古き良き下町情緒 星空の下で… 多国籍メニュー 食の街/風景 ·...
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【別府恋歌】 第 4 章●食の街/風景 p. 2
学生たちでにぎわう立命館アジア太平洋大学(APU)のカフェテリア。レシートにはカロリー計算も表示される。栄養バランスはばっちりだ。
多国籍メニュー
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お昼時。恐らく、ここは県内で最も込み合う繁忙の場所だろう。
Tシャツ、ポロシャツ、ジーパン、ショートパンツ、スニーカー、
二〇〇八年七月三十一日
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サンダル。世界八十一カ国・地域の学生たちが、多種多様のいでた
ちで集結する。雰囲気はさながら異国のフードコートだ。
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品数はざっと百種余り。APU(立命館アジア太平洋大学)に来
れば、バラエティーに富んだ各国の「味」に舌鼓を打てる。
そんなモンもあるん?
と驚く多国籍メニュー。
生春巻き、タンドリーチキン、キーマカレーに焼き肉ビビンバ、
トッポギ、サラダバー…。各種丼物やめん類のほかに、焼きたてパ
ンも充実している。どれも美味で、安い。
●
キャンパス内のE棟(スチューデント・ユニオン)。
九百五十席あるカフェテリアで、一日平均三千食ほどの学食を提
供しているのはAPU生協の三代目フードサービス店長、木下高志
(35)だ。
京都から別府に移り住んで約十カ月。「ウチは留学生のために、
他大学の学食よりも十―二十円ほど安くしている。宗教上に配慮し
た『ハラルフード』を取りそろえているのも特長です」
正午すぎ、厨房(ちゅうぼう)は〝戦場〟と化す。
「すぐに売り切れるメニューも多々ある。違う国で育った学生た
ちの要望にどう応えるか。シンドイけど、やりがいがあるし、面白
い」
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眼下に湯の街の絶景が広がっている。
気の合う仲間でテーブルを囲む。さまざまな言葉で〝ランチトー
ク〟を楽しむ。
別府ならでは、である。
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深夜。はしご酒を終えた常連客がやって来る。「一杯、おくれ」。ちょうちんの薄暗い光を背に、酔いさましのラーメンを食す。うまい
星空の下で…
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夜の九時。北浜二丁目の民間駐車場に、一台のピックアップトラッ
クが到着した。
二〇〇八年八月一日
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エンジンを止める。赤ちょうちんに灯をともし、折り畳み式の簡
易テーブルを広げて丸いすを並べる。
準備は整った。屋台ラーメン「コスモラーメン」の〝開店〟だ。
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オーナーの平塚直晴(61)はこの道三十四年。それまでは洋食の
コックだった。
県内外のホテルなどを転々とした後、帰郷。二十六歳の時、当時
繁盛していた「走るラーメンセンター」の〝売り子〟になった。
屋台車のハンドルを握り、チャルメラの音(ね)を響かせながら
湯の街を流した。郊外に新興住宅が増えていった一九七〇年代―。
「あんころ、屋台ん車は市内に四十台は走りよった。コンビニが
できてからよ、一気に廃れたんは…。いつでん買えるごとなって、
ラーメンを待つ必要がねえなった」●
八〇年代に独立。十二年前、北浜一丁目の駅前通りから現在地に
拠点を移した。「スープは豚骨100%。北的ケ浜町の基地(仕込
み場)で毎日十二時間以上、炊くんよ。サッパリとした味ながらコ
クがある。呑(の)んだ後に食べるには最高よ」
値段は六―八百円。翌朝五時まで営業する。「そらぁ、忘年会シー
ズンなんかは一晩に軽く百杯出る日もあるで。最近は…人通りが少
ねえで閑古鳥が鳴きよる」
●
煮えたぎる荷台の鍋でめんをゆでる。トッピングはチャーシュー
とモヤシ。行き交う人々を眺めつつ、酔客たちが星空の下で「フー
フー」する。
今宵(こよい)を締める一杯。旨(うま)いんだな、これが…。
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ここに来れば「今夜のおかず」はすべてそろう。「これ1個、おくれ」「あいよ。ありがとさん」。狭い通路に威勢のいい掛け声が飛び交う
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二〇〇八年八月二日
何でもそろう。湯の街の「暮らし」に触れたければ、まずは、J
R別府駅のガード下に足を運ぶべきであろう。
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流川通りをまたぎ、中央町と秋葉町を貫く延長およそ三百五十
メートルの一本道。「べっぷ駅市場」。そのフトコロは深い。
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両サイドに計三十三店舗が軒を連ねる。鮮魚、精肉、果物、青果
に衣服、生花、薬局、クリーニング、ペットショップ…。
昭和四十一年だった。大分国体に合わせて高架が完成、「別府南
高架商店街」として産声を上げた。以来、四十年余り。今や〟泉都
最後の市場〟として、国内外から視察団が訪れる。
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「今日も安(やし)いで。早いモン勝ちや」「さあ、さあ、いらっ
しゃい!」
ぶらり歩けば自然と買い物袋は膨らむ。店と客。売り手と買い手。
心触れ合う対面販売が庶民のハートをつかんでいる。
「地域密着型の商売―それがここの魅力ですわ」
市場会長の平尾隆雄(67)は語る。「周辺の大型スーパーに客足を
取られて厳しい。でも、この古き良き下町情緒は意地でも守りたい」
●
どれもてんこ盛りだ。老舗の総菜屋「野田商店」。名物の巻きず
しやコロッケなどを求めて、市内外から食通たちが押し寄せる。
主婦の味方の良心価格。切り盛りする野田詔(まさ)代(63)は「ウ
チのおかずはどれもお薦めよ。この市場?
そりゃあ、市民の台所や」。
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お年寄り、若夫婦、留学生、観光客…。いろんなヒトの肩と肩が
ぶつかり合う。食の街・別府。人情味あふれるこの光景がいつまで
も続きますように―。
(文・首藤康、写真・杉山和也=別府支社)
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■オオイタデジタルブックとは オオイタデジタルブックは、大分合同新聞社と学校法人別府大学が、大分の文化振興の一助となることを願って立ち上げたインターネット活用プロジェクト「NAN-NAN(なんなん)」の一環です。 NAN-NAN では、大分の文化と歴史を伝承していくうえで重要な、さまざまな文書や資料をデジタル化して公開します。そして、読者からの指摘・
追加情報を受けながら逐次、改訂して充実発展を図っていきたいと願っています。情報があれば、ぜひ NAN-NAN 事務局にお寄せください。 NAN-NAN では、この「別府恋歌」以外にもデジタルブック等をホームページで公開しています。インターネットに接続のうえ下のボタンをクリックすると、ホームページが立ち上がります。まずは、クリック!!!
別 府 大 学大分合同新聞社
ⓒ 大分合同新聞社
デジタル版「別府恋歌」 その 34編集 大分合同新聞社初出掲載媒体 大分合同新聞(2007 年 10 月 22 日~ 2009 年 3 月 14 日)
《デジタル版》 2010 年 10 月 15 日初版発行編集 大分合同新聞社制作 別府大学メディア教育・研究センター 地域連携部/川村研究室発行 NAN-NAN 事務局 (〒 870-8605 大分市府内町 3-9-15 大分合同新聞社 企画調査部内)
ⓒ 大分合同新聞社
●デジタル版「別府恋歌」について 「別府恋歌」は、大分合同新聞社が 2007 年 10 月から翌 2009 年 3 月まで、同紙夕刊に掲載した連載記事。今回、デジタルブックとして再構成し、公開する。登場人物の年齢をはじめ文中の記述内容は、新聞連載時のもの。2010 年 2 月 26 日 NAN-NAN 事務局