DNAシ ークエンス法の現在 - J-STAGE

6
血 栓 止 血 誌9(3):190~195, 1998 技術講座 DNAシ ー ク エ ン ス 法 の 現 在 夫*,服 平* Technical Course"Method of DNA Sequencing" Kazuo ISHII*, Masahira HATTORI* Key words:DNA sequencing, dideoxy method, colony-PCR, DNA auto sequencer, capillary array gel electrophoresis は じめ に 癌や遺伝子病の起因 となる遺伝子の変異部位 は,DNA塩 基 配 列 決 定 法(DNAシ ー ク エ ンス 法)に よ り同 定 され る.PCR法 の 普 及 に よ り, そ の検 査 は き わ め て 容 易 に な って お り,日 常 的 に お こ な う こ と も可 能 で あ る.DNA塩 基 配 列 決定 を業 として受託 す る企業(TaKaRa,サワ デ ィ ー,不 二 家 等)も 存 在 し,外 注 に よ り解 析 を依 頼 す る こ とに よ り,効 率 よ く研 究 が 進 め ら れ る場 合 もあ る. DNAシ ー ク エ ン ス 法 は,化 学 反 応 を利 用 し た 方 法(Maxam-Gilbert法)1)と 酵 素 反 応 を利 用 した 方 法(ジ デ オ キ シ法)2)が あ る.操 作 の 容 易 さ等の理由からジデオキシ法が,汎 用 されて い る.Maxam-Gilbert法 は,特殊 な用 途(DNA フ ッ トプ リン ト法 な ど)に 用 い られ るにす ぎな い.現 在 は,各 メ ー カ ー か ら様 々 な シ ス テ ム の キ ッ トや 自動 機 器 が 市 販 さ れ て い る.こ れ を利 用 す る こ とに よ り容 易 に再 現 性 の あ るデ ー タ が 得 られ る. ヒ トゲ ノム 解 析 と その モ デ ル 生 物 の ゲ ノ ム解 析 の進 展 に と もな い,DNAシ ー ク エ ン ス 解 析 の 自動 化,シ ス テ ム化 が 進 ん で い る.数 十 台 も の 自動 塩 基 配 列 決 定 機 器(自動 シー ク エ ンサ ー) を備 え た大 規 模 な 高速DNA塩 基配列解 析セ ン ター(シ ー クエ ン シ ング セ ン タ ー)の 整 備 も進 んで お り,メ ガ ベ ー ス レベ ル,ゲ ノ ム サ イ ズ レ ベルのDNA塩 基配列の解析 も日常的にな りつ あ る. 本 稿 で は,DNA塩基 配 列 決 定 法 の 原 理,PCR を用いた簡便な鋳型調製法,自 動シークエンサ ー を用 いた 最 新 の 塩 基 配 列 決 定 法 の実 際 につ い て解説する. 1.DNAシ ークエンス法の原理 (1)ジデ オ キ シ法 の 原 理 図1に ジ デ オ キ シ 法 の原 理 を 示 す.DNA合 成 反 応 は,試験管 内 で 一 本 鎖DNAを 鋳 型(テ ン プ レ ー ト)と し,鋳 型 に相 補 な配 列 を もつ プ ラ イ マ ー か ら,DNA合成 酵 素 に よ り,デオ キ シ ト リホスフェー ト(dNTP)が,1個ずつ結合 して い く反 応 で あ る.こ の反 応 は,伸 長 末 端 の ヌ ク レオチ ド糖 鎖3'位OH基 と次 に付加 す る デオ キ シ トリホス フェー ト(dNTP)糖鎖5'位の ト リホ ス フ ェ ー ト基 との 間 の 結 合(ピ ロ ホ ス フ ェ ー トの脱 離)に よ り進 む .ジ デ オ キ シ法 で は糖 *東 京大学医科学研究所 トゲ ノ ム 解 析 セ ンター 〔〒108 -8639東 京 都 港 区 白 金 台4-6-1〕 Human Genome Center, Institute of Medical Science, University of Tokyo(4-6-1 Shirokanedai, Minato- ku, Tokyo 108-8639, Japan.〕

Transcript of DNAシ ークエンス法の現在 - J-STAGE

血 栓 止 血誌9(3):190~195, 1998

技術講座

DNAシ ークエンス法の現在

石 井 一 夫*,服 部 正 平*

Technical Course"Method of DNA Sequencing"

Kazuo ISHII*, Masahira HATTORI*

Key words:DNA sequencing, dideoxy method, colony-PCR, DNA auto sequencer, capillary

array gel electrophoresis

は じめ に

癌や遺伝子病の起因 となる遺伝子の変異部位

は,DNA塩 基配列決定法(DNAシ ークエンス

法)に より同定される.PCR法 の普及 により,

その検査はきわめて容易になっており,日 常的

におこなうことも可能である.DNA塩 基配列

決定を業 として受託する企業(TaKaRa,サ ワ

ディー,不 二家等)も 存在 し,外 注により解析

を依頼することにより,効 率 よく研究が進めら

れる場合 もある.

DNAシ ークエンス法は,化 学反応 を利用 し

た方法(Maxam-Gilbert法)1)と 酵素反応 を利

用 した方法(ジ デオキシ法)2)が ある.操 作の容

易 さ等の理由からジデオキシ法が,汎 用 されて

いる.Maxam-Gilbert法 は,特 殊 な用途(DNA

フットプ リント法など)に 用いられるにすぎな

い.現 在は,各 メーカーから様々なシステムの

キットや自動機器が市販されている.こ れ を利

用することにより容易に再現性のあるデータが

得 られる.

ヒトゲノム解析 とそのモデル生物のゲノム解

析の進展にともない,DNAシ ークエンス解析

の自動化,シ ステム化が進んでいる.数 十台 も

の自動塩基配列決定機器(自 動シークエンサー)

を備えた大規模な高速DNA塩 基配列解析セ ン

ター(シ ークエンシングセンター)の 整備 も進

んでおり,メ ガベースレベル,ゲ ノムサイズレ

ベルのDNA塩 基配列の解析 も日常的にな りつ

ある.

本稿では,DNA塩 基配列決定法の原理, PCR

を用いた簡便な鋳型調製法,自 動シークエンサ

ーを用いた最新の塩基配列決定法の実際につい

て解説する.

1.DNAシ ークエンス法の原理

(1)ジ デオキシ法の原理

図1に ジデオキシ法の原理を示す.DNA合

成反応は,試 験管 内で一本鎖DNAを 鋳型(テ ン

プレー ト)と し,鋳 型 に相補な配列 をもつプラ

イマーから,DNA合 成酵素により,デ オキシ ト

リホスフェー ト(dNTP)が,1個 ずつ結合 して

いく反応である.こ の反応は,伸 長末端のヌク

レオチ ド糖鎖3'位OH基 と次 に付加 するデオ

キシトリホスフェー ト(dNTP)糖 鎖5'位 の ト

リホスフェー ト基 との間の結合(ピ ロホスフェ

ー トの脱離)に より進む.ジ デオキシ法では糖

*東 京 大 学 医 科 学 研 究 所 ヒ トゲ ノ ム 解 析 セ ン タ ー 〔〒108 -8639東 京 都 港 区 白 金 台4-6-1〕

Human Genome Center, Institute of Medical Science, University of Tokyo(4-6-1 Shirokanedai, Minato-

ku, Tokyo 108-8639, Japan.〕

石 井,ほ か:DNAシ ー クエ ンス法 の現 在 191

図2 伸長反応におけるdAとddAの 競合

鎖3'位 がH(水 素)基 に置換 したジデオキシト

リホスフェー トddNTP(ddN)が 反応系に少

量加えられている.伸長反応 にddNが 取 り込 ま

れた場合,そ のDNA鎖 の伸長末端3'位 はH基

となるため次の付加が起 こらな くなる.そ の結

果,DNAの 合成はそこで停止する.こ の とき加

えたddNを ターミネーターと呼ぶ.

例 えば,4種 類のdNTPの ほか に, ddATP

(ddA)を 加えて反応を行 うと,図2に 示したよ

うにテ ンプレー ト上のTの 位置でdAとddA

のいずれかが取 り込 まれる.ddAが 入ればその

伸長反応は上述 した理由で止 まる.一 方dAが

入れば伸長反応は更に進み,次 のTの ところで

同じ取 り込み競争が再び繰 り返 される.こ の取

り込み競争が常にテンプレー トのTの 位置で

おこるため,合成 されたDNAは,プ ライマーの

位置 とテンプレー ト上のTの 位置の間の長 さ

を持つことになる.同 様の反応をG,T,C(そ

れぞれ,ddG, ddT, ddCを ター ミネーター とし

た場合)に ついて独立して行 えば,す べての塩

基に相当する長 さのDNAが 合成されることに

なる.反 応終了後DNAを 熱変成により一本鎖

として,電 気泳動(ポ リアクリルアミドー尿素

ゲル)を 行 うことにより,各生成DNA断 片はそ

の長さにより分離 される.

図3 合成 されたDNAの 電気泳動による分離

得られた各生成DNA断 片は,ラ ジオアイソ

トープまたは蛍光色素で,標 識 されるため,検

出が可能である.ラ ジオアイソトープをもちい

た方法では,放 射性同位元素32Pま たは35Sで

標識 されたdNTPが 加 え られ,合 成 された

DNAは 放射活性を有する.電 気泳動後のゲル

をオー トラジオグラフィーにかければ,図3に

示 したようなシークエ ンスラダーをX線 フィ

ルム上 に得ることができる.図3の 場合の塩基

配列はプライマーか らGGACTAG--と 解読

される.

(2) 自動シークエンサーの原理

自動 シークエンサーを用いる場合 は,反 応産

物(シ ークエンス反応産物)は 蛍光色素を用い

て標識 される.こ の方法 には,蛍 光標識 したプ

ライマーを用いるダイプライマー法 と,蛍 光標

識 したター ミネーターを用いるダイター ミネー

192 日本血栓止血学会誌 第9巻 第3号

図4 多 チ ャ ネル キ ャ ピラ リー 型 シ ー クエ ンサ ー(MegaBACE 1000;

モ レ キ ュ ラー ダ イ ナ ミクス社)稼 働 中の ゲ ル イ メー ジ

図5 多 チ ャネル キ ャ ピラ リー型 シー ク エ ンサ ー(MegaBACE 1000;モ レ キ ュ ラー ダ イ ナ ミ

クス社)の 解 析 結果 の一 例

G(黒),A(緑), T(赤), C(青)で 各塩 基 が表 わ され,各 反 応 生成 物 の 泳 動 シ グナ ル

が 波 形 として プ リ ン トされ る.最 終 的 な塩 基 配列 は各 波形 の上 に左 よ り右 へ と表 わ され

る.DYEnamicTM ETプ ライ マ ー を用 い たサ イ クル シー ク エ ン シ ング キ ッ トに よ る プロ

トコー ル(Amersham Pharmacia社)を 用 いて シー クエ ンス反 応 を行 い, MegaBACE

1000キ ャ ピ ラ リー型 シー クエ ンサ ー(モ レキ ュラ ーダ イ ナ ミクス 社)を 用 い て解 析 した.

石 井,ほ か:DNAシ ー クエ ン ス法 の 現在 193

図6多 チ ャネル キ ャ ピラ リー 型 シ ー クエ ンサ ー(MegaBACE 1000;モ レキ ュ ラー ダ イ ナ ミクス社)

左;シ ー クエ ンサ ー の内部.中 央 部 に96本 の キャ ピ ラ リー が設 置 され て い る.

右;泳 動 用 の ゲ ル マ トリ ック ス を,入 れ て い る場 面.

タ ー 法 が あ る.ま た,4種 の タ ー ミネ ー ター 反 応

産 物 を,4色 の別 々 の 蛍 光 色 素 で標 識 し,1つ の

レー ン で泳 動 す る機 器(ABI社)と4種 の タ ー

ミネ ー タ ー 反 応 産 物 を,1種 類 の 蛍 光 色 素 で 標

識 し,4つ の 別 々 の レ ー ン で 泳 動 す る 機 器

(Amersham Pharmacia社,日 立 社)が あ る.

電 気 泳 動 は,ポ リア ク リル ア ミ ドゲ ル を用 い

た ス ラ ブ型(板 状)ゲ ル 電 気 泳 動 ま た は 多 チ ャ

ネ ル キ ャ ピ ラ リー型 電 気 泳 動 に よ り行 わ れ る.

そ れ ぞ れ の 蛍 光 標 識 され たDNAバ ン ドの検 出

は,レ ー ザ ー光 照射 に よ り行 わ れ る.解 析 結 果

は,コ ン ピ ュ ー タ の デ ィ ス プ レイ 上 で,モ ニ タ

ー で き(図4),4色(A,C,G, Tの そ れ ぞ れ

緑,青,黒,赤)の 波 形 状 の デ ー タ と して,ア

ウ トプ ッ トされ る(図5).

従 来 の ス ラ ブ ゲ ル 型(板 状)自 動 シ ー クエ ン

サ ー(ABI377な ど)で は,そ の操 作 は,1)泳

動 用 緩 衝 液 の 調 製,2)泳 動 用 ゲ ル の 調 製,3)サ

ンプ ル シー トの作 成,4)ゲ ル の設 置,5)サ ン

プ ル ロ ー デ ィ ン グ,6)電 気 泳 動,7)泳 動 後 の

デ ー タ 解 析 か ら構 成 され て い る.す べ て の工 程

は短 くて 半 日,通 常 は一 日が か りの工 程 と な り,

繁 雑 で 労 力 を要 す る.一 方,多 チ ャ ネル キ ャ ピ

ラ リー型 シー ク エ ンサ ー は,サ ンプ ル シ ー トの

作 成 以 外 の 操 作 を す べ て,自 動 化 す る こ とが 可

能 とな って い る.こ の機 器 は,高 速 の 電 気 泳 動

を行 うた め 高 電 圧 を か け られ る よ う に極 限 まで

泳 動 断 面 積 を小 さ く した もの で あ る.現 在,筆

者 らの ラ ボ で 稼 働 して い る機 種(MegaBACE

1000(図6);モ レ キ ュ ラ ー ダ イ ナ ミ クス 社)で

は,一 度 に96検 体 の 解 析 が2時 間 以 内 に終 了 す

る3).実 際 の 泳 動 時 間 は,約60分 で あ る.し か

し,ゲ ル マ トリ ッ ク ス の分 解 能 の限 界 に よ り,

現 在 は400b+α 位 しか,解 析 で き な い の で,長

い塩 基 配 列 を解 析 す る た め に は,調 製 す る鋳 型

の 数 を 多 くす る必 要 が あ る.今 後 の反 応 系,ゲ

ル マ トリ ッ ク ス の 改 良 に よ り,よ り長 い 配 列 が

解 析 で き る よ うに な る こ と を期 待 した い.

2.DNAシ ー ク エ ン ス 法 の 実 際

(1) PCRを 用 い た 簡 便 な鋳 型 調 製 法

鋳 型 とな るDNAは,以 前 はM13フ ァー ジ を

用 い た 方 法 が 好 まれ た こ と もあ った.現 在 は,

プ ラ ス ミ ドやPCR産 物 が,そ の 取 扱 い の容 易

さか ら,汎 用 さ れ て い る.こ こで は,PCRに よ

る簡 便 な テ ン プ レ ー ト調 製 法 につ い て以 下 に述

べ る.

1) PCR用 反 応 液 の調 製.

TaKaRa Ex TaqTMを 使 用 し,以 下 の 試薬 を

順 次 加 え て 反 応 液 を調 製 す る.

10×Ex Taq.緩 衝 液(含Mg2+)2.5μl,2-5

mM dNTP 2.5μl,プ ラ イ マ ー(上 流 側)0-25

μl(5pmol),プ ラ イ マ ー(下 流 側)0.25μl(5

194 日本血栓止血学会誌 第9巻 第3号

pmol), Ex Taq.(5 U/μl)0.1μl,滅 菌 蒸 留 水

19-4μl,合 計25μl(鋳 型 の サ イ ズ が5.0kbを

超 え る時 は,Ex Taq.の 量 を20%増 加 す る.)

2)鋳 型 とな る プ ラ ス ミ ド を導 入 し た 大 腸 菌

の コ ロニ ー を滅 菌 し た 楊枝 で ピ ッ ク し,1)で 調

製 した 溶 液 に 混 合 す る.

3)以 下 のPCR反 応 を行 う.

i)96.C15秒,68.C(鋳 型 サ イ ズ(kb)×

1.2)分 の シ ャ トルPCR(二 段 階PCR)

を30サ イ ク ル

ii)70℃10分

iii)4℃

4)1μlを 採 り,1%ア ガ ロ ー ス ゲ ル 電 気 泳 動

で,サ イ ズ を確 認 す る.

5)Amersham Pharmacia社 のPCR産 物 精

製 用 キ ッ トを使 用 し,PCR産 物 の 処 理 を行 う.

キ ッ トの エ キ ソヌ ク レ ア ー ゼI(10.0units/

μl)お よび シ ュ リ ンプ アル カ リ フ ォ ス フ ァ タ ー

ゼ(2.0units/μl)を, TEで20倍 しそ の う ち1

μlを 上 記3)のPCR反 応 後 の サ ン プ ル に加 え

る.

6)37℃15分 イ ン キ ュベ ー トす る.

7)80℃15分 イ ン キ ュ ベ ー トす る.

通 常 この条 件 で,4μl(約1pmol)を ダ イ タ ー

ミネ ー タ ー反 応 に使 用 す る.

(2)ダ イ タ ー ミネ ー タ ー 法 に よ る シ ー ク エ

ン ス 反 応(dRodamine terminater法

(dRodamine Terminater Cycle Sequencing

:FS Coreキ ッ ト(ABⅣ 社))に よ る プ ロ トコ ー

ル)

シ ー ク エ ン ス反 応 に は,各 メー カ ー か ら様 々

な キ ッ ト が 出 て い る(ABI社, Amersham

Pharmacia社, TaKaRa社, GIBCO BRL社 な

ど).そ れ ぞ れ の 実 験 の 目 的 や 予 算 に 応 じ て,い

ろ い ろ な シス テ ム の キ ッ トを選 ぶ こ とが 可 能 に

な っ て い る.こ こで は,操 作 が簡 便 で,良 好 な

デ ー タが 得 られ るdRodamine terminater法 に

よ る市 販 の キ ッ ト(ABI社)の 操 作 法 に つ い て

述 べ る.

1)シ ー ク エ ン ス 反 応 溶 液 の 組 成 は 以 下 の と

う りで あ る.

プ ラ イ マ ー(3.2pmol/μl)1μl, dRodamine

terminater premix 8μl,滅 菌 蒸 留 水7μl,鋳

型DNA 4μl,合 計20μl.

2)上 記 の割 合 でDNA以 外 の混 濁 液(プ レ ミ

ック ス と して)を 作 る.

3)PCR用 チ ュ ー ブ に 前 記 方 法(1)で 調 製 し

たDNA 4μlを 入 れ る.

4)ピ ペ ッ トを使 っ て,2)で 調 整 した 混 濁 液

16μlを 加 え ピペ テ ィ ン グ.

5)以 下 の 条 件 で,サ イ クル シ ー ク エ ンス 反 応

(PCR反 応)を 開 始 す る.

i)96℃30秒

ii)96℃10秒,50℃5秒,60℃4分,25サ

イ クル.

iii)4℃

6)5M酢 酸 ア ンモ ニ ウ ム10μl,99.5%エ タ

ノ ー ル50μlを ミ ッ ク ス して お き,こ れ を5)

の チ ュー ブ に加 え ピペ テ ィ ング.

7)氷 上 で10分 放 置.

8)4.℃,2,400g(4,000 rpm,CR21E(日 立),

R6Sロ ー タ(日 立)),30分 間 で遠 心 す る.

9)チ ュ ー ブ を逆 さ に して上 清 を捨 て る.

10)75%エ タ ノ ー ル120μlを 加 え,リ ン ス す

る.

11)4℃,2,400g (4,000 rpm,CR21E (日

立),R6Sロ ー タ(日 立)),30分 間 で 遠 心 す る.

12)チ ュ ー ブ を逆 さ に して 上 清 を捨 て る.

13)乾 燥.

(3)自 動 シ ー ク エ ンサ ー(377(ABⅣ 社))に

よ る電 気 泳 動

以 下 に は,筆 者 らが 用 い て い る方 法 の概 略 を

示 す.自 動 シ ー ク エ ンサ ー(377(ABI社))の

操 作 法 の 詳 細 に つ い て は紙 面 の都 合 上,省 略 す

る.実 際 の 操 作 法 につ い て は,機 器 に添 付 され

て い る取 り扱 い説 明 書 を熟 読 され た い.

1)ゲ ル(5%ア ク リル ア ミ ド溶 液)の 調 製(36

cmガ ラ ス板 用,1枚 分).以 下 の 試 薬 を 混 合 す

る.尿 素(ALF grade;Amersham Pharmacia

社)14.4g, Long RangerTM 50% Gel Solution

石井,ほ か:DNAシ ー クエ ンス法 の現 在 195

(Takara社)4.0ml,10×TBE 4.0ml, dH2O

15ml,

2)溶 解 後,40mlに メ ス ア ップ し,10%APS

(過 硫 酸 ア ンモ ニ ウ ム)200μl,TEMED(N,N,

N',N'-テ トラ メ チ ル エ チ レ ン ジ ア ミ ン)20μlを

加 え て混 合 し,ゲ ル カ セ ッ トに 流 し込 む.ゲ ル

は,2~6時 間 の 内 に使 用 す る.

3)前 記 方法(2)で 調 製 した サ ン プル にLoad-

ing Buffer(36レ ー ン用 に は5.0μl,48(64)

レー ン用 に は2.5μl)を 加 え,60℃,2分 加 熱.

Loading Bufferの 組 成 は 以 下 の と う り.

脱 イ オ ン化 した ホル ム ア ミ ド(ホ ル ム ア ミ ド

20~30mlに イ オ ン 交 換 樹 脂(AG 501-X8

Resin; Bio-Rad(Cat. No.143-6424)5mlを

加 え混 合 後,数 時 間 以 上 放 置 した もの(4℃ 遮 光

保 存))25ml,0.5MEDTA 500μl,滅 菌 精 製

水4.5ml, Blue Dexiran 2000(Amersham

Pharmacia社)150 mgを 混 和 した もの.

4)サ ン プ ル は,36レ ー ン 用 に は1.0μl,

48(64)レ ー ン用 に は1.0μlア プ ラ イ す る.ま

ず奇 数 番 目 の レー ン にサ ン プ ル を ア プ ラ イ し,

2~5分 間 プ レラ ン を行 っ た の ち,偶 数 番 目の レ

ー ンに サ ン プル を ア プ ラ イす る.

お わ り に

以 上,筆 者 ら の 研 究 室 で,日 常 的 に 用 い て い

るDNAシ ー ク エ ン ス 法 に つ い て 述 べ た.自 動

シ ー ク エ ン サ ー に よ ら な いDNAシ ー ク エ ン ス

法 に つ い て は 以 下 に 参 考 文 献 を 挙 げ る の で 参 照

さ れ た い4)5).

文 献

1)Maxam AM and Gilbert W:Anew method for

sequencing DNA. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74

560-564,1977.

2)Sanger F, et al.:DNA sequencing with chain

terminating. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:5463

-5467,1977.

3)Bashkin J, et al.:DNA sequencing by capillary

electrophoresis with a hydroxy ethylcellulose

sieving buffer. Applied and Theoretical Electro-

phoresis 6:23-28,1996

4)Maniatis T, et al.:Molecular Cloning 2nd ed.

Cold Spring Harbor, Cold Spring Harbor Lab.,

1989.

5)村 松 正 實 編:ラ ボマ ニ ュ アル 遺伝 子 工 学 増補 版,東

京,丸 善,1990.