全身型金属アレルギーの食事指導e-seikyo-hp.jp/medical/pediatrics/arerugi02.pdfJ...

9
J Environ Dermatol Cutan Allergol, 2(3):160166, 2008 全身型金属アレル 食事指導 食物 ア レル ギ 代替食品 健康食品における ッケル ,ク ロム , コバル ト ,ス ,亜 鉛合有量について一 : 高松 伸枝 1),有 孝司 2),村 1) 全身型金属アレルギーの治療 として,原 因金属 を多 く含む食品の制限指導が行われている。食品 中の金属含有量はす てが明らかではなく ,特 に卵 牛乳 小麦等の食物アレルギーを合併する患 者が用 いる食物アレルギ 代替食品,お よびいわゆる健康食品に関する文献はほとんど見当たらな い。そこでわれわれは上記 79食 品中の金属含有量 (ニッケル ,ク ロム ,コ バルト ,ス ,亜 ) を分析 し,既 存 の制 限表 と合 わせ て検討 した。 ッケル ,、クロム , コバ ル ト ,亜 鉛は穀類 ,豆 , 種実類およびそれらの加工品に多 く,ス ズは果実缶詰に多 く存在 した。加工調理で金属含有量が変 動する食品もみ られた。水道水中の金属は,数 μ g湾 程度できわめて微量であった。金属の吸収率 は食品によって異なるが , どの食品が金属摂取に関与するかを把握 し,必 要最小限の食品を効果的 に制限することが肝要である。 (」 Environ ーワー ド :金 属 ア レルギ ,金 属制限食, はじめに 全身型金属アレルギ ーでは,ア レルゲ ンとな る金 属 との接触 回避 の一つ の方法 として ,金 属を多 く含 む食品の制限指導が試みられている 1~。制限食を 行う ことは患者 の負担が大 き 。 さ らに卵 小麦等に対する食物アレルギーを合併する場合 には,か な りの食 品制 限が必要 とな り ,栄 養素摂取 に偏 りをもた らす可能性がある。 したがって最小限 の食品除去による効果的な食事指導が求められる。 金属制限のための食品表はい か公表され指導 が行われている 4~ 0が ,報 告 されている食品中の金 属含有量に幅があ り ,食 事制限が必要か判断 しかね る食品 も少 な くな 日本人が摂取する食品成分は,五 訂増補 日本食品 標準成分表 (文 部科学省科学技術 学術審議会資源 調査会編)に 記 されてい る。 しか し,亜 鉛 を除 き, Dermatol Cutan Allergol, 2(3): 160-1 金属含有量 原 因 とな り得 る微量金属 (ニッケ ル ,ク ロム , コバ ルト ,ス )含 有量の記載はない 最 も多 く記載 され る もの に鈴 木 ら 9の 文献があ ,18食 品群 1,227食 品中の微量金属 28元 素に つい て分析 を行っている。その他 ,細 貝ら D等 ,少 の文献 n~ 0が 散 見 され るが ,加 工 食 品 を多 用 す る 現代の食事では,金 属摂取量を正確に把握すること はむずか しいのが現状 である。 特 に卵 牛乳 小麦等の食物アレルギ ーを合併す る全身型金属アレルギ 患者の場合 ,食 物 ア レル ギー 代替食品や,い わゆる健康食品を頻繁に用 いる ことが あ り ,回 避す き金属含有食品の特定に手間 取ることが多 い。そこでわれわれは,文 献未掲載の 食品を中心に,代 替食品や健康食品,加 工食品79 種中の金属 定量 を行 った。 さらに若千の文献的考 察 を加 え,食 品からの金属摂取制限について検討を 行ったので報告する。 | 1)別 府大学食物栄養科学部 874-0915 大分県別府市桜ヶ丘 1 2)愛 媛生協病院小児科 ・アレルギ 連絡先 :高 伸枝 掲載決定 日 :2008年 5月14日

Transcript of 全身型金属アレルギーの食事指導e-seikyo-hp.jp/medical/pediatrics/arerugi02.pdfJ...

J Environ Dermatol Cutan Allergol, 2(3):160166, 2008

究研

全身型金属アレルギーの食事指導

―食物アレルギー代替食品 。健康食品におけるニッケル ,ク ロム,

コバル ト,ス ズ,亜鉛合有量について一 :

高松 伸枝1),有 田 孝司

2),村松 毅

1)

全身型金属アレルギーの治療 として,原因金属を多 く含む食品の制限指導が行われている。食品

中の金属含有量はすべてが明らかではなく,特 に卵・牛乳・小麦等の食物アレルギーを合併する患

者が用いる食物アレルギー代替食品,お よびいわゆる健康食品に関する文献はほとんど見当たらな

い。そこでわれわれは上記 79食品中の金属含有量 (ニ ッケル,ク ロム,コ バル ト,ス ズ,亜鉛 )

を分析 し,既存の制限表 と合わせて検討 した。ニッケル,、 クロム, コバル ト,亜鉛は穀類,豆類 ,

種実類およびそれらの加工品に多 く,ス ズは果実缶詰に多 く存在 した。加工調理で金属含有量が変

動する食品もみ られた。水道水中の金属は,数 μg湾 程度できわめて微量であった。金属の吸収率

は食品によって異なるが, どの食品が金属摂取に関与するかを把握 し,必要最小限の食品を効果的

に制限することが肝要である。

(」 Environ

キーワード :金属アレルギー,金属制限食 ,

はじめに

全身型金属アレルギーでは,ア レルゲンとなる金

属との接触回避の一つの方法として,金属を多 く含

む食品の制限指導が試みられている1~ め。制限食を

行 うことは患者への負担が大 きい。さらに卵・牛

乳・小麦等に対する食物アレルギーを合併する場合

には,かなりの食品制限が必要となり,栄養素摂取

に偏 りをもたらす可能性がある。したがって最小限

の食品除去による効果的な食事指導が求められる。

金属制限のための食品表はいくつか公表され指導

が行われている4~0が,報告されている食品中の金

属含有量に幅があり,食事制限が必要か判断しかね

る食品も少なくない。

日本人が摂取する食品成分は,五訂増補日本食品

標準成分表 (文部科学省科学技術 。学術審議会資源

調査会編)に記されている。しかし,亜鉛を除き,

Dermatol Cutan Allergol, 2(3): 160-166, 2008)

金属含有量

原因となり得る微量金属 (ニ ッケル,ク ロム, コバ

ル ト,ス ズ)含有量の記載はない。

最 も多 く記載されるものに鈴木 ら9の文献があ

り,18食品群 1,227食品中の微量金属 28元素につい

て分析を行っている。その他,細貝 らD等,少数

の文献n~ 0が散見されるが,加工食品を多用する

現代の食事では,金属摂取量を正確に把握すること

はむずかしいのが現状である。

特に卵 。牛乳 。小麦等の食物アレルギーを合併す

る全身型金属アレルギー患者の場合,食物アレル

ギー代替食品や,いわゆる健康食品を頻繁に用いる

ことがあり,回避すべき金属含有食品の特定に手間

取ることが多い。そこでわれわれは,文献未掲載の

食品を中心に,代替食品や健康食品,加工食品79

種中の金属の定量を行った。さらに若千の文献的考

察を加え,食品からの金属摂取制限について検討を

行ったので報告する。 |

1)別府大学食物栄養科学部

〒874-0915 大分県別府市桜ヶ丘 1

2)愛媛生協病院小児科・アレルギー科

連絡先 :高松 伸枝

掲載決定日 :2008年 5月 14日

方 法

分析を行った食品は,たかきび,キヌア,ひ え,

あわ,さ ごやし澱粉等の穀類 7種,乳製品 3種,大豆製品 1種,キ ャロブ粉 (チ ョコレー ト代替品),

大麦クッキー, きびクッキー等の菓子類 12種 ,シチューやつけものの素,昆布だし等の調味料・加工

食品類 13種,フ リーズ ドライ等市販離乳食 5種 ,

缶詰 6種,グアバ茶,ハブ茶,ハ ト

^ギ茶等嗜好飲

料類 21種,水道水 2種 ,人乳 4種 ,茶葉 5種 を選

定した。

茶抽出にあたっては,各製品の説明書に従った。

水道水は,築 18年 の住宅 (A市),築 10年 の住宅

(B市 )に おいて,12時間水道を止めた後に蛇口か

ら採取 した。人乳は, 3カ 月以上 1歳未満の児をも

つ C市在住の授乳婦 4名 を対象 とし,朝食後午前

10~ 12時の間,母乳約50mlを採取した。

試料は10~ 100gを 550~ 600℃ で灰化後,重金

属測定用濃塩酸で加熱 し,蒸発乾固した。その後

3%塩酸で100~ 500倍希釈 し,原子吸光法 (島津

製作所 AA-6200)で 測定した。

分析 した金属は,ニ ッケル,ク ロム, コバル ト,

スズ,亜鉛の 5種 とした。

亜鉛は必須栄養素であるため,極端な制限は望ま

しくないが,ニ ッケル,ク ロム, コバル トと同時に

パッチテス ト陽性反応を呈することが多 くり,食事

制限が奏功 した症例り も報告されていることから,

今回分析を試みた。

結 果

分析結果をTable l,2に 示した。

ニッケルを多 く含むものは,たかきび粉 (white

sorghum■our),ひえ粉 (」 apanese barnyard mil―

let iour),納豆,チ ョコレー ト類,甘栗Jキ ャロ

ブ粉 (carOb pOWder),麦 芽飲料 (chocdate malt

drink,powder), 黒豆 ココア (black soybean

cocoa,powder)で あった。ココァ缶飲料 (ミ ルク

入 り)は 18 μg/100g,コ ーヒー缶飲料 (ミ ルク入

り)では 2 μg/100g含有 していた。全国 3カ 所で

製茶された茶葉中には約300 μg/100g含 まれていた

が,浸 出液中は約 7 μg/100gであった。また 2カ

所で採取 した水道水では,いずれも 2 μg/100g以

下であった。

クロム含量は,た かきび粉,ひ え粉,プ ロセス

チーズ,納豆,チ ョコレー ト,甘栗,キ ャロブ粉 ,

シチューの素,みかんの缶詰,麦芽飲料,黒豆ココ

」Environ Dermatol Cutan Allergol・ Vol.2(2008) -161-

ア,甜茶抽出液 (tian cha,infusion),し そ茶抽出

液 (perilla tea,infusiOn),青 汁 (kale iuice,pow―

der)が高い傾向にあった。

コバル トはひえ粉,納豆,チ ョコレー ト,甘栗 ,

キャロブ粉,鶏がらスープの素,麦芽飲料,黒豆コ

コアに多 く含まれていた。

スズはチーズ,納豆,キ ャロブ粉,麦芽飲料,黒豆ココアに多 く含まれていたが,特にみかんの缶詰

では 9 mg/1oogの 高濃度で検出された。

亜鉛はキヌア粉,黒豆ココア,ひえ粉,ふ りかけ,

麦芽飲料に多 く存在 した。

考 按

ひえ粉 。たかきび粉は金属が多 く検出されたが ,

二次製品であるひえせんべい (Japanese barnyard

millet crackers)や ひえしょうゅ (」apanese barn―

yard millet shOyu)は 生の粉に比較 し低値となって

いた。

田主 ら0は ,穀類・豆類の加工による微量元素

含有量の変動について検討をしており,小麦の製粉

による元素の残存率は,亜鉛で25%以下,ク ロム

で約 35%低下したとしている。また歩留まりが異

なる4種の精白米を比較したところ,亜鉛・クロム

を含む 7元素の残存率は,すべて歩留まり率以下で

あったことから,こ れら元素が種実の中心の胚乳部

よりも “ふすま"部分に高濃度に含まれることを示

すとしている。

また鈴木 ら9)お よび寺岡ら0の分析によると,

小麦玄穀の場合,ニ ッケル含有量は38 μg/100gで

あるが,小麦粉 8 μg/100g, うどん O μg/100gと ,

加工するにつれ減少 している (そ ばも同様)。 また

田主ら口)は ,煮豆中の金属含量は,乾燥豆に比べ

30~ 50%に低下してお り,その原因はゆで汁への

溶出ではないかと推測 している。Schroeder“ )ら も

煮豆や缶詰豆は,乾燥豆に比較してニッケル含有量

が低いと報告している。一方,納豆やチーズのよう

に,加工してもほとんど元素の損失はみられないも

のもあるll)。

したがって制限する食品を選定する際には,原料

中の金属含量のみでなく,それらの加工過程や水分

量の変動等を考慮する必要がある。

逆に納豆 (1パ ック40~ 45g)や チーズ (1切れ20g),チ ョコレー ト (1枚 50~ 70g)等 ,加工

過程で原材料成分の損失がなく, 1回摂取量が多い

食品については,金属 の過量摂取を招きやすいと考

えられる。

―-162-― 高松 伸枝他 :全身型金属アレルギーの食事指導

FoOds

Table l:Nickel,chrolllium,cobalt,tin,and zinc cOntents in selected foods

commonly taken by allergic patients in Japan

―Cereals,nlilk and dairy products,soy prOducts,cOnfectionary,seasonings and spices,and baby food―

μg/100g

Nickel Chromium CObalt Tin Zinc

Cereals

White sOrghum l10ur

Qulnoa f10ur

」apanese barnyard millet lour

Foxtail inillet■ our

AInaranth flour

Sago starch

Dried Chinese noodles(low allergen wheat)

171ilk and Dairy PrOducts

lvlilk

Yogurt

Processed cheese

144.0

22535.2

3810

0813

3409

51.1

0.5

18

01

04

4940.2

0.0

125

95000_0

1,4975

2,318.8

1,984.5

561.6

1,713.8

494784

ワ′ へυ (υ ウ′ 0多 (υ (υ

りを Aυ 90

(υ l■ AV Aυ

 9

 0

 0

 0

 0

 6

 0

 0

ワ′ R)

″′

Ю

・0

・8

40

126.0

390.5

2.746.5

Soy products

Itoカルタπα′′ο 294.7 13.88.1 252.4 1,809.0

ConfectiOnary

�rilk chocolate

ノヘlrllond chocolate

Chocolate biscuits

Chinese chestnuts(roasted)

Barley pumpkin cookies

Proso nlillet cookies

」apanese barnyard nlillet crackers

Arnaranth crackers

O力θsカグ

Tablet candy(lemonade type)

Carob powder

Carob cream

235.0

115

153.7

235.6

203.1

2.9

4.0

5.4

18

103.3

115

0.0

51

0080.2

6.1

005.6

71

008.1

160.2

2.5

1,636.0

1,139.0

1,175.5

864.0

3999

6319

9830

97954282

0.2

892.0

569.8

・6

・0

・3

・0

・0

・1

・0

・4

・3

・5

・5

・4

・8

・8

・0

・0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Seasonings and Spices

Curry (retort―pouched)

Curry roux (sagO Starch)

Stew roux

Killlchi sauce

Pickles sauce

Bang bang ji

Chicken bOne stock,granules

ん πみ%extract

Pros0 1nillet shoyu

」apanese barnyard lllillet shOyu

Worcester sauce

F%″力α力ι (%πι¬物力ι,perilla,ωαλα%ι )

F%″力α力ι (鶴 p%ゅ厖滋υι/1

2.4

1.3

8.3

452_5

32223

034.2

2.1

3.8

11.7

5.4

0.2

0.6

81

0000070.0

0.0

0.0

0.0

1.1

3.6

1.0

0.0

11.0′ 0.0

0042

10.5

20.5

000.0

6.7

0.0

8.6

5.1

Oυ 民υ EO つ4 ′U ′υ 00 1■ 一′ 00 民υ nυ αυ

252.4

98.5

4354

2871

0.0

320.2

0.0

1.1

154.0

2379

44.1

1,938.8

1,177.8

Baby Food

C力αωα%―笏%Jリグ

Fish topped with sauce(freeze― dried)

Chop suey (freeze― dried)

Rice and fish pOrridge(freeze― dried)

覇 薇グrice(freeze_dried)

Vegetable soup(freeze´ dried)

044.1

2.2

0.7

3.8

5.3

,″

(υ ■■ ハυ ハυ つ4 (υ

^V AV Aυ ^υ ^υ つ´

922.7

554.1

213.0

44.1

1,707.4

201.6

Numbers in bold indicate metal contents of foods that require caution.

J Environ Dermatol Cutan Alergol・ V01.2(2008)

Table 2:Nickel,chronlium,cObalt,tin,and zinc cOntents in selected fOods

commonly taken by ttergic patients in」 apan―Canned items,beverages,water,human nlilk,and tea leaves―

-163-

μg/100g

Foods Nickel Chromium CObalt Zinc

Canned items

Canned lnandarin Orange in syrup

Canned s、veet corn

Canned tOmato iuice

Canned coconut milk

Canned nlilk cocoa drink

Canned coffee drink

″′ 1■ 

,0 ′υ (υ 20

00 Aυ ハυ Aυ l■ Λυ

(υ ′υ つO Aυ ワ‘ Λυ

4.0.2.0

7.2.

 

9,042.5

0.2

2.2

0.0

1.7

0.0

401.5

4123

166.9

644.9

230.2

101.9

Beverages

Chocolate lnalt drink,powder

Black soybean cocoa,po、vder

Black tea,infusion

Sι%磁α,infllsion(A prefecture)

Sι%θ力α,inftlsion(B prefecture)

Sιπttα ,inftlsion(C prefecture)

Guava tea infusion

Dθ力2raαηιグθヵα,infusiOn

Oo10ng tea,infusion

Sword bean tea,infusion

PersilllmOlll leaf tea,inftlsion

Tian tea,infusion

Perilla tea,infusion

Field horsetail tea,infusion

Banaba tea,infusion

Sicklepod seed tea,infusion

」ob's tears tea,inftlsion(A company)

」ob's tears tea,inftlsion(B company)

Rooibos tea,inftlsion(A company)

Rooibos tea,infusiOn (B company)

Kale juice,pOwder

264.3

383.8

09727.5

650000000000503400000.0

0.0

000.0

1.7

112

26.0

24.6

0.3

0.6

0.2

0.1

0.0

0.6

0.6

0.8

0.4

030.1

0.5

0.0

0.0

010.0

0.6

0.4

10

111.0

104.8

0.0

0.0

000.0

0.0

0.0

0.0

0.0

000.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

1,904.5

2,122.0

5.2

0.0

000.0

1.6

3.7

2.8

0.4

0.1

1.4

8.4

2.2

3.9

1.9

3.9

1.6

1.0

1.4

94.0

・0

・4

・0

・0

・9

・4

・2

7.2

0・0

0・0

0・0

2.0

5..

52

45

ヽヽ「ater

City water(A city)

City water(B city)

 0

 3

40

う0 7′

 9

 

^n])

´

〈【])

Human �lilk

´

0´

 

う0

 

(υ

 

^υ

う´ 

,0 00 つ´

 

 

 

0.0.0.

4782263

1873

185.4

Tea leaves

Roasted barley tea

�lixture of tea and roasted rice tea

Sιπttα (A prefecture)

Sικ`λ

α (B prefecture)

Sι%θ力α (C prefecture)

3081839

4058

224.6

4366

42.3

43.7

21.1

31.0

250

5912.8

71.4

24.5

26.6

0.0

00151.9

1554

99.5

3,2290

2,0978

2,975.7

2,716.3

3,1717

Numbers in b01d indicate metal contents of foods that require caution

―-164-― 高松 伸枝他 :全身型金属アレルギーの食事指導

加えて田主H),鈴木めらは,小麦パンの場合,加

工器具からクロムが混入し,小麦粉よりも含有量が

多 くなる (18 μg/100g)と 指摘 している。しかし

ニッケルについては,調理器具からの混入は非常に

低いとした報告もあるDこ とも参考に述べたい。

調味料・加工食品類については,香辛料中に金属

が検出された。香辛料は100gあ たりの金属含有量

は多いが, 1回摂取量が05~ 2g程度であるので通

常の食事であれば大きな影響はないと思われる。

嗜好飲料類では,茶葉や豆を熱抽出した飲料より

も,種実粉末をそのまま用いる飲料に金属含有量が

多かった。嗜好品であるので個人によって摂取量が

異なるが, 1回摂取量 5~ 10g程度である。 1日 に

5回摂取すると約 25~ 50gの摂取 となるので,頻度が高ければ注意する必要があろう。

ちなみに,糸川0,本村20ら は,国民栄養調査結

果等を参考に,食事由来の金属推定摂取量を算出し

ている。ニッケル230 μg/day(900 μg/dayを 超え

る摂取 もありうる20),ク ロム 50 μg/day(食事摂

取基準暫定値 25~ 40 μg/day),コ バル ト300μ

g/day,亜 鉛は8.5mg前後 (食事摂取基準推奨量 4

~ 10mg/day)と し,お もな摂取源として,ニ ッケ

ルは穀類 (米 )。 豆類・野菜類,ク ロムは穀類・肉

類・卵類,コバル トは魚介類・野菜類・穀類,亜鉛

は穀類・肉類・魚介類であると報告している。

上記食品は他の主要な栄養素を含んでいる。食事

制限を行う際には,食事摂取基準 (現在ニッケル,

コバル トは未設定)を鑑みた栄養評価が必要と思わ

れる。

特に亜鉛においては食品中に広 く分布し,日 本人

の食事摂取基準におけるRDA(推奨量)も 多い必

須元素である。したがって亜鉛の厳格な制限はむず

かしいであろうし,制限がどの程度まで有効である

かは科学的根拠が十分でなく,今後の研究が待たれ

るところである。よって食品成分表および今回の分

析結果から,含有量が 10mg/100gを 超えるカキ

(牡蠣)や ,豚肝臓の多量頻回摂取を避ける程度に

とどめてお くべきと考える。

また,今回測定した微量金属については,体内代

謝が十分明らかでなく推測の域を出ないが,た とえ

ば食事中の非ヘム鉄,ヘム鉄の構成比によって鉄の

吸収率が異なることや",亜鉛において穀類 。豆類

中のフィチン酸の存在が亜鉛吸収を損なうことが知

られている物。このように金属の体内吸収率は食品

によって異なるので,含有量の多少と発症が相関し

ない場合もあることを留意すべきであろう。

糸川は,ス ズの摂取推定量に関し,十分な文献が

ないとして算出していない。米国では肉,野菜,果物からl mg/day,缶詰食品から38 mg/day程度を

摂取 しているとの古い報告もある2の 。Greger2の は,

一部または全 く内部塗装を施していない缶詰を開封

直後において,缶詰中に40~ 150 μg/gのスズが溶

出しており, 1週 間放置すると溶出量が 2.6~ 61倍

になることを示 している。日本で製造される果物缶

にも内部塗装を行っていないものがあり,スズの溶

出は避けられない2の。今回測定 したみかん缶詰は無

塗装缶であり,ス ズのみ高濃度で検出されたため ,

缶からのスズ溶出と推測される。

さらに飲料水に関しては,Flyvholmら りによる

と,飲料水中に含まれるニッケル量は,9μ g/1で あ

るが, 8時間水道を上めた後に採取 した水道水にお

いては490 μg/1に のぼるとしている。われわれの

測定では, 2カ 所での平均値が 9 μg/1程度であり,

寺岡ら'の

報告でも12 μgえ であった。クロム,コバル トにおいても各値は数μg/1であったことから,

わが国では水道水の飲用制限は基本的に必要ないと

思われる。

食品中の金属含量は品種,産地,栽培条件の環境

や分析法によって非常に変動しやす く②,今後も多

くの研究の蓄積が必要である。これまでの文献や分

析結果から,Veienら めの制限表がわれわれの食生

活に近 く,他の栄養素摂取への影響も少なく対処で

きると思われた。また有田°は,鈴木らの文献"をもとに,原因金属を多量に含む食品を抽出し,制限

表を作成 している。今回の分析結果とあわせると,

卵・牛乳・小麦等の食物アレルギーを合併した全身

型金属アレルギー患者に対しても, よりきめ細やか

な指導が可能となると考えられる。

以上をまとめると,種実類およびココア,チ ョコ

レー ト等の種実から得られる加工食品,みかん等柑

橘類の果実缶詰,オ ー トミールやコーンフレーク等

の水分量が少なく調理済みの穀類 (胚芽や糠層を含

む)お よびきな粉,納豆等の豆類加工品については,

摂取tll限 を考慮することが望ましいと考えられる。

また患者の食事嗜好や偏 りを知 り,チ ョコレー ト

や種実類・豆類加工品・貝類等 1回摂取量が数10g

単位で頻回摂取する食品については,原材料ではな

く,目 的とする加工食品に近い金属含有データを参

照することが現実的と思われる。さらに健康食品情

報を過信 し,特定の食品 (ゴマ,納豆,黒豆ココア,

きな粉,香辛料や抹茶等)・ を毎日頻繁に摂取するの

を避ける指導も望まれる。

J Environ Dermatol Cutan Alergol・ v01.2(2008) ―-165-―

pp.2,2001

おわりに 10)細貝祐太郎,堤思一,高井百合子 :食品微量元素マ

全身型金属アレルギーの食事指導は,患者の食生 ニユアル,中央法規出版,東京,pp.3,1985

活習慣を把握した上で,栄養素の過不足がないよう 11)田 主澄三,鈴木泰夫,西 山敬太郎 :穀類・豆類の加

食生活を整えるとともに,食事内容から金属摂取に 工による微量元素含有量の変動,日 栄・食糧会誌,

関与する食品を特定して,患者負担の少ない最小限 45:155-162,1992の食品除去を行うことが肝要である。 12)寺 岡久之,森井ふじ,小林純 :食品中に含まれる24

種の元素量及び1日 の元素摂取量について,栄 と食

本論文の要旨は第17回 日本アレルギー学会春季臨床 糧,34:221-239,1981

大会にて発表した。 13)和 田 攻 :金属とヒトーエコトキショロジーと臨

床,朝倉書店,東京,pp.115,1985

14)井上昌幸 :金属アレルギーにおける亜鉛の関与,医文 献 事新報,3761,95,1996

1)足立厚子,堀川達弥 :全身型金属アレルギー ー食 15)三 原祥嗣,高 路 修,山本昇壮 :亜鉛によるSys―

事制限の有効性 について 一,臨皮,461883-889, temiC COntact dermatitis― 歯科金属除去 と食事制

1992 限が奏功 した 1例 ―,ア レルギーの臨床,15:701-2)大沼すみ,池澤善郎 :金属アレルギーと経回DSCG, 704,1995

アレルギーの臨,23:10231028,2003 . 16)Schroeder HA,Balassa」 J,Tipton IH:Abonomal

3)Antico A,Soana R:Chronic allergic― like der_ trace metals in man_nickel,」 ChrOn Dis,15:55-

matopathies in nickel sensitive patients.Results of 65,1961

dietary restrictions and challenge with nickel 17)鈴 木継美,和 田 攻 :ミ ネラル・微量元素の栄養学 ,

salts,Alergy and Asthma Proc,201235-242,1999 第一出版,東京,pp.451,1998

4)Flyvholm MA,Nielsen GD,Andersen A:Nickel 18)D'Ambrosio F,BagnatO GF,Guarneri B,et al:

content of food and estilnation of dietary intake,Z The role of nickel in foods exacerbating nickel

Lebenslll Unters Forsch,179 : 427-431,1984 COntact dermatitis,Allergy,53 : 143-145,1998

5)Veien NK,Hattel T,」 uStesen O,et al:Low nick- 19)糸 川嘉則 :最新 ミネラル栄養学,健康産業新聞社 ,

el diet:An open,prospective trial,J Am Acad 東京,pp.158,2000

Dermatol,29:1002-1007,1993 20)木 村修一,小林修平 :最新栄養学第 7版,建畠社,東

6)岩佐真人,朝 川由佳理,吉川邦彦他 :Low Nickel 京,pp.356,1997

dietに よるニッケルアレルギーの治療について,皮 21)第 一出版 :厚生労働省策定 日本人の食事摂取基準 ,

膚,35:305-311,1994 第一出版,東京,p1164,2005

7)足立厚子 :ア トピー性皮膚炎における金属アレル 22)細 谷憲政 :ヒ ューマン・ニュー トリション,医歯薬

ギーの関与 とその対処について,Prog Med,17: 出版,東京,pp 203,力 04

94-99,1997 23)Greger JL i Trace mineral in foods, Marcel

8)有 田孝司 :金属アレルギーの診断と金属制限の実 Dekker,New York,pp 293,1988

際,ア レルギーの臨,21:1lo3-1115,2001 24)日 本食糧新聞社 :現代食品産業事典,日 本食糧新聞

9)鈴木泰夫 :食品の微量元素含量表,第一出版,東京. 社,東京,pp 358,1997

―-166-― 高松 伸枝他 :全身型金属アレルギーの食事指導

Dietary �lanagement of Systel‐ rlic hfetal Allergy

― Metal Content of Nickel,Chronlium,Cobalt,Tin,and Zinc in Substitute Foods for

Food Alle■tt and I‐Iealth― promoting Foods― ―

Nobue TAKAMATSUl),Takashi ARITA 2),TsuyOshi MURAMATSUl)

υ Fαι%′″げFθοグα″グⅣ%′″′グο%,3e"%し物グυι恣グ″I Sα力%ηgαο力α,30,,″ 87イつ_9150′ ια,メのα22

″D″α″″ο″′グR′グ″″Oα %グ ス′′ιりしEカグ222′ Sθグリο ποψグ″J

The avoidance Of foods containing causative metals is cOnsidered an essential treatment of

systenlic metal allergy. HOwever, there have been no published data on the metal contents of

foods frequently taken by food allergy patients, such as substitute foods fOr food allergy and

health_promOting foods We have measured the cOntents of 5 maOr causat� e metals(nickel,chrome,cobalt,tin,and zinc)in 79 foods and exalllined their cOntribution in cOmparison vパ th the

existing data.

Nickel,chrome, cobalt, and zinc were rich in grains,peas,seeds, and their processed foOds.

Tin was abundant in canned fruits. Changes in metal contents while processing and cooking

were observed in some foods The metal content of tap、 /ater was very 10M″,at around severalmicrograms/1iter.

Although,the absorption rates of metals vary among foods,it is important to specitt the most

effective method of food avoidance fOr each patient ´

(」 Environ Dermatol Cutan Allerg01,2(3)160-166,2008)

Key words : metal allergy,metal cOntents of foOds,low metal diet

Tttle.1-a食轟中のニッケル、一穀類、牛乳響L製品、

ク璽ム、コバルト、スズ、重鉛含有量

大豆加工品、菓子類、調味料類、離乳食一

μゴ100g

食品 ニッケル クロム コバルト スズ 亜鉛

穀類

たかきび粉キヌア粉ひえ粉あわ粉

アマランサス粉さごやしデンプン

低アレルゲン小麦ラーメン

144.0

2.2

535。2

38100813

12.7

0913907120000

3409

51.1

05180104

4940200125950000

149752318.8

1984.5

56161713.8

494784

牛手L ttL製 品

牛手L

ヨーグルト

チーズ

060.9

00

0705177

000006

0000

104.8

1260390.5

2746.5

大豆加工品

納豆 294.7 R

〉 13、 8 252.4 1809.0

菓子類

チョコレート

アーモンドチョコレート

チョコプレッツェル

甘栗大麦かばちやクッキー

きびクッキー

ひえせんべい

アマランスせんべい

おこし

ラムネ

キャロブ粉

カレー(レトルトタイプ)

カレールー(さごやしデンプン使用・回形)

シチュールー (園形 )

キムチの素 (原液)

つけものの素 (原液)

バンバンジーソース(レトルトタイプ)

鶏ガラスープの素 (顆粒 )

昆布だし液きびしょうゆひえしょうゆ

ウスターソース(添加物無し)

ら、りかけ(梅・しそ=わかめ)

キャロブクリーム H_5 14 0_2 25 569_8調味料類

235.0 183115 . ll

153.7 99

235,6 4520 053.1 0429 1140 0854 281、 8 00

1033 50.0

2413834525322230.3

4221381175_4

02068100000700000000113610

118 160,2

19610163103000011100400

00510_0

80.2

610056710.0

81

001100000

1636.0

113901175_5

864_0

3999631998309795428202

8920

2524985

435.4

287100

32020011

15402379441

1938811778

0.3

050522

0805100.6

67008651

06 ́4206 10578 20501 0017 00

ふりかけ(たまご目のり)

茶碗蒸し

自身のあんかけ(フリーズドライ)

野菜のあんかけ(フリーズドライ)

おじや (フリーズドライ)

ひじきごはん (フリーズドライ)

044122073853

000000000025

011000002205

9464616711.8

0037

9227554121304341170742016

すべき数値について

Tttle.1-b食品中のニッケル、ク藝ム、コバルト、一缶詰、嗜好飲料類、水道水、

スズ、亜鉛含有量

母手L、 茶葉一

II翼/100貿

食 品 ニッケル クロム コバルト スズ 亜鉛

缶詰

みかん

コー ン

トマトジュースココナッツミルク

ココア

コーヒー

49062320017720

830002101201

370103061.9

03

9042.5

0222001700

4015412316696449230.2

1019嗜好飲料類

麦芽飲料 (粉 )

黒豆入リココア(粉 )

紅茶液

緑茶液 (A県 )

緑茶液 (B県 )

緑茶液 (C県 )

グアバ茶液どくだみ茶液

ウーロン茶液ナタマメ茶液

柿の葉茶液

甜茶液しそ茶液

すぎな茶液バナバ茶液

はぶ茶液はとむぎ茶 (A社 )

はとむぎ茶 (B社 )

ルイボスティー (A社 )

ルイボスティー (B社 )

青汁

264.3

383.8

09727565000.0

000000503400000000000017112

52.0

45。4

030000000904

, 02040182720017000000002051

26.0

24.6

030602010006060804030105000001000604110

111.0

104.8

00000000000000000000000000000000000000

1904.5

2122.0

5.2

0000001637280_4

0.1

14842239193_9

161014

940水道水

水道水 (A市 )

水道水 (B市 )

1809

0307

0000

0000

■ 1 1

30母季L

0203030,

02030000

0000000.0

00000000

478226318731854

茶葉

麦茶葉

玄米茶葉

緑茶葉 (A県 )

緑茶葉 (B県 )

3081839405822464366

423437211310250

59128714245266

0000

15191554995

322902097.8

297572716331717

べき数値について大字で示した。

(C県 )