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162o 肝 蛭 症 の3例 兵庫県立淡路病院内科 児玉 和也 大西 松尾 武文 神戸大学医学部医動物学教室 (平成2年11月29日 受付) (平成3年7月23日 受理) Key words: Fasciola hepatica, bithionol は じめ に 肝 蛭 は 牛,羊,山 羊 を は じめ と し,豚,馬,犬 な ど ほ とん ど の哺 乳 動 物 の 肝 臓 や 胆 管 に寄 生 す る 吸虫で,肝 蛭症は人畜共通感染症 として注 目され て い る.ヒ ト肝 蛭 症 は海 外 で は欧 米 や オ ー ス トラ リア に広 く分 布 して い て1,400例 を 越 え る報 告 が あ るが,本 邦 で は比 較 的 希 と され て い て,診 断上 苦 慮 す る こ とが 多 い1)2).今回 我 々 は発 熱 を 主 訴 と し,著 明 な好 酸 球 増 多 を 認 め,血 清学的に肝蛭症 と診 断 した3症 例を経験 したので,臨 床的検討を 加 え報 告 す る. 症 例1:36歳,女 性,農 業. 現 病 歴:1987年10月 中 旬 に右 季 肋 部 に約10分 間 疵 痛 を 自覚 した.同 年12月20日 よ り3~4日 毎に 悪 寒 を伴 って 高 熱 が 出 現 す る よ うに な り当科 を 受 診 した. 臨床経過:右 季 肋 部 に 圧 痛 を認 め,末 梢血液像 でWBC5,930/mm3(Eo46.4%)と 著明な好酸 球 増 多 を示 した.腹 部CT検 査 で は肝 内 に多 胞 性 の嚢 胞 様 病 変 を 認 め た(Fig. 1) .便 虫卵は陰性で あ った が,肝 蛭抗原を用いた即時型皮内反応が陽 性 で あ った た め,血 清 学 的 検 査 を 行 い肝 蛭 症 と診 断 され た(Fig.2).肝 生 検 所 見 はabscessと 著明 な 好 酸 球 浸 潤 を 伴 った 肉 芽 形 成 を 示 し た(Fig . 3).入 院当初,細 菌性膿瘍を疑 って抗生物質を投 与 され る も効 果 な く,bithionol 2,000mgの 10回 投 与 を1Kurと して治療 を開始 した ところ速 や か な 解 熱 が み られ,好 酸球増多 も次第に消失 し た.2Kur目 には,薬 剤による白血球減少が出現 し た が,投 与 間 隔 を 開 け る こ とで 軽 快 した(Fig.4). 症 例2:54歳,男 性,農 業. 現 病 歴:1985年3月 よ り腹 部 膨 満 感 と微 熱 を 自 覚 す る よ うに な り,近 医 に て肝 機 能 障 害 を 指 摘 さ れ 同年6月 に当 科 に 入 院 した. 臨床経過:腹 部 に弾 性 硬 の肝 を5横 指触知 し, 末 梢 血 液 像 でWBC8,100/mm3(Eo48%)と 明な好酸球増多を認めた.腹 部CT検 査 で は,肝 両 葉 に不 規 則 な 低 吸 収 域 を 多 数 認 め(Fig.1),血 管 造 影 で も腫 瘍 性 病 変 は否 定 で き な か った.腹 鏡では肝表面は黄白色の小結節が無数に散在 し, 生 検 所 見 はeosinophilic microabsces 便,胆 汁 中 の虫 卵 は 陰 性 で あ った が,血 清 学 的検 査 に て 肝 蛭 症 と診 断 され た.Bithiono 12,400 の隔 日投与を開始 した ところ微 熱 は消失 して好酸 球 も3週 間 後 に は正 常 化 した(Fig. 4). 症 例3:48歳,男 性,会 社 員. 現病歴:生 来 健 康 で あ っ た が,1989年11月20日, 右 季 肋 部 に 約20分 の疝 痛 を 自覚 した.1990年1月 25日 よ り4~6日 毎 に悪寒 を伴 った39℃ 台の発熱 が 出現 す る よ うに な り,ま た 右 季 肋 部 に 持 続 性 の 鈍 痛 も認 め る よ うに な った た め3月6日 当 科 に入 院 と な っ た.農 業 は営 まないが,自 宅 の 周 囲 に酪 農 家 は多 い. 別刷 請 求 先:(〒656)洲 本 市 下 加茂1-6-6 兵庫県立淡路病院内科 児玉 和也 感 染 症学 雑誌 第65巻 第12号

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162o

肝蛭症の3例

兵庫県立淡路病院内科

児玉 和 也 大 西 尚 松尾 武文

神戸大学医学部医動物学教室

松 村 武 男

(平成2年11月29日受付)

(平成3年7月23日 受理)

Key words: Fasciola hepatica, bithionol

はじめに

肝蛭は牛,羊,山 羊をは じめとし,豚,馬,犬

などほとんどの哺乳動物の肝臓や胆管に寄生する

吸虫で,肝 蛭症は人畜共通感染症 として注 目され

ている.ヒ ト肝蛭症は海外では欧米やオース トラ

リアに広 く分布 していて1,400例 を越える報告が

あるが,本 邦では比較的希とされていて,診 断上

苦慮することが多い1)2).今回我々は発熱を主訴 と

し,著 明な好酸球増多を認め,血 清学的に肝蛭症

と診断した3症 例を経験 したので,臨 床的検討を

加え報告する.

症 例

症例1:36歳,女 性,農 業.

現病歴:1987年10月 中旬に右季肋部に約10分 間

疵痛を自覚した.同 年12月20日 より3~4日 毎に

悪寒を伴 って高熱が出現するようになり当科を受

診した.

臨床経過:右 季肋部に圧痛を認め,末 梢血液像

でWBC5,930/mm3(Eo46.4%)と 著明な好酸

球増多を示 した.腹 部CT検 査では肝内に多胞性

の嚢胞様病変を認めた(Fig. 1).便 虫卵は陰性で

あったが,肝 蛭抗原を用いた即時型皮内反応が陽

性であったため,血 清学的検査を行い肝蛭症 と診

断 された(Fig.2).肝 生検所見はabscessと 著明

な好酸球浸潤 を伴 った肉芽形成 を示 した(Fig .

3).入 院当初,細 菌性膿瘍を疑 って抗生物質を投

与 され るも効果なく,bithionol 2,000mgの 隔 日

10回投与を1Kurと して治療を開始 した ところ速

やかな解熱がみられ,好 酸球増多 も次第に消失 し

た.2Kur目 には,薬 剤による白血球減少が出現 し

たが,投 与間隔を開けることで軽快 した(Fig.4).

症例2:54歳,男 性,農 業.

現病歴:1985年3月 より腹部膨満感 と微熱を自

覚するようにな り,近 医にて肝機能障害を指摘 さ

れ同年6月 に当科に入院した.

臨床経過:腹 部に弾性硬の肝を5横 指触知 し,

末梢血液像でWBC8,100/mm3(Eo48%)と 著

明な好酸球増多を認めた.腹 部CT検 査では,肝

両葉に不規則な低吸収域を多数認め(Fig.1),血

管造影で も腫瘍性病変は否定できなかった.腹 腔

鏡では肝表面は黄白色の小結節が無数に散在 し,

生検所見はeosinophilic microabscessで あった.

便,胆 汁中の虫卵は陰性であったが,血 清学的検

査にて肝蛭症 と診断 された.Bithiono 12,400mg

の隔日投与を開始 した ところ微熱は消失 して好酸

球 も3週 間後には正常化 した(Fig. 4).

症例3:48歳,男 性,会 社員.

現病歴:生 来健康であったが,1989年11月20日,

右季肋部に約20分 の疝痛を 自覚 した.1990年1月

25日 よ り4~6日 毎に悪寒を伴 った39℃ 台の発熱

が出現するようにな り,ま た右季肋部に持続性の

鈍痛も認めるようになったため3月6日 当科に入

院となった.農 業は営 まないが,自 宅の周囲に酪

農家は多い.

別刷請求先:(〒656)洲 本市下加茂1-6-6

兵庫県立淡路病院内科 児玉 和也

感染症学 雑誌 第65巻 第12号

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肝蛭症の3例 1621

Fig. 1 Liver CT scan

Case (1)

Case (2)

Case (3)

臨 床 経 過:腹 部 に肝 を2横 指 触 知 し,末 梢 血 液

像 でWBC 7,310/mm3(Eo 30.3%)と 著 明 な 好

酸 球 増 多 を認 め た,腹 部CT検 査 で は 肝 内 に 多 胞

性 の 嚢 胞 様 病 変 を認 め(Fig.1),便 虫 卵 は 陰 性 で

あ った が,血 清 学 的 検 査 を 行 い肝 蛭 症 と診 断 され

た.胸 部CT検 査 で,左S9に 脾 臓 と接 して 腫 瘤 陰

影 を 認 め た.3月13日 よ りbithionol 2,400mg/日

の 隔 日投 与 を 開 始 した.治 療 に よ り一 旦 無 熱 と

な っ た が3月16日 よ り再 び熱 発 が み られ,そ れ に

伴 っ て著 明 な左 胸 水 の 貯 留 を 認 め た.3月27日 よ

り咳 嗽,喀 痰 が 多 く出現 す る よ うに な り,喀 痰 中

Fig. 2 (A) Ouchterlony test (B) Immunoelectro-

phoresisFhp; Fasciola hepatica, Csi ; Clonorchis sinensis,

Sjp; Schistosoma japonicum, Eml; Echinococcusmultilocularis, Ccl; Cysticercus cellulosae, Tsg;Taenia saginata, Tct; Toxocara cati, AsF;Ascaris Female, Tcn; Toxocara canis, Dim;

Dirofilaria immitis, Ani; Anisakis, CRP; C-reactive protein

(A)

(B)

には多数の好酸球を認めた.脾 臓に接 した腫瘤は

肝蛭による肉芽 と推測され,肝 蛭の胸腔内への迷

入による胸膜炎 とそれに続発 した気管支肺炎が考

えられた.こ の間治療により好酸球数は次第に減

少 したが,3月31日 には消化器障害のため治療を

1Kurで 中断した.そ の後細菌性気管支炎による

発熱をみたが,抗 生物質の使用により軽快した.

4月18日 よりbithionolを 再開 した ところ,同 年

5月 には胸水も殆 ど消失 し,好酸球も正常化 した.

考 察

欧米における人肝蛭症のほ とんどは放牧地にお

けるメタセルカ リアが付着した野生のオランダガ

ラシを生食することによって発生するが,日 本で

は感染牛の飼育によって虫卵に汚染された敷藁を

堆肥 として水田に投入する習慣があ り,水 稲 にメ

タセルカリアが付着 し,稲 刈 り作業や野草の生食

平成3年12月20日

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1622 児玉 和也 他

Fig. 3 (A) Abscess and eosinophilic granulation

of liver, (B) Charcot-Leyden crystals of liver

(A)

(B)

によって発生す るもの と考えられる.欧 米 と日本

との発生頻度の差異は,欧 米の肝蛭の中間宿主の

貝であるLymnea truncatulaは 水陸両棲で,雨 量

の多い年 には牧場で貝が大繁殖をして肝蛭症の大

流行が起 こるのに対 し,日 本の肝蛭の中間宿主

Lymnea ollula(ヒ メモノアラガイ)は 低温の水の

中で繁殖するため山間地や平野の山際な どの小規

模な水田耕作を行っている地域で発生するためと

思われる1).

Tableに3症 例の臨床所見をまとめた.経 口摂

取 されたメタセルカ リアは腸管内で脱嚢 して腸管

壁を穿通 して腹腔内に出るが,こ のとき激烈な腹

痛を伴 うことが多い.症 例1と3で はいずれ も発

症の約2ヵ 月前にメタセルカリアの腸管壁穿通に

よると思われる右季肋部痛を訴えてお り,診 断上

重要で留意すべ き点 と思われた.そ の後肝蛭は肝

表面から実質内に侵入 して胆管に移動 し,発 育し

て感染の約3ヵ 月後に成虫となって産卵を開始す

る.従 って この時期までは糞便中の虫卵は陽性と

はならず,陰 性であっても肝蛭症は否定できない

ことに注意すべ きである.萩 原 ら3)の報告による

と本邦でこれまでに報告 されている人肝蛭症45例

の うち虫体あるいは虫卵が証明されたものは35例

(78%)で ある.今 回はいずれの症例において も虫

卵は検出されなかったが,症 例1,3で は感染後

3ヵ 月を経過していなかったためと思われる.成

Fig. 4 Clinical course

CEZ: Cefazolin, PIPC: Piperacillin, Bitin: Bithionol, Eo: Eosinophil, CPZ: Cefoperazone ,LCM: Lincomycin, CRP: C reactive protein, BT: Body temperature

Case 1 Case 2 Case 3

感染症学雑誌 第65巻 第12号

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肝蛭症の3例 1623

Table Summary of three cases of hepatic fascioliasis

虫が胆管に寄生 していても糞便中に虫卵が証明さ

れないことがあ り,こ のような場合には血清学的

診断が重要になる.特 に感染後3ヵ 月を経過して

いないと考えられる症例については,積 極的に免

疫血清学的検査を進めてゆ くべきと思われる.ま

た肝蛭抗原を用いた即時型皮内反応は症例1で 試

みて陽性であったが,感 染の初期 より陽性化す る

ため1)スク リーニング検査 として有用 と考 えられ

た.ま た発熱は症例1,3で は2~4日 毎の不規

則な間欠熱を呈 してお り,か な り特徴ある所見 と

思われ注意深い病歴の聴取が診断上参考になるも

のと思われた.

近年画像診断の進歩には著しいものがあるが,

症例1,3で は腹部エコー検査で肝内に高エコー

域 とその内部に不整形の低エコー域が集族 してみ

られた.腹 部CT検 査では辺縁明瞭な多房性嚢胞

様病変を示 し,比 較的特徴的な所見 と思われた.

しかし症例2で は辺縁の不整な低吸収域が肝両葉

に瀰漫性に認められ,血 管造影で も腫瘍 との鑑別

が困難であった.腹 部CT検 査は肝蛭症の診断や

治療効果の判定に有用 とされてお り4)5),Serrano

ら5)は活動期の肝蛭症 のCT所 見 として結節性病

変とその周辺の低吸収域病変を報告しているが,

本邦では多房性病変を指摘 した報告も多 く,病 期

や寄生 した虫体数のほかに肝蛭種の差による可能

性もあるものと思われた.こ れ らの病変は経過を

追えた症例1,3に おいても治療後 も1年 以上に

わた り存続 した.

肝生検像はこれまでに報告されているように3

症例 とも壊死巣を中心に肉芽の形成を認め好酸球

の浸潤が著明であったが,症 例2で は線維化や偽

小葉形成も認められた.い ずれの症例においても

生検組織中に虫体はみ られなかったが,Charcot-

Leyden結 晶が多 く認め られた.肝 蛭症の組織所

見にこの結晶の記載は少ないが6),そ の存在 は慢

性炎症への好酸球の関与を示唆す るもの と考 えら

れ,寄 生虫性肝疾患の存在を疑わせる所見 として

捉えるべきものと思われた.

症例3で は入院後まもなく胸膜炎を合併 しそれ

に引き続いて気管支肺炎を発症した.喀 痰 には著

明な好酸球を認めたが,こ のことは肝蛭が肝臓か

ら横隔膜を通 って胸腔,肺 実質へ と迷入した可能

性を示す ものと思われた.ヒ ト肝蛭症の呼吸器症

状 としては病初期に弛張熱の出現に先立ってみら

れるレフレル症候群が知 られてお り,フ ランスで

の110名 の肝蛭症患者の うち8.2%に み られたと報

告 されているが1),胸 腔への迷入の報告は希であ

る.

治療薬については吉田ら7)の報告以来bithionol

が一般に用いられてお り,今 回のいずれの症例に

平成3年12月20日

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1624 児玉 和也 他

お い て もbithionolが 有 効 で あ っ た が,症 例1で

は 白血 球 減 少 の副 作 用 の た め,症 例3で は腹 痛 と

下 痢 の た め に そ れ ぞ れ 減 量 と休 薬 を 余 儀 な くされ

た.い ず れ も2Kurの 治 療 に て 発 熱 な ど の 症 状 や

好 酸 球 増 多 は 消 失 し,以 後 再 発 はみ られ なか っ た.

以 上,本 邦 で は比 較 的 希 な ヒ ト肝 蛭 症 の3例 に

つ き臨 床 的 考 察 を加 え報 告 した .

本論文の要 旨は第64回 日本感染症学会総会(1990年4月

松山)に おいて報告 した.

最後 に,肝 蛭抗原 との免疫電気泳動を施行 していただい

た,広 島大学医学部辻 守康教授 に深謝致 します.

文 献

1) 大 島智夫: 人肝蛭症. 最新医学, 44: 856-860 ,

1989.

2) 藤田紘一郎, 月館説子, 荒木 国興, 中西弘有, 井

上啓爾, 冨岡 勉, 野 田剛稔, 土屋涼一: 肝実質

内に多房性嚢胞を形成 した肝蛭症の1例. その寄

生虫学的 ・免疫学的検討. 熱帯医学, 27:1-8,

1985,

3) 萩 野 晴 彦, 伊 聖哲, 中 田邦 也, 乾 明夫, 横 野

浩 一, 土 井 邦 紘, 老籾 宗 忠, 馬 場 茂 明, 小 西 英 二,

松 村 武 男, 辻 守康: ヒ ト肝 蛭 症 の1症 例. 臨 床

消 化 器 内科, 1: 1505-1510, 1986.

4) Takeyama, N., Okumura, N., Sakai, Y.,Kamma, O., Shima, Y., Endo, K. & Hayakawa ,T.: Computed tomography findings of hepaticlesions in human fascioliasis: Report of twocases. Am. J. Gastroenterol., 81: 1078-1081,1986.

5) Serrano, P. A., Vega, A., Ortega, E. & Gonzalez,A.: Computed tomography of hepatic fas-

cioliasis. J. Comp. Assis. Tom., 11: 269-272,1987.

6) 宮 里 昴, 古 川 忠 明, 辻 守康, 藤 田紘 一 郎, 荒

木 国興, 石 井 望人: ヒ ト肝 蛭 症 の1症 例. 寄 生 虫

誌, 35: 63, 1986.

7) 吉 田幸 雄, 三宅 健 夫, 中 西靖 郎, 西 田桓 一 郎, 山

敷 祐亮, 石 川文 夫, 藤 坂邦 彦, 田中 昭 男, 江 原真

一 郎: 肝 蛭 の 人体 寄 生2例 な らび にBithionolに

よる本 症 の 治療. 寄 生 虫誌, 11: 411-420 , 1962.

Three Cases of Human Fascioliasis

Kazuya KODAMA, Hisashi OHNISHI & Takefumi MATSUO

Department of Internal Medicine, Hyogo Awaji Hospital

Takeo MATSUMURADepartment of Medical Zoology, Kobe University School of Medicine

Three patients with hepatic fascioliasis are presented .(case 1) A 36-year-old female was admitted in January, 1988, because of intermittent high-grade

fever. Laboratory findings included white blood cell count 8,050/mm3 with 29% eosinophils, and CRP9.5 mg/dl. There was a positive intradermal reaction to Fasciola hepatica antigen. Liver biopsy revealedeosinophilic abscess, granulation and many Charcot-Leyden crystals.

(case 2) A 54-year-old male was admitted in June, 1985, because of abdominal fullness. Markedhepatomegaly was noticed. Laboratory findings included white blood cell count 10,200/mm3 with 26%eosinophils, and CRP 2.2 mg/dl.

(case 3) A 48-year-old male was admitted in March, 1989, because of intermittent high-gradefever. Hepatomegaly was noticed. Laboratory findings included white blood cell count 7,310/mm3 with30.3% eosinophils, and CRP 3.5 mg/dl. His condition was complicated by pleuritis with invasion ofFasciola hepatica.

In all patients, stool specimens were negative for ova and immunoelectrophoresis was positive forF. hepatica antigen. Computed tomography demonstrated multiple low-density areas in the peripheryof the liver in cases 1 and 3, and disseminated areas in case 2. After treatment with bithionol 40mg/kgevery other day for 40 days, all three patients became asymptomatic.

感染症学雑誌 第65巻 第12号