一般口演11 座長:上山 和子 看護学科 一般演題・口...

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204 The 65th Annual Meeting of the Japanese Society of Child Health 15 16 15 16 一般口演 11 看護とケア 座長:上山 和子 新見公立大学健康科学部 看護学科 O2-006 漏斗胸にて Nuss法手術を受けた子どもの 術後 1 年の QOL変化の実態 中新 美保子 1 、井上 清香 1 、難波 知子 2 川崎 数馬 3 、植村 貞繁 4 1 川崎医療福祉大学医療福祉学部 保健看護学科 2 川崎医療福祉大学医療技術学部 健康体育学科 3 元川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部 医療情報学科 4 川崎医科大学医学部 【目的】 漏斗胸における Nuss法手術は低侵襲手術として、小学生から 成人に至るまで広く実施されるようになってきた。しかし、 バー挿入による痛み、活動制限からくる不自由さ等の困難を指 摘する報告もある。我々は、Nuss法を開発した臨床専門家グ ループらが漏斗胸手術前後の QOL を測定するために開発した PEEQ について、許可を得て日本語に翻訳した調査票を用いて 調査を行っている。その一部は第64回の本学術集会にて発表 した。 今回は対象者を追加し分析を加え、子どもの手術前後の QOL の実態を明らかにしたので報告する。 【方法】 対象者は2013 年 4 月~ 2015 年 8 月に A病院で手術を受けた7 歳 -17歳の子どもとした。PEEQ (Pectus Excavatum Evaluation Questionnaire)を日本語に翻訳した無記名自記式調査票を用い た。調査票は身体的イメージ 9 項目と身体的困難 5 項目および 手術前の手術希望の程度 1 項目、あるいは手術後の評価 3 項目 で構成した。入院当日に調査票を手渡し、術前6ヵ月間の状況 を手術前QOL調査票に、術後1年の状況を手術後QOL調査票 に記入する事を説明した。回収は郵送法であった。手術前後の 比較は性別・年齢別・手術選択別毎で分析(Wilcoxon signed- rank test, P<0.05)した。A病院の倫理審査の承認を受けた。 【結果】 術前後の両方の調査票が回収できた54名(回収率:63.5%)を 分析対象とした。性別は男子 33名(61.1%)、女子 21 名(38.9%)、 年齢は7-11歳34名(63.0%)、12-17歳20名(37.0%)、手術選択 別は「自分の意志」 44 名(81.5%)「親・医師の勧め」 10名(18.5%) であった。 1.男子は7 項目が上昇、女子は3 項目が上昇した。 2.7 歳-11 歳は8 項目が上昇、12 歳-17 歳は4 項目が上昇した。 3. 「自分の意志で手術選択」は7項目で上昇、「親・医師の勧め で手術選択」は3項目で上昇した。 4.全対象者で QOL上昇の項目は「自分の姿(裸の姿)を見ての 感じ方」、最もQOLが低下した項目は「胸のせいで体育の授業 を休むこと」であった。「手術後の評価」は98.2%が手術をして よかったと回答した。 【考察】 男子の方が、7歳-11歳の方が、「自分の意志で手術選択」の方 が、手術後QOL の肯定的変化が多かった。手術後1年では体 育の授業を休むことがQOLを低下させているが、身体的イメー ジの回復により QOL上昇や手術後の評価は非常に高くなった。 親や医療者は子どもたちの身体的イメージの捉えが非常に重 要と認識すべきである。 本研究は平成 24 年~ 28 年度科学研究費補助金の助成を受けて 行った。 O2-007 小児特発性ネフローゼ症候群患者へのプレ ドニゾロン服薬指導を行う看護師における 臨床薬理学的認識の現状 金山 俊介 1 、松田 明子 2 、青戸 春香 3 岡本 祐介 4 、花木 啓一 3 1 島根県立大学看護栄養学部 看護学科 2 奈良県立医科大学 3 鳥取大学医学部 保健学科 4 鳥取大学医学部附属病院 【背景】 小児特発性ネフローゼ症候群(INS)にはプレドニゾロン (PSL)が主治療薬として用いられる。PSL には、経過中 に投与量が頻回に変更され服薬関連インシデントが生じや すいこと、多種の有害反応や併用注意薬剤があることから、 INS患者や家族に服薬指導を行う看護師は臨床薬理学的知 識をもつ必要がある。 【目的】 小児INS患者への服薬指導を経験した看護師について、治 療方針や PSL薬理作用の理解とそれを踏まえた服薬指導 の実践など、臨床薬理学的認識の現状を明らかにする。 【方法】 全国の大学附属病院および400床以上の病院で小児INS患 者が入院する病棟に所属する看護師697名に対して質問 紙調査を行った。回収率32.7%(228/697名)の中で、小児 INS患者の担当経験があり、ステロイド薬に関する業務経 験がある看護師197名を対象とした。PSL服薬指導の経験 の有無により対象を分け、小児INS の治療方針や PSL の 薬理学的認識について質問紙調査を実施し比較した。質問 項目は、小児INS の治療ガイドラインや薬剤添付文書の記 述内容を参考に作成し、1) INS治療計画の把握、2)PSLの 薬理学的知識(警告と原則禁忌、併用注意薬剤、副作用、 薬物動態)を問うた。基本属性として、看護師経験年数、 小児INS患者の担当経験等を調査した。 【結果】 PSL服 薬 指 導 の 経 験 有 群 は135 名(68.5%)、 無 群 は62 名 (31.5%)であった。臨床薬理学的認識を両群で比較する と、1) INS治療計画を把握している者の割合は、それぞれ 86.7%、80.6%、治療計画に沿った看護を行っている者は 91.1%、87.1%であった。2)PSL の薬理学的知識では、添 付文書の確認をしている者は61.5%、54.8%であり、逆に、 原則禁忌項目を全く知らない者は、21.4%、24.1%、併用 注意薬剤を全く知らない者は、30.3%、41.9%であった。 服薬指導経験有群の方が、1)、2)の臨床薬理学的認識の 指標は高値であったが有意ではなかった。 【考察】 小児INS患者を担当する看護師の大半が INS治療計画に 沿った看護を行っており、服薬指導経験がある者の半数以 上が添付文書の確認をしていた。しかし、PSL の薬理学 的知識を把握していない者が服薬指導を実施していたこと から、適切な指導ではないと考える。また、服薬指導経験 の有無で臨床薬理学的認識に差がないことから、この分野 では、十分に教育を受けたうえでの服薬指導がなされてい ない可能性が示唆された。小児INS患者を担当する看護師 への臨床薬理学教育の重要性が示された。 Presented by Medical*Online

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204 The 65th Annual Meeting of the Japanese Society of Child Health

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一般演題・ポスター 

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一般口演 11 看護とケア座長:上山 和子   新見公立大学健康科学部看護学科

O2-006漏斗胸にて Nuss法手術を受けた子どもの術後1年の QOL変化の実態

中新美保子1、井上清香1、難波知子2、川崎数馬3、植村貞繁4

1川崎医療福祉大学医療福祉学部保健看護学科2川崎医療福祉大学医療技術学部 健康体育学科3元川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部 医療情報学科4川崎医科大学医学部

【目的】漏斗胸における Nuss法手術は低侵襲手術として、小学生から成人に至るまで広く実施されるようになってきた。しかし、バー挿入による痛み、活動制限からくる不自由さ等の困難を指摘する報告もある。我々は、Nuss法を開発した臨床専門家グループらが漏斗胸手術前後の QOL を測定するために開発したPEEQ について、許可を得て日本語に翻訳した調査票を用いて調査を行っている。その一部は第64回の本学術集会にて発表した。今回は対象者を追加し分析を加え、子どもの手術前後の QOLの実態を明らかにしたので報告する。

【方法】対象者は2013年4月~ 2015年8月に A病院で手術を受けた7歳-17歳の子どもとした。PEEQ (Pectus Excavatum Evaluation Questionnaire)を日本語に翻訳した無記名自記式調査票を用いた。調査票は身体的イメージ9項目と身体的困難5項目および手術前の手術希望の程度1項目、あるいは手術後の評価3項目で構成した。入院当日に調査票を手渡し、術前6ヵ月間の状況を手術前QOL調査票に、術後1年の状況を手術後QOL調査票に記入する事を説明した。回収は郵送法であった。手術前後の比較は性別・年齢別・手術選択別毎で分析(Wilcoxon signed-rank test, P<0.05)した。A病院の倫理審査の承認を受けた。

【結果】術前後の両方の調査票が回収できた54名(回収率:63.5%)を分析対象とした。性別は男子33名(61.1%)、女子21名(38.9%)、年齢は7-11歳34名(63.0%)、12-17歳20名(37.0%)、手術選択別は「自分の意志」44名(81.5%)「親・医師の勧め」10名(18.5%)であった。1.男子は7項目が上昇、女子は3項目が上昇した。2.7歳-11歳は8項目が上昇、12歳-17歳は4項目が上昇した。3.「自分の意志で手術選択」は7項目で上昇、「親・医師の勧めで手術選択」は3項目で上昇した。4.全対象者で QOL上昇の項目は「自分の姿(裸の姿)を見ての感じ方」、最も QOL が低下した項目は「胸のせいで体育の授業を休むこと」であった。「手術後の評価」は98.2%が手術をしてよかったと回答した。

【考察】男子の方が、7歳-11歳の方が、「自分の意志で手術選択」の方が、手術後QOL の肯定的変化が多かった。手術後1年では体育の授業を休むことがQOLを低下させているが、身体的イメージの回復により QOL上昇や手術後の評価は非常に高くなった。親や医療者は子どもたちの身体的イメージの捉えが非常に重要と認識すべきである。 本研究は平成24年~ 28年度科学研究費補助金の助成を受けて行った。

O2-007小児特発性ネフローゼ症候群患者へのプレドニゾロン服薬指導を行う看護師における臨床薬理学的認識の現状

金山俊介1、松田明子2、青戸春香3、岡本祐介4、花木啓一3

1島根県立大学看護栄養学部看護学科2奈良県立医科大学3鳥取大学医学部保健学科4鳥取大学医学部附属病院

【背景】小児特発性ネフローゼ症候群(INS)にはプレドニゾロン

(PSL)が主治療薬として用いられる。PSL には、経過中に投与量が頻回に変更され服薬関連インシデントが生じやすいこと、多種の有害反応や併用注意薬剤があることから、INS患者や家族に服薬指導を行う看護師は臨床薬理学的知識をもつ必要がある。

【目的】小児INS患者への服薬指導を経験した看護師について、治療方針や PSL薬理作用の理解とそれを踏まえた服薬指導の実践など、臨床薬理学的認識の現状を明らかにする。

【方法】全国の大学附属病院および400床以上の病院で小児INS患者が入院する病棟に所属する看護師697名に対して質問紙調査を行った。回収率32.7%(228/697名)の中で、小児INS患者の担当経験があり、ステロイド薬に関する業務経験がある看護師197名を対象とした。PSL服薬指導の経験の有無により対象を分け、小児INS の治療方針や PSL の薬理学的認識について質問紙調査を実施し比較した。質問項目は、小児INS の治療ガイドラインや薬剤添付文書の記述内容を参考に作成し、1)INS治療計画の把握、2)PSL の薬理学的知識(警告と原則禁忌、併用注意薬剤、副作用、薬物動態)を問うた。基本属性として、看護師経験年数、小児INS患者の担当経験等を調査した。

【結果】PSL服薬指導の経験有群は135名(68.5%)、無群は62名

(31.5%)であった。臨床薬理学的認識を両群で比較すると、1)INS治療計画を把握している者の割合は、それぞれ86.7%、80.6%、治療計画に沿った看護を行っている者は91.1%、87.1%であった。2)PSL の薬理学的知識では、添付文書の確認をしている者は61.5%、54.8%であり、逆に、原則禁忌項目を全く知らない者は、21.4%、24.1%、併用注意薬剤を全く知らない者は、30.3%、41.9%であった。服薬指導経験有群の方が、1)、2)の臨床薬理学的認識の指標は高値であったが有意ではなかった。

【考察】小児INS患者を担当する看護師の大半が INS治療計画に沿った看護を行っており、服薬指導経験がある者の半数以上が添付文書の確認をしていた。しかし、PSL の薬理学的知識を把握していない者が服薬指導を実施していたことから、適切な指導ではないと考える。また、服薬指導経験の有無で臨床薬理学的認識に差がないことから、この分野では、十分に教育を受けたうえでの服薬指導がなされていない可能性が示唆された。小児INS患者を担当する看護師への臨床薬理学教育の重要性が示された。

Presented by Medical*Online