DC/DCコンバータにおける フェライト・ビーズの活 …Anlo iloe 52 1...

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Analog Dialogue 50-02 1 DC/DCコンバータにおける フェライト・ビーズの活用法 著者:Jefferson Eco/Aldrick Limjoco はじめに フェライト・ビーズは、周波数の高い電源ノイズを除去 するためによく使われます。ミックスド・シグナル IC のアナログ電源やデジタル電源のような電源レールをク リーンな状態で共有できるようにするとともに、レール 間の高周波絶縁を実現するための有効な手段となります。 受動デバイスであるフェライト・ビーズは、広い周波数 範囲に対し、高周波ノイズのエネルギーを除去する役割 を果たします。特定の周波数範囲では抵抗性の素子とし て働き、ノイズのエネルギーを熱として消費します。電 源レールに直列に接続して使用しますが、通常はフェラ イト・ビーズの両側には接地したコンデンサを接続しま す。それによってローパス・フィルタを形成し、高周波 の電源ノイズがさらに低減します。 しかし、システム設計においてフェライト・ビーズの使い 方を誤ると、悪影響が生じてしまうことがあります。例え ば、フェライト・ビーズとデカップリング・コンデンサを 組み合わせてローパス・フィルタを構成したところ、望 ましくない共振が生じてしまったということが起こり得 ます。あるいは、DC バイアス電流が変化した結果、フェ ライト・ビーズが備える EMI の抑制能力が低下してしま うこともあります。フェライト・ビーズの性質を正しく 理解し、それについて考慮することにより、そうした問 題を回避することが可能になります。 本稿では、電源システムでフェライト・ビーズを使用す る場合に、システム設計者が認識しておくべき重要な検 討事項について説明します。例えば、DC バイアス電流が 好ましい値ではない場合や望ましくない LC 共振が生じて いる場合に、インピーダンスの周波数特性はどのように なるのかといったことです。そのうえで、共振の問題に 対処するための複数のダンピング(減衰)手法を紹介す るとともに、それぞれの有用性を比較します。 本稿では、 DC/DC スイッチング・レギュレータの出力フ ィルタにフェライト・ビーズを適用した場合の効果につ いて検討していきます。レギュレータの例としては、ア ナログ・デバイセズ( ADI )の「 ADP5071 」を取り上げ ます。同製品は、独立した正と負の出力を備えており、出 力電流はそれぞれ2A 1.2A です。また、本稿では、主に 表面実装パッケージでチップ型のフェライト・ビーズを 例にとります。 簡素化したシミュレーション用モデル フェライト・ビーズは、図 1 a )に示すような回路とし てモデル化できます。ご覧のように、抵抗、インダクタ、 コンデンサで構成されています。R DC はフェライト・ビー ズの DC 抵抗に相当します。 C PAR L BEAD R AC は、それぞ れ寄生容量、ビーズのインダクタンス、ビーズに依存す AC 抵抗(AC コア損失)です。 フェライト・ビーズには、誘導性、抵抗性、容量性の 3 つの応答領域があります。各領域は、図 1 b )のような ZRX グラフで確認できます。ここで、 Z R X は、それ ぞれビーズのインピーダンス、抵抗、リアクタンスです。 高周波のノイズを低減するには、ビーズが抵抗性領域に なければなりません。 EMI (電磁波干渉)の排除が必要 な場合、特にこの点が重要になります。同領域において、 ビーズは、高周波ノイズを減衰するとともに、そのエネ ルギーを熱として消費する抵抗のように動作します。抵 抗性領域は、ビーズのクロスオーバー周波数( X=R )か ら、ビーズが容量性になるまでの領域です。容量性にな るのは、容量性リアクタンス( -X )の絶対値が R と等し くなる周波数です。 この簡素化した回路モデルは、 1GHz 未満の範囲でフェ ライト・ビーズのインピーダンス特性を近似する際に使 用できます。 1 b )は、TE Connectivity (旧Tyco Electronics )社 の積層フェライト・ビーズ「 BMB2A1000LN2 」の例で す。DC バイアス電流がゼロという条件で、同製品のZRX 応答をインピーダンス・アナライザで測定しました。 R DC C PAR R AC L BEAD 0 200 400 600 800 1000 1200 1 10 100 1000 インピーダンス〔Ω周波数〔MHzR X Z Z = R; R AC Z ≈ X L ; L BEAD 誘導性 容量性 抵抗性 Z ≈ |X C |; C PAR 1. a )は簡素化した回路モデル。( b )は TE Connectivity 社の BMB2A1000LN2 で測定した ZRX グラフ (b) (a)

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Page 1: DC/DCコンバータにおける フェライト・ビーズの活 …Anlo iloe 52 1 DC/DCコンバータにおける フェライト・ビーズの活用法 著者:Jefferson Eco/Aldrick

Analog Dialogue 50-02 1

DCDCコンバータにおける フェライトビーズの活用法 著者Jefferson EcoAldrick Limjoco

はじめに

フェライトビーズは周波数の高い電源ノイズを除去するためによく使われますミックスドシグナル I Cのアナログ電源やデジタル電源のような電源レールをク リーンな状態で共有できるようにするとともにレール間の高周波絶縁を実現するための有効な手段となります受動デバイスであるフェライトビーズは広い周波数範囲に対し高周波ノイズのエネルギーを除去する役割を果たします特定の周波数範囲では抵抗性の素子として働きノイズのエネルギーを熱として消費します電源レールに直列に接続して使用しますが通常はフェライトビーズの両側には接地したコンデンサを接続しますそれによってローパスフィルタを形成し高周波の電源ノイズがさらに低減します

しかしシステム設計においてフェライトビーズの使い方を誤ると悪影響が生じてしまうことがあります例えばフェライトビーズとデカップリングコンデンサを組み合わせてローパスフィルタを構成したところ望ましくない共振が生じてしまったということが起こり得ますあるいはDCバイアス電流が変化した結果フェライトビーズが備えるEMIの抑制能力が低下してしまうこともありますフェライトビーズの性質を正しく理解しそれについて考慮することによりそうした問題を回避することが可能になります

本稿では電源システムでフェライトビーズを使用する場合にシステム設計者が認識しておくべき重要な検討事項について説明します例えばDCバイアス電流が好ましい値ではない場合や望ましくないLC共振が生じている場合にインピーダンスの周波数特性はどのようになるのかといったことですそのうえで共振の問題に対処するための複数のダンピング(減衰)手法を紹介するとともにそれぞれの有用性を比較します

本稿ではDCDCスイッチングレギュレータの出力フィルタにフェライトビーズを適用した場合の効果について検討していきますレギュレータの例としてはア

ナログデバイセズ(ADI)の「ADP5071」を取り上げます同製品は独立した正と負の出力を備えており出力電流はそれぞれ2A12Aですまた本稿では主に表面実装パッケージでチップ型のフェライトビーズを例にとります

簡素化したシミュレーション用モデル

フェライトビーズは図1(a)に示すような回路としてモデル化できますご覧のように抵抗インダクタコンデンサで構成されていますR DCはフェライトビーズのDC抵抗に相当しますC PARL BEADR ACはそれぞれ寄生容量ビーズのインダクタンスビーズに依存するAC抵抗(ACコア損失)です

フェライトビーズには誘導性抵抗性容量性の3つの応答領域があります各領域は図1(b)のようなZRXグラフで確認できますここでZRXはそれぞれビーズのインピーダンス抵抗リアクタンスです高周波のノイズを低減するにはビーズが抵抗性領域になければなりませんEMI(電磁波干渉)の排除が必要な場合特にこの点が重要になります同領域においてビーズは高周波ノイズを減衰するとともにそのエネルギーを熱として消費する抵抗のように動作します抵抗性領域はビーズのクロスオーバー周波数(X=R)からビーズが容量性になるまでの領域です容量性になるのは容量性リアクタンス( -X)の絶対値がRと等しくなる周波数です

この簡素化した回路モデルは 1 G H z未満の範囲でフェライトビーズのインピーダンス特性を近似する際に使用できます

図1(b)はTE Connect iv i ty(旧Tyco Elec t ronics)社の積層フェライトビーズ「BMB2 A1 0 0 0 LN2」の例ですDCバイアス電流がゼロという条件で同製品のZRX応答をインピーダンスアナライザで測定しました

RDC

CPAR

RAC

LBEAD

0

200

400

600

800

1000

1200

1 10 100 1000

インピーダンス〔

Ω〕

周波数〔MHz〕

R

X

Z

Z = R RAC

Z asymp XL LBEAD

誘導性 容量性

抵抗性

Z asymp |XC|CPAR

図 1 ( a)は簡素化した回路モデル( b)はT E C o n n e c t i v i t y社のB M B 2 A 1 0 0 0 L N 2で測定したZ R Xグラフ

(b)(a)

Analog Dialogue 50-022

シミュレーション用のモデルによって実測値に非常に近いインピーダンス曲線が得られています

このフェライトビーズのモデルはノイズを除去するためのフィルタ回路の設計と分析に利用できます例えばフェライトビーズのインダクタンスの近似値からデカップリングコンデンサと組み合わせてローパスフィルタ回路を構成する場合の共振周波数(カットオフ周波数)を求めるといったことが可能ですただしこの回路モデルはDCバイアス電流がゼロという条件で近似したものですそのため実際にはDCバイアス電流に応じて特性が変わる可能性がありますつまりさらに複雑なモデルが必要になるケースもあるということです

DCバイアス電流に関する検討事項

電源の用途に対して適切なフェライトビーズを選択するにはフィルタの帯域幅だけでなくDCバイアス電流によって変化するビーズのインピーダンス特性についても慎重に検討する必要がありますほとんどの場合メーカーは100MHzにおけるビーズのインピーダンスしか規定していませんデータシートにはDCバイアス電流がゼロのときの周波数応答しか記載されていませんしかし電源のフィルタリングを目的とする場合フェライト ビーズを流れる負荷電流がゼロであることは決してありませんDCバイアス電流がゼロから増加するとフェライトビーズのすべてのパラメータが著しく変化するので注意が必要です

DCバイアス電流が増加するとコア材の飽和が始まりますするとフェライトビーズのインダクタンスは著しく低下しますインダクタンスの飽和の度合いはフェライトビーズのコア材によって異なります図3(a)に2種類のフェライトビーズのインダクタンスを示しましたこれはDCバイアス電流に対する標準的な依存性を表しています定格電流の50でインダクタンスは最大90低下しています

このZRXグラフにおいてビーズがほぼ誘導性を示す領域(Z≒X LL B E A D)のインダクタンスは次の式で計算されます

(1)

fXL L

BEAD timestimes=

π2 (1)

ここで fはビーズの誘導性領域に含まれる周波数ですこの例では fの値は30 7MHzですXLは30 7MHzにおけるリアクタンスであり値は233Ωです

これらの値を式(1)に代入するとインダクタンスLBEAD

は1208μHとなります

ビーズがほぼ容量性を示す領域(Z≒ |XC|C PAR)の寄生容量C PARは次の式で計算できます

(2)

||21

CPAR Xf

Ctimestimestimes

=π (2)

ここで fはビーズの容量性領域に含まれる周波数ですこの例では fの値は803MHzです |XC |は803MHzにおけるリアクタンスで1181Ωです

これらの値を式( 2)に代入すると寄生容量 C PA Rは1678pFとなります

D C抵抗R D Cの値はメーカーのデータシートによると300mΩですA C抵抗R A Cはフェライトビーズが純粋に抵抗性を示す領域におけるピークのインピーダンスですこのR ACはZからR DCを引いた値になりますR DC

はこのピークのインピーダンスに比べて非常に小さいので無視できますしたがってこの例におけるR A Cは1082kΩですSIMetr ix SIMPLISを搭載する回路シミュレータ「ADIs imP E」を使用してインピーダンスの周波数特性をシミュレーションしました図2(a)は回路シミュレーションに使用したモデルです上で求めた計算値を適用しています図2(b)に実測値とシミュレーション結果の両方を示しましたこの例では回路

図 2 ( a)は回路シミュレーションに使用したモデル( b)はシミュレーション結果と実測値

(b)(a)

0

200

400

600

800

1000

1200

1 10 100 1000

インピーダンス

(Ω)

周波数〔MHz〕

実測値

シミュレーションR2AC 1 A

I1

インピーダンス

300 m Ω

1678 pF

C1

1082 k Ω

R1

1208 microF

L1

Analog Dialogue 50-02 3

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

0 1 2 3 4 5

インダクタンス〔

nH〕

DCバイアス電流〔A〕

MPZ1608S101A(100 Ω 3 A 0603)

742 792 510(70 Ω 6 A 1812)

定格電流の50でビーズのインダクタンスは

最大90低下

(a)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

1 10 100 1000

インピーダンス〔

Ω〕

周波数〔MHz〕

0 mA100 mA250 mA500 mA750 mA1000 mA1500 mA2000 mA3000 mA

(b)

0

20

40

60

80

100

120

1 10 100 1000

インピーダンス〔

Ω〕

周波数〔MHz〕

0 mA100 mA250 mA500 mA1000 mA1500 mA2000 mA3000 mA4000 mA5000 mA

(c)

図 3 ( a)はフェライトビーズのインダクタンスの D Cバイアス電流に対する依存性( b)と( c)はD C バイアス電流を変化させた場合のインピーダンスの 周波数依存性( b)はT D KのM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 A

( c)はW uuml r t h E l e k t r o n i k社の 7 4 2 7 9 2 5 1 0の実測値

電源ノイズを効果的に除去するにはフェライトビーズを定格DC電流値の約20の値で使用します上の2つの例に示したように定格電流値の20とした場合定格 6 Aのビーズのインダクタンスは約 3 0定格 3 Aの ビーズのインダクタンスは約15まで低下しますフェライトビーズの定格電流は規定された温度上昇に対して耐えられる最大の電流値を示したものですフィルタとしての機能を実現する際に使用する性質の値ではありません

D Cバイアス電流の影響はインピーダンスの周波数特性にも現れますD Cバイアス電流が増加するに連れてインピーダンスが低下しフェライトビーズの効力とEMIの除去能力も低下します図3(b)と(c)はDCバイアス電流によってフェライトビーズのインピーダンスが変化する様子を示したものです定格電流のわずか50を流しただけで100MHzでの実効インピーダンスはTDKの「MPZ1608S101A」(100Ω3A0603)では100Ωから10ΩへWuumlrth E lek t ron ik社の「742 792 5 1 0」(70Ω6 A1 8 1 2)では70Ωから15Ωへと大きく低下しています

システム設計者はDCバイアス電流がフェライトビーズのインダクタンスと実効インピーダンスに及ぼす影響について十分に理解しておかなければなりませんこの点は大電流が必要なアプリケーションにおいて非常に重要な要素になる可能性があります

LC共振の影響

フェライトビーズとデカップリングコンデンサを組み合わせると共振のピークが生じることがありますその影響は見過ごされがちですが回路のリップルとノイズを減衰させるのではなくむしろ増幅してしまう可能性があるので非常に重要です多くの場合そのピークはDCDCコンバータで一般的に使用されるスイッチング周波数の付近に生じます

ローパスフィルタ回路はフェライトビーズのインダクタンスとQ値の高いデカップリング容量で構成されますこのローパスフィルタ回路には共振周波数がありますその周波数がフェライトビーズのクロス オーバー周波数よりも低い場合にピークが生じますその結果としてフィルタの減衰量が不足する状態になります図4(a)はTDKのMPZ1608S101Aについてインピーダンスの周波数特性を実測した結果です抵抗成分によって不要なエネルギーを消費するわけですがその値は約20MHz~30MHzに達するまで大きくなりませんそれ以下の周波数領域ではフェライトビーズは依然としてQ値が非常に高く理想的なインダクタとして機能しますフェライトビーズを用いた典型的なフィルタでは0 1MHz~10MHzの範囲にLC共振周波数が現れます300kHz~5MHzの標準的なスイッチング周波数を使用するにはフィルタのQ値を下げるためにさらなるダンピングを行う必要があります

0

20

40

60

80

100

120

140

160

1 10 100 1000

インピーダンス〔

Ω〕

周波数〔MHz〕

R

X

Z

クロスオーバー周波数

誘導性領域

(a)

Analog Dialogue 50-024

ndash70

ndash60

ndash50

ndash40

ndash30

ndash20

ndash10

0

10

20

100 1k 10k 100k 1M 10M

ゲイン〔

dB〕

周波数〔Hz〕

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A

(100 Ω 3 A 0603)

DCバイアス電流〔μA〕コンデンサ

村田製作所のGRM188R71H103KA01

(10 nF X7R 0603)

(b)

図 4 ( a)はM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 AのZ R Xグラフ ( b)はフェライトビーズとコンデンサから成る

ローパスフィルタの S 2 1応答

この影響の例としてフェライトビーズとコンデン サ か ら 成 る ロ ー パ ス フ ィ ル タ の S 2 1周 波 数 応 答を図 4( b)に示しますご覧のようにピークが生じています使用したフェライトビーズは T D KのM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 A( 100Ω 3 A 0 6 0 3)ですデカップリングコンデンサは村田製作所が提供する低 E S R (等価直列抵抗)のセラミックコンデンサ「 G R M -

188R71H103KA01」(10nFX7R0603)です負荷電流は数μAのレベルとしました

ダンピングを適用することなくフェライトビーズで構成したフィルタはそのQ値によって約 1 0 d B~ 1 5 d Bのピークを生じさせる可能性があります図 4( b)で は 2 5 M H zの 付 近 に ゲ イ ン が 1 0 d Bに も 及 ぶ ピ ーク が 生 じ て い ま す ま た 1 M H z ~ 3 5 M H z で は 信号 が 増 幅 さ れ ま す こ の ピ ー ク が ス イ ッ チ ン グ レギュレータの動作周波数帯に生じると問題が起きますスイッチングに伴う好ましくない成分が増幅さ れ フ ェ ー ズ ロ ッ ク ル ー プ ( P L L ) V C O (電圧制御発振器)分解能の高いADコンバータ(ADC)といった感度の高い負荷の性能を損なう恐れがあるのです図4(b)は非常に負荷が軽い(数μAレベル)という条件の下で得られた結果です現実として数μAから1mAの負荷電流しか必要としない回路(システムのうちの一部)や動作モードに応じて省電力のために停止する回路に向けた電源回路も存在しますそのため数μAレベルというのも現実的に起こり得る条件だと言えますなおピークが生じるとシステム内のノイズが増大して不要なクロストークが発生する恐れがあります

図5に示したのはADP5071のアプリケーション回路例ですその正出力にはフェライトビーズを使って構成したフィルタを接続しています図6はADP5071の正出力を周波数軸で見たもの(出力スペクトル)ですスイッチング周波数は24MHz入力電圧は9V出力電圧は16V負荷電流は5mAとしています

ADP5071SS INBK

SW1

RC1118 kΩ

CC1820 pF

COMP1

RC2576 kΩ

CC227 nF

COMP2

CVREG1 microF

VREG

EN1

SYNCFREQSLEWSEQ

EN2

AGND

PVIN1PVIN2PVINSYSCIN1

10 microF

C10 nF

VIN+9 V

VREGndash16 V

FB1

D1MBR130T1G MPZ1608S101A

L122 microH

L268 microH

RFB1357 kΩ

RL32 kΩ

RFT1681 kΩ

+16 V

SW2

PGND

FB2

VREF

D2MBR130T1G

RFB2309 kΩ

RFT2649 kΩ

CVREF1 microF

COUT110 microF

COUT210 microF

図 5 A D P 5 0 7 1 のアプリケーション回路例 ビーズとコンデンサから成るローパスフィルタを

正出力に接続している

ndash10

0

10

20

30

40

50

60

001 01 1 10 100

振幅〔

dBμV〕

周波数〔MHz〕

ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加した場合のADP5071の出力スペクトル(ダンピングなし)ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加していない場合のADP5071の出力スペクトル

25MHz付近に共振によるピークが発生

図 6 負荷電流が 5 m Aの場合のA D P 5 0 7 1の出力スペクトル

フェライトビーズのインダクタンスと10nFのセラミックコンデンサにより25MHz付近に共振のピークが生じています24MHzの基本リップル周波数は減衰されるどころか10dBも増幅されています

共振のピークに影響するその他の要因としてはフェライトビーズを使って構成したフィルタの直列インピーダンスと負荷インピーダンスが挙げられますソース抵抗を高くすればピークはかなり低減されますしかしそうすると負荷に対するレギュレーションの能力が低下してしまいますそのため実際にはこの方法は採用できません直列抵抗によって電圧降下が生じるので負荷電流の増加に伴って出力電圧が低下することになります負荷インピーダンスもピークの応答に影響を与えます負荷が軽い場合には大きなピークが生じます

Analog Dialogue 50-02 5

ダンピング手法の比較

ここでは共振のピークを大幅に低下させるために使用できるダンピング手法を3つ紹介します(図7)

ダンピングなし

方法B10Ωの抵抗をフェライトビーズに並列接続方法A10Ωの抵抗をデカップリングコンデンサに直列接続

方法CダンピングありCDAMP(1μF)とRDAMP(2Ω)を追加フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

ndash70

ndash60

ndash50

ndash40

ndash30

ndash20

ndash10

0

10

20

00001 0001 001 01 1 10

周波数〔MHz〕

C

挿入損失〔

dB〕 A

B

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

入力 出力

抵抗をデカップリングコンデンサに直列接続

方法A

出力

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)抵抗をフェライトビーズに

並列接続

入力

方法B

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

デカップリング用のRCフィルタを追加

CDAMP

RDAMP

入力 出力

方法C

図 7 3種のダンピング手法と それぞれを適用した場合の周波数応答

方法Aはデカップリングコンデンサのパスに抵抗を直列に接続するというものですそれによって回路の共振が減衰しますただし高い周波数におけるバイパス効果は低下します方法Bでは小さな抵抗をフェライトビーズに並列に接続しますこの方法でも回路の共振は減衰しますしかし高い周波数におけるフィルタの減衰特性が低下してしまいます図8にMPZ1608S101Aのインピーダンスと周波数の関係を示しましたこの図には10Ωの並列抵抗を接続した場合と接続しない場合の特性を示しています緑色の点線はフェライト ビーズに10Ωの抵抗を並列接続した場合のトータルのイ

ンピーダンスですこのインピーダンスの値はかなり低減されており10Ωの抵抗が支配的になっていますしかし10Ωの並列抵抗を接続したフェライトビーズのクロスオーバー周波数は38MHzでフェライトビーズ単体のクロスオーバー周波数である403MHzと比べてかなり低くなりますそのためフェライトビーズははるかに低い周波数範囲で抵抗性を示しQ値が低下することによってダンピング性能が改善されます

0

20

40

60

80

100

120

140

160

1M 10M 100M 1G

インピーダンス〔

Ω〕

周波数〔Hz〕

RXZ

ビーズのみDCバイアス電流は0mA

RXZ

ビーズと10Ωの抵抗DCバイアス電流は0mA

(a)

インピーダンス〔

Ω〕

0

2

4

6

8

10

12

RXZ

ビーズのみDCバイアス電流は0mA

RXZ

ビーズと10Ωの抵抗DCバイアス電流は0mA

1M 10M 100M 1G

周波数〔Hz〕

(b)

図 8 ( a)はM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 AのZ R Xグラフ ( b)はその拡大図

方法Cでは容量の大きいコンデンサC DAMPとダンピング抵抗DAMPを直列接続したものを追加します多くの場合これが最善の方法です

コンデンサと抵抗を追加すると回路の共振が減衰しますしかも高周波におけるバイパス効果は低下しませんこの方法では容量の大きいコンデンサによってDCが遮断されますそのため抵抗で過度に電力が消費されることもありませんこのコンデンサの容量はすべてのデカップリングコンデンサの総容量よりもはるかに大きくする必要がありますしかしそれによってダンピング抵抗の値は小さくて済みますピークを低減するために共振周波数におけるコンデンサのインピーダンスはダンピング抵抗よりも十分に小さい必要があります

図9は図5に示したアプリケーション回路に方法Cのダンピング手法を適用した結果ですこの図でもADP5071の正出力を周波数軸で見ていますC DAMPとR DAMPとしてはそれぞれ1μFのセラミックコンデンサと2ΩのSMD抵抗を使用しました結果として24MHzにおける基本波リップルは5dB減少していますこれは図6で10dB増加していたのとは対照的です

Analog Dialogue 50-026

ndash10

0

10

20

30

40

50

60

001 01 1 10 100

振幅〔

dBμV〕

周波数〔MHz〕

ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加した場合のADP5071の出力スペクトル(方法Cのダンピングも適用)

ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加しない場合のADP5071の出力スペクトル

24MHzで発生するリップルは5dB減少

図 9 A D P 5 0 7 1の出力スペクトル ビーズとコンデンサから成るローパスフィルタに

方法Cのダンピングを適用した場合の結果

一般に方法Cが最も洗練された手法だと言えますしかもダンピング専用の高価なコンデンサを購入することなくセラミックコンデンサに抵抗を直列に接続することによって実装できます最も安全な方法は試作を行った際に調整できるように設計しておき不要ならば抵抗を取り外せるようにしておくことですこの手法の欠点は部品のコストが余分にかかり必要な基板面積が大きくなることだけです

まとめ

本稿ではフェライトビーズを使用する際に考慮すべき主な検討事項について説明しましたまたフェライトビーズの簡単な回路モデルも紹介しましたそのモデルを使用しD Cバイアス電流がゼロであるという条件の下でインピーダンスの周波数特性をシミュレーションしましたそれにより実測値に非常に近い結果が得られることもわかりました

また本稿ではDCバイアス電流がフェライトビーズの特性に及ぼす影響についても説明しましたDCバイアス電流が定格電流の20よりも大きい場合フェライトビーズのインダクタンスは著しく低下する可能性がありますそのような電流はフェライトビーズの実効イン ピーダンスを引き下げEMIの除去能力を低下させる恐れがありますDCバイアス電流が流れる電源レールにフェライトビーズを適用する場合その電流によってフェライト材が飽和しインダクタンスが大きく変化することがないようにしなければなりません

フェライトビーズは誘導性のデバイスなのでQ値の高いデカップリングコンデンサと組み合わせる場合には細心の注意が必要です回路に望ましくない共振が発生し効果をもたらすどころか悪影響が出る場合もあるからですしかし本稿で提案したダンピング手法であれば不要な共振を簡単に防止することができます容量の大きなデカップリングコンデンサとダンピング抵抗を直列接続し負荷の両端に追加するだけですフェライトビーズを正しく利用すれば効果的かつ安価に高周波のノイズとスイッチングによる遷移を低減することができます

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謝辞

技術的な知識についてご教授 ご助言いただいたアイルランド リムリック大学のJeff Weaver氏Donal O Sul l ivan氏Luca Vassa l l i氏Pat Meehan氏に感謝します

Aldr ick S Limjoco(a ldr ick l imjocoanalog com)は2006年8月にADIに入社しました現在はアプリケーションエンジニアを務めていますフィリピンのデラサール大学で電子工学の学士号を取得しましたスイッチングレギュレータの出力リップルのフィルタリング手法に関する米国特許を保有しています

Aldrick S Limjoco

著者

Jefferson A Eco( je ffersonecoanalogcom)は2011年5月にADIのフィリピン支社に入社しました現在はアプリケーション開発エンジニアとして業務に携わっていますフィリピンのカマリネスポリテクニック大学で電子工学の学士号を取得しています

Jefferson A Eco

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Analog Dialogue 48-08

Page 2: DC/DCコンバータにおける フェライト・ビーズの活 …Anlo iloe 52 1 DC/DCコンバータにおける フェライト・ビーズの活用法 著者:Jefferson Eco/Aldrick

Analog Dialogue 50-022

シミュレーション用のモデルによって実測値に非常に近いインピーダンス曲線が得られています

このフェライトビーズのモデルはノイズを除去するためのフィルタ回路の設計と分析に利用できます例えばフェライトビーズのインダクタンスの近似値からデカップリングコンデンサと組み合わせてローパスフィルタ回路を構成する場合の共振周波数(カットオフ周波数)を求めるといったことが可能ですただしこの回路モデルはDCバイアス電流がゼロという条件で近似したものですそのため実際にはDCバイアス電流に応じて特性が変わる可能性がありますつまりさらに複雑なモデルが必要になるケースもあるということです

DCバイアス電流に関する検討事項

電源の用途に対して適切なフェライトビーズを選択するにはフィルタの帯域幅だけでなくDCバイアス電流によって変化するビーズのインピーダンス特性についても慎重に検討する必要がありますほとんどの場合メーカーは100MHzにおけるビーズのインピーダンスしか規定していませんデータシートにはDCバイアス電流がゼロのときの周波数応答しか記載されていませんしかし電源のフィルタリングを目的とする場合フェライト ビーズを流れる負荷電流がゼロであることは決してありませんDCバイアス電流がゼロから増加するとフェライトビーズのすべてのパラメータが著しく変化するので注意が必要です

DCバイアス電流が増加するとコア材の飽和が始まりますするとフェライトビーズのインダクタンスは著しく低下しますインダクタンスの飽和の度合いはフェライトビーズのコア材によって異なります図3(a)に2種類のフェライトビーズのインダクタンスを示しましたこれはDCバイアス電流に対する標準的な依存性を表しています定格電流の50でインダクタンスは最大90低下しています

このZRXグラフにおいてビーズがほぼ誘導性を示す領域(Z≒X LL B E A D)のインダクタンスは次の式で計算されます

(1)

fXL L

BEAD timestimes=

π2 (1)

ここで fはビーズの誘導性領域に含まれる周波数ですこの例では fの値は30 7MHzですXLは30 7MHzにおけるリアクタンスであり値は233Ωです

これらの値を式(1)に代入するとインダクタンスLBEAD

は1208μHとなります

ビーズがほぼ容量性を示す領域(Z≒ |XC|C PAR)の寄生容量C PARは次の式で計算できます

(2)

||21

CPAR Xf

Ctimestimestimes

=π (2)

ここで fはビーズの容量性領域に含まれる周波数ですこの例では fの値は803MHzです |XC |は803MHzにおけるリアクタンスで1181Ωです

これらの値を式( 2)に代入すると寄生容量 C PA Rは1678pFとなります

D C抵抗R D Cの値はメーカーのデータシートによると300mΩですA C抵抗R A Cはフェライトビーズが純粋に抵抗性を示す領域におけるピークのインピーダンスですこのR ACはZからR DCを引いた値になりますR DC

はこのピークのインピーダンスに比べて非常に小さいので無視できますしたがってこの例におけるR A Cは1082kΩですSIMetr ix SIMPLISを搭載する回路シミュレータ「ADIs imP E」を使用してインピーダンスの周波数特性をシミュレーションしました図2(a)は回路シミュレーションに使用したモデルです上で求めた計算値を適用しています図2(b)に実測値とシミュレーション結果の両方を示しましたこの例では回路

図 2 ( a)は回路シミュレーションに使用したモデル( b)はシミュレーション結果と実測値

(b)(a)

0

200

400

600

800

1000

1200

1 10 100 1000

インピーダンス

(Ω)

周波数〔MHz〕

実測値

シミュレーションR2AC 1 A

I1

インピーダンス

300 m Ω

1678 pF

C1

1082 k Ω

R1

1208 microF

L1

Analog Dialogue 50-02 3

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

0 1 2 3 4 5

インダクタンス〔

nH〕

DCバイアス電流〔A〕

MPZ1608S101A(100 Ω 3 A 0603)

742 792 510(70 Ω 6 A 1812)

定格電流の50でビーズのインダクタンスは

最大90低下

(a)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

1 10 100 1000

インピーダンス〔

Ω〕

周波数〔MHz〕

0 mA100 mA250 mA500 mA750 mA1000 mA1500 mA2000 mA3000 mA

(b)

0

20

40

60

80

100

120

1 10 100 1000

インピーダンス〔

Ω〕

周波数〔MHz〕

0 mA100 mA250 mA500 mA1000 mA1500 mA2000 mA3000 mA4000 mA5000 mA

(c)

図 3 ( a)はフェライトビーズのインダクタンスの D Cバイアス電流に対する依存性( b)と( c)はD C バイアス電流を変化させた場合のインピーダンスの 周波数依存性( b)はT D KのM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 A

( c)はW uuml r t h E l e k t r o n i k社の 7 4 2 7 9 2 5 1 0の実測値

電源ノイズを効果的に除去するにはフェライトビーズを定格DC電流値の約20の値で使用します上の2つの例に示したように定格電流値の20とした場合定格 6 Aのビーズのインダクタンスは約 3 0定格 3 Aの ビーズのインダクタンスは約15まで低下しますフェライトビーズの定格電流は規定された温度上昇に対して耐えられる最大の電流値を示したものですフィルタとしての機能を実現する際に使用する性質の値ではありません

D Cバイアス電流の影響はインピーダンスの周波数特性にも現れますD Cバイアス電流が増加するに連れてインピーダンスが低下しフェライトビーズの効力とEMIの除去能力も低下します図3(b)と(c)はDCバイアス電流によってフェライトビーズのインピーダンスが変化する様子を示したものです定格電流のわずか50を流しただけで100MHzでの実効インピーダンスはTDKの「MPZ1608S101A」(100Ω3A0603)では100Ωから10ΩへWuumlrth E lek t ron ik社の「742 792 5 1 0」(70Ω6 A1 8 1 2)では70Ωから15Ωへと大きく低下しています

システム設計者はDCバイアス電流がフェライトビーズのインダクタンスと実効インピーダンスに及ぼす影響について十分に理解しておかなければなりませんこの点は大電流が必要なアプリケーションにおいて非常に重要な要素になる可能性があります

LC共振の影響

フェライトビーズとデカップリングコンデンサを組み合わせると共振のピークが生じることがありますその影響は見過ごされがちですが回路のリップルとノイズを減衰させるのではなくむしろ増幅してしまう可能性があるので非常に重要です多くの場合そのピークはDCDCコンバータで一般的に使用されるスイッチング周波数の付近に生じます

ローパスフィルタ回路はフェライトビーズのインダクタンスとQ値の高いデカップリング容量で構成されますこのローパスフィルタ回路には共振周波数がありますその周波数がフェライトビーズのクロス オーバー周波数よりも低い場合にピークが生じますその結果としてフィルタの減衰量が不足する状態になります図4(a)はTDKのMPZ1608S101Aについてインピーダンスの周波数特性を実測した結果です抵抗成分によって不要なエネルギーを消費するわけですがその値は約20MHz~30MHzに達するまで大きくなりませんそれ以下の周波数領域ではフェライトビーズは依然としてQ値が非常に高く理想的なインダクタとして機能しますフェライトビーズを用いた典型的なフィルタでは0 1MHz~10MHzの範囲にLC共振周波数が現れます300kHz~5MHzの標準的なスイッチング周波数を使用するにはフィルタのQ値を下げるためにさらなるダンピングを行う必要があります

0

20

40

60

80

100

120

140

160

1 10 100 1000

インピーダンス〔

Ω〕

周波数〔MHz〕

R

X

Z

クロスオーバー周波数

誘導性領域

(a)

Analog Dialogue 50-024

ndash70

ndash60

ndash50

ndash40

ndash30

ndash20

ndash10

0

10

20

100 1k 10k 100k 1M 10M

ゲイン〔

dB〕

周波数〔Hz〕

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A

(100 Ω 3 A 0603)

DCバイアス電流〔μA〕コンデンサ

村田製作所のGRM188R71H103KA01

(10 nF X7R 0603)

(b)

図 4 ( a)はM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 AのZ R Xグラフ ( b)はフェライトビーズとコンデンサから成る

ローパスフィルタの S 2 1応答

この影響の例としてフェライトビーズとコンデン サ か ら 成 る ロ ー パ ス フ ィ ル タ の S 2 1周 波 数 応 答を図 4( b)に示しますご覧のようにピークが生じています使用したフェライトビーズは T D KのM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 A( 100Ω 3 A 0 6 0 3)ですデカップリングコンデンサは村田製作所が提供する低 E S R (等価直列抵抗)のセラミックコンデンサ「 G R M -

188R71H103KA01」(10nFX7R0603)です負荷電流は数μAのレベルとしました

ダンピングを適用することなくフェライトビーズで構成したフィルタはそのQ値によって約 1 0 d B~ 1 5 d Bのピークを生じさせる可能性があります図 4( b)で は 2 5 M H zの 付 近 に ゲ イ ン が 1 0 d Bに も 及 ぶ ピ ーク が 生 じ て い ま す ま た 1 M H z ~ 3 5 M H z で は 信号 が 増 幅 さ れ ま す こ の ピ ー ク が ス イ ッ チ ン グ レギュレータの動作周波数帯に生じると問題が起きますスイッチングに伴う好ましくない成分が増幅さ れ フ ェ ー ズ ロ ッ ク ル ー プ ( P L L ) V C O (電圧制御発振器)分解能の高いADコンバータ(ADC)といった感度の高い負荷の性能を損なう恐れがあるのです図4(b)は非常に負荷が軽い(数μAレベル)という条件の下で得られた結果です現実として数μAから1mAの負荷電流しか必要としない回路(システムのうちの一部)や動作モードに応じて省電力のために停止する回路に向けた電源回路も存在しますそのため数μAレベルというのも現実的に起こり得る条件だと言えますなおピークが生じるとシステム内のノイズが増大して不要なクロストークが発生する恐れがあります

図5に示したのはADP5071のアプリケーション回路例ですその正出力にはフェライトビーズを使って構成したフィルタを接続しています図6はADP5071の正出力を周波数軸で見たもの(出力スペクトル)ですスイッチング周波数は24MHz入力電圧は9V出力電圧は16V負荷電流は5mAとしています

ADP5071SS INBK

SW1

RC1118 kΩ

CC1820 pF

COMP1

RC2576 kΩ

CC227 nF

COMP2

CVREG1 microF

VREG

EN1

SYNCFREQSLEWSEQ

EN2

AGND

PVIN1PVIN2PVINSYSCIN1

10 microF

C10 nF

VIN+9 V

VREGndash16 V

FB1

D1MBR130T1G MPZ1608S101A

L122 microH

L268 microH

RFB1357 kΩ

RL32 kΩ

RFT1681 kΩ

+16 V

SW2

PGND

FB2

VREF

D2MBR130T1G

RFB2309 kΩ

RFT2649 kΩ

CVREF1 microF

COUT110 microF

COUT210 microF

図 5 A D P 5 0 7 1 のアプリケーション回路例 ビーズとコンデンサから成るローパスフィルタを

正出力に接続している

ndash10

0

10

20

30

40

50

60

001 01 1 10 100

振幅〔

dBμV〕

周波数〔MHz〕

ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加した場合のADP5071の出力スペクトル(ダンピングなし)ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加していない場合のADP5071の出力スペクトル

25MHz付近に共振によるピークが発生

図 6 負荷電流が 5 m Aの場合のA D P 5 0 7 1の出力スペクトル

フェライトビーズのインダクタンスと10nFのセラミックコンデンサにより25MHz付近に共振のピークが生じています24MHzの基本リップル周波数は減衰されるどころか10dBも増幅されています

共振のピークに影響するその他の要因としてはフェライトビーズを使って構成したフィルタの直列インピーダンスと負荷インピーダンスが挙げられますソース抵抗を高くすればピークはかなり低減されますしかしそうすると負荷に対するレギュレーションの能力が低下してしまいますそのため実際にはこの方法は採用できません直列抵抗によって電圧降下が生じるので負荷電流の増加に伴って出力電圧が低下することになります負荷インピーダンスもピークの応答に影響を与えます負荷が軽い場合には大きなピークが生じます

Analog Dialogue 50-02 5

ダンピング手法の比較

ここでは共振のピークを大幅に低下させるために使用できるダンピング手法を3つ紹介します(図7)

ダンピングなし

方法B10Ωの抵抗をフェライトビーズに並列接続方法A10Ωの抵抗をデカップリングコンデンサに直列接続

方法CダンピングありCDAMP(1μF)とRDAMP(2Ω)を追加フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

ndash70

ndash60

ndash50

ndash40

ndash30

ndash20

ndash10

0

10

20

00001 0001 001 01 1 10

周波数〔MHz〕

C

挿入損失〔

dB〕 A

B

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

入力 出力

抵抗をデカップリングコンデンサに直列接続

方法A

出力

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)抵抗をフェライトビーズに

並列接続

入力

方法B

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

デカップリング用のRCフィルタを追加

CDAMP

RDAMP

入力 出力

方法C

図 7 3種のダンピング手法と それぞれを適用した場合の周波数応答

方法Aはデカップリングコンデンサのパスに抵抗を直列に接続するというものですそれによって回路の共振が減衰しますただし高い周波数におけるバイパス効果は低下します方法Bでは小さな抵抗をフェライトビーズに並列に接続しますこの方法でも回路の共振は減衰しますしかし高い周波数におけるフィルタの減衰特性が低下してしまいます図8にMPZ1608S101Aのインピーダンスと周波数の関係を示しましたこの図には10Ωの並列抵抗を接続した場合と接続しない場合の特性を示しています緑色の点線はフェライト ビーズに10Ωの抵抗を並列接続した場合のトータルのイ

ンピーダンスですこのインピーダンスの値はかなり低減されており10Ωの抵抗が支配的になっていますしかし10Ωの並列抵抗を接続したフェライトビーズのクロスオーバー周波数は38MHzでフェライトビーズ単体のクロスオーバー周波数である403MHzと比べてかなり低くなりますそのためフェライトビーズははるかに低い周波数範囲で抵抗性を示しQ値が低下することによってダンピング性能が改善されます

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20

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1M 10M 100M 1G

インピーダンス〔

Ω〕

周波数〔Hz〕

RXZ

ビーズのみDCバイアス電流は0mA

RXZ

ビーズと10Ωの抵抗DCバイアス電流は0mA

(a)

インピーダンス〔

Ω〕

0

2

4

6

8

10

12

RXZ

ビーズのみDCバイアス電流は0mA

RXZ

ビーズと10Ωの抵抗DCバイアス電流は0mA

1M 10M 100M 1G

周波数〔Hz〕

(b)

図 8 ( a)はM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 AのZ R Xグラフ ( b)はその拡大図

方法Cでは容量の大きいコンデンサC DAMPとダンピング抵抗DAMPを直列接続したものを追加します多くの場合これが最善の方法です

コンデンサと抵抗を追加すると回路の共振が減衰しますしかも高周波におけるバイパス効果は低下しませんこの方法では容量の大きいコンデンサによってDCが遮断されますそのため抵抗で過度に電力が消費されることもありませんこのコンデンサの容量はすべてのデカップリングコンデンサの総容量よりもはるかに大きくする必要がありますしかしそれによってダンピング抵抗の値は小さくて済みますピークを低減するために共振周波数におけるコンデンサのインピーダンスはダンピング抵抗よりも十分に小さい必要があります

図9は図5に示したアプリケーション回路に方法Cのダンピング手法を適用した結果ですこの図でもADP5071の正出力を周波数軸で見ていますC DAMPとR DAMPとしてはそれぞれ1μFのセラミックコンデンサと2ΩのSMD抵抗を使用しました結果として24MHzにおける基本波リップルは5dB減少していますこれは図6で10dB増加していたのとは対照的です

Analog Dialogue 50-026

ndash10

0

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001 01 1 10 100

振幅〔

dBμV〕

周波数〔MHz〕

ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加した場合のADP5071の出力スペクトル(方法Cのダンピングも適用)

ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加しない場合のADP5071の出力スペクトル

24MHzで発生するリップルは5dB減少

図 9 A D P 5 0 7 1の出力スペクトル ビーズとコンデンサから成るローパスフィルタに

方法Cのダンピングを適用した場合の結果

一般に方法Cが最も洗練された手法だと言えますしかもダンピング専用の高価なコンデンサを購入することなくセラミックコンデンサに抵抗を直列に接続することによって実装できます最も安全な方法は試作を行った際に調整できるように設計しておき不要ならば抵抗を取り外せるようにしておくことですこの手法の欠点は部品のコストが余分にかかり必要な基板面積が大きくなることだけです

まとめ

本稿ではフェライトビーズを使用する際に考慮すべき主な検討事項について説明しましたまたフェライトビーズの簡単な回路モデルも紹介しましたそのモデルを使用しD Cバイアス電流がゼロであるという条件の下でインピーダンスの周波数特性をシミュレーションしましたそれにより実測値に非常に近い結果が得られることもわかりました

また本稿ではDCバイアス電流がフェライトビーズの特性に及ぼす影響についても説明しましたDCバイアス電流が定格電流の20よりも大きい場合フェライトビーズのインダクタンスは著しく低下する可能性がありますそのような電流はフェライトビーズの実効イン ピーダンスを引き下げEMIの除去能力を低下させる恐れがありますDCバイアス電流が流れる電源レールにフェライトビーズを適用する場合その電流によってフェライト材が飽和しインダクタンスが大きく変化することがないようにしなければなりません

フェライトビーズは誘導性のデバイスなのでQ値の高いデカップリングコンデンサと組み合わせる場合には細心の注意が必要です回路に望ましくない共振が発生し効果をもたらすどころか悪影響が出る場合もあるからですしかし本稿で提案したダンピング手法であれば不要な共振を簡単に防止することができます容量の大きなデカップリングコンデンサとダンピング抵抗を直列接続し負荷の両端に追加するだけですフェライトビーズを正しく利用すれば効果的かつ安価に高周波のノイズとスイッチングによる遷移を低減することができます

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Je ff e r so n Ec oAld r i c k L imjo c o AN-1 3 6 8 アプリケーションノート「フェライトビーズの特性を知る」Analog Devices

David B Fancher 「 ILB ILBB Ferr i te Beads Elec t ro-magnetic Interference and Electromagnetic Compatibi l i ty (EMIEMC) 」Vishay Dale

Lee Hi l l Rick Meadors 「Steward EMI Suppress ion」Steward

Ken Kunder t「Power Supply Noise Reduct ion」Design-er rsquos Guide Consul t ing

Steve Weir「PDN Application of Ferri te Beads」IPBLOX LLC

謝辞

技術的な知識についてご教授 ご助言いただいたアイルランド リムリック大学のJeff Weaver氏Donal O Sul l ivan氏Luca Vassa l l i氏Pat Meehan氏に感謝します

Aldr ick S Limjoco(a ldr ick l imjocoanalog com)は2006年8月にADIに入社しました現在はアプリケーションエンジニアを務めていますフィリピンのデラサール大学で電子工学の学士号を取得しましたスイッチングレギュレータの出力リップルのフィルタリング手法に関する米国特許を保有しています

Aldrick S Limjoco

著者

Jefferson A Eco( je ffersonecoanalogcom)は2011年5月にADIのフィリピン支社に入社しました現在はアプリケーション開発エンジニアとして業務に携わっていますフィリピンのカマリネスポリテクニック大学で電子工学の学士号を取得しています

Jefferson A Eco

この著者が執筆した 他の技術文書

スイッチングレギュレータの出力ノイズを理解し電源設計を加速する

Analog Dialogue 48-08

Page 3: DC/DCコンバータにおける フェライト・ビーズの活 …Anlo iloe 52 1 DC/DCコンバータにおける フェライト・ビーズの活用法 著者:Jefferson Eco/Aldrick

Analog Dialogue 50-02 3

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インダクタンス〔

nH〕

DCバイアス電流〔A〕

MPZ1608S101A(100 Ω 3 A 0603)

742 792 510(70 Ω 6 A 1812)

定格電流の50でビーズのインダクタンスは

最大90低下

(a)

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インピーダンス〔

Ω〕

周波数〔MHz〕

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インピーダンス〔

Ω〕

周波数〔MHz〕

0 mA100 mA250 mA500 mA1000 mA1500 mA2000 mA3000 mA4000 mA5000 mA

(c)

図 3 ( a)はフェライトビーズのインダクタンスの D Cバイアス電流に対する依存性( b)と( c)はD C バイアス電流を変化させた場合のインピーダンスの 周波数依存性( b)はT D KのM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 A

( c)はW uuml r t h E l e k t r o n i k社の 7 4 2 7 9 2 5 1 0の実測値

電源ノイズを効果的に除去するにはフェライトビーズを定格DC電流値の約20の値で使用します上の2つの例に示したように定格電流値の20とした場合定格 6 Aのビーズのインダクタンスは約 3 0定格 3 Aの ビーズのインダクタンスは約15まで低下しますフェライトビーズの定格電流は規定された温度上昇に対して耐えられる最大の電流値を示したものですフィルタとしての機能を実現する際に使用する性質の値ではありません

D Cバイアス電流の影響はインピーダンスの周波数特性にも現れますD Cバイアス電流が増加するに連れてインピーダンスが低下しフェライトビーズの効力とEMIの除去能力も低下します図3(b)と(c)はDCバイアス電流によってフェライトビーズのインピーダンスが変化する様子を示したものです定格電流のわずか50を流しただけで100MHzでの実効インピーダンスはTDKの「MPZ1608S101A」(100Ω3A0603)では100Ωから10ΩへWuumlrth E lek t ron ik社の「742 792 5 1 0」(70Ω6 A1 8 1 2)では70Ωから15Ωへと大きく低下しています

システム設計者はDCバイアス電流がフェライトビーズのインダクタンスと実効インピーダンスに及ぼす影響について十分に理解しておかなければなりませんこの点は大電流が必要なアプリケーションにおいて非常に重要な要素になる可能性があります

LC共振の影響

フェライトビーズとデカップリングコンデンサを組み合わせると共振のピークが生じることがありますその影響は見過ごされがちですが回路のリップルとノイズを減衰させるのではなくむしろ増幅してしまう可能性があるので非常に重要です多くの場合そのピークはDCDCコンバータで一般的に使用されるスイッチング周波数の付近に生じます

ローパスフィルタ回路はフェライトビーズのインダクタンスとQ値の高いデカップリング容量で構成されますこのローパスフィルタ回路には共振周波数がありますその周波数がフェライトビーズのクロス オーバー周波数よりも低い場合にピークが生じますその結果としてフィルタの減衰量が不足する状態になります図4(a)はTDKのMPZ1608S101Aについてインピーダンスの周波数特性を実測した結果です抵抗成分によって不要なエネルギーを消費するわけですがその値は約20MHz~30MHzに達するまで大きくなりませんそれ以下の周波数領域ではフェライトビーズは依然としてQ値が非常に高く理想的なインダクタとして機能しますフェライトビーズを用いた典型的なフィルタでは0 1MHz~10MHzの範囲にLC共振周波数が現れます300kHz~5MHzの標準的なスイッチング周波数を使用するにはフィルタのQ値を下げるためにさらなるダンピングを行う必要があります

0

20

40

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120

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インピーダンス〔

Ω〕

周波数〔MHz〕

R

X

Z

クロスオーバー周波数

誘導性領域

(a)

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100 1k 10k 100k 1M 10M

ゲイン〔

dB〕

周波数〔Hz〕

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A

(100 Ω 3 A 0603)

DCバイアス電流〔μA〕コンデンサ

村田製作所のGRM188R71H103KA01

(10 nF X7R 0603)

(b)

図 4 ( a)はM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 AのZ R Xグラフ ( b)はフェライトビーズとコンデンサから成る

ローパスフィルタの S 2 1応答

この影響の例としてフェライトビーズとコンデン サ か ら 成 る ロ ー パ ス フ ィ ル タ の S 2 1周 波 数 応 答を図 4( b)に示しますご覧のようにピークが生じています使用したフェライトビーズは T D KのM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 A( 100Ω 3 A 0 6 0 3)ですデカップリングコンデンサは村田製作所が提供する低 E S R (等価直列抵抗)のセラミックコンデンサ「 G R M -

188R71H103KA01」(10nFX7R0603)です負荷電流は数μAのレベルとしました

ダンピングを適用することなくフェライトビーズで構成したフィルタはそのQ値によって約 1 0 d B~ 1 5 d Bのピークを生じさせる可能性があります図 4( b)で は 2 5 M H zの 付 近 に ゲ イ ン が 1 0 d Bに も 及 ぶ ピ ーク が 生 じ て い ま す ま た 1 M H z ~ 3 5 M H z で は 信号 が 増 幅 さ れ ま す こ の ピ ー ク が ス イ ッ チ ン グ レギュレータの動作周波数帯に生じると問題が起きますスイッチングに伴う好ましくない成分が増幅さ れ フ ェ ー ズ ロ ッ ク ル ー プ ( P L L ) V C O (電圧制御発振器)分解能の高いADコンバータ(ADC)といった感度の高い負荷の性能を損なう恐れがあるのです図4(b)は非常に負荷が軽い(数μAレベル)という条件の下で得られた結果です現実として数μAから1mAの負荷電流しか必要としない回路(システムのうちの一部)や動作モードに応じて省電力のために停止する回路に向けた電源回路も存在しますそのため数μAレベルというのも現実的に起こり得る条件だと言えますなおピークが生じるとシステム内のノイズが増大して不要なクロストークが発生する恐れがあります

図5に示したのはADP5071のアプリケーション回路例ですその正出力にはフェライトビーズを使って構成したフィルタを接続しています図6はADP5071の正出力を周波数軸で見たもの(出力スペクトル)ですスイッチング周波数は24MHz入力電圧は9V出力電圧は16V負荷電流は5mAとしています

ADP5071SS INBK

SW1

RC1118 kΩ

CC1820 pF

COMP1

RC2576 kΩ

CC227 nF

COMP2

CVREG1 microF

VREG

EN1

SYNCFREQSLEWSEQ

EN2

AGND

PVIN1PVIN2PVINSYSCIN1

10 microF

C10 nF

VIN+9 V

VREGndash16 V

FB1

D1MBR130T1G MPZ1608S101A

L122 microH

L268 microH

RFB1357 kΩ

RL32 kΩ

RFT1681 kΩ

+16 V

SW2

PGND

FB2

VREF

D2MBR130T1G

RFB2309 kΩ

RFT2649 kΩ

CVREF1 microF

COUT110 microF

COUT210 microF

図 5 A D P 5 0 7 1 のアプリケーション回路例 ビーズとコンデンサから成るローパスフィルタを

正出力に接続している

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001 01 1 10 100

振幅〔

dBμV〕

周波数〔MHz〕

ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加した場合のADP5071の出力スペクトル(ダンピングなし)ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加していない場合のADP5071の出力スペクトル

25MHz付近に共振によるピークが発生

図 6 負荷電流が 5 m Aの場合のA D P 5 0 7 1の出力スペクトル

フェライトビーズのインダクタンスと10nFのセラミックコンデンサにより25MHz付近に共振のピークが生じています24MHzの基本リップル周波数は減衰されるどころか10dBも増幅されています

共振のピークに影響するその他の要因としてはフェライトビーズを使って構成したフィルタの直列インピーダンスと負荷インピーダンスが挙げられますソース抵抗を高くすればピークはかなり低減されますしかしそうすると負荷に対するレギュレーションの能力が低下してしまいますそのため実際にはこの方法は採用できません直列抵抗によって電圧降下が生じるので負荷電流の増加に伴って出力電圧が低下することになります負荷インピーダンスもピークの応答に影響を与えます負荷が軽い場合には大きなピークが生じます

Analog Dialogue 50-02 5

ダンピング手法の比較

ここでは共振のピークを大幅に低下させるために使用できるダンピング手法を3つ紹介します(図7)

ダンピングなし

方法B10Ωの抵抗をフェライトビーズに並列接続方法A10Ωの抵抗をデカップリングコンデンサに直列接続

方法CダンピングありCDAMP(1μF)とRDAMP(2Ω)を追加フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

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00001 0001 001 01 1 10

周波数〔MHz〕

C

挿入損失〔

dB〕 A

B

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

入力 出力

抵抗をデカップリングコンデンサに直列接続

方法A

出力

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)抵抗をフェライトビーズに

並列接続

入力

方法B

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

デカップリング用のRCフィルタを追加

CDAMP

RDAMP

入力 出力

方法C

図 7 3種のダンピング手法と それぞれを適用した場合の周波数応答

方法Aはデカップリングコンデンサのパスに抵抗を直列に接続するというものですそれによって回路の共振が減衰しますただし高い周波数におけるバイパス効果は低下します方法Bでは小さな抵抗をフェライトビーズに並列に接続しますこの方法でも回路の共振は減衰しますしかし高い周波数におけるフィルタの減衰特性が低下してしまいます図8にMPZ1608S101Aのインピーダンスと周波数の関係を示しましたこの図には10Ωの並列抵抗を接続した場合と接続しない場合の特性を示しています緑色の点線はフェライト ビーズに10Ωの抵抗を並列接続した場合のトータルのイ

ンピーダンスですこのインピーダンスの値はかなり低減されており10Ωの抵抗が支配的になっていますしかし10Ωの並列抵抗を接続したフェライトビーズのクロスオーバー周波数は38MHzでフェライトビーズ単体のクロスオーバー周波数である403MHzと比べてかなり低くなりますそのためフェライトビーズははるかに低い周波数範囲で抵抗性を示しQ値が低下することによってダンピング性能が改善されます

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1M 10M 100M 1G

インピーダンス〔

Ω〕

周波数〔Hz〕

RXZ

ビーズのみDCバイアス電流は0mA

RXZ

ビーズと10Ωの抵抗DCバイアス電流は0mA

(a)

インピーダンス〔

Ω〕

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RXZ

ビーズのみDCバイアス電流は0mA

RXZ

ビーズと10Ωの抵抗DCバイアス電流は0mA

1M 10M 100M 1G

周波数〔Hz〕

(b)

図 8 ( a)はM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 AのZ R Xグラフ ( b)はその拡大図

方法Cでは容量の大きいコンデンサC DAMPとダンピング抵抗DAMPを直列接続したものを追加します多くの場合これが最善の方法です

コンデンサと抵抗を追加すると回路の共振が減衰しますしかも高周波におけるバイパス効果は低下しませんこの方法では容量の大きいコンデンサによってDCが遮断されますそのため抵抗で過度に電力が消費されることもありませんこのコンデンサの容量はすべてのデカップリングコンデンサの総容量よりもはるかに大きくする必要がありますしかしそれによってダンピング抵抗の値は小さくて済みますピークを低減するために共振周波数におけるコンデンサのインピーダンスはダンピング抵抗よりも十分に小さい必要があります

図9は図5に示したアプリケーション回路に方法Cのダンピング手法を適用した結果ですこの図でもADP5071の正出力を周波数軸で見ていますC DAMPとR DAMPとしてはそれぞれ1μFのセラミックコンデンサと2ΩのSMD抵抗を使用しました結果として24MHzにおける基本波リップルは5dB減少していますこれは図6で10dB増加していたのとは対照的です

Analog Dialogue 50-026

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001 01 1 10 100

振幅〔

dBμV〕

周波数〔MHz〕

ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加した場合のADP5071の出力スペクトル(方法Cのダンピングも適用)

ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加しない場合のADP5071の出力スペクトル

24MHzで発生するリップルは5dB減少

図 9 A D P 5 0 7 1の出力スペクトル ビーズとコンデンサから成るローパスフィルタに

方法Cのダンピングを適用した場合の結果

一般に方法Cが最も洗練された手法だと言えますしかもダンピング専用の高価なコンデンサを購入することなくセラミックコンデンサに抵抗を直列に接続することによって実装できます最も安全な方法は試作を行った際に調整できるように設計しておき不要ならば抵抗を取り外せるようにしておくことですこの手法の欠点は部品のコストが余分にかかり必要な基板面積が大きくなることだけです

まとめ

本稿ではフェライトビーズを使用する際に考慮すべき主な検討事項について説明しましたまたフェライトビーズの簡単な回路モデルも紹介しましたそのモデルを使用しD Cバイアス電流がゼロであるという条件の下でインピーダンスの周波数特性をシミュレーションしましたそれにより実測値に非常に近い結果が得られることもわかりました

また本稿ではDCバイアス電流がフェライトビーズの特性に及ぼす影響についても説明しましたDCバイアス電流が定格電流の20よりも大きい場合フェライトビーズのインダクタンスは著しく低下する可能性がありますそのような電流はフェライトビーズの実効イン ピーダンスを引き下げEMIの除去能力を低下させる恐れがありますDCバイアス電流が流れる電源レールにフェライトビーズを適用する場合その電流によってフェライト材が飽和しインダクタンスが大きく変化することがないようにしなければなりません

フェライトビーズは誘導性のデバイスなのでQ値の高いデカップリングコンデンサと組み合わせる場合には細心の注意が必要です回路に望ましくない共振が発生し効果をもたらすどころか悪影響が出る場合もあるからですしかし本稿で提案したダンピング手法であれば不要な共振を簡単に防止することができます容量の大きなデカップリングコンデンサとダンピング抵抗を直列接続し負荷の両端に追加するだけですフェライトビーズを正しく利用すれば効果的かつ安価に高周波のノイズとスイッチングによる遷移を低減することができます

関連資料

AN-583 Appl ica t ion Note「Design ing Power I so la t ion F i l te rs wi th Fer r i te Beads for Al te ra FPGAs」 Al te ra

「Appl ica t ion Manual for Power Supply Noise Suppres-s ion and Decoupl ing for Dig i ta l ICs」 村田製作所

Chris Burket 「All Ferri te Beads Are Not Created EqualmdashUnders tanding the Impor tance of Fer r i te Bead Mater ia l Behavior」 TDK

Je ff e r so n Ec oAld r i c k L imjo c o AN-1 3 6 8 アプリケーションノート「フェライトビーズの特性を知る」Analog Devices

David B Fancher 「 ILB ILBB Ferr i te Beads Elec t ro-magnetic Interference and Electromagnetic Compatibi l i ty (EMIEMC) 」Vishay Dale

Lee Hi l l Rick Meadors 「Steward EMI Suppress ion」Steward

Ken Kunder t「Power Supply Noise Reduct ion」Design-er rsquos Guide Consul t ing

Steve Weir「PDN Application of Ferri te Beads」IPBLOX LLC

謝辞

技術的な知識についてご教授 ご助言いただいたアイルランド リムリック大学のJeff Weaver氏Donal O Sul l ivan氏Luca Vassa l l i氏Pat Meehan氏に感謝します

Aldr ick S Limjoco(a ldr ick l imjocoanalog com)は2006年8月にADIに入社しました現在はアプリケーションエンジニアを務めていますフィリピンのデラサール大学で電子工学の学士号を取得しましたスイッチングレギュレータの出力リップルのフィルタリング手法に関する米国特許を保有しています

Aldrick S Limjoco

著者

Jefferson A Eco( je ffersonecoanalogcom)は2011年5月にADIのフィリピン支社に入社しました現在はアプリケーション開発エンジニアとして業務に携わっていますフィリピンのカマリネスポリテクニック大学で電子工学の学士号を取得しています

Jefferson A Eco

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スイッチングレギュレータの出力ノイズを理解し電源設計を加速する

Analog Dialogue 48-08

Page 4: DC/DCコンバータにおける フェライト・ビーズの活 …Anlo iloe 52 1 DC/DCコンバータにおける フェライト・ビーズの活用法 著者:Jefferson Eco/Aldrick

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フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A

(100 Ω 3 A 0603)

DCバイアス電流〔μA〕コンデンサ

村田製作所のGRM188R71H103KA01

(10 nF X7R 0603)

(b)

図 4 ( a)はM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 AのZ R Xグラフ ( b)はフェライトビーズとコンデンサから成る

ローパスフィルタの S 2 1応答

この影響の例としてフェライトビーズとコンデン サ か ら 成 る ロ ー パ ス フ ィ ル タ の S 2 1周 波 数 応 答を図 4( b)に示しますご覧のようにピークが生じています使用したフェライトビーズは T D KのM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 A( 100Ω 3 A 0 6 0 3)ですデカップリングコンデンサは村田製作所が提供する低 E S R (等価直列抵抗)のセラミックコンデンサ「 G R M -

188R71H103KA01」(10nFX7R0603)です負荷電流は数μAのレベルとしました

ダンピングを適用することなくフェライトビーズで構成したフィルタはそのQ値によって約 1 0 d B~ 1 5 d Bのピークを生じさせる可能性があります図 4( b)で は 2 5 M H zの 付 近 に ゲ イ ン が 1 0 d Bに も 及 ぶ ピ ーク が 生 じ て い ま す ま た 1 M H z ~ 3 5 M H z で は 信号 が 増 幅 さ れ ま す こ の ピ ー ク が ス イ ッ チ ン グ レギュレータの動作周波数帯に生じると問題が起きますスイッチングに伴う好ましくない成分が増幅さ れ フ ェ ー ズ ロ ッ ク ル ー プ ( P L L ) V C O (電圧制御発振器)分解能の高いADコンバータ(ADC)といった感度の高い負荷の性能を損なう恐れがあるのです図4(b)は非常に負荷が軽い(数μAレベル)という条件の下で得られた結果です現実として数μAから1mAの負荷電流しか必要としない回路(システムのうちの一部)や動作モードに応じて省電力のために停止する回路に向けた電源回路も存在しますそのため数μAレベルというのも現実的に起こり得る条件だと言えますなおピークが生じるとシステム内のノイズが増大して不要なクロストークが発生する恐れがあります

図5に示したのはADP5071のアプリケーション回路例ですその正出力にはフェライトビーズを使って構成したフィルタを接続しています図6はADP5071の正出力を周波数軸で見たもの(出力スペクトル)ですスイッチング周波数は24MHz入力電圧は9V出力電圧は16V負荷電流は5mAとしています

ADP5071SS INBK

SW1

RC1118 kΩ

CC1820 pF

COMP1

RC2576 kΩ

CC227 nF

COMP2

CVREG1 microF

VREG

EN1

SYNCFREQSLEWSEQ

EN2

AGND

PVIN1PVIN2PVINSYSCIN1

10 microF

C10 nF

VIN+9 V

VREGndash16 V

FB1

D1MBR130T1G MPZ1608S101A

L122 microH

L268 microH

RFB1357 kΩ

RL32 kΩ

RFT1681 kΩ

+16 V

SW2

PGND

FB2

VREF

D2MBR130T1G

RFB2309 kΩ

RFT2649 kΩ

CVREF1 microF

COUT110 microF

COUT210 microF

図 5 A D P 5 0 7 1 のアプリケーション回路例 ビーズとコンデンサから成るローパスフィルタを

正出力に接続している

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振幅〔

dBμV〕

周波数〔MHz〕

ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加した場合のADP5071の出力スペクトル(ダンピングなし)ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加していない場合のADP5071の出力スペクトル

25MHz付近に共振によるピークが発生

図 6 負荷電流が 5 m Aの場合のA D P 5 0 7 1の出力スペクトル

フェライトビーズのインダクタンスと10nFのセラミックコンデンサにより25MHz付近に共振のピークが生じています24MHzの基本リップル周波数は減衰されるどころか10dBも増幅されています

共振のピークに影響するその他の要因としてはフェライトビーズを使って構成したフィルタの直列インピーダンスと負荷インピーダンスが挙げられますソース抵抗を高くすればピークはかなり低減されますしかしそうすると負荷に対するレギュレーションの能力が低下してしまいますそのため実際にはこの方法は採用できません直列抵抗によって電圧降下が生じるので負荷電流の増加に伴って出力電圧が低下することになります負荷インピーダンスもピークの応答に影響を与えます負荷が軽い場合には大きなピークが生じます

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ダンピング手法の比較

ここでは共振のピークを大幅に低下させるために使用できるダンピング手法を3つ紹介します(図7)

ダンピングなし

方法B10Ωの抵抗をフェライトビーズに並列接続方法A10Ωの抵抗をデカップリングコンデンサに直列接続

方法CダンピングありCDAMP(1μF)とRDAMP(2Ω)を追加フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

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フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

入力 出力

抵抗をデカップリングコンデンサに直列接続

方法A

出力

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)抵抗をフェライトビーズに

並列接続

入力

方法B

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

デカップリング用のRCフィルタを追加

CDAMP

RDAMP

入力 出力

方法C

図 7 3種のダンピング手法と それぞれを適用した場合の周波数応答

方法Aはデカップリングコンデンサのパスに抵抗を直列に接続するというものですそれによって回路の共振が減衰しますただし高い周波数におけるバイパス効果は低下します方法Bでは小さな抵抗をフェライトビーズに並列に接続しますこの方法でも回路の共振は減衰しますしかし高い周波数におけるフィルタの減衰特性が低下してしまいます図8にMPZ1608S101Aのインピーダンスと周波数の関係を示しましたこの図には10Ωの並列抵抗を接続した場合と接続しない場合の特性を示しています緑色の点線はフェライト ビーズに10Ωの抵抗を並列接続した場合のトータルのイ

ンピーダンスですこのインピーダンスの値はかなり低減されており10Ωの抵抗が支配的になっていますしかし10Ωの並列抵抗を接続したフェライトビーズのクロスオーバー周波数は38MHzでフェライトビーズ単体のクロスオーバー周波数である403MHzと比べてかなり低くなりますそのためフェライトビーズははるかに低い周波数範囲で抵抗性を示しQ値が低下することによってダンピング性能が改善されます

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周波数〔Hz〕

(b)

図 8 ( a)はM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 AのZ R Xグラフ ( b)はその拡大図

方法Cでは容量の大きいコンデンサC DAMPとダンピング抵抗DAMPを直列接続したものを追加します多くの場合これが最善の方法です

コンデンサと抵抗を追加すると回路の共振が減衰しますしかも高周波におけるバイパス効果は低下しませんこの方法では容量の大きいコンデンサによってDCが遮断されますそのため抵抗で過度に電力が消費されることもありませんこのコンデンサの容量はすべてのデカップリングコンデンサの総容量よりもはるかに大きくする必要がありますしかしそれによってダンピング抵抗の値は小さくて済みますピークを低減するために共振周波数におけるコンデンサのインピーダンスはダンピング抵抗よりも十分に小さい必要があります

図9は図5に示したアプリケーション回路に方法Cのダンピング手法を適用した結果ですこの図でもADP5071の正出力を周波数軸で見ていますC DAMPとR DAMPとしてはそれぞれ1μFのセラミックコンデンサと2ΩのSMD抵抗を使用しました結果として24MHzにおける基本波リップルは5dB減少していますこれは図6で10dB増加していたのとは対照的です

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ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加しない場合のADP5071の出力スペクトル

24MHzで発生するリップルは5dB減少

図 9 A D P 5 0 7 1の出力スペクトル ビーズとコンデンサから成るローパスフィルタに

方法Cのダンピングを適用した場合の結果

一般に方法Cが最も洗練された手法だと言えますしかもダンピング専用の高価なコンデンサを購入することなくセラミックコンデンサに抵抗を直列に接続することによって実装できます最も安全な方法は試作を行った際に調整できるように設計しておき不要ならば抵抗を取り外せるようにしておくことですこの手法の欠点は部品のコストが余分にかかり必要な基板面積が大きくなることだけです

まとめ

本稿ではフェライトビーズを使用する際に考慮すべき主な検討事項について説明しましたまたフェライトビーズの簡単な回路モデルも紹介しましたそのモデルを使用しD Cバイアス電流がゼロであるという条件の下でインピーダンスの周波数特性をシミュレーションしましたそれにより実測値に非常に近い結果が得られることもわかりました

また本稿ではDCバイアス電流がフェライトビーズの特性に及ぼす影響についても説明しましたDCバイアス電流が定格電流の20よりも大きい場合フェライトビーズのインダクタンスは著しく低下する可能性がありますそのような電流はフェライトビーズの実効イン ピーダンスを引き下げEMIの除去能力を低下させる恐れがありますDCバイアス電流が流れる電源レールにフェライトビーズを適用する場合その電流によってフェライト材が飽和しインダクタンスが大きく変化することがないようにしなければなりません

フェライトビーズは誘導性のデバイスなのでQ値の高いデカップリングコンデンサと組み合わせる場合には細心の注意が必要です回路に望ましくない共振が発生し効果をもたらすどころか悪影響が出る場合もあるからですしかし本稿で提案したダンピング手法であれば不要な共振を簡単に防止することができます容量の大きなデカップリングコンデンサとダンピング抵抗を直列接続し負荷の両端に追加するだけですフェライトビーズを正しく利用すれば効果的かつ安価に高周波のノイズとスイッチングによる遷移を低減することができます

関連資料

AN-583 Appl ica t ion Note「Design ing Power I so la t ion F i l te rs wi th Fer r i te Beads for Al te ra FPGAs」 Al te ra

「Appl ica t ion Manual for Power Supply Noise Suppres-s ion and Decoupl ing for Dig i ta l ICs」 村田製作所

Chris Burket 「All Ferri te Beads Are Not Created EqualmdashUnders tanding the Impor tance of Fer r i te Bead Mater ia l Behavior」 TDK

Je ff e r so n Ec oAld r i c k L imjo c o AN-1 3 6 8 アプリケーションノート「フェライトビーズの特性を知る」Analog Devices

David B Fancher 「 ILB ILBB Ferr i te Beads Elec t ro-magnetic Interference and Electromagnetic Compatibi l i ty (EMIEMC) 」Vishay Dale

Lee Hi l l Rick Meadors 「Steward EMI Suppress ion」Steward

Ken Kunder t「Power Supply Noise Reduct ion」Design-er rsquos Guide Consul t ing

Steve Weir「PDN Application of Ferri te Beads」IPBLOX LLC

謝辞

技術的な知識についてご教授 ご助言いただいたアイルランド リムリック大学のJeff Weaver氏Donal O Sul l ivan氏Luca Vassa l l i氏Pat Meehan氏に感謝します

Aldr ick S Limjoco(a ldr ick l imjocoanalog com)は2006年8月にADIに入社しました現在はアプリケーションエンジニアを務めていますフィリピンのデラサール大学で電子工学の学士号を取得しましたスイッチングレギュレータの出力リップルのフィルタリング手法に関する米国特許を保有しています

Aldrick S Limjoco

著者

Jefferson A Eco( je ffersonecoanalogcom)は2011年5月にADIのフィリピン支社に入社しました現在はアプリケーション開発エンジニアとして業務に携わっていますフィリピンのカマリネスポリテクニック大学で電子工学の学士号を取得しています

Jefferson A Eco

この著者が執筆した 他の技術文書

スイッチングレギュレータの出力ノイズを理解し電源設計を加速する

Analog Dialogue 48-08

Page 5: DC/DCコンバータにおける フェライト・ビーズの活 …Anlo iloe 52 1 DC/DCコンバータにおける フェライト・ビーズの活用法 著者:Jefferson Eco/Aldrick

Analog Dialogue 50-02 5

ダンピング手法の比較

ここでは共振のピークを大幅に低下させるために使用できるダンピング手法を3つ紹介します(図7)

ダンピングなし

方法B10Ωの抵抗をフェライトビーズに並列接続方法A10Ωの抵抗をデカップリングコンデンサに直列接続

方法CダンピングありCDAMP(1μF)とRDAMP(2Ω)を追加フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

ndash70

ndash60

ndash50

ndash40

ndash30

ndash20

ndash10

0

10

20

00001 0001 001 01 1 10

周波数〔MHz〕

C

挿入損失〔

dB〕 A

B

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

入力 出力

抵抗をデカップリングコンデンサに直列接続

方法A

出力

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)抵抗をフェライトビーズに

並列接続

入力

方法B

フェライトビーズTDKのMPZ1608S101A(100Ω3A0603)

コンデンサ村田製作所のGRM188R71H103KA01(10nFX7R0603)

デカップリング用のRCフィルタを追加

CDAMP

RDAMP

入力 出力

方法C

図 7 3種のダンピング手法と それぞれを適用した場合の周波数応答

方法Aはデカップリングコンデンサのパスに抵抗を直列に接続するというものですそれによって回路の共振が減衰しますただし高い周波数におけるバイパス効果は低下します方法Bでは小さな抵抗をフェライトビーズに並列に接続しますこの方法でも回路の共振は減衰しますしかし高い周波数におけるフィルタの減衰特性が低下してしまいます図8にMPZ1608S101Aのインピーダンスと周波数の関係を示しましたこの図には10Ωの並列抵抗を接続した場合と接続しない場合の特性を示しています緑色の点線はフェライト ビーズに10Ωの抵抗を並列接続した場合のトータルのイ

ンピーダンスですこのインピーダンスの値はかなり低減されており10Ωの抵抗が支配的になっていますしかし10Ωの並列抵抗を接続したフェライトビーズのクロスオーバー周波数は38MHzでフェライトビーズ単体のクロスオーバー周波数である403MHzと比べてかなり低くなりますそのためフェライトビーズははるかに低い周波数範囲で抵抗性を示しQ値が低下することによってダンピング性能が改善されます

0

20

40

60

80

100

120

140

160

1M 10M 100M 1G

インピーダンス〔

Ω〕

周波数〔Hz〕

RXZ

ビーズのみDCバイアス電流は0mA

RXZ

ビーズと10Ωの抵抗DCバイアス電流は0mA

(a)

インピーダンス〔

Ω〕

0

2

4

6

8

10

12

RXZ

ビーズのみDCバイアス電流は0mA

RXZ

ビーズと10Ωの抵抗DCバイアス電流は0mA

1M 10M 100M 1G

周波数〔Hz〕

(b)

図 8 ( a)はM P Z 1 6 0 8 S 1 0 1 AのZ R Xグラフ ( b)はその拡大図

方法Cでは容量の大きいコンデンサC DAMPとダンピング抵抗DAMPを直列接続したものを追加します多くの場合これが最善の方法です

コンデンサと抵抗を追加すると回路の共振が減衰しますしかも高周波におけるバイパス効果は低下しませんこの方法では容量の大きいコンデンサによってDCが遮断されますそのため抵抗で過度に電力が消費されることもありませんこのコンデンサの容量はすべてのデカップリングコンデンサの総容量よりもはるかに大きくする必要がありますしかしそれによってダンピング抵抗の値は小さくて済みますピークを低減するために共振周波数におけるコンデンサのインピーダンスはダンピング抵抗よりも十分に小さい必要があります

図9は図5に示したアプリケーション回路に方法Cのダンピング手法を適用した結果ですこの図でもADP5071の正出力を周波数軸で見ていますC DAMPとR DAMPとしてはそれぞれ1μFのセラミックコンデンサと2ΩのSMD抵抗を使用しました結果として24MHzにおける基本波リップルは5dB減少していますこれは図6で10dB増加していたのとは対照的です

Analog Dialogue 50-026

ndash10

0

10

20

30

40

50

60

001 01 1 10 100

振幅〔

dBμV〕

周波数〔MHz〕

ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加した場合のADP5071の出力スペクトル(方法Cのダンピングも適用)

ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加しない場合のADP5071の出力スペクトル

24MHzで発生するリップルは5dB減少

図 9 A D P 5 0 7 1の出力スペクトル ビーズとコンデンサから成るローパスフィルタに

方法Cのダンピングを適用した場合の結果

一般に方法Cが最も洗練された手法だと言えますしかもダンピング専用の高価なコンデンサを購入することなくセラミックコンデンサに抵抗を直列に接続することによって実装できます最も安全な方法は試作を行った際に調整できるように設計しておき不要ならば抵抗を取り外せるようにしておくことですこの手法の欠点は部品のコストが余分にかかり必要な基板面積が大きくなることだけです

まとめ

本稿ではフェライトビーズを使用する際に考慮すべき主な検討事項について説明しましたまたフェライトビーズの簡単な回路モデルも紹介しましたそのモデルを使用しD Cバイアス電流がゼロであるという条件の下でインピーダンスの周波数特性をシミュレーションしましたそれにより実測値に非常に近い結果が得られることもわかりました

また本稿ではDCバイアス電流がフェライトビーズの特性に及ぼす影響についても説明しましたDCバイアス電流が定格電流の20よりも大きい場合フェライトビーズのインダクタンスは著しく低下する可能性がありますそのような電流はフェライトビーズの実効イン ピーダンスを引き下げEMIの除去能力を低下させる恐れがありますDCバイアス電流が流れる電源レールにフェライトビーズを適用する場合その電流によってフェライト材が飽和しインダクタンスが大きく変化することがないようにしなければなりません

フェライトビーズは誘導性のデバイスなのでQ値の高いデカップリングコンデンサと組み合わせる場合には細心の注意が必要です回路に望ましくない共振が発生し効果をもたらすどころか悪影響が出る場合もあるからですしかし本稿で提案したダンピング手法であれば不要な共振を簡単に防止することができます容量の大きなデカップリングコンデンサとダンピング抵抗を直列接続し負荷の両端に追加するだけですフェライトビーズを正しく利用すれば効果的かつ安価に高周波のノイズとスイッチングによる遷移を低減することができます

関連資料

AN-583 Appl ica t ion Note「Design ing Power I so la t ion F i l te rs wi th Fer r i te Beads for Al te ra FPGAs」 Al te ra

「Appl ica t ion Manual for Power Supply Noise Suppres-s ion and Decoupl ing for Dig i ta l ICs」 村田製作所

Chris Burket 「All Ferri te Beads Are Not Created EqualmdashUnders tanding the Impor tance of Fer r i te Bead Mater ia l Behavior」 TDK

Je ff e r so n Ec oAld r i c k L imjo c o AN-1 3 6 8 アプリケーションノート「フェライトビーズの特性を知る」Analog Devices

David B Fancher 「 ILB ILBB Ferr i te Beads Elec t ro-magnetic Interference and Electromagnetic Compatibi l i ty (EMIEMC) 」Vishay Dale

Lee Hi l l Rick Meadors 「Steward EMI Suppress ion」Steward

Ken Kunder t「Power Supply Noise Reduct ion」Design-er rsquos Guide Consul t ing

Steve Weir「PDN Application of Ferri te Beads」IPBLOX LLC

謝辞

技術的な知識についてご教授 ご助言いただいたアイルランド リムリック大学のJeff Weaver氏Donal O Sul l ivan氏Luca Vassa l l i氏Pat Meehan氏に感謝します

Aldr ick S Limjoco(a ldr ick l imjocoanalog com)は2006年8月にADIに入社しました現在はアプリケーションエンジニアを務めていますフィリピンのデラサール大学で電子工学の学士号を取得しましたスイッチングレギュレータの出力リップルのフィルタリング手法に関する米国特許を保有しています

Aldrick S Limjoco

著者

Jefferson A Eco( je ffersonecoanalogcom)は2011年5月にADIのフィリピン支社に入社しました現在はアプリケーション開発エンジニアとして業務に携わっていますフィリピンのカマリネスポリテクニック大学で電子工学の学士号を取得しています

Jefferson A Eco

この著者が執筆した 他の技術文書

スイッチングレギュレータの出力ノイズを理解し電源設計を加速する

Analog Dialogue 48-08

Page 6: DC/DCコンバータにおける フェライト・ビーズの活 …Anlo iloe 52 1 DC/DCコンバータにおける フェライト・ビーズの活用法 著者:Jefferson Eco/Aldrick

Analog Dialogue 50-026

ndash10

0

10

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001 01 1 10 100

振幅〔

dBμV〕

周波数〔MHz〕

ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加した場合のADP5071の出力スペクトル(方法Cのダンピングも適用)

ビーズとコンデンサによるローパスフィルタを付加しない場合のADP5071の出力スペクトル

24MHzで発生するリップルは5dB減少

図 9 A D P 5 0 7 1の出力スペクトル ビーズとコンデンサから成るローパスフィルタに

方法Cのダンピングを適用した場合の結果

一般に方法Cが最も洗練された手法だと言えますしかもダンピング専用の高価なコンデンサを購入することなくセラミックコンデンサに抵抗を直列に接続することによって実装できます最も安全な方法は試作を行った際に調整できるように設計しておき不要ならば抵抗を取り外せるようにしておくことですこの手法の欠点は部品のコストが余分にかかり必要な基板面積が大きくなることだけです

まとめ

本稿ではフェライトビーズを使用する際に考慮すべき主な検討事項について説明しましたまたフェライトビーズの簡単な回路モデルも紹介しましたそのモデルを使用しD Cバイアス電流がゼロであるという条件の下でインピーダンスの周波数特性をシミュレーションしましたそれにより実測値に非常に近い結果が得られることもわかりました

また本稿ではDCバイアス電流がフェライトビーズの特性に及ぼす影響についても説明しましたDCバイアス電流が定格電流の20よりも大きい場合フェライトビーズのインダクタンスは著しく低下する可能性がありますそのような電流はフェライトビーズの実効イン ピーダンスを引き下げEMIの除去能力を低下させる恐れがありますDCバイアス電流が流れる電源レールにフェライトビーズを適用する場合その電流によってフェライト材が飽和しインダクタンスが大きく変化することがないようにしなければなりません

フェライトビーズは誘導性のデバイスなのでQ値の高いデカップリングコンデンサと組み合わせる場合には細心の注意が必要です回路に望ましくない共振が発生し効果をもたらすどころか悪影響が出る場合もあるからですしかし本稿で提案したダンピング手法であれば不要な共振を簡単に防止することができます容量の大きなデカップリングコンデンサとダンピング抵抗を直列接続し負荷の両端に追加するだけですフェライトビーズを正しく利用すれば効果的かつ安価に高周波のノイズとスイッチングによる遷移を低減することができます

関連資料

AN-583 Appl ica t ion Note「Design ing Power I so la t ion F i l te rs wi th Fer r i te Beads for Al te ra FPGAs」 Al te ra

「Appl ica t ion Manual for Power Supply Noise Suppres-s ion and Decoupl ing for Dig i ta l ICs」 村田製作所

Chris Burket 「All Ferri te Beads Are Not Created EqualmdashUnders tanding the Impor tance of Fer r i te Bead Mater ia l Behavior」 TDK

Je ff e r so n Ec oAld r i c k L imjo c o AN-1 3 6 8 アプリケーションノート「フェライトビーズの特性を知る」Analog Devices

David B Fancher 「 ILB ILBB Ferr i te Beads Elec t ro-magnetic Interference and Electromagnetic Compatibi l i ty (EMIEMC) 」Vishay Dale

Lee Hi l l Rick Meadors 「Steward EMI Suppress ion」Steward

Ken Kunder t「Power Supply Noise Reduct ion」Design-er rsquos Guide Consul t ing

Steve Weir「PDN Application of Ferri te Beads」IPBLOX LLC

謝辞

技術的な知識についてご教授 ご助言いただいたアイルランド リムリック大学のJeff Weaver氏Donal O Sul l ivan氏Luca Vassa l l i氏Pat Meehan氏に感謝します

Aldr ick S Limjoco(a ldr ick l imjocoanalog com)は2006年8月にADIに入社しました現在はアプリケーションエンジニアを務めていますフィリピンのデラサール大学で電子工学の学士号を取得しましたスイッチングレギュレータの出力リップルのフィルタリング手法に関する米国特許を保有しています

Aldrick S Limjoco

著者

Jefferson A Eco( je ffersonecoanalogcom)は2011年5月にADIのフィリピン支社に入社しました現在はアプリケーション開発エンジニアとして業務に携わっていますフィリピンのカマリネスポリテクニック大学で電子工学の学士号を取得しています

Jefferson A Eco

この著者が執筆した 他の技術文書

スイッチングレギュレータの出力ノイズを理解し電源設計を加速する

Analog Dialogue 48-08