Devsumi2015_20E1 エンジニアが知っておきたいお金の話

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Developers Summit 2015 winter 20/Feb 20-E-1 “なぜ俺の提案は通らないのか” エンジニアが知っておきたいお金の話 (株)NTTPCコミュニケーションズ 土居 昭夫

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Developers Summit 2015 winter 20/Feb 20-E-1 “なぜ俺の提案は通らないのか”

エンジニアが知っておきたいお金の話

(株)NTTPCコミュニケーションズ

土居 昭夫

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自己紹介 社畜型IT系リーマン。 汎用機オペレータ、某銀行での下っ端仕事、羽田空港貨物地区で日雇い労働者などを経てホスティング事業

に従事してはや15年。自社開発プログラマから事業部長までいろいろ経験。

断れない性格が災いし、器用貧乏をこじらせているホ

スティングおじさん。

現在は(株)NTTPCコミュニケーションズでWebARENAを半分くらい(共用・VPS・ドメイン)部長として担当。

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Section0

はじめに

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Section0 – はじめに

若き開発者に伝えておきたいお金の話。

イマジネーションが肝。

将来のために。

「つくる」「うる」「ささえる」の3つが大事。 その三すくみの中ではモノとカネがプロトコル。

原価厨にはならないように。それは自らを貶める。

簿記はやっといて損は無い。

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今日の目標 事業にかかるお金がどういう構造なのか伝えたい。 できればわかって欲しい。

上司や経営者との会話に役に立つ。といいなあ。

何かの悩みの解決に役に立つ。といいなあ。

あなたが成長できそうな種をお渡しできたらな。

と思ってます。

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今日の頻出ワード 売上 費用 利益

投資 資産 (有形)固定資産 無形固定資産

減価償却

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諸注意 裏は取ってますが、基本的には私の経験がベースなので、 教科書と違うとかあるかもしれません。

「ウチの会社と違う」ということは当然あるので、今日の内

容を使いたい場合、経理なり財務の方に確認しましょう。

特に資産の償却ルール(耐用年数や扱い)は結構頻繁に変わ

るのでプロの方でないと正確な判断はできません。

数字に対する経営感覚はまちまちです。 会社の状況や社長や取締役の方々の性格が強く影響します。 ターゲットにあった活用をお願いします。

なので、できるだけ役に立つような、本質っぽい話をするようにつとめます。

※なお、本日の内容についての責任はすべて私に帰属するものであり、私の所属組織には一切関係ありません。

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Section1

クラウドで

コストダウン?

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最近は減ってきたが、クラウドが登場したときの売り文句はだいたい、

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コストダウン!

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そういうのは嫌いです。

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Section1

コストダウンのコストってなんだろう

考え方

コスト = 費用なのだけど、実際には種類がある。

固定費用

とあるサービスにおいて売上の増大や会員の拡大に伴わ

ず、かならずかかる費用。 ※長期的には変動しうるものも入る。

変動費用

拡大に伴って変動する費用。

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Section1 – コスト、とは。

ちょっと考えてみよう。

とあるSaaS製品について10万契約までのコストとして、

リリースまでの開発費 1,000万 設備投資 1,050万 リリース後の運用費 370万

(内訳) ソフトウェアライセンス 10万/月 ソフトウェアライセンス 10万/1000契約/月 データセンター費用 150万/月 運用の為の人件費 200万/月

追加の開発費用 200万/月

つづきます。

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Section1 – コスト、とは。

ちょっと考えてみよう。

つづき

広告宣伝 200万/月 ※ソーシャル対応、リスティング等を含みます。

その他管理人件費 50万/月 だとする。

ここまでの月間総コストは

16.7万 + 30.75万 + 370万 + 250万 =

417.45万円

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ソフトウェアの減価償却

ハードウェアの減価償却

運用費

販売管理費

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減価償却の例

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180.75

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クラウド利用料

>

Note: 417.45万円の中で、クラウド化する事で影響があるコストは、 「データセンター費用の150万」と「設備の減価償却費30.75万」のあわせて180.75万円。これがクラウドの利用料でまかなえるならコストダウンは成功。 ※クラウド=IaaS

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Section1 – コスト、とは。

ちょっと考えてみよう。

でもね、

いままでの人員で大丈夫?

投資による減価償却は年々下がる。

変動費の項目読みきってる?

というところを無視して「安い」と思うのはダメ。

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Note: 転送量課金や従量課金部分のもの

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Section1 – コスト、とは。

ちょっと考えてみよう。

クラウド化することでのメリット

固定資産の処理が無い。

ダメだったとしてもダメージが最小

調達コストは安上がり。

(間接的な費用が少ない。)

なにより「早い」。

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すなわちスピードがクラウド最大の強みなんだよ!

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Section2

お金は流れるもの

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残念だけどお金はとどまっててくれない。

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いわゆる

企業の死

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Note: キャッシュフローは企業にとって、もっとも単純だけどもっとも大事なもの。 これがなくなると、従業員への給与や、取引先への支払、税金、などなど大変なことになります。 具体的には、対価の入金もされず、借金のあてさえなくなったらその会社は倒産です。

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キャッシュ

フロー超大事

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Section2 − 金は企業にとってガソリン

お金の動きはどうなってるのか。

個人と企業でくらべてみよう。

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Section2 − 金は企業にとってガソリン

個人の場合(一般的なサラリーマンを想定)

給与等収入

生活費

遊興費など

預貯金

労働

やる気や、生きていくうえでの希望的なもの

会社からの報酬

大体はいったん振込

消費活動

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Section2 − 金は企業にとってガソリン

企業の場合(かなり抽象化してます)

サービス 収入等売上

各種費用

投資など

預貯金 (当座)

事業の拡充

基本的に現金のやり取りって あまりしないですね。

労働の成果

利益を再投資

事業活動費用

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あんまり

かわんない

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キャッシュ

フロー超大事

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Section3

なぜ、俺の提案はわかってもらえないのか

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情熱だけでは

決裁は貰えない!

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Note: 「これ導入したらこれができるのに」とかそういうのあんまり伝わんない。 承認を出すレベルの人がたまたま技術に明るいとかだと話は早いんですが、 そうとも限らない。

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わからせないと

話が進まない。

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Section3

経営者、管理者と現場エンジニアで優先順位が違う。 ※個人の見解です

経営者、管理者 現場エンジニア

ビジネスプラン 安全性、可用性、

機能性

話題性 プロダクト

プロダクト ビジネスプラン

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Note: 当然偉い人もモノは大事だと思ってるんですが、いかんせん立場というものもあります。

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Section3 − 大事なものは人によって違う

経営者は事業継続が最優先事項。

それは儲かりそうなのか。

儲かるまでどのくらいの金と時間がかかるのか。

「どう」やって、「いつ」それをやるか。 「勝算」は何が根拠か。

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Note: 儲かる、というのは利益が出るという事。利益が無いと事業継続できない。

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Section3 − 大事なものは人によって違う

それは儲かりそうなのか。

考え方

要は利益

単発案件の場合

具体的な買い手が居るのか

売値はいくらで費用はどうで

利益はいくらか。

Webサービスの場合

売値、費用、利益は同上

投下する市場や販売手法(マーケティング分野)

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Section3 − 大事なものは人によって違う

単発案件の場合

形として一番単純なのは物販。

あるモノを売るのにかかった事柄だけの話。

機器販売額 機器仕入額

利益

販売管理費

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Section3 − 大事なものは人によって違う

Webサービスのようなストック案件の場合

めんどうです。

売上 変動費

利益

固定費

一定の生産量や販売量で変動す

る費用の事。 例: データセンタ費用(帯域、ラック)、広告宣伝、一時的な人件費や消耗品など

売上が0でも一定額で発生する費用の事。 例: 恒常的な人件費、設備の減価償却費、リース料など

期間で考えることが必須になる。

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Section3 − 大事なものは人によって違う

儲かるまでどのくらいの金と時間がかかるのか。

考え方

全体の投資と、リリース後にかかる費用、どれだけの売上

を上げる事ができて、利益はどのように出るのか。

固定費、変動費を、売れ行きによってシミュレート 損益分岐点を計って長期的に計画。

どのくらいの期間で「単月黒字」、さらに「累積黒字」を

どこで達成するか、というストーリー。

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突っ込んだ金は回収しないとね。

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Section3 − 大事なものは人によって違う

損益分岐点

サービスはマイナスからのスタート。

黒字をどのくらいの期間で達成するのかを見るのが損益分岐点。

総費用(固定費・変動費)の単月分を、利益を含めた売上でカバーし、なおかつ利益の累積を行って累損の解消を導き出す。

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Section3 − 大事なものは人によって違う

損益分岐点の例

売値

1,000円/契約 月ごとに10売れる。

固定費

10万円/月

変動費

4契約ごとに1,000円

売上が総費用を超え、黒字になる。 ここが損益分岐点。

利益

損失

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Section3 − 大事なものは人によって違う

損益分岐点の例その2 売値 2,500円/契約 粗利 1,000円/契約

固定費 70万円/月 変動費 100契約ごとに10万円

売上が費用を超え、単月黒字に。

利益の累計が0以上になり、累積黒字化。

契約数

金額

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Section3 − 大事なものは人によって違う

「損益分岐点」のグラフをつくることで

どのくらいの投資が可能か

どのくらいの販売価格・販売量が必要なのか

売れたときにどういったコストが発生するか

また、今販売しているものであれば、どこまで下がったらまずいか、などを読み取ることが可能。

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Section3 − 大事なものは人によって違う

「どう」

販売方法に即した広告法や、その他の販売促進策

「いつ」

販売促進の実施に関するスケジュール・作戦

「勝算」

競合他社との有利差の比較、トレンド、市場

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「どう」やって、「いつ」それをやるか。 「勝算」は何が根拠か。

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そういうのを軸にストーリーを描いて納得させよう!

共感に至れば俺たちの勝利だ!

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Note:

ソフトウェアの開発でも同じだとは思うが、何かの機能を追加しよう、と思ったとき、その機能はいったい誰のためなのか、何のためなのか、どのくらいの期間でリリースできるのか、そういうことから話はスタートするんだと思う。お金にまつわる話も本質的には一緒で、納得のいくストーリーが必要。

ただ、どういった言葉や考え方なのか、とっかかりもつかみにくい、というのはあると思う。このセッションでそのとっかかりになる何かが見つかったのなら幸い。

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ご清聴ありがとうございました

ご質問があればSpeakersなんとかで。

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