大一創芸取材を終えて 有限会社 大一創芸 代表取締役 大山 完一 〒581–0815...

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取材を終えて 有限会社 大一創芸 代表取締役 大山 完一 〒581–0815 大阪府八尾市宮町4-3-30 TEL. 072-999-6414 FAX. 072-997-5481 資本金/8,000千円 従業員/8名 主な取引先/フォーマル系バックメーカー、文具店、 雑貨店、仏壇仏具店、ギフトカタログなど 主な保有設備/自動延反機1台、自動裁断機1台、業務用 ミシン11台、油 圧 押 機1台、自動 転写 プレス機1台など 主力製品/ふくさ及び布製品全般 37 有限会社 大一創芸 自動機の導入で生産向上 新たなデザインのふくさ開発へ 国産にこだわったふくさを製造販売 ふくさの製造・販売を手がけ、売り上げの95% 以上をふくさ事業が占める。国産にこだわり、生地は 全て自社で仕入れ、縫製などは職人の手作業で行っ ている。 昭和53年に、現社長の大山完一氏が大阪府八尾 市で創業し、キーホルダーなど観光物産商品の製造 卸や、巾着などの布製品も製造していた。大手フォー マルバックメーカーのふくさを取り扱い始めたことを きっかけに、ふくさのOEM(相手先ブランド)生産 が主力事業となっていった。 オリジナルブランドの展開を開始 近年はOEM生産だけでなく、自社製品の製造販 売にも注力し、下請け企業からの脱却を目指している。 平成27年にはオリジナルブランド「スタイルふくさ」 を立ち上げた。若者をメーンターゲットとし、従来の イメージを覆 くつがえ す新しいふくさの開発に取り組んでいる。 事業内容 自動機を導入 CADシステム、スキャナも 平成28年の「ものづくり補助金」で新たに4つの設備 を導入した。丸めた状態で保管する生地を延ばし重ねる 自動延 えんたん 反機、生地を裁断する自動裁断機、デザイン設計 を行うCADシステム、生地型などをスキャンするスキャナ。 繊維業では、布の型抜きがリードタイム・コスト・品質 に最も大きな影響を及ぼす。布の型抜きには熟練の技能 が必要なため、単なる人員増加では生産能力拡大は難 しい。これらの課題を解決するには、製造工程において 自動延反機と自動裁断機を導入することが効果的と判断 した。 従来の加工法の弱点を克服 また従来、生地の裁断に使用する鉄製の抜き型では、 直線的な裁断しかできず、形状・機能に制約があった。 スキャナを導入することで手切り型からでもデザイン 設計ができる。CADシステムと組み合わせることでデザ イン性・生産効率の向上につなげた。 補助事業 作業時間削減で生産性向上 製造コスト削減も実現 自動延反機を導入するまでは、厚さに応じて生地を 複数枚重ねる作業を手作業で行っていた。延反作業は、 生地をしわ無くきっちり重ねなくてはならず、生地によっ ては複数名で作業することもあり、時間がかかる作業 だ。また裁断に関しては1つのふくさを作る際に4―5 個の抜き型が必要で、抜き型の選別にも時間を要する。 自動機を導入したことで複数名必要だった自動延反機・ 裁断機のラインは、1名で作業できるようになった。機械 化によって作業時間が短縮でき、ふくさの生産能力は 月に1万5,000個から、2万5,000個にまで向上した。 抜き型の選択ミスによる材料のロスを抑えられたこと で、本体の製造コストを9%減らすことができた。 スムーズな試作で製品開発が活発化 1番の成果は、試作がスムーズに出来るようになった ことだ。自動裁断機の導入で抜き型の製造が不要に なり、調整が必要な場合も新たな抜き型を作り直す 工程が必要ない。また、通常直線的な裁断しかでき ない抜き型よりも、自動裁断機は自由な設計が可能 なうえ、CADシステムで設計するため、保存した設計 データからの微調整も容易だ。試作へのハードルが下 がり、製品開発もより活発にできるようになった。 具体的成果 営業活動強化 新たな販路開拓も 現在ふくさは文具店や雑貨店などさまざまな店舗 で販売されている。新しい購買層獲得のため、結婚 式に参列する機会の多い若い世代(20―40代)を ターゲットにした営業活動を展開する。文具店などに 加え仏壇仏具、ブライダルなどの専門店の販路開拓 も目指している。フォーマルスーツ店に対しては、新 社会人向けに関連販売の提案を想定。大学などの 教育機関には、卒業記念品としてオリジナルのふくさ を提案している。 高付加価値製品への取り組みを展開 自動延反機・自動裁断機などの導入で生産効率が 高まったことで、カスタマイズ品などにもさらに対応 できるようになり、高付加価値製品への取り組みが 加速している。さらに平成29年度の「ものづくり 補助金」では刺繍機を導入。校章や家紋などを施す オーダーメイド品への対応にも磨きをかけている。 自動機の導入で極端に言えば、丸や星形の形など も裁断できるようになったという。生地を自由な形に 裁断できる技術を生かし、コインケースやブックカバー などふくさ以外の製品にも積極的に取り組んでいく 考えだ。 今後の戦略 導入した自動延反・裁断機ライン 過去からの伝統に目を向けつつも、しっかり未来を見据えた同社の姿勢 が印象的だった。日本の伝統品であるふくさだが、歴史に甘んじず新たな チャレンジを続けることで伝統は続いていくのだと感じた。オリジナルブランド 「スタイルふくさ」は一目見て思わず心躍るようなかわいさがある。オーダー メイドの受注生産など高収益事業への展開も加速する同社。ふくさととも 発展し続ける同社の躍進に期待したい。 新しいスタイルに 挑戦してこそ伝統が続く https://hukusa.co.jp/ 創 業40年 、ふくさ製 造20年 の 専 門 的な ノウハウを生かし、日本の伝統的な文化で あるふくさをあらゆる世代の方に伝えていく お手伝いをしながら、新たな挑戦をし続け ていきたいと思っております。 日本の伝統文化「ふくさ」を守り、 新たな挑戦を続ける 代表取締役 大山 完一 短納期 企画力 小ロット OK オンリー ワン技術 量産 OK 試作 OK 連携力 自動裁断機で切断した生地 「スタイルふくさ」製品 平成30年度ものづくり補助金成果事例集 平成30年度ものづくり補助金成果事例集 79 78

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取材を終えて

有限会社 大一創芸代表取締役 大山 完一〒581–0815 大阪府八尾市宮町4-3-30TEL. 072-999-6414  FAX. 072-997-5481資本金/8,000千円 従業員/8名主な取引先/フォーマル系バックメーカー、文具店、

雑貨店、仏壇仏具店、ギフトカタログなど 主な保有設備/自動延反機1台、自動裁断機1台、業務用

ミシン11台、油圧押機1台、自動転写プレス機1台など

主力製品/ふくさ及び布製品全般

37有限会社 大一創芸

自動機の導入で生産向上新たなデザインのふくさ開発へ

国産にこだわったふくさを製造販売ふくさの製造・販売を手がけ、売り上げの95%

以上をふくさ事業が占める。国産にこだわり、生地は全て自社で仕入れ、縫製などは職人の手作業で行っている。

昭和53年に、現社長の大山完一氏が大阪府八尾市で創業し、キーホルダーなど観光物産商品の製造卸や、巾着などの布製品も製造していた。大手フォーマルバックメーカーのふくさを取り扱い始めたことをきっかけに、ふくさのOEM(相手先ブランド)生産が主力事業となっていった。

オリジナルブランドの展開を開始近年はOEM生産だけでなく、自社製品の製造販

売にも注力し、下請け企業からの脱却を目指している。平成27年にはオリジナルブランド「スタイルふくさ」を立ち上げた。若者をメーンターゲットとし、従来のイメージを覆

くつがえす新しいふくさの開発に取り組んでいる。

事業内容

自動機を導入 CADシステム、スキャナも平成28年の「ものづくり補助金」で新たに4つの設備

を導入した。丸めた状態で保管する生地を延ばし重ねる自動延

えんたん反機、生地を裁断する自動裁断機、デザイン設計

を行うCADシステム、生地型などをスキャンするスキャナ。繊維業では、布の型抜きがリードタイム・コスト・品質

に最も大きな影響を及ぼす。布の型抜きには熟練の技能が必要なため、単なる人員増加では生産能力拡大は難しい。これらの課題を解決するには、製造工程において自動延反機と自動裁断機を導入することが効果的と判断した。

従来の加工法の弱点を克服また従来、生地の裁断に使用する鉄製の抜き型では、

直線的な裁断しかできず、形状・機能に制約があった。スキャナを導入することで手切り型からでもデザイン設計ができる。CADシステムと組み合わせることでデザイン性・生産効率の向上につなげた。

補助事業

作業時間削減で生産性向上 製造コスト削減も実現自動延反機を導入するまでは、厚さに応じて生地を

複数枚重ねる作業を手作業で行っていた。延反作業は、生地をしわ無くきっちり重ねなくてはならず、生地によっては複数名で作業することもあり、時間がかかる作業だ。また裁断に関しては1つのふくさを作る際に4―5個の抜き型が必要で、抜き型の選別にも時間を要する。自動機を導入したことで複数名必要だった自動延反機・裁断機のラインは、1名で作業できるようになった。機械化によって作業時間が短縮でき、ふくさの生産能力は月に1万5,000個から、2万5,000個にまで向上した。抜き型の選択ミスによる材料のロスを抑えられたことで、本体の製造コストを9%減らすことができた。

スムーズな試作で製品開発が活発化1番の成果は、試作がスムーズに出来るようになった

ことだ。自動裁断機の導入で抜き型の製造が不要になり、調整が必要な場合も新たな抜き型を作り直す工程が必要ない。また、通常直線的な裁断しかできない抜き型よりも、自動裁断機は自由な設計が可能なうえ、CADシステムで設計するため、保存した設計データからの微調整も容易だ。試作へのハードルが下がり、製品開発もより活発にできるようになった。

具体的成果

営業活動強化 新たな販路開拓も現在ふくさは文具店や雑貨店などさまざまな店舗

で販売されている。新しい購買層獲得のため、結婚式に参列する機会の多い若い世代(20―40代)をターゲットにした営業活動を展開する。文具店などに加え仏壇仏具、ブライダルなどの専門店の販路開拓も目指している。フォーマルスーツ店に対しては、新社会人向けに関連販売の提案を想定。大学などの教育機関には、卒業記念品としてオリジナルのふくさを提案している。

高付加価値製品への取り組みを展開自動延反機・自動裁断機などの導入で生産効率が

高まったことで、カスタマイズ品などにもさらに対応できるようになり、高付加価値製品への取り組みが加速している。さらに平成29年度の「ものづくり補助金」では刺繍機を導入。校章や家紋などを施すオーダーメイド品への対応にも磨きをかけている。

自動機の導入で極端に言えば、丸や星形の形なども裁断できるようになったという。生地を自由な形に裁断できる技術を生かし、コインケースやブックカバーなどふくさ以外の製品にも積極的に取り組んでいく考えだ。

今後の戦略

導入した自動延反・裁断機ライン

過去からの伝統に目を向けつつも、しっかり未来を見据えた同社の姿勢が印象的だった。日本の伝統品であるふくさだが、歴史に甘んじず新たなチャレンジを続けることで伝統は続いていくのだと感じた。オリジナルブランド

「スタイルふくさ」は一目見て思わず心躍るようなかわいさがある。オーダーメイドの受注生産など高収益事業への展開も加速する同社。ふくさととも発展し続ける同社の躍進に期待したい。

新しいスタイルに挑戦してこそ伝統が続く

https://hukusa.co.jp/

創業40年、ふくさ製造20年の専門的なノウハウを生かし、日本の伝統的な文化であるふくさをあらゆる世代の方に伝えていくお手伝いをしながら、新たな挑戦をし続けていきたいと思っております。

日本の伝統文化「ふくさ」を守り、新たな挑戦を続ける代表取締役 大山 完一

短納期 企画力 小ロットOK

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量産OK

試作OK 連携力

自動裁断機で切断した生地

「スタイルふくさ」製品

平成30年度ものづくり補助金成果事例集平成30年度ものづくり補助金成果事例集

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