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小児の食物アレルギー 2013年11月14日 食の安全学習会 城北病院 小児科 武石 大輔

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小児の食物アレルギー

2013年11月14日 食の安全学習会

城北病院 小児科武石 大輔

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定義

「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」

※食中毒、毒性食物による反応、食物不耐症(仮性アレルゲン、酵素異常症など)は含まない

食物アレルギー診療ガイドライン 2012より

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食物による不利益な反応

食物過敏症

食物アレルギー

IgE抗体依存性食物アレルギー IgE抗体非依存性食物アレルギー

非アレルギー性食物過敏症

食中毒

食物不耐症 体質的に食物を消化できない例 乳糖を消化できず牛乳を飲むと下痢をする

食中毒 食物の中の病原体や毒素で発病例 ノロウイルスで汚染された生ガキによる下痢

薬理活性物質(仮性アレルゲン)

食物に含まれている化学物質が原因となってアレルギー様の症状を起こす

例 鮮度の落ちた青魚によるじんま疹

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臨床型分類

臨床型発症年齢

頻度の高い食物 耐性の獲得(寛解)

アナフィラキシー

ショックの可能性

食物アレルギーの機序

新生児・乳児消化管アレルギー

新生児期乳児期

牛乳(育児用粉乳) 多くは寛解 (±)主に

非IgE依存性

食物アレルギーの関与する

乳児アトピー性皮膚炎(FA/AD)

乳児期鶏卵、牛乳、小麦、

大豆など多くは寛解 (+)

主にIgE依存性

即時型症状

(じんましん、アナフィラキシーなど)

乳児期~成人期

乳児~幼児:鶏卵、牛乳、小麦、そば、魚類、ピーナッツなど

学童~成人:甲殻類、魚類、小麦、果物類、そば、ピーナッツなど

鶏卵、牛乳、

小麦、大豆など多くは寛解

その他の多く寛解しにくい

(++) IgE依存性

特殊型

食物依存性運動誘発

アナフィラキシー(FEIAn/FDEIA)

学童期~成人期 小麦、エビ、カニなど 寛解しにくい (+++) IgE依存性

口腔アレルギー症候群(OAS)

幼児期~成人期 果物・野菜など 寛解しにくい (±) IgE依存性

食物アレルギーの診療の手引き2011より

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新生児・乳児消化管アレルギー

• ミルクや母乳中の食物タンパクが原因となり、新生児や乳児が、血便・下痢などの消化器症状を起こす病気。

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食物依存性運動誘発アナフィラキシー

• 食べるだけなら平気でも、食後運動するとアナフィラキシーを起こしてしまう。

• 運動によって腸での消化や吸収に変化が起き、未消化なタンパク質が吸収されてしまって起きると考えられている。

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口腔アレルギー症候群

• 花粉に対するIgEが、果物や野菜と交差反応するためにおこるアレルギー。

• 口の中がピリピリしたり、かゆくなったりする。

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有病率

食物アレルギーの診療の手引き2011より

<日本>乳児:約10%3歳児:約5%学童以降:1.3-2.6%全年齢:1-2%

<欧米>・フランス:3-5%・アメリカ:3.5-4%

☆先進国を中心に増加している→環境的な要因も考えられているが、まだはっきり原因はわかっていない

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原因食物(全年齢)

食物アレルギーの診療の手引き2011より

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原因食物(新規発症例)

0歳n=678

1歳N=248

2-3歳N=169

4-6歳N=85

7-19歳n=105

20歳以上N=90

1位 鶏卵55.6%

鶏卵41.5%

魚卵20.1%

ソバ15.3%

果物類21.9%

小麦23.3%

2位 牛乳27.3%

魚卵14.9%

鶏卵16.6%

鶏卵14.1%

甲殻類15%

甲殻類22.2%

3位 小麦9.6%

牛乳8.9%

ピーナッツ10.7%

木の実類11.8%

小麦15.2%

果物類18.9%

4位 ピーナッツ8.5%

牛乳8.9% 果物類

魚卵10.6%

鶏卵10.5%

魚類12.2%

5位果物類小麦5.2%

小麦8.3%

ソバ魚卵6.7%

食物アレルギーの診療の手引き2011より

n=1375

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症状

じんま疹

結膜充血

・喉のイガイガ・唇の腫れ・声枯れ

<皮膚粘膜症状>

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症状

・腹痛・吐き気、嘔吐・下痢・血便

<消化器症状> <呼吸器症状>

・喉の締め付けられる感じ・声枯れ・咳・喘鳴・呼吸困難感

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症状

・複数の臓器にわたる、重症の症状

<アナフィラキシー>

<アナフィラキシーショック>

・ぐったり・頻脈・意識障害・血圧低下

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経過

• 乳児・幼児早期の即時型食物アレルギーの主な原因である鶏卵、乳製品、小麦

→3歳までに50%、学童までに80~90%が耐性を獲得する

• 学童から成人で新規発症する即時型の原因食物:甲殻類、小麦、果物、魚類、ソバ、ピーナッツ

→耐性獲得の可能性は乳児期発症に比べて低い

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診断

• 血液検査(RAST)

• 皮膚テスト(プリックテスト)

• 負荷試験

・・・実際食べてみて症状が出るかどうかみる

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血液検査(抗原特異的IgE)

クラス UA/ml

0 <0.35

1 0.35-0.69

2 0.70-3.49

3 3.50-17.49

4 17.50-49.99

5 50.00-99.00

6 ≧100

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血液検査

<特異的IgE>①特異的IgE陽性(=感作されていることを示す)と食物ア

レルギー症状が出現することとは必ずしも一致しないことを念頭におくべきである。②食物―食物、食物―環境抗原間での交差抗原性の理解が重要である。

食物アレルギーの診療の手引き2011より

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交差抗原性

アレルゲン 交差抗原性を有する可能性のある食品 確率(%)

豆類ピーナッツ

他の豆類エンドウ豆、レンズ豆、ヒラ豆、ソラ豆、インゲン豆、大豆

5

ナッツ類クルミ

他のナッツ類ブラジルナッツ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ

37

穀類:小麦 他の穀類:大麦、ライ麦 20

果物:モモ 他のバラ科の食物:リンゴ、プラム、サクランボ、ナシ 55

果物:メロン 他のフルーツ:スイカ、バナナ、アボカド 92

花粉:カバの木 野菜、フルーツ:リンゴ、モモ、メロン 55

生活品:ラテックス フルーツ:キウイ、バナナ、アボカド 35

牛乳 牛肉 10

ヤギ乳 92

馬乳 4

魚類:サケ 他の魚類:メカジキ、シタビラメ 50

甲殻類:エビ 他の甲殻類:カニ、ロブスター 75

Sicherer SH :Clinical implications of cross-reactive food allergens : J Allergy Clin Immunol 108 : 881-890,2001

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皮膚テスト(Skin Prick Test;SPT)<皮膚テスト>①プリックテストは特異的IgE抗体検査と同様に診断感度は高いが、食物負荷試験と比較して特異度は低い。

②IgE抗体検査で検出できない乳児食物アレルギーの原因抗原の診断において特に有用。

③口腔アレルギー症候群においてはプリック-プリックテスト(原因食物そのものを用いてプリックテストを行うこと)の有用性が高い。

食物アレルギーの診療の手引き2011より

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食物負荷試験

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負荷試験の概要

負荷試験食:

外来・・・不均等3分割

入院・・・不均等5分割

※外来負荷試験は自宅で食物を用意してもらうホットケーキやうどんなど様々

摂取方法:

入院・・・不均等に5分割(下図参照)し、15分おきに1時間かけて摂取

外来・・・不均等に3分割し、30分おきに1時間かけて摂取。

摂取量

時間 0分 15分 30分 45分 60分

1/16 1/16

1/8

1/4 1/2

☆外来負荷試験の適応クラス(2)以下、半年~1年以内の即時型の既往(―)

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主要負荷食物(入院)

○ 鶏卵STEP1(以下卵黄)

全卵Mサイズから用手的に卵黄を取り分け、かぼちゃケーキを調理する。

かぼちゃケーキは電子レンジで1000W1分30秒加熱する。

1/20程度の卵白を含む。

○ 鶏卵STEP2(以下卵白)

全卵Mサイズ1/2を使用し、かぼちゃケーキを同様に加熱調理する。

○ 牛乳STEP2(以下牛乳)ヨーグルト48g 牛乳50mlに相当する。

○ 小麦STEP2(以下小麦)うどん50g 小麦粉30.6gに相当する。

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結果とその後

○負荷試験終了時の判定は、

① 陽 性: 明らかな陽性症状を認めた。

② 陰 性: 陽性症状を認めない。

③ 判定保留:

小紅斑や軽度の膨疹(顔面に好発し経過中に消失する)、単発の咳嗽など、明らかな陽性症状とは捉えられない症状のみ認めた。

○その後①陽性の場合:除去継続または限定解除②陰性の場合:自宅で目標量まで徐々に増量していく。

③判定保留の場合:まずは自宅で同量を何度か確認し、それで問題なければ増量していく。

<判定保留例>

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治療

≪原則≫正しい診断に基づいた必要 小限の原因食物の除去

・除去の程度は患者ごとの個別対応。・成長・発達の評価をする。

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実際の除去

• 食物アレルギーの治療

→患者ごとに“症状を誘発する原因食物”を決定し、除去を指導すること

• 食物アレルギーの原因食品

→患者ごとに異なり、患者の素因・臨床病型に基づくオーダーメイド

• 三大・五大アレルゲンという画一的な除去食指導はすべきでない

• “頻度の高い食物アレルゲン”≠“食物の抗原の強さ”

• “予防的な食物制限”

→食物除去が過度に行われることにつながる

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定期的検査のスケジュールの目安

3歳未満 3歳以上6歳未満 6歳以上

①特異的IgE抗体 6ヵ月毎 6ヵ月~1年毎1年毎またはそれ

以上

②食物負荷試験考慮 6ヵ月~1年毎 1~2年毎2~3年毎またはそ

れ以上

③食物負荷試験方法 オープンチャレンジ

オープン・

シングルブラインド・ダブルブラインド

チャレンジ

オープン・

シングルブラインド・ダブルブラインド

チャレンジ

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妊娠中や授乳中に

気を付けることってある?

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ハイリスク児に対する一次予防

AAP 2008レポートESPACI/

ESPGHAN 1999, ESPGHAN 2008勧告

SP-EAACI 2004, 2008勧告

JPGFA2012

ハイリスク児の定義

両親・同胞に1人以上のアレルギー

両親・同胞に1人以上のアレルギー(1999)

両親・同胞に1人以上のアレルギー

両親・同胞に1人以上のアレルギー

ハイリスク児に対して

妊娠中の母親の食事制限 エビデンスなし 推奨しない 推奨しない

推奨しない(偏食はしない)

授乳中の母親の食事制限

アトピー性皮膚炎発症率の低下のエビデンスあり

推奨しない 推奨しない推奨しない

(偏食はしない)

人口栄養(牛乳タンパクに対して)加水分解乳の効果あり(大豆乳は推奨しない)

低アレルゲン化ミルク(1999)

生後4カ月まで完全加水分解乳(2004)低アレルゲン化ミルク

(2008)

低アレルゲン化ミルクを使用する場合には、医師の指導の下に行う

AAP:American Academy of Pediatrics; ESPACI:European Society for Pediatric Allergology and Clinical Immunology;ESPGHAN:European Society for Pediatric Gastroenterology, Hepatology, and Nutrition; SP-EAACI: Section on Pediatrics, European Academy of Allergology and Clinical Immunology

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離乳食の進め方のコツ

• 初に与えたもので口の周りに発赤や湿疹が出ることがあるが、その食物を原因とするアレルギーであるとは限らない

• 食物アレルギーと紛らわしい反応を避けるためのポイント

☆野菜は基本通りの灰汁取りをする

☆魚は家庭での冷凍を避ける

• 新たな食物アレルギーの成立を避ける

☆選択肢の多い食品から開始する:魚など種類の多いもの

☆食物アレルギーの頻度の低いもの:米、野菜、肉類など

☆大豆製品は魚、肉類を摂取するようになってから開始

☆主食は精白米を中心にして、小麦の主食は3回食になってから開始する

☆卵は卵黄から開始

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小麦アレルギー

• 近年、食生活の欧米化により、小麦の消費は年々増加している。

• 乳幼児の小麦アレルギー増加

→母親の小麦摂取増加によって、早くから抗原に感作されることも一因

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小麦アレルギー

<主な小麦タンパク質>

水溶性タンパク質 水・塩不溶性タンパク質

アルブミングロブリン

α-アミラーゼインヒビタートリプシンインヒビターアシル-CoA-オキシダーゼペルオキシダーゼ

脂質輸送タンパク(LTP)

グリアジン(アルコール可溶性)α-グリアジンβ-グリアジンγ-グリアジンω-グリアジン

グルテニン(アルコール不溶性)高分子グルテニン低分子グルテニン

グルテン

★小麦粉の特性・・・生地の粘性と伸展性

→これらを左右するのがグルテン

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小麦アレルギー

• 卵、牛乳と比較すると、IgE抗体価のみでは食物アレルギー診断の指標としては難しい

• 発酵すると抗原性が低下すると言われており、醤油や味噌は大丈夫なことが多い

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小麦アレルギーの栄養指導

1.食べられない物

小麦粉と小麦を含む加工食品

小麦粉(薄力粉、中力粉、強力粉)、デュラムセモリナ小麦

<小麦を含む加工食品の例>★表示義務あり

パン、うどん、マカロニ、スパゲティ、麩、餃子の皮、市販のルウ(シチュー、カレーなど)、調味料の一部

<基本的に除去する必要のないもの>

(主治医の指示がある場合のみ除去する)

醤油、他の麦類(大麦、ライ麦、オーツ麦など)

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小麦アレルギーの栄養指導2.加工食品のアレルギー表示

☆代替表記、特定加工食品

パン、うどんなど

☆小麦を含まず、食べられるもの(紛らわしい表示)

麦芽糖

3.調理上の特性と調理の工夫

☆ルウ

米粉やでんぷんで代用する。

☆揚げ物の衣

下味をつけ、水とでんぷんの衣で揚げる。

米粉パンのパン粉や砕いた春雨でも代用する。

☆パンやケーキの生地

米粉や雑穀粉、いもやおからなどを生地として代用する。

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お好み焼きでアナフィラキシー

<症例1>

・47歳、男性

自宅で夕食にイイダコわさび、めかぶ、山芋、きゅうり、豚肉入りお好み焼きを食べた直後から鼻づまり、喉の違和感、目の痒み、全身のじんま疹、呼吸困難が出現。近医救急外来を受診し、2日間入院加療を受けて回復した。

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お好み焼きでアナフィラキシー

<症例1>

皮膚科でアニサキス、マグロ、豚肉、タコの血液検査を受けたが全て陰性。

別の病院を受診し、プリックテストで小麦、タコ、わさび、めかぶ、山芋は全て陰性だったが、使用したお好み焼き粉(自宅から持参)で陽性。

血液検査ではダニが数種類陽性だったが、小麦粉、グルテンは陰性だった。

使用したお好み焼き粉は使用期限

を8ヵ月超過していた。

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お好み焼きでアナフィラキシー

<症例2>

・17歳、男性

自宅で夕食にうどん、するめいか、チーズと豚肉入りのお好み焼き、白米を食べ、約11時間半後に日課のランニングに出かけた。

走り始めて10分ほどで腹痛が出現したため自宅まで

駆け戻ったところ、呼吸困難、全身じんま疹、両目充血が出現し、2次救急病院に搬送された。

点滴・吸入などで改善。

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お好み焼きでアナフィラキシー

<症例2>

翌日受診した病院の検査では、小麦(0)、ω-5グリアジン(1)、エビ(1)、カニ(0)、イカ(0)だった。

小麦依存性運動誘発アナフィラキシーが疑われ、今後の食事ならびに運動制限やエピペンの所持を含めた生活指導のために専門医を受診。

問診により、このエピソード以降、小麦製品摂取後に運動しても無症状だったこと、当日同じものを食べた弟が1年半ぶりの喘息発作を起こしていたことが明らかとなった。

3ヵ月以上前に開封したお好み焼き粉を使用していた。

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お好み焼きでアナフィラキシー

・2例とも残っていたお好み焼き粉を顕微鏡で調べてみると、多数のダニが発見された。

・ダニの死骸やフンなどがアレルギーの原因になることがある。

・特に死骸のダニアレルゲンは熱に強く、加熱調理をしても残る。

・小麦粉やホットケーキミックス、タコ焼き粉も注意が必要。

・主な原因になるコナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニは、室温20~30℃、湿度60~80%の環境で繁殖力が高くなる→密閉容器などに入れ、冷蔵庫で保存