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諸外国の再生可能エネルギー熱政策

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諸外国の再生可能エネルギー熱政策

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目 次

1. まとめ(調査対象国の整理表) .................................................................................. 1

2. ドイツ ......................................................................................................................... 7

2.1 再生可能エネルギー熱政策の概要 .............................................................................. 7 2.1.1 再生可能エネルギー導入目標 ..................................................................................... 7 2.1.2 再生可能熱分野の導入実績 ......................................................................................... 8 2.1.3 再生可能熱分野における促進施策体系 ..................................................................... 11

2.2 個別支援施策の概要・効果 ....................................................................................... 12 2.2.1 再生可能エネルギー熱法 .......................................................................................... 12 2.2.2 市場促進プログラム①(BAFA による補助金) ...................................................... 20 2.2.3 市場促進プログラム②(KfW による再生可能エネルギープログラム) ................. 24

3. イギリス .................................................................................................................... 26

3.1 再生可能エネルギー熱政策の概要 ............................................................................ 26 3.1.1 再生可能エネルギー導入目標 ................................................................................... 26 3.1.2 再生可能熱分野の導入実績 ....................................................................................... 27 3.1.3 再生可能熱分野における促進施策体系 ..................................................................... 30

3.2 個別支援施策の概要・効果 ....................................................................................... 31 3.2.1 再生可能熱インセンティブ(非家庭部門) ............................................................. 31 3.2.2 再生可能熱プレミアムペイメント ............................................................................ 39 3.2.3 再生可能熱インセンティブ(家庭部門) ................................................................. 43 3.2.4 エネルギー企業義務 .................................................................................................. 48 3.2.5 低炭素建物プログラム(終了) ............................................................................... 50

4. フランス .................................................................................................................... 55

4.1 再生可能エネルギー熱政策の概要 ............................................................................ 55 4.1.1 再生可能エネルギー導入目標 ................................................................................... 55 4.1.2 再生可能熱分野の導入実績 ....................................................................................... 56 4.1.3 再生可能熱分野における促進施策体系 ..................................................................... 59

4.2 個別支援施策の概要・効果 ....................................................................................... 60 4.2.1 エネルギー投資額還付制度 ....................................................................................... 60 4.2.2 熱基金 ....................................................................................................................... 62

添付資料 ........................................................................................................................... 64

添-1.イギリス:Microgeneration Certificate Scheme(MCS)の概要 ...................... 64

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表目次

表 1-1 再生可能エネルギー熱の導入目標および導入実績 .......................................... 3 表 1-2 再生可能熱生産設備を対象とした主な支援制度(義務付け制度) ................ 4 表 1-3 小規模再生可能熱生産設備を対象とした主な支援制度(財政的支援) ......... 5 表 1-4 大規模再生可能熱生産設備を対象とした主な支援制度(財政的支援) ......... 6

表 2-1 ドイツ:再生可能エネルギー導入目標の設定状況 .......................................... 7 表 2-2 ドイツ:熱・電力・輸送燃料分野別の推定指標曲線(~2020 年) ............... 9 表 2-3 ドイツ:再生可能熱分野の最終エネルギー消費量推定(~2020 年) .......... 10 表 2-4 ドイツ:再生可能熱分野における主な促進施策の支援対象 .......................... 11 表 2-5 ドイツ:再生可能エネルギー熱法:第 4条 義務対象から除外する建物 ..... 12 表 2-6 ドイツ:再生可能エネルギー熱法:対象エネルギー源ごとの達成基準 ....... 13 表 2-7 ドイツ:再生可能エネルギー熱法:対象エネルギー源ごとの主な技術要件 14 表 2-8 ドイツ:再生可能エネルギー熱法:熱市場における効果 ............................. 17 表 2-9 ドイツ:再生可能エネルギー熱法:エネルギー源別の利用比率と提言 ....... 17 表 2-10 ドイツ:再生可能エネルギー熱法:進捗報告書における検討すべき点 ..... 19 表 2-11 ドイツ:ガイドラインで支援に適格とされるヒートポンプの要件............. 21 表 2-12 ドイツ:市場促進プログラム(BAFA)による助成額 .................................. 21 表 2-13 ドイツ:市場促進プログラムの評価 ............................................................ 23 表 2-14 ドイツ:市場促進プログラムに基づく KfW の融資件数・融資額 ................ 25

表 3-1 イギリス:2008 年実績及び 2020 年予測の最終エネルギー消費量 .............. 26 表 3-2 イギリス:再生可能熱エネルギーの供給量推移(2008 年~) ..................... 27 表 3-3 イギリス:熱・電力・輸送燃料分野別の推定指標曲線(~2020 年) .......... 28 表 3-4 イギリス:再生可能熱分野の最終エネルギー消費量推定(~2020 年) ...... 29 表 3-5 イギリス:再生可能熱分野における主な促進施策の支援対象 ...................... 30 表 2-6 イギリス:2008 年エネルギー法:第 100 条 再生可能熱インセンティブ .... 31 表 3-7 イギリス:再生可能熱インセンティブ(非家庭部門)支援対象 .................. 32 表 3-8 イギリス:再生可能熱インセンティブ制度の買取価格(2013 年度) .......... 33 表 3-9 イギリス:再生可能熱インセンティブ制度の予算額 .................................... 34 表 3-10 イギリス:再生可能熱インセンティブ制度の予算消化状況 ....................... 36 表 3-11 イギリス:再生可能熱インセンティブ制度の買取価格改定案 .................... 37 表 3-12 イギリス:再生可能熱プレミアムペイメントの助成額 ............................... 40 表 3-13 イギリス:再生可能熱インセンティブ(家庭部門)支援対象 .................... 44 表 3-14 イギリス:再生可能熱インセンティブ制度の買取価格(2013 年度) ........ 44 表 3-15 イギリス:再生可能熱インセンティブでのヒートポンプへの買取価格例 .. 46 表 3-16 イギリス:エネルギー企業義務に基づく義務類型 ...................................... 48

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表 3-17 イギリス:エネルギー企業義務の承認された対策数 .................................. 49 表 3-18 イギリス:低炭素建物プログラム(家庭部門)における支援額上限 ......... 52 表 3-19 イギリス:低炭素建物プログラム(家庭部門)の支援実績 ....................... 53

表 4-1 フランス:再生可能エネルギー導入目標の設定状況 .................................... 55 表 4-2 フランス:熱・電力・輸送燃料分野別の推定指標曲線(~2020 年) .......... 57 表 4-3 フランス:再生可能熱分野の最終エネルギー消費量推定(~2020 年) ...... 58 表 4-4 フランス:再生可能熱分野における主な促進施策の支援対象 ...................... 59 表 4-5 フランス:エネルギー投資額還付制度の税額控除率(~2011 年) ............. 60 表 4-6 フランス:エネルギー投資額還付制度の税額控除率(2012~13 年) .......... 61 表 4-7 フランス:エネルギー投資額還付制度の施行実績(2005~2008 年) .......... 61 表 4-8 フランス:熱基金に基づく BCIAT プログラム実績(2009~12 年) ............. 62 表 4-9 フランス:熱基金に基づく地域公募プログラム実績(2009~12 年) .......... 63 表 4-10 フランス:熱基金に基づく地域公募プログラムのプレミアム価格............. 63

図目次

図 2-1 ドイツ:再生可能熱エネルギーの供給量推移(1997 年~) .......................... 8 図 2-2 ドイツ:再生可能熱エネルギーの供給量内訳(2012 年) .............................. 8 図 2-3 新規建物における再生可能エネルギー熱システム・代替措置の利用シェア 16 図 2-4 ドイツ:市場促進プログラムに基づく BAFA の助成総額・申請数 ................ 22 図 2-5 ドイツ:市場促進プログラム(BAFA)に基づく助成設備容量 .................... 22

図 3-1 イギリス:主要シナリオにおける 2020 年のエネルギーミックスの例示 ..... 27 図 3-2 イギリス:熱戦略のタイムライン ................................................................. 30 図 3-3 イギリス:再生可能熱インセンティブ制度の設備容量、支払額 .................. 35 図 3-4 イギリス:認定設備のエネルギー源別比率(設備数) ................................. 35 図 3-5 イギリス:再生可能プレミアムペイメントの対象エネルギー源別比率 ....... 42 図 3-6 イギリス:Grean Deal の流れ ....................................................................... 43 図 3-7 イギリス:低炭素建物プログラム(LCBP)の全体像及び各フェーズの終期 50

図 4-1 フランス:再生可能熱エネルギー導入状況(2012 年) ................................ 56 図 4-2 フランス:2020 年目標に対する 2011 年実績の達成率.................................. 56

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単位・略称の一覧

本報告書では、以下のとおり単位、及び略称の統一を図る。

・単位

本書での表記 意味 備考

ktoe 1,000 石油換算トン 熱エネルギー量等の単位として使う。主に図表中で

使用する。

・略称

本書での表記 意味など

外国機関名 英文表記で統一する。但し、官公庁は訳語と略称を併記する。

CHP Combined Heat and Power の略。コジェネレーション。

BAT Best Available Technology の略。利用可能な最善の技術を指す。

SPF Seasonal Performance Factor の略。ヒートポンプの全季節での理論的な出力を

算出するために用いる季節性能係数。

BAFA ドイツ連邦経済・輸出管理庁(Bundesamt für Wirtschaft und Ausfuhrkontrolle)。

KfW ドイツ復興金融公庫。

MCS Microgeneration. Certification Scheme の略。

VAT Value Added Tax の略。付加価値税。

注 1)本報告書では、全篇にわたり原則として以下の為替換算レートを利用 ・1ユーロ (€) =100ユーロセント(ct) =120円 ・1ポンド (£) =100ペンス(p) =140円

注 2)本報告書に掲載している Web サイトのリンクは、2013 年 8 月末時点のもの

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1. まとめ(調査対象国の整理表) 本章では、調査対象国としたドイツ、イギリス、フランスの 3 ヶ国について、2013 年 10

月末時点で入手している公表情報をもとに、再生可能エネルギー熱の導入目標や主な支援制

度の概要を論点別に整理表にした。 整理表で取り上げた論点は、以下のとおり。

表タイトル 具体的な論点 ページ 表1-1 再生可能エネルギー熱の導入目標 および導入実績

・ 再生可能エネルギー導入目標 (うち熱分野の導入目標) (熱分野の導入予測)

・ 再生可能熱導入実績 ・ 熱分野の促進施策体系

3ページ

表 1-2 再生可能熱生産設備を対象とした 主な支援制度(義務付け制度)

・ 制度名(開始年) ・ 経緯・目的 ・ 対象者 ・ 制度詳細 ・ 施行方法 ・ 施行実績 ・ 施策の課題

4ページ

表 1-3 小規模再生可能熱生産設備を対象 とした主な支援制度(財政的支援)

・ 制度名(開始年) ・ 経緯・目的 ・ 対象者 ・ 制度詳細 ・ 施行方法 ・ 施行実績 ・ 施策の課題

5ページ

表 1-4 大規模再生可能熱生産設備を対象 とした主な支援制度(財政的支援)

・ 制度名(開始年) ・ 経緯・目的 ・ 対象者 ・ 制度詳細 ・ 施行方法 ・ 施行実績 ・ 施策の課題

6ページ

なお、上記の具体的な論点の詳細情報については、次章以降、各国別にとりまとめている

ので参照いただきたい。

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表 1-1 再生可能エネルギー熱の導入目標および導入実績 ドイツ イギリス フランス

再生可能エネルギー導入目標 2012 年

実績 2020 年目標

(法定) (行動計画) 電力 22.9% 35.0%超 38.6% 熱 10.4% 14.0% 15.5% 輸送燃料 5.5% - 13.2% 最終エネ 12.6% 18.0% 18.0%

注)2012 年実績は、連邦環境・自然保護・原子炉安全省「Development of renewable energy sources in Germany 2012」を利用

2012 年

実績 2020 年目標

(法定) (行動計画) 電力 10.8% - 31.0% 熱 2.3% - 12.0% 輸送燃料 3.2% - 10.3% 最終エネ 4.1% (15.0%) 15.0%

注)2012 年実績は、エネルギー・気候変動省「Digest of UK Energy Statistics 2013」

2011 年

実績 2020 年目標

(法定) (行動計画) 電力 16.3% - 27.0% 熱 16.5% - 33.0% 輸送燃料 6.7% - 10.5% 最終エネ 13.1% 23.0% 23.0%

注)2011 年実績は、環境・持続可能な開発・エネルギー省「Chiffres clés des énergies renouvelables Édition 2013」

うち熱分野の導入目標

イギリス政府は、2020 年 15%目標を達成するための各主体の

役割を示した「再生可能エネルギー戦略(The UK Renewable Energy Strategy)」を 2009 年に公表。

その中の主要シナリオ(lead scenario)で、熱分野の導入予

測を 12%として設定。

経済的実現可能性を保持しつつ、2020 年までに、暖房、冷房、

プロセス熱および温水等の熱の最終エネルギー消費における

再生可能エネルギー割合を 14%にすること。 【根拠:再生可能エネルギー熱法 第 1 条】

2010 年までの目標として、2005 年実績から再生可能熱生産量

を 50%増加させる目標を設定していた。 【根拠:2005 年エネルギー政策基本法】

熱分野の導入予測 (単位:ktoe)

エネルギー源 2005 年実績 2015 年予測 2020 年予測 地熱 0.8 n/a n/a 太陽熱 29 34 34 バイオマス 560 958 3,914 ヒートポンプ n/a 548 2,254 合計 590 1,537 6,199

出典)国家再生可能エネルギー行動計画

(単位:ktoe)

エネルギー源 2005 年実績 2015 年予測 2020 年予測 地熱 12 234 686 太陽熱 238 741 1,245 バイオマス 7,260 10,388 11,355 ヒートポンプ 196 800 1,144 合計 7,706 12,163 14,431

出典)国家再生可能エネルギー行動計画

(単位:ktoe)

エネルギー源 2005 年実績 2015 年予測 2020 年予測 地熱 130 310 500 太陽熱 380 465 927 バイオマス 9,153 12,760 16,455 ヒートポンプ 76 1,505 1,850 合計 9,397 15,040 19,732

出典)国家再生可能エネルギー行動計画

再生可能熱導入実績 (単位:GWh)

エネルギー源 2008 年 2010 年 2012 年 地熱/ヒートポンプ 4,168 5,585 7,070 太陽熱 4,134 5,200 6,050 バイオマス計 98,153 140,409 131,190

固形バイオマス 80,761 117,084 115,850 液体バイオマス 7,641 7,974 2,700 バイオガス 9,751 15,351 12,640

合計 106,455 151,194 144,310

(単位:ktoe)

エネルギー源 2008 年 2010 年 2012 年 地熱 0.8 0.8 0.8 太陽熱 46.8 97.5 153.1 バイオマス計 868.1 1,047.7 1,199.1

埋立ガス 13.6 13.6 13.6 下水汚泥 49.8 57.8 72.1 木材燃焼(家庭) 316.3 379.6 456.3 木材燃焼(産業) 220.3 255.7 303.3 動物性バイオマス 40.4 40.3 31.5 植物性バイオマス 2.0 4.8 15.1 一般廃棄物燃焼 193.9 270.0 275.1

ヒートポンプ 2.7 23.6 56.1 合計 918.4 1,169.7 1,409.2

(単位:ktoe)

エネルギー源 2011 年 2012 年 地熱 37 94 太陽熱 96 79 バイオマス計 9,188 11,779

木材燃焼(家庭) 6,132 - 木材燃焼(三次利用等) 348 - 木材燃焼(産業) 1,722 -

一般廃棄物燃焼 501 - その他バイオマス 445 - バイオガス 94 -

ヒートポンプ 1,143 1,384 合計 10,616 13,336

熱分野の促進施策体系 コジェネのうち、小規模バイオマスコジェネは、再生可能エネ

ルギー法に基づく固定価格買取制度に基づき支援。 再生可能熱設備については、再生可能エネルギー熱法で新築建

物への再生可能熱設備もしくは熱供給を義務付けるとともに、

既存建物向けには市場促進プログラムで設置費補助を実施。

家庭部門以外の大規模熱生産事業者を対象とした従量制の支

援制度(再生可能熱インセンティブ)、家庭部門を対象とした

設置費補助(再生可能熱プレミアムペイメント)を併用。 両制度ともに、原則として熱量計の設置・測定を要件としてい

る点が特徴的。 今後は再生可能熱インセンティブ制度に統合して支援。

家庭部門では、再生可能エネルギー機器やヒートポンプ等へ

の投資に対して、投資額の一定金額を払い戻す制度を実施。 大規模設備には別途、設置費補助を実施。

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表 1-2 再生可能熱生産設備を対象とした主な支援制度(義務付け制度) ドイツ イギリス フランス

制度名(開始年) 再生可能エネルギー熱法(2009 年~) 〔Erneuerbare-Energien-Wärmegesetz〕

エネルギー企業義務(2013 年~) 〔Energy Company Obligation〕

経緯・目的 「1990 年水準比で、2020 年までにドイツにおける温室効果ガ

スの排出量を 40%削減すること」を目指した 2007 年「包括的

気候保護・エネルギー政策」の関連措置の一つとして法制化。 2011 年の改正で、義務付けの対象を、新築建物に加えて大規模

な改修を行う公的機関の既存建物を追加。 経済的実現可能性を保持しつつ、2020 年までに、暖房、冷房、

プロセス熱および温水等の熱の最終エネルギー消費における再

生可能エネルギー割合を 14%にすること。 ※根拠:再生可能エネルギー熱法 第 1 条

エネルギー供給事業者に対して、事業法(1989 年電力法、1986年ガス法)に基づき「顧客に対して効率的なエネルギー使用

を提供すること」が義務付けられている。 1994年からエネルギー供給事業者を対象とした顧客の省エネ

ルギーに関する義務が導入されており、直近では 2008~2012年にかけて、Carbon Emission Reduction Target(CERT)という CO2削減量を目標単位とした制度が施行されていた。

2013 年 1 月から、家庭部門の省エネ設備投資促進の強化策と

して、助成制度である Green Deal とともに施行。

対象者 エネルギーが冷暖房に使用され且つ 50 ㎡以上の有効面積を有

するすべての新築建物の所有者。 当該建物を賃貸している場合にも本法の適用対象。 2011 年 5 月の改正を経て、公的機関の既存建物が大規模な改修

を行う場合にも義務対象となる。

家庭部門の顧客が 25 万者以上、且つ、年間の電力供給量が

400GWh 以上の電力供給事業者もしくは年間のガス供給量が

2,000GWh 以上のガス供給事業者。 2013 年 8 月時点で、British Gas、EDF Energy、E.ON、

First-Utility 、 NPower 、 Scottish Power 、 Scottish and Southern Energy の7社が義務対象者に該当。

制度詳細 義務対象となる建物所有者に対して、下表に掲げる建物におけ

る冷熱需要の一定比率の再生可能エネルギー利用を義務付け。

エネルギー源 達成基準

新築建物 公的建物の改修 太陽エネルギー 15% 15%

2 世帯以下の家屋における利用面積

の㎡あたり 0.04 ㎡の太陽熱集熱器 (3 世帯以上の集合住宅は 0.03 ㎡)

地熱 50% 15% 空気・水熱源ヒートポンプ 50% 15% 固形バイオマス 50% 15% バイオガス 30% 25% 液体バイオマス 50% 15%

導入する再生可能エネルギー源は、建物の所有者が選択可能で、

義務履行の代替手段として CHP や地域熱供給からの熱利用、

省エネ令の基準を 15%以上上回る省エネ効率の達成も認めら

れている。 改修された公的機関の既存建物は、新築建物と比較して、達成

基準が一部緩和される。

本制度は、エネルギー供給事業者の家庭部門の顧客を対象と

しており、産業・業務部門は別制度の対象となっており除外。 対象事業者は、以下の 3 つの義務をそれぞれ履行する必要。 ① Carbon Emission Reduction Obligation(CERO)

1 枚壁や修繕が難しい壁の断熱材の設置促進。 ② Carbon Saving Community Obligation(CSCO) 貧困世帯及び過疎地における家屋への断熱材設置促進、地域

熱供給への接続支援。 ③ Home Heating Cost Reduction Obligation(HHCRO) 空調機由来のエネルギーコスト削減に資するボイラーの改修

や買い替えの支援。 上記のうち、再生可能エネルギー熱設備の導入に関しては、

③HHCRO の適格対策として、空気熱ヒートポンプ、地中熱

ヒートポンプ、バイオマスボイラーが例示されている。 義務対象者は、2015 年 3 月末までに、③HHCRO で 42 億ポ

ンドの光熱費削減目標を市場シェアに応じて分担する。 義務履行にかかる費用は、エネルギー価格に上乗せされて、

最終的にはエネルギー顧客に転嫁される。

施行方法 義務対象者は、州政府による認可を受けた専門家により、法律

を順守しているという証明を受け、地方行政府に提出。 罰則規定として、証明書の不提出・提出期限への遅れ:50,000ユーロ以下、証明書類の保存違反:20,000 ユーロ以下の罰金。

義務対象となるエネルギー供給事業者は、上記の①~③の各

類型の義務に対して適格行動(qualifying action)への助成を

することで義務履行が可能。

施行実績 2011 年は、増築されたヒートポンプの約 60%、集中バイオマ

ス暖房の約 3 分の 1 が新築建物。 2010~11 年には、新築建物の約 40%で熱回収装置が使用され

ており、新築建物の約 60%は非常に優れたエネルギー効率水準

で、代替措置「省エネルギー」(第 7 条)を満たしていた。

2013 年 8 月に公表されたエネルギー企業義務に基づく施行実

績では、ボイラー更新対策の実績が 4,854 件あるが、そのう

ちでバイオマスボイラーの設置事例があるかは不明。

施策の課題 再生可能エネルギー熱法に基づき、2012 年 12 月に連邦政府が

連邦議会に提出した進捗報告書では、以下のとおりの評価。 太陽、バイオマスについては短期的な変更の必要性なし。 ヒートポンプ、地域熱供給からの熱利用については、適格要件

の定期的な検討の必要性あり。

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表 1-3 小規模再生可能熱生産設備を対象とした主な支援制度(財政的支援) ドイツ イギリス フランス

制度名(開始年) 市場促進プログラム(1999 年~) 〔Marktanreizprogramms〕

再生可能熱プレミアムペイメント(2011 年~) 〔Renewable Heat Premium Payments〕

エネルギー投資額還付制度(2005 年~) 〔Le crédit d’impôt dédié au développement durable〕

経緯・目的 1999 年から再生可能熱設備対象をとした補助として実施。 「再生可能エネルギー熱法」では、2009 年から 2012 年の間

に、毎年 5 億ユーロを上限として、再生可能熱等の生産分野

に財政的支援を行うことを規定。 本プログラムに基づき、主に小規模設備を対象として連邦経

済・輸出管理庁(BAFA)が設置費補助を提供。

事業部門、産業部門、公共部門の再生可能熱生産設備を対象

とした再生可能熱インセンティブ(RHI)が家庭部門まで対

象を拡大するまでの暫定措置として導入。 当初は 2013 年 3 月末までを予定していたが、再生可能熱部門

の拡大導入が遅れたために 2014 年 3 月末まで延長。

対象者 補助金の受給対象は個人、個人事業者、中小企業、自治体及び

NPO。大企業の場合、大規模設備等の特定のケースのみ補助

金の受給が可能。 既存建物への設置および革新的技術への支援に重点を置いて

おり、2010 年 7 月に新築建物を対象とした支援は一部エネル

ギー源を除いて打ち切り。

基本的な省エネ対策を実施済みの家屋所有者を対象とした再

生可能熱設備の設置費用を助成する制度。 申請するための所定の要件は以下のとおり。 ・ 申請者が本拠としている住居であること ・ 基本的な省エネ方策(250 ミリの屋根裏断熱と中空壁断熱)

を導入していること ・ 新築住居の場合、居住者または家主として当該住居の所有

権を有していること ・ 賃借者の場合、家主の了承を得た上で、自らの負担により

設備を設置すること 太陽熱設備は全家庭が対象。バイオマスボイラーやヒートポ

ンプは集中暖房が普及していない家屋所有者が対象となる。

各個人家庭における再生可能エネルギー機器やヒートポン

プ、熱グリッドへの接続等にかかる投資に対して、投資額の

一定金額を払い戻す制度。

制度詳細 連邦経済・技術省の外局である連邦経済・輸出管理庁(BAFA)

が、申請ベースで支援を提供。 助成額は、熱源及び技術によって異なり、基礎助成額と付加的

なボーナス(ボイラー交換、効率、複合技術等)で構成。 技術 助成額(ユーロ) 太陽熱 (集光器)

表面積 40 ㎡以下 €1,500~3,600 表面積 20~100 ㎡ [集合住宅及び大規模型

非住居建物(新築含む)] €3,600~18,000

表面積最大 1,000 ㎡ [生産過程熱] 純投資額の最大 50%

バイオマス ペレットストーブ €1,400~3,600 ペレットボイラー €2,400~3,600 サイロ付チップボイラー €1,400

木質ガス化ボイラー €1,400

ヒートポンプ 海水熱源、水熱源 €2,800~12,300 空気熱源 €1,300~2,100

本制度の実施期間中に再生可能熱設備を設置する場合、一定

の条件を満たせばバウチャーが発行される。申請者が有効期

間内に設備を設置し、必要書類とともにバウチャーを Energy Saving Trust に提出すると助成金を受け取ることができる。

導入する再生可能熱設備は、マイクロ発電認証制度(MCS:Microgeneration Certification Scheme)の認証を受けたもの

でなくてはならず、MCS の認証を受けた業者か同等の業者に

よって設置されなくてはならない。 申請者は熱量計を設置することに同意しなくてはならない。 2013 年 5 月 20 日を境に助成額を引き上げ。

エネルギー源

助成額

~2013/5/19 2013/5/20~ 太陽熱 £300 £600 バイオマスボイラー £850 £1,300 空気熱ヒートポンプ £1,250 £2,300 地中熱・水熱ヒートポンプ £950 £2,000

第 1 期(2011 年 8 月~2012 年 3 月)予算は 1,500 万ポンド、

第 2 期(2012 年 5 月~2013 年 3 月)予算は 2,500 万ポンド。

2006 年から 2009 年までは、設置する再生可能熱生産設備に

対しては、投資額の 50%を上限とした還付を実施。

個人家庭におけるエネルギー投資に対する税額控除率

エネルギー源 2005 年 2006~ 09 年 2010 年 2011 年

再生可能熱生産設備 40% 50% 50% 45% ヒートポンプ 40% 50% 25-40% 36% 地域熱供給連系設備 対象外 25% 25% 22% ※ ヒートポンプは、熱源および用途により、税額控除率が異なる。ヒ

ートポンプ(水/水)は、2010 年以降対象外。

2015 年まで制度継続が決まっており、2013 年には、再生可

能熱生産設備の場合は投資額の 32%、ヒートポンプ・熱供給

ネットワークへの接続設備の場合は投資額の 26%を上限とし

た還付を実施。 なお、家族構成に応じて、還付の対象とする投資総額の上限

が規定されており、単身家庭では 8,000 ユーロ(96 万円)、

夫婦家庭で 16,000 ユーロ(192 万円)、その他扶養家族が増

えるごとに上限額が引き上げられる。 施行方法 補助金の受給希望者は、規定のガイドラインに則して適格な再

生可能熱設備を設置する場合に、BAFA に対して申請。 設置希望者は、施行機関である Energy Saving Trust に申請。 バウチャーが届いてから適格な設備を設置した上で、必要書

類を送付して助成額を受け取る。

施行実績 申請数:60,000 件(2011 年)、75,000 件(2012 年) 助成額:112 百万ユーロ(2011 年)、144 百万ユーロ(2012 年) 出典)BAFA, “Jahresbericht 2012 / 2013”

第 1 期の発行バウチャーは 7,253 件、約 548 万ポンド。 実際に換金されたバウチャーは 5,369 件で、第 1 期の予算で

ある 1,500 万ポンド(21 億円)には達しなかった。

2005~2008 年にかけて、省エネ対策、再生可能発電設備とあ

わせて、410 万世帯が還付の申請を行い、税支出額が 78 億ユ

ーロ(9,360 億円)に相当。 施策の課題

再生可能エネルギー熱法に基づき、2012 年 12 月に連邦政府

が連邦議会に提出した進捗報告書では、以下のとおりの評価。 予算額の上限に達した場合に、支援が一時的に中断すること

が市場を不安定にしているため、通年でのプログラムの継続

性を保証できるように整備することが課題。

Page 12: 諸外国の再生可能エネルギー熱政策 - env3 表 1-1 再生可能エネルギー熱の導入目標および導入実績 ドイツ イギリス フランス 再生可能エネルギー導入目標

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表 1-4 大規模再生可能熱生産設備を対象とした主な支援制度(財政的支援)

ドイツ イギリス フランス

制度名(開始年) 市場促進プログラム(2000 年~) 〔Marktanreizprogramms〕

再生可能熱インセンティブ(2011 年~) 〔Renewable Heat Incentive〕

熱基金(2009 年~) 〔Le fonds chaleur〕

経緯・目的 大規模設備については、ドイツ復興金融公庫(KfW)が、低利

融資・部分的債務免除を提供。 本項では、大規模設備を対象とした KfW による再生可能エネ

ルギープログラム・プレミアムの概要を紹介。

2008 年 11 月公布の「2008 年エネルギー法」第 100 条により、

再生可能熱に対する財政的インセンティブ制度を導入する権

限がエネルギー担当の国務大臣に付与。 2011 年に非家庭部門における大規模熱設備を対象とした支援

制度を施行。

再生可能エネルギー源及び廃熱改修による熱生産を支援する

目的で、2008 年 12 月に設立。 目 2009 年~2020 年の間に 5.5Mtoe の 1/4 以上の再生可能熱

生産を支援することを目的としている。

対象者 個人及び非営利団体(生産された熱を自ら使用する場合) 中小企業、政機関が大半を出資している企業(売上・従業員の

規模が中小企業の閾値以下) 特別に適格となる方策*に該当する場合にのみ大企業 *深部地熱、大規模太陽熱収集器(>40 ㎡)、大規模蓄熱器(20 ㎥)等 地方自治体、地方自治体所有企業、及び地方自治体関連機関 エネルギーサービス企業

支援対象は、2009 年 7 月 15 日以降に設置された事業部門、

産業部門、公共部門の再生可能熱生産設備。 対象部門:集合住宅、第 3 セクター、農業、産業部門

制度詳細 【支援対象エネルギー源】 総集熱面積が 40 ㎡超の太陽熱収集システム 定格熱出力が 100kW 超で熱利用目的の固形バイオマスボイラ

ーのための自動燃料供給設備 定格熱出力が最大 2MW 以下の厳密な意味での バイオマスコ

ジェネレーション設備 再生可能エネルギー源のよる地域熱供給ネットワークで、少な

くとも年間 500kWh/㎡以上の熱販売実績を有するもの 再生可能エネルギーによる 20 ㎥超の大規模蓄熱設備 天然ガス供給網へ取り込むためにバイオガスを天然ガス質へ

変換する設備 未処理バイオガス輸送用バイオガス網(直線距離 300m以上) 地熱エネルギー(掘削深度 400m超)の開発・利用のための設

備及びその他関連費用 【支援額】

支援対象となる設備に対しては、最大 3 年間までの支払猶予期

間がついた固定金利型の長期低利融資、払い戻し補助金が提供

される。対象設備の純投資額の 100%が支援対象となり、融資

の上限額は通常 1,000 万ユーロ(12 億円)となる。 小企業には、より優遇された利子が適用される。

支援対象設備は、20 年間にわたって 3 ヶ月ごとに、エネルギ

ー源別に規定された買取価格を受領。 2013 年 5~6 月に実施したコンサルテーションにおいて、買

取価格の見直しを提案。2013 年 1 月 21 日以降の認定設備に

ついて、買取価格を変更する予定。

技術 規模 買取価格(ペンス)

2013/7~ 14 年度改定案 バ イ オ マ ス

ボイラー 小規模 (200kW 未満)

第 1 段階: 8.6 第 2 段階: 2.2

変更なし

中規模 (200kW~1MW)

第 1 段階: 5.0 第 2 段階: 2.1

変更なし

大規模 (1MW 以上)

1.0 2.0

地中熱ヒート

ポンプ 小規模 (100kW 未満)

4.8 7.2~8.2

大規模 (100kW 以上)

3.5

太陽熱 200kW 未満 9.2 10.0~11.3

RHI の費用は政府支出から直接に支出されており、現行の歳

出見直し期間の 4 年間については年度予算が割当済み。 単位:百万ポンド

年度 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 総額 予算額 56 133 251 424 864

※2012、13 年度には RHPP 予算を含む。

2009~13 年間の予算 12 億ユーロ(1,560 億円)に基づく設

置費補助。 支援対象エネルギー源は、太陽熱、地熱、ヒートポンプ、バ

イオマス。

熱基金は、大規模バイオマスとそれ以外のプロジェクトの 2つのプログラムに分かれている。

大規模バイオマスを対象とした、「産業・農業・公共サービス

業向けバイオマス熱」(BCIAT)プログラムでは、環境・エネ

ルギー管理庁が年に 1 回公募入札を実施し、そこで選定され

たバイオマス設備に対し、フィード・イン・プレミアムを供

与する。プレミアムの額は、対象となる設備の規模により異

なる。 これ以外のセクターおよび上記基準に該当しないバイオマス

小規模設備プロジェクトに関しては、地域ごとに当該地域を

担当する環境・エネルギー管理庁が、公募によりプロジェク

トを選定する。

施行方法 買取対象とする熱量計測は、熱量計による測定が義務。 環境・エネルギー管理庁が年 1 回公募入札を実施。 施行実績 2011 年には、再生可能熱分野において 2,842 件、5 億ユーロ

(600 億円)の融資を実施。

2013 年 3 月末までに 1,238 設備が認定済み。 設備数比率では、固形バイオマスボイラーが 92%超。

大規模バイオマスを対象とした BCIAT プログラムでは、2012年に 22 件、年間 104ktoe の熱量に対して支援。

2012 年の助成予算合計は 40.5 百万ユーロ(48.6 億円)。 施策の課題

再生可能エネルギー熱法に基づき、2012 年 12 月に連邦政府

が連邦議会に提出した進捗報告書では以下のとおり評価。 予算額の上限に達した場合に、支援が一時的に中断すること

が市場を不安定にしているため、通年でのプログラムの継続

性を保証できるように整備することが課題。

制度の施行後、小・中規模のバイオマスボイラーは予測を上

回る導入が進んでいる一方で、その他のエネルギー源では、

予測を大きく下回る状況。 2013 年 5 月のコンサルテーションペーパーで、大規模バイオ

マスボイラーやヒートポンプの買取価格の引き上げを提案。

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2. ドイツ 2.1 再生可能エネルギー熱政策の概要

2.1.1 再生可能エネルギー導入目標

ドイツでは、2009 年に発効した EU の「再生可能エネルギー利用促進指令(2009/28/EC)」

において、2020 年の最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率を 18%にする

目標が設定されている。その目標達成に向けて、電力、熱、輸送燃料の各分野において、取

組みが進められている。 ドイツにおける再生可能エネルギー導入実績および目標の設定状況は、下表のとおり。

表 2-1 ドイツ:再生可能エネルギー導入目標の設定状況

分野 2000 年実績 2012 年実績 (暫定値)

2020 年目標 法定 国別行動計画

最終エネルギー消費 3.9% 12.6% 18.0%※1 18.0% 再生可能電力 6.8% 22.9% 35.0%※1 38.6% 再生可能熱 3.9% 10.4% 14.0% 15.5% バイオ燃料 0.4% 5.5% 約 12.0%※2 13.2%

※1:2012 年再生可能エネルギー法第 1 条で設定された目標。 ※2:2009 年 4 月に連邦内閣に承認された「バイオマス行動計画」で掲げられた 2020 年の導入目標。 出典)各種資料より東京海上日動リスクコンサルティング作成 熱利用分野では、2009 年 1 月に施行された「再生可能エネルギー熱法(Gesetz zur Förderung Erneuerbarer Energien im Wärmebereich)」の第 1 条「法律の目的・目標」

では、経済性を考慮しながら、熱分野における最終エネルギー消費に占める再生可能エネル

ギーの割合を 2020 年までに 14%まで引き上げることが目標として規定されている。

再生可能エネルギー熱法 第 1条 法律の目的及び目標

第 1 条 法律の目的及び目標 (1)この法律は、特に気候保全、化石資源の節約及びエネルギー輸入依存度軽減のために、エ

ネルギー供給の持続的な発展を可能とすること及び再生可能エネルギーによる熱生産技術

の振興を促進することを目的とする。 (2)経済性を考慮して前項の目的を達成するために、この法律は、熱分野(暖房熱、冷却熱、

プロセス熱及び給湯)の最終エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合を 2020年までに 14%に引き上げることを目標とする。

出典)渡辺 富久子「ドイツにおける建物の熱エネルギー法制 –省エネルギー令と再生可能エネルギー熱法

を中心に–」『外国の立法』247 号, 2011.3, pp.83-100

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2.1.2 再生可能熱分野の導入実績

ドイツにおける 1997 年以降の再生可能熱分野の導入実績の推移は以下のとおり。

図 2-1 ドイツ:再生可能熱エネルギーの供給量推移(1997 年~)

出典)連邦環境・自然保護・原子炉安全省,“Development of renewable energy sources in Germany in 2012”

2012 年の導入実績を見ると、バイオマスによる再生可能エネルギー熱供給が 91%を占め

ており、そのうち家庭における固形バイオマス利用(冬季暖房利用)が過半数を占める。

図 2-2 ドイツ:再生可能熱エネルギーの供給量内訳(2012 年)

出典)連邦環境・自然保護・原子炉安全省,”Development of renewable energy sources in Germany in 2012”

固形バイオマス(家庭)

固形バイオマス

(産業)

固形バイオマス

(コジェネ及び

暖房設備)

液体バイオマス

バイオガス

埋立ガス

下水ガス

廃棄物の

バイオマス部分

太陽熱

深度地熱

浅度地熱、

ヒートポンプ

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また、ドイツは、EU の「再生可能エネルギー利用促進指令(2009/28/EC)」に基づき、

「国家再生可能エネルギー行動計画(national renewable energy action plan)」を策定し、

2010 年 8 月に欧州委員会に提出した。この行動計画は、指令によって最低限含むべき項目

が規定されており、加盟各国は 2020 年までの電力分野、熱分野、輸送燃料分野における導

入の指標曲線を推定しなければならない。 以下では、ドイツ政府が策定した行動計画における、2020 年までの再生可能熱分野の導

入予測を紹介する。

表 2-2 ドイツ:熱・電力・輸送燃料分野別の推定指標曲線(~2020 年)

2005 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年

熱分野 (%) 6.6 9.0 9.4 10.0 10.5 11.1

電力分野 (%) 10.2 17.4 19.3 20.9 22.7 24.7

輸送燃料分野 (%) 3.9 7.3 7.5 7.6 7.0 7.0 再生可能エネルギ

ー合計 (%) 6.5 10.1 10.8 11.4 12.0 12.8

内、協力メカニズム によるもの (%) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

内、協力メカニズム への余剰分 (%) 0.0 0.0 2.6 3.2 2.5 3.3

2015 年 2016 年 2017 年 2018 年 2019 年 2020 年

熱分野 (%) 11.7 12.4 13.1 13.9 14.7 15.5

電力分野 (%) 26.8 28.8 31.0 33.3 35.9 38.6

輸送燃料分野 (%) 7.0 7.1 9.3 9.4 9.7 13.2 再生可能エネルギ

ー合計 (%) 13.5 14.4 15.7 16.7 17.7 19.6

内、協力メカニズム によるもの (%) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

内、協力メカニズム への余剰分 (%) 2.2 3.1 2.0 2.9 0.0 1.6

出典)Federal Republic of Germany, “National Renewable Energy Action Plan in accordance with

Directive 2009/28/EC on the promotion of the use of energy from renewable sources” ドイツでは、「再生可能エネルギー法(Erneuerbare-Energien-Gesetz)」に基づく固定価

格買取制度で、電力分野の再生可能エネルギー比率を 2020 年までに 35%超に拡大するこ

とを目指している。 上述の行動計画では、再生可能熱分野についても、2010 年の 9%から 2020 年に 15.5%

まで拡大することを目指している。個別エネルギー源では、2020 年までに、太陽熱エネル

ギーを 2010 年の 2.8 倍(440→1,245ktoe)、ヒートポンプを 2.5 倍(465→1,144ktoe)、地

熱エネルギーを 20 倍(34→686ktoe)に拡大すると推定している。

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表 2-3 ドイツ:再生可能熱分野の最終エネルギー消費量推定(~2020 年)

単位:ktoe

2005 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 地熱 (低温地中熱源はヒ

ートポンプに分類) 12 34 74 114 154 194

太陽 238 440 500 560 621 681

バイオマス 7,260 9,092 9,350 9,610 9,869 10,129

固形 6,794 7,516 7,691 7,865 8,040 8,214

バイオガス 154 912 992 1,072 1,152 1,232

液体バイオマス(*) 313 664 668 673 677 682

ヒートポンプ 196 465 532 599 666 733

内、大気熱 39 165 196 229 264 301

内、地中熱 130 258 289 319 347 374

内、水熱 27 42 46 51 54 58

合計 7,706 10,031 10,457 10,884 11,309 11,736

内、地域暖房 1,370 1,473 1,576 1,679 1,782

内、家庭バイオマス 4,407 5,538 5,593 5,648 5,703 5,758

2015 年 2016 年 2017 年 2018 年 2019 年 2020 年 地熱 (低温地中熱源はヒ

ートポンプに分類) 234 325 415 505 596 686

太陽 741 842 943 1,043 1,144 1,245

バイオマス 10,388 10,582 10,776 10,969 11,162 11,355

固形 8,389 8,501 8,614 8,726 8,839 8,952

バイオガス 1,312 1,388 1,464 1,540 1,616 1,692

液体バイオマス(*) 688 693 697 702 707 711

ヒートポンプ 800 869 938 1,007 1,075 1,144

内、大気熱 338 378 418 460 503 547

内、地中熱 400 426 451 475 498 521

内、水熱 62 65 68 71 74 77

合計 12,163 12,617 13,071 13,524 13,978 14,431

内、地域暖房 1,885 2,020 2,155 2,290 2,425 2,560

内、家庭バイオマス 5,812 5,845 5,878 5,910 5,943 5,975

(*)持続可能性基準を満たすもののみ対象。再生可能エネルギー利用促進指令(2009/28/EC)第 5 条 第 1

項 最終段落を参照。 出典)Federal Republic of Germany, “National Renewable Energy Action Plan in accordance with

Directive 2009/28/EC on the promotion of the use of energy from renewable sources”

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2.1.3 再生可能熱分野における促進施策体系

ドイツでは、バイオマス CHP 等のエネルギー供給に関わる大規模設備は、「再生可能エ

ネルギー法」や「CHP 法(KWKG:Gesetz für die Erhaltung, die Modernisierung und den Ausbau der Kraft-Wärme-Kopplung)」に基づく固定価格買取制度において、発電電力に

対する支援の中でプレミアムを付与することで間接的に熱生産の支援を行っている。また、

バイオガスを燃料としたエネルギー供給を行う環境整備として、「エネルギー事業法

(EnWG:Energiewirtschaftsgesetz)」を改正し、バイオメタンを既存ガス網に注入する

際の「優先アクセス」に関する義務が設けられている。 他方、建物に設置する再生可能熱設備については、1999 年から、市場促進プログラム

(Marktanreizprogramm)と呼ばれる初期投資費用の軽減を目的とした設置費補助制度や

長期低利融資制度により促進を行ってきた。この市場促進プログラムは、2013 年現在、既

存建物への設置設備や革新的な技術への支援に重点を置いている。新築建物における再生可

能熱利用については、2009 年に施行された「再生可能エネルギー熱法」に基づき、建物所

有者に対して一定比率の再生可能エネルギー導入を義務付けることにより促進を図ってい

る。

表 2-4 ドイツ:再生可能熱分野における主な促進施策の支援対象

エネルギー源

主な促進施策 太陽熱 地熱 ヒートポンプ バイオマス バイオガス

バイオマス

CHP

再生可能エネルギー熱法

○ ○ ○ ○ ○ ○

市場促進プログラム

(BAFA)

○ ○ ○ ○ ○ △

市場促進プログラム

(KfW)

○ ○ ○ ○ ○ △ 併用不可

再生可能エネルギー法

CHP 法

バイオガス優先接続義務

出典)各種資料より東京海上日動リスクコンサルティング作成

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2.2 個別支援施策の概要・効果

2.2.1 再生可能エネルギー熱法

「再生可能エネルギー熱法」は、2008 年 8 月に公布された。本法は、熱供給における再

生可能エネルギーの利用を拡大することで、温室効果ガスを削減し、気候を保護する目的で、

2007 年ドイツが発表した、包括的な気候保護・エネルギー政策の一施策として制定された

ものである。本法の施行により、ドイツは、熱供給に占める再生可能エネルギーの割合を

2020 年までに 14%とすることを目指している。 本法は 2009 年 1 月 1 日に施行され、その後 2011 年 5 月に改正された。以下では、本法

に基づく義務付けの概要と施行状況についてとりまとめる。 (1) 概要

1)義務対象者

2009 年 1 月 1 日より、原則として新築建物の所有者が義務対象者となる。個人、国、企

業にかかわらず、全ての所有者がこの義務の対象となる。また、当該建物が賃貸に出されて

いたとしても本法の適用対象となる。 エネルギーが冷暖房に使用され、且つ 50 ㎡以上の有効面積を有する新築建物は、以下の

除外要件に該当する場合を除いて義務の対象となる。

表 2-5 ドイツ:再生可能エネルギー熱法:第 4条 義務対象から除外する建物

1.主に動物の繁殖又は飼育の用に供する事業用建物 2.利用目的に照らして、広い面積を長期間継続して開放しておかなければならない事業用建物 3.地下の建物 4.植物の栽培、増殖及び販売の用に供するガラス温室設備及び栽培室 5.エア・ドーム及びテント 6.組立式建物及び使用予定期間が 2 年以内の仮設建物 7.礼拝その他の宗教的な目的のための建物 8.年間の利用期間が 4 月※未満とされる居住用建物 9.その他の事業用建物で用途に照らして室内温度を摂氏 12 度未満とするもの又は年間の暖房

期間が 4 月※未満かつ年間の冷房期間が 2 月※未満のもの 10.施設の一部又は附属建物で、2007 年 12 月 21 日の法律(連邦法律公報第Ⅰ部 3089 頁)第

19a 章第 3 号によって最終改正された 2004 年 7 月 8 日の温室効果ガス排出量取引法(連邦

法律公報第Ⅰ部 1578 頁)の現行の法文で適用対象となる建物 ※引用注:それぞれ 4 ヶ月、2 ヶ月。

出典)渡辺 富久子「ドイツにおける建物の熱エネルギー法制 –省エネルギー令と再生可能エネルギー熱法

を中心に–」『外国の立法』247 号, 2011.3, pp.83-100 また、2011 年 5 月に施行された改正法では、公的機関の既存建物が大規模な改修を行う

場合にも義務が適用されることとなった。なお、公的機関の建物を所有する地方自治体が極

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13

度の財政難にある場合や、義務を遂行するための措置に不相応な経費を伴う場合は、本義務

は適用除外となることが改正法で定められている。 2)対象エネルギー源と達成基準

本法の義務履行に用いることのできる再生可能エネルギー源は、太陽熱、地熱エネルギー、

空気・水などの周辺熱(ambient heat)ヒートポンプ、バイオマス(植物油・バイオガス・

木質ペレット・木材チップなど)と定義されている。建物所有者は、どのエネルギー源を利

用するかについては自由に決定できる。どの再生可能エネルギーを利用することが最適であ

るかは、地域的条件による。再生可能エネルギーの利用を望まない者は、建物の断熱効果を

高める、地域熱供給システムから熱供給を受ける、あるいはコジェネレーションによる熱を

利用するといった、他の気候変動軽減策を採用することが可能である(義務履行の代替手段

については、3)で後述する)。 下表に示す通り、新築建物に固形バイオマス、地熱、又は空気・水など周辺熱ヒートポン

プを利用する者は、少なくとも熱需要の 50%をこれらエネルギー源によって供給しなくて

はならない。同様に、太陽エネルギーについては熱需要の 15%、バイオガスについては 30%を満たさなければならない。但し、公的機関の既存建物の改修の場合には、新築建物と比較

して、達成基準が一部緩和される。

表 2-6 ドイツ:再生可能エネルギー熱法:対象エネルギー源ごとの達成基準

エネルギー源 達成基準 新築建物 公的建物の改修

太陽エネルギー 15% 2 世帯以下の家屋における利用面積の

㎡あたり 0.04 ㎡の太陽熱集熱器 (3 世帯以上の集合住宅は 0.03 ㎡)

地熱 50% 15% 周辺熱(空気・水熱源)ヒートポンプ 50% 15% 固形バイオマス 50% 15% バイオガス 30% 25% 液体バイオマス 50% 15%

出典)再生可能エネルギー熱法に基づき東京海上日動リスクコンサルティング作成 さらに、当該技術が環境に与える総合的な影響を最小限に抑える目的で、各エネルギー源

ごとに技術要件が定められており、同法の附属書で規定されている。例えば、ヒートポンプ

の適格技術要件として、一定の季節性能係数(SPF:Seasonal Performance Factor)が設

定されている。上記の達成基準を満たすためには、こうした各エネルギー源ごとの技術要件

を満たしていることが前提条件となる。

Page 20: 諸外国の再生可能エネルギー熱政策 - env3 表 1-1 再生可能エネルギー熱の導入目標および導入実績 ドイツ イギリス フランス 再生可能エネルギー導入目標

14

表 2-7 ドイツ:再生可能エネルギー熱法:対象エネルギー源ごとの主な技術要件

エネルギー源 新築建物 公的建物の改修 太陽エネルギー 2 世帯以下の家屋における有効

面積(㎡)あたり 0.04 ㎡の集熱

面積を持つ太陽熱設備

有効面積(㎡)あたり 0.06 ㎡の

集熱面積を持つ太陽熱設備

熱媒体が液体の場合は、“Solar Keymark”の認証済み 地熱/ヒートポンプ 以下の要件をすべて満たすこと

►ヒートポンプの季節性能係数(SPF)が、空気-水、空気-空気式の

場合 3.5 以上、それ以外の熱源の場合 4.0 以上※ ►上記の季節性能係数を計測できる機器を備えていること ►“flower”、 “Blue Angel 等のエコラベル取得製品であること ※化石燃料駆動の場合は、季節性能係数 1.2 以上を要件とする

固形バイオマス 以下のボイラー効率を満たすこと等 ►暖房・温水供給の場合(50kW 以下):86% ►暖房・温水供給の場合(50kW 超):88% ►暖房・温水供給以外の場合:70%

バイオガス コジェネレーションでの利用等 最善技術(BAT)を適用したボイ

ラー、もしくはコジェネレーショ

ンでの利用等 液体バイオマス 最善技術(BAT)を適用したボイラー、且つ持続可能性基準を満た

した液体バイオマスを燃料としていること 出典)再生可能エネルギー熱法に基づき東京海上日動リスクコンサルティング作成 3)義務履行の代替手段

全ての建物所有者が再生可能エネルギーを利用できるわけでもなく、また、利用すること

が常に適切とは限らない。従って、再生可能エネルギーを利用する代わりに、同様に気候変

動緩和につながる他の対策をとることが可能である。以下のような代替策が認められている。 廃熱の利用。廃熱の熱生産には既にエネルギーが使われているため、再生可能エネル

ギーの形態としては認められない。とはいえ、廃熱を「再利用」することはその分の

資源が節約されるため、この方法も妥当だといえる。廃熱を利用する建物所有者は、

建物の熱需要のうち最低でも 50%をこの方法で供給しなくてはならない。 コジェネレーションによる熱の利用。コジェネレーションプラントは電力と熱を同時

に生産するために資源を利用している。コジェネレーションについても、最低供給量

は 50%と規定されている。 法律で規定された基準を著しく超えた建物の断熱改修の実施。省エネルギー令の下に

義務付けられている基準より熱効率を 15%以上向上させて建物を改修した所有者に

ついては、当該建物のエネルギー消費量が著しく低いことから、再生可能エネルギー

の利用を義務付けない。 地域グリッド又は地域熱供給グリッドへの接続。但し、当該グリッドが、大きな割合

で再生可能エネルギーを利用している、もしくは熱供給量の 50%以上をコジェネレ

ーションプラント又は廃熱から供給していることを条件とする。

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再生可能エネルギー及び代替手段のどちらも利用できない所有者については、義務が免除

される。対策をとることが不当な困難を招く場合、所轄の州当局は、当該建物所有者に対し

再生可能エネルギーの利用義務を免除することができる。 4)義務の履行方法

義務対象者は、本法の所管官庁となる州政府により認可を受けた専門家により、本法に順

守しているという証明を受け、地方行政府に提出することが求められる。法令では、所管官

庁に無作為に調査を行う権限を付与しており、要求された場合には必要な資料の提出が求め

られる。罰則規定としては、証明書の不提出、提出期限への遅れ等があった場合は 50,000ユーロ(600 万円)以下の罰金、証明書類を 5 年間保存していなかった場合は 20,000 ユー

ロ(240 万円)以下の罰金が課せられる。 また、「再生可能エネルギー熱法」は、建物所有者がとり得る対策の範囲を広く設定して

いる。異なる再生可能エネルギーを組み合わせて利用したり、複数の代替手段を互いに組み

合わせ、かつ再生可能エネルギーと併用して利用したりすることも可能である。 義務達成に異なる手段を組み合わせて用いる場合、再生可能エネルギーのみの利用もしく

は代替手段のみの利用を選択した場合と同じ基準を満たさなくてはならない。太陽エネルギ

ーによって熱需要の 7.5%(規定の 15%ではなく)しか満たしていない所有者は、再生可

能エネルギー利用義務の半分しか果たしていないことになる。従って、残り半分の義務を他

の手段によって達成しなくてはならない。例えば、木質ペレットを利用して規定の 50%の

半分=25%を供給するといった方法がある。

5)国による財政的支援

建物所有者は、政府による財政的支援施策である市場促進プログラムによって支援される。

「再生可能エネルギー熱法」では、第 14 条において国による財政的支援の条項が設けられ

ており、1999 年から実施してきた市場促進プログラムを法的根拠の持つプログラムとして

扱うこととなった。第 14 条では、2009~12 年度までの間に、連邦予算を年間で最大 5 億

ユーロ(600 億円)投入することが規定されている。 但し、「細則は連邦環境・自然保護・原子炉安全省が、連邦財務省と協議の上で行政規則

で定める」とされており、当該年度の方針により予算額が異なることになる。例えば 2010年度は、連邦政府の予算削減により、前年度よりも 3 分の 1 予算が削られた形で 2.65 億ユ

ーロ(318 億円)の予算が配分されたが、5 月にはこの予算を費消してしまい、しばらく補

助金は凍結された。その後 7 月 7 日に 1.15 億ユーロ(138 億円)の予算が追加されること

が決定し、補助金申請が再開されるという事態が起きた。 なお、市場促進プログラムに基づく補助金の申請は、連邦経済・輸出管理庁(BAFA:

Bundesamt für Wirtschaft und Ausfuhrkontrolle-連邦経済・技術省(BMWi)の外局)

に対して行う(市場促進プログラムの詳細は、2.1.2、2.1.3 項を参照)。

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(2) 施策の施行実績

「再生可能エネルギー熱法」では、第 18 条において、連邦議会に対して、連邦政府が法

律の進捗状況を定期的に報告することを規定している。2012 年 12 月に連邦議会に提出さ

れた進捗報告書では、「再生可能エネルギー熱法」の効果について、以下のように評価して

いる。 「再生可能エネルギー熱法」は、成立後 3 年において既に熱及び冷熱利用に対する再

生可能エネルギーの拡充を大幅に促進した。同法の利用義務は建造物の新築において効

果を発揮しているほか、同法において定められた市場促進プログラムも、既存の熱市場、

特に建造物の分野における再生可能エネルギーの占める割合の増加に貢献している。 2011 年の熱分野全体における再生可能エネルギーの割合は、熱の最終エネルギー消費

量の約 11%、熱及び冷熱においては 10.2%にのぼっている。 特に「再生可能エネルギー熱法」は、再生可能エネルギーの利用促進を目指した設備技

術の分野で効果を発揮しているが、様々な施策が相乗的に効果を上げており、明確に効

果を分類することは不可能である。 報告書では、「新規建物における熱利用の割合の推計手法や調査手法には、現在いろいろ

問題があり、新規建物の再生可能エネルギー熱の利用について、断定的な意見を述べるのは

難しい」としている。下図は推計により 2009 年から 2011 年にかけての再生可能エネルギ

ー熱の利用割合を推計したものである。

※バイオマスコジェネシステムは地域熱供給に含む。

図 2-3 新規建物における再生可能エネルギー熱システム・代替措置の利用シェア

出典)連邦環境・自然保護・原子炉安全省,” Vorbereitung und Begleitung bei der Erstellung eines

Erfahrungsberichtes gemäß § 18 Erneuerbare-Energien-Wärmegesetz”

新築建物に占めるシェア

太陽熱 バイオマス ヒートポンプ 地域熱供給 省エネ基準

15%達成

排熱回収利用

空調システム

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また、同進捗報告書では、具体的な熱市場の進展について以下のように記述している。

表 2-8 ドイツ:再生可能エネルギー熱法:熱市場における効果 2009 年~2011 年の調査によると、少なくとも、全新築建物の半数が、熱生産に再生可能エ

ネルギーを導入している。非集中型(熱供給網に接続していない)技術の場合には、ヒート

ポンプが最も多く使用されており(新築の 27%)、続いて太陽熱設備(同約 20%)、固形バイ

オマス設備(同約 5~7%)である。新規居住用建物における遠隔暖房への接続数は、2000年以降減少をたどっていたが、2008 年以降再び上昇している。

非居住用建物の分野においては、2008 年以降緩やかな上昇傾向が見られる。 熱供給の全市場と比較すると、新築建物分野における再生可能エネルギーの市場は、利用義

務の導入によって、「再生可能エネルギー熱法」施行前よりも安定して推移している。そのた

め、利用義務を達成する必要のある全ての種類の再生可能エネルギーにおいて、新築建物分

野における市場割合は 2008 年以降拡大している。 一方、新築率の緩やかな上昇のため、新築建物分野の再生可能エネルギーの増加に対する影

響はむしろ低い。しかし、ヒートポンプ及び集中バイオマス暖房の分野においては、全体の

増加に対して、新築における増加が著しい。2011 年には、増築されたヒートポンプの約 60%、

集中バイオマス暖房の約 3 分の 1 が新築建物においてである。 また代替措置、とりわけ省エネ措置も大きくかつ安定的に成長している。2010~11 年には、

新築建物の約 40%で熱回収装置が使用されており、新築建物の約 60%は非常に優れた効率水

準で「再生可能エネルギー熱法」の代替措置「エネルギーの節約」(第 7 条)を満たしていた。 出典)連邦環境・自然保護・原子炉安全省, “Erfahrungsbericht zum Erneuerbare-Energien-Wärmegesetz

(EEWärmeG-Erfahrungsbericht)”をもとに東京海上日動リスクコンサルティング作成

(3) 施策の課題

上述の 2012 年 12 月に連邦議会に提出された進捗報告書では、実施期間が短期間である

ため、「再生可能エネルギー熱法」のあらゆる効果を包括的に分析するのは不可能という立

場をとっている。エネルギー源別の利用状況と提言は下表のとおり。

表 2-9 ドイツ:再生可能エネルギー熱法:エネルギー源別の利用比率と提言 エネルギー源 義務履行における利用比率 提言 太 陽 エ ネ ル ギ

2009 年の推計は、新規建物のほぼ 16%が太陽熱エ

ネルギーを利用していた。2010 年は、ちょうどこ

の値が 20%を下回るものと推計されている。2011年については、連邦統計局が初めて建設が完了し

た建物における第一次暖房エネルギーと第二次暖

房エネルギーについてデータを提供した。この数

値によると、2011 年は、新規建物のうち 19%が太

陽熱エネルギーを利用していた。

・効率要件の設定 ・規模特定の検証プロセスの確立 ・強制的な最低利用割合の設定 既存の再生可能エネルギー熱法における

Solar Keymark 要件に加えて、市場促進プロ

グラムの効率要件にも組み込むことを提言。 また、評価(算定)に当たっての、最終的な

エネルギー別の最低割合を引き上げることを

提言。そうすることで、気候保護に資するコ

ンバインド・システムを優先的にさせ、省エ

ネルギー令(EnEV)における今後の要件の

引き上げに対応することが可能。

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エネルギー源 義務履行における利用比率 提言 固形バイオマス 2010年以降に建築許可を得た建物への調査票によ

ると、再生可能エネルギー熱法に準拠した固形バ

イオマスの利用は、住宅用建物における「その他

暖房エネルギー利用」のうちおよそ 87%、非住宅

用建物についてはおよそ 75%。なお、個々のスト

ーブで利用されているバイオマスは、再生可能エ

ネルギー法上特例においてのみ認められるうえ、

その数値は現在のところ無視できるレベルである

ため、この数値に含まれていない。

・暖房システムに対する効率要件の設定 技術的発展を促すため、今後、効率要件を

90-92%に引き上げるべきである(現状

86-88%)。

液体バイオマス エネルギー需要のうち、50%を液体バイオマスで

達成するというのは実際的に可能ではない。2009年から2011年の間の暖房用燃料市場におけるバイ

オ油(燃料)又はバイオディーゼルのシェアは、

1%に満たない状況であるため、現状では、液体バ

イオマスは意味を持たない。

特に提言なし。

バイオガス バイオガスシステムからの熱の抽出割合は、新規

建物と既存建物とを区別することはできない。 2011 年末時点で、83 のバイオガス処理施設が運営

されており、そのほとんどが CHP システム。

特に提言なし。

地熱 地域熱供給のうち、およそ 0.2%程度。ただし、正

確なデータは今のところなし。 特に提言なし。

ヒートポンプ 新規建物で一次熱エネルギー源としてヒートポン

プが利用されている割合は、他の熱エネルギーに

比べ、最も高くなっている。2000 年に建設が完了

したもののうち、ヒートポンプの利用は 1%未満で

あったが、2010 年にはこの割合は 29%になった。

1993 年以降、連邦統計局のデータによると、

150,000 件のヒートポンプが新規建物に設置され、

その 96%以上が住宅で利用されている。

・独立専門家により、年間パフォーマンス係

数の算定をドイツ工業規格 VDI4650 に準拠

して実施すること。 ・あるいは、所有者に対し、ヒートポンプを

設置した専門企業により最低限の年間パフォ

ーマンス係数の保証を行うこと。

排熱回収利用

空調システム

熱回収を含む空調システムを備えた新規建物の割

合は、2005 年の 5%から、2011 年にはその 8 倍の

ほぼ 40%となった。 省エネルギー令(EnEV)の野心的なエネルギー要

件と kfW 銀行グループの補助金プログラムによ

り、新規建物におけるこれらのシステムの利用は、

相当程度の増加が見込まれている。

空調システムにおける熱回収システムの利用

は、今後新規建物には標準的な仕様となって

いくと考えられるため、再生可能エネルギー

熱法による影響は少ないと考えられる。

コジェネ熱利用

2009 年から 2011 年については、分散型 CHP の利

用は、エネルギー要件に対し、非常にわずかな貢

献しかなされていない。

分散型 CHP(マクロ・ミニ CHP)は、ほと

んどの住宅用建物でまだ利用されていない。

そのため、再生可能エネルギー熱法における

現在の規則に従い、分散型 CHP を代替手段

として維持していくべき。 省エネ措置 2009 年では、新規建物のうちおよそ 40%について

省エネルギー令の 15%の要件を超えた省エネ手法

が用いられている。2010 年はその数値がおよそ

60%、2011 年はおよそ 58%であった。

省エネルギー令の 15%要件を超えた建物の

件数が相当程度増加していることから、この

代替措置に対する要件は、大幅に引き上げる

べきである。 地域熱供給

統計データがないため、2011 年の再生可能エネル

ギーの割合が約 10%であることから推計すると、

熱ネットワークからの熱生産量のうち、約 42%が

高効率 CHP 施設からの熱である。

・熱ネットワークにおける高効率 CHP の最

低限の割合を 70%までに引き上げ、中期的に

は、20%の再生可能エネルギーの最低割合を

求めること。 ・ネットワーク・ロスが大きいネットワーク

があることから、ネットワーク・ロスを 15%未満する制限を課すこと。

出典)連邦環境・自然保護・原子炉安全省, “Erfahrungsbericht zum Erneuerbare-Energien-Wärmegesetz

(EEWärmeG-Erfahrungsbericht)”をもとに東京海上日動リスクコンサルティング作成

Page 25: 諸外国の再生可能エネルギー熱政策 - env3 表 1-1 再生可能エネルギー熱の導入目標および導入実績 ドイツ イギリス フランス 再生可能エネルギー導入目標

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全般的には、「再生可能エネルギー熱法」の効果は実証されているとしており、以下に掲

げるような施行上の細かい課題を中心に、制度改正の提言を行っている。

表 2-10 ドイツ:再生可能エネルギー熱法:進捗報告書における検討すべき点 大項目 主な変更を検討すべき点 利用義務の強化 新築建物分野の熱市場拡大、技術の発展、学術的研究による知見、欧州域

内のガイドライン等に基づき、主に以下のような変更を提言。 太陽熱エネルギー及びバイオマス

短期的には変更の必要なし ヒートポンプ

季節性能係数(SPF)に関する証明義務の検討 技術の発展に応じた最低季節性能係数に関する要件の定期的検討 既設ヒートポンプの負荷調整問題への適応方法の中・長期的な検討 季節性能係数の算出における、供給された利用冷熱及びそのために

使用された電力算入の検討 等 代替措置(熱供給を受けた熱利用)

コジェネレーション達成最低基準(50%)の中期的な引き上げ検討 再生可能エネルギーもしくは廃熱による、熱及び冷熱に関する適切

な最低基準の設定の必要性、及び中期の段階的な引き上げの検討 低温熱供給網の設置に向けた促進策の検討 等

施行に係る事項 証明手続きの共通化、証明書類の保存義務の統一化、様式の統一化 バイオマス設備における燃料供給の証明書類の保存期間を統一し、

場合に応じて延長 実施費用の軽減のため、証明、届出、証書の全州における統一様式

の導入を検討 有資格専門家による無作為抽出検査

州政府に、行政規則によって、認定された専門家に無作為抽出検査

を委託する権限が与えられるべき 建築関係者に対する情報提供義務

建築関係者(建築家、配線工等)には、新築の場合、施工主に対し

て法令で定められた義務を情報提供するよう義務付けるべき 指示権限

「再生可能エネルギー熱法」は、所轄庁の介入権限を明確にすべき 出典)連邦環境・自然保護・原子炉安全省, “Erfahrungsbericht zum Erneuerbare-Energien-Wärmegesetz

(EEWärmeG-Erfahrungsbericht)”をもとに東京海上日動リスクコンサルティング作成

Page 26: 諸外国の再生可能エネルギー熱政策 - env3 表 1-1 再生可能エネルギー熱の導入目標および導入実績 ドイツ イギリス フランス 再生可能エネルギー導入目標

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2.2.2 市場促進プログラム①(BAFA による補助金)

上述の「再生可能エネルギー熱法」では、2009 年から 2012 年の間に、毎年 5 億ユー

ロ(600 億円)を上限として、再生可能熱等の生産分野に財政的支援を行うことを規定し

ている。本プログラムに基づき、主に小規模設備を対象として連邦経済・技術省の外局であ

る連邦経済・輸出管理庁(以下、BAFA とする)が設置費補助を提供している。なお、既

存建物への設置および革新的技術への支援に重点を置いており、2010 年 7 月に新築建物を

対象とした支援は、一部エネルギー源を除いて打ち切りとなった。 以下では、市場促進プログラムのうち、BAFA による補助金の制度概要をとりまとめる。

(1) 概要

1)支援対象者

補助金の受給対象は個人、個人事業者、中小企業、自治体及び NPO となる。大企業の場

合、大規模設備等の特定のケースのみ補助金の受給が可能となっている。

2)支援対象エネルギー源

市場促進プログラムは、熱分野における再生可能エネルギー技術への投資補助を行う制度

である。この支援制度は「熱分野における再生可能エネルギー利用支援策に関するガイドラ

イン(Richtlinien zur Förderung von Maßnahmen zur Nutzung erneuerbarer Energien im Wärmemarkt)1」に従っている。最新版は 2012 年 7 月 20 日版である。 現行制度では、以下の技術が支援対象となっている。

総集熱面積が 40 ㎡以下の太陽熱収集システム 大規模な蓄熱機能を備えている総集熱面積 40m2 超の太陽熱収集システムで一世帯/

二世帯住宅に設置されているもの 定格熱出力が100kW以下で熱利用目的の固形バイオマスボイラーのための自動燃料

供給設備 高効率ヒートポンプ 熱分野における再生可能エネルギー利用技術の中で特に革新的な技術のうち、ガイド

ラインに基づくもの 総集熱面積が 20~40m2の大規模太陽熱収集システム 定格熱出力が100kW以下の固形バイオマスボイラーにおける温室効果ガス排出

削減または効率向上の二次的対策 なお、高効率ヒートポンプについては、上記ガイドラインで適格要件を以下のように設定

している。

1 原典リンク:

http://www.bafa.de/bafa/de/energie/erneuerbare_energien/vorschriften/energie_ee_richtlinie_20_07_2012.pdf

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表 2-11 ドイツ:ガイドラインで支援に適格とされるヒートポンプの要件 熱流量計の設置義務 電気ヒートポンプ ヒートポンプが消費した全電力量が把握できる積算電力計が 1 つ備わ

っており、かつ最低でも 1 つの熱流量計が備わっている ヒートポンプにより放出された熱量は全て計測されなければならない 必要な場合は複数の熱流量計が備えられていなければならない

ガスヒートポンプ ヒートポンプが消費した燃料ガスの全量を把握できるためのメーター

が 1 つ備わっており、かつ最低でも 1 つの熱流量計が備わっているヒ

ートポンプにより放出された熱量は全て計測されなければならない 必要な場合は複数の熱流量計が備えられていなければならない

証明を求められる性能要件 電気ヒートポンプ 【定格出力:100kW 以下】

海水-水式、水-水式:通年エネルギー消費効率 3.8 以上 (住居以外の建物の場合は 4.0) 空気-水式:通年エネルギー消費効率 3.5 以上

【定格出力:100kW 超】 通年エネルギー消費効率 3.8 以上

ガスヒートポンプ 通年エネルギー消費効率 3.8 以上 建物暖房向け ヒートポンプ

暖房設備に水力調整機能があることを証明すること ※直接圧縮式ヒートポンプ(熱媒体循環システムを 1 つしか持たないも

の)の場合は証明不要 暖房設備の加熱曲線(外気温を X 軸、媒体の温度を Y 軸にとる関数の

曲線)が建物に適合していることを証明すること 出典)BAFA 資料をもとに東京海上日動リスクコンサルティング作成

3)支援額

BAFA による設置費補助制度は、設置費の 7~30%の支援を想定しており、集熱器面積

40 ㎡以下の太陽熱システム、高効率ヒートポンプ等、規定のガイドラインで示された再生

可能熱等の設備が支援対象となる。助成額は、熱源及び技術によって異なり、基礎助成額と

付加的なボーナス(ボイラー交換、効率、複合技術等)で構成される。

表 2-12 ドイツ:市場促進プログラム(BAFA)による助成額

技術 助成額(ユーロ) 太陽熱 (集光器)

表面積 40 ㎡以下 €1,500~3,600 表面積 20~100 ㎡ [集合住宅及び大規模型非住居建物

(新築含む)] €3,600~18,000

表面積最大 1,000 ㎡ [生産過程熱] 純投資額の最大 50% バイオマス ペレットストーブ €1,400~3,600

ペレットボイラー €2,400~3,600 サイロ付チップボイラー €1,400 木質ガス化ボイラー €1,400

ヒートポンプ 海水熱源、水熱源 €2,800~12,300 空気熱源 €1,300~2,100

出典)BAFA 資料をもとに東京海上日動リスクコンサルティング作成

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(2) 施策の施行実績

市場促進プログラムに基づく助成の申請数は、2012 年に年間 75,000 件ほどあり、1.44億ユーロ(173 億円)が助成された。

図 2-4 ドイツ:市場促進プログラムに基づく BAFA の助成総額・申請数

出典)BAFA, “Jahresbericht 2012 / 2013”

2007~2010 年の助成に基づくエネルギー源別の設備容量は以下のとおり。

図 2-5 ドイツ:市場促進プログラム(BAFA)に基づく助成設備容量

出典)連邦環境・自然保護・原子炉安全省, “Erarbeitung einer Integrierten Wärme- und Kälte-strategie”

設置設備容量(MW

バイオマス 太陽熱セントラル

ヒーティング 太陽熱温水器 ヒートポンプ

助成総額 申請数

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(3) 施策の課題

前述の連邦政府による「再生可能エネルギー熱法」の進捗報告書では、市場促進プログラ

ムも評価対象となっており、一年を通したプログラムの継続性が保証されるよう、信頼性向

上に向けた取組みの必要性が指摘されている。

表 2-13 ドイツ:市場促進プログラムの評価 市場促進プログラムの助成の実施は、再生可能エネルギーの市場導入に重要な刺激となり、

今後も続くであろうことを示している。同時に、安定的な市場発展のためには、信頼性が高

い、計画可能な支援が必要であることも示している。 このプログラムは、大規模設備と小規模設備で、異なった方向に発展している。大規模設備

の分野(ドイツ復興金融公庫(KfW)対応、支援の期限無し)では、安定的な市場の発展が

認められている。小規模設備の分野(連邦経済・輸出管理庁(BAFA)対応、2010 年で支援

打ち切り)では、支援の一時的な中止が今日までの市場の不安定さに影響を及ぼしており、

他の要素も含めて、大規模設備のような持続可能な市場発展を妨げている。 信頼性の向上及びその他のツールによる経済的な支援のために以下のような措置が必要であ

ると考えられる: 市場促進プログラムは、熱市場における再生可能エネルギーの拡充及び既に安定した

化石燃料技術と比較した、再生可能エネルギー利用の技術競争力の強化に貢献するも

のである。一年を通したプログラムの継続性が保証されるよう整備されるべきである。 支援は、優先されるべき気候保全目標の達成のために戦略的に使われなければならな

い。さらに、再生可能エネルギーの導入は最も気候変動に影響を及ぼす分野に、場合

によっては、効率化の可能性がない既存建物の分野に、中長期にわたって集中的に行

われることが必要である。 そのため、予算決定者には、相応の法的規制の成立まで、市場促進プログラムの財政

を政府予算及びエネルギー・気候基金(EKF:Energie- und Klimafonds)の資金に

よって確保し、再生可能な熱及び冷熱技術の支援が、これまでと同等水準で継続され

るよう、同プログラムを整備することが求められる。 出典)連邦環境・自然保護・原子炉安全省, “Erfahrungsbericht zum Erneuerbare-Energien-Wärmegesetz

(EEWärmeG-Erfahrungsbericht)”をもとに東京海上日動リスクコンサルティング作成 市場促進プログラムは、2009 年度に、5 億ユーロ(600 億円)を上限として実施され、

受付窓口である BAFA には、前年比 44%増の 12 万件の申請があった。 2010 年度は、連邦政府の当初予算では、2009 年度と同レベルの 4.68 億ユーロ(562 億

円)が充てられていたが、財源である排出権取引による利益減少に伴い、前年度よりも 3分の 1 予算が削られた形で予算が配分されることとなった。その結果、2010 年 5 月にはこ

の予算を費消してしまい、しばらく補助金申請が凍結される事態となった。結果的に、2010年 7 月 7 日に 1.15 億ユーロ(138 億円)の予算追加が決定して補助金申請を再開したが、

こうした経緯を踏まえて政府予算に独立した支援策のあり方が課題として挙げられている。

Page 30: 諸外国の再生可能エネルギー熱政策 - env3 表 1-1 再生可能エネルギー熱の導入目標および導入実績 ドイツ イギリス フランス 再生可能エネルギー導入目標

24

2.2.3 市場促進プログラム②(KfW による再生可能エネルギープログラム)

ドイツの市場促進プログラムでは、主に大規模な再生可能熱設備を対象として、ドイツ復

興金融公庫(KfW、以下 KfW とする)が支援プログラム(再生可能エネルギープログラム・

プレミアム)を提供している。 以下では、KfW による再生可能エネルギープログラム・プレミアムの概要をとりまとめ

る。 (1) 概要

1)支援対象者

再生可能エネルギープログラム・プレミアムの支援対象者は以下のとおり。 個人及び非営利団体(生産された熱を自ら使用する場合) 中小企業 市政機関が大半を出資している企業(売上・従業員の規模が中小企業の閾値以下) 特別に適格とされる方策*に該当する場合にのみ、上記以外の大企業

*深部地熱、大規模太陽熱収集器(>40 ㎡)、地域暖房ネットワーク、大規模蓄熱器(20 ㎥)

地方自治体、地方自治体所有企業、及び地方自治体関連機関 エネルギーサービス企業

申請資格は、当該設備が設置された、または設置される予定の不動産、不動産の一部、建

物または建物の一部の所有者、借家人または賃借人に適用される。また、これらの者から委

託されたエネルギーサービス事業者(請負業者)にも適用される。借家人、賃借人または請

負業者は、当該設備の設置および運転にあたり不動産所有者の書面による許可が必要となる。 なお、支援対象となる設備または設備部品の製造者、連邦政府、連邦州、およびその関連

機関は不適格となる。

2)支援対象エネルギー源

上述の BAFA による制度と同様に、この支援制度は「熱分野における再生可能エネルギ

ー利用支援策に関するガイドライン(Richtlinien zur Förderung von Maßnahmen zur Nutzung erneuerbarer Energien im Wärmemarkt)2」に従っている。 現行制度では、再生可能熱分野では以下の技術が支援対象となっている。

総集熱面積が 40 ㎡超の太陽熱収集システム 定格熱出力が100kW超で熱利用目的の固形バイオマスボイラーのための自動燃料供

給設備

2 原典リンク:

http://www.bafa.de/bafa/de/energie/erneuerbare_energien/vorschriften/energie_ee_richtlinie_20_07_2012.pdf

Page 31: 諸外国の再生可能エネルギー熱政策 - env3 表 1-1 再生可能エネルギー熱の導入目標および導入実績 ドイツ イギリス フランス 再生可能エネルギー導入目標

25

定格熱出力が最大 2MW 以下の厳密な意味での バイオマスコジェネレーション設備 再生可能エネルギー源から供給される地域熱供給ネットワークで、少なくとも年間

500kWh/m2以上の熱販売実績を有するもの 再生可能エネルギーにより供給される、20 ㎥超の大規模蓄熱設備 天然ガス供給網へ取り込むためにバイオガスを天然ガス質へ変換する設備 未処理バイオガス輸送用のバイオガス網(直線距離で 300m以上) 地熱エネルギー(掘削深度 400m超)の開発・利用のための設備及びその他関連費用

地熱エネルギーの熱専用設備(「設備投資補助 (Anlagenförderung)」プログラム) 上記設備の揚水井および注入井(「掘削補助(Bohrkostenförderung)」プログラム) 全設備対象:特別な技術的リスクを伴う掘削計画に対する追加費用(「追加費用

(Mehraufwendungen)」プログラム)

3)支援額

支援対象となる設備に対しては、最大 3 年間までの支払猶予期間がついた固定金利型の

長期低利融資、払い戻し補助金が提供される。対象設備の純投資額の 100%が支援対象とな

り、融資の上限額は通常 1,000 万ユーロ(12 億円)となる。 また、小企業には、より優遇された利子が適用される。

(2) 施策の施行実績

KfW による融資件数、融資額の推移は以下のとおり。2011 年には 2,842 件、総額 5 億ユ

ーロ(600 億円)が、再生可能熱分野の案件に融資された。

表 2-14 ドイツ:市場促進プログラムに基づく KfW の融資件数・融資額 新規融資件数 融資額(百万ユーロ)

2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 熱分野 434 2,137 2,264 2,842 48 298 337 500 電力分野 26,017 36,556 63,214 34,896 2,776 4,609 8,868 6,517 その他 29 18 4 601 386 542 合計 26,451 38,722 65,496 37,742 2,824 5,508 9,591 7,559 ※2009 年・2010 年は電力分野の追加融資案件、2011 年は洋上風力発電への融資。

出典)KfW ホームページより作成

(3) 施策の課題

前述の連邦政府による再生可能エネルギー熱法の進捗報告書では、市場促進プログラムも

評価対象となっている。評価結果は、2.2.2 市場促進プログラム①(BAFA による補助金)、

(3)施策の課題を参照。

Page 32: 諸外国の再生可能エネルギー熱政策 - env3 表 1-1 再生可能エネルギー熱の導入目標および導入実績 ドイツ イギリス フランス 再生可能エネルギー導入目標

26

3. イギリス 3.1 再生可能エネルギー熱政策の概要

3.1.1 再生可能エネルギー導入目標

イギリスは、EU の「再生可能エネルギー利用促進指令(2009/28/EC)」で、2020 年ま

でに最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの導入比率を、15%まで引き上げる

目標が設定されている。この目標達成のために、2008 年 6 月に、イギリス政府は再生可能

エネルギー導入戦略に関するコンサルテーションペーパー(Consultation on the Renewable Energy Strategy)を公表した。

2009 年 7 月 15 日に、イギリス政府は、この 15%目標を達成するための各主体の役割を

示した「再生可能エネルギー戦略(The UK Renewable Energy Strategy)」を公表した。

この戦略の中で実施した分析に基づけば、15%目標は達成可能としており、熱・電力・輸

送燃料の 3 分野について、主要シナリオ(lead scenario)では以下の再生可能エネルギー

導入量を予測している。

表 3-1 イギリス:2008 年実績及び 2020 年予測の最終エネルギー消費量

単位:TWh

分野 2008 年実績 2020 年(主要シナリオの予測)

全エネルギー 再生可能エネルギー 全エネルギー 再生可能エネルギー

電力 387 22 (5.7%) 386 117 (30%)

熱 711 7 (1.0%) 599 72 (12%)

輸送燃料 598 9 (1.5%) 605 49 (10%)

最終エネルギー消費 1,695 39 (2.3%) 1,590 239 (15%)

出典)“The UK Renewable Energy Strategy” P.37 再生可能エネルギー戦略で採用された主要シナリオでは、再生可能エネルギー発電の比率

を、2008 年実績の 5.7%から 2020 年までに約 30%、もしくはそれ以上に引き上げること

を提案している。主要シナリオにおけるエネルギー源別の予測では、このうちの大部分を風

力発電(陸上、洋上)が占めるとしている。また、バイオマス発電も、再生可能エネルギー

発電の 22%を占めると予測している。なお、固定価格買取制度の買取対象となる小規模再

生可能エネルギー発電分は、約 30%のうちの 2%相当を担う予測となっている。 このように電力分野において大きく導入量を伸ばしても、2020 年の最終エネルギー消費

に占める 15%目標を達成するためには、熱分野における導入促進が不可欠であり、熱需要

の 12%を再生可能エネルギーで賄うことを目指したシナリオとなっている。 主要シナリオにおける再生可能エネルギー源別の 2020 年導入予測量は、次ページのとお

りである。

Page 33: 諸外国の再生可能エネルギー熱政策 - env3 表 1-1 再生可能エネルギー熱の導入目標および導入実績 ドイツ イギリス フランス 再生可能エネルギー導入目標

27

図 3-1 イギリス:主要シナリオにおける 2020 年のエネルギーミックスの例示

3.1.2 再生可能熱分野の導入実績

イギリスにおける 2008 年以降の再生可能熱分野の導入実績の推移は以下のとおり。木材

燃焼が大きな比率を占めるが、近年、太陽熱、ヒートポンプも増加している。

表 3-2 イギリス:再生可能熱エネルギーの供給量推移(2008 年~)

単位:ktoe エネルギー源 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 太陽熱 46.8 77.0 97.5 122.4 153.1 バイオマス 868.1 932.1 1,047.7 1,154.0 1,199.1

埋立ガス 13.6 13.6 13.6 13.6 13.6

下水汚泥 49.8 51.0 57.8 66.1 72.1

木材燃焼(家庭) 316.3 344.8 379.6 425.4 456.3

木材燃焼(産業) 220.3 223.4 255.7 281.9 303.3

動物性バイオマス 40.4 38.3 40.3 35.8 31.5

嫌気性消化 2.0 2.0 4.8 9.8 15.1

植物性バイオマス 193.9 227.4 270.0 288.5 275.1

一般廃棄物燃焼 31.8 31.6 25.9 33.0 32.2

地熱 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 ヒートポンプ 2.7 11.3 23.6 39.1 56.1 合計 918.4 1,021.2 1,169.7 1,316.3 1,409.2 出典)エネルギー・気候変動省, ”Digest of UK Energy Statistics 2013”

【電力】 ・電力需要の 30%

・再生可能エネルギ

ーの 49%

【輸送燃料】 ・輸送燃料需要の 10%

・再生可能エネルギーの 21%

【熱】 ・熱需要の 12%

・再生可能エネルギーの 30%

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イギリスでは、上述のとおり、電力分野の再生可能エネルギー比率を 2020 年までに 30%超まで拡大することを目指している。しかし、それでも最終エネルギー消費の 15%を再生

可能エネルギーとするためには、熱分野においても相当の導入増が必要となる。 イギリスが、EU の「再生可能エネルギー利用促進指令(2009/28/EC)」に基づき、欧州

委員会に提出した「国家再生可能エネルギー行動計画」では、2020 年目標達成に向けた熱

分野における再生可能エネルギー導入量を、以下のとおり予測している。

表 3-3 イギリス:熱・電力・輸送燃料分野別の推定指標曲線(~2020 年)

2005 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年

熱分野 (%) 0.7 1.0 1.0 1.0 2.0 2.0

電力分野 (%) 4.7 9.0 10.0 11.0 13.0 14.0

輸送燃料分野 (%) 0.2 2.6 3.4 4.0 4.5 5.3 再生可能エネルギ

ー合計 (%) 1.4 3.0 3.7 4.3 4.8 5.7

内、協力メカニズム によるもの (%) -0.08 -0.08 -0.15 -0.15

内、協力メカニズム への余剰分 (%)

2015 年 2016 年 2017 年 2018 年 2019 年 2020 年

熱分野 (%) 3.0 4.0 5.0 7.0 9.0 12.0

電力分野 (%) 16.0 19.0 22.0 25.0 28.0 31.0

輸送燃料分野 (%) 6.2 7.0 7.8 8.6 9.5 10.3 再生可能エネルギ

ー合計 (%) 6.6 7.8 9.4 11.1 12.9 15.0

内、協力メカニズム によるもの (%)

内、協力メカニズム への余剰分 (%) -0.18 -0.18 0.03 0.03 0.00 0.00

出典)”National Renewable Energy Action Plan for the United Kingdom Article 4 of the Renewable

Energy Directive 2009/28/EC” 上述の行動計画では、個別エネルギー源別の導入量推定も行っているが、イギリスでは、

2020 年までにヒートポンプを 2010 年比で約 12 倍(186→2,254ktoe)、バイオマスも約 12倍(323→3,914ktoe)にすることを掲げている。他方、地熱、太陽熱については、導入量

増加を想定していない点が特徴的である。

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表 3-4 イギリス:再生可能熱分野の最終エネルギー消費量推定(~2020 年) 単位:ktoe

2005 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 地熱 (低温地中熱源はヒ

ートポンプに分類) 0.8 n/a n/a n/a n/a n/a

太陽 29 34 34 34 34 34

バイオマス 560 323 387 471 584 739

固形 493 305 365 444 551 697

バイオガス 67 18 22 27 33 42

液体バイオマス(*)

ヒートポンプ n/a 186 222 270 334 423

内、大気熱 n/a 66 79 96 118 150

内、地中熱 n/a 120 143 174 216 273

内、水熱 n/a n/a n/a n/a n/a n/a

合計 590 518 621 756 937 1,186

内、地域暖房 n/a 42 51 62 77 97

内、家庭バイオマス n/a 33 40 48 60 76

2015 年 2016 年 2017 年 2018 年 2019 年 2020 年 地熱 (低温地中熱源はヒ

ートポンプに分類) n/a n/a n/a n/a n/a n/a

太陽 34 34 34 34 34 34

バイオマス 958 1,247 1,663 2,204 2,997 3,914

固形 904 1,161 1,548 2,052 2,765 3,612

バイオガス 54 86 115 152 232 302

液体バイオマス(*)

ヒートポンプ 548 775 1,034 1,370 1,726 2,254

内、大気熱 194 342 456 604 996 1,301

内、地中熱 354 433 578 766 730 953

内、水熱 n/a n/a n/a n/a n/a n/a

合計 1,537 2,039 2,719 3,604 4,746 6,199

内、地域暖房 126 102 136 181 176 230

内、家庭バイオマス 98 222 296 392 543 709

(*)液体バイオマスの推計値については、計画策定時点で入手不可。 出典)”National Renewable Energy Action Plan for the United Kingdom Article 4 of the Renewable

Energy Directive 2009/28/EC”

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30

3.1.3 再生可能熱分野における促進施策体系

イギリスでは、2012 年以降、再生可能熱インセンティブ(RHI)と呼ばれる従量制のイ

ンセンティブ制度で、再生可能熱の導入促進を図っている。但し、2013 年時点で、再生可

能熱インセンティブ制度が家庭部門を対象としていないため、暫定的に家庭部門を対象とし

た再生可能熱プレミアムペイメント(RHPP)と呼ばれる設置費を補助する制度が導入され

ているが、2014 年度以降は再生可能熱インセンティブ制度に統合される予定である。

表 3-5 イギリス:再生可能熱分野における主な促進施策の支援対象 エネルギー源

主な促進施策 太陽熱 地熱 ヒートポンプ バイオマス バイオガス バイオマス

CHP

再生可能熱インセンティブ (RHI)

○ 併用可

○ ○ ○ ○

再生可能熱プレミアムペイメント (RHPP)

○ ○ ○ ○ ○ 併用不可

エネルギー企業義務 (ECO)

○ ○

Renewables Obligation (RO)

図 3-2 イギリス:熱戦略のタイムライン

出典)エネルギー・気候変動省(DECC), “The Future of Heating: Meeting the challenge”

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31

3.2 個別支援施策の概要・効果

3.2.1 再生可能熱インセンティブ(非家庭部門)

イギリスでは 2008 年 11 月公布の「2008 年エネルギー法(Energy Act 2008)」第 100条により、再生可能熱に対する財政的インセンティブ制度(RHI: Renewable Heat Incentive)を導入する権限がエネルギー担当の国務大臣に付与された。2010 年に実施され

たコンサルテーションを受けて、2011 年 3 月 10 日にこの「再生可能熱インセンティブ制

度」の詳細が公表された。 当初、再生可能熱インセンティブ制度は、全ての再生可能熱を対象として、2011 年から

施行することを目指して議論が進められてきた。しかし、最終的には、非家庭部門における

大規模熱生産事業者と、家庭部門における熱利用者を分けて、段階的に支援制度を導入する

ことになった。 以下では、2011 年に先行して支援制度を導入した非家庭部門における大規模熱生産事業

者を対象とした支援制度である再生可能熱インセンティブ(RHI)制度の概要を紹介する。 (1) 概要

1)根拠法令

上述のとおり、「2008 年エネルギー法」に基づき、エネルギーの国務大臣には再生可能熱

インセンティブに関する枠組みの規則を策定する権限が与えられている。

表 3-6 イギリス:2008 年エネルギー法:第 100 条 再生可能熱インセンティブ

第 100 条 再生可能熱インセンティブ (1) 国務大臣は以下の規則を作成することができる—

(a) 再生可能熱生産を促進し振興するための枠組みを確立する、及び (b) 当該枠組みの管理及び資金供給に関する事項

出典)Energy Act 2008 2013年8月現在、”Statutory Instruments 2013 No. 1033, The Renewable Heat Incentive Scheme (Amendment) Regulations 2013”が実施規則となる。 2)支援対象者、対象設備

全ての非家庭部門の主体(商工業部門、公的部門、非営利団体、イングランド・スコット

ランド・ウェールズにおける自治体を含む)により設置された、2009 年 7 月 15 日以降に

完成した新規の再生可能エネルギー熱生産設備が対象となる。 なお、制度が導入された 2011 年 11 月 28 日以前に完成した設備は、制度導入日に設備の

据付が完了したとして申請を行う。

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32

3)支援対象エネルギー源

2011 年に先行して「フェーズ 1」として導入された非家庭部門を対象とした再生可能熱

インセンティブ制度では、下記の再生可能エネルギー源が支援対象となっている。

表 3-7 イギリス:再生可能熱インセンティブ(非家庭部門)支援対象

適格エネルギー源 技術固有の要件 適格規模要件 固形バイオマス バイオマス専焼として設計・設置さ

れたボイラーであること 固形バイオマスで熱生産すること

設備容量制限なし 但し、45kWth 以下の設

備は MCS 認証が必要 固形バイオマス (都市固形廃棄物 を含む)

非都市固形廃棄物を含む固形バイオ

マスにより熱生産しないこと

設備容量制限なし

地中熱ヒートポンプ

及び 水熱ヒートポンプ

自然起源エネルギーであること 成績係数(COP)が 2.9 以上 循環型ヒートポンプは、熱のみを計

測し、冷却は計測しないこと 地表面より 500m 以下に位置し、抽

出するエネルギーを使わないこと

設備容量制限なし 但し、45kWth 以下の設

備は MCS 認証が必要

地熱 地表面より 500m 以下に位置し、抽

出する自然起源のエネルギーにより

熱生産を行うこと

設備容量制限なし

太陽熱 集熱器の形式が、平板型もしくは真

空管型 200kWth 未満の設備 但し、45kWth 以下の設

備は MCS 認証が必要 バイオガス燃焼 嫌気性消化、ガス化、熱分解起源

埋立ガス起源バイオガスは使用不可 固形バイオマスの熱生産がないこと

200kWth 未満の設備

コージェネ 以下のいずれかの技術であること ►地熱、バイオガス、 固形バイオマス(都市固形廃棄物含む)

且つ、 ►当該エネルギー源の要件を満たすこと RO 制度の認定設備は不適格

出典)電力・ガス市場規制局(Ofgem)資料をもとに東京海上日動リスクコンサルティング作成 上表のとおり、設備容量 45kWth 以下の固形バイオマス、地中熱/水熱ヒートポンプ、太

陽熱設備は、Microgeneration Certificate Scheme(以下、MCS とする)と呼ばれる産業

界主導の独立の認証プログラムを用いて設備認定を行うことが要件となっている。 なお、MCS の概要は、本報告書巻末の添-1を参照。 4)支援額

支援対象設備には、その適用技術や設備規模に応じて熱量(kWhth)ごとに設定された

買取価格を踏まえ、20 年間にわたり支払が行われる。支払は四半期ごとに、対象設備の所

有者に対して行われる。なお買取価格は、年毎に小売物価指数に連動してインフレ調整が加

えられる。

Page 39: 諸外国の再生可能エネルギー熱政策 - env3 表 1-1 再生可能エネルギー熱の導入目標および導入実績 ドイツ イギリス フランス 再生可能エネルギー導入目標

33

2013 年度に適用される買取価格は下表のとおり。

表 3-8 イギリス:再生可能熱インセンティブ制度の買取価格(2013 年度)

適用技術 適用設備規模 買取額(ペンス/kWh)

2013 年 4 月~ 2013 年 7 月~

小規模バイオマス 固形バイオマス

都市固形廃棄物

(CHP を含む)

200kWth 未満 第 1 段階:8.6 第 1 段階:8.6

第 2 段階:2.2 第 2 段階:2.2

中規模バイオマス 200kWth 以上

1,000kWth 未満

第 1 段階:5.3 第 1 段階:5.0

第 2 段階:2.2 第 2 段階:2.1

大規模バイオマス 1,000kWth 以上 1.0 1.0

小規模地熱 地中熱ヒートポンプ

水熱ヒートポンプ

深層熱

100kWth 未満 4.8 4.8

大規模地熱 100kWth 以上 3.5 3.5

太陽熱 太陽熱 200kWth 未満 9.2 9.2

バイオメタン

埋立ガスを除く

バイオメタン投入、

バイオガス燃焼

バイオメタンは制限なし

バイオガス燃焼は

200kWth 未満

7.3 7.3

出典)電力・ガス市場規制局(Ofgem)資料をもとに東京海上日動リスクコンサルティング作成

なお、1,000kWth 未満の固形バイオマス・都市固形廃棄物を燃料とするボイラーには、2段階の買取価格が設定されている。この 2 段階の買取価格の意図について、エネルギー・

気候変動省(DECC:Department of Energy and Climate Change)の政策文書では、バ

イオマス設備が熱の過剰生産により必要以上の支払を受けることのインセンティブを減ら

すためとしている。 2段階の買取価格は、当該設備の認定日から 12ヶ月単位で運用される。12ヶ月間のうち、

1,314 ピークロード時間の熱生産分には「第 1 段階」の高い買取価格が、それ以上の熱生産

分には「第 2 段階」の低い価格が適用される。この 1,314 ピークロード時間は、年間の負

荷率 15%に相当し、暖房用に導入する再生可能エネルギー熱システムの適切な使用水準に

相当することが根拠とされている。

5)買取対象とする熱量の決定方法

買取対象とする熱量の計測は、メーターによる測定が義務付けられている。 敷地外の建物やボイラー等の設備からの熱を用いる場合、消費地点における熱量計測が必

要であり、熱搬送における損失熱を除いた熱消費量に応じて、価格が支払われる。熱量の計

測にあたっては、制度の施行機関である電力・ガス市場規制機関(Ofgem)に対して、再

生可能エネルギー熱設備の概要に加えて、熱量を計測するメーターの仕様を報告することが

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34

求められる。 買取対象とする熱量の決定方法には、「単純」方式と「複合」方式のどちらかを選択する。

単純方式

単純に以下の計算式で、支払額を決定する。 支払額 = 買取価格 × 再生可能熱生産設備の熱生産量

複合方式

買取対象とする熱生産量を計算を以下の計算式で計算する。 システムでの適格熱使用量×再生可能熱生産設備の熱生産量 / システムでの総熱生産量

6)予算額

再生可能熱インセンティブ(RHI)制度にかかる追加費用は政府支出から直接支出されて

おり、現行の歳出見直し期間の 4 年間については年度予算が割り当てられている。 2014 年度までの予算額は下表のとおり。

表 3-9 イギリス:再生可能熱インセンティブ制度の予算額

年度 予算額(百万ポンド) 2011 年度 56 2012 年度 133 2013 年度 251 2014 年度 424

合計 864 (1,210 億円) 出典)電力・ガス市場規制局(Ofgem)資料をもとに東京海上日動リスクコンサルティング作成 なお、上記の予算には、再生可能熱プレミアムペイメント(RHPP)の 2011 年度予算と、

最高で 2,500 万ポンド(35 億円)の第 2 期再生可能熱プレミアムペイメントの予算(主と

して 2012 年度中の支出が見込まれているが、2013 年度に一部を支出することも可能)が

含まれる。 この予算は、2020 年に再生可能エネルギー由来の熱が熱需要の 12%を占めるために必要

な予想成長曲線に基づいて設定されている。それぞれの年度予算は、その年に再生可能熱イ

ンセンティブ認可設備で生産された再生可能熱に対して支払われるための金額である。新た

に制度に参加する設備に対して、その年以降も本制度の適用を受けている限り支援し続けな

くてはならない。 2015 年以降の予算は、通常の歳出見直しプロセスの一環として設定され、再生可能熱イ

ンセンティブが再生可能熱の拡大を支援し続けられるよう、既設・新設設備に対する支援費

用が含まれることになる。なお、本予算は、次年度への繰越が認められていない。

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35

(2) 施策の施行実績

2011 年 11 月 28 日に申請受付を開始した再生可能熱インセンティブ制度は、安定的に申

請数は推移しており、2013 年 3 月末までに 1,238 設備が認定を受けている。 四半期ごとの認定設備容量および支払額の推移は以下のとおり。

図 3-3 イギリス:再生可能熱インセンティブ制度の設備容量、支払額

出典)電力・ガス市場規制局(Ofgem), “Renewable Heat Incentive Annual Report, July 2013” 認定設備の内訳を見ると、設備数の比率では、固形バイオマスボイラーが 92%超を占め

ている。

図 3-4 イギリス:認定設備のエネルギー源別比率(設備数)

出典)電力・ガス市場規制局(Ofgem), “Renewable Heat Incentive Annual Report, July 2013”

固形バイオマスボイラー

水熱ヒートポンプ

太陽熱

バイオメタン

地中熱ヒートポンプ

バイオガス

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36

(3) 施策の課題

① 買取価格の見直し

2013 年 5 月に、エネルギー・気候変動省(DECC)は、再生可能熱インセンティブ制度

における買取価格の見直しに関するコンサルテーション3を実施した。その中で、2011 年

11 月の申請開始移行、一部の技術(エネルギー源)では十分な普及が進んでいるが、総じ

てコンサルテーション時点までの実績は予想を下回っていると評価している。 下表の②が、2013 年 4 月 30 日までに申請されたデータに基づく、エネルギー源別の年

間支払額の状況である。それに対して、下表の①は、エネルギー・気候変動省(DECC)に

よる再生可能エネルギー戦略で想定された導入量に基づく支払額である。小・中規模のバイ

オマスボイラーは予測を上回る導入が進んでいる一方で、その他のエネルギー源では、予測

を大きく下回る状況となっている。

表 3-10 イギリス:再生可能熱インセンティブ制度の予算消化状況

エネルギー源

①次年度支払額予測 (百万ポンド)

②実質予測支払額 (百万ポンド)

左記①/② (%)

2020 年熱目標達成の

ための DECC の方針

に合致

Ofgem 提供の実質

データにもとづく 支払額予測に

対する実質予

測支払額比 小規模バイオマス (200kW 未満)

14.8 18.6 126%

中規模バイオマス (200kW 以上 1MW 未満)

13.4 22.6 169%

大規模バイオマス (1MW 以上)

23.1

5.2 23%

小規模地中熱源ヒートポンプ (100kW 未満)

28.9 0.4 1%

大規模地中熱源ヒートポンプ (100kW 以上)

4.9 0.5 10%

太陽熱 (200kW 未満)

4.9 0.04 1%

【見直し検討対象外】 バイオメタン(全規模)及びバ

イオガス(200kW 未満)

12.0 1.6 13%

出典)エネルギー・気候変動省, “Renewable Heat Incentive: Non-Domestic Scheme Early Tariff Review”

3 “Renewable Heat Incentive: Non-Domestic Scheme Early Tariff Review”

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こうした分析結果をもって、2013 年 5 月に公表されたコンサルテーションペーパーでは、

大規模バイオマスボイラー及び地中熱源ヒートポンプに適用する買取価格を引き上げるこ

とが提案されている。

表 3-11 イギリス:再生可能熱インセンティブ制度の買取価格改定案

エネルギー源 現行買取価格

(ペンス/kWh)

改定買取価格 〔2014 年度案〕 (ペンス/kWh)

バイオマス ボイラー

小規模 (200kW 未満)

第 1 段階: 8.6 第 2 段階: 2.2

変更なし

中規模 (200kW以上1MW未満)

第 1 段階: 5.3 第 2 段階: 2.2

大規模(1MW 以上) 1.0 2.0 地中熱源

ヒートポンプ 小規模(100kW 未満) 4.8 7.2~8.2 大規模(100kW 以上) 3.5

太陽熱(200kw 未満) 9.2 10.0~11.3 出典)エネルギー・気候変動省, “Renewable Heat Incentive: Non-Domestic Scheme Early Tariff Review”

この買取価格改定の背景であるが、大規模バイオマスボイラーは、当初の買取価格が低す

ぎて、目標としている投資利益率 12%に届かないと評価された。2011 年の制度開始時の買

取価格設定の際に、欧州委員会からの要求を受けて買取価格を当初提案の 1kWh あたり 2.7ペンス(3.8 円)から 1 ペンス(1.4 円)に引き下げた経緯があった。その後に、エネルギ

ー・気候変動省(DECC)が集めた証拠では、事業例は投資利益率が 12%に達していなか

ったこと、費用見積が当初価格の前提となった仮定よりも高かったこと等が示された。こう

した検討を踏まえて、2 ペンス(2.8 円)/kWh への買取価格引き上げが提案された。 また、地中熱源ヒートポンプについても、エネルギー・気候変動省からの委託でモデルを

更新したところ、目標達成に向けては 10.8 ペンス(15.1 円)/kWh、または 11.7 ペンス(16.4円)/kWh の買取価格が必要となる結果を示した。加えて、関連業界は 8.0 ペンス(11.2 円)

/kWh、または 10.7 ペンス(15 円)/kWh まで買取価格を引き上げないとインセンティブが

十分でないとの証拠を提出した。 このように当初の買取価格設定における仮定条件と実際のコスト等との乖離が、予測どお

りに導入が進まなかった要因として分析されている。 なお、太陽熱の買取価格の改定は、再生可能熱インセンティブにおける買取価格の経済性

を判断する際の合理的なベンチマークである、洋上風力発電の発電コストのデータの上昇を

反映させたものである。洋上風力発電の発電コストがベンチマークとして選ばれた理由は、

当該コストがイギリスにおける2020年の再生可能エネルギー導入目標を達成するための限

界費用として考えられているためである。太陽熱は、この洋上風力発電の費用を上回ってい

ると想定されているため、洋上風力発電のコスト上昇に伴い、買取価格が引き上げられた。

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② 予算管理方法

再生可能熱インセンティブ制度は、当初は政府支出(予算)から独立した形での支援制度

を目指し、エネルギー供給料金への上乗せ(課徴金)方式が検討された。しかしながら、最

終的には、制度の追加費用は政府支出から直接支出される制度となった。 そのため、2012 年 3 月には、支出額が予算上限に達してしまった場合の対応方法につい

てコンサルテーション4が行われた。年度中に予算上限に達した場合には、新規設備の申請

受付を中断することが想定され、その際の市場の混乱を避けるための対策が検討された。 コンサルテーション時点では、2012 年度には認可済みの施設に対して約 1,500 万ポンド

(21 億円)の支出を見込み、操業を始める新設設備分も合わせて再生可能熱インセンティ

ブ制度にかかる費用は約 4,000 万ポンド(56 億円)と予測している。そのため、新規導入

が予測通りであれば、コンサルテーションで検討された暫定的なコストコントロール(支出

抑制)方策は必要なく、停止措置が発動されることもないだろうと見越していた。 しかし、中長期的には、こうしたコストコントロールの手法が必要になる考えられており、

政府は導入増加量と市場全体を慎重に監視し、政府にとって予想できない事態を避け、将来

的に政策をしかるべく改善できるようにするとしている。

4 “The Renewable Heat Incentive: consultation on interim cost control”

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3.2.2 再生可能熱プレミアムペイメント

上述のとおり、再生可能熱インセンティブ(RHI)は、2013 年 8 月時点で、家庭部門を

支援対象としていない。イギリスでは、普及が急がれる再生可能エネルギー熱利用を促進す

るため、家庭部門向けの再生可能熱インセンティブが施行されるまでの暫定措置として、再

生可能熱プレミアムペイメント(RHPP:Renewable Heat Premium Payments)と呼ばれ

る制度が導入された。当初は 2013 年 3 月末までを予定していたが、再生可能熱インセンテ

ィブ制度の家庭部門への拡大が遅れたために、2014 年 3 月末まで延長されている。 本制度の実施期間中に再生可能熱設備を設置する場合、一定の条件を満たせばバウチャー

が発行される。申請者が有効期間内に設備を設置し、必要書類とともに運営機関である

Energy Saving Trust にバウチャーを提出すると助成金を受け取ることができることにな

っている。 この再生可能熱プレミアムペイメントには、個人家屋所有者への支援に加えて、非営利家

主(Social Landlord)向けの競争入札の制度もあるが、本項では個人家屋所有者について

概要と施行状況をとりまとめる。 (1) 概要

1)支援対象者

再生可能熱プレミアムペイメントは、基本的な省エネ対策を実施済みの家屋所有者を対象

とした再生可能熱設備の設置費用を助成する制度である。 助成を申請するための所定の要件は以下のとおり。

申請者が本拠としている住居であること 基本的な省エネ方策(250 ミリの屋根裏断熱と中空壁断熱)を導入していること 新築住居の場合、居住者または家主として当該住居の所有権を有していること 賃借者の場合、家主の了承を得た上で、自らの負担により設備を設置すること

なお、太陽熱設備を設置する家屋については、イングランド、スコットランド、ウェール

ズの家屋所有者がすべて対象となる。他方、バイオマスボイラーやヒートポンプは集中暖房

が普及していない家屋所有者が対象となる(現在配ガス網に接続しておらず、暖房を石油、

液化ガス、固形燃料、電気に頼っている世帯)。 2)支援対象エネルギー源、対象設備

対象エネルギー源としては、バイオマスボイラー、ヒートポンプ、太陽熱機器が対象とな

る。但し、ヒートポンプのうち、空-空式ヒートポンプ、排気式ヒートポンプは除外される。 導入する再生可能熱設備は、Microgeneration. Certification Scheme(MCS)の認証を

受けたものでなくてはならず、MCS の認証を受けた業者か同等の業者によって設置されな

くてはならない(MCS の概要は本報告書巻末の添-1を参照)。 また、申請者は熱量計を設置することに同意しなくてはならない。設備の稼動開始から、

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設置直後とフォローアップ期間の 2 度、調査に協力することが求められる。政府は熱量計

から得られるデータを活用することを本制度の大きな目的としており、熱量計の設置費用は

制度の施行機関である Energy Saving Trust が負担する。熱量計の設置は熱量測定チーム

か、その資格を与えられた業者が実施する。熱量計の設置や、設置後の調査への協力を拒む

場合、助成金の返還を求められる。 3)支援額

支援に適格な家屋所有者に対しては、エネルギー源に応じて規定された、以下の金額のバ

ウチャーが交付される。

表 3-12 イギリス:再生可能熱プレミアムペイメントの助成額

単位:ポンド

エネルギー源 助成額 バウチャー

有効期間 ~2013/5/19 2013/5/20~ 太陽熱 £300 (4.2 万円) £600 (8.4 万円) 3 ヶ月 バイオマスボイラー £850 (11.9 万円) £1,300 (18.2 万円) 6 ヶ月 空気熱ヒートポンプ £1,250 (17.5 万円) £2,300 (32.2 万円) 5 ヶ月 地中熱・水熱ヒートポンプ £950 (13.3 万円) £2,000 (28.0 万円) 6 ヶ月 出典)Energy Saving Trust 資料をもとに東京海上日動リスクコンサルティング作成 第 2 期となる 2012 年 5 月 1 日以降、例えばヒートポンプを導入する場合、申請時にバウ

チャー所定額の 80%を受け取ることができる。申請の際、当該設備が“熱量計を設置する

準備ができている”状態であること示す、設置業者の署名入りのチェックリストを添付しな

くてはならない。残りの 20%は、本当に“熱量計を設置する準備ができている”かを測定

チームが確認して熱量計を設置した後か、もしくは彼らの代理として訓練を受けた設置業者

が熱量計を設置した後に受け取ることになる。 まだ熱量計を設置する段階にない場合、残りの 20%は設置終了時に受け取ることになる。

すべての設備の設置とバウチャーの換金は、バウチャーの有効期限または 2014 年 3 月 31日のどちらか早いほうまでに終えなくてはならない。2014 年 3 月 31 日以降、すべてのバ

ウチャーが無効となる。 4)支援の申請手続き

ウェブサイト経由または電話により、施行機関である Energy Saving Trust に申請を行

う。条件を満たしていればバウチャーが手元に届く。数ヶ月の所定期限内に、サインしたバ

ウチャーに、MCS 証書と請求書のコピーを添付して Energy Saving Trust に提出すること

で、バウチャーを換金することができる。

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申請から助成金の受け取りまでは以下の手順となる。

所定条件を満たしていることを確認の上、Energy Saving Trust に申請する バウチャーが申請者に届く 適格な再生可能エネルギー熱設備を設置する(技術により 3~6ヶ月間の猶予がある) バウチャーにサインし、必要書類とともに Energy Saving Trust に提出 助成額を受け取る

また、第 2 期(2012 年 5 月~)におけるヒートポンプの手順は以下のとおり。

所定条件を満たしていることを確認の上、Energy Saving Trust に申請する バウチャーが申請者に届く 再生可能熱設備を設置する(技術により 5~6 ヶ月間の猶予がある) 熱量計を設置できる段階になったら、バウチャーにサインし、必要書類とともにEnergy

Saving Trust に提出 助成金の 80%を受け取る 熱量計を設置する 助成金の残り 20%の額を受け取る

5)予算額

第 1 期(2011 年 8 月~2012 年 3 月)は、予算 1,500 万ポンド(21 億円)に対して発行

されたバウチャーの総額が約 550 万ポンド(7.7 億円)であった。第 2 期(2012 年 5 月~

2013 年 3 月)の予算は 2,500 万ポンド(35 億円)となっている。

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(2) 施策の施行実績

再生可能熱プレミアムペイメントは、第 1 期(2011 年 8 月~2012 年 3 月)と第 2 期(2012年 5 月~2014 年 3 月)に分けられる。 第 1 期に発行されたバウチャーは 7,253 件で総額 5,479,750 ポンド(7.67 億円)分であ

った。そのうち実際に換金されたバウチャーは 5,369 件で、第 1 期の予算である 1,500 万

ポンド(21 億円)には達しなかった。 また、2013 年 2 月 18 日時点で、第 2 期に発行されたバウチャーは 5,758 件で総額

4,051,250 ポンド(5.67 億円)分であった。そのうち実際に換金されたバウチャーは 3,488件となっている。技術ごとのバウチャー発行状況は下図のとおりである。

第 1 期 第 2 期(2013 年 2 月 18 日時点)

図 3-5 イギリス:再生可能プレミアムペイメントの対象エネルギー源別比率

出典)Energt Saving Trust, “Renewable Heat Premium Payment Scheme Statisitics as at Phase 1

Closure” 第 2 期の予算は 2,500 万ポンド(35 億円)で、予算上限に達した場合、申請の受付は締

め切られる。

太陽熱

太陽熱

バイオマス バイオマス

空気熱源

ヒートポンプ 空気熱源

ヒートポンプ

地中熱源

ヒートポンプ 地中熱源

ヒートポンプ

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3.2.3 再生可能熱インセンティブ(家庭部門)

2013 年 9 月現在、詳細な制度設計の作業が進められている家庭部門を対象とした再生可

能熱インセンティブ制度は、主にガス網に接続していない住宅を対象とした、資金補助制度

である。本制度では、暖房システム所有者に対して、産出された再生可能熱(kWh)の固

定価格買取を行う。対象となる設備は、MCS(Microgenation Certification Scheme)によ

る認定を受け、技術ごとの関連基準に合致している必要がある。 以下では、2013 年 9 月時点で入手可能な情報をもとに制度概要をとりまとめる。 (1) 概要

1)支援対象者、対象設備

本制度の対象は、家屋の所有者、個人家主、社会住宅の登録供給事業者、ヒーティングシ

ステムの第三所有者、自宅を自身で建設する者である。新築の建物は対象外である。2009年 7 月 15 日以降に設置された設備も申請対象となる。 また、エネルギー効率を確保した住宅であることを保証するため、屋根裏・中空壁断熱の

最低エネルギー効率を満たし、下図のスキームにあるような Green Deal 評価を完了して

いることが要件となる。

図 3-6 イギリス:Grean Deal の流れ

出典)環境省、『住宅・建築物 WG とりまとめ』、「2013 年以降の対策・施策に関する検討小委員会」平成

24 年 3 月 23 日資料 このイギリスにおける Grean Deal 制度は、家庭や事業所等が初期投資の負担なく断熱材

等の省エネ設備や再生可能エネルギー設備を導入し、その費用を電気・ガス料金から返済で

きるようにする制度である。

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2)支援対象エネルギー源

支援対象エネルギー源は、原則としてこれまで実施してきた再生可能熱プレミアムペイメ

ントと同様である。

表 3-13 イギリス:再生可能熱インセンティブ(家庭部門)支援対象

エネルギー源 備考 地中熱・水熱ヒートポンプ、及び 空気熱ヒートポンプ

ヒートポンプによる冷房は対象外

バイオマス暖房システム バイオマス専焼ボイラー(固形バイオマス) バイオマスパレットストーブ

太陽熱 真空式及び平板式集熱器 出典)エネルギー・気候変動省(DECC)ホームページより作成

なお、バイオマス暖房システムを新たに設置する場合、粒子状物質(PM)と窒素酸化物

(NOx)に関して、大気質基準を満たす必要がある。但し、2009 年 7 月 15 日から制度開

始日までに設置された申請設備に関しては、これを満たす必要はない。システムは、最大許

可排出上限である、PM 30g/GJの正味熱入力及び窒素酸化物 150g/GJを超えてはならない。

再生可能熱インセンティブ制度に認定されると、システムは新法令の適用除外となる。つま

り、EU または国際的な規制・義務に関しては順守する必要はあるが、再生可能熱インセン

ティブ制度で排出上限が今後改正されても、新しい基準を順守する必要はない。 また、再生可能熱インセンティブ制度でバイオマスの認定を受け、補助金を受領し続ける

には、バイオマス燃料は認定されたリストに登録された供給業者からのものでなくてはなら

ない。当該リストは、非家庭部門を対象とした再生可能熱インセンティブ制度で作成された

ものと同様のリストが制度開始に先立ち作成される。補助金の受領者は、認定された供給業

者から認定された燃料を使用していることを年に 1 度申告し、今後の監査のため、書類を

保存する必要がある。

3)支援額

2013 年 7 月にエネルギー・気候変動省が公表した「Domestic Renewable Heat Incentive: the first step towards transforming the way we heat our homes」では、支援対象設備は、

7 年間にわたり技術種類ごとの下記の買取価格を受領することができる。

表 3-14 イギリス:再生可能熱インセンティブ制度の買取価格(2013 年度)

空気熱

ヒートポンプ バイオマス

地中熱・水熱

ヒートポンプ 太陽熱

買取価格

(ペンス/kWh)

7.3 (10.2 円)

12.2 (17.1 円)

18.8 (26.3 円)

19.2 (26.9 円)

出典)エネルギー・気候変動省(DECC)ホームページより作成

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前回の 2012 年 9 月に実施したコンサルテーション以降、再生可能熱プレミアムペイメン

ト(RHPP)などのデータを加味し、買取価格が引き上げられた。制度施行後、買取価格は

毎年、消費者物価指数(RPI:Retail Price Index)を参考に改定され、再生可能エネルギ

ー熱インセンティブ制度の最終的な買取価格に関しては、2013 年秋以降に発表される予定

となっている。 実際の買取金額は、推計量を用いて算定される。以下に、エネルギー源別の算出方法につ

いてとりまとめる。 ① ヒートポンプ

再生可能熱インセンティブ制度におけるヒートポンプからの買取は、設営時の推計熱利用

量にもとづき実施される5が、買取の対象となるのは熱生成の再生可能部分のみである。再

生可能部分は、当該ヒートポンプの効率によって決定される。 ヒートポンプの年間平均効率を示す単位は季節性能係数(SPF:Seasonal Performance

Factor、以下、SPF)といい、通常 2.5~4 の間で示される。買取の対象となる有効な熱需

要量は、下記の式を使って算出される。

有効熱需要量 = 合計熱需要量 × (1-1/SPF)

SPF は、システムが生成する、単位発電量あたりの熱量である。つまり、SPF が 3 のヒ

ートポンプであれば、熱量の 3 分の 2 は再生可能となり、再生可能熱インセンティブ制度

における買取の対象となる。 制度開始後に設置されたヒートポンプに関しては、MCS 設置事業者がシステムの性能を

認定する必要がある。設置事業者が登録した等級は、設置プロセスの一環として、設備所有

者に公布される。現在、具体的な方法については、MCS と協議中であるが、MCS を通じ

たヒートポンプ設置時に使用される、Heat Emitter Guide6の星評価の等級システムに基づ

いたものとなる予定である。 制度開始前に設置されたヒートポンプに関しては、SPF はデフォルトで 2.5 に設定され

ているが、より高い等級の認定を受けたい申請者は、MCS 設置事業者による正式な評価を

受ける必要がある。 また、物件の所有者は、認定を受けた設置事業者による「Metering and Monitoring

Service Package」に加入するため、年 230 ポンド(3.2 万円)の補助金を追加で受領する

ことができる。このサービス契約は、保守サービス契約のようなものである。設置事業者は

新しいヒーティングシステムにメーターを設置し、物件の所有者と設置事業者がインターネ

ットを通じて、システムで測定されたデータを閲覧することができるようにするものである。

5 別の化石燃料・再生可能暖房システムと併用されている場合、もしくはセカンドハウスの場合は、実際

に検針された再生可能熱消費量を使用する。但し、推計再生可能熱消費量を上限とする。 6 http://www.gshp.org.uk/pdf/MIS_3005_Heat_Emitter_Guide.pdf

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表 3-15 イギリス:再生可能熱インセンティブでのヒートポンプへの買取価格例

年間熱需要量合計 = 15,000 kWh 例1 Hear Emitter Guide で 3 つ星である空気熱ヒートポンプ

= SPF 2.7 有効熱需要量 = 15,000 kWh × (1-1/2.7) = 9,444 kWh 合計年間買取額 = 9,444 kWh × 7.3p/kWh = £689

例 2 Hear Emitter Guide で 5 つ星である空気熱ヒートポンプ

= SPF 3.4 有効熱需要量 = 15,000 kWh × (1-1/3.4) = 10,588 kWh

合計年間買取額 = 10,588 kWh × 7.3p/kWh = £773 出典)エネルギー・気候変動省(DECC)資料より作成

② バイオマス

バイオマス暖房システムの熱生成量は、EU の再生可能エネルギー利用促進指令

(2009/28/EC)のもと、再生可能であるとみなされる。このため、買取は、設営時の推計

熱利用量にもとづき、実施される 。 家庭向けバイオマスボイラーに関しては、認定を受けた設置事業者による「Metering and

Monitoring Service Package」に加入するため、物件の所有者は年 200 ポンド(2.8 万円)

の補助金を追加で受領することができる。パッケージの内容については、ヒートポンプと同

様である。 ③ 太陽熱

太陽熱システムによって生成された熱出力はすべて、再生可能であるとみなされる。MCS設置の際に達成されたシステム性能の推計量(MCS 証書に記載)を用いて、買取量が算出

される。

4)再生可能熱プレミアムペイメントにおける支援額との整合性

イギリスでは、家庭部門を対象とした再生可能熱インセンティブ制度が始まるまでの暫定

的な支援措置として、再生可能熱プレミアムペイメント制度が実施されていた。再生可能熱

プレミアムペイメント制度は、再生可能熱設備の設置費用のバウチャーを提出し、助成金を

換金する仕組みであった。 しかし、家庭部門を対象とした再生可能熱インセンティブ制度の支払期間は 7 年間にお

よぶため、再生可能熱設備の初期投資に関しては、申請者が資金を準備する必要がある。申

請者が、預金や、再生可能熱インセンティブにより将来的に受け取る支払いを原資とした抵

当権の拡張およびローンなど、様々な資金を利用することを期待している。 家屋所有者にとって、Green Deal は、再生可能熱設備導入の資金の一部を調達する方法

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となりえる。Green Deal では、再生可能熱設備などの省エネ対策費用の補てんを、光熱費

の削減により実施する。再生可能熱設備の費用に対して供与される Green Deal の補助は、

当該物件に設置された設備による燃料費の節減による。Green Deal の資金供与を受け、再

生可能熱インセンティブを請求することもできるので、リース契約等や初期費用なく再生可

能熱設備の設置が可能となるケースが期待されている。 再生可能熱インセンティブ制度の買取価格設定にあたっては、2012 年 9 月のコンサルテ

ーションペーパー「The Renewable Heat Incentive : Consultation on proposals for a domestic scheme」において、買取期間は 7 年、四半期ごとの支払いとし、化石燃料を使用

した設備に再生可能熱設備を置き換えることで生じる、追加資本コストと操業費用の差を補

償することを目的としている。また、買取価格には、これ以外の非財務面で生じる不利益(家

屋や庭における工事、温水タンクの設置など資産の占有)を補てんすることも含まれる。さ

らに、資金調達コストをカバーするため、Green Deal で設定された金利分と同じレベルと

して、初期設置費用の 7.5%を補償するよう設定されている。

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3.2.4 エネルギー企業義務

イギリスでは、エネルギー供給事業者は、それぞれの事業法(1989 年電力法、1986 年ガ

ス法)に基づき、「顧客に対して効率的なエネルギー使用を提供すること」が義務付けられ

ている。1994 年からエネルギー供給事業者を対象とした顧客の省エネルギーに関する義務

が導入されており、直近では 2008~2012 年にかけて、炭素排出削減目標(CERT:Carbon Emission Reduction Target)という CO2削減量を目標単位とした制度が施行されていた。

2013 年 1 月から、家庭部門の省エネ設備投資促進の強化策として、助成制度であるグリ

ーン・ディール(Green Deal)とともに、エネルギー企業義務(Energy Company Obligation)が施行されている。以下では、エネルギー企業義務の概要と施行状況についてとりまとめる。 (1) 概要

1)義務対象者

エネルギー企業義務は、家庭部門の顧客が 25 万世帯以上、且つ年間の電力供給量が

400GWh以上の電力供給事業者もしくは年間のガス供給量が 2,000GWh 以上のガス供給事

業者が義務対象者となる。2013 年 8 月時点で、British Gas、EDF Energy、E.ON、

First-Utility、NPower、Scottish Power、Scottish and Southern Energy の大手7社が、

義務対象者に該当している。 2)義務の概要

本制度は、エネルギー供給事業者の家庭部門の顧客を対象としている。産業・業務部門は

別制度の対象となっており除外される。 対象事業者は、以下の 3 つの義務をそれぞれ履行することが求められる。

表 3-16 イギリス:エネルギー企業義務に基づく義務類型 ① Carbon Emission Reduction Obligation(CERO)

1 枚壁や修繕が難しい壁の断熱材の設置促進。通常のグリーンディールだけで資金供給がで

きないものを対象とする。 ② Carbon Saving Community Obligation(CSCO)

貧困世帯及び過疎地における家屋への断熱材設置促進、地域熱供給への接続支援。各エネ

ルギー供給事業者の義務の 15%が、農村地帯のより辺境な場所の低所得世帯の改修のため

に使われるようにする。 ③ Home Heating Cost Reduction Obligation(HHCRO)

空調機由来のエネルギーコスト削減に資するボイラーの改修や買い替えの支援。

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上記のうち、再生可能エネルギー熱設備の導入に関しては、③Home Heating Cost Reduction Obligation(HHCRO、以下同様)の適格行動(qualifying action)として、空

気熱ヒートポンプ、地中熱ヒートポンプ、バイオマスボイラーが例示されている。 義務対象者は、2015 年 3 月末までに、HHCRO で 42 億ポンド(5,880 億円)の光熱費

削減目標を市場シェアに応じて分担する。義務履行にかかる費用は、エネルギー価格に上乗

せされて、最終的にはエネルギー顧客に転嫁される。 3)義務の履行方法

エネルギー企業義務の義務対象となるエネルギー供給事業者は、義務の執行機関である

Ofgem E-serve(以下、当局とする)に対して、国内の顧客数、供給量等の情報を報告する

ことが求められる。これら報告情報をもとに、当局が各年度の義務量を設定する。義務対象

者は、2015 年 3 月間末までに、累積で義務量を履行する必要がある。 義務対象者は、各類型の義務に対して適格行動への助成をすることで履行が可能となる。

但し、自ら適格行動を行うことに加えて、他の義務対象者から適格行動の「クレジット」を

移転してもらうことで履行することも可能となっている。 (2) 施策の施行実績

2013 年 8 月に公表された施行実績では、電力・ガス市場規制局(Ofgem)によって認可

されたエネルギー企業義務に基づく適格行動数は以下のとおり。ボイラー更新対策の実績は

あるが、エネルギー企業義務のもとでは、ヒートポンプ設置等の対策は実施されていない模

様である。

表 3-17 イギリス:エネルギー企業義務の承認された対策数 対策カテゴリー CERO CSCO HHCRO 累計 1 枚壁断熱化 419 482 0 901 中空壁断熱化 0 2,819 1,256 4,075 修繕が難しい中空壁断熱化 620 16 0 636 屋根裏断熱化 1,406 12,386 9,594 23,386 その他断熱化 54 29 0 83 ボイラー更新 対象外 対象外 4,854 4,854 ボイラー修理 対象外 対象外 97 97 その他暖房 対象外 対象外 0 0 地域熱供給システム 0 0 0 0 マイクロ発電 対象外 対象外 0 0 合計 2,499 15,732 15,801 34,032

出典)Ofgem e-serve, “Energy Companies (ECO) Compliance Update, Issued August 2013”

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50

3.2.5 低炭素建物プログラム(終了)

イギリスでは、上述の再生可能熱プレミアムペイメント(RHPP)、再生可能熱インセン

ティブ(RHI)の制度が導入されるまでの再生可能熱エネルギーの導入促進は、低炭素建物

プログラム(Low Carbon Buildings Programme: LCBP)に基づく設置費補助により図

られてきた。この低炭素建物プログラムは、政府の支出削減計画を受けて廃止が発表され、

2010 年 5 月 24 日をもって、全ての新規申請の受付を終了した。 低炭素プログラムの全体像及びそれぞれのフェーズの終期は下図のとおり。

図 3-7 イギリス:低炭素建物プログラム(LCBP)の全体像及び各フェーズの終期

以下では、個人世帯主の所有する建物を対象とした上記の「グループ 1 家庭」部門の支

援政策の概要をとりまとめる。 (1) 概要

1)支援対象者、対象施設

低炭素建物プログラムの「グループ 1 家庭」部門で支援対象となるには、当該設備が所

在する施設が個人世帯主が所有する英国内の恒久的建物であることが条件となっている。ト

レーラーハウス、ハウスボート等の移動住宅に設置された設備は対象外となる。 また、当該施設は、主に申請者またはその家族の住居目的で利用されていることが条件と

なり、事業目的での利用、営利目的での賃借(賃借人が住居目的に利用していたとしても)

は支援対象外となる。

フェーズ1、フェーズ 2 の電力分野は 2010 年 2 月に新規申請受付終了。 フェーズ 2(延長)(LCBP2E)、および全ての LCBP は 2010 年 5 月に新

規申請受付終了。補助金請求の受付は 2011 年 2 月末で終了。

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加えて、低炭素建物プログラムの補助金申請を行う前に、以下に掲げる一定の省エネ対策

が既に講じられている施設であること、補助金受領後は最低 5 年間は同対策を継続するこ

とも条件として掲げられている。

低炭素建物プログラムの支援対象施設に求められる省エネ対策の最低条件 当該施設の屋根裏全体に、現行の建築基準を満たす断熱措置を施していること。 中空壁がある建物の場合、施設全体を通して中空壁断熱を施していること。 主な居室において、適切な照明器具の省エネ電球を使用していること。 セントラルヒーティングを設置している場合、熱需要がある場合にのみボイラー

が稼動する等の基本制御、および当該施設全体のタイマーまたは制御プログラム

を設置していること。

2)支援対象エネルギー源

低炭素建物プログラムでは、以下のエネルギー源が支援対象となっていた。 太陽光発電(設備容量 0.5kW 以上) 小型風力発電(設備容量 0.5kW 以上) 小規模水力発電(設備容量 0.5kW 以上) 太陽熱温水器 地中熱ヒートポンプ 空気熱ヒートポンプ 木材ペレット利用の暖房/ストーブ/ボイラー

上記のエネルギー源を用いており、本プログラムの管理者である Energy Saving Trustにより、低炭素建物プログラム(LCBP) 対象設備として指定されている設備を用いるこ

とが条件となる。具体的には、Microgeneration Certificate Scheme(以下、MCS とする)

と呼ばれる産業界主導の独立の認証プログラムを用いて設備認定を行う。太陽熱温水器につ

いては、Solar Keymark Certification 制度の下に認証された製品も適格対象となる。MCSの概要は、本報告書巻末の添-1 を参照いただきたい。 なお、対象設備は補助金受取後、最低 5 年間は当該施設に設置され、同施設で利用され、

また、設備性能に悪影響を与える形での改修を行わないことが条件となる。

3)支援額

低炭素建物プログラムの管理を行うEnergy Saving Trustは、補助金申請を受理後、25 営業日以内に補助金交付または却下の旨を通知し、交付の場合はその手続きを行うことになる。

補助金の交付額は様々な制限を受けるものである。再生可能エネルギー熱設備に関する主な

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制限は以下の通り。

エネルギー源毎に定められた「適格費用」の規定額または規定割合を超えてはならず、

どちらか少ない額が補助金となる。 1 施設あたり、2,500 ポンド(35 万円)の上限が適用される(同施設に複数設備が設

置されていても合計で 2,500 ポンドまで)。 なお、費用実額が申請額を超えた場合でも、補助金交付の規定上限額までの支払いとなる。

また、費用実額が申請額を下回った場合でも、「適格費用」の規定割合までの支払いとなる。

支援対象設備のうち再生可能熱設備の支援額(支払上限)は下表のとおり。

表 3-18 イギリス:低炭素建物プログラム(家庭部門)における支援額上限

エネルギー源 支払上限 太陽熱温水 設備全体の適格費用の最高400ポンドまたは 30%相当額までのいずれ

か少ない額 地中熱ヒートポンプ 設備全体の適格費用の最高 1,200 ポンドまたは 30%相当額までのいず

れか少ない額 例:費用総額 8,000 ポンドのヒートポンプ設備

規定額=1,200 ポンド 8,000 ポンド×30%=2,400 ポンド

⇒ 少ない方の 1,200 ポンドを補助 空気熱ヒートポンプ 設備全体の適格費用の最高900ポンドまたは 30%相当額までのいずれ

か少ない額 木材ペレット自動補給

型暖房/ストーブ 設備全体の適格費用の最高600ポンドまたは 20%相当額までのいずれ

か少ない額 木材燃料ボイラー 設備全体の適格費用の最高 1,500 ポンドまたは 30%相当額までのいず

れか少ない額 なお、1 施設において複数設備を設置した場合の上限適用の考え方の例は以下のとおり。

例:既に風力発電設備(3kW)に対して 1,650 ポンドの補助金を受けている施設が、7,000ポンド(除く VAT)の木材燃料ボイラーに対し 1,500 ポンドの補助金を申請した場合

●木材燃料ボイラー:規定額=1,500 ポンド 設置費用 7,000 ポンド×30%=2,100 ポンド ⇒ 木材燃料ボイラーに適用可能な補助金上限は 1,500 ポンド 但し、1 施設につき認められる補助金は最高 2,500 ポンドまで 風力設備に対して受取済の額を考慮:2,500 ポンド-1,650 ポンド=850 ポンド ⇒ 当該施設に適用可能な補助金は残りの 850 ポンドとなる

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4)設備認定の方法

低炭素建物プログラムで支援対象とする設備は、MCS と呼ばれる産業界主導の独立の認

証プログラムを用いて設備認定を行う。この MCS は、英国認証機関認定審議会(UKAS: United Kingdom Accreditation Service)により認定を受けている独立の認証プログラムで、

確固たる基準に照らして設置者および製品を評価する制度である(MCS の概要については、

添-1 を参照)。低炭素建物プログラムでの支援を申請する場合には、MCS 認証を受けた設

置者(installer)により、MCS 認証済設備を設置してもらうことが条件となる。 (2) 施策の施行実績

低炭素建物プログラムのうち、「グループ 1 家庭」部門で支援対象とした設備は 15,244件となる。そのうち熱分野においては、10,047 件、総額 5,753,579 ポンド(約 8 億円)の

支払いが行われた。熱分野のうち、太陽熱温水器への補助が、金額ベースで 54%を占めて

いる。

表 3-19 イギリス:低炭素建物プログラム(家庭部門)の支援実績

エネルギー源 件数 補助総額 平均費用

(VAT 除く) 平均補助額

力 太陽光 4,428 £13,136,531 £ 12,914.44 £ 3,588.23 小規模水力 7 £20,600 £ 32,613.32 £ 3,520.00 小規模風力 762 £1,756,122 £ 12,554.44 £ 2,285.24

熱 太陽熱温水 7,761 £3,105,513 £ 4,194.49 £ 399.79 空気熱ヒートポンプ 826 £738,762 £ 7,788.01 £ 899.14 地中熱ヒートポンプ 843 £1,008,727 £ 11,253.39 £ 1,197.51 木材燃料ボイラー 603 £892,879 £ 9,341.24 £ 1,477.51 木材ペレット自動補給

型暖房/ストーブ 14 £7,698 £ 3,914.77 £ 541.46

熱小計 10,047 £5,753,579 n/a n/a 総計 15,244 £20,666,831 £ 7,347.20 £ 1,314.36

出典)エネルギー・気候変動省, “Low Carbon Building Proguramme 2006-2011 Final Report”をもとに東

京海上日動リスクコンサルティング作成 1 件あたりの平均補助額を見ると、太陽熱温水器が約 400 ポンド(56,000 円)なのに対

して、空気熱ヒートポンプは約 900 ポンド(126,000 円)、地中熱ヒートポンプは約 1,200ポンド(168,000 円)、木材燃料ボイラーは約 1,500 ポンド(210,000 円)と高額になって

いる。また、設置者の総費用に占める補助金額比率は、平均して 10~15%となっている。

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(3) 施策の課題

本制度の施行上の問題ではないが、低炭素建物プログラムの制度終了と新たな支援制度の

構築の間に空白期間が生まれ、市場が冷え込むきっかけとなった。 低炭素プログラムが廃止となった経緯は以下のとおり。 ① 発電分野の支援終了(2010 年 2 月)

小規模発電設備を対象とした固定価格買取制度に関する政府決定の公表を受け、低炭素

建物プログラムのフェーズ 1 および 2 における小型発電設備に関わる新規申請の受付は

2010 年 2 月 3 日付で終了した。 その際、家庭部門の発電設備については、2010 年 3 月または資金が底をつくまで、受

け付ける予定であった。支援額は先着順で交付されるものであるが、この数ヶ月で発電分

野の支援が大幅に増加しており、見込みを上回るペースでの支出を招いていた。 2010 年 2 月 3 日の電力分野に関わる支援制度としての固定価格買取制度に関する政府

発表を受け、また、再生可能熱インセンティブ(RHI)制度が未だ開発段階にある中で熱

分野の支援を継続するために、熱生産設備向けの支援のみに低炭素建物プログラムの残り

の資金を確保することを決定した。 エネルギー・気候変動省(DECC)は、低炭素建物プログラム予算の残額をもとにこの

判断を下した。受付終了時期の変更について事前通知がなかったことについては、発電分

野におけるここ数ヶ月の急激な支出増加を考慮し、可及的速やかに、かつ固定価格買取制

度の確実性に沿う形で発表することが最善である、との判断による。2010 年 2 月に、補

助申請の受付終了が適用されたのは、太陽光発電、風力発電、および小規模水力発電であ

った。 ② 制度全体の支援終了(2010 年 5 月)

イギリス政府は、政府全体の支出削減策の一環として、2010 年度において 60 億ポンド

(8,400 億円)の支出削減を発表した。このうち、8,500 万ポンド(119 億円)がエネル

ギー・気候変動省(DECC)予算の削減額となり、同省ではこのうち 4,200 万ポンド(58.8億円)を業務の効率化等により削減、残り 4,300 万ポンド(60.2 億円)を計画済み支出

の削減により達成することを計画した。 こうした政府全体の動きを受け、低炭素建物プログラムの廃止が発表され、2010 年 5

月 24 日をもって、全ての新規申請の受付を終了した(補助金請求の受付は 2011 年 2 月

までとされた)。 以上の経緯をもって低炭素建物プログラムが廃止された結果、家庭部門の再生可能エネル

ギー熱設備への支援制度は、2011 年 8 月に再生可能熱プレミアムペイメント制度が開始さ

れるまで、直接的な財政的支援の枠組みがない状況が続いていた。

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4. フランス 4.1 再生可能エネルギー熱政策の概要

4.1.1 再生可能エネルギー導入目標

フランスでは、2005 年の「エネルギー政策基本法(Loi n°2005-781 du 13 juillet 2005 de programme fixant les orientations de la politique énergétique)」で、2005 年実績から再

生可能熱生産量を 2010 年までに 50%増加させる導入目標を設定して、再生可能熱等エネ

ルギーの導入促進を図ってきた。 その後、2009 年に発効した EU の「再生可能エネルギー利用促進指令(2009/28/EC)」

において、2020 年の最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率を 23%にする

目標が設定されている。この目標は、2009 年 8 月に官報に公布された「環境グルネルの

実施に関するプログラム法(第 1 法)(LOI n°2009-967 du 3 août 2009 de programmation relative à la mise en oeuvre du Grenelle de l'environnement (1))」の第 2 条において国内

法制化されている。その目標達成に向けて、電力、熱、輸送燃料の各分野において、取組み

が進められている。 フランスにおける再生可能エネルギー導入実績および目標の設定状況は、下表のとおりで

ある。

表 4-1 フランス:再生可能エネルギー導入目標の設定状況

分野 2005 年実績 2011 年実績 (暫定値)

2020 年目標 法定 国別行動計画

最終エネルギー消費 9.6% 13.1% 23.0%※ 23.0% 再生可能電力 13.5% 16.3% - 27.0% 再生可能熱 13.6% 16.5% - 33.0% バイオ燃料 1.2% 6.7% - 10.5%

※環境グルネルの実施に関するプログラム法(第 1 法)第 2 条で設定された目標。 出典)各種資料より東京海上日動リスクコンサルティング作成

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4.1.2 再生可能熱分野の導入実績

フランスにおける 2012 年の再生可能熱エネルギー導入状況は以下のとおり。バイオマス

起源の再生可能熱エネルギーが90%近くで、その中でも木材燃焼が過半を占めている。2020年の目標達成に向けては、各エネルギー源とも進捗率が低い状態となっている。

太陽熱 バイオマス ヒートポンプ 地熱

図 4-1 フランス:再生可能熱エネルギー導入状況(2012 年) 出典)フランス:環境・持続可能な開発・エネルギー省

図 4-2 フランス:2020 年目標に対する 2011 年実績の達成率

出典)環境・持続可能な開発・エネルギー省, “Chiffres clés des énergies renouvelables Édition 2013”

13,336 ktoe

(単位:ktoe)

エネルギー源 熱消費量

太陽熱 79 バイオマス 木材燃焼 10,028 収穫作物廃棄物 290 バイオガス 443 一般廃棄物燃焼 1,018 地熱 94 ヒートポンプ 1,384

合計 13,336

※暫定値

熱 電力

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また、フランスは、EU の「再生可能エネルギー利用促進指令(2009/28/EC)」に基づき、

「国家再生可能エネルギー行動計画(national renewable energy action plan)」を策定し、

欧州委員会に提出した。この行動計画は、指令によって最低限含むべき項目が規定されてお

り、加盟各国は 2020 年までの電力分野、熱分野、輸送燃料分野における導入の指標曲線を

推定しなければならない。 以下では、フランス政府が策定した行動計画における、2020 年までの再生可能熱分野の

導入予測を紹介する。

表 4-2 フランス:熱・電力・輸送燃料分野別の推定指標曲線(~2020 年) 2005 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年

熱分野 (%) 13.6 17.0 18.0 19.0 20.5 22.0

電力分野 (%) 13.5 15.5 16.0 17.0 18.0 19.0

輸送燃料分野 (%) 1.2 6.5 6.9 7.2 7.5 7.6 再生可能エネルギ

ー合計 (%) 9.6 12.5 13.5 14.0 15.0 16.0

内、協力メカニズム によるもの (%) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

内、協力メカニズム への余剰分 (%) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

2015 年 2016 年 2017 年 2018 年 2019 年 2020 年

熱分野 (%) 24.0 25.5 27.5 29.0 31.0 33.0

電力分野 (%) 20.5 21.5 23.0 24.0 25.5 27.0

輸送燃料分野 (%) 7.7 8.4 8.8 9.4 10.0 10.5 再生可能エネルギ

ー合計 (%) 17.0 18.0 19.5 20.5 22.0 23.0

内、協力メカニズム によるもの (%) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

内、協力メカニズム への余剰分 (%) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

出典)“National action plan for the promotion of renewable energies 2009-2020 In accordance with

Article 4 of European Union Directive 2009/28/EC” 上述の行動計画では、再生可能熱分野において、2010 年の 17%から 2020 年に 33%まで

ほぼ倍増することを目指している。 個別エネルギー源では、2020 年までに、太陽熱エネルギーを 2010 年の 7 倍(130→

927ktoe)、ヒートポンプを 2 倍(886→1,850ktoe)、地熱エネルギーを 3.2 倍(155→500ktoe)に拡大すると推定している。

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表 4-3 フランス:再生可能熱分野の最終エネルギー消費量推定(~2020 年) 単位:ktoe

2005 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 地熱 (低温地中熱源はヒ

ートポンプに分類) 130 155 175 195 235 270

太陽 38 130 155 185 280 370

バイオマス 9,153 9,953 10,250 10,542 11,280 12,020

固形 9,067 9,870 10,165 10,456 11,135 11,815

バイオガス 86 83 85 86 145 205

液体バイオマス(*) 0 0 0 0 0 0

ヒートポンプ 76 886 1,090 1,300 1,370 1,440

内、大気熱 27 664 810 960 1,000 1,040

内、地中熱 49 222 280 340 370 400

内、水熱 - - - - - -

合計 9,397 11,121 11,670 12,222 13,165 14,100

内、地域暖房 368 540 650 775 925 1,105

内、家庭バイオマス 6,549 6,835 6,890 6,945 7,000 7,060

2015 年 2016 年 2017 年 2018 年 2019 年 2020 年 地熱 (低温地中熱源はヒ

ートポンプに分類) 310 350 385 425 460 500

太陽 465 555 650 740 835 927

バイオマス 12,760 13,500 14,240 14,980 15,715 16,455

固形 12,500 13,180 13,860 14,540 15,220 15,900

バイオガス 260 320 380 440 496 555

液体バイオマス(*) 0 0 0 0 0 0

ヒートポンプ 1,505 1,575 1,645 1,715 1,780 1,850

内、大気熱 1,080 1,120 1,160 1,200 1,240 1,280

内、地中熱 425 455 485 515 540 570

内、水熱 - - - - - -

合計 15,040 15,980 16,920 17,860 18,790 19,732

内、地域暖房 1,320 1,575 1,880 2,245 2,680 3,200

内、家庭バイオマス 7,115 7,175 7,230 7,285 7,345 7,400

(*)持続可能性基準を満たすもののみ対象。「再生可能エネルギー利用促進指令(2009/28/EC)」第 5 条 第1 項 最終段落を参照。 出典)“National action plan for the promotion of renewable energies 2009-2020 In accordance with

Article 4 of European Union Directive 2009/28/EC”

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4.1.3 再生可能熱分野における促進施策体系

フランスでは、2005 年 1 月から、個人家庭における再生可能エネルギー機器、ヒートポ

ンプの導入に対して、投資額の一定比率を還付する制度を開始した。この制度のもとで、個

人家庭における再生可能熱エネルギーの導入が促進された。 また、大規模設備については、環境・エネルギー管理庁(ADEME:Agence de

l'Environnement et de la Maîtrise de l'Energie)が管理する「熱基金」と呼ばれる制度に

より、設置費補助が行われている。

表 4-4 フランス:再生可能熱分野における主な促進施策の支援対象

エネルギー源

主な促進施策 太陽熱 地熱 ヒートポンプ バイオマス バイオガス

バイオマス

CHP

再生可能エネルギー投資

額還付制度 ○ ○ ○ ○ ○ ○

熱基金

○ ○ ○ ○ ○ ○

出典)各種資料より東京海上日動リスクコンサルティング作成

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4.2 個別支援施策の概要・効果

4.2.1 エネルギー投資額還付制度

(1) 概要

フランスでは、2005 年 1 月から、各個人家庭における再生可能エネルギー機器やヒート

ポンプ、省エネ機器等への投資に対して、投資額の最大 40%を税額控除の形で払い戻すエ

ネルギー投資額還付制度(Le crédit d’impôt dédié au développement durable)を開始し

た。この制度は、再生可能電力・熱の両方を対象にしており、家庭におけるバイオマス、太

陽光、太陽熱温水器を主なターゲットとしている。 その後、2006 年 1 月より、再生可能エネルギー機器およびヒートポンプに関する税額控

除率が、40%から 50%に引き上げられた。2013 年時点で 2015 年まで税額控除の制度は継

続されることが公表されている。 主なエネルギー機器ごとの税額控除率は、下表のとおりである。

表 4-5 フランス:エネルギー投資額還付制度の税額控除率(~2011 年)

エネルギー源 2005 年 2006~09 年 2010 年 2011 年

再生可能発電・熱生産設備 40% 50% 50% 45% ヒートポンプ 40% 50% 25~40%※3 36% 低温ボイラー 15% 15% - -

蓄熱式ボイラー 25% 25%※1 15% 15% 断熱材 25% 25%※1 15~25%※4 22%

暖房調節機 25% 25%※1 25% 22% 地域熱供給連系設備 なし 25% 25% 22%

※1 但し、当該投資が 1977 年 1 月 1 日以前に建築された建物を対象とし、且つその建物を取得した所

有者が取得時点から 2 年後の 12 月 31 日までに実施した投資については 40%の税額控除を適用。

※2 ある納税者による一つの住居における投資について、2005~09 年度の間で税額控除の対象とする。

投資総額の上限が以下のように設定されている。 2005 年: 単身家庭:8,000 ユーロ(96 万円)、夫婦家庭:16,000 ユーロ(192 万円) 扶養家族 1 名につき 400 ユーロ(48,000 円)の引き上げ

但し、第 2 子は 500 ユーロ(60,000 円)、第 3 子は 600 ユーロ(72,000 円)とする 2006~09 年:単身家庭:8,000 ユーロ(96 万円)、夫婦家庭:16,000 ユーロ(192 万円) 扶養家族 1 名につき一律 400 ユーロ(48,000 円)の引き上げ ※3 ヒートポンプは、熱源および用途により、税額控除率が異なる。ヒートポンプ(水/水)は、2010

年以降対象外。 ※4 断熱材は、用途により、税額控除率が異なる。

出典)各種資料より東京海上日動リスクコンサルティング作成

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表 4-6 フランス:エネルギー投資額還付制度の税額控除率(2012~13 年)

エネルギー源 2012 年 2013 年

設置のみ 改修工事※1 設置のみ 改修工事※1 再生可能発電・ 熱生産設備

32%/ 40% 11~32% 23~40%

ヒートポンプ 26% 34% 15~26% 34% 蓄熱式ボイラー 15% 10% 18%

断熱材 15% 10% 18% 暖房調節機 15% 15%

地域熱供給連系設備 15% 15% ※1:窓断熱、再生可能源からの温水器、屋根裏・外壁・基礎断熱、屋根断熱、凝縮ボイラー・ヒートポ

ンプ、木質ヒーター設置等の改修工事を併せて実施した場合。 出典)各種資料より東京海上日動リスクコンサルティング作成

2012 年設置設備については、再生可能熱生産設備の場合は投資額の 32%、ヒートポン

プ・熱供給ネットワークへの接続設備の場合は投資額の 26%を上限として払い戻しがされ

る。なお、家族構成に応じて、払い戻しの対象とする投資総額の上限が規定されており、単

身家庭では 8,000 ユーロ(96 万円)、夫婦家庭で 16,000 ユーロ(192 万円)、その他扶養家

族が増えるごとに上限額が引き上げられる。 (2) 施策の施行実績

2005 年から 2008 年にかけて、410 万世帯が、投資額還付の対象となる省エネルギー機

器もしくは再生可能エネルギー機器を設置した。申請額の総額は 231 億ユーロ(2 兆 7,720億円)、税支出は 78 億ユーロ(9,360 億円)に相当する。

表 4-7 フランス:エネルギー投資額還付制度の施行実績(2005~2008 年) 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 合計 納税世帯数(1,000 軒) 25,785 26,080 26,400 26,687 - 報告世帯数(1,000 軒) 984 1,267 1,336 1,569 5,156 省エネルギー 767 901 947 1,064 3,679 再生可能エネルギー 217 365 389 505 1,477 うち初めての報告世帯数(1,000 軒) 959 1,046 993 1,082 4,080 総申請額(百万ユーロ) 3,632 5,390 6,044 8,039 23,106 省エネルギー 2,771 3,439 3,684 4,319 14,212 再生可能エネルギー 862 1,952 2,360 3,720 8,894

税支出(10 億ユーロ) 1.0 1.9 2.1 2.8 7.8 ※各家庭が所得税に応じて支出を届け出れば、翌年 5 月に税額控除の形で還付を受ける

出典)Marie-Émilie Clerc, Amélie Mauroux,“Une évaluation du crédit d’impôt dédié au développement durable”

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4.2.2 熱基金

熱基金(Le fonds chaleur)は、再生可能エネルギー及び廃熱回収による熱生産を支援す

る目的で、2008 年 12 月に設立された。環境・エネルギー管理庁(ADEME:Agence de l'Environnement et de la Maîtrise de l'Energie)が、管理・執行を行う。 熱基金は、2009 年から 2020 年までに 5,500ktoe の再生可能熱生産を拡大する目標につ

いて、その 1/4 の熱生産拡大に資することが掲げられている。具体的には、集合集宅や第三

セクター、農業・産業部門における、再生可能熱(バイオマス、地熱、ヒートポンプ、太陽

熱)を対象として、2009~13 年間の予算 12 億ユーロ(1,440 億円)に基づく、設置費補助

制度(熱基金)が設けられている。 熱基金は、大規模バイオマスとそれ以外のプロジェクトの 2 つのプログラムに分かれて

いる。大規模バイオマス(年 1ktoe 以上)を対象とした、「産業・農業・公共サービス業向

けバイオマス熱」(BCIAT)プログラムでは、環境・エネルギー管理庁が年に 1 回公募入札

を実施し、そこで選定されたバイオマス設備に対し、フィード・イン・プレミアムを供与す

る。プレミアムの額は、対象となる設備の規模により異なる。 2011 年までの実績は、下表のとおりである。

表 4-8 フランス:熱基金に基づく BCIAT プログラム実績(2009~12 年)

BCIAT 2009 BCIAT 2010 BCIAT 2011 BCIAT2012

選定されたプロジェクト数 31 37 25 27

稼働中のプロジェクト数 26 32 24 22

撤回されたプロジェクト数 5 5 1 5

当初目標エネルギー生産(toe/年) 100,000 175,000 125,000 125,000

熱生成量合計(toe/年) 134,191 203,991 115,305 104,130

バイオマス生成合計(MWth) 283 385 218 214

助成予算合計(百万ユーロ) 56.8 84.6 41.9 40.5

投資額合計(百万ユーロ) 136.7 187.7 132.6 112.1

平均助成率 (ユーロ/toe) 21.15 20.75 18.15 19.5

(ユーロ/MWh) 1.86 1.82 1.59 1.7

年間 CO2 排出削減量(トン) 384,100 641,800 350,000 272,310

出典)各種資料より東京海上日動リスクコンサルティング作成

また、これ以外のセクターおよび上記基準に該当しないバイオマス小規模設備プロジェク

トに関しては、地域ごとに当該地域を担当する環境・エネルギー管理庁が、公募によりプロ

ジェクトを選定する。 2012 年までの実績は、下表のとおりである。

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表 4-9 フランス:熱基金に基づく地域公募プログラム実績(2009~12 年)

エネルギー源

2009 2010 2011 2012

件数 計画出力

(ktoe)

件数

計画出力

(ktoe) 件数

計画出力

(ktoe) 件数

計画出力

(ktoe)

木質バイオマス 46 37.2 73 57.1 117 110.8 118 120.3

地熱 16 3.4 77 12.9 88 30.3 64 12.0

メタン 2 0.7 3 1.6 0 0.0 0 0.0

太陽熱 171 1.1 404 1.6 456 1.6 224 1.0

合計 235 42.5 557 73.2 661 142.7 406 133.2

出典)フランス環境・エネルギー管理庁資料より東京海上日動リスクコンサルティング作成

公共サービスおよび農業・産業セクターに対する地域公募プログラムへのプレミアム価格

(フィード・イン・プレミアム)は、下表のとおりとなっている。

表 4-10 フランス:熱基金に基づく地域公募プログラムのプレミアム価格

エネルギー生産

(年 toe)

公共サービスに対する

地方交付金(€/toe)

農業・産業セクターに対する

地方交付金(€/toe)

0~250 toe 1,750 1,100

(木材業界は 650) 250~500 toe 1,250

500~1,000 toe 600 600

>1,000 toe 300 BCIAT による公募入札対象

※例えば 1,100 toe の設備に対するプレミアムは、1,750*250+1,250*250+600*500+300*100

=1,080,000€となる。

出典)ECOFYS 資料より東京海上日動リスクコンサルティング作成

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添付資料 添-1.イギリス:Microgeneration Certificate Scheme(MCS)の概要

ⅰ)設立の経緯

MCS は、設備容量 50kW 以下の小型発電(発熱)設備の製品およびサービスに対し、一貫性

のある基準に基づき独立して認証を与えることを目的としている。この制度の下、「MCS マー

ク」を表示/使用する製品および設置者は MCS の認証を受けることが求められ、設置者につい

ては、公正取引庁による消費者規範認証機構(Consumer Code of Approval Scheme:CCAS)に沿った実施基準に参加/登録することが求められる。 2006 年に、BRE Global 社が、当時のビジネス・企業・規制改革省(BERR)(現在のエネル

ギー・気候変動省(DECC))から制度の開発、また、最初の認証機関として、製品および設置

者を認証する役割を 2 年契約で任された。2008 年 11 月に、MCS は、制度開発段階を終え、政

府ではなく小型発電業界自身が資金供給および管理を行う新しいステージに移行した。 ⅱ)制度組織

MCS の運営にかかる各主体の役割は以下の通り。

利害関係者パネル(Stakeholder Panel) 認証機関、省庁、事業者団体、その他利害関係者等の業界代表者から構成されるパネルが、制

度を率いている。

テクニカルワーキンググループ(Technical Working Group) 技術およびスキルの進展と共に制度を常に更新していくため、制度の新基準策定を引き受けて

いる。

MCS 認証機関 MCS 認証機関となるためには英国認証機関認定審議会(United Kingdom Accreditation

Service (UKAS))による認証を受ける必要がある。適任の組織であれば、どの組織でも、UKASに申請を行うことが可能。MCS 認証機関とは、MCS 基準を満たしている製品および設置者を

認証する機関のこと。この認証を受けて当該製品または設置者は「MCS マーク」を表示/使用す

ることが可能となる。

Gemserv 制度の管理運営者である Gemserv は、ライセンスを受けた者(Licensee)としての役割を担

っている。これは、エネルギー・気候変動省(DECC)が任命する、業界から独立した組織であ

る。MCS によってイギリス国内外の小型発電業界の進展を継続させることを念頭に入れて、制

度の管理および調整を任されている。