蘇生後脳症予後予測 2020蘇生後脳症予後予測 2020 八木 洸輔 / 齋藤 慎二郎...
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蘇生後脳症予後予測
2020八木 洸輔 / 齋藤 慎二郎
ERC-ESICM Guidelines for Post-resuscitation Care 2020 より抜粋
2020.12.15
はじめに
心停止後の神経学的予後予測についてのReviewがでた
ガイドラインが改訂される or されたタイミング
勉強会では蘇生後脳症としては2010年
AHA 2015を扱い、予後予測も載っていたのが2015年
当院ICUでは、あまり頻度は高くないが
Commonな病態であるので題材とした
Ø America Heart Association ; AHA 2020Ø European Resuscitation Council /
European Society of Intensive Care Medicine ; ERC/ESICM 2020
今回は、今年改訂されたAHAとERC-ESICM(Draft)のガイドラインを中心として
ROSC後も意識障害が遷延している成人患者への神経学的な予後予測についてまとめた
目次
Ø蘇生後脳症とは
Ø心停止患者の予後
Ø神経学的予後予測を行う意義、注意点
Øガイドライン改訂に向けて
Ø予後予測ツールの紹介
Ø2020年改訂ガイドラインの紹介Ø注意点
Ø当院でのプロトコール案
目次
Ø蘇生後脳症とは
Ø心停止患者の予後
Ø神経学的予後予測を行う意義、注意点
Øガイドライン改訂に向けて
Ø予後予測ツールの紹介
Ø2020年改訂ガイドラインの紹介Ø注意点
Ø当院でのプロトコール案
Ø 蘇生後だと蘇生が終了している印象があるためPCAS(Post Cardiac Arrest Syndrome )と名称変更
Ø PCASは以下の4つに大別される・脳損傷・心筋機能障害・全身性虚血再灌流反応・心停止に至った原病
Circulation. 2008 ;118:2452-83.
Ø ROSC後の多彩な全身症状をまとめた概念としてもともとは蘇生後病と言われていた
Resuscitation. 1972 ;1:1-7.
Circulation. 2008 ;118:2452-83.
蘇生後脳症はPCASの脳損傷を指している
目次
Ø蘇生後脳症とは
Ø心停止患者の予後
Ø神経学的予後予測を行う意義、注意点
Øガイドライン改訂に向けて
Ø予後予測ツールの紹介
Ø2020年改訂ガイドラインの紹介Ø注意点
Ø当院でのプロトコール案
・蘇生後意識障害患者のうち、2/3は退院前に死亡死亡するうちの2/3は神経障害により死亡
Intensive Care Med. 2013 ;39:1972–1980.
・アメリカの心停止後蘇生患者の退院までの生存率は
院外心停止患者で12%、院内心停止患者で25%Circulation. 2019 ;139:e56–e528.
・日本では院外心停止患者のROSC率は29%そのうち社会復帰率は10%
Lancet. 2007 ;369:920–926.
目次
Ø蘇生後脳症とは
Ø心停止患者の予後
Ø神経学的予後予測を行う意義、注意点
Øガイドライン改訂に向けて
Ø予後予測ツールの紹介
Ø2020年改訂ガイドラインの紹介Ø注意点
Ø当院でのプロトコール案
神経学的予後予測を行う意義
・医療資源の適切な振り分けを行える
・家族にとっての現実的な見通しが立てられる
・医療費の高騰を防ぐ
Reasons for death in patients successfully resuscitated from out-of-hospital and
in-hospital cardiac arrestResuscitation. 2019 ;136:93-99.
・アメリカの単施設の10年間の後ろ向き観察研究・20分以上のROSCを得られた心停止患者が対象
①73%
②4%
③16%
④3%
⑤4%
①27%
②36%
③25%
④1%
⑤11%
①神経学的予後が悪いことから治療撤退②併存疾患の予後が悪いことから治療撤退③循環破綻④呼吸不全⑤突然の心停止
院外心停止 院内心停止
ERC-ESICM 2015
Resuscitation. 2015 ;95:202-222. から抜粋
Association of early withdrawal of life-sustaining therapy for perceived neurological prognosis with mortality
after cardiac arrestResuscitation. 2016 ;102:127–135.
・多施設研究 ROC PRIMED trialの二次解析
・院外心停止ROSC患者4265人が対象・死因の1/3が72時間以内に神経学的予後が不良だとして治療撤退されたことによる
・この早期の治療撤退患者のうち、26%は治療撤退しなかったら
生存できた可能性がある
・生存できた可能性がある患者のうち、64%は神経学的に良好に
生存できた可能性がある
目次
Ø蘇生後脳症とは
Ø心停止患者の予後
Ø神経学的予後予測を行う意義、注意点
Øガイドライン改訂に向けて
Ø予後予測ツールの紹介
Ø2020年改訂ガイドラインの紹介Ø注意点
Ø当院でのプロトコール案
Intensive Care Med. 2020 ;46:1852–1862.
・33℃ vs 36℃ TTM RCTの国際多施設研究(TTM trial)データを使用した後ろ向き観察研究
・心原性と思われる成人院外心停止ROSC患者・全員TTM行っている・ERC-ESICM 2015の有用性を検証
・心停止後6ヶ月の神経学的予後で検証
M≧3で予後が悪かったのは 75/380
感度 38.7%(95%CI 33.1-44.7)特異度 100%(95%CI 98.8-100)予後不良患者(CPC 3-5)の4割程度を同定
脳波所見をガイドライン(unreactive burst-suppression orてんかん重積)からHighly malignant 所見(後述)にした場合新たに3人予測できた感度 39.8%(95%CI 34.2-45.8)特異度 100%(95%CI 98.8-100)
M≦2→M≦3 にすると新たに6人予測できた
Motor でのスクリーニングなし新たに10人予測できた
・AHA、ERC-ESICMともに前回ガイドラインから5年経過
・TTMがより一般的に行われており、ほとんどの研究の
患者集団はTTMの有無が混在している
・脳波所見の統一された定義づけが行われた
・アルゴリズムの感度を高められる可能性
・新たな指標の研究の出現
ガイドライン改訂へ
目次
Ø蘇生後脳症とは
Ø心停止患者の予後
Ø神経学的予後予測を行う意義、注意点
Øガイドライン改訂に向けて
Ø予後予測ツールの紹介
Ø2020年改訂ガイドラインの紹介Ø注意点
Ø当院でのプロトコール案
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
・ERC-ESICM 改訂へ向けての、2013年からの研究のSR
・94研究、30,200人・16歳以上の心停止後ROSC後、意識障害遷延患者・院外心停止、院内心停止患者どちらも含む
・TTM 割合は研究によりさまざまで7割の研究で100%施行
・ほぼすべての研究でPoor outcome 定義はCPC 3-5(後述)
・Outcome のタイミングはさまざまで、半数は6ヶ月
総論
Cerebral Performance Category CPC 1 機能良好意識は清明、普通の生活ができ、労働が可能である。障害があっても軽度の構音障害、脳神経障害、不全麻痺など軽い神経障害あるいは精神障害まで。
CPC 2 中等度障害意識あり。保護された状況でパ-トタイムの仕事ができ、介助なしに
着替え、旅行、炊事などの日常生活ができる。片麻痺、けいれん、失調、構音障害、嚥下障害、記銘力障害、精神障害など。
CPC 3.高度障害意識あり。脳の障害により、日常生活に介助を必要とする。少なくとも
認識力は低下している。高度な記銘力障害や痴呆。閉じ込め症候群のように眼でのみ意思表示できるなど。
CPC 4.昏睡、植物状態意識レベルは低下。認識力欠如。周囲との会話や精神的交流も欠如。
CPC 5.死亡、もしくは脳死
CPC 3以上をPoor outcome とするものが多い
ICUとCCU. 2017 ;41:693〜701.
蘇生中の予後予測
・挿管時のEtCO2≧10 mmHg,蘇生後20分後 EtCO2≧20 mmHgは生存退院を予測する可能性
Circulation. 2015 ;132:S84–S145.Resuscitation. 2015 ;95:e71-e120.
・上記は死亡率と関連があるが、神経学的予後を予測できるかは不明である Circulation. 2019 ;140:e517–e542.
主な予後予測ツール
<臨床所見>
・対光反射
・瞳孔記録計による評価
・角膜反射
・最良運動反応
・ミオクローヌス重積状態
<血液検査>
・血清NSE
<神経電気生理学検査>
・SSEP・脳波
<画像検査>
・頭部CT・頭部MRI
心停止後、意識障害が遷延している患者への神経学的予後の評価は
1. 一つの所見だけで行うべきではなく、多角的なアプローチが推奨される
2. 予後評価を行うタイミングは、薬剤の影響などを受ける心停止後早期は避け、適切な時間まで待つことが推奨される
3. 心停止後患者をケアするチームは、予想される経過と神経学的予後予測の不確実性について、患者の代理人を加えた多職種間で、定期的に透明性を保って話し合うことが推奨される
4. 個々の検査結果はより早く得られるかもしれないが、多角的な神経学的予後予測は、少なくとも復温後72時間の時点で行うのがいいのかもしれない
※ ERC-ESICMでは心停止後72時間後
AHA 2020 Circulation. 2020;142:S366–S468から抜粋、一部改変
各論
臨床所見
両側対光反射消失
48時間を超えるとFPR 0%となる傾向
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
ROSC直後の所見は感度は高いが、偽陽性率(FPR)も高い
4日経つと、一貫してFPR 0%感度は 17.9%-35.7%
19研究
自動瞳孔記録計での測定
瞳孔記録計での光刺激での瞳孔径の変化が消失または最小3つの研究では48時間を超えるとFPR 0%
3研究
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
Neurological pupil index (NPi)
・NPiは、瞳孔収縮率だけでなく、瞳孔収縮や拡張速度、潜伏時間などの一連の動的な変数に基づいたスコア・心停止後24時間から FPR 0%閾値は、0から2.4と定まっていない
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
両側角膜反射消失
4日経つと、一貫してFPR 0%感度は 23.1%-40.5%
72時間を超えるとFPR 0%となる傾向
ROSC直後の所見は感度は高いが、偽陽性率(FPR)も高い
11研究
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
心停止後、意識障害が遷延している患者への神経学的予後の評価は、他の試験も一緒に行う前提で
Ø 両側対光反射消失は、心停止後72時間以上経過したタイミングが適切かもしれない
Ø 瞳孔記録計を使っての量的評価は、心停止後72時間以上経過したタイミングが適切かもしれない
Ø 両側角膜反射消失は、心停止後72時間以上経過したタイミングが適切かもしれない
AHA 2020 Circulation. 2020;142:S366–S468から抜粋、一部改変
対光反射も角膜反射も時間の経過とともにFPR 0に近づき4日経つとFPR 0を達成した偽陽性の理由としては
・低酸素脳症からの回復を見ている
・薬剤の影響
・評価の標準化されていない
(光強度、眼からの距離、光を当てる時間)
・評価が主観的
現状、72時間以上となっているが、伸びるかも?自動瞳孔記録計での測定が理想的?
NPiという新たな指標の可能性
ミオクローヌス
定義されているのは1研究のみタイミングも異なるが、FPRはばらつきあり
<定義>
瞬間的な筋収縮や筋放電停止によって引き起こされる、突然起こり、通常短時間の筋肉の不随意の収縮
・ミオクローヌスを生じた患者のうち9%が退院時 CPC1-2Crit Care Med. 2015 ;43:965–972.
6研究
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
ミオクローヌス重積状態
<定義>
全身性ミオクローヌスが長期間続く場合は
一般的にミオクローヌス重積状態と表現される
しかし、ミオクローヌス重積状態と定義するための
ミオクローヌス性の分布や持続時間については
コンセンサスが得られていない
Intensive Care Medicine. 2014 ;40:1816–31.
※ミオクローヌスてんかん重積状態は
てんかん重積状態のサブタイプ
心停止後の昏睡状態の生存者においては
30分以上持続する全身性ミオクローヌスと定義すべき
2研究のみ(定義は異なる)
24時間でもFPRはほぼ0
2研究
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
最良運動反応 Motor score
M=1もM≦2も感度は高いが、特異度は低い
7日経ってもFPR 5%以上
18研究
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
心停止後、意識障害が遷延している患者への神経学的予後の評価は、他の試験も一緒に行う前提で
Ø 心停止後72時間以内のミオクローヌス重積状態は神経学的予後が悪いことを示唆するかもしれない
Ø ミオクローヌスがあれば脳波を測定する
Ø ミオクローヌスを分類せずに予後判定に使うべきではない
Ø 上肢の最良の動きが、M≦2を単独で予後判定に使うべきではない
AHA 2020 Circulation. 2020;142:S366–S468から抜粋、一部改変
・ミオクローヌスは見た目ほど予後を予測しない
・Lance-Adams syndrome としてのミオクローヌスは
神経学的予後は悪くはない
・局所性や非対称性などで分類することで神経学的予後が
良好なミオクローヌスを分類できるかもしれない
・脳波所見でも、予後がいいミオクローヌスが分類できる
かもしれない
・てんかん波がないか、脳波を確認する必要がある
・ミオクローヌス重積発作はガイドラインでは
72時間以内のものは有用となっているが
定義も不明確であり、最近の研究は少ない
血液検査
24, 48, 72時間でほぼ全ての研究でFPR 0
24時間:閾値 39.8 ~ 172 μg/L
48時間:閾値 34 ~ 120 μg/L
72時間:閾値 33 ~ 79 μg/L
かなりばらつきあり
NSE(Neuron-specific enolase )
神経学的予後が悪い症例では24時間後より48-72時間後の方がNSE値が高いという報告も経時的な変化も指標になる可能性
Acta Anaesthesiol Scand. 2014 ;58:1093–1100.J Am Coll Cardiol. 2015 ;65:2104–2114. Crit Care (Lond, Engl). 2017 ;21:172. Resuscitation. 2019 ;145:185–191.
16研究
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
心停止後、意識障害が遷延している患者への神経学的予後の評価は、他の試験も一緒に行う前提で
1.心停止後72時間以内の血清NSEの高値は神経学的予後が悪いことを示唆するかもしれない
2. S100B蛋白、タウ蛋白、NFL, GFAP の有用性は不確か
AHA 2020
ERC-ESICMではNSE閾値 60 μg/L (48, 72時間)
Circulation. 2020;142:S366–S468から抜粋、一部改変
ちなみに
血清NSEは中検で測定できて30分ほどで結果が分かりますが腫瘍マーカーとして算定されるため
保険適応外となる
神経電気生理学検査
短潜時体性感覚誘発電位 SSEPN20波 両側消失18研究
心停止当日から6日までタイミングはバラバラだが
ほぼ全ての研究でFPR 0感度も高い結果の研究が多い
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
当院ICUで行うのはいろいろと厳しそう。。。
心停止後、意識障害が遷延している患者への神経学的予後の評価は、他の試験も一緒に行う前提で
心停止後24時間以上経過したタイミングでの両側性のSSEP N20の消失は神経学的予後が悪いことを示唆するかもしれない
AHA 2020 Circulation. 2020;142:S366–S468から抜粋、一部改変
脳波
これまでさまざまな用語があったが
American Clinical Neurophysiology Society ; ACNS
から2012年に用語が統一された
新しい研究は、この用語を踏襲している
抑制脳波定義:< 10μV6研究
FPR 0 となる研究が多いが、FPR 22.2%の研究も
連続脳波の研究からは ≦ 24時間は予後良好患者でも一過性に抑制脳波となる可能性?
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
Neurocrit Care. 2016 ;24:153–162.Ann Neurol. 2019 ;86:203–214.
Burst suppression
3研究
定義:バースト波(>500msec, >3phases) と抑制脳波(< 10μV) が交互に出現し、抑制脳波が50%以上を占める
1研究は8時間〜48時間のFPR 02研究は76-77時間で、FPR 0-1.5
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
Burst suppression1研究
“synchronous” “heterogeneous” に分けた場合“synchronous” の場合のみ6時間〜96時間でFPR 0“heterogeneous”の場合は、72時間を超えた場合FPR 0ただしどちらとも時間とともに少なくなる
Synchronous : highly epileptiform bursts or identical bursts
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
Highly malignant EEG
定義:定まったものはないが、ERC-ESICMでは抑制脳波(+ 周期的放電)と Burst suppression
全体としての感度を高めるための試み
Neurology. 2016 ;86:1482–1490.
刺激に対する反応9研究
FPRも高く、刺激定義や反応性の評価
が研究による異なる
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
律動的, 周期的発射10研究
8/10がACNSの定義大部分はFPR低いがFPR 33.3%の研究も
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
てんかん発作 Seizure
4研究
定義:全般性スパイク波放電≧3/s かつ局所性か全身性かにかかわらず、4/sを超える周波数のあらゆる放電が進展(進行)している
96時間の研究でのみ偽陽性あるものの77時間までの研究ではすべて FPR 0
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
てんかん重積状態Status epilepticus
定義:ACNS には定義なし一般的にはてんかん発作が長時間続く状態研究により定義さまざま(5分以上、30分以上)
感度は大きなばらつき定義の違い、記録のタイミングの違いを反映している?定義はどうであれ、SEは神経学的転帰の不良と関連していたが、FPR高い結果の研究もある
5研究
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
心停止後、意識障害が遷延している患者への神経学的予後の評価は、他の試験も一緒に行う前提で
1.てんかん発作の神経学的予後の価値は不確か
2.心停止後72時間以上経過したタイミングでのてんかん重積状態は神経学的予後が悪いことを示唆するかもしれない
3.心停止後72時間以上経過し、薬剤の影響がない状態での、Burst suppression の所見は神経学的予後が悪いことを示唆するかもしれない
4.律動的, 周期的発射の有用性は不確か
5.心停止後72時間以内の脳波の刺激反応性の消失を単独で神経学的予後評価に使うべきではない
AHA 2020 Circulation. 2020;142:S366–S468から抜粋、一部改変
・脳波は用語の再定義され、今後推奨が変わる可能性あり
・AHA 2015で推奨されていた、脳波の刺激反応性の消失は
もはや推奨されなくなった
・てんかん発作は定義がされている研究では有用な可能性
・逆にてんかん重積発作は定義が定まっておらず、
予後不良と関連はしていると思われるが、今後推奨が
落ちてくる可能性あり
・ERC-ESICM 2020 では消える予定
・ERC-ESICM 2020 では24時間以降のHighly malignantのみ
・Burst suppressionは Synchronous Typeを区別する必要が
今後出てくるかもしれない
画像検査
頭部CT Grey matter / White matter ratio
灰白質:尾状核、被殻、視床白質:脳梁、内包後脚 など
15研究
1つの研究の除いて FPR 0 だが測定部位、測定タイミング、閾値も研究によりさまざま
測定タイミングとしては2時間以内が多かった
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
頭部 MRI DWI6研究
測定部位、測定タイミングは研究により異なるFPRも高い研究もあり、感度もさまざまな結果
DWI の変化の定義が定まっていない
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
頭部 MRI ADC4研究
<3つの方法>・局所 or全体のADC値・低ADCの割合
・最小ADCのClusterの最大サイズ
測定タイミングとしては2-3日以内が多かった
感度は他の検査と比べ高め全てで FPR 0
Intensive Care Med. 2020 ;46:1803–1851.
心停止後、意識障害が遷延している患者への神経学的予後の評価は、他の試験も一緒に行う前提で1.頭部CTでのGWRの低下は神経学的予後が悪いことを示唆するかもしれない
2.心停止後2日目から7日目の頭部MRI拡散強調像での広範囲な高信号域は神経学的予後が悪いことを示唆するかもしれない
3.心停止後2日から7日の頭部MRIでの広範囲なADCの低下は神経学的予後が悪いことを示唆するかもしれない
AHA 2020 Circulation. 2020;142:S366–S468から抜粋、一部改変
・頭部CTでは心原性と非心原性心停止で、GWRの感度は大きく異なる可能性あり(心原性<非心原性)
・頭部CTは心停止、意識障害の原因として頭蓋内出血を除外する場合に撮像することが多いため、他と比べて
早いタイミングの研究が多い
・逆に頭部MRIは、時間がかかるので、循環動態や呼吸状態がコントロールできているタイミングとなり、遅くなる傾向
・画像は非常に行いやすい検査ではあるが、測定部位や閾値が
定まっていない
目次
Ø蘇生後脳症とは
Ø心停止患者の予後
Ø神経学的予後予測を行う意義、注意点
Øガイドライン改訂に向けて
Ø予後予測ツールの紹介
Ø2020年改訂ガイドラインの紹介Ø注意点
Ø当院でのプロトコール案
AHA 2020 からhttps://cpr.heart.org/-/media/cpr-files/cpr-guidelines-files/highlights/hghlghts_2020eccguidelines_japanese.pdfから抜粋
下記、2つ以上当てはまる・両側の対光反射と角膜反射が消失≧72時間・両側のSSEP N20波の消失・脳波Highly malignant(抑制脳波 with or without 周期的放電
and Burst-suppression)≧ 24時間・血清NSE>60 μg/L at 48時間時点 or 72時間時点・ミオクローヌス重積状態≦72時間・CT/MRIでびまん性広範囲の低酸素性障害の所見(CTでのGWR,MRIでのDWI/ADC)
ERC-ESICM Guidelines 2020 Draft
鎮静、鎮痛、筋弛緩薬の残存などは否定されている
https://cprguidelines.eu/guidelines-public-comment07. Post-Resuscitation Care から抜粋、一部改変
AHA ERC-ESICM
対象 昏睡状態 昏睡状態+M≦3
多角的神経学的予後判定のタイミング
復温から72時間以上 ROSCから72時間以上
臨床所見
72時間以上経過の両側対光反射消失、両側角膜反射消失、瞳孔記録計での瞳孔の量的評価72時間以内のミオクローヌス
重積状態
72時間以上経過両側の対光反射+角膜反射の消失
72時間以内のミオクローヌス重積状態
バイオマーカー 血清NSE
48時間時点または72時間時点での血清NSEが60μg/L を超え
る
神経電気生理学的検査SSEPでの両側N20波の消失
72時間以上経過のてんかん重積状態、Burst suppression
SSEPでの両側N20波の消失24時間経過後の脳波でのHighly
malignant(suppressed background with or without
periodic discharges and burstsuppression)
画像CT(GWR), 心停止後2-7日の
MRI(DWI, ADC) CT(GWR), MRI(DWI, ADC)
目次
Ø蘇生後脳症とは
Ø心停止患者の予後
Ø神経学的予後予測を行う意義、注意点
Øガイドライン改訂に向けて
Ø予後予測ツールの紹介
Ø2020年改訂ガイドラインの紹介Ø注意点
Ø当院でのプロトコール案
・神経学的予後予測ツールに求められるのは
特異度が高く、偽陽性がないこと
・そのぶん、感度は低く、単独で予後予測できるものはなく
多角的なアプローチが必要である
・復温後72時間以降に神経学的予後予測を行う・多くの研究は、サンプルサイズが少ない、単施設研究、
ブラインドされていない
・ほとんどの研究は、self-fulfilling prophecyバイアスを含んでおり、特に特異度を過大評価している可能性がある
・Outcomeのタイミングも退院時のものも多い・また閾値や測定部位が明確に決まっていない
Self-fulfilling prophecy
・このようになるのではないかといった予期が
無意識のうちに予期に適合した行動に人を向かわせ
結果として予言された状況を現実につくってしまう
・多くの研究で、治療撤退基準があり、その基準の中にある
検査は、予後不良に対する特異度が過大評価されてしまう
Resuscitation. 2020 ;147:95–103.
• イタリアの多施設の前向き研究
• 対象:18才以上の心停止後蘇生患者、GCS≦ 8
• TTMは5-6割程度
• 脳死患者を除いて、治療をやめることはなかった
• 心停止後12時間と72時間時点で脳波とSSEP測定
• self-fulfilling prophecyのバイアスは除外できている
SSEP(N20消失):感度 66%, FPR 0 EEG(平坦脳波, Burst suppression):感度 79%, FPR 0
self-fulfilling prophecy バイアスなしでFPR 0
目次
Ø蘇生後脳症とは
Ø心停止患者の予後
Ø神経学的予後予測を行う意義、注意点
Øガイドライン改訂に向けて
Ø予後予測ツールの紹介
Ø2020年改訂ガイドラインの紹介Ø注意点
Ø当院でのプロトコール案
ROSC 24時間 48時間 72時間 復温後72時間
頭部MRI
脳波
ミオクローヌス重積発作対光反射角膜反射
神経学的予後予測
TTM 復温発熱を避ける薬剤は最小限に
頭部CT
当院での神経学的予後予測案
下記、2つ以上当てはまる場合、神経学的予後不良と判断
Ø 両側の対光反射と角膜反射が消失≧72時間
Ø 脳波Highly malignant所見≧ 24時間Ø ミオクローヌス重積状態≦72時間Ø CT所見陽性/MRIで広範囲で DWI high, ADC low
<対象>
心停止ROSC後鎮静、鎮静、筋弛緩薬の影響は除外
ROSC後72時間経過時点で、意識障害が遷延し、GCS-M≦3TTMを行っている場合は、復温後72時間経過していること
頭部CT・ROSC後、意識障害や心停止の原因検索として
比較的早い時間で頭部CT撮像されることが多いと思われる
・まだ定まったものはないが、撮像タイミングと研究の多さ
からあえて選択するなら平均GWRでの運用が好ましいか
・{(尾状核 + 被殻)/(脳梁 + 内包後脚) + (半卵円中心と
高位円蓋部の高さでの内側皮質/同じ高さでの内側白質)}/2
・閾値も定まっていないが、研究結果からは1.07-1.23以下で
ざっくり1.1台以下
脳波
・出張で脳波検査をしてもらう
・Highly malignantな所見である、抑制脳波(+ 周期的放電)と
Burst suppressionがあるかどうか
・読影も依頼する
・ROSC後24時間以内、もしくは日中以外に
ミオクローヌスが出現するようであれば
簡易脳波モニターつけててんかん波がないことを確認
対光反射、角膜反射
・ROSC後72時間以降に、対光反射が消失していれば
角膜反射の消失も確認する
・できれば今後、自動瞳孔記録計での測定が望ましいか
頭部MRI※原因検索としての頭部MRIではなく、予後予測としてのMRI
・神経学的予後不良と判断するには情報が足りない場合には
頭部MRI撮像を考慮
・考慮する場面は、頭部MRI所見があれば、予後不良と
判断できる可能性がある場合
・ただし、DWIについては定まったものがなく、
ADCで閾値で使われている基準は求めるのが煩雑である
・現状では、広範囲にDWI high, ADC low な細胞性浮腫病変が
あるかどうかという主観的なものになってしまう
ご清聴ありがとうございました