街路線分による都市街路形態の複雑さの記述½長.梗概.pdfSJ4の数をSJ4数…と呼ぶ...

4
1. 研究の背景と目的 1-1. 都市街路形態の複雑さ 秋葉原の建物は看板で内部空間が隠されているが、内部 の情報が外部へ飛び出しているように感じ、電気街という 都市認識と看板の間に多様な関係が生まれている。このよ うな都市の印象は、移動する際に目にする連続的な景観と 空間体験により形成されるが、情報を繋ぎ合わせる役割で ある街路形態と関係しているのではないだろうか ( 図 1) 1-2. 街路形態における街路線分数と街路線分長 渋谷の街路形態を線分化してみると、一本の街路線分が 短く、連続的に重なることで奥への興味を与え、街路での 空間体験に面白みを与えている。ここで、渋谷と銀座の街 路線分数 ( 以下 SS 数 ) と街路線分長(以下 SS 長)を比較 すると、銀座は渋谷よりも SS 数が少なく、SS 長が長く単 調な構成となっている。また、神楽坂は渋谷よりも SS 長 が短く、SS 数も多い。SS 数と SS 長を比較すると明確な 差が生じており、街路形態と関係していると考えられるた め、街路線分が街路形態の複雑さを計る上で指標になると 考えられる ( 図2) 1-3. 目的 本研究は街路線分に着目し、SS 複雑度図を示すことで、 都市街路形態の複雑さをビジュアルに記述することを目的 とするものである。 1-4. 既往研究 街路形態に着目した研究には、生態幾何学的分析を行っ た研究 (*1) 、アンケートなどによって定性的に分析した研 (*2) 、都市解析や Space Syntax などの定量的な研究 (*3) 空間構成とイメージ構成を同時に扱った研究 *1)( 図 3-A) が挙 げられる。街路の定量的な記述を行っている研究として、 街路形態の分岐点を抽出し、分岐点と複雑さとの関係を述 べている町田の研究 *2)( 図 3-B) 、歩行可能領域を都市のあそ びとして抽出した圓道寺の研究 *3)( 図 3-C) 、都市の頑強さと 都市の隙間の関係を都市デザイン手法へ展開した井村の研 *4)( 図 3-D) などがある。 本研究は、都市解析または都市数理計画に属する研究と位 置づけられるが、街路線分に着目し、街路形態の複雑さの ビジュアルな記述を目的としている点で既往の研究と異 なっている。 2. 都市街路線分図の作成方法 2-1. 街路分岐点の定義 交差点と分岐点 ( 屈曲点や袋小路の端点 ) を街路分岐 点 (Street Junction 以下 SJ) とする ( 図 4) 。袋小路を SJ1、 二叉路を SJ2、三叉路を SJ3、四叉路を SJ4…とし、SJ1 の 数 を SJ1 数、SJ2 の 数 を SJ2 数、SJ3 の 数 を SJ3 数、 SJ4 の数を SJ4 数…と呼ぶ 2-2. 街路線分の定義 -Street Segment- SJ 間に生まれる線分を『街路線分 ( 以下 SS)』と定義す る。本研究では街路の線分図を『街路線分図 ( 以下 SS 図 )』 と呼び、街路線分の数をSS 数、街路線分の長さをSS 長と、 各 SJ に接続する SS の数を SJnSS 数、長さを SJnSS 長と 呼ぶ。 Notation of street forms complexity using street segments SAIKI Shuichi 図 4 街路分岐点の定義と表記方法 A 図 1 都市街路形態と街路の関係 図 2  街路形態と街路線分の関係 B C D SJ1 SJ2 SJ3 SJ4 SJ5 SJ と街路線分数と長さ 交差点 分岐点 渋谷 原宿 Street Junction 図 3 既往研究 各因子得点推計値を統合 したイメージの可視化 SJ 密度複雑度図 歩行可能領域の記述 都市隙間線分図 視点 シーンの集合 シークエンス景観体験 シークエンスの集合 複雑さの要因 ≒街路 選択肢 視点 イメージの積み重ね 都市 街路形態の線分化 各都市の街路線分数 各都市の街路線分長 渋谷 銀座 神楽坂 都庁前 37 16 61 4 1675.3 1167.4 1490.7 559.5 渋谷 銀座 神楽坂 都庁前 渋谷 銀座 神楽坂 都庁前 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 (m) 0 10 20 30 40 50 60 70 (本数) 指導教員 吉松 秀樹 教授 0BCBM013 佐長 秀一  街路線分による都市街路形態の複雑さの記述

Transcript of 街路線分による都市街路形態の複雑さの記述½長.梗概.pdfSJ4の数をSJ4数…と呼ぶ...

  • 1. 研究の背景と目的1-1. 都市街路形態の複雑さ 秋葉原の建物は看板で内部空間が隠されているが、内部の情報が外部へ飛び出しているように感じ、電気街という都市認識と看板の間に多様な関係が生まれている。このような都市の印象は、移動する際に目にする連続的な景観と空間体験により形成されるが、情報を繋ぎ合わせる役割である街路形態と関係しているのではないだろうか ( 図 1)。

    1-2. 街路形態における街路線分数と街路線分長 渋谷の街路形態を線分化してみると、一本の街路線分が短く、連続的に重なることで奥への興味を与え、街路での空間体験に面白みを与えている。ここで、渋谷と銀座の街路線分数 ( 以下 SS 数 ) と街路線分長(以下 SS 長)を比較すると、銀座は渋谷よりも SS 数が少なく、SS 長が長く単調な構成となっている。また、神楽坂は渋谷よりも SS 長が短く、SS 数も多い。SS 数と SS 長を比較すると明確な差が生じており、街路形態と関係していると考えられるため、街路線分が街路形態の複雑さを計る上で指標になると考えられる ( 図2)。

    1-3. 目的 本研究は街路線分に着目し、SS 複雑度図を示すことで、都市街路形態の複雑さをビジュアルに記述することを目的とするものである。

    1-4. 既往研究 街路形態に着目した研究には、生態幾何学的分析を行った研究 (*1)、アンケートなどによって定性的に分析した研究 (*2)、都市解析や Space Syntax などの定量的な研究 (*3)、空間構成とイメージ構成を同時に扱った研究 *1)( 図 3-A) が挙げられる。街路の定量的な記述を行っている研究として、街路形態の分岐点を抽出し、分岐点と複雑さとの関係を述べている町田の研究 *2)( 図 3-B)、歩行可能領域を都市のあそびとして抽出した圓道寺の研究 *3)( 図 3-C)、都市の頑強さと都市の隙間の関係を都市デザイン手法へ展開した井村の研究 *4)( 図 3-D) などがある。本研究は、都市解析または都市数理計画に属する研究と位置づけられるが、街路線分に着目し、街路形態の複雑さのビジュアルな記述を目的としている点で既往の研究と異なっている。

    2. 都市街路線分図の作成方法2-1. 街路分岐点の定義  交差点と分岐点 ( 屈曲点や袋小路の端点 ) を街路分岐点 (Street Junction 以下 SJ) とする ( 図 4)。袋小路を SJ1、二叉路を SJ2、三叉路を SJ3、四叉路を SJ4…とし、SJ1の 数 を SJ1 数、SJ2 の 数 を SJ2 数、SJ3 の 数 を SJ3 数、SJ4 の数を SJ4 数…と呼ぶ

    2-2. 街路線分の定義 -Street Segment- SJ 間に生まれる線分を『街路線分 ( 以下 SS)』と定義する。本研究では街路の線分図を『街路線分図 ( 以下 SS 図 )』と呼び、街路線分の数を SS 数、街路線分の長さを SS 長と、各 SJ に接続する SS の数を SJnSS 数、長さを SJnSS 長と呼ぶ。

    Notation of street forms complexity using street segments SAIKI Shuichi

    17.9

    15.324.9

    22.7

    29.8

    12.619.9

    36.3

    27.3

    14.8

    9.6 10.9

    11.8

    15.15.9

    19.7

    13.3

    12.6

    8.0

    12.410.9 6.4

    22.4

    17.232.0

    33.5

    33.51.73.9

    9.80.6 4.4

    5.3

    24.3

    38.0

    43.1

    12.5

    17.8

    23.912.37.0 5.5

    12.1 12.2 12.6

    12.3

    7.7 13.012.4 8.1 8.3 6.9

    18.0

    9.35.5

    26.5

    29.4

    35.218.3

    27.1

    22.1

    15.4 3.5 8.4

    22.9

    7.727.3

    14.531.1

    33.4

    38.8

    22.4

    15.6 10.7

    12.2 13.9

    5.8 4.3

    12.5 14.7

    23.8

    9.2 11.9

    24.0

    17.9

    3.8 14.7

    22.3 21.6

    7.2 7.6

    10.3 7.1

    17.0

    14.1

    5.0 5.111.8 5.96.911.1

    14.6 13.0

    8.620.215.7

    17.820.514.6

    18.1

    34.7

    15.0

    30.8

    22.6

    10.5

    10.9

    21.2 8.0

    20.1

    8.49.37.7

    9.5

    11.15.5

    8.53.311.34.8 12.7

    6.0

    6.87.6

    9.05.6

    15.014.2

    5.67.92.28.0 10.34.7

    14.75.6 10.9

    11.7

    9.2

    10.34.05.54.5

    13.3

    21.515.86.6

    15.7

    6.0

    26.6

    15.217.9 4.0

    8.7 29.6

    34.416.0

    6.2 7.5 11.012.211.5

    10.4

    2.415.3

    6.8

    6.3 16.5

    16.215.8

    9.27.9

    8.8 7.88.4

    6.4

    14.514.8

    15.4 7.3

    15.3 7.0 7.3 6.8 7.1

    8.3 7.87.9

    15.514.8

    4.82.78.4 16.0

    5.0

    14.19.1 8.613.8

    12.58.4

    4.32.7

    11.9

    8.5

    4.018.8

    9.712.5

    24.4

    32.8

    16.818.1

    10.4 10.9

    20.816.8

    15.8

    16.217.8

    13.5 12.0

    16.0

    7.9

    8.39.5

    31.627.7

    24.4

    69.614.1

    33.1

    22.2

    9.0

    4 .86.89.5

    13.6

    7.4

    13.0

    13.28.8

    7.414.6

    8.34.2

    7.5

    3.410.8

    6.9 8.0

    10.0

    1.15.45.2

    14.415.7

    7.611.111.1

    17.4 7.7

    9.33.4

    9.7

    22.4

    47.0

    29.1

    19.4 7.6 11.0 9.4 8.2 7.7

    15.6

    11.015.7

    21.9

    13.7

    10.615.1

    7.9

    13.7 13.517.3

    13.2

    23.610.2

    8.614.9 16.1

    21.28.9

    21.0

    23.1

    11.4

    21.2

    11.86.39.0

    13.110.02.4

    13.2

    13.0

    9.8

    5.7 12.9

    17.4

    6.3 9.3

    13.9

    12.310.9

    12.59.9

    17.511.4

    11.9

    16.212.1 5.7

    12.015.0

    17.915.4

    5.5

    12.3

    8.8

    9.310.2

    12.2

    10.7

    6.7

    16.2

    17.0

    9.7

    5.1

    9.513.4 18.7

    15.3

    8.512.74.4

    5.016.6 7.9

    30.5

    5.416.9

    10.7 12.1

    9.9

    12.9

    12.1

    15.5 28.4

    23.0

    14.2

    13.4

    22.410.2

    16.7

    17.4

    17.5

    16.5

    10.8

    18.6

    24.1

    36.0

    12.0

    26.813.111.1

    11.013.2

    13.014.9

    10.011.6

    5.3

    9.7

    6.7

    13.0

    10.0

    20.3

    15.513.7

    11.2

    18.512.2

    10.319.4

    26.5 65.5

    12.2

    26.0

    27.7

    25.4 9.3 7.5

    4.8 6.6

    13.1

    17.0 20.4

    17.6

    11.8

    8.5

    12.6

    20.3

    10.8 13.2

    8.7 8.4

    18.1

    19.0

    6.4 5.9

    5.3

    32.6 20.6

    9.7

    4.1 9.4 2.2

    16.7 20.5

    7.9 3.6 10.3

    10.27.5

    11.8

    1.42.810.1

    9.511.7

    9.02.810.3

    14.418.4

    14.6

    17.7

    13.4

    14.5

    14.9

    12.258.1

    16.1

    30.7

    47.2

    46.3

    34.8

    23.3

    65.3

    30.8

    29.3

    20.7

    9.4

    8.5

    13.45.010.57.7 5.92.5

    6.98.72.410.65.9

    10.46.9

    6.33.2

    25.631.9

    38.0

    16.514.8

    10.1

    16.2

    15.910.2

    13.7

    5.44.214.8 8.5

    13.3 12.7 10.9

    8.6 4.8 4.9 5.6

    6.0 6.0 9.1 4.7 8.5

    2.4 5.4

    5.92.06.6

    17.8

    3.210.9 9.2

    13.9

    5.3 10.9 2.8 10.8 2.0

    6.3

    5.7 10.8

    24.016.9

    9.3

    10.48.15.07.710.5

    18.1

    15.7

    17.6

    13.5

    33.1

    28.5

    40.6

    28.8

    14.9

    15.3

    10.3 9.1

    14.5

    15.1 8.3

    11.2

    26.7

    6.3

    10.4

    1.88.7

    12.0

    6.4 9.1

    14.2 6.6 6.2

    15.3

    23.3

    18.8

    9.5

    9.8

    23.7

    12.7

    10.5

    15.0

    6.2 5.4

    14.4

    8.58.4

    7.43.16.5

    2.05.1 6.54.15.0 9.7

    12.6

    15.7

    12.5 10.0

    14.7

    13.2

    9.311.84.4

    6.3

    13.5 14.9

    9.610.2

    11.313.2

    5.0

    11.8

    13.2 6.5 6.6

    13.3

    14.3

    5.9

    6.66.37.27.3

    6.86.8

    7.0

    6.73.5

    12.88.4

    10.811.2

    9.57.6

    4.9 10.0

    12.7

    10.9

    9.1

    4.2 12.5

    12.6 13.2 17.5

    11.3 7.1 7.5 5.8 7.0

    9.47.0

    11.2

    8.9

    2.4

    9.88.013.7

    5.7

    6.44.86.4

    11.512.5

    12.217.512.412.6 4.3

    5.511.09.5 6.1

    3.8 4.15.54.5 7.6

    12.312.2

    5.1 5.8

    19.9

    6.2

    11.19.9

    22.9

    9.9

    21.0

    30.9

    図 4 街路分岐点の定義と表記方法

    A

    図 1 都市街路形態と街路の関係

    図 2  街路形態と街路線分の関係

    B C D

    SJ1 SJ2 SJ3 SJ4 SJ5

    SJ と街路線分数と長さ

    交差点分岐点

    渋谷 原宿

    StreetJunction

    図 3 既往研究各因子得点推計値を統合したイメージの可視化

    SJ 密度複雑度図 歩行可能領域の記述 都市隙間線分図

    視点

    シーンの集合 シークエンス景観体験 シークエンスの集合 複雑さの要因≒街路 ?

    選択肢視点

    イメージの積み重ね 都市 街路形態の線分化

    各都市の街路線分数 各都市の街路線分長渋谷 銀座 神楽坂 都庁前

    37

    16

    61

    4

    1675.3

    1167.4

    1490.7

    559.5

    渋谷 銀座 神楽坂 都庁前 渋谷 銀座 神楽坂 都庁前020040060080010001200140016001800

    (m)010203040506070

    (本数)

                   指導教員 吉松 秀樹 教授                                 0BCBM013 佐長 秀一 

    街路線分による都市街路形態の複雑さの記述

  • 2-3.SS 図の作成方法と抽出対象都市と範囲の決定 町田の研究 *2) を参照し、街路形態の特性や用途地域の異なる東京の 10 都市を選定した。抽出範囲は駅 ( 注 .1) を中心に一般的な歩行圏半径 250m( 注 .2) とする Google マップの地図データ ( 注 .3) を使用し、道路の中心線に沿って直線でトレースをする ( 注 .4)。本研究では、SJ 間の SS を対象とするため、半径 250m 外の最初の SJ までの SS を抽出した ( 図 5)。3. 街路線分の分析3-1.SJ 数と街路形態の分析 SJ3 以上の SJ 数 ( 以下 SJ3+ 数 ) が多いと経路の選択性が高くなる。代官山 • 下北沢 • 神楽坂は SJ4 数が少ない。また、SJ1 数が多いと街路での空間体験が途切れることがあり迷路性が高い。SJ2 数は屈折する街路の多さを示し、SJ2 数が多くなると街路形態に複雑さが生まれている可能性がある ( 図 6)。3-2.SS 数の分析 神楽坂と下北沢 • 原宿 • 代官山と渋谷 • 秋葉原 • 銀座と半蔵門 • 東陽町 • 都庁前の 4 つのグループに分けられ、SS 数は SJ 数とほぼ比例関係となっている。原宿 • 下北沢• 代官山 • 渋谷は SS 数に対して SJ2 数が多いことがわかる。また、SS 数が多いと都市街路形態の複雑となる要因が多い ( 図 7)。3-3.SS 長の分析 SS 総長は、都市の歩行可能距離を示している。銀座はSS 数に比べ SS 総長が長いため、SS 平均長が長く、下北沢 • 原宿よりも単純な構成の都市である可能性が高い。SS 数が多い都市は SS 平均長が短く、屈折する回数が増えるため、視線の変化が起こる間隔が短くなり、複雑な都市街路形態を形成する要因となる ( 図 8)。3-4.SJSS 街路分岐点においてどんな選択肢があるかによって街路での空間体験の印象が左右されていると考えられる。この選択肢を総体として捉えるために各 SJ に接続する SS である SJSS を比較、検討していく。同じ分岐数の SJ でも接続する SS 長に違いのある SJSS が抽出できる ( 図 9,10)。3-5.SJSS 数と SJSS 長の分析 SJSS 平均数は SJ が持つ選択性を示している。SJSS 数と SJSS 平均数を比べると、神楽坂は経路選択性は高いが、SJ1SS 数が多く回遊性が高いとは言い切れない。渋谷は界隈性と経路選択性が共に平均的な都市である。渋谷 • 代官山・下北沢・原宿の 4 都市は SJSS 総長に比べ SJ2SS 総長の割合が高く偶発性が高いといえる ( 図 11)。

    301170166152

    9483

    6940

    268

    15694

    938368

    7863

    35

    24

    8

    0 100 200 300神楽坂原宿下北沢代官山渋谷秋葉原銀座半蔵門東陽町都庁前

    神楽坂原宿下北沢代官山渋谷秋葉原銀座半蔵門東陽町都庁前

    SJ 数と SJ3+ 数 (SJ3 以上の SJ 数 )SJ の都市街路形態

    32

    15916

    2

    4

    3

    16

    293530

    266

    4

    108

    47

    465151

    6278

    58

    5877

    50

    5

    853

    1016

    33

    3015

    50

    1

    1

    0% 50% 100%SJ 数SJ3+ 数 (SJ3 以上の SJ 数 )SJ1 SJ2 SJ3 SJ4 SJ5

    SS 数と SJ1 数 SS 数と SS数と SS2- 数の差

    神楽坂

    原宿

    下北沢代官山

    渋谷

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    0 100 200 300 400352

    7648

    19

    9615

    203100

    0 100 200 300 400

    下北沢原宿代官山渋谷秋葉原銀座半蔵門東陽町都庁前

    神楽坂 (SS 数 )

    (SS 数と SS2- 数の差 )

    SJ1 数 SS 数

    2426

    229226

    202147141

    126

    平均値:156.6

    秋葉原銀座

    半蔵門

    東陽町都庁前

    見通しの悪い街路空間である可能性が高い

    偶発性

    高低 回遊性

    SS 数と SS総長

    神楽坂下北沢

    東陽町

    都庁前3000

    4000

    5000

    6000

    7000

    8000

    9000

    0 100 200 300 400(SS 数 )

    (SS 総長 )

    原宿銀座代官山

    渋谷秋葉原半蔵門

    SS 平均長

    0 40 80 120 160都庁前東陽町半蔵門銀座秋葉原渋谷下北沢原宿代官山神楽坂

    159.793.0

    67.557.1

    43.341.7

    32.832.731.024.6 平均値:58.3

    SS数に比べSS総長が短い

    SS数に比べSS総長が長い

    低高 偶発性

    歩行距離

    高低 回遊性

    東陽町 都庁前 半蔵門

    渋谷 銀座秋葉原 代官山 神楽坂

    原宿下北沢

    半径 250m都市街路形態の特性や用途地域の異なる東京の 10都市

    SS数=2

    SS数=5

    SS数=n

    SJ2SS SJ5SS

    A B C

    DE

    SS数=3

    SJ3SS SJnSS数

    違う長さのSS

    SJnSS長=??

    A BC

    SS数=1

    SS数=4

    SJ1SS SJ4SS

    A A B CD

    AB

    SJnSS

    街路分岐点においてどんな選択肢があるかの総体として捉えるためにSJSSを検討していく必要がある。

    SJ4SSSJ4SS

    図 6 各都市における SJ の街路形態の分析

    図 7 各都市における SS 数の分析

    図 10 SJ に接続する SS とは

    図 9 全 10 都市の SS の数値

    図 5 10 都市の街路線分図

    図 8 各都市における SS 長の分析

    渋谷147

    6124.841.7

    都市名SS 数SS 総長SS 平均長

    秋葉原141

    6104.543.3

    銀座126

    7190.657.1

    代官山202

    6245.730.9

    神楽坂352

    8666.824.6

    東陽町48

    4459.992.9

    都庁前19

    3035.1159.7

    半蔵門76

    5128.467.5

    原宿226

    7383.132.7

    下北沢229

    7499.332.7

    SS 数と SS総長と SS平均長

  • 3-6.SJSS 率と SJSS 長率の分析 SJSS 数に対する各 SJ の SJnSS 数の割合である SJnSS率と SJSS 総長に対する SJnSS 長の割合である SJnSS 長率を比較すると、一叉路の SJ1SS 率は回遊性を妨げている要因であると考え、その値が低い 4 都市、渋谷 • 下北沢と代官山・原宿にグルーピングできる。神楽坂は SJ1SS率が高く SJ2SS 率は平均的である。渋谷 • 下北沢 • 代官山は SJ2SS 率と SJ3SS 率が高い。原宿は SJ2SS 率が高く、SJ3SS 率は平均的である。一方、秋葉原は SJ3SS 率が高いが、SJ2SS 率は低い。SJSS 率によって街路形態における迷路性、連続的な視線の変化を表す界隈性、経路選択性の街路形態の複雑さを生む 3 要素を示すことができる ( 図12)。3-7. 街路線分複雑度の定義 各都市の SJnSS 率の内、街路の空間体験における位置の把握が困難となり、都市街路形態の複雑さの要因であると考えられる二叉路の SJ2SS 率と三叉路の SJ3SS 率の和を『街路線分複雑度 ( 以下 SS 複雑度 )』と定義する ( 図 13)。4. 記述手法の作成 • 検証4-1.SS 集約図の作成 SS の方向 • 距離を変えずに分解したものを中心へ集め、方向性•線分数•線分長さを示す図を『街路線分集約図(SS集約図 )』とする ( 図 14)。4-2.SS 方向分布 SS 集約図の方位を 15° ごとに分割し、各方位に属するSS 数を測り、SS の方向分布を示す。SS 方向分布のばらつきによって、街路形態の特徴を読み取る。SS が分散するほど視線の界隈性があり空間体験は複雑になる ( 図 15)。4-3.SS 方向分布と SS 複雑度の関係性 各都市の SS 方向分布と SS 複雑度を比較すると、下北沢 • 代官山 • 渋谷の SS 複雑度が高く SS 方向分布は低いが、三都市の内で下北沢は方向性のある都市である。秋葉原 • 東陽町は SS 複雑度は高く街路形態の複雑さはあるが、SS 方向分布の複雑さはない都市である。 半蔵門は SS 方向分布の最大値は低く視線の界隈性を持つ街路形態だが、SS 複雑度が低い。銀座 • 都庁前は SS 複雑度が低く、方向性が強い都市である ( 図 16)。4-4.SS 複雑度図の決定 SS 集約図を Adobe Illustrator CS4 の機能を使い、不透明度の種類を設定し SS 方向分布と重ねた。更に、SS 複雑度を色の濃度に変換し SS 集約図に加えたものを、『街路線分複雑度図 ( 以下 SS 複雑度図 )』とする ( 図 17)。街路形態の複雑さをビジュアルに示す表現となる。

    図 11 各都市における SJSS 数と SJSS 長の分析

    図 15 SS 方向分布の測定

    図 12 各都市における SJSS 率の分析

    図 13 SS 複雑度

    図 14 SS 集約図の作成

    図 16 SS 複雑度と SS 方向分布

    SJSS 総長と SJ2SS 総長(SJSS 平均数 )

    SJSS 数と SJSS 平均数

    神楽坂原宿

    下北沢

    代官山

    渋谷

    秋葉原

    銀座半蔵門東陽町

    都庁前

    2.0

    2.2

    2.4

    2.6

    2.8

    3.0

    3.2

    3.4

    3.6

    0 200 400 600(SJSS 数 )

    (SJSS 総長 )

    (SJ2SS 総長 )

    原宿

    半蔵門

    都庁前

    東陽町

    下北沢

    神楽坂

    代官山 銀座

    秋葉原 渋谷

    4000

    6000

    8000

    10000

    12000

    14000

    16000

    18000

    0 1000 2000 3000

    SJ2SS総長の割合が高い

    高低

    歩行距離

    偶発性

    回遊性

    高低 選択性

    選択性

    高低 偶発性

    偶発性

    高低 迷路性

    SJ3SS 率と SJ2SS 率SJ1SS 率と SJ2SS 率(SJ2SS 率 )

    (SJ1SS 率 )

    原宿

    半蔵門

    都庁前 東陽町

    下北沢

    神楽坂

    代官山

    銀座

    秋葉原

    渋谷

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    0 4 8 12 16(SJ2SS 率 )

    (SJ3SS 率 )

    都庁前

    銀座

    半蔵門

    東陽町

    原宿

    神楽坂

    秋葉原

    渋谷 代官山 下北沢

    75%

    各都市の SJnSS 率 SJ2SS+SJ3SS 率

    0% 50% 100%SJ1SS率 SJ2SS率 SJ3SS率 SJ4SS率 SJ5SS率 複雑度低 高

    都庁前

    半蔵門

    東陽町 神楽坂

    秋葉原

    銀座

    原宿 渋谷 代官山

    下北沢

    43

    61

    80

    80

    77

    80

    57

    84 88 88

    43 57都庁前

    41 55 38半蔵門 5 75 20東陽町

    14 14 64 8神楽坂 4 76 20秋葉原

    13 54 42銀座

    5 24 55 13 1原宿

    1 18 66 14 3 渋谷 7 24 64 5代官山 4 28 60 9下北沢

    SS図 SSの中点を中心に 全SSを集める

    North

    South

    EastWest

    0%

    10%

    14%

    方向に分布するSSの割合を抽出 SS方向分布の顕在化15°に分解

    North

    15°

    East

    abcdefghi

    jk

    l

    複雑度低 高

    SS 方向分布の最大値SS複雑度

    SJSS 数 SJSS 総長方向性

    選択性

    強弱

    歩行距離 長短多少

    渋谷 14

    秋葉原 48

    銀座 44

    代官山 16

    神楽坂 26

    下北沢 25

    東陽町 50

    都庁前 53

    半蔵門 33

    原宿 30

    28都庁前

    126半蔵門 80東陽町

    676神楽坂 257秋葉原

    221銀座

    424原宿 265渋谷

    368代官山 419下北沢

    原宿 14090.9

    半蔵門 8325.0

    都庁前 4427.6

    東陽町 7263.2

    下北沢 13351.8

    神楽坂 16128.2

    代官山 11123.2

    銀座 12146.4

    秋葉原 11122.9

    渋谷 10381.8

    都庁前

    半蔵門

    東陽町 神楽坂

    秋葉原

    銀座

    原宿 渋谷 代官山 下北沢

    43

    61

    80

    80

    77

    80

    57

    84 88 88

  • [ 注釈 / 参考文献 / 参考資料 ]( 注 .1) 駅付近の立体化によって、トレース時の線分化に支障が出ないようにするため、基本的に中心は地下鉄の駅の地上出口としてあるが、選定した特質的な街路形態を持つ都市の中には地下鉄が存在しない都市もあり、そういった都市では地上に存在する駅を中心としている。( 注 .2) 半径 250 m以下では、都市を面として分析するにはあまりに狭すぎるために対象としていない。また、半径を 500m 以上に拡大、例えば 750m や 1000 mとすると、高速道路や河川、大規模な公園などの線分化できない要素を多く含む都市などが出現してしまうために、純粋に街路形態を評価出来なくなる恐れがあるため半径 250m とした。( 注 .3) Google マップ ゼンリン住宅地図 2012 年( 注 .4) 駅が地上に存在する都市は、GL レベルで歩ける場所を線分化している為に、改札などの立体的な動線は線分化していない。また、SJ の抽出方法は、線分の交点と接点を抽出していく。屈曲点を見いだし難い曲線に関しては、Google マップ上で道路と建物の関係性から見通しを精査することで SJ の数と位置を決定した。

    *1) 空間データを用いた都市イメージの構造化・視覚化 - 渋谷・原宿・青山を対象事例として -( 稲坂 晃義 慶應義塾大学大学院 修士論文 2005 年 3 月 )*2) 街路分岐点による街路形態の複雑さの記述 ( 町田 淑之 修士論文 2007 年 3 月 )*3) 都市のあそび - 都市街区における歩行可能領域の記述 -( 圓道寺 ゆみ 卒業論文 2010 年 3 月 ) *4) アーバンロバスト性を用いた都市デザイン手法 ( 井村 英之 修士設計 2008 年 3 月 )

    (*1) 井田 洋平、吉川 徹 著「空隙の奥行きに着目した街路空間の分析手法」 日本建築学会大会学術梗概集 2000 年 9 月 (*2) 松本 直司、藤井 勝彦、張 奕文、若山 滋 著 / 壁面後退による街路空間形状意識について - 街路の空間形状意識に関する研究 -/ 日本建築学会計画系論文報告集第 474 号 1995 年 8 月 (*3) 高山 幸太郎、中井 検裕、村木 美貴 著「商業集積地における空間の「奥行」に関する研究」- 下北沢を対象として - 日本建築学会大会学術梗概集 1991 年 9 月 (*) 柿原 崇史、坂井 猛、荻島 哲、鵤 心治、出口 敦、村上 英夫 著「街路景観における奥行きに関する考察」 日本建築学会九州支部研究報告 第 37 回 1998 年 3 月 (*)寺山 真也、鈴木 毅、舟橋 國男、木多 道宏、李 武 著 「都市空間における視覚構造の生態幾何学的分析」 日本建築学会計画系計画系論文報告書 第 577 号・2004 年 3 月 (*) 高野 裕作、佐々木 葉 著 「シークエンシャルな景観体験を考慮した場の景観の分析手法に関する研究-space syntax 理論を適用した手法の提案と検証 -」 景観・デザイン研究講演集 No.3 2007年 12 月

    4-5.SS 複雑度と SS 複雑度図との関係性 各都市の SS 複雑度図を比較すると、渋谷 • 代官山は神楽坂 • 下北沢に比べ、SS 数が少なく低密度だが、SS 複雑度は高く SS 方向分布の最大値が低いため視線の界隈性がある複雑な街路形態である。下北沢と代官山は同じ SS 複雑度だが、SS 複雑度図から異なる街路形態であることがビジュアルにわかる ( 図 18)。SS 複雑度図は街路線分と街路形態の関係をビジュアルに記述できる手法だといえる。5. まとめ 本研究は、街路形態における街路線分に着目し、都市街路形態の複雑さをビジュアルに記述するために、SS 複雑度図の記述方法を提案した。各都市における SS 集約図•SS 方向分布と SS 複雑度を比較した結果、SS 数 •SS 長• 方向性が街路形態の複雑さを左右する要因であることが確認された ( 図 19)。本論は、街路形態の複雑さをビジュアルに確認するツールとして期待できる。

    2011 年度修士論文発表梗概集 東海大学工学研究科建築学専攻

    渋谷都市名

    代官山銀座秋葉原

    東陽町下北沢神楽坂

    原宿半蔵門都庁前

    街路線分複雑度図

    North

    South

    EastWest 25m25m

    12.9%

    5.4%

    7.5%

    3.4%

    6.8%

    13.6%

    5.4%

    8.8%

    11.6%

    4.1%

    12.9%

    7.5%

    North

    South

    EastWest

    North

    South

    EastWest25m25m 25m25m

    48.2%

    2.8%2.1% 39.7%3.5%2.8%

    0.7%

    0.8%7.9%

    44.4%

    2.4%0.8% 0.8%

    3.2%

    38.1%

    0.8%0.8%

    North

    South

    EastWest 25m25m

    8.9%

    16.3%

    8.9%11.4%

    3.0%

    5.4% 10.4%11.9%9.4%

    9.4%

    3.0%2.0 %

    North

    South

    EastWest

    North

    South

    EastWest

    North

    South

    EastWest 25m25m25m25m 25m25m

    5.7%

    24.9%

    14.8%

    4.4% 7.9%

    21.8%

    13.1%

    4.4%

    0.9% 2.2%

    9.1%

    23.9%

    8.2%8.0%

    9.7%

    26.1%

    8.2%

    5.7%

    0.9%0.3%

    47.9%

    50.0%

    2.1%

    North

    South

    EastWest

    North

    South

    EastWest

    25m25m 25m25m

    18.4%

    11.8%

    6.6%7.9% 32.9%

    2.6% 2.6%

    17.1%

    47.4%

    52.6%

    North

    South

    EastWest 25m25m

    5.0%7.3%

    2.8%

    10.1%

    3.9%5.0%

    3.4% 5.6%

    29.6%

    14.0%

    6.7%6.7%

    SS複雑度SS方向分布SS集約図

    + + **

    SS複雑度 84

    SS複雑度 88

    SS複雑度 80

    SS複雑度 80

    SS複雑度 57

    SS複雑度 88

    SS複雑度 61

    SS複雑度 80

    SS複雑度 77

    SS複雑度 43

    街路線分複雑度図

    46.1

    51.441.9

    57.0

    44.0 182.1

    94.6

    129.6

    96.7

    36.9

    104.3

    60.9

    47.7

    48.9

    52.0

    19.7

    51.3

    99.8

    74.3

    30.922.5

    40.9

    26.79.529.6

    42.0

    42.4

    24.8

    58.1

    54.5

    43.5

    40.4

    36.8

    45.19.7

    14.524.5

    24.7

    38.9

    44.4

    51.7

    52.9

    22.1

    28.2

    49.1

    6.7

    70.2

    15.1

    6.0

    50.7

    29.0 38.0

    26.8

    30.1

    19.7 34.9

    45.3

    97

    5.2

    67.0

    61.2

    107.8

    16.57.9 72.5

    41.2

    36.63.8

    52.3

    74.3

    25.7

    49.1

    44.9

    23.9

    39.7

    89.0

    43.2

    17.2

    50.8

    68.6

    40.8

    17.7

    44.1

    13.6

    36.0

    49.0

    52.8

    13.9

    85.5

    59.4

    16.2

    88.2

    43.4

    24.3

    31.945.3

    102.6

    29.3

    44.946.6

    171.6

    93.8

    93

    138.2

    85.7

    7.6

    63.4

    7.9

    38.9

    67.5

    51.9

    95.4

    68.9

    95.3

    52.8

    88.1

    49.3

    98.6

    59.4

    51.1

    56.3

    33.4

    55.1

    24.3

    渋谷

    South

    EastWest

    North

    3.4% 5.4% 8.8%

    11.6%

    4.1%

    12.9%

    7.5%

    複雑度低 高SS複雑度を色の濃度に変換

    455565

    7585

    都庁前 銀座 半蔵門 東陽町 原宿

    神楽坂 秋葉原 渋谷 代官山 下北沢

    4357

    6177

    80808084 88 88

    SS方向分布SS集約図渋谷SS図

    +

    +

    SS数_147本SS平均長_41.67m

    SS複雑度 84代官山

    SS数_202本SS平均長_30.92m

    North

    South

    East

    West

    25m25m

    8.9%

    16.3%

    8.9%11.4%

    3.0%5.4%

    10.4% 11.9%9.4%9.4%

    3.0%2.0%

    下北沢

    SS数_229本 SS複雑度SS平均長_32.75m

    North

    South

    East

    West

    25m25m

    5.7%

    24.9%

    14.8%4.4% 7.9% 21.8%

    13.1%

    4.4%

    0.9%2.2%

    SS複雑度 88 88

    図 19 全 10 都市の街路線分複雑度図

    図 17 SS 複雑度図の決定

    図 18 SS 複雑度と SS 複雑度図の関係