陸上養殖ビジネス化に向けた課題. RASの基本技術 ①基本概念 • RASでは水質の管理が最も大切である。 • 養殖対象魚種の特性を調べ、養殖するのに最適な環境を決
養殖業の取り組み - maff.go.jp安全・安心(魚病発生の状況)...
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養殖業の取り組み
平成25年3月 水産庁
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資 料
安全・安心
課題
取組
具体的には、以下のような観点から対応
● 水産物の安全・安心の確保は、食品産業としての水産業にとって最重要の課題
● 法的な規制(例えば、食品衛生法第6条による「有害なもの等の販売等の禁止」) に加え、生産者である漁業者も、安全・安心を確保するために様々な取組を実施
■ 食品としての水産物の安全性の確保(ノロウイルス対策等)
■ 養殖魚の品質向上や健康管理のネガティブな側面の排除(魚病対策等)
■ 消費者への情報の伝達(トレーサビリティ、表示等)
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安全・安心(漁場環境由来)
宮城県漁連HPより
グラフでみる北海道の漁業より
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環境由来の問題については漁場環境の管理や製品の検査が重要
ポイント
≪取組例≫ 【宮城県漁協の取組】 ・宮城県及び県漁協等では、「ノロウイルス対策指針」に基づき、生産者が生食用カキの自主検査を行い、ノロウイルスが検出された場合は、その海域の生食用の出荷自粛を行うなどして、ノロウィルスによる健康被害の発生防止に努力 【北海道のほたて養殖業者の取組】 ・都道府県がEUの定める衛生基準をクリアーしていることを確認した上で、EUへ輸出が可能となる海域を認可
・輸出が可能となれば価格調整弁の効果が期待でき、豊漁による価格の暴落防止や安定した養殖業経営に貢献
安全・安心(魚病発生の状況)
≪背景及び現状≫ ・養殖魚の健康管理は養殖を行う上で重要なポ イント
・養殖魚には細菌やウイルスなどの感染症が発 生し、養殖漁場では毎年魚病による被害が発 生
・近年の魚病被害は1990年代に比べ大幅に 改善
・2000年以降、薬剤投与による「魚の病気 の治療」からワクチンによる「病気の予防」 へと対応が変化したことが、被害減尐の一因
・薬剤の投与量も1980年以降は大幅に減尐 している状況
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魚病の発生は大幅に改善、投薬量も減少
ポイント
安全・安心(水産医薬品の使用)
≪背景又は現状≫ ・養殖水産動物には、薬事法に基づく承認を受 けた水産用医薬品以外の使用は法的に禁止
・抗菌性水産薬や駆虫剤については、使用でき る動物の種類、用法・用量、使用禁止期間の 遵守が法律により義務付け
・水産用ワクチンの使用に当たっては、その効 果を最大限に発揮させるため、水試等から適 切な指導を受けて使用する体制が構築
・水試等指導機関が、医薬品の適正な使用によ る、安全な養殖水産動物の生産に向けた現場 の取組を牽引
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水産用医薬品の使用は法的に厳密に管理され、
指導体制も整備
ポイント
安全・安心(生産履歴の管理)
≪取組例≫ 【養殖生産工程管理手法】 (Good Aquaculture Practice 手法(GAP手法))
・養殖業者自らが管理のポイントを整理し、それを実 践・記録し、記録を点検・評価し、養殖生産の改善に 活用するという一連の管理手法により、養殖水産物の 食品安全を確保 ・事故が発生した場合、生産工程と管理記録の確認から、 原因の特定や出荷品の安全確認が可能 ・問い合わせ等に対しても、管理記録に基づいた迅速で分か りやすい情報の提供が可能となり、風評被害の防止にも役 立つ
【トレサビリティーシステム】 ・消費者、小売業者及び養殖業者は、GAP手法による 生産段階の情報に加え、流通、加工段階の養殖生産物 の移動履歴を追跡可能に
水産資源保護協会パンフレットより
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生産行程管理やトレーサビリティの取組も始まっているが、農産品と比べて一部に
留まっている
ポイント
安全・安心(まとめ)
● 安全・安心に関して、養殖業者は既にさまざまな取組を行ってきているが、取組内容が消費者には十分伝わっていないことから、それらをどのように伝えていくかが重要である
● そのための手段として、以下を検討してみてはどうか
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≪今後の方向性≫
■ 生産工程管理手法の導入
■ トレサビリティーの導入
■ ラベリングによる消費者への情報提供
■ 認証制度の活用
漁場環境
課題
取組
● 自然環境の中で行われる養殖にとって、良好な漁場環境を維持することは 重要な課題
● 魚類を中心とする給餌養殖については、給餌残渣や排泄物による環境負荷の 増加、赤潮の発生の抑制 ● 無給餌養殖は貧栄養化や高水温という環境の変化に脆弱であり、安定的な 生産の確保のための環境の変化への対応
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漁場環境(漁場改善計画)
≪背景又は現状≫
・持続的な養殖生産の確保を図るため、持 続的養殖生産確保法に基づく漁場改善を 推進 ・漁協等が「漁場改善計画」を策定し、漁 場環境の改善の観点から水質の改善など の目標を設定し、必要に応じて過密養殖 の是正等の手段を通じた養殖漁場の改善 を推進 ・平成24年1月末現在、28道県で335の漁場 改善計画が策定されており、海面養殖業の 総生産量に占める比率(カバー率 *)は、87.5%
*(漁場改善計画が策定された養殖漁場での生産量) /(全養殖生産量)×100
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カバー率(%)
魚類 貝類 海藻類 総合
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漁場改善計画の策定が進捗
ポイント
【漁場改善計画の内容】
改善の目標:溶存酸素量等の水質、硫化物量等の底質等の目標基準の設定 実施する措置:養殖施設面積、養殖密度、飼餌料の種類、水産用医薬品の使用の制限 体制の整備:計画推進委員会の設置、養殖漁場と利用状況調査の実施
漁場環境(赤潮の発生状況)
≪背景又は現状≫ ・平成24年6月下旪から7月中旪にかけてカ レニア・ミキモトイによる赤潮が、宇和海、豊 後水道、日向灘及び伊万里湾において発生 し、愛媛、大分、宮崎、長崎、佐賀の各県の 養殖魚介類に被害が発生。
・近年、養殖の盛んな瀬戸内海の赤潮発生 件数・漁業被害件数の推移をみると、減 尐傾向。 ・一方、九州海域の赤潮発生件数・漁業被 害件数の推移をみると、近年は横ばい傾 向で増減を繰り返している。
瀬戸内海
九州海域
(平成元年~平成24年9月30日現在) 瀬戸内海については改善が見られるが、
赤潮対策は引き続き重要な課題
ポイント
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発生件数 被害件数
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件
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発生件数 被害件数
漁場環境(サロマ湖のホタテガイ養殖の事例)
≪取組例≫ ・常呂、佐呂間、湧別の3漁協が「サロマ湖養殖漁業協同組合」を組織
・大量斃死をきっかけに、「サロマ湖養殖許容量調査専門委員会」を設置し、3年間の環境収容力を評価するための調査を実施
・海域の環境収容能力に応じた、養殖許容量の設定(昭和54年)。以来、10回にわたる養殖管理規制を実施
・行使規則に基づく具体的な処分基準を設け各単協から選出された管理委員により自主点検など遵守の徹底
・漁協自営による「サロマ湖養殖研究センター」を整備し、関係研究機関と密接に連携し、定期的な海域環境調査(水質・底質)を実施
設置されている観測ブイ(サロマ湖養殖漁業協同組合HPより)
ホタテガイ養殖では、環境容量にあった生産が
重要
ポイント
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漁場環境(有明海のノリ養殖の事例)
≪取組例≫ ・有明海におけるノリ養殖は、生産枚数は やや増加、金額は横ばい傾向
・近年、アカグサレ病や色落ちが多発
・各県の水産試験場では、ノリの生育状況 等についての漁場調査や有明海の定点 で、海水の水温、比重、栄養塩量、プラ ンクトン沈殿量などについての調査を実 施し、その結果をノリ養殖情報として漁 業者等へ提供
・これらのきめ細かい指導により、ノリの 安定生産を目指す
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金額(億円)
枚数(億枚)
枚数 金額
有明海のノリ養殖生産枚数・金額の推移(全漁連共販実績)
佐賀県有明水産水産振興センターHPより
ノリ養殖では、環境変化に対応した生産対応が必要
ポイント
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漁場環境(垂下式養殖の取組)
≪取組例≫ ・有明海においてタイラギの漁獲不振が続き、そ の原因の一つとして、タイラギが棲息する海底 における貧酸素塊の存在が指摘 ・水研センターでは、この問題を回避するため、 垂下式養殖により飼育する技術を開発。今後、 関係県において、実証に向けた取り組みを進め る予定 ・また、成長速度も天然物より向上することが 判明 ・この技術は、同じような問題を抱えるアサリ にも応用が可能で、漁場環境の悪化を回避す る一つの手段として期待される
養殖用段ネットに収容
段ネットによるロープ筏養殖
環境悪化を回避する新たな取り組みとしての
垂下式養殖
ポイント
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漁場環境(まとめ)
漁場改善計画の策定が進んでいる中で、 ■ 魚類養殖を中心とした給餌養殖については、全体としては漁場環境改善は進んでいるが、漁場環境の改善が必要な海域については、更なる取組を奨励する必要がある。
■ 貝類養殖や海藻類養殖などの無給餌養殖については、給餌養殖に比べれば漁場環境への負荷は尐ない一方で、養殖漁場の海洋環境にその生産量が左右される傾向があることから、養殖漁場の環境収容力に応じた養殖生産活動を行えるよう海洋環境のモニタリング等の実施が重要であり、かかる取組を奨励していく必要がある。
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≪今後の方向性≫
資源管理
背景と課題
● 養殖には種苗と餌が不可欠であるが、天然資源からの供給に頼っているも のが多い ● タイやヒラメのようにほぼ100%人工種苗によるものから、ウナギのようにすべ てを天然種苗に頼るものまで存在 ● 天然種苗を利用するものの中には、ウナギやクロマグロのように資源状態の 悪化により厳しい漁業管理が求められているものがあり、天然種苗の利用と資 源管理をいかに両立させていくかが課題 ● 配合飼料に使用される魚粉の供給源であるカタクチイワシ、アジなども資源 的な限界があり、今後の食料や魚粉原料としての需要の伸びを考えれば、 一方的にこれに頼るわけにはいかない状況
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資源管理(人工種苗への転換)
【種苗の供給】 ・ 天然種苗の供給によりマダイの養殖が始まり、採捕量の増加により養殖量も増加 ・ 人工種苗の増加に伴い、天然種苗が減少し、養殖量は増加 ・ 現在は、ほぼ100%が人工種苗
【生産物の供給】 ・ 昭和56年に養殖量が漁獲量を上回る ・ 人工種苗の生産尾数の増加とともに、天然魚生産へのネガティブな影響を回避しつつ養殖量も増加
漁業・養殖業生産統計年報、栽培漁業種苗生産、入手・放流実績(人工種苗のデータは主として公的な機関の生産量で、 近年は民間企業からの供給が増えているため、データのカバー率は下がっている。ただし、養殖量に相当する人工種苗が 使用されていると考えられる。)
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養殖収穫量・
漁獲量(千トン)
人工種苗(1
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万尾)・
天然種苗(トン)
マダイ養殖用人工種苗生産尾数・天然採捕量及び養殖収穫量の推移
養殖収穫量
漁獲量
人工種苗
天然種苗
マダイでは、人工種苗の開発により、天然資源の維持と養殖生産量の増加に寄与
ポイント
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≪背景又は現状≫
資源管理(クロマグロ、ウナギ養殖)
≪背景又は現状≫ 【クロマグロ】 ・太平洋クロマグロの近年の資源状況を踏まえ、平成22年から資源管理を強化しており、養殖用天然種苗(ヨコワ)の調達に限界
・クロマグロの人工種苗の量産化に向け課題を克服していく必要
・クロマグロの完全養殖技術の更なる発展 【ウナギ】 ・ シラスウナギは3年連続での不漁で、資源
状態の低下が危惧 ・昨年6月より、ウナギ緊急対策として、親ウナギやシラスウナギの資源管理に向けた地域毎の話し合いを推進
・人工種苗の量産化に向け、28年度までにシラスウナギを1万尾規模で安定生産する技術開発を実施(農林水産技術会議の委託プロジェクト研究)
[トン] [千円]
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クロマグロ、ウナギについては、資源状況が悪化し、天然種苗の利用に限界
ポイント
シラスウナギの漁獲量と価格
[ 年 ]
歴史的中間値
[ トン ]
減少過去最低水準
クロマグロの産卵親魚量の動向
資源管理(ブリ類養殖)
≪背景又は現状≫ 【種苗の供給】 ・ ハマチは天然種苗(モジャコ)への依存が高く、また近年の天然資源の資源状況は高い
・カンパチの種苗はほとんどを中国からの輸入種苗に依存(平成17年に中国産種苗のアニサキス問題が発生)
・両魚種ともに養殖の一部で人工種苗の導入が見られる
【ハマチ】 ・早期採卵と早期種苗生産技術が開発され、人工種苗を生産
・このハマチの人工種苗を用いた早期養殖生産により、夏場の端境期の出荷によるハマチ需要の掘り起こし
・また、周年出荷の体制が整備され、安定した量の輸出が可能に
【カンパチ】 ・安全で安心なカンパチ養殖用種苗の確保に大きな期待 ・カンパチの人工種苗の中間育成の安定的な歩留まりに向け課題を克服していく必要
夏場出荷される4.5kgのハマチ。写真は4月に採捕したモジャコの中でも、大きいサイズのものを早期出荷用に育てたもの。 (鹿児島県東町漁協のHPより)
養殖用カンパチの稚魚を安定的に大量生産するための種苗生産施設(かごしま豊かな海づくり協会HPより) 18
人工種苗の導入により、新たな需要の開拓や安全・安心にも対応できる可能性
ポイント
資源管理(養殖用餌料)
≪背景又は現状≫ ・養殖業が始まった頃は、我が国近海でマイワシが豊富に漁獲され、生餌が給餌
・マイワシの減尐、養殖魚の品質向上、漁場環境の改善等の理由から、モイストペレット(MP)やドライペレット(DP)へと移行
・ペルーのアンチョビーの漁獲枠の大幅な減枠が予想されている中、中国等での需要の拡大などを背景に魚粉価格の高騰が予想
生餌
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平成16年8月 平成18年8月 平成20年8月 平成22年8月 平成24年8月
16年8月 80,339円/トン
配合飼料主原料の魚粉輸入価格の推移 魚粉輸入価格 (円/トン)
19年7月 139,615円/トン
22年7月 153,108円/トン
24年11月 125,185円/トン
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養殖用餌料の原料となる漁業資源についても配慮が必要
ポイント
MP (モイストペレット) DP
(ドライペレット)
資源管理(まとめ)
●水産基本計画では、環境負荷の尐ない持続的な養殖業の確立として、「資源の保存に配慮し安定的な養殖生産を実現するため、主に天然種苗を利用しているウナギ、ハマチ、カンパチ、クロマグロ等について人工種苗の生産技術の開発や人工種苗への転換を促進する」旨掲げられている。このため、
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≪今後の方向性≫
■ 天然種苗に依存している養殖用種苗の一定比率を人工種苗に置き換える取組を促進する政策を検討する必要がある
■ さらに、漁場環境への負荷が高い生餌から、漁場環境負荷の低い人工配合餌料への転換を図るとともに、配合飼料の魚粉比率を下げる取り組みを奨励してはどうか