日本の医薬品研究開発の状況 - Cabinet Office...日本の医薬品研究開発の状況 東京大学大学院薬学系研究科 小野 俊介 資料2 1996年 2002年 2008年
薬理学の概念、領域、歴史...薬理学の概念、領域、歴史...
Transcript of 薬理学の概念、領域、歴史...薬理学の概念、領域、歴史...
薬理学の概念、領域、歴史
日本大学歯学部薬理学教室
越川 憲明 平成26年9月26日
薬物の
① 作用様式 = どんな風に作用するのか?
② 作用機序 = どんな理由で作用するのか?
③ 動態 = どんな風に体に入り、出ていくのか?
④ 臨床応用 = どんな病気に、どのように
使われるのか?
薬理学(Pharmacology)とは?
薬を道具として用い、
体の仕組みを研究するのも薬理学
薬理学の領域
対象別
臨床薬理学: Clinical Pharmacology
歯科薬理学(歯科薬物学): Dental Pharmacology
精神薬理学: Psychopharmacology
神経薬理学: Neuropharmacology など
研究方法別
生理学的薬理学: Physiological Pharmacology
分子薬理学: Molecular Pharmacology
行動薬理学: Behavioural Pharmacology など
ミクロな視点(分子薬理学)とマクロな視点(行動薬理学)
ゾウのそれぞれの部分を正確に語っても、ゾウを正確に表現できない
T. Yamamoto
薬力学(Pharmacodynamics) = 薬の生体反応 (生体に対する薬の作用を動的に研究)
薬物動態学(Pharmacokinetics) = 薬の運命 (体内における薬の動きと変化の研究)
薬の歴史
古代の医学
先史時代の医学
人類が文字を用いる以前から、病は悪魔の仕業であり、邪気を祓う魔術や薬草が用いられていたのだろうと考えられている。
「神農本草経」
(しんのうほんぞうきょう)
は5世紀頃に纏められた。
古代中国医学の
伝説上の帝王
「神農」 (紀元前28世紀頃)
農耕、医薬、商いの神であり、あらゆる植物を吟味して民衆に食用と毒草の違いを教えた。多くの植物を試したので神農は1日に70回も中毒したと伝えられている。
湯島聖堂の孔子銅像
の後ろにある神農廟
で毎年11月23日に
神農祭がある
孔子は魯の国昌平郷 陬邑にBC551年に生まれる
昌平坂は孔子の生まれた場所に由来する
神農祭
古代中国医学の伝説上の創始者「黄帝」(紀元前26世紀頃)
『黄帝内経』(こうていだいきょう)は、中国最古の医学書といわれる。
人の習慣や感情の傾向、食事、またはその人の住んでいる土地、季節などとの関わりから、総合的に診ていた。
最初の処方箋 古代バビロニア (紀元前18世紀頃)
虫歯治療にヒヨスが用いられた
古代エジプトの医学
エジプト第3王朝の医神イムホテプは、古代エジプト医学の設立者であり、療法・慢性病・解剖学についての所見を記したエドウィン・スミス・パピルス(紀元前1,600年
頃;左図)の原典の編纂者といわれている。歯痛・歯肉炎の薬物治療法が記載されている。
エーベルス・パピルス(紀元前1,500年頃;中央図)。医療器具(右図)。
ガレノス(ガレヌス、ガレン) (129-200頃)
医学の理念提唱
(医学への哲学的要素を強調) ペルガモン(現トルコ)生まれで、古代ローマ時代の医学の頂点に立った人であり、 16代皇帝マルクス・アウレリウス・アントニウスの侍医でもあった。
ヒポクラテスの医学の原理(四体液説)を基に理論を発展させ、ルネサンスにまで伝えた。
解剖学や動物実験などにも力を注ぎ、多くの著書を残している。
「経験と理論は共に重要であり、どちらが欠けても成就しない」と述べている。
古代ローマ時代の医学 (紀元前753年~紀元476年)
パラケルスス
(1493年-1541年) 薬の有効成分と
いう概念を提唱
ルネサンスの医学 (14世紀 - 16世紀)
ガレノス医学を批判し、医学の世界に、化学的分析法を導入したスイスの医師。
「全ての物は毒物であり、適用量のときに無毒物となる」と述べた。
古代医学
魔術
宗教
薬草
など
根拠なく受け入れる
勝手な解釈をして納得する 了解
解析 根拠を探る
疑問を明らかにする
経験的医学
の姿勢
自然科学的医学
の姿勢 Evidence-based Medicine
を盲信
{ }
} {
近代医学(自然科学的医学)の始まり
17世紀以降
解析(analysis)とは何か?
謎解きをし、証拠をつかむこと
Evidence-based Medicine (EBM)
Evidence-based Dentistry (EBD)
根拠のある医療(歯科医療)
Evidence (根拠)とは何か?
自然科学によって裏付けられたもの
投薬
治癒
新聞の配達
牛乳の配達 裏付け
根拠
薬効
相関と因果は別もの
例
新聞と牛乳の配達時刻
健康食品の消費量とスマホの普及率増加
相関関係 因果関係
科学的な姿勢 とは
●賢い懐疑論(skeptics)者の視点
Devil’s advocate (思考の原則)
●検証をする
作業仮説(研究の手法) 帰無仮説 (統計の手法)
●否定の証明は不可能(論理的限界の認知)
クロード・ベルナール(Claude Bernard)
1813-1878
フランスのサン・ジュリアン村に生れる
矢毒クラーレの作用部位を動物実験で明らかにした
芥子の有効成分は?
鎮痛薬の王様モルヒネ
しかし全ての薬物は毒物でもある
全身麻酔薬の歴史 華 岡 青 洲
(1760-1835)
「麻沸湯(通仙散)」による全身麻酔下で乳癌の手術に成功
(1804)
曼陀羅華(まんだらげ:チョウセンアサガオ)、草鳥頭(そううず:
トリカブト)が主成分
歯科医による全身麻酔薬の臨床応用
ウィリアム モートン
エーテルによる無痛抜歯を行う(1846)
ホーレス ウェルズ
亜酸化窒素による無痛抜歯失敗(1845)
「エーテルの日」1846年10月16日世界初公開での手術成功モートンが麻酔しウォレンが顎下部腫瘍を摘出した
ボストン市民によって建てられた記念碑
William T. G. Morton Inventor and Revealer of Anaesthetic Inhalation.
Before Whom, in All Time, Surgery Was Agony.
By Whom Pain in Surgery Was Averted and Annulled.
Since Whom Science Has Control of Pain.
吸入麻酔法を創案し世に知らしめた人。
君が現れる以前は常に手術は苦悶そのものであった。
君により、手術の疼痛からのがれ、疼痛は去った。
君が現れてから、科学は痛みを征服している。
DEPARTMENT OF
N.U.S.D.
PHARMACOLOGY