下肢動脈血流予測撮影法2010/10/22 · 撮影条件...
Transcript of 下肢動脈血流予測撮影法2010/10/22 · 撮影条件...
-
下肢動脈血流予測撮影法
近森病院 画像診断部 ◎小林 史典
高橋宏幸 中村伸治 島崎悟 久保行広 竹内実 中坂洋康 岸田豊和 和田佳晃
高知県 近森病院 画像診断部
X線CTにおける
-
目的
下肢動脈の血流速度は、患者の心機能や閉塞の有無などにより、大きく異なることが多い。 そこで、各放射線技師の経験値や技量に左右されることなく、ある一定以上の造影効果を得ることができる撮影方法が必要である。
さらに、撮影したデータから改善点を検討していくことで、より良い撮影法を目指し、職人芸的な撮影法を目指すものではない。
高知県 近森病院 画像診断部
-
考え方
「時間濃度曲線(以下TDC)は理想的には注入時間と立ち上がり時間は一致するは ずである。そして、何らかの方法で、造影剤到達時間を確認することが重要でありそれ によってピーク時間の大まかな予測が可能となる。」(図、1 CT造影剤理論より)
下肢動脈血流予測撮影法とは、一回のテストで腎動脈レベルでボーラストラッキング法
膝窩動脈でテストインジェクション法を行うことにより、二箇所の造影剤到達時間が分かる。そこで、注入時間を固定することで、ピーク時間の予測ができ、少しでも造影効果の高い時相で撮影することが狙いです。
25s(注入時間)
20s~25s(ピーク)
図、1注入時間と立ち上がり時間の関係
-
撮影条件
対象;ASOまたは動脈瘤(術後含む)患者で腎動 脈レベルから足関節レベルの撮影範囲の検査
使用装置;64列 Light speed VCT (GE社製) 造影装置;根元杏林堂 デュアルショットGX 管電圧;120kV 管電流;smart mA使用(noise index;9.57) 撮影時間;Rotation time、Pitch&speedで調節
-
造影条件
造影剤;濃度300mgI/ml,350mgI/mlの100mlシリンジ使用 生食;60ml使用
テスト;造影剤15ml(注入圧3.3ml/s) 生食30ml(注入圧5.0ml/s)
本番;造影剤量表1、注入時間25秒固定 (20mgI/Kg/s程度に設定) 生食30ml(注入圧は造影剤と同圧)
体重(Kg) ヨード量(mgI/K
g/s) 造影剤濃度(mgI/ml)
造影剤量(ml)
45未満 22.8(固定) 300 体重×1.9
46~55 22.8~18.5 300 85
56以上 21.25~ 350 85
表1、造影剤量
-
テスト撮影の流れ(①~③)
造影剤の流れ
②腎動脈レベルでボーラストラッキング法 ※造影剤の到達確認後(目視)すぐに テストインジェクションに移る
③膝窩動脈でテストインジェクション法 ※ピークが確認されるまで撮影
テスト撮影後、腎動脈レベルのTDCと、膝窩動脈のTDCをもとに、 撮影開始時間と撮影時間を決定します。
①15mlの造影剤を 注入します
-
(ボーラストラッキング法) スマートプレップに腎動脈 レベルの位置を入力
(テストインジェクション法) テストインジェクションに 膝窩動脈の位置を入力
※テストインジェクションに移行するまでに(腎動脈レベルから 膝窩動脈までのベッド移動時間) 、装置の都合上12秒程度か かるので、スキャンフェーズ開始時間を12秒とする
テスト撮影手順①
-
①
②
③
①腎動脈レベルの大動脈にROIをとる
②モニタフェーズをスタートさせ、造影剤到達が確認 出来たらすぐにスキャンフェーズ(テストインジェクション) に移行させる。
③膝窩動脈で造影剤の到達を確認する。そして MIROIでTDCを得る
テスト撮影手順②
-
二箇所で得られたグラフ
ボーラストラッキングでのTDC テストインジェクションでのTDC
※
このTDCを利用して、撮影開始時間と撮影時間を決定します。
※装置の制約により、テストインジェクション(腎動脈レベルから膝窩動脈までの移行時間) が始まるまで12秒程度かかる
-
下肢動脈血流予測撮影法 Ver.1での計算方法
高知県 近森病院 画像診断部
-
撮影時間の計算
・A秒;腎動脈レベル到達時間 ・20秒;TDCのピーク付近から、撮影開始 ・ET;Elapsed Time(注入開始からボーラストラッキング終了までの時間) ・12秒;腎から膝窩のベット移動時間(腎動脈レベルTDC終わりから膝窩動脈TDC始まりまでの時間 青矢印) ・B秒;膝窩動脈で得られたグラフでの到達時間(上グラフの場合、3×1=3秒)
撮影開始時間=A秒+20秒
スキャン時間=(ET+12秒+B秒-A秒)×1.7
3秒間隔
-
撮影時間計算の説明
Ver1の計算式は、すごく煩雑で使いづらく計算ミス になりやすい。そこで、Ver1のデータを参考にして
もっと簡単なVer2を考えました。
式を言葉で説明すると、注入開始から膝窩動脈到達までの時間(ET+12秒-B)を、注入開始から腎動脈レベル到達時間(A)で、引くことにより腎動脈から膝窩動脈までの移動時間が分かります。しかし、撮影範囲は腹部から足関節レベルまでなので1.7を積しています。1.7を積する理由は、膝窩末梢では急に血流速度が低下するので、それを補正するものです。
-
下肢動脈血流予測撮影法 Ver.2での計算方法
高知県 近森病院 画像診断部
-
撮影時間の計算
撮影開始時間=A秒+20秒
撮影時間=18秒+C秒 ・ A秒;ボーラストラッキング法での 腎動脈レベル到達時間 ・20秒;TDCのピーク付近から、撮影開始 ・18秒;腎動脈レベル到達時間からテストインジェクション開始までの時間(青矢印)と、Ver1の1 00症例のデータから得られた補正時間を和したもの ・ C秒;膝窩動脈でのテストインジェクション開始から膝窩動脈ピークまでの時間(上グラフの場 合、3×4=12秒)
3秒間隔
-
Ver1からVer2への変更点
Ver1 Ver2
(ET+12秒+B秒-A秒)
18秒 ( Ver1の100症例のデータから得られた
補正時間に12秒を和したもの)
×1.7
C秒 (膝窩動脈がピークに達する時間に変更)
※ベット移動時間が、10秒の場合18秒⇒16秒になります
-
参考文献
市川智章ほか:CT造影理論・医学書院 血管診療技師認定機構、血管無侵襲診断法研究会:血管無侵襲診断テキスト・南江堂
日本超音波検査学会:血管超音波テキスト・医歯薬出版株式会社
三好利治:生理食塩水後押し効果の基礎的検討・MDCT至適造影法を語る会
山口隆義:ファントムを用いたTDCの最適化について・MDCT至適造影法を語る会
福西康修:3DCT画像作成の基礎・日本放射線技術学会雑誌より
以下の研究資料を参考にして、撮影条件など設定を 行いました。
高知県 近森病院 画像診断部
-
あとがき
この撮影法は、64列 Light speed VCT (GE社
製)で考えたものです。他の機種では、もっと簡単な、確実な撮影方法があるかもしれません。何か参考になればありがたいです。