複雑系の科学・第 - 東京大学 · 複雑系の科学・第3回...
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複雑系の科学・第3回 複雑ネットワーク・その1
東京大学大学院工学系研究科 鳥海不二夫
2012年11月2日
複雑ネットワーク
1. 世の中すべてネットワーク~複雑ネットワーク入門 2. ネットワークを見る~複雑ネットワーク分析指標 3. 古典的ネットワーク~ランダム・格子ネットワーク 4. 世間は狭い~スモールワールドネットワーク 5. 不平等な世界~スケールフリーネットワーク 6. ネットワークを作る~ネットワーク生成モデル1 7. ネットワークを作る~ネットワーク生成モデル2
複雑ネットワークの歴史
• 複雑ネットワークは新しい学問 – ここ10数年で大きく前進
グラフ理論 複雑ネットワーク
1736年 ケーニヒベルグ問題 1960年
RandomGraph
1967年 ミルグラムの実験
1998年 SmallWorldNetworks
1999年 ScaleFree理論
複雑ネットワークの歴史
• ケーニヒスベルグの橋 • RandomGraph • ミルグラムの実験 • SmallWorld理論 • ScaleFree理論
ケーニヒスベルグの橋問題
• ケーニヒスベルグという町 • a~gという7つの橋が架かっている
スタート地点
ケーニヒスベルグの橋問題
• ルール – スタート地点から出発して,スタート地点に戻る – 橋は一度しか渡れない
• ルールに従ってスタートからスタートへ戻れるか?
スタート地点
ケーニヒスベルグのネットワーク
a b
c
d e
f
g
A
C
B
D
オイラー
グラフ理論っての 考えた
RandomGraph
• ポール・エルディシュ – 著名な数学者 – 生涯に約1500篇の論文を書いた
• エルデシュ=レーニィモデル – ERモデルとも – ランダムに作られたネットワーク
• グラフ理論から一歩前進 – グラフ→ネットワーク
ミルグラムの実験
• スタンレーミルグラム (1933 - 1984) ・イェール大学 ・社会心理学
ミルグラムの実験
• 友人の友人の・・・とたどっていってカンザスからマサチューセッツまで何人で到達できるか?
ミルグラムの実験
• カンザス州に住むさまざまな境遇の応募者に手紙を送る – 「マサチューセッツ州のとある人に手紙を送りたい」
• ルール – ファーストネームで呼び合う人にしか手紙は送れない=割と仲がいい人限定
– 最終的に目標の人に到達するように手紙を出す
ミルグラムの実験
何人の人を経由して 手紙は目標人物に到達するのか
目標人物
ミルグラムの実験
• 平均で6人を経由
• およそ6~7人を経由すれば世界中の人とつながることが出来る
• 世界が狭い=6次の隔たり
Small World Networks
• Duncan J. Watts – コロンビア大学の学生
• 1998年Natureに投稿した3ページの論文 – Collective dynamics of 'small-world' networks – ネットワークの世界を変えた
• 「世界は狭く,そして固まっている」
Scale Free Network
• Albert-László Barabási – ノートルダム大学教授
• 1999年Scienceに投稿した4ページの論文 – Emergence of scaling in random networks – やっぱりネットワークの世界に衝撃を与えた
• 「世界は不平等だ」
それから
• 世界的に複雑系ネットワークの研究が盛んに – さまざまな現象が明らかに
• WEBの発達により大規模なネットワークが出現 – 電子データの利用 – 従来より簡単に巨大なネットワークを分析可能に
• ネットワーク分析に注目 – ビッグデータ – ソーシャルメディア
ネットワークとは 何か?
世の中色々 ネットワーク
ネットワークとは?
• グラフとも呼ぶ • ネットワーク=ノードとそれをつなぐリンク
ノード
ノード ノード
ノード
ノード
ノード
リンク
ノードとリンク
• 人間がノード・友人関係がリンク • お客様と商品がノード・購買関係がリンク • 経営者と従業員がノード・命令関係がリンク • 会社がノード・会社間の商品やお金の流れがリンク
世の中すべてネットワーク
• 世の中の色々な現象がネットワークで表せる – 地下鉄路線 – 航空経路 – インターネット – WEBページのリンク – Wikipediaのカテゴリ – mixi – ケーニヒスベルグの橋
地下鉄路線図
• 駅=ノード • 線路=リンク
航空経路ネットワーク
• 空港=ノード • 経路=リンク
インターネットのつながり
• 何十万のコンピュータ同士が接続 • コンピュータ=ノード • 接続=リンク
WEBページのつながり
• WEBページ=ノード • ハイパーリンク=リンク
Wikipediaカテゴリのつながり
• カテゴリ=ノード • リンク構造=リンク
mixi上の友人ネットワーク
• 人間=ノード • 友人関係=リンク
ケーニヒスベルグの橋問題
• ケーニヒスベルグという町 • a~gという7つの橋が架かっている
スタート地点
ケーニヒスベルグの橋問題
• ルール – スタート地点から出発して,スタート地点に戻る – 橋は一度しか渡れない
• ルールに従ってスタートからスタートへ戻れるか?
スタート地点
ケーニヒスベルグのネットワーク
• A~Dの土地=ノード • a~gの橋=リンク
a b
c
d e
f
g
A
C
B
D
オイラー
一筆書き出来ますか?
• 一筆書きの一般則 – 奇数個の線が出ている頂点が,0or2個なら一筆書き可能
a b
c
d e
f
g
ケーニヒスベルグのネットワーク
• 橋渡り問題もネットワーク • 陸地=ノード • 橋=リンク
a b
c
d e
f
g
A
C
B
D
グラフ理論
• グラフ理論 – ケーニヒスベルグの橋問題から発展 – 複雑ネットワークを理解する上での基礎理論
グラフ
ネットワーク
グラフ理論の基礎
• Graphとは – V:頂点(vertex)からなる集合 – E:点をつなぐ辺(edge)からなる集合 – G:VとEの集合
𝑣1
𝑣3
𝑣2
𝑣4 𝑒1 𝑒2
𝑒3
𝑒4
𝐺
グラフの表現
• 𝑉 = 𝑣1, 𝑣2, 𝑣3, 𝑣4, 𝑣5 • 𝐸 = {𝑒1 = 𝑣1, 𝑣3 , 𝑒2 = 𝑣2, 𝑣3 , 𝑒3 =
𝑣3, 𝑣4 , 𝑒4 = 𝑣2, 𝑣4 } • 𝐺 = {𝑉,𝐸}
𝑣1
𝑣3
𝑣2
𝑣4 𝑒1 𝑒2
𝑒3
𝑒4
𝐺
隣接関係
• 点の隣接関係 – 𝑣1, 𝑣2は隣接した点
• 辺の隣接関係 – 𝑒1, 𝑒2は隣接した辺
𝑣1 𝑣2 𝑒1
𝑣1 𝑣2 𝑣3 𝑒1 𝑒2
問題
• このグラフにおける隣接頂点,隣接辺をすべて述べよ
𝑣1
𝑣3
𝑣2
𝑣4 𝑒1 𝑒2
𝑒3
𝑒4
𝐺
解答
• 隣接頂点 – 𝑣1, 𝑣3 , 𝑣2, 𝑣3 , 𝑣3, 𝑣4 , 𝑣2, 𝑣4
• 隣接辺 – 𝑒1, 𝑒2 , 𝑒1, 𝑒3 , 𝑒2, 𝑒3 , 𝑒2, 𝑒4 , (𝑒3, 𝑒4)
𝑣1
𝑣3
𝑣2
𝑣4 𝑒1 𝑒2
𝑒3
𝑒4
𝐺
次数
• 次数 – 頂点𝑣𝑖が接続している辺の数 – deg 𝑣𝑖
• 各頂点の次数はいくつか?
𝑣1
𝑣3
𝑣2
𝑣4 𝑒1 𝑒2
𝑒3
𝑒4
𝐺 𝐝𝐝𝐝(𝒗𝒊)
𝑣1 1 𝑣2 2 𝑣3 3 𝑣4 2
完全グラフ
• すべての頂点が辺でつながれているグラフ
𝑣1
𝑣3
𝑣2
𝑣4
問題
• 頂点の数がnの完全グラフにおける辺の数はいくつか?
頂点𝑣1に接続する辺は𝑛 − 1本 従って,全頂点から接続する辺の総数は𝑛(𝑛 − 1) ただし,一つの辺は2頂点と接続する
∴ N𝑒 =𝑛(𝑛 − 1)
2
グラフからネットワークへ
• グラフとネットワークは何が違うのか? – 答え:同じもの – 数学的な概念としてのグラフ – 実社会の現象としてのネットワーク
• 色々名称が異なる – グラフ→ネットワーク – 頂点→ノード – 辺→リンク
グラフとネットワーク グラフ理論 ネットワーク理論 グラフ ネットワーク 頂点 ノード 辺 リンク
𝑣1
𝑣3
𝑣2
𝑣4 𝑒1 𝑒2
𝑒3
𝑒4
ノード
リンク
ネットワーク
ネットワーク分析
• 世の中をネットワーク構造として捉える – 分析が容易に
• ネットワーク分析の例 – ケーニヒスブルグの橋 – 社会ネットワーク分析 – 企業間取引ネットワーク分析
大学運動部の人間関係
3年生
2年生
1年生
大学運動部の人間関係
3年生
2年生
1年生
3年生 2年生
1年生
大学運動部の人間関係
3年生
2年生
1年生
2年生の中心的人物
1年生の 中心的グループ
3年生の 中心的グループ
風の谷のナウシカ(漫画版) の人間関係
高校生の恋人関係ネットワーク
業界構造マップ
• 企業間取引をネットワークで表現
東京大学工学系研究科総合研究機構イノベーション政策研究センター
対話における単語共起ネットワーク
複雑ネットワーク
1. 世の中すべてネットワーク~複雑ネットワーク入門 2. ネットワークを見る~複雑ネットワーク分析指標 3. 古典的ネットワーク~ランダム・格子ネットワーク 4. 世間は狭い~スモールワールドネットワーク 5. 不平等な世界~スケールフリーネットワーク 6. ネットワークを作る~ネットワーク生成モデル1 7. ネットワークを作る~ネットワーク生成モデル2
次回予告
• ネットワークはどうすれば分析できるのか? – 巨大すぎるネットワークを数字で読み取る