欝融堅調灘睡...専門的建築家である著者James W. Wentling...

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0 e 堅調灘睡 欝融 前回までは米国「住宅地」の環境デザイン に関する重要な視点を取り上げて解説してき た。今回は「住宅」そのものの計画に関する トピックである。なぜ最初に住宅の説明から 入らなかったかというと、米国の建売り住宅 は、方位よりもストリートを基準にして考え られ、つくられてきたからである。また現代 では計画住宅地の住区「ビレッジ」を前提に つくられているからである。 まず全体を見た上で個々の住宅という単位 を見ないと米国の建売り住宅産業の理解に重 要な視点を見落とすことになる。つまり、住 宅とまちなみは計画上連動して相互関係を持 ちっっ成立している。これは初回から続く要 点である。 コンポーネント・メソッドは、建売り住宅の 専門的建築家である著者James W. Wentling により1990年目出版された「Housing by Lifestyle」副題「The Component Method of Residential Design」に詳しく述べられて いる。今回はその概要を紹介する。 私がこの第2版本を見つけた1995年頃は、 米国の建築事務所で仕事をしていた。この本 に書かれていることは、住宅設計専門建築事 務所のメッカ南カリフォルニアならどこでも 普通に行っていることだと感じた。その内容 は、デベロッパーのために空間と形の特質 (キャラクター)を提供する住宅建築デザイナ ーたちの共通の知識であり、マーケティング の最低限の条件でもある。すでに当時からカ リフォルニアやフロリダではより進んだ平面 計画の展開実例があり、顧客の意識も追いつ いていて、より良いものが売れていた。 嗣匿 釧霞露匿 一等騨隆 コンポーネント・メソッドの「ライフ・ス タイル」という主題が示す内容は、日本語の 個性的な生活様式という意味よりも、人々の 家族構成や生活感(ライフサイクル)という 意味合いが強い。住宅の一定の質を確保する ための間取りや各部屋の動線、構成などのス タンダードを示したものである。一生のうち に一人が4~5回は住み替えを行う米国では、 分譲住宅でも賃貸住宅のような再販しゃすい 魅力的な特質を持ったスタンダードな問取り が求められる。 さて、「コンポーネント」とは、いくつかの 部屋や空間の単位であり、ゾーンのようなま とまりを示す概念である。メソッドでは、5 つの基本コンポーネントが設定されている。 5つのコンポーネント ここでは本に示された順番を少し変えて、 ストリートに近い室内コンポーネントから並 べ変えて下記に示す。ストリートに近いほど パブリック性が高くなる。 1.セレモニアル・コンポーネント ゲストを迎え入れ、もてなす(エンターテ イニング)する空間。エントリー(入口)、ホ ール、ホワイエ、リビングルーム、ダイニン グルームがこれに含まれる。 2,コミュニティ・コンポーネント 家族の構成メンバーが集まってリラックス できる空間。ファミリールーム、ブレックフ ァスト (モーニングルーム、ヌック)、キッチ ンが含まれる。 3.プライバシー・コンポーネント 各個人がグループから離れてくつろげる空 間,デン(書斎、SOHO)、マスター・ベッド ルーム(主寝室)とマスター・バスルーム、 ベッドルーム(副寝室、子供部屋)とバスル ームが含まれる。 4ファンクショナル・コンポーネント 住宅運営/家事に必要な倉庫と難問。ガレ ージ、サービス、ユーティリティ(洗濯室、 家とまちなみ46 20029 49

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0

e

堅調

灘睡

欝融

 前回までは米国「住宅地」の環境デザイン

に関する重要な視点を取り上げて解説してき

た。今回は「住宅」そのものの計画に関する

トピックである。なぜ最初に住宅の説明から

入らなかったかというと、米国の建売り住宅

は、方位よりもストリートを基準にして考え

られ、つくられてきたからである。また現代

では計画住宅地の住区「ビレッジ」を前提に

つくられているからである。

 まず全体を見た上で個々の住宅という単位

を見ないと米国の建売り住宅産業の理解に重

要な視点を見落とすことになる。つまり、住

宅とまちなみは計画上連動して相互関係を持

ちっっ成立している。これは初回から続く要

点である。

 コンポーネント・メソッドは、建売り住宅の

専門的建築家である著者James W. Wentling

により1990年目出版された「Housing by

Lifestyle」副題「The Component Method

of Residential Design」に詳しく述べられて

いる。今回はその概要を紹介する。

 私がこの第2版本を見つけた1995年頃は、

米国の建築事務所で仕事をしていた。この本

に書かれていることは、住宅設計専門建築事

務所のメッカ南カリフォルニアならどこでも

普通に行っていることだと感じた。その内容

は、デベロッパーのために空間と形の特質

(キャラクター)を提供する住宅建築デザイナ

ーたちの共通の知識であり、マーケティング

の最低限の条件でもある。すでに当時からカ

リフォルニアやフロリダではより進んだ平面

計画の展開実例があり、顧客の意識も追いつ

いていて、より良いものが売れていた。

一嗣匿

釧霞露匿

一等騨隆

 コンポーネント・メソッドの「ライフ・ス

タイル」という主題が示す内容は、日本語の

個性的な生活様式という意味よりも、人々の

家族構成や生活感(ライフサイクル)という

意味合いが強い。住宅の一定の質を確保する

ための間取りや各部屋の動線、構成などのス

タンダードを示したものである。一生のうち

に一人が4~5回は住み替えを行う米国では、

分譲住宅でも賃貸住宅のような再販しゃすい

魅力的な特質を持ったスタンダードな問取り

が求められる。

 さて、「コンポーネント」とは、いくつかの

部屋や空間の単位であり、ゾーンのようなま

とまりを示す概念である。メソッドでは、5

つの基本コンポーネントが設定されている。

5つのコンポーネント

 ここでは本に示された順番を少し変えて、

ストリートに近い室内コンポーネントから並

べ変えて下記に示す。ストリートに近いほど

パブリック性が高くなる。

1.セレモニアル・コンポーネント

 ゲストを迎え入れ、もてなす(エンターテ

イニング)する空間。エントリー(入口)、ホ

ール、ホワイエ、リビングルーム、ダイニン

グルームがこれに含まれる。

2,コミュニティ・コンポーネント

 家族の構成メンバーが集まってリラックス

できる空間。ファミリールーム、ブレックフ

ァスト (モーニングルーム、ヌック)、キッチ

ンが含まれる。

3.プライバシー・コンポーネント

 各個人がグループから離れてくつろげる空

間,デン(書斎、SOHO)、マスター・ベッド

ルーム(主寝室)とマスター・バスルーム、

ベッドルーム(副寝室、子供部屋)とバスル

ームが含まれる。

4ファンクショナル・コンポーネント

 住宅運営/家事に必要な倉庫と難問。ガレ

ージ、サービス、ユーティリティ(洗濯室、

         家とまちなみ46  20029 49

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図1セレモニアル・コンポーネントを構成する空間 図2コミュニティ・コンポーネントを構成する空間

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写真1小型のセレモニアル・コンポーネントを構成する玄

関(左のドア)とズトリートに面するリビング/ダイニン

グルーム

機械室など)、リネンが含まれる。

5.アウトドア・コンポーネント

 敷地内で家の外観をつくる構成要素と空間。

家を取り巻く土地、外観ファサード、ランド

スケープ、アクセサリー(窓周りや工作物)

などが含まれる。

 あえて日本語に訳さずカタカナで示したこ

ともあり、少し聞き慣れない言葉もあると思

われるので、私の現地での生活と実例調査の

経験を踏まえて個々に解説を進める。

セレモニアル・コンポーネント

 セレモニアル・コンポーネントは、必ずス

トリートに面し、入口を構成する住宅の顔と

なる部分である。ドアを開けるとホールやホ

ワイエと呼ばれる空間があり、リビングルー

ムとダイニングルームが見渡せる。ここは住

宅のキャラクターを演出するもてなし空間で

ある。もてなされるのはお客だけではなく、

毎日出入りする住人もである(図1、写真1)。

 「セレモニアル」とは、直訳すれば「儀式」

となる。たとえば、ユダヤ系の住民などは金

曜日に通常の食事空間とは別のダイニング空

家とまちなみ46  2002.9

蝿ご翻..詞

写真2 奥からキッチン、ヌック、ファミリールームのつな

がったグレイト・ルームとよばれるコミュニティ・コンポ

ーネント

間でオープンに隣人なども招いて儀礼会食を

行ったりする時に使われるが、 一般的には応

接空間、演出空間的意味合いが強い理念的に

外部社会とつながった空間である。

 モデルホームでは家具は整然とセットされ、

普段には使わないフォーマルなデコレーショ

ンとなる。使わなければ雑然とすることもな

い。住人の趣味を見せられる場所でもあり、

季節の行事、たとえばクリスマス・ツリーな

どがプレゼントの箱と供にここに置かれ、ス

トリートからも見え隠れする。『ホームアロー

ン』という映画を見た方は思い起こしていた

だけるとイメージが湧くであろう。また逆に

ストリートを見ることのできる空間でもある。

ニューアーバニズムの住宅地では特に、この

コンポーネントは、玄関ポーチやバルコニー

など半屋外空間と共にストリートをつくる重

要なまちなみの要素となる。

 このコンポーネントは最も現代日本にはな

じみの薄い部分であると思われる。生活空間

が丸見えになるのを嫌うため玄関は閉ざされ、

南入の住宅の場合は、庭や塀があり、北入の

場合は隣接する部屋はトイレや倉庫となり玄

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関はさらに閉鎖的になりやすい。日本もかっ

て応接間という空間が玄関脇にあった。これ

はリビングルームに相当する空間であろう。

 では米国では生活空間が入口から丸見えで

良いのかというと、そうではない。図を見て

いただくと、じつは次のコミュニティ・コン

ポーネントとの間に厚い壁があるのである。

住宅内中央にはっきりと仕切りがあり応接空

間と家族のための日常的生活空間を分けてい

る(図1の三角印の部分)。

コミュニティ・コンポーネント

 家族のための日常空間は、プライベート空

間と思われやすいが、家庭はひとつの社会で

あると考えられる。「コミュニティ」という言

い方は、それを表している。人が二人居れば、

それは社会である。一人の家でも親しいお客

が来ればコミュニティ空間が必要になる。コ

ミュニティ・コンポーネントはファミリール

ームに代表される家族が集まる家族内の公共

空間である(図2)。

 ここにキッチンが入っていることは意外か

もしれない。主婦一人が立つ家事のためのフ

ァンクショナル(機能的)な空間ではなく、

家族の共同作業や会話の場所としての拠り所

である。特に小型の実例をみると、キッチン

の位置付けと面積比率は日本のそれとくらべ

ると明らかに大きく重要視されている。作業

空間としてのカウンター問の寸法も明らかに

複数の人間が同時に作業することを前提にし

た人間工学的設定でつくられている。

 隣接するブレックファスト(モーニング・

ルーム)は本来朝食のためのキッチンに附随

した小空間やカウンターだが、現代では「ヌ

ック」と呼ばれる独立した家族のための日常

的食事空間になっている事例が多い。これら

の空間はアイランドキッチンなどと共に開放

的になってきており、グレイトルームと呼ば

れる大空間化されることが多くなっている

(写真2)。

 前述のとおり、外部の住宅地に開いたりビ

ング/ダイニング空間とは、ドアこそないも

のの壁で仕切られるため、雑然としていても

外から見えることはない。ただしパーティな

どで家に招かれれば、コミュニティ・コンポ

ーネントに立ち入ることになる。家族と同様

にキッチンのカウンターまで入り込み、食べ

ものをつまんだり、立ち話をしたり、通常リ

ビングルームには置かれないテレビを見たり

することになる。

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図3プライバシー・コンポーネントを構成する空間

プライバシー・コンポーネント

 住宅といえば全てプライベートという先入

観はすでに消えてきたところで、個人のため

の空間が登場する。「デン」と呼ばれる書斎に

相当する空間とベッドルーム/バスルームで

ある。ここでもまだ完全に一人ではない。主

寝室は夫婦であれば共通の部屋であるし、デ

ンも家族の構成員の共通の作業空間であるこ

とが多い。ただし各自が本やインターネット

で一人の世界に没頭したり、体を鍛えたり、

一人夢を見ることができる(図3)。

 米国では原則として主寝室の浴室は、夫婦

のためのもので、寝室とクロゼットとの組み

合わせで必ず構成される。スイートルームと

呼ばれる家庭内ホテルのような空間となる。

ちなみにスイートは甘い(sweet)ではなく

続き部屋(SUIte)という意味である。ただし

米国では結婚契約しているかぎり夫婦は甘い

関係の強迫観念があるようである。そうでな

ければ原則として離婚である(写真3)。

 通常子供の使う副寝室の浴室は分けられる。

そのため100㎡程度の住宅でも2寝室以上で

あれば、2浴室となる。これは親子といえど

もプライバシーを守るという考え方と、幼児

といえども生まれたときから独立した人格で

         家とまちなみ46-20029 51

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渡和由(わたり かずよし)

 1957年群馬県生まれ。

筑波大学芸術学系環境デザ

イン助教授。筑波大学芸術

専門学群卒業および同大学

院修了。82年GK設計、

90年渡米、現地事務所、

ザ・ランドスケープ・アー

キテクツ・コラボレイティ

ブのディレクターとして日

米協働プロジェクトに携わ

る。95年Watari Design

Office主宰。96年より

KTGY社のプロジェクト・

ディレクターを務め、主に

米国内の住宅地プランニン

グを担当。

写真3 プライバシー・コンポーネントの代表空間である主

寝室とつながるバスルームとクロゼット

一人であることを自覚しながら、躾として自

分の空間を管理するという考え方の現れであ

ると考える。家庭内のアパート(離れるとい

う意味)である。ただし子供部屋のドアを閉

めないように要求している親もいる。子供と

川の字になって寝ている日本の寝室生活は米

国では理解できないかもしれない。

 日本では浴室の位置付けが異なる。よりコ

ミュニティ・コンポーネントに近いといえる。

配置も1階で寝室との関連は薄い。

 通常2階にくることが多いプライベート・

コンポーネントには階段が必要である。階段

は、セレモニアル・コンポーネントとコミュ

ニティ・コンポーネントの間に設定されるの

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図4ファンクショナル・コンポーネントを構成する空間

家とまちなみ46  2002.9

が一般的だが、コミュニティ・コンポーネン

トの奥に設定される例もある。日本でいうと

リビングを通るタイプである。

 デンに代表される空間は、現在ではホーム

オフィス、オフィス、ホビールーム、ロフト、

ボーナスルームなどと呼ばれ、玄関脇のセレ

モニアル・コンポーネント寄りにあったり、

ファミリールーム脇のコミュニティ・コンポ

ーネント寄りにあったり、2階の共同作業室

やファミリールーム的な空間としてプライバ

シー・コンポーネント内にあったり、年々多

様化している。

ファンクショナル・コンポーネント

 家事に関連する管理/保管/サービス空聞

のコンポーネントである。ここでも日本との

違いがいくつか見られる。まずはガレージで

ある。車を室内に入れるという行為は車の保

護とストリートに車を見せないという景観的

理由がある。宅地間口が狭くなってきている

現代では、ガレージが占めるストリート側立

面のデザインは無表情なものになりやすく、

デザイナーの腕の見せ所となる。ニューアー

バニズムでは、車のなかったころのまちなみ

の親密感を復活するためガレージを嫌って奥

に設置する。ただしゲストや商業空間の路上

駐車をむしろ歓迎している(図4)。

 寝室に関連して洗濯室も、図のようにガレ

ージのなかに機械室として設けられる場合が

普通だったが、写真のようにランドリールー

ムとしてより快適な2階寝室脇に設けられる

ケースが増えている(写真4)。洗濯物が発生

する2階に置くか、キッチンに関連させて家

事空間として1階に置くかの違いは嗜好の別

れるところである。浴槽の水を再利用する考

えなどは毛頭ない。お湯は各人で落としてし

まうからである。また洗濯物は景観上ストリ

ート側に干すことができないし、共働きも多

いので乾燥機は必需品である。米国の洗濯可

能な服は乾燥機に耐えられるよう厚いものが

多い。

アウトドア・コンポーネント

 まちなみに直接関連するコンポーネントで

ある。特に建物外観立面と塀などの工作物を

含む前庭の空間は重要である。フロントヤー

ド(前庭)は、もちろん個人の所有地だが、

開発の段階でランドスケープがデザインされ、

景観上ホームオーナーズ・アソシエーション

によって管理されるケースもある。また、方

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位に関係なく前述のセレモニァル・コンポー

ネントを背後に持つため、必ず窓のある室内

空間が面する。このことはまちなみをフレン

ドリーにするために重要なことである(図5、

写真5)。

 隣地との境界にあるサイドヤード(横島)

は、通路的空間だが、カリフォルニアでは裏

庭との仕切り壁がある。またセットバックし

たガレージへの通路を利用したパティオや、

坪庭的に有効利用する事例も増えている。

 前庭を住宅地全体に関連する公共的外部空

間だとすれば、裏庭は、私的な外部空間であ

る。子供の安全な遊び場としても重要であり、

コミュニティ・コンポーネントの面する見る

ための快適な庭や外部での食事空間ともなる。

カリフォルニアでは特に壁に囲まれて、その

傾向が顕著になっている。裏庭に無断侵入し

た日本人が射殺された不幸な事件も起こって

いる。

 パッシブソーラーを取り入れたビレッジホ

ームズなどを除けば、南北という方位ではな

く、ストリートを基準にした表と裏という庭

の構成になっている。

 日本で洋風住宅に取り入れられなかった部

分も含めて、米国の間取り理論を簡単に述べ

た。これだけでは具体的な理解が難しいかも

しれない。次回機会をいただければ、実例を

示しながら、さらに具体的な解説を試みたい。

 明治以降今日まで多数の洋風住宅が日本で

つくられるようになった。洋風住宅は文字ど

おり 「洋風」日本住宅である。西洋っぽい、

外国っぽい住宅であるが、それそのものでは

ない。椎のある輸入住宅しかりである。日本

の外国文化やデザインの取り入れかたは、と

ても素早く、日本流アレンジが施され、物と

しての質はオリジナルよりも上質だったりす

る。しかし、往々にして重要なソフトの部分

が取り入れられていなかったり、目に見えに

くい質の解釈が不十分だったりすることが多

いと私は感じている。特に、平面計画におけ

る以下の3つの視点は特に日本の現代住宅生

産にとって重要であると考える。

1)宅地全体のなかで、通りを基準にした個々

 の住宅平面の考え方

2)住宅内にも複数の人が住むコミュニティ

 や社会を想定する考え方

図5アウトドア・コンポーネントを構成する空間

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写真5 モデルホームで親密なデザインでつくり込まれた前

庭と外観の関係

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譜『麟藩図6各コンポーネントで示される眺めと室内空間の関係の一例

3)インテリアとエクステリアのつながりや

  ビューを重視する考え方

 本来日本の住宅も持っていたソフトウェア

であったにも関わらず、縦割りで専門分化し

た現代の土地開発、生産、販売、また顧客の

購買など各場面で忘れられやすい事柄ではな

いだろうか。米国のデザイン理論やノウハウ

の中には、彼等が日本から学んで定着してい

るアイデアが多々あることを何度か述べてい

るが、今回も例外ではないと思う。私たちも

自信を持ってわが国の伝統をもう一度見直す

ことも必要であろう。そのときにこうした外

来の見方や知識体系が参考になることも忘れ

てはならないと考える。

         家とまちなみ46  2002.9

参考文献=

James W. Wentling,

Housing by Li∬estyle,

The Component Method of

Residential Design,1990

         53