治験の国際化とCROの役割 - Japan Association of …‚·ミック株式会社 執行役員...

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シミック株式会社 執行役員 コンサルティング事業本部 本部長 棚瀬 敦 治験の国際化とCROの役割 ~環境変化に耐えうるプロの翻訳者に求められるもの~ 1 E-mail: [email protected]

Transcript of 治験の国際化とCROの役割 - Japan Association of …‚·ミック株式会社 執行役員...

シミック株式会社 執行役員

コンサルティング事業本部

本部長

棚瀬 敦

治験の国際化とCROの役割 ~環境変化に耐えうるプロの翻訳者に求められるもの~

1

E-mail: [email protected]

本日の講演内容

I. 前半の部(14:10 – 15:30)

1. 私たちを取り巻く医療環境

2. 医薬品・医療機器の製品化

3. CROの果たしている役割・課題・今後の展望

4. 日本の臨床試験と国際共同治験

II. 後半の部(15:50 – 16:45)

1. CROを介した翻訳業務のトレンド

2. 現在の翻訳者のQualityについて

3. CROが翻訳者に求めるもの

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自己紹介

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1957年名古屋生まれ、兵庫県三田市在住

1983年藤沢薬品工業・開発本部に入社

<主な業績>

• 免疫抑制剤FK506(プログラフ・プロトピック)のGlobal Project

Leader(製品開発リーダー)

• 米国(シカゴ)および欧州(ミュンヘン)駐在歴:計6年間

• 免疫・炎症疾患 グローバル領域Head

2005年アストラゼネカに転職

<主な業績>

• 製品開発リーダー部・部長

• アジアオンコロジー製品リーダー

2010年クインタイルズに転職

• VP, Head of Clinical Operations, Japan

2012年シミックに転職

• 執行役員・コンサルティング事業本部・本部長

安倍首相の成長戦略

4 出典:首相官邸HP: http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013.html

三本の矢

5 出典:首相官邸HP: http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013.html

「日本再興戦略」の3つのアクションプラン

6 出典:首相官邸HP: http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013.html

戦略市場創造プラン

7 出典:首相官邸HP: http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013.html

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医療関連産業の活性化により、必要な世界最先端の医療等が受けられる社会に向け、医療分野の研究開発の司令塔機能(「日本版NIH」)の創設、医薬品・医療機

器開発・再生医療研究を加速させる規制・制度改革、医療の国際展開などを実施します。

出典:首相官邸HP: http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013.html

• 日本発イノベーションの醸成(日本版NIHなど)

• 国内医療需要の増加に即した成長(医薬品、再生医療、医療機器など)

• 海外市場の獲得(医薬品、再生医療、医療機器など)

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日本政府・成長戦略の意味するところ

• 産官学連携またはそれぞれの製品開発力アップ

• 臨床開発の活性化

• 国際共同治験、海外開発の増加

• 翻訳業務の増加 トヨタ、

ホンダ・・・

• 国単位では世界第二位の市場:JAPAN

• 大手企業のほとんどは日本支社を持つ

• バイオベンチャー、アカデミアも日本市場を狙う(中国市場も)

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一方、海外の企業は?

• 日本、中国などへの投資

• 国際共同治験の増加

• 翻訳業務の増加 ファイザー、

J&J・・・

我々を取り巻く医療環境はどうなるのか?

• 高齢化により市場はさらに伸びる(2030年で2倍以上に?)

• 国内外での製品開発が増える(タンパク、iRNA、iPS

細胞・・)

• 製造業はOrganic Growthよりも再編、人員スリム化

• 研究開発費は伸びるも、最大限の抑制努力が続く

• 製造業はアウトソーシング率を増やす

• CROニーズがさらに高まる

• 国際共同治験は研究開発費抑制策の一つ

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医薬品・医療機器の製品化

全てをカバーできる製造業、アカデミアはない

Speed & Qualityが勝負

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バリューチェーン

サプライチェーン

CROへ開発委託

CROとは?

CRO(開発業務受託機関 Contract Research Organization)とは

製薬会社、医療機器メーカー、バイオベンチャー、アカデミアなどが新製品を開発するために行う治験(臨床開発)などを支援する企業

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【日本のCRO】

• シミック

• EPS

• メディサイセンス / MICなど

【Global CRO】

• クインタイルズ

• パレクセル

• コバンスなど

アカデミアとの協働

~新薬開発のニュートレンド~

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NDAに占めるアカデミアの割合

SOURCE:THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA

www.pharmacy.unc.edu/cicbdd

NDA(1998-2007)のうち24%(新有効成分では31%)がアカデミア発

*NDA:米国における新薬の承認申請

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海外のアカデミア・製薬企業連携の成果

SOURCE:THE OPEN CONFERENCE PROCEEDINGS JOURNAL, 2011, 2, 130-136

海外では、10億ドルを上回る売上高を持つ医薬品が、 製薬メーカーとアカデミア・公的機関とのコラボレーション

の中からすでに数多く生まれている

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154.8億円

2.2億円

日米アカデミアの特許権収入比較(薬以外含む)

Northwestern U.

Kyoto U.

米国と日本のもっとも特許権収入を得ている大学は?

日本のアカデミアの特許権収入は米国比1%未満

Harvard U.

(# 24 in USA)

11.2億円

All Japan

10.9億円 > 出所(USAデータ):Association of University Technology Managers Licensing Activity Survey FY2011

出所(JPNデータ):http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/sangaku/__icsFiles/afieldfile/2012/11/01/1327174_04.pdf

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アカデミアとの協働の方向性

創薬 創薬

ベンチャー

開発・

認可取得 マーケティング 営業 製造

創薬 従来の

製薬企業

開発・

認可取得 マーケティング 製造 営業

アカデミア 創薬

製造

製造

CMIC

開発・

認可取得

開発支援および製品化への橋渡し・

製品化/販売における各種業務の受託

開発・

認可取得

マーケティング 営業

ング 営業 創薬

創薬

創薬

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N.Y.で起きているイノベーション

『世界最大の金融街』からの脱却

・多種多様な優秀な人材

・多数のアカデミア

・投資先を求める資本家

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米国で起こっている産業構造の変化は

日本の産業にも多大な影響を与える

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• 欧米の製薬会社は、既に新薬を開発する業務の5割前後をCROに委託していると言われている。

• 日本での委託率はまだ約2~3割に過ぎない。

• さらにCROへの委託率は増加していくと思われる。

シミックCROのサービス

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• 全てのプロセスを受託

• その他CMO, SMO, CSO

• 自社開発(オーファン薬)

一般名 フェニル酪酸 ナトリウム

ヘミン

対象疾患 尿素サイクル異常症 急性ポルフィリン症

患者数 約200人 約30~40人

販売名 ブフェニール® ノーモサング®

US Buphenyl® 未開発

EU Ammonaps® Normosang®

ライセンス元 ユーサイクリッド社 オーファンヨーロッパ社

国内ライセンス契約締結 2010/5/24 2008/12/16

申請時期 2012/02 2012/03

承認時期 2012/09 2013/03

販売開始 2013/01 2013/08

シミックのオーファン薬(オーファンパシフィック社)

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国際共同治験

~新薬開発のニュートレンド~

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Phase 2~3の国際共同治験

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日本における新薬の臨床開発と承認審査の実績―2000~2011年承認品目―

医薬産業政策研究所, リサーチペーパー・シリーズ No. 55 (2012年11月)

• 国際共同治験は増えている

• ICH

• 臨床開発の効率化

Why global studies?

• 一度に多くの国でデータを集積できる

• 統計学的に十分な症例数を確保できる

• 臨床開発のスピードを上げ、コストを削減できる

– ICHにより、数少ない治験で世界同時申請が可能になった

– 特に日本の治験コストは高く、米国の2倍、アジアの4倍コストがかかると言われている

• 日本人の症例数は減る傾向(全体症例数の<15-20%)

• 中国は1群最低100例必要

• 米国FDAも十分な米国人データを求めている 26

ではなぜ国内単独治験があるのか?

• Drug Lag

– 欧米先行型開発はまだある(アジア置き去り)

– Drug LagはPMDAの審査が遅いからではなく、企業の開発戦略に問題があるから

– 日本は高い!分からない!が理由になることも

• 日本企業(中小)、日本発ベンチャー、国内アカデミアはまだGlobal化できていない

– CROやコンサルサポートが必要

– Documentation supportsも必要(翻訳サービス)

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日本での開発と海外開発

• 翻訳のニーズ

日→英(日本企業による海外開発)

英→日(グローバル企業による日本開発)

• 治験届用文書(IB, Protocol, ICFなど)

• 申請資料(CTD)

• PV、PMS関連資料

• 社内資料(製品開発会議資料など)

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翻訳のニーズ

• As you know, 国際共同治験だけでなく、海外企業の国内製品化、国内企業の海外製品化などあらゆる場面で翻訳ニーズがあります。

• 翻訳が必要な文書の種類は枚挙に暇がありませんが、以下に列挙します。

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製品開発戦略文書(社内会議資料、ビジネスプラン、製品概要など)、コレポン(ライセンス元、ライセンス先)、契約書、SOP、マニュアル

治験薬概要書、治験プロトコール、同意説明文書、解析計画書、総括報告書、投稿用論文、PV(安全性)関連文書

非臨床試験レポート、CMCレポート、オーファン薬届出書、優先審査申請書、PMDA対面助言用資料、CTD、承認申請書

などなど

日本のCRO, 製造業の課題

• Global化は進んでいるが、英語力が足らない

• 帰国子女等の人材不足

• ビジネス交渉や良好な関係構築を可能にする英語コミュニケーション力不足

• 医学・薬学専門英語力不足

• Reader friendlyな英語文書を作成する能力不足 (Speed & Quality:迅速な開発、迅速な承認取得のために不可欠)

• 英語を使いこなすMedical Writersは希少価値

• 日本CRO協会、日本メディカルライター協会(HPあり)

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本日の講演内容

I. 前半の部(14:10 – 15:30)

1. 私たちを取り巻く医療環境

2. 医薬品・医療機器の製品化

3. CROの果たしている役割・課題・今後の展望

4. 日本の臨床試験と国際共同治験

II. 後半の部(15:50 – 16:45)

1. CROを介した翻訳業務のトレンド

2. 現在の翻訳者のQualityについて

3. CROが翻訳者に求めるもの

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環境変化に耐えうるプロの翻訳者に

求められるもの

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CROを介した翻訳業務のトレンド①

• 製薬企業がCROに翻訳を依頼するケースが増えている

– 製薬会社からCROに多種多様な仕事を依頼される現在、翻訳につ

いてもCROに依頼することが例外ではない

– 翻訳を含むMW業務依頼は今後さらに増加すると予想される

– CRO ー 翻訳者間の良好な連携が求められる

• CROへは治験関連文書が多く依頼される傾向

– 治験薬概要書、プロトコル、同意説明文書はCRO依頼が多い

– その他変則的なものや企業活動や市場性等のもの、論文などはメ

ーカー(Bio-venture, アカデミア)から直接翻訳者へ発注する場合も

ある

– メーカーは、コスト/スピード重視の場合は翻訳会社に、治験にそ

のまま使えるQualityを求める場合はCROに依頼する傾向 33

CROを介した翻訳業務のトレンド②

• 過去の委受託経験や専門分野により、翻訳担当者を指名してリピートされるケースが多い

– 初回成果物のレベル(印象)が重要

• 今後も翻訳会社/個人事業主の参入、価格競争の激化が予想される

– 依頼者(製薬会社/CRO)に対していかにアピールしていくか

• 過去に医学論文の作成経験がある

• ある医学領域での開発経験がある

• ボリュームの大きい文書でも対応できるなど

• クライアント(製薬会社)によっては、翻訳証明書を求められる場合もある

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現在の翻訳者のQualityについて

• 翻訳者の技量/経験により、Qualityにバラつきがある

• 納品物には必ず修正が必要となる実態がある(納品物をそのまま使えない)

– あまりに直訳で読みづらいもの

– 海外の翻訳会社を利用したと思われる翻訳で、特に用語が不適切

であるもの

– 原文の意味の理解が浅い場合に訳しきれていないもの

• ボリュームの多いCTD等の翻訳を依頼した際に、複数の担当者で分担すると記載内容/表現にバラつきが出る

– 成果物(翻訳物)を受領後に用字用語を統一する手間がかかる場合がある

あらかじめ用語集等を提供する

翻訳時に担当者間で用語集を作り上げていく

効率的で内容が整合した完成度の高い成果物を作成いただけるとありがたい

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翻訳者の良し悪しはどこで分かれるか

• 臨床試験特有の用語/言い回しが妥当であるか

• 当該医学領域での用語の使い方が妥当であるか

• ICHや臨床試験関連文書を読み込んでいるか

• 作成経験があるか

• 図表と文章、項目/セクション/モジュール間の整合性が確保されているかどうかなど、細かい点に留意しているか

• 早くて正確なライティングができているか

• 依頼者(製薬会社/CRO)の要求/指示事項を正確に理解して作業しているか

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CROが翻訳者に求めるもの① • CROと共に、クライアント様の要望を汲むようにご協力

いただけるとありがたい

– スタイルの統一のために事前に綿密に調整をすること

• メーカーからのスタイルや用語等指定には忠実に従うことが大前提

• 指示が不明確な部分は必ず確認する

• 複数名で翻訳を分担する場合は、用語統一は当然のこと、最低限の言い回し、類似したフレーズは極力統一

• 該当箇所を割り出して予め統一を指示するなどの事前準備が必要

– QC点検をすること(どちらがQCを行うかの決め事)

– 納期を守ること(お互いに無理はしたくないですね。 しかし…)

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CROが翻訳者に求めるもの②

• 自然な訳出かつ分野の匂いをしっかりと嗅ぎ分けた成果物を作成する方が理想

• ターゲット言語の自然さはまず大前提です

• 対象は誰か、用途は何かなど、書類の性質を理解した上で適切な言葉づかいを選定できる能力も必要

• 技術文書であれば、対象となる事物の調査はもちろんのこと、適切な訳語の選定も検証を行ってから用いる

– 単にWeb辞書で見つかったからというだけではNG

– それ自体がどの文脈で使用されているか

– 作成者がどういう人物であるのか

– それは現在の業界で使用されているものなのか

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CROが翻訳者に求めるもの③

• 治験関連であれば、GCPやICH等で使用されている言葉を踏襲することが必要

• インターネット情報の選別が大切(例:CMC関連では信頼がおけない訳語あり)

• 「原文をそのまま訳す」=「必ず忠実である」とは限らない

• 原文の不充分さがあっても、それを「原文に(表面的に)書いてあるからその通り翻訳した」が必ずしも忠実ではない

• 意味を理解し背景知識で検証し訳出する努力を必ず行っていただく

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【最後に心掛けの話】

• 翻訳者 – CRO – メーカーの3者が気持ちを一つにして、同じ目標に向かって協力する(お互いの立場を理解した心配り。翻訳者–メーカーの関係でも同じです)

• 「目標」とは、早く正確に患者様へ新薬や新医療機器をお届けすること

• 「正確に」とは、科学的、社会的に間違いのない情報を文書に盛り込むことが大前提(社会的責任)

• 製造販売を認可する当局の審査期間をいかに短くできるか

• チームワークでがんばりましょう!お互いに言いたいことは遠慮せず言いましょう。いろいろなご提案も歓迎します。

• 万一シミックの社員が翻訳者様に理不尽なことをしましたら、私にご連絡下さい。

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ご清聴ありがとうございました

シミック株式会社 執行役員

コンサルティング事業本部

本部長

棚瀬 敦

E-mail: [email protected]

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