防じんマスクの顔面への密着性に関する研究darch.isl.or.jp/dspace/bitstream/11039/3908/1/840038_2.pdfshall...

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UDC628. 511: 614. 89. 3 労働科学 6012号(1984) ( 559) ]. ScienceofLabour Vol. 60, No. 12 防じんマスクの顔面への密着性に関する研究 木村菊 一一* A STUDYONTHEFACEPIECETOFACEFITTING OFDUSTRESPIRATORS By KikuziKIMURA* Majorfactorstobeconsideredfordust respirators are the ltration e iciency ofthe her medium, theairflowresistanceo eredbytheltering element, and the adaptation oftheface- piecetofacesofvarioussizes andshapes. Nowthereare, onthemarket, anumberofdustrespiratorsofdi erent typesmadetothe standardoftheMinistryofLabour. The standardprovidesthattheminimum Iterationefficiency shallbe95% formostindustrialdusts,and themaximumairflowresistanceshall be 8 mm/H20/40 l / min. Moreover, oneofthenewlyrevisedprovisionsstatesthatdust respirators are required to provideadevicewhichenablesawearertocheckthefacepiece fit easilyatanytime. In thisstudy, the facepiece fit testaboutdustrespiratorsof8 typeswascarriedoutbythe qualitativemethod, and then, about those of7types, it was carried out by the quantitative method. Theresultsobtainedcanbesummarizedasfollows; 1. A numberofdustrespiratorswerefoundtobe bad bythequalitativemethod. Bad meansthatthefacepiece wasnotwellmatchedtotheindividual sfacialconfiguration. 2. Theinvasionrateobtainedinthequantitativefittestwaslessthan1%fortherespira- tors, thefacepiecefitnessofwhichwasjudgedtobe good inqualitativetest. 1. まえがき 防じんマスク自体の性能はいかにすぐれていて も,使用方法が適切でなければ,その性能を十分 に発揮させることはできない。ここで,防じんマ スクを使用するに当たっての留意点をあげると, 第ーに着用者個人の顔に合った防じんマスクを選 択することである。次に適正な着用,そして的確 に保守管理をすることである。 *労働科学研究所・労働衛生学研究部 前報1) において防じんマスクの顔面への密着性 に関して,確認することの必要性と,二,三の試 験方法について検討を加え, その結果を報告し た。なお諸外国においても,防じんマスクの顔面 への密着性に関して多くの検討結果があるト1 著者らは,前報以後も防じんマスクの使用方法 について種々検討を続けているが11-13>, このう ち,本報では着用者個人の顔面への密着性につい ての検討結果を述べる。 DivisionofWorkEnvironmentandOccupationalDiseases InstituteforScienceofLabour

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UDC 628. 511 : 614. 89. 3

労働科学 60巻 12号(1984)( 559) ]. Science of Labour Vol. 60, No. 12

防じんマスクの顔面への密着性に関する研究

木村菊 一一*

A STUDY ON THE FACEPIECE TO FACE FITTING

OF DUST RESPIRATORS

By

Kikuzi KIMURA*

Major factors to be considered for dust respirators are the五ltratione旺iciencyof the五her

medium, the airflow resistance o百eredby the五lteringelement, and the adaptation of the face-

piece to faces of various sizes and shapes.

Now there are, on the market, a number of dust respirators of di旺erenttypes made to the

standard of the Ministry of Labour. The standard provides that the minimum五Iterationefficiency

shall be 95% for most industrial dusts, and the maximum airflow resistance shall be 8 mm/H20/40 l/ min. Moreover, one of the newly revised provisions states that dust respirators are required to

provide a device which enables a wearer to check the facepiece fit easily at any time.

In this study, the facepiece fit test about dust respirators of 8 types was carried out by the

qualitative method, and then, about those of 7 types, it was carried out by the quantitative

method. The results obtained can be summarized as follows;

1. A number of dust respirators were found to be “bad”by the qualitative method. “Bad”

means that the facepiece was not well matched to the individual’s facial configuration.

2. The invasion rate obtained in the quantitative fit test was less than 1% for the respira-

tors, the facepiece fitness of which was judged to be “good”in qualitative test.

1. まえがき

防じんマスク自体の性能はいかにすぐれていて

も,使用方法が適切でなければ,その性能を十分

に発揮させることはできない。ここで,防じんマ

スクを使用するに当たっての留意点をあげると,

第ーに着用者個人の顔に合った防じんマスクを選

択することである。次に適正な着用,そして的確

に保守管理をすることである。

*労働科学研究所・労働衛生学研究部

前報1)において防じんマスクの顔面への密着性

に関して,確認することの必要性と,二,三の試

験方法について検討を加え, その結果を報告し

た。なお諸外国においても,防じんマスクの顔面

への密着性に関して多くの検討結果があるト1ヘ著者らは,前報以後も防じんマスクの使用方法

について種々検討を続けているが11-13>, このう

ち,本報では着用者個人の顔面への密着性につい

ての検討結果を述べる。

Division of Work Environment and Occupational Diseases,、 Institutefor Science of Labour

C 560 ),.

II,試験の方法

防じんマスクの顔面への密着性を試験する方法

には,次に示すように定性的な方法と定量的な方

法とがある。

1. 定性的な試験方法

防じんマスクを着用して,吸気口をふさいで息

を吸い,防じんマスク内を陰圧に,あるいは排気口

をふさいで息を吐いて,マスク内を陽圧にして,

皮膚とマスクとの接触部位からの空気の漏れを調

べる。

2. 定量的な試験方法

防じんマスクを着用して,粉塵を含んだ空気に

曝露し,防じんマスクの内外における粉塵濃度を

計測して,両濃度の関係から粉塵の防じんマスク

内への侵入率を求める。

この方法では,ろ過材の粉塵捕集効率も含めて

評価される。

A. 定性的な試験

防じんマスクの規格が,昭和58年12月28日付

労働省告示第84号をもって改正された。

この中の第 5条第3項で,“着用者自身が,そ

の顔面と面体との密着性の良否を,随時容易に検

査できるものであること”とし、う規定が新たに設 J

けられた。したがって昭和59年以後に製造される

防じんマスクは,すべて定性的な顔面への密着性

の試験が可能となったのである。

しかし,本報告の密着性試験は,規格が改正さ

れる以前に行われたので,市販されている防じ

んマスクそのままでは定性的な試験を行うことは

不可能であった。そこで旧規格の特級防じんマス

クの中から 8種類を選び,次のような方法に占っ

て密着一性の試験ができるようにした。吸気口へ,

ふつう」ビ呼吸ができる程度の太さのゴム管党取り

付け,ゴム管の口を指でふさぐか,指で?まめば

空気が吸気口から流入しないよう 仁した。吸気口

が二つある場合には,その一つをゴム栓でふさい

だ。その-一例を Fig.1 vこ示す。このようにして準

備した防じんマスクにつやて,密着性の良否を次

のような手順で、試験を行った。

イ.作業時に着用する場合と同じように防じん

マスクを着用する。

ロ.防じんマスクの面体を顔面に押しつけない

Fig. 1 Method of the Facepiece Fit Test by Nega-

tive Pressure Method

陰圧法による防じんマスクの顔面への密着性,試験の方法

顔の長さ

FACE LENGTH

口 の 幅

LIP LENGTH

Fig. 2 Face’Length and Lip Length ・

顔の長さと口の幅

ょう注意して,吸気口に取り付けたゴム管をふさ

ぐ。

.息を吸って,面体の接顔部から空気が面体

内に漏れ込まないかどうかを検査する。

上記の方法によって,二つの会社において男子

75名,女子22名について試験を実施した。

試験の際,防じんマスクの着用の状態,すなわ

ち,防じんマスクおよびしめひもの位置とその強

さなどは,すべて著者が調べて適正な状態に調整

した。また密着性の良否の記録は被験者から聴取

して著者が行い,もし密着性不良の場合には,そ

の不良個所を聴取して記録した。

なお,密着性試験を行った被験者の顔の大き

さ,すなわち, Fig.2 に示した口の幅および顔

の長さを,マルチンの身体計測器によって計測を

行った。

B. 定量的な試験

定量的な試験に用いる粒状物としては,塩化ナ

トリウム, ウラニン, DOP(ジオクチノレフタレー

ト〉, 大気塵などが用いられている。 この うち広

く用いられているのが塩化ナトリウムエアロゾノレ

である。この試験方法については前報1)で詳しく

報告した。

その後,著者は粒子状物質の定量にパーティク

ノレカウンター14)を用い,試験用粒子に大気塵を用

いて,粒子の面体内への侵入率を求める方法を開

発した。なお,この方法を用いて密着性の試験を

行うに先だち,試験粒子に塩化ナトリウムエアロ

ソ、、ルを用レ,炎光光度法によって定量する方法と

比較試験を行い,両者の値がほぼ一致することを

確認した。

試験に使用した防じんマスクは,先に定性的試

験を行った 8種類のなかから 7種類のものを選

び,防じんマスクの面体の内側から, Fig.3 に示

すように,被験空気を採取するためにビニール管

を挿入した。

また 4種類の防じんマスクについて,排気弁か

ら放出される呼気中の粒状物濃度を測定するた

め, Fig.4に示すように管を取り付け,その側部

から被験空気を採取するビニール管を取り付け

た。すなわち,面体内部から被験空気を採取する方

法によって得られる粉塵の面体内への侵入率と, 。

排気弁から放出される呼気から被験空気を採取す;

る方法によって得られる面体内への粉塵め侵入率(

が求められるようにLたので、ある。 I

試験に際しては,先ず防じんマスクを装着してiから,定性的な方法によって顔面との密着性を調!

ベた後,ろ過材を取り外し,試験空気に約3分間|

曝露してから, 2分間面体内部の粒状物濃度の測1

定を行い, これをコントローノレの濃度とした。

C 561)

Fig. 3 A Way of Getting Air out of the Inside of

the Facepiece for the Quantitative Method

防じんマスクの顔面への密着性を定量的に測定する際,面体の内側から被験空気を採取する方法

Fig. 4 A Way of Getting Air out of Expiration

through the Exhaust Valve for the

Quantitative Method

防じんマスクの顔面への密着性を定量的に測定する際,排気弁から放出される呼気中から被験空気を採取する方法

次に試験用粒子(大気塵〉に対して99.9%以上

の捕集効率を持つろ過材を防じんマスクに装着

し, ;コント bーノレの値を測定Iしたのiと同様に約3

分間,通常どおりに呼吸をしてから, 2分間,面体

内部の粒状物濃度(Fi(3の方法〉および呼気中

,の粒状物濃度(Fig.4の方法〉の測定を行った。

以上の方法によって求めた防じんマスクの内外

の粒状物濃度から,顔面と面体との隙聞からマス

ク内へ侵入する粒状物質の侵入率を次式によって

算出した。

防じんマスクの内部の濃度侵入率(%〉= ×100

コンlトローノレの濃度

排気弁から放出される呼気中の濃度

侵入率(%)= ×100 コントロールの濃度

( 562)

この場合,ろ過材を通して侵入する粒子は,計

算の際これを無視した。また呼吸気道内に吸入さ

れた粒子のある部分は気道内へ沈着する。この沈

着率は,呼吸の条件によって著しく変化する 15)。

しかし,今回の試験では椅座,安静,開眼の状態

で呼吸の条件はほぼ一定であるため,呼吸気道内

への沈着率も一定であると仮定した。なお防じん

マスクの外側における濃度とコントロールの値と

の聞には15~20%の相違が認められた。この相

違は,粒状物の呼吸気道内沈着によるものと推定

される。

市販の防じんマスクには,接顔メリヤスが付属

している。これは面体の接触感を良くしまた皮

膚への悪い影響を与えないために着用するとされ

ている。しかしこの接顔メリヤスを着用すると,

面体の顔面への密着性が悪くなるので,これを着

用しないほうがよいとされている口この点に関し

て,先に定性的な試験を行った防じんマスクの中

から 4種類を選び, 3名の被験者について試験を

行った。

試験の手順は次のようにする。まず接顔メリヤ

スなしで防じんマスクを装着して,定性的な方法

で密着性を試験してから,前述の定量的な方法と

同じ方法によって試験を行った。続けて,接顔メ

Table 1 Results of the Facepiece Fit Test by the Qualitative Method (negative pressure method)

定性的な方法による密接性試験の結果一一陰圧法による一一

Type of dust respirator Subject Age Sex

A B C D E F G H

K. I 43 Man 。。。。 × × 。 × K. H 37 ,, 。。。。。。。。M. y 34 ノノ 。 × 。。。。。。S. M 31 ノノ 。。。。 × × 。。T. M 33 II 。。。。。。。。S. M 30 ,, 。。。。。。。。I. H 31 ,, 。。。。。。。。S. H 27 // 。。。。。。。。s. s 35 ,, 。。。。。。。。H. M 30 ,, 。。。。。。。。H. K 38 // 。。。。。。 × × M. y 33 ,, 。。。。 × × 。。o. y 26 ,, 。。。。。。。。M. y 38 // 。。。。。。。。M. H 37 ,, 。。。。。。。。H. D 51 ,, 。。。。。 × × × K. M 21 ノノ 。 × 。。。 × 。。T. N 58 ,, 。。。。。。。。T. M 21 Woman 。。。。× × 。。M. K 27 ,, 。。。。。。。 × w. s 19 ,, 。。。。 × × 。。K. K 52 // × × × × × × × × M. K 31 ,, × × 。。。 × × 。Y. M 21 ,, 。。。 × × × × × M. M 19 ,, × 。。。 × × × × I. y 51 ,, 。 × 。 × × × 。。M. S 33 ,, 。。 × × 。 × × ×

I. H 19 ,, 。 × 。。。 × × ×

串 b: good fitness,×: bad fitness

C 563)

Results of Fitness Test for Facepiece to Face by the Qualitative Method (negative pressure)

定性的な方法による密着性試験の結果一一陰圧法による一一

Table 2

Type of dust respirator Subject

Men

Women

G

、、,,,、、‘,,

nUFhU

44品目

hd

n

6

4

4&

’’t‘、,,目、、

3

0

hU噌

i

、、,,,、、,,,

qunU .

円べ

unHV

i

広U

,,.‘、,,E

‘、

にυ4E4

Ru

--

F

47(62. 7)

3(13.6)

E

55(73.3)

11(50.0)

D

71(94. 5)

14(63.6)

C

71(94.5)

16(72.7)

B

69(92. 0)

13(59.1)

A

74(98. 7)

18( 81.1)

Number of persons

75

22

Sex

顎の部位であった。

次に顔の大きさ,すなわち,口の幅および顔の

長さと密着性の良・不良との関係を Fig.5~11に

示した。これらの図から,口の幅,顔の長さと密

着性の良・不良との聞には,はっきりした関係は

認められない。ただし,顔の長さが 10cm以下の

ものについては,密着性良好は24例中 1例のみで

あった。

防じんマスクの顔面への密着性の良否は,顔の

形状とマスクの顔面への接触部位の形状によって

決まるものと考えられる。顔の形状についてみる

と,顔の大きさ,鼻梁の高さ,顎のふくらみの状

態などに関係が深いものと考えられる。なお女性

Figures in this table are numbers of good fitness, and parenthesis shows percentage of them.

リヤスを装着して定量的な方法により,防じんマ

スク内への粉塵の侵入率を求めた。

試験の結果および考察

A. 定性的な試験

二つの会社において,男子75名,女子22名につ

いて試験を行った結果の一部分を Table1に,ま

たその結果をまとめて Table2に示した。

Table lから, 8種類の防じんマスク全部に密

着性良好のものがあり,また,あるマスクは不良

のもの,あるいは 8種類全部不良のものもあるこ

とがわかる。

密着性の悪いおもな個所は,鼻梁の両側および

HJ.

×

0000一ω

omrLr’日!∞}

010浄御船一vm∞×

;8

∞O

的。×t

0

×

。。

14

11

13

12 同日二ム↑

ωZ凶」

ωυ〈Hh

い〉伊谷川丸一

00

1

0命日目鎚

wus〈

O

ovjAo。∞。

14

13

12

11

日目、工ト

ωZ凶」

ωυ〈

L × 10 × 10

。: goodfitness

)(.: bad fitness

× × × 。

。; goodfitness

x: bad fitness

Fig. 6 Relationship between the Sizes of Faces and

the Adaptotion of Dust Respirator to the Faces

一-dustrespirator B一一一

顔の大きさと防じんマスクの顔面への密着性一一防じんマスグ B一一

5

LIP LENGTH1 nun

8 3 7

LIP LENGTH1 nun

Relationship between the Sizes of Faces and the

Adaptation of Dust Respirator to the Faces

一-dustrespirator A一一一

顔の大きさと防じんマスクの顔面への密着性

一一防じんマスクA一一一

5 3

Fig. 5

C 564)

一OFwhvp

ぺ。鴻受託販。

∞。ωdoyr×

14

13

11

12 百回、工トUZ凶

υ〈民

。。0 -

8 °o /伊 00

o 少o受!80)%3CX)。

。;門紙向。。O ~1::でお 00

0 Q)O

- OJ ∞示。

14

13'

11

12

ロE、工ト

ωzω」

υ〈比

× 10 X 10

× X × ×

。: goodfitness

X: bad fitness 。: goodfitness

X.: bac:l fitness

7 5

8 3 7 5 4

8 3

LIP LENGTH, mm

Fig. 9 Relationship between the Sizes of Faces and

the Adaptation of Dust Respirator to the Faces

一一-dustrespirator E一一一

顔の大きさと防じんマスクの顔面への密着性

一一一防じんマスク E一一

しIP LENGTH, mm

Fig. 7 Relationship between the Sizes of Faces and

the Adaptation of Dust Respirator to the Faces

一-dustrespirator C一一一

顔の大きさと防じんマスクの顔面への密着性

一一防じんマスク C一一

8 ¥ ~:伊×0 デ 0百e//t,00 )4JO

o:ハ為必a>P × × 一’ 嵐ーに阪ιox

×チ弘00・-。

14

13

12

11

同日、ヱ↑

ωZ凶J

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0

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xデ 0880)0&00。0 -盤。8_o 。

× 0 0.「瓦&ーて。。

。チ-8~。O- αコ∞示。

1与P

13

12

11

戸口臣、ヱト

ωzuJ凶

υ〈比

。× 10

×

。: goodfitness

X: bad fitness

× ×

× X

10

。:goodfitness

x: bad fitness

7

LIP LENGTH, mm

Relationship between the Sizes of Faces and

the Adaptation of Dust Respirator to the

Faces

一一-dustrespirator F-

顔の大きさと防じんマスクの顔面への密着性

一一防じんマスク F一一

8 3

Fig. 10

Fig. 8 Relationship between the Sizes of Faces and

the Adaptation of Dust Respirator to the Faces

一一一dustrespirator D一一一

顔の大きさと防じんマスクの顔面への密着也

一一防じんマスク D一一

5

LIP LENGTH, mm

8 z

C 565)

は顔が小さいため,顔面にマスクが合わないとし、

う例が多かった。

なお,改正された規格にしたがって製造され

た二,三の防じんマスクの密着性試験の方法を示

すと, Fig.12~16のとおりである。

B. 定量的な試験

面体内部から試験空気を採取する方法によ って

得られた結果と,排気弁から放出される呼気から

試験空気を採取する方法によって得られた結果を

Table 3に示した。これらの値から,両者の間に

は有意の差は認められないことがわかる。

次に,定性的な方法によって求めた防じんマス

クの顔面への密着性と,定量的な方法によっ て求

めた密着性(粉塵の面体内への侵入率〉との関係

o

o

o,P、日

ywo

c

~。obJm紛れ弘∞

vuhl,

ωAooh

O: good fi下ness

)(.: bad fitness

×

× ×

X

14

13

11 ,_

10

12 EE

、z↑ωzuJUυ〈い}

,.,,.,品目 ,,¥ 6...:ι I,,ー‘、"' ... ,-<'., .. ''.

Facepiece Fit Test in case a Dust Respisator

with Two Air Inlets-The wearer is now

testing for leakage by putting a thumb on

an end of rubber tube attached to the air

inlet.

顔面への密着性を陰圧法によって試験する方法一一吸気口が二つある例一一

Fig.13

7

Relationship between the Sizes of Faces and

the Adaptation of Dust Respirator to the

Faces

一-dustrespirator G一一一

顔の大きさと防じんマスクの顔面への密着性一一防じんマスク G一一

12

LIP LEMGTHJ mm

0 0

0 0 -

- 0 -

8 -0 ~ fP -0 守088人XOOJ。。:晶、砂8♂×

× 八三 cB×呼ゎ o0

x マ子号DO~

w ミx

『、JOD

14

13

Fig.11

正臣、ェ↑ωZωJ-uυ〈L

×

。; goodfitness X: bad fitness

7 6

×

5

しIP LENGTH, mm

×

。11

10

8

3

Facepiece Fit Test in case a Dust Respi-

rator with One Air Inlet

顔面への密着性を陰圧法によって試験する方法一一吸気口が一つの例一一

Fig .. 14

Relationship between the Sizes of Faces and

the Adaptation of Dust Respirator to the

Faces

一一-dustrepirator H一一一

顔の大きさと防じんマスクの顔面への密着性一一防じんマスク H一一

Fig. 12

( 566)

Fig. 15 A Dust Respirator with a Facepiece Fit

Tester showing the Wire pulled up to

Test for Leakage

顔面への密着性を陰圧法によって試験する方法一一面体内に密着試験用の弁が取り付けられており, ワイヤーを引き上げることによ

って密着性の試験ができる一一

Fig. 16 A Dust Respirator with One Air Inlet-The

wearer is now testing for leakage simply

by depressing a rubber valve五ttedto the

face piece.

顔面への密着性を陰圧法によって試験する方法一一面体内に取り付けられた密着試験用の弁を指で押すことによって簡単に試験することがで

きる一一

を Table4に示した。この表から,定性的な方法

によって求めた密着性が良好と判定された防じん

マスク内への粉塵の侵入率は,おおむね 1%以下

となっている。これに対して定性的な方法による

密着性が不良であるものは,いすやれも 1%を超え

る侵入率が認められ,著しいのは30%を超えるも

のも認められる。

次に,接顔メリヤス着用と防じんマスクの顔面

への密着性との関係についての試験結果を Table

5に示した。定性的な試験の結果が密着性良好と

Table 3 Comparison of Invasion Rates of the Test

Air obtaimed from Two Different Sampling

Sites (Fig. 3 and 4)

二つの被験空気の採取位置によって得られた侵入率の値の比較

In expired air Inside air of facepiece

0.03~ 0.07労

0.65~0.81

2.47~ 3.53

17.14~18. 22

0.03~ 0.07必

0.72~ 0.88

3.24~ 3.45

15.27~15.31

Table 4 Comparison between the Results of the

Facepiece Fit by the Qualitative Method

and the Invasion Rates by the Quantitative

Method

定性的な試験結果と定量的な試験結果の比較

Fitness by Rate of invasion by Type of Subject {e~t不litative {e~tn ti ta ti ve respirator

。 0.07~ 0.41% A I 。 0.02~ 0.36 A II 。 0.68~o. 72 A m 。 0.03~ 0.07 B I 。 0.01~ 0.02 C Iv 。 0.07~ 0.09 G II 。 0.02~ 0.47 H II 。 0.02~ 0.08 H m × 3.24~ 5.21 B I

× 1.14~ 1.44 B 町

× 19.60~19.95 D I

× 3.14~ 6.00 E I

× 25.86~31.32 G I

× 1.15~ 1.38 G 町

× 3.94~ 8.46 H

× 1.29~ 2.14 H II

。: goodfitness,×: bad fitness

判定されたマスクについては,接顔メリヤスがな

ければ,先の試験結果と同様,粉塵のマスク内へ

の侵入率は 1%以下となっている。この値に対し

て,接顔メリヤスを着用することによって,接顔

メリヤスなしで侵入率 1%以下であっても,その

侵入率が10%近くに増大するものもある。しかし

接顔メリヤスを着用することによって侵入率は若

干増大するが, 1%以下のものも認められる。

一方, 接顔メリヤスなしで侵入率が 1%をこえ

ているものは,接顔メリヤスを着用することによ

って, さらに侵入率が増大する傾向が認められ

Table 5 Influence of Face-contact Hosiery on the Facepiece Fit

Subject

II

接顔メリヤスを着用することによる密着性への影響

Rate of invasion Fitness by by quantitative test

qualitative with out with

test申

hosi~1Jrit~~ hosie~;nflc face t face t

。 0.41% 3,379ぢ。 0.04 0.52

× 19.95 20.59

× 6.00 14.00 。 0.02 1. 21 。 0.03 0.54 。 0.02 0.37

× 1.15 30.87

。 o. 72 2.45 。 0.71 1.46 。 0.51 9.47 。 0.08 0.82

0 : good fitness,×: bad fitness

る。

次に,接顔メリヤスの材質や織方,厚さなどの

異なった幾つかのものを試作し顔面への密着性

を調べた結果,薄手のものが比較的密着性が良好

であるという傾向が認められた。すなわち,定性

的な方法によって求めた密着性が良好である場

合,薄手のものであれば,これを着用しでも,粉

塵の面体内への侵入率が 1%以下のものが多かっ

たのである。しかし,薄手のものであっても,と

きには数パーセント以上の侵入率を示す場合もあ

った。

以上の結果から,接顔メリヤスを着用しでも,

面体内への粉塵の侵入率が 1%以下のときもある

が,密着性を確実にするためには,接顔メリヤス

は着用しないほうが望ましいということになる。

しかし皮膚の弱し、者などでは防じんマスクを直

接着用すると湿しんができてしまうこともある。

このような者については,接顔メリヤスを着用し

なければならないこともある。このようなときに

は,定量的な方法による密着性の試験を行い,密

着性を確かめたうえ着用することが必要であろ

う。

C 567)

IV. む す び

防じんマスクの性能は国家検定によって保証さ

れている。しかしこの性能は新しい防じんマス

クそのものの性能であり,作業者が粉塵作業場で

実際作業を行っているときの性能ではない。防じ

んマスクを使用するに当たっては,まず第一に作

業者の顔面に合ったものを選択しなければならな

い。この点に関して,著者らは数年前から検討を

重ねてきた。そして昨年末(昭和58年12月)に,

防じんマスクの規格の中に“着用者自身が,その

顔面と面体との密着性の良否を,随時容易に検査

できるものであること”としう規定が設けられた

のである。なお, 昭和59年 1月30日,基発第48

号,防じんマスクの選択・使用について, という

通達の中で,密着性の検査は定性的な陰圧法によ

って行うよう規定しているのである。この方法に

よって得られる密着性の精度は,ほぼ1%とみて

よいであろう。すなわち,この方法によって密着

性良好と判定された場合,粉塵の面体内への侵入

率は1%以下と推定されるのである。

また,実際の粉塵作業場においては,ほとんど

のところで接顔メリヤスを着用している。接顔メ

リヤスを着用すると密着性が悪くなる可能性が高

いので,これを使用しないよう指導することが望

まれる。一方,メーカーに対しては,防じんマス

クの接顔部位の材質の改良,あるいは接顔メリヤ

スを改良して,顔面への密着性は良好で,接触感

もよく,皮膚への悪い影響を与えないようなもの

に改良することが要望される。

なお,いかに自分自身の顔面に合った良い防じ

んマスクを選択しでも,それを適正に着用しま

た的確な保守管理がなされなければ,その性能を

十分に発揮させることはできない。使用に際して

の留意点など、については次の機会に報告したし、と

考えている。

終りにのぞみ,本研究に対して多大の協力をいただい

た東陶機器(株)塚島英明先生,ブリヂストンタイヤ(株)

酒井恭次先生に感謝いたします。また,実験および資料

の整理にあたっては,当研究所島影喜久子氏の協力をう

けた。記して感謝の意を表しますO

C 568)

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(受付: 1984年9月26日〉