は正面図の下方に、物体を右側から見た右側面図2376は正面

図の左側に描かれる。右の図は、物体を第三角に置いた第三角法による投影図で、平

面図1256は正面図の上方に、右側面図2376は正面図の右側に描かれる。また、たとえ

ば、点2は正面図の右上に現れ、対応する点が右側面図の左上と正面図の右下に現れ

ることがわかる。これは、投影面が物体と目の間にあり、投影図の配置は物体を展開した

のと同じ関係にある。機械製図においては、第三角法によることが通例で、その利点は

(1) 図面が見やすいこと

(2) 作図がしやすいこと

(3) 図を折り曲げると実物が想像できること

(4) 寸法記入が理想的にできること

などがある。

補足補足補足補足  図18において物体と投影面との関係を述べた。このルールは正面図と平面図に

対しては理解できるが、右側面図をどのように描いたらよいかという点に関して多少あい

まいである。ここでは、右側面図に対するルールを次のように理解しておく。基本的には、

 第二角法と第四角法は不可能である。その理由は、図が重なってしまうからである。

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図図図図20 投影面の座標系

正面図および平面図を描く際に常にx>0およびz>0の方から眺め(図18の矢印)、第一角

法では「箱の内壁に映った形状を写しとる」のに対し、第三角法では「箱の外から形状を

写しとる」。このルールに基づくと、右側面図は第一角法においては壁に映し、第三角法

では外から写しとる。右側面図の場合の投影面はx-z面であり、y>0の方から眺めることに

なる。このとき、第一角法は物体の後方に、第三角法は物体の前方に投影面がくるように

するので、第一角法の場合はy>0の側に、第三角法の場合y<0の側に物体を置くようにす

るとよいことになる。すなわち、第一角法は三次元空間における直行する三つの軸(x軸、

y軸、z軸)がすべて正の方向によって形成される1/8空間内に物体が置かれ、座標面に投

影される。一方、第三角法では、三つの軸がすべて負の方向で形成される1/8空間内に

置かれ、座標面を通して物体を眺めるということになる。このように考えた場合の投影面で

の座標系を図20に示す。

1.4.2 三面図の描き方 三面図の描き方 三面図の描き方 三面図の描き方

 図21の左の図に示す立体の正面図、平面図、右側面図を第三角法により作図する。手

順は次のようである。

(1) 正面を決め(ここでは、面Aとする)、作図する。

(2) 基線XYをひき、矢印の作図線により平面図を作図する。

(3) 基線X1Y1をひき、正面図・平面図から矢印の作図線により、右側面図を作図する。

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16

B

C

A

X Y

A

B

X1

Y1

C

正面図

平面図

右側面図

図図図図21 三面図(第三角法)の描き方

かくれ線

図図図図22 見えない部分がある場合の例

以上で完成である。基線や作図線は、作図が完成後、消す。

 なお、正面図(front view)、平面図(top view)、右側面図(right-side view)の三つの図か

らなる図面を三面図という。

例題例題例題例題:見えない部分がある場合の表現見えない部分がある場合の表現見えない部分がある場合の表現見えない部分がある場合の表現  図22の左の図に示すような物体を表現する場

合、奥にある長方形の切り欠きは側面図ではわかるが、正面図や平面図では見えない。

このような場合、図22の右の図に正面図と平面図に破線を用いて描く。この線のことをか

くれ線という。

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(1) (2) (3)

(4) (5) (6)

図図図図23

1.4.3 演習問題 演習問題 演習問題 演習問題

 図23に示す物体の第三角法に基づいた三面図を描きなさい。いずれの場合も、数字の

側から物体を見た図を正面図とする。

1.5 再び、等角投影 再び、等角投影 再び、等角投影 再び、等角投影

 等角投影は軸測投影の中でよく用いられる。等角投影用の方眼紙も市販されている。

図5に等角投影の例を示した。この投影法では、立方体のひとつの頂点(図5では、点

O)に集まる三本の稜線が同じ角度( )で交わるように立方体を傾斜させる。このとき、120°

投影面上では線分OA、OB、OCの長さはすべて等しい。ここでは、すでに描かれている

第三角法で描かれた三面図を元に立体イメージとしての等角投影図を描くことを念頭に

おき、その描き方をまとめておく。

1.5.1 等角投影図の描き方 等角投影図の描き方 等角投影図の描き方 等角投影図の描き方

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図図図図24 アイソメトリック軸、非アイソメトリック軸など

 すでに描かれている三面図を元に立体イメージを等角投影図として描くことがある。さ

て、正面を南に向け、右側面を東に向けて物体を置く。この物体の東南上空に視点を置

き、 の角度で見下ろして物体を眺めるとき、正面、平(上)面、右側面の三面を一望35.26°

できる。

 等角投影の描き方にはいくつか方法があるだろうが、ここでは、次のような方法で作図

する。

(1) 三面図上で基準になる点(●印)を決める。基準になる点としては、正面図の右

下角の点が使いやすい。

(2) 三面図上での基準点を原点として、正面図において、左へHorizontal軸、紙面

に垂直下向きにDepth軸、上へVertical軸をする。(平面図においては、左に

Horizontal軸、上にDepth軸。右側面図においては、左にDepth軸、上にVertical軸)

(3) 等角投影図を描く平面上に水平線を描き、それに垂直にVertical軸をとる。

(4) Vertical軸に対して をなすようにHorizontal軸とDepth軸をとる。60°

(5) 三面図中の各面、特にアイソメトリック軸やアイソメトリック面(図24参照)に注目

し、面の角点のH-D-Vの座標値をもとめ、等角投影図中に実際の寸法H-D-Vに対

して同じ縮尺(0.8165倍)(場合によっては実際の寸法)で描き込む。

(6) 必要ならば、各軸に平行な補助線を描きながら等角投影図中の点を決める。

(7) 決定された点を結んで面の完成である。

(8) これを全ての面について繰り返すことによって、等角投影図が完成される。

ここで、アイソメトリック軸とは、回転前の座標系において座標軸に平行であった軸であ

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図図図図25 三面図とアイソメトリック軸

図図図図26 三面図と完成した面

り、アイソメトリック面とは、アイソメトリック軸によって囲まれる面であり、この面は回転前の

座標面に平行である。それ以外の軸や面は非アイソメトリック軸、非アイソメトリック面など

にと呼ばれる。

 図25に、最近点の位置、三面図上でのHorizontal軸、Depth軸、Vertical軸のとり方およ

びアイソメトリック軸のとりかたを示す。また、図26に作図された一つの面を示し、図27に

完成された等角投影図を示す。なお、図26では、実寸をとっている。

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図図図図27

1.5.2 演習問題 演習問題 演習問題 演習問題

 図27に示す三面図をもとに、等角投影図を描きなさい。

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2.寸法記入

2.1 寸法

 図面は、これを使用する人にわかりやすく、しかも工作が進むにつれて必要な寸法が、

計算せずに、直ちに見出せるものでなければならない。その意味で、寸法は機械製図の

生命である。寸法記入の巧拙は、現場での作業能率に大きな影響を与えるものである。

また、寸法の読み違いが原因となって発生する損害は、予想以上に大きい。現場の図面

を見ると、大切な注意事項が無視されたものもまだ多いので注意したい。

2.2 寸法記入上の注意点

 図面に寸法を記入する場合、次の点に注意しなければならない。

1.見るものの立場になって、明確な寸法を記入する。

2.寸法の記入もれをしないこと。

3.作業現場で、計算しなくても寸法が求められるようにすること。

4.寸法の記入法が、製作工程上に便利であるようにすること。

5.図面を、不鮮明にするような記入をしないこと。

6.記入方法は、とくに指示のない限り完成品の仕上がり寸法を用いること。

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Fig.2.1 課題3(縮小版、正確な図面は別途用意されている)

[課題3]次の三面図から寸法を測定し、寸法を記入せよ。なお、課題用の三面図は、別

途準備されている。課題用三面図に寸法記入の十分なスペースがなければ、フリーハン

ドの図面を描き、それに記入せよ。

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[課題4] [課題3]で寸法記入済みの三面図をもとに、Pro/ENGINEERを用いて立体イ

メージの作成ならびに寸法記入を行った三面図の作成を行え。

[課題5] 

1)別途配布する三面図をもとにPro/ENGINEERを用いて各部品の立体イメージを部品ご

とに作成せよ。

2)上で作成した部品をアセンブルして、アセンブルイメージを作成せよ。

3)寸法記入済みの三面図を作成せよ。

4)アセンブルイメージの三面図を作成せよ。

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図図図図29 課題3(縮小版、正確な図面は別途用意されている)

図図図図30 課題3のアイソメトリック

[課題3]次の三面図から寸法を測定し、寸法を記入せよ。なお、課題用の三面図は、別

途準備されている。課題用三面図に寸法記入の十分なスペースがなければ、フリーハン

ドの図面を描き、それに記入せよ。(教員用回答編)

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(教員用回答編)(課題2)