亀裂原因について - 国土交通省中国地方整備局...FN DC BA Ý # Ô _lh>DC FEM )( O...
Transcript of 亀裂原因について - 国土交通省中国地方整備局...FN DC BA Ý # Ô _lh>DC FEM )( O...
資料-3
亀裂原因について
第4回伊達橋補修検討委員会資料
平成27年6月12日
亀裂原因について
1.検討概要
1.1 検討フロー
亀裂原因の検証フローを、図-1.1に示す。
三次元FEM解析 載荷試験現地亀裂状況
公称応力による検証
局部応力による検証
疲労照査による検証
損傷原因の特定
・二次応力を含む公称応力の把握
・応力範囲と亀裂状況の検証
・活荷重による挙動の検証
・応力集中の把握
・主応力と亀裂状況の検証
・応力集中の要因の検証
・疲労損傷度と亀裂状況の検証
解析モデルの
検証・修正
車両載荷による変位・
ひずみの変化
亀裂の発生箇所
亀裂の形状
亀裂の発生箇所
図-1.1 検証フロー
1.2 亀裂の発生状況
亀裂発生箇所を図-1.2、表-1.1、亀裂の位置を写真-1.1、代表的な亀裂発生箇所を写真-1.2~1.6に示す。
亀裂は、横桁フランジと垂直材の接合部(①②③④)、下弦材とニーブレース・下横構ガセットの接合部(⑤
⑥⑦⑧)、支承部補剛リブに発生している。垂直材と横桁フランジの接合部の亀裂は側径間側(VP1~7、19
~25)、下弦材とニーブレース・下横構ガセットの接合部の亀裂は支点部(VP1、3、23、25)に発生する傾
向が見られる。
図-1.2 亀裂発生箇所図
表-1.1 亀裂発生箇所一覧表
写真-1.1 亀裂の位置 写真-1.2 垂直材と横桁上フランジ(VPL2③)
写真-1.3 垂直材と横桁下フランジ(VPL2④) 写真-1.4 下弦材とニーブレースフランジ(VPR25⑥)
写真-1.5 下弦材とガセットの接合部(VPR03⑦⑧) 写真-1.6 支承部補剛リブ(VPR25 支承)
VPL
VPR
VPL
VPR
VPL
VPR
VPL
VPR
:未対策亀裂箇所
:亀裂削り取りにて消去箇所【応急対策】
:ストップホール実施箇所【応急対策】
位置 1 2 3 4 5 6 187 8 9 10 11 17 25
①、③
②、④
⑤、⑥
19 20 21 22 23 2412 13 14 15 16
⑦、⑧
-1-
1.3 解析モデルの概要
(1)全体解析(梁要素)
梁要素を用いた橋全体のモデルであり、建設時(図-1.3)と現況(図-1.4)の 2 モデルを作成。建設時・
耐震補強時・現況のモデルの設計・解析モデルとの主な相違点を表-1.2に示す。
表-1.2 解析モデル設計時の主な相違点
設計時の解析モデル 耐震補強時の解析モデル 現況の解析モデル
モデル 平面モデル 立体モデル 立体モデル
格点部の結合条件 ピン結合
(吊材、斜材、垂直材、横桁)
ピン結合
(吊材、斜材、垂直材、横桁)
剛結合
(横構を除く)
床板、地覆 抵抗部材として
考慮しない
抵抗部材として
考慮しない
縦桁、横桁と合成断面
として考慮
縦桁、横桁、横構 二次部材 二次部材 一次部材
図-1.3 梁要素による解析モデル(建設時)
図-1.4 梁要素による解析モデル(現況)
(2)全体解析(梁要素+シェル要素)
亀裂損傷部の局部応力を把握するために、梁要素にシェル要素を組込んだ解析モデルを図-1.5に示す。
VPR19(中間部) VPR21(アーチリブ交差部) VPR23(アーチ支柱部) VPR25(端支点部)
図-1.5 梁要素+シェル要素による解析モデル(現況時)
建設時からの変更点
・歩道(マウントアップ)の設置
・耐震ブレースの設置
-2-
2.垂直材と横桁フランジの接合部
2.1 公称応力による検証
亀裂発生箇所に接合する部材の公称応力と亀裂の発生状況の相関を検討する。また、相関がみられた公称応力が生じる
挙動を、構造解析と載荷試験から特定する。
(1) 応力と亀裂発生箇所
全体解析(梁要素)により算出した断面力から求めた垂直材と横桁の活荷重時(T荷重1組:200kN)の応力範囲を図
-2.1に示す。図-2.1に示す応力は、垂直材、横桁ともに、設計時には考慮されていない二次応力に該当する。この応力範
囲から、以下の傾向が確認できる。
① 垂直材の板厚は VP24 が 6.6mm、それ以外が 9.3mm となっており、面内方向と面外方向のいずれも、VP24 の
応力範囲が最大となっている。
② 横桁の面内方向では、床板の端部となるVP23、VP25で応力範囲が大きい傾向にある。
③ 横桁の面外方向では、アーチ支間中央部の応力範囲が小さく、VP19からVP24に向けて大きくなる傾向にある。
④ 現況の横桁の面内方向では、横桁、垂直材共に建設時からの変化はほとんどない。また、面外方向では、建設時の
垂直材の応力範囲は大きく変化しないが、横桁の応力範囲はVP25を除いて小さくなっている。
以上の応力範囲の傾向のうち、上記③と亀裂発生位置(VP19~VP24)が一致しており、横桁の面外方向応力が亀裂発
生に影響を与えていると推定される。
載荷試験結果でも同様に、図-2.2(b)に示す横桁下フランジ②④において、橋台側ほど応力範囲が高くなる傾向が確認で
きる。また、図-2.2(C-1)~(C-4)に示すように横桁の最大応力発生時の載荷位置が部位によって異なっている。横桁下フ
ランジ②④の最大応力は、横桁の直上に載荷した場合ではなく、橋梁中央側に少しずれた載荷位置で発生している。
(b) 横桁面外方向応力の応力範囲
図-2.1 格点毎の垂直材・横桁の応力範囲(解析結果)
(a) 横桁面内方向応力の応力範囲
:亀裂発生位置
図-2.2 格点毎の垂直材・横桁の応力範囲(載荷試験結果・並列載荷)
(a) 計測位置図 (b) 応力範囲
(C-1) VPR19 (C-2) VPR21
(C-3) VPR23 (C-4) VPR25
VPR21、23、25の①③:亀裂有り
上記以外:亀裂無し(削り取り消去箇所も含む)
アーチ部 側径間部
アーチ部 側径間部
⑤
①
④ ②
⑥
⑧ ⑦
③
※VPR21,23,25の垂直材は未計測
-3-
(2) 横桁の面外変形時の挙動
横桁に面外方向応力を発生させる主構と床板の橋軸方向の変位差を図-2.4、2.5に示す。図-2.4より、側径間部(VP24、
25)とアーチ部(VP17~23)で挙動が異なっており、側径間の相対変位が大きい傾向がみられる。また、表-2.1に示す
ように、主構と床板の軸方向変位差の大きさと亀裂の状況は、傾向が一致している。アーチ部と側径間部で変位の方向が
逆転するのは、図-2.6に示すようにヒンジ部の回転による挙動が原因と考えられる。
コラム(その1):残留変位
図-2.5に示すVP25 の載荷試験結果の相対変位では、VP17~25 の載荷位置で解析結果より大きくなっており、除荷後
に変位が残留している。残留変位は、主構のたわみ(図-参 2.1)や上弦材ヒンジ部の変位(図-参 2.2)にも生じている。
この変位の残留は、スリーブ構造となっている上弦材ヒンジ部の摩擦によるものと推定(図-参2.3)。
図-参2.3 ヒンジ部の構造
図-2.5 床版―主構間の相対変位(解析結果と載荷試験結果の比較)
図-2.6 横桁の面外変形の挙動の模式図
横桁の面外変形
横桁の面外変形
下弦材ヒンジ
横桁
縦桁ヒンジ
VP18載荷
(a) アーチ部の挙動 (b) 側径間の挙動
図-参2.1 主構のたわみ(載荷試験結果)
図-参2.2 支承と上弦材ヒンジ部の変位(載荷試験結果)
図-2.4 主構-床板の相対変位(載荷試験結果)
表-2.1 主構-床板の相対変位と亀裂状況
解析結果とずれている
上弦材(スリーブ構造)
下弦材(ピン構造)
縦桁ヒンジ部の支承
側径間部 側径間部 アーチ部
図-2.3 変位の計測位置
残留している
支承が動いていない
VPR17 VPR19 VPR21 VPR23 VPR24 VPR25
0.43 mm 0.59 mm 0.69 mm 0.65 mm 4.42 mm 1.37 mm
亀裂
位置①
(亀裂無し)
亀裂
位置③
(亀裂無し)
アーチ部 側径間部
格点
亀
裂
図
変位差
径間
:床板-主構間の相対変位
:たわみ、支承・ヒンジ部の変位 残留している
VP23
-4-
2.2 局部応力による検証
横桁に面外方向の変形が生じた状態の垂直材と横桁の接合部の FEM 解析結果を図-2.7 に示す。接合部の垂直材側に
応力集中が確認できる。その箇所の主応力を図-2.8に示すように、応力集中が生じている箇所の主応力の方向と写真-2.1
に示す亀裂の方向がほぼ一致している。
その応力状態での変形図を図-2.9 に示す。これより、横桁フランジの面外変形によって、垂直材に面外変形が生じて
いるものと考えられる。
2.3 疲労照査による検証
(1) 疲労照査方法
横桁と垂直材の接合部は、公称応力が明確に定義できないとともに、道示Ⅱ 6.3.2 及び「鋼道路橋の疲労設計指針」(平
成 14 年 3 月、日本道路協会)(以下、疲労設計指針と記す。)の疲労強度等級に示されていない継手となることから、ホ
ットスポット応力(コラム(その2)参照)を用いて疲労照査を行う。ホットスポット応力を用いた疲労照査は、「鋼構造
物の疲労設計指針・同解析(改定案)」(平成22年12月1日改正、日本鋼構造協会)(以下、JSS疲労設計指針と記す。)
に準じて行う。なお、継手に作用する応力範囲の算出にあたっては、疲労設計指針に準じる。
ホットスポット応力:溶接止端位置から0.4tおよび1.0t(t:板厚)の点における表面での応力からホットスポット
位置に線形外挿して求める。ただし、今回は、着目点近傍の2つのシェル要素(一辺20mm
程度)の2点を線形外挿して求める、ホットスポット的応力を使用する。
疲労設計曲線 :荷重伝達型十字継手に対する疲労設計曲線を用いる。
止端破壊・非仕上げの継手 F(65)
(2) 疲労照査結果
ホットスポット的応力の算出方法を図-2.11に、それを用いた疲労照査結果を表-2.2に示す。
照査を行った 4 箇所全てにおいて、累積損傷度D1+D2 が 1.0 を超える結果となり、亀裂発生位置と一致している。ま
た、累積損傷度と亀裂状況の関係では、表-2.3に示すように累積損傷度が最も大きいVPR21の亀裂が、相対的に最も長
くなっている点で一致している。
平成18年耐震補強以降の累積損傷度D2が1.0を超えていないことから、耐震補強による影響ではなく、建設当時から
の累積によるものと考えられる。
VP25横桁面外応力最大時(VP7載荷)
図-2.9 FEM解析変形図
図-2.11 ホットスポット的応力の算出方法
図-2.7 FEM解析応力コンタ図(VP25)
写真-2.1 亀裂発生状況
建設時VPR21着目のVP19載荷時のホットスポット的応力
最大応力-最小応力=応力範囲
29.9-(-71.5)=101.4(N/mm2)
※29.9は、VP10載荷時の値
図-2.8 FEM解析主応力ベクトル図
表-2.2 疲労照査結果
亀裂
図-2.10 主応力ベクトル表示凡例
下弦材
横桁
斜材
垂直材の
面外変形
(A-A断面)
大型車交通量
(台/日・車線)
期間Y
(年)
1
(25)
2
(24)
3
(23)
4
(22)
5
(21)
6
(20)
7
(19)
8
(18)
9
(17)
10
(16)
11
(15)
12
(14)
13
49.0 - 95.6 101.4 63.8
1.96 - 8.79 23.08 5.75
1.00 - 4.48 11.78 2.94
OUT - OUT OUT OUT
47.3 - 64.8 65.3 45.4
0.12 - 0.18 0.41 0.14
2.08 - 8.97 23.49 5.89
1.00 - 4.32 11.31 2.84
OUT - OUT OUT OUT
357 48
1000 41
応力範囲(N/mm
2
)
応力範囲(N/mm
2
)
現在亀裂が生じている箇所
累計(D1+D2)
VPR
累積損傷度D2
判定(Da<1.0)
VPR
累積損傷度D1
判定(Da<1.0)
格点番号
疲労照査結果
VP25に対する比率
VP25に対する比率
作用力
-5-
表-2.3 亀裂状況
コラム(その2):ホットスポット応力
ホットスポット応力:溶接ビードによる局部的な応力集中を含まず、構造的応力集中を考慮した溶接止端位置の応力とし
て定義(図-参2.4)
構造的応力集中 :板に溶接部が存在する、あるいは板厚が変化することによって継手の剛性が変化し、継手全体に広
く生じる応力集中のこと(図-参2.5)
図-参2.4 構造的応力集中ホットスポット応力の定義
※
図-参2.5 構造的応力集中
※
※(社)日本鋼構造協会:鋼構造物の疲労設計指針・同解説(改訂版)JSS Ⅳ 09-2010、平成22年12月1日改正
2.4 亀裂原因の特定
垂直材と横桁フランジの接合部の亀裂の原因として、以下の要因が考えられる。
① 車両走行時において主構と床板・縦桁との間に橋軸方向の相対変位が発生し、横桁に面外曲げが発生した。さらに、中
央径間部と側径間部の間がヒンジ構造(下弦材:ピン構造、上弦材:スリーブ構造、縦桁:固定支承)となっており、
主構のヒンジ部(下弦材)と縦桁の固定支承の離隔(約1.8m、図-2.12)によって、横桁の面外曲げが大きくなった。
② 横桁の面外曲げによって、鋼管内部に補剛材(図-2.13)が設置されていない垂直材に面外変形が生じ、横桁フランジ
端のまわし溶接部近傍に応力集中が発生した。
③ 大型車の通行(2,000~700 台/日)によって、横桁の面外曲げとそれに伴う垂直材の応力集中の繰返し作用により疲
労亀裂が発生した。
図-2.12 ヒンジ部の構造 図-2.13 鋼管内部に未設置の補剛材
縦桁
上弦材
下弦材
ピン構造
固定支承
スリーブ構造
VPR17 VPR19 VPR21 VPR23 VPR24 VPR25
48年 - 5.89 23.49 8.97 - 2.08
(VP25に対する比率)
- (2.84) (11.31) (4.32) - (1.00)
亀裂位置① (亀裂無し) (亀裂無し)
亀裂位置③ (亀裂無し) (亀裂無し)
アーチ部 側径間部
格点
径間
亀
裂
図
累積
損傷度
-6-
3.下弦材と横桁ニーブレースフランジの接合部
3.1 公称応力による検証
(1) 応力と亀裂発生箇所
全体解析(梁要素)により算出した断面力から求めた下弦材と横桁の活荷重時(T 荷重 1 組:200kN)の応
力範囲を図-3.1に示す。図-3.1に示す応力は、下弦材、横桁ともに、設計時には考慮されていない二次応力に
該当する。この応力範囲より、以下の傾向が確認できる。
① 下弦材は、アーチ部(VP13~VP23)より側径間(VP24、VP25)の応力範囲の方が小さい傾向にある。
② 横桁の面内方向では、床板の端部となる VP23、VP25 で応力範囲が大きい傾向にある。(再掲)
③ 横桁の面外方向では、アーチ中央部 VP13~17 の応力範囲が小さく、VP19 から VP25 に向けて大きく
なる傾向にある。
④ 建設時と比べ現況の下弦材の応力範囲が、多少大きくなっている。
以上の応力範囲の傾向のうち、上記②と亀裂発生位置(VP23、VP25)が一致しており、横桁の面内方向応
力が亀裂発生に影響を与えていると推定される。以下に、載荷試験結果および解析結果(FEM 解析)からの
ニーブレースの応力範囲の傾向を示す。
� 図-3.2 に示す応力範囲では、載荷試験結果では VP19・21 と VP23 間の差は小さいが、FEM 解析結果
では VP19・21 と VP23 間の差が大きくなっており、床版(有効幅、損傷)が影響していると考えられる。
� ニーブレース⑤⑥の最大応力発生時の載荷位置は、図-3.3 に示すように横桁の直上に載荷した状態であ
り、横桁の面内方向応力が卓越することを示している。
� ニーブレースの作用力は、図-3.4 に示すように、横桁のたわみ(剛性)に密接な関連があると推定され
る。解析モデルでは横桁と床板は合成構造としてモデル化(コラム(その3)参照)を行っており、床板
端部となる横桁 VP1、VP3 の床板の有効幅は、他の横桁よりも小さくなっている。
� 表-3.1、図-3.5 に示す載荷試験結果から算出した有効幅でも、床板端部となる VP25 は他より小さな有
効幅となっている。
(b) 横桁面外方向応力の応力範囲
(a) 横桁面内方向応力の応力範囲
:亀裂発生位置
図-3.1 格点毎の下弦材・横桁の応力範囲
(a) 計測位置図 (b) 応力範囲(並列載荷)
図-3.2 ニーブレースの応力範囲(載荷試験結果・解析結果)
表-3.1 床版有効幅一覧表
(b) VPR23 (a) VPR19
図-3.3 ニーブレースの応力範囲(載荷試験結果・並列載荷)
図-3.4 ニーブレースの作用力
有効幅
アーチ部 側径間部 アーチ部
側径間部
⑤
①
④ ②
⑥
⑧ ⑦
③
σu σL
載荷試験結果
からの逆算
解析上の設定
VP21
-3.0 18.3 1.35 9.000アーチ中間横桁
VP24
-3.5 22.6 1.15 4.750側径間中間横桁
VP25
-10.9 22.5 0.35 2.375端横桁
載荷試験応力
(N/mm2)備考
有効幅
(m)
図-3.5 床版有効幅(合成効果)の算出方法
横桁上下フランジの計測応力より、図心軸
を算出して、同等の図心となる床版有効幅
を逆算
-7-
(2) 横桁ニーブレースの挙動
横桁ニーブレースのフランジと下弦材の接合部のうち、フランジのほぼ全周に亀裂が発生している VPR25 に
おいて、載荷試験時におけるニーブレースと下弦材表面の変位の計測結果を図-3.6、3.7に示す。これは、試験
車(20ton)2 台を並列に、後後輪を載荷位置に載荷した状態で静的に計測したものである。
計測結果ではフランジ両側の変位の差はわずかで、横桁の面外曲げの影響を受けていないことが確認できる。
また、横桁直上の載荷位置が最大値となっている。
コラム(その3):床板の有効幅
RC 床板と鋼桁の合成作用を考慮して設計する際に、桁作用として考慮できる床板の幅のことを有効幅という。
一般に、構造解析による桁の断面力を算出する場合には、桁間隔の 1/2 を有効幅としている。
伊達橋の RC 床板は、縦桁、横桁とスラブアンカーによって固定されている。このため縦桁、横桁ともに、RC
床板と合成構造として、解析モデルを作成している。中間横桁では両側の横桁間隔の 1/2 を有効幅として考慮で
きるが、端横桁では片側の横桁間隔の 1/2 の有効幅しか考慮できないため、等間隔の横桁間隔の場合、端横桁の
有効幅は、中間横桁の 1/2 となる。
図-参 3.1 解析モデルでの床板の有効幅
3.2 局部応力による検証
横桁の面内方向の変形が最大となる状態の下弦材と横桁ニーブレースの接合部のFEM解析結果を図-3.8に
示す。ニーブレースフランジ下面に応力集中が確認できる。応力集中箇所の主応力を図-3.10 に示すように、
応力集中が生じている箇所の主応力の方向と写真-3.1 に示す亀裂の方向が概ね一致していることが確認でき
る。また、フランジ端部より中央部の応力が若干高くなっており、フランジ中央部に発生した亀裂が端部へと
伸びたと推測される。
その応力状態で支承部での変形図を図-3.11 に示す。これより、ニーブレースフランジの作用力によって、
下弦材に面外変形が生じていることが確認できる。また、下弦材の中央から下部に設置されている補剛リブに
よって、変形可能な範囲が垂直材と補剛リブの狭い範囲に限定されており、変形の曲率が大きくなったと考え
られる。なお、図-3.9に示す補剛リブのない VP19 の応力集中の程度は、VP25 より小さくなっている。
図-3.8 FEM 解析応力コンタ図(VP25) 図-3.9 FEM 解析応力コンタ図(VP19)
VPR25 横桁面内応力最大時(VP25 載荷)
図-3.11 FEM 解析変形図
図-3.10 FEM 解析主応力ベクトル図 写真-3.1 亀裂発生状況
亀裂
図-3.7 ニーブレースフランジ 変位計測結果(VPR25)(20t並列載荷時)
図-3.6 ニーブレース変位計測概要
変位(mm)
A点 0.60
B点 0.64
変位差 0.04
ニーブレース
下弦材
変位
下弦材
下横構
ニー ブレース
垂直材
下弦材面外変形
(A-A 断面)
下弦材
ニー
ブレース
支承の補剛リブ
作用力
-8-
3.3 疲労照査による検証
(1) 疲労照査方法
横桁と下弦材の接合部は、公称応力が明確に定義できないとともに、道示Ⅱ 6.3.2 及び疲労設計指針の疲労
強度等級に示されていない継手となることから、ホットスポット応力(コラム(その2)参照)を用いて疲労
照査を行う。ホットスポット応力を用いた疲労照査は、JSS 疲労設計指針に準じて行う。なお、継手に作用す
る応力範囲の算出にあたっては、疲労設計指針に準じる。
ホットスポット応力:溶接止端位置から 0.4t および 1.0t(t:板厚)の点における表面での応力からホッ
トスポット位置に線形外挿して求める。
ただし、今回は、着目点近傍の 2つのシェル要素(一辺 20mm 程度)の 2 点を線
形外挿して求める、ホットスポット的応力を使用する。
疲労設計曲線 :荷重伝達型十字継手に対する疲労設計曲線を用いる
止端破壊・非仕上げの継手 F(65)
(2) 疲労照査結果
ホットスポット的応力の算出方法を図-3.12に、それを用いた疲労照査結果を表-3.2に示す。
照査を行った 4 箇所全において、中央部の累積損傷度 D1+D2 が VP1、VP3 で 1.0 を超える結果となり、亀
裂発生位置と一致している。また、累積損傷度と亀裂状況の関係では、表-3.3 に示すように累積損傷度が最も
大きい VPR1、25 の亀裂が、VPR3 よりも長くなっている点で一致している。
平成 18年耐震補強以降の累積損傷度 D2 が VP1 では 1.0 を超えているが、横桁の面内応力は建設時と耐震補
強時で変わらないこと、及び VP3 では 1.0 を超えていないことから、耐震補強による影響ではなく、建設当時
からの累積によるものと考えられる。
3.4 損傷原因の特定
① ニーブレースの応力によって、鋼管内部に補剛材(図-3.13)が設置されていない下弦材に面外変形が生じ、
ニーブレース端のまわし溶接部近傍に応力集中が発生した。
② 下弦材の下部には荷重伝達のための補剛リブが設置(VP1、3、23、25)されており、ニーブレースの応力
によって下弦材の変形可能な範囲が狭くなり、面外変形の曲率が大きくなった。
③ 全ての横桁と床板はスラブアンカーによって一体化した構造となっており、車両走行時には合成桁としての
挙動を示している。床板端部に位置する支点上と支柱上の横桁は床板の有効幅が相対的に小さく、ニーブレ
ースから下弦材に作用する応力が大きくなった。特に、支点上の横桁は、横桁間隔が小さく、下弦材の板厚
が薄いことから、下弦材の面外変形が大きくなった。
④ 大型車の通行(2,000~700 台/日)によって、下弦材の面外曲げによる応力集中の繰返し作用により疲労
亀裂が発生した。
表-3.3 亀裂状況
図-3.13 鋼管内部に未設置の補剛材
図-3.12 ホットスポット的応力の算出方法
表-3.2 疲労照査結果
現在亀裂が生じている箇所
最大応力-最小応力=応力範囲
10.7-(-188.5)=199.2(N/mm2)
※10.7 は、VP23 載荷時の値
VPR5(VPR21) VPR7(VPR19)
48年 0.28 0.34
(VPR25に
対する比率)
(0.00) (0.00)
格点 VPR1 VPR25 VPR3 VPR23 VPR5 VPR19
亀裂位置⑤
(亀裂無し) (亀裂無し) (亀裂無し) (亀裂無し)
亀裂位置⑥
(亀裂無し) (亀裂無し) (亀裂無し)
累積
損傷度
格点
亀
裂
図
側径間部 アーチ部
径間
(1.00) (0.01)
VPR1(VPR25) VPR3(VPR23)
180.66 1.46
大型車交通量
(台/日・車線)
期間Y
(年)
1
(25)
2
(24)
3
(23)
4
(22)
5
(21)
6
(20)
7
(19)
8
(18)
9
(17)
10
(16)
11
(15)
12
(14)
13
199.2 39.9 23.2 24.4
174.42 - 1.41 0.28 0.32
1.000 0.008 0.002 0.002
OUT - OUT OK OK
199 - 41.2 21.8 27.4
6.24 - 0.06 0.01 0.02
180.66 - 1.46 0.28 0.34
1.000 0.008 0.002 0.002
OUT - OUT OK OK
格点番号
疲労照査結果
VP25に対する比率
VP25に対する比率
1000 41年
VPR
累積損傷度D1
判定(Da<1.0)
累積損傷度D2
VPR
累計(D1+D2)
判定(Da<1.0)
応力範囲(N/mm
2
)
応力範囲(N/mm
2
)
357 48年
建設時 VPR25 着目の VP25 載荷時の
ホットスポット的応力
-9-
4.支承部補剛リブ
4.1 局部応力による検証
(1) 解析モデル
支承部補剛リブの亀裂が発生している箇所は、写真-4.1に
示すように中央の補剛リブと支承のピンチプレートが接触し
ており、上部構造の水平方向の移動を拘束する構造となって
いる。このため、解析モデルでは、ピンチプレートと接触す
る補剛リブの位置に水平方向の移動を拘束する支点を設けて
いる。
(2) 亀裂発生箇所の局部応力
支承部の FEM 解析結果を図-4.1に示す。ピンチ
プレートと接触する位置に応力集中が確認できる。
その箇所の主応力を図-4.2 に示す。応力集中が生
じている箇所の主応力の方向と写真-4.2 に示す亀
裂の方向がほぼ一致していることが確認できる。
図-4.3 に示す横桁位置の下横構(支材)の応力
において、支承部(VP25)が一般部(VP23)に比
べ小さくなっており、支承が橋軸直角方向の変位を
拘束していることが確認できる。
4.2 疲労照査による検証
(1) 疲労照査方法
支承部補剛リブとピンチプレートの接触部は、公称応力が明確に定義できないとともに、道示Ⅱ 6.3.2 及び
疲労設計指針の疲労強度等級に示されていない継手となることから、ホットスポット応力(コラム(その2)
参照)を用いて疲労照査を行う。ホットスポット応力を用いた疲労照査は、JSS 疲労設計指針に準じて行う。
なお、継手に作用する応力範囲の算出にあたっては、疲労設計指針に準じる。
ホットスポット応力:溶接止端位置から 0.4t および 1.0t(t:板厚)の点における表面での応力からホッ
トスポット位置に線形外挿して求める。
ただし、今回は、補剛リブ下端からピンチプレート接触位置まで 1 つのシェル要
素(一辺 20mm 程度)しかないことから、1 点を代表法として求める、ホットス
ポット的応力を使用する。
疲労設計曲線 :荷重伝達型十字継手に対する疲労設計曲線を用いる
止端破壊・非仕上げの継手 F(65)
(2) 疲労照査結果
ホットスポット的応力による疲労照査結果を表-4.1に示す。
累積損傷度 D1+D2 が 1.0 を超える結果となり、亀裂発生状況と一致している。また、平成 18 年耐震補強以
降の累積損傷度 D2 が 1.0 を超えていないことから、耐震補強による影響ではなく、建設当時からの累積による
ものと考えられる。
4.3 損傷原因の特定
① 支点部補剛リブと支承のピンチプレートの接触により、車両走行時の横桁の変形により発生する橋軸直角方
向の水平力がソールプレートに作用し、支点部補剛リブとソールプレートの接合まわし溶接部近傍に高い応
力集中が発生した。
② 大型車の通行(2,000~700 台/日)によって、支点部補剛リブの当該応力集中の繰返し作用により疲労亀
裂が発生した。
図-4.2 FEM 解析主応力ベクトル図
写真-4.2 亀裂発生状況
亀裂
表-4.1 疲労照査結果
写真-4.1 補剛リブとピンチプレートの接触
図-4.3 横桁位置の下横構支材応力(載荷試験結果・並列載荷)
図-4.1 FEM 解析応力コンタ図
大型車交通量
(台/日・車線)
期間Y
(年)
25
63.0
5.52
OUT
62.1
0.35
5.87
OUT
現在亀裂が生じている箇所
357 48年
応力範囲(N/mm
2
)
VPR
累積損傷度D2
累計(D1+D2)
判定(Da<1.0)
1000 41年
応力範囲(N/mm
2
)
VPR
累積損傷度D1
判定(Da<1.0)
格点番号
疲労照査結果
図-4.4 下横構支材の挙動
<計測位置>
-10-