人工関節用ビタミンE添加超高分子量ポリエチレンの放射光 …...Wear...

放射光産業利用セミナー　SPring8 / SAGA-LS　コラボレーション

人工関節用ビタミンE添加超高分子量ポリエチレンの放射光による解析

aナカシマプロペラ㈱,b(財)高輝度光科学研究センター

西村直之a,井上俊之a,池本夕佳b,森脇　太郎b


人工関節とは･･･

正常な膝関節傷んだ関節

⇒疼痛・歩行障害など


人工関節とは･･･

-人工関節置換術-無痛・可動へ

QOL･ADLの改善


超高分子量ポリエチレン（ＵＨＭＷＰＥ）の改善　（ビタミンE添加ポリエチレンの開発へ）

体内で酸化劣化

人工膝関節ポリエチレンプレート

抗酸化作用を持つ

ビタミンEの添加


体内でのビタミンEの働き

ビタミンEの分子構造

HO

O

ビタミンEは芳香族系のクロマン核と呼ばれる環状骨格が活性の中心となる分子構造からなる。酸化防止機能はクロマン核のOH基に依存することが知られている。このOH基の水素が脱離し（O・）となり、代謝等により発生したフリーラジカル（R・）と反応することで、細胞などの母体を守っている。

ポリエチレンの酸化劣化反応（ラジカル）を抑制する現象を利用できないか？


超高分子量ポリエチレン（ＵＨＭＷＰＥ）の改善　（ビタミンE添加ポリエチレンの開発へ）

＜ビタミンE添加ポリエチレン＞

■ ■ ■メリット

●経年酸化劣化に対して、安定

●潤滑性が向上し、摩耗しにくい

治験（臨床試験）

■ 治験実施期間　　　2004年1月15日～2006年3月31日

■ 治験名　　　　　 NM001（多施設共同オープン試験）

■ 実施医療機関千葉大学医学部附属病院

　　千葉県千葉リハビリテーションセンター

■ 目標症例数　 66例（1施設33例）


結果：摩耗量（500万回終了時）

0

100

200

300

400

500

600

Vitamin E Virgin Vitamin E Aged Virgin Aged

Wear Mass〔ｍｍ３〕


人工関節向けビタミンE添加ポリエチレンの開発

体内に存在し、抗酸化性を持つビタミンEを人工関節用ポリエチレンを使用することで長期に安定した人工関節を提供できる。

しかし、添加量を増加させると機械的な特性など好ましくない面も発生する。

最適な添加量は0.3~0.5wt%程度。

製品開発において、ポリエチレン中の濃度分析は必須である。

ポリエチレン中において0.3%以下のビタミンEの分析が必要

SR-IRの適用


SR-IRの利点（微量成分の分析）

微量添加物の解析　　試料を厚くする：光路中の添加物の量　　　　　　　　　　　　　　　　　　　干渉縞の回避

赤外放射光の輝度の利点


SR-IRでのポリエチレン評価

BL43 IRを利用し、透過法によりポリエチレンを解析。　　（ミクロトームにより500μm（厚さ）のサンプルを分析）

SR-IRではビタミンEのOH基の評価を行う。

　⇒ビタミンEであるdl-α-トコフェロール

　⇒酢酸トコフェロール

　　（代謝により発生したフリーラジカルとの反応後のOH基の部分を模した）

その後に同定したOH基を元にビタミンEの分布状態などを解析した。

　　・添加量（0.3～3%）

　　・定量性

　　・分布状態


dl-α-トコフェロール中のOH基の同定（酢酸エステルとの比較）

1262cm-1

酢酸トコフェロールビタミンE（dl-α-トコフェロール）

Fig . Comparison of IR absorbance of dl-a-tocopherol and Tocopherol acetate

顕微分光ステーション波数分解能 4cm-1積算回数 100回

ビタミンE（dl-α-トコフェロール）と酢酸トコフェロールを比較することにより、1262cm-1

付近の吸収がクロマン核のOHと推定。


dl-α-トコフェロール中のOH基の同定（酢酸エステルとの比較）

C:\Documents and Settings\pc-user\My Documents\1127ir\071127\071127.38 VE/BaF2

C:\Documents and Settings\pc-user\My Documents\1127ir\071127\071127.40 BaF2 blk

2007/11/28

2007/11/28

1050110011501200125013001350Wavenumber cm-1

-0.3

-0.2

-0.1

0.0

0.1

Sin

gle

chan

nel

酢酸トコフェロールビタミンE（dl-α-トコフェロール）

1262cm-1

Fig . Comparison of IR absorbance of dl-a-tocopherol and Tocopherol acetate



ビタミンEの添加量を変化させたUHMWPE中のdl-α-トコフェロールのスペクトル

C:\Documents and Settings\ir-user\ƒfƒXƒNƒgƒbƒv\� V‚µ‚¢ƒtƒHƒ‹ƒ_\070515\070515.5 C:\Documents and Settings\ir-user\ƒfƒXƒNƒgƒbƒv\� V‚µ‚¢ƒtƒHƒ‹ƒ_\070515\070515.9 C:\Documents and Settings\ir-user\ƒfƒXƒNƒgƒbƒv\� V‚µ‚¢ƒtƒHƒ‹ƒ_\070515\070515.3 C:\Documents and Settings\ir-user\ƒfƒXƒNƒgƒbƒv\� V‚µ‚¢ƒtƒHƒ‹ƒ_\070515\070515.4

2007/05/152007/05/152007/05/152007/05/15

100010501100115012001250130013501400Wavenumber cm-1

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

Abso

rban

ce U

nits

3%

1%

0.3% 0%(UHMWPE)

1262cm-1付近のバンドが濃度に比例して変化していることがわかる。

Fig. Infrared absorption spectra of vitamin E added UHMWPE of various concentrations



SR-IRを用いたビタミンE添加ポリエチレンの分析

ビタミンEを添加したポリエチレン中のビタミンEに関してSR-IRを用いて解析できることを確認した。実製品への展開として、定量性の評価、分布状態における面分析を検討した。


ビタミンEの定量性の検討

品質管理、体内などでのビタミンE抗酸化性を評価するうえで微量成分の定量評価が必要。

1262cm-1付近のピークを波形分離することで定量性の評価を検討


ピークの波形分離

○SR-IRにて得られたスペクトルについて波形分離ソフトウエアfitykを用いて各スペクトルの波形を分離・評価を行った。○正規分布であると仮定し、Gaussian関数を波形分離に用いた。

1%ビタミンE添加ポリエチレン

0.3%ビタミンE添加ポリエチレン


波形分離時の留意点

元となるデータに関しては、IRスペクトル解析シトOPUSを用いビタミンE添加ポリエチレンと無添加ポリエチレンとの差スペクトルを作成し、1000～1330cm-1の間でNormalizeを行った。

波形分離ソフトfitykに於けるベースラインの設定に関しては、1000～1330cm-1付近のみを解析対象とした。

全波長域でのベースライン設定は困難であった為、1000、1330cm-1付近の2点を取り直線にてベースラインを作成した。


ビタミンEの定量性

y = 2.5176x

R2 = 0.9995

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 1 2 3 4

ビタミンE添加量/wt%

a.u.

1262cm-1

線形 (1262cm-1)

○波形分離を行い、各添加量の面積比を調べた結果を左図に示す。○0.3～3％添加量において、比較的直線に近い結果を得ることが出来た。

図　ビタミンE添加量と波形分離から得た面積比


面分析の適用

作製したポリエチレンプレートのビタミンE分布に関する調査を目的に、面分析を実施した。

分析にはOH基である1262cm-1及びクロマン核であるC-O-Cである1197cm-1の面分析を実施。

HO

O


面分析の適用

表面バルク表面バルク


X（μm）

Y（μm）

X（μm）

Y（μm）

1262cm-1 1197cm-1

（クロマン核のC-O-C基）（クロマン核のOH基）


SR-IRによるビタミンE添加ポリエチレンの解析

SR-IRを用いてビタミンE添加ポリエチレンの解析を行った。

抗酸化性を発現するOH基バンドを確定した。

波形分離によるビタミンEの定量性、ビタミンEの分布状態を確認した。


おわり


医師の来社日本人向け製品開発要求国内シェア80%が輸入品

チタンプロペラの開発プロペラ技術の応用～鋳造3次元曲面加工研磨～

ある程度の資金と

技術力

すきま産業～中小企業だからこそ参入出来る市場～

プロペラ加工技術から人工関節の製作へ

放射光産業利用セミナー　SPring8 / SAGA-LS　コラボレーション骨

接合用品　Bone F

ixation Materials

人工関節　

Artificia

l Joints

ナカシマメディカル取扱製品


膝関節シミュレータ

AMTI（アメリカ）

使用目的関節の複雑な動きや、潤滑液、温度など生体内環境を再現し、摺動部材の耐久性を評価する。

主な仕様6ステーション、各4軸制御6軸荷重センサー内臓油圧制御により108回以上の耐用試験回数温度制御機能付潤滑液循環システムエラー時自動停止機能マニュアルコントロールモード


試験方法

・使用機器：6-Station Knee Simulator （AMTI-Boston製）・作動プログラム：ISO14243-1に準拠・試験環境：37±1℃に保った牛血清25％潤滑下

Axial Load-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

0 20 40 60 80 100

Flexion/Extension[Ｎ]

Internal/ExternalRotation[Ｎ]

Cycle[％]

伸展

左へ回旋

屈曲

右へ回旋


結果：摩耗量（500万回終了時）

0

100

200

300

400

500

600

0 1 2 3 4 5Cycle[million］

Wear Mass[mm3]

Vitamin E Aged

Virgin Aged


ビタミンＥ添加ポリエチレンの抗酸化性

森亜希子博士論文（2003）

-0.02

0

0.02

0.04

0.06

0.08

0.1

0.12

0.14

0.16

0 500 1000 1500 2000 2500 3000Depth( μ m)

GUR1050

GUR1050+0.005wt ％ VitaminEGUR1050+0.01wt ％ VitaminEGUR1050+0.05wt ％ VitaminEGUR1050+0.1wt ％ VitaminEGUR1050+0.3wt ％ VitaminE

Oxi

datio

n In

dex

必要とされるビタミンE添加量としては0.3%程度と極微量


引張試験加速試験前後のUHMWPE試験片の応力-ひずみ特性

-5

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0 1 2 3Strain

Stre

ss (M

Pa)

0wt%(Aged)0.005wt%(Aged)0.01wt%(Aged)0.05wt%(Aged)0.1wt%(Aged)0.3wt%(Aged)0wt%(Virgin)

0wt%(Aged)

0.005wt%(Aged)

0.01wt%(Aged)

0.05wt%(Aged)

0.1wt%(Aged)0.3wt%(Aged)

0wt%(Virgin)

Fig.　


VitaminE添加UHMWPEに関して

長周期/nm Intensity/a.u.シミュレータ品縦　-0.5mm 17.9 21098シミュレータ品縦　-1.5mm 17.9 22630シミュレータ品縦　　-3mm 17.9 22743

試験無し　-0.5mm 17.9 23821試験無し　　-3mm 17.9 24602参考　UHMWPE 16.3 22422

ビタミンEを添加した場合、添加していないものに比較して長周期が１～2nm程度大きくなっている。Intensityに関してバルクに対して表面が若干小さくなっている。


Fig1．Structure of total knee prosthesis and damaged UHMWPE plate


C:\Documents and Settings\pc-user\My Documents\1127ir\071127\071127.38 VE/BaF2


2007/11/28

2007/11/28

1050110011501200125013001350Wavenumber cm-1

-0.3

-0.2

-0.1

0.0

0.1

Sin

gle

chan

nel

dl-a-tocopherol

Tocopherol acetate

1262cm-1

Fig 2. Comparison of IR absorbance of dl-a-tocopherol and Tocopherol acetate


C:\Documents and Settings\pc-user\My Documents\1127ir\071127\071127.32 VE simulator

C:\Documents and Settings\pc-user\My Documents\1127ir\071127\071127.35 VE control


2007/11/28

2007/11/28

2007/11/28

1200125013001350Wavenumber cm-1

-0.0

20.

000.

020.

040.

060.

080.

100.

120.

14S

ingl

e ch

anne

l

Sample A

Sample B

Fig 3. Comparison of IR absorbance of accelaration oxidation sample of dl-a-tocopherol added UHMWPE and non-oxidation oneSample A:dl-a-tocopherol added UHMWPESample B: accelaration oxidation sample of dl-a-tocopherol added UHMWPE


Sample A

Sample B

Fig 4. Comparison of transmittance spectra of molding atomosphere of dl-a-tocopherol added UHMWPE Sample A:Molding in airSample B:Molding in vacuum

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