『血糖値コントロールによる 歯科治療への効果』

～歯科での血糖値を含む

血液検査の意義について～

イトウデンタルクリニック デンタルマネージャー

伊藤 夕里亜

なぜ血糖値に着目したか・・・ ・低血糖症のある 患者さんとの出会い ・自身の食後血糖値の問題 ・二人の息子の変化

・患者さんの食後血糖値は？

血糖値に強い歯科に なるために！！

血糖値の把握

・簡易的な血糖値測定 ・内科や健康診断の データ ・６０項目以上の血液検査 ・尿検査 ・口腔細菌検査 （必要に応じて医科との連携も）

空腹時血糖値よりも食後血糖値

・空腹時の血糖値は正常でも、食後１時間の 血糖値が１６０を超えている患者さんは珍しく ない ・膵臓の機能がまだ保たれている場合には 食後２時間では血糖値が下がっていることも多い ・食後高血糖が歯周組織に与える影響について、 患者さんに説明している

糖尿病・糖尿病予備軍になる前に

・膵臓でのインスリンの分泌機能が破綻する前に、 糖尿病や糖尿病予備軍をいかに早期発見出来る か？

↑ 健康診断で注意される前に

歯科で気付ける可能性

・空腹時血糖値やＨｂＡ１c,ＧＡが基準値を超える前に 歯科でリスクを評価する

医科との連携

・食後の高血糖や血液検査の異常を見つけた場合、

医科へ紹介 ・紹介状に検査データや口腔内所見情報を同封 （患者さんの確認を取る）

簡易血糖値測定について

当院で使用しているキット： ・完全にディスポーサルの針 ・指の腹に針を刺し、少量の血液で15秒ほどで測定 ・針とセンサーは物品として自費販売

血糖値測定 ・食後血糖値を測定 ・血糖値は食べるタイミングや 食材により変動する ・日を変えて数回測定する ・食材とその量を問診する これらの情報を基に、歯周病と食

後高血糖の関係について説明

9 引用：独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター １型糖尿病外来

9

10 引用：独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター １型糖尿病外来

10

糖質制限食指導

従来の「カロリー」重視 の食事指導ではなく、 食事の中の「糖質量」に 着目した食事指導 江部康二医師 『糖質制限食』

血糖値測定の注意点

・肥満体型で脂質代謝異常の可能性がある場合、 インスリンの早期過剰分泌を疑う →何を食べても血糖値が上がらないケース ・歯周病が重度の場合、高血糖の有無ではなく、脂肪

細胞からのサイトカインの影響による歯周の炎症の可能性を考える

糖尿病の早期には インスリン過剰分泌が 存在することが多い

【簡易血糖値測定で血糖値160以上の方を見つけた場合】

・一瞬でも血糖値160を 超えないように指導する ・食後高血糖による微小血管

障害は歯周病に深く関係

・食後に高血糖（血糖値１６０以上）が存在して いないか？

・糖尿病と診断されているかどうかは、歯科領域、歯科治療にとって判断材料の一つに過ぎない

医科への紹介

・歯科で食後高血糖を発見した場合、患者さん

を理解ある医科に紹介することで、糖尿病の予防や超早期発見に繋げる。

紹介の注意点

・食後高血糖の管理に理解のある医科へ

紹介する ・理解のない医科では、空腹時血糖値や

ＨｂＡ１ｃが基準値内の場合、「問題なし」として検査してもらえないことがある

検査

『スマイルエイジング （アンチエイジング）

外来』 ・採血・尿検査・

口腔内細菌培養

・60項目以上の検査を自費診療

検査項目（血糖値関連）

FBS →空腹時血糖値のこと HbA1c →赤血球の蛋白であるヘモグロビン（Ｈｂ）とブドウ糖

が結合したもの。 測定前1〜3ヶ月の血糖値の状態を反映。

GA （グリコアルブミン） →アミノ酸の１種であるアルブミンとグルコースが結合

したもの。測定前およそ２週間の血糖値の状態を反映。

・当院ではGAを測定することが多い ・女性の場合、ヘモグロビンの値が低いと

HbA1cは低く出てしまう ・HbA１ｃは高血糖を反映しにくい

１．５ＡＧ →１.５アンヒドログルシトール。血液中にブドウ糖に次

いで多く含まれる糖。 食後に尿糖の存在がある場合はこの数値が下がる

・歯周病の兆候や食後の高血糖が疑われる場合に、 検査項目に追加 ・１.５AGが低い場合、空腹時検査で尿糖が未検出で も、食後尿糖が出ていることがある （ただし糖質制限食実践者は除外）

歯周病予防は糖尿病予防に 繋がり、糖尿病予防は歯周 病予防に繋がる！！

歯科での血糖値測定の意義

歯科で簡易血糖値測定を行うことにより、 血糖値への理解を深めることが出来る →多くの方は自分の食後血糖値を知らない 糖尿病予防に関心を持ってもらう！！ 歯周病との関係を伝える！！

低血糖症とは？

・血糖値が「低い」病気ではない ・血糖値の調整がうまく出来ない 「血糖値調節障害」

『Ｄｙｓｇｌｙｃｅｍｉａ』

低血糖症とは？ “病まなくてもよかったのに病み、誤診され、誤

った治療をされる” “潜行性で人を荒廃させる文明病” “単純で安全で効果的な手段を用いて治療が可

能であるが、それに気付いていない” パーボ・エイノーラ博士

低血糖症患者の多くは、空腹時の血 糖値やＨｂＡ１ｃやＧＡが正常値内であ るために、健康診断や内科の検査で 「問題なし」とされていることが多い。

低血糖症と歯科領域

○カリエス多発（糖質依存）

○歯周病（血糖値乱高下と インスリン過剰分泌）

○ブラキシズム ○骨隆起（下顎骨、上顎

骨・口蓋部分） ○アブフラクション （くさび状欠損）

ブラキシズムと血糖値変動

・医科へ依頼しての血糖値測定 （２時間・５時間・２４時間持続）

→低血糖→体温上昇 ※この時にインスリン拮抗ホルモン （アドレナリンなど）が分泌

ブラキシズム

ストレス・アドレナリン・ブラキシズム ＋ 「血糖値の変動」

事例（３０歳・男性）

・ブラキシズム（骨隆起顕著） ・医科にて３回検査実施 ・空腹時血糖値 ７９～８３ ・ＧＡ １１．７～１２．６

事例（３０歳・男性） ２４時間随時血糖値検査結果

低血糖症：その他の症状

・動悸・胸痛・手足の冷え・手足のしびれ・頭痛

不安感・イライラ・暴力・幻聴・幻覚・ニキビ

痒み・肩こり・など

・成長ホルモンやコルチゾールの分泌が多くなる

ことで、これらのホルモンを分泌

・臓器の疲弊による症状が出る

→免疫の低下、強い疲労感など

正常の血糖曲線

7

4449

34

2419

86 6

85

124

136

119

98

92

87

81

87

20

40

60

80

100

120

140

160

180

負荷前 30分 60分 90分 120分 150分 180分 240分 300分

血糖

値

-

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

イン

シュ

リン

(x2)

/ 体

温

インシュリン

体温

血糖値

反応性低血糖症

2.5

20.1

60.9

45.9

36.931.8

6.21.2 1.5

88

159

107

43

75

184

77 78

52

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

負荷前 30分 60分 90分 120分 150分 180分 240分 300分

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

インスリン

血糖値

無反応性低血糖症

3.8

31.2

43.8

18.4

41.6

22.5

7.92.7 2.2

82

70

8074

75

91

98

81

70

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

負荷前 30分 60分 90分 120分 150分 180分 240分 300分

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

インスリン

血糖値

若い人に多い！ 慢性疲労・抑うつタイプ

若年者に多い低血糖症 ２

9

270

24 21

55

68

27

113

36.1 35.9 35.9 36.5 36.7 37.0 36.5 37.1 36.2

85

121

43

79

123120

9397

74

20

40

60

80

100

120

140

160

180

負荷前 30分 60分 90分 120分 150分 180分 240分 300分

血糖

値

-

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

220

240

260

280

イン

シュ

リン

(x2)

/ 体

温

インシュリン

体温

血糖値

乱高下型低血糖症

2.5

12.5 12.7

21.3 22.4 22.3

7.1 7.94.2

74

93

185

5659

136

148

113

90

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

負荷前 30分 60分 90分 120分 150分 180分 240分 300分

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

インスリン

血糖値

甘味への依存

・虫歯予防や虫歯治療中の甘味コントロール の指導は、低血糖症患者の場合は大変困難 ・摂食障害にも、血糖値の異常が関わっている

ことがある ・歯科医師、歯科衛生士、歯科スタッフに 低血糖症の知識があれば、早期発見が可能

顎関節の痛みや違和感

・血糖値の安定を心掛けた食事指導を行うことにより、痛みが改善することがある

・ブラキシズム改善のために 血糖値コントロールの必要性に着目

低血糖症と糖尿病

・患者さんに低血糖症の自覚がないまま

放置されると、２型糖尿病に移行する可能性がある

・低血糖症患者の早期発見、改善のアプ

ローチは将来の２型糖尿病、歯周病を予防することに繋がる

青春出版社 シリーズ１０万部突破！

新宿溝口クリニック

溝口徹医師

「低血糖症」

ご清聴ありがとうございました

イトウデンタルクリニック 伊藤夕里亜