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Creative Patterns つくる教育のためのパターン・ランゲージ Ver.0.60 Creative Education Project Education

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©iLab Creative Education Project

CreativePatternsつくる教育のためのパターン・ランゲージ

Ver.0.60Creative Education Project

Education

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私たちが生きる現代社会、それは変化が目まぐるしく、先を見通すことが困難なもので

す。少し前と今とでは周囲の環境はもちろん、価値観さえも変わってしまうようになり、

かつての常識が通用しないということも、現実味を持って感じられます。世界の広がり

も確実に日常のなかへ溶け込み始めており、多様な価値観のなかで自己を保つことがま

すます求められるようになりました。

そして教育には、このような状況でも生きていけるように学び手たちを育てることが求

められています。しかし、これほどまでに捉えようがないものが相手では、どんな力を

どのようにして育めば良いのかわからず、懸命に模索が続けられているというのが、教

育の現状ではないでしょうか。

そんな中、学び手と一緒にモノや認識、仕組みを「つくる」という活動に可能性を見出

し、学び手の創造性を育む教育を実践している人たちがいます。

私たちはそんな人たちと一緒に秘訣を掘り起こし、「パターン・ランゲージ」の形式で

まとめることを試みました。その成果がこの冊子です。ここには創造性を育む教育を実

践するための秘訣が 15 個収録されています。

本冊子「Creative Education Patterns」をこれまでの実践を振り返ることに活かしたり、

教育を語り合う題材にしたりしてみてください。そして、これからの教育(Creative

Education)の在るべき姿を考えてみてください。私たちの取り組みが皆さんの実践、

またこれからの教育をつくることの一助となれば幸いです。

Creative Education Project

はじめに

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Creaetive Education Patterns は「つくる教育」(No.0) における、教育者の振る舞いの秘

訣を言語化したものです。創造性を育むための教育において教育者は、学び手と共に発

見を生み出しながら、つくることによる学びを実践していく存在です。教育者としての

振る舞いをデザインするときの秘訣をまとめたのが、このパターン・ランゲージです。

本冊子には、 Creative Education Patterns が全部で 15 個収録されています。

このパターン・ランゲージの中心になるパターンは「つくる教育」(No.0) です。このコ

アのパターンに、特に重要な3つのパターンが続きます。「発見の拡がり」(No.1) と、「果

たすべきミッション」(No.2)、「生成的な参加者」(No.3) の3つです。

「つくる教育」(No.0) における教育者は「生成的な参加者」(No.3) と呼ばれる存在です。

プロジェクトごとに「果たすべきミッション」(No.2) を設定し、「発見の拡がり」(No.3)

を意識して学びの全体をデザインしていきます。

「生成的な参加者」(No.3) はプロジェクトの最中には「つながりの発掘」(No.4)、「発

見の編集」(No.5)、「予想外の学び」(No.6)、「ステージに上がる」(No.7)、「未来をうつ

す鏡」(No.8)、「創造への挑発」(No.9)、「つくり方を見せる」(No.10)、「達成感の共有」

(No.11) といったパターンを用います。プロジェクトが終わってからは、「きっかけの違

和感」(No.12) で学びをプロジェクトの後へとつなげる働きかけをします。さらに、自

分にとっての「挑戦の領域」(No.13) をつくっておくことで、「生成的な参加者」(No.3)

としての態度を維持していきます。教育者自身も教育の探究を続ける「つくり続ける生

き方」(No.14) を実践していくことで、Creative Education についての考えをより深めて

いくことができます。

これら 15 のパターンが相互に関係し合いながら、つくる教育のデザインを支えます。

Creative Education Patterns とは

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発見の編集

予想外の学び

ステージに上がる未来をうつす鏡

創造への挑発

つくり方をみせる

達成感の共有

挑戦の領域つくり続ける生き方

つくる教育 つながりの発掘

果たすべきミッション

発見の拡がり生成的な参加者

きっかけの違和感

Creative Education Patternsの全体像

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個々の Creative Education Patterns は、ある一定の形式で記述されています。ここでは、

パターンがどのような形式で記述されているのかについて説明します。

各パターンの左ページには、そのパターンの内容をつかむための概要が書かれています。

上から順にみていくと、「パターン番号」、「パターン名 ( 日本語 )」、「パターン名 ( 英語 )」、

「導入文」、「イラスト」となります。

まずページの左上に書いてあるのが、各パターンにつけられた「パターン番号」(Pattern

Number) です。それに続くのが、日本語と英語の「パターン名」(Pattern Name) です。

パターン名は、パターンの内容を適切に表し、かつ魅力的で憶えやすいようにつけられ

ています。

その次にくる「導入文」(Introductory Sentence) および「イラスト」(Illustration) は、

そのパターンの内容を生き生きとイメージできるようにするためのものです。

パターンの読み方

つくる教育No. 0

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みんなで一つのものを ” つくる ” ことで、認識をつくりかえていく。

パターン番号(Pattern Number)

パターン名 [ 日本語 ]

パターン名 [ 英語 ](Pattern Name)

導入文(Introductory Sentence)

イラスト(Illustration)

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各パターンの右ページには、そのパターンの詳細、つまり創造的な教育のコツの詳細が

書かれています。上から順にみていくと、「状況」、「問題」、「フォース」、「解決」、「アクショ

ン」、「結果」となります。

まず、そのパターンをどのようなときに使うのかという「状況」(Context) が書かれて

います。区切りを示す「▼ その状況において」の後、その状況において生じやすい「問題」

(Problem) が太字で書かれています。その下には、その問題の解決を困難にしている原

因が「フォース」(Forces) として示されています。フォースとは、物事や人間について

の変えることができない力や法則性のことです。これらをすべて解決しなければならな

いため、問題の解決が困難になっています。そして、区切りを示す「▼ そこで」のあ

と、その問題に対する「解決」(Solution) の考え方が太字で書かれています。「解決」は

抽象的に書かれており、それを具体的なレベルに落とすとどうなるかが、「アクション」

(Actions) の部分に書かれています。再び区切りを示す「▼ その結果」が来たあと、こ

のパターンを適用したときに生じる「結果」(Consequences) が書かれています。

学び手にこれからの社会を ” つくる ” 力を身につけて欲しい。

先生として、学び手のために何ができるだろうか?

社会や個人の生き方が大きな変化を迎えている今、変化に対応し、変化の中で新しいも

のを自らつくりだしていく力が求められている。しかし、そういった力は本を読んで物

事を記憶したり、人とコミュニケーションを取ったりするだけでは身につかない。どう

したら、学び手の ” つくる ” 力を育むことができるだろうか?

みんなで ”つくる ” プロジェクトに取り組む。

学び手と共に何かを ” つくる ” プロジェクトに取り組む。そのプロセスを通して、学び

手はもちろん、先生自身も自らが持っていた考え方や先入観、認識をつくり変えていく。

そのためには、「発見の拡がり」(No.1) を意識した学びの設計を行い、挑戦しがいのあ

る「ミッションの設定」(No.2) をして、自らがプロジェクトの中で ” 発見 ” を生み出す「生

成的な参加者」(No.3) として振る舞うことが求められる。

創造性を育む学びをデザインできる。” つくる ” プロジェクトによって生み出された成

果には、つくり手である先生自身、学び手自身の意志が映し出される。学び手は”つくる”

過程で経験した悩みや自分の意志が映し出された作品を前にして、自分自身と真剣に向

きあうことになる。また、他の学び手と紡ぎだした ” 発見 ” を一つの作品としてまとめ

るため、相手を受容することや自分の意見を主張する大切さを実感する。さらに、学び

手は自分よりも経験豊かな “ 先生 ” の ” つくる ” 姿を見ることで、よいものを生み出す、

ということを感覚的に知ることになる。こうした ” つくる ” 過程を通して学び手は ” つ

くる ” 力を身につけ、共に教え合い、成長し、仲間とともに社会をつくっていくことが

できる。

そこで

その状況において

その結果

状況(Context)

問題(Problem)

フォース(Forces)

解決(Solution)

アクション(Actions)

結果(Consequences)

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つくる教育

No. 0

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みんなで一つのものをつくることで、認識をつくりかえていく。

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学び手にこれからの社会をつくっていく力を身につけて欲しい。

先生として、学び手のために何ができるだろうか?

社会や個人の生き方が大きな変化を迎えている今、変化に対応し、変化の中で新しいも

のを自らつくりだしていく力、創造性が求められている。しかし、そういった能力は教

科書を読んで物事を記憶したり、人とコミュニケーションを取ったりするだけでは育ま

れない。どうしたら、学び手に社会をつくり出していく力を身につけることができるだ

ろうか?

みんなでつくるプロジェクトに取り組む。

答えのない問題に対して、仲間とコラボレーションしながら、ひとつのものを生み出す

プロジェクトに取り組む。その活動のプロセスを通して、学び手はもちろん、先生自身

も持っていた考え方や先入観、認識をつくり変えていく。そのためには「発見の拡がり」

(No.1) を意識したプロジェクトの設計を行い、「果たすべきミッション」(No.2) を設定

して、自らがプロジェクトの中で発見を生み出す「生成的な参加者」(No.3) として振る

舞うことが求められる。

学び手とともにひとつのものをつくる経験によって、先入観や認識がつくり変わってい

く。このようなプロジェクト活動のプロセスを通して創造性が育まれる。つくりあげる、

という目標を達成するために、情報の見つけ方やコラボレーションのコツを、なぜ・ど

のように学ぶべきかを学び手は実践を通して身につけていく。このように学び手は共に

教え合い、成長し、仲間とともに社会をつくっていく力を身につけることができる。

そこで

その状況において

その結果

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発見の拡ひ ろ

がり

No. 1

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自分を見つめ、相手を知って、みんなでつくる。

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「つくる教育」(No.0) を実現する学びのデザインをしたい。

学び手の経験が浅いうちから、チームでつくるプロジェクトに取り組むことは難しい。

何かをつくりだすプロジェクト活動においては、1つの成果を生み出すために複数人が

集まってコラボレーションすることが求められる。そのためには、相手の意見を受け入

れ、その上で自分の意見をきちんと主張することが重要である。しかし、多くの学び手

がそのような能力をはじめから備えているわけではない。

学び手が次第に発見を拡げていくように学びをデザインする。

創造性を育むには、発見が段階的に拡がっていくことを目指して学び全体を設計する必

要がある。まず、学び手が自分自身を見つめ直し、自分の新たな側面を発見する。次に、

他者との考え方の違いを理解し、多様な考え方があることを発見する。さらに発見を段

階的に拡げていきながら、チームでコラボレーションしながら新たな発見を生み出せる

ようにする。この過程で、どんな小さな事でも何かを発見することがプロジェクト活動

では大切だと示す。

学び手はまず自分について見つめ直すことで、自身の認識や先入観を理解することがで

きる。次に、他の人との考えの違いを発見することで、自身の世界観がゆさぶられる経

験をする。これらの発見によってプロジェクト活動において、より大きな成果を生み出

すことができる。「つくる教育」(No.0) を行うにあたって、このように段階的な発見を

目指すことで、学び手はつくる力を徐々に身につけていく。ただし、段階を意識しすぎ

ると、個人の作業の時間、対話する時間、みんなで何かつくる時間を完全に分断してし

まいがちになってしまうので、あくまで発見が拡がっていくことを意識してプロジェク

ト計画を立て、 「きっかけの違和感」(No.12) でプロジェクトごとの学びをつなげていく

と良い。

そこで

その結果

その状況において

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果たすべきミッション

No. 2

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挑戦しがいのあるテーマを設定する。

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プロジェクトのテーマを決めようとしている。

学び手に教えるべきことや学び手の興味・関心を意識しすぎると、プロジェクト活動が

魅力的ではなくなってしまう。

プロジェクト活動を有意義なものにしようと思うと、教科学習の内容と関連づけやすい

テーマを設定したくなる。しかし、このようなテーマ設定だとプロジェクトの意図が学

び手に見えやすく、座学形式の勉強の延長になってしまう。一方で、学び手の興味・関

心に合わせてテーマを設定しようとすると、学び手にとってただ楽しいだけの活動にな

りがちである。

挑戦しがいを感じられ、これからの社会をつくることにつながるミッションを設定する。

「なぜこのプロジェクトに取り組む必要があるのか」と問われたときに、はっきりと答

えられるような、学び手と先生の双方にとって意義深いテーマを設定する。その際、抽

象的で汎用性があり、決まった答えのない問いを立てることを意識する。たとえば、プ

ロジェクトで滑車の原理を取り上げる際は、「どうして小さな力で大きなものが動くの

か」という現象の背後にある ” なぜ ” を学びとることを目標にする。単にテーマを設定

するというより、そのプロジェクトが果たすべきミッションを設定するように意識する

とよい。

ひとつの知識から関連する様々な発見を生みだすことのできる魅力的なプロジェクト活

動になる。先生自身も正解がわからない問いであるため、あらかじめ道筋が決められて

いるわけではない、学び手が自分たちで話し合って始めるプロジェクトになる。そのた

め、「ミッションを達成するにはどんなことを、どんなふうに進めたらよいか」をプロジェ

クトメンバー全員で議論し決定することができる。また、ミッションが社会的な意義を

持つものであるため、学び手も本気でプロジェクトにコミットできるようになる。

そこで

その結果

その状況において

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生成的な参加者

No. 3

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学び手とともに、つくりながら発見を生み出していく。

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「果たすべきミッション」(No.2) を決めた後、プロジェクトに取り組んでいる。

知識を伝えるだけだと、学び手はつくる力を身につけられない。

プロジェクトに取り組む際、プロセスや手順は教えることができても、暗黙的に持って

いる考え方やコツは言葉にすることが難しく、伝えきれない。特に、なぜ・なにを・ど

のようにやるのかは、口頭でアドバイスをするだけでは、学び手にとって活用できない

知識になってしまいやすい。

学び手と共につくることを通じて発見を生み出し、プロジェクトを創造的なものに変え

ていく参加者になる。

つくるプロセスに参加することで学び手の発見を生み出し、認識をつくりかえていく。

参加するときは誰よりも、なぜ・なにを・どうやってつくるのかを常に意識する。その

うえで、学び手に対して「創造への挑発」(No.9) をしたり、「未来をうつす鏡」(No.8)

になることで、プロジェクトに勢いをつける。ときには学び手に「つくり方をみせる」

(No.10)ことで、どうやってつくるのかを体験的に伝えていく。プロジェクトの企画

をする段階では「発見の拡がり」 (No.1) を踏まえ、「挑戦の領域」(No.13) を定めること

も重要である。

暗黙的に持っている考え方やコツ、実践の中で大切にしていることを体験的に教えるこ

とができる。その過程を通して、学び手はつくる力を身につけていく。知識や経験が豊

富な参加者がいることによって、学び手だけでは辿りつけないようなレベルの創造活動

に携わることができ、より深いレベルまで学べる。先生である自身も、学び手からの質

問や発見から、新たな発見をすることがある。このように先生と学び手がともにつくる

ことに取り組み、ともに教え合うことによって「つくる教育」(No.0)が実践される。

そこで

その結果

その状況において

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つながりの発掘

No. 4

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学び手の経験や興味をプロジェクトにつなげる。

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様々な興味・関心を持ったメンバーと新しくプロジェクトを始める。

プロジェクトのテーマや活動内容を説明しても、学び手があまりやる気を示さない。

プロジェクトの内容を説明するだけでは、学び手たちにそのプロジェクト活動に対して

興味を持ってもらえないことが多い。しかし、活動内容を学び手たちの個々の興味にぴっ

たり合わせるのも難しい。しかし、全く興味が持てないままでは、学び手は計画された

活動をこなすだけになってしまう。そのような姿勢では自ら工夫したり必要な知識を調

べたりする能動的な行動は起こりにくい。

学び手たちの個々の経験を掘り下げて、学び手たちの興味とプロジェクトにつながりを

つくる。

まず、どんなことに取り組むのかを説明し、その後、学び手たちにプロジェクトのテー

マや活動の具体的な内容について、考えたことを語ってもらう。このとき、学び手がそ

う考えた理由や、そのもとになっている経験を聞き出すことで、取り組むプロジェクト

と学び手の間につながりを探っていく。その際、黒板やホワイトボードで「発見の編集」

(No.5) を行い、学び手から出てきた言葉どうしの関係も明らかにすると良い。

学び手が興味を抱くポイントを自ら見つけてプロジェクトに参加するようになる。自分

の興味とは関係ないだろうと思っていたことでも、違う見方を知ることで面白さに気づ

くことができる。この経験が、プロジェクトに取り組むときに「これの面白さはどこだ

ろう?」という観点で物事を捉える姿勢を養うことにつながる。また、お互いの考えを

語り合うことによって、他の学び手との相違点に気がつくことができる。それは学び手

にとって多様な価値観に触れ、価値観の違いを受け入れることにもつながる。

そこで

その結果

その状況において

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発見の編集

No. 5

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話し合いの軌跡を、新たな発見の種にする。

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学び手とプロジェクトについて自由に話し合いをしている。

ただ意見を出し合っただけでまとまりなく終わってしまうことが多い。

先生が聞いているだけで学び手に自由に議論させると、話し合いがまとまりのないもの

になり停滞してしまうことがある。しかし、積極的に先導すると、先生の発言に沿うよ

うに話し合いが進んでしまい、学び手の意見を活かせない。これでは学び手はただそこ

にいるだけになってしまい、話し合いから自発的な学びを得られなくなる。

得られた意見を書き残し、記録した内容を自由に編集して発見を生み出す。

話し合いで出てきた意見を黒板や模造紙に書き写し、それらを結びつけて、プロジェク

トを前に進めるような発見を生み出す。意見を書き写すときはできるだけ多くの意見を

拾い、話し合いの軌跡として記録する。学び手がすぐに話し合いの軌跡を振り返れるよ

うに、記録する黒板や模造紙は学び手の目の届く範囲に掲示する。先生は、記録した内

容やそこから考えついたことを図や絵で残したり、プロジェクトに活かせるかどうかと

いう基準で意見を取捨選択したりする。

話し合いで参加者の口から出てきた意見だけでなく、可視化された意見を黒板や紙の上

で結びつけたり、図式化したりすることで新たな発想を生みだすことができる。話し合

いの軌跡を記録しておけば、話し合いの最中だけでなく、後のプロジェクトにおいても

新しい発見を生みだすために役立てることもできる。また発想を生み出すべく、多くの

意見拾うように先生自身も試行錯誤するようになるため、話し合いに勢いが生まれ、学

び手も意見を出しやすくなる。

そこで

その結果

その状況において

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予想外の学び

No. 6

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思い通りに進まないからこそ、得られる学びがある。

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プロジェクト活動のなかで、予想していなかった問題が起きた。

問題を一人で解決しようとして、かえってプロジェクトの進行に支障をきたしてしまう。

予想外の問題が起こると、教育に失敗は許されないという責任感や焦りから、カリキュ

ラムや授業計画に沿うようにプロジェクトを軌道修正したくなる。しかし、それでも生

じた問題をすぐに解決できるとは限らない。それどころか、焦ってとっさに思いついた

考えで解決しようとし、かえって事態を複雑にしてしまうこともある。

問題が予想外であるということを包み隠さず、学び手と一緒に解決策を探る。

まず、今起きている問題が予想外のものであることを学び手に率直に伝える。そして、

問題が起きた理由と、これからプロジェクトをどのように進めていけば良いかを学び手

とともに考える。たとえば、実験で仮説と違った結果が出てしまったときは、実験結果

がはじめに予想していたものとは違うこと、これから実験をどう進めればよいかわから

なくて困っていることを学び手に正直に伝える。その際、先生も自分の意見をはっきり

と伝え、学び手と一緒に解決策を考える。

予想外の出来事が生じたとき、どのように問題を分析し解決していけば良いか、学び手

は体験的に学べる。また、学び手は自分自身で解決策を考え始め、先生もプロジェクト

を停滞させることなく解決策を考えられる。その過程で、学び手から生まれたアイデア

が現状を打破する突破口になることもある。また、プロジェクトのどの段階で生じた問

題なのか、問題の原因は何なのかを話し合うことは、プロジェクトのプロセスを振り返

るきっかけにもなり、新たな学びのきっかけにすることができる。

そこで

その結果

その状況において

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ステージに上がる

No. 7

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外部からのリアルな評価を受ける。

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「つくる教育」(No.0) を実践するにあたり、どのように学び手を評価するか考えている。

自分も関わったプロジェクト活動において、学び手を客観的に評価するのは難しい。

プロジェクト活動の評価は、実践の中での学び手の動きや貢献度などを考慮して行うこ

とが多いが、学び手の動き全てを観察するのは困難である。また、プロジェクトの成果

によって評価をつける場合にも、途中経過を知ってしまっているため、成果に対して客

観的な判断をすることも簡単ではない。

外部の人に向けて発表する機会を設け、フィードバックをもらう。

プロジェクトの成果を外部の人に披露し、フィードバックをもらう場を設ける。その際、

「生成的な参加者」(No.3) として学び手とともに発表の内容や資料をつくりこむ。また、

建設的なフィードバックが受けられるようにコメントシートを用意したり、率直な意見

をもらいたいという意思を事前に示す。

外部から成果への率直な評価を受けられるので、客観的な視点が得られる。学び手はチー

ムの外へ成果を発表するために、恥ずかしいものは見せられないと成果のつくり込みへ

のモチベーションが高まる。また、成果の魅せ方やプレゼンテーションの方法も学ぶこ

とができる。そして、率直なフィードバックを受けることは、次のプロジェクトへのモ

チベーションにつながる。

そこで

その結果

その状況において

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未来をうつす鏡

No. 8

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学び手のアイデアの「ちょっと先」を見せる。

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プロジェクトが思うように進まず、学び手が悩んでいる。

プロジェクトの進行を優先し、学び手ひとりひとりの悩みをないがしろにしてしまう。

プロジェクト活動において先生は、プロジェクトを前へ進めることにとらわれやすい。

プロジェクトが進まないと学びの質が下がってしまうと考えがちだからである。しかし、

学び手は悩みを抱えたままでは、プロジェクトに対するモチベーションを維持すること

ができない。そのため、チームの士気は次第に下がり、プロジェクトを続けること自体

が難しくなる。

学び手が抱えている問題を明確にしたり考えを発展させたりすることを通じて、プロ

ジェクトを一歩先に進めるアイデアを導き出す。

学び手の考えを聞いて整理するだけではなく、自分だったらどのようにするかを考え、

プロジェクトに寄与するアイデアを学び手と共に導き出す。たとえば、学び手が語って

いることを踏まえて、「君のやりたいことってこういうことかな?」、「その考え方だっ

たら、もっとこうしたほうがいい」と学び手の考えを発展させるような提案をする。学

び手の考えを否定して正しい答えを述べようとするのではなく、学び手と一緒に答えを

探していく。

プロジェクトを停滞させずに学び手の悩みを解消することができる。さらに、学び手は、

自分たちの意見や思いつきをプロジェクトに寄与するアイデアへと発展させていく。そ

の過程を通じて、先生の意見やアイデアをアドバイスとしてただ受け入れるのではなく、

客観的・俯瞰的に自分たちの現状を見つめ直す材料として利用するようになる。また、

プロジェクトを進めるうえで必要な発想や考え方を身につけることができる。こうして、

学び手たちは自律的に選択・判断しながら質の高いアウトプットを追究し続ける姿勢を

獲得していく。

そこで

その状況において

その結果

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創造への挑発

No. 9

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挑発的な言葉が、つくりこみの原動力になる。

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プロジェクトの成果がとりあえず形になり、修正していく段階になった。

学び手のつくり込みへのモチベーションが上がらない。

つくる経験がまだ浅い学び手は、成果が一度形になった時点で、この程度で良いだろう

と思いがちである。先生から見ればそれは妥協だが、実際、学び手はそれ以上のクオリ

ティの上げ方をわからずにいることが多い。しかし、どこをどう改善すべきか、細かく

指摘するだけでは、学び手は先生に言われたことをその通りに直すだけになってしまい、

自分自身で考えて改善に取り組むことができない。

つくることに学び手をかき立てる、挑発的な言葉を投げかける。

つくりあげようとしている成果の理想像と現状との間に、まだ差があることを指摘する。

そして疑問に思ったことや、不十分だと思うことを学び手に投げかける。あるいは、他

の学び手の工夫している様子を見せてみる。学び手に悔しいと感じさせたり、負けん気

に火をつけたりするように、多少強調して言葉を投げかけてもよい。

挑発されることで、学び手は現状の成果のクオリティがまだ低いものだと自覚できる。

また、成果に対してどことなく物足りなさを感じていた場合には、その感覚の重要性に

気づくことができる。そして、プロジェクトメンバー全員が納得できるクオリティを目

指して、もう一度プロジェクトに向き合うことができる。学び手は挑発された経験をも

とに、学び手同士でもクオリティにこだわり、刺激し合う文化が生まれ、さらなる可能

性を自分たちで模索できるようになる。

そこで

その結果

その状況において

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つくり方をみせる

No. 10

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実際にやってみせることで、創造のブロセスに参加する。

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「ステージに上がる」(No.7) ための追い込みをしている。

成果のクオリティが対外的に見せられるレベルに到達していない。

学び手はつくり込みで目指すべきレベルをよく理解できておらず、つくり込みの方法も

よくわかっていないことがある。そのため、対外的に発表できるようにつくり込まれた

成果を学び手だけでつくるのは難しい。しかし、アドバイスをしたり、参考となる資料

を渡したりするだけでは、どのようにクオリティをあげるか、ということまでは伝えき

れない。

創造のプロセスやその方法を学び手に伝えながら、つくっているものに手を加えていく。

現状の成果の問題点や目指しているクオリティとの差を述べたうえで、つくり込みの方

法を示しながら学び手とともに成果に手を加える。このとき、成果を完成させてしまう

のではなく、学び手がつくり込む作業に関わることのできる箇所を残しておく。例えば

発表のための資料を作成しているときは、学び手が作業している隣で先生も資料の一部

に手を加え、どのように修正する必要があったのかと、その理由を学び手に示す。その

中で自分自身が何を大事にしているのかを伝える。そのうえで、 学び手にも積極的に資

料の修正を行ってもらう。

学び手はつくっているものに実際に手を加えている先生の姿から、成果のクオリティを

高めるための知識・方法を学びとることができる。さらに学び手は先生の方法を基に、

クオリティの高め方を見よう見まねで試してみる。それに加えて学び手は、 成果のクオ

リティが高いとはどういう状態なのかを感覚として持つようになるため、 到達したいク

オリティにするために足りない部分をつくり込むようになる。また自分自身がどのよう

なこだわりをもってつくっているのか、という日頃意識していないことを再発見する機

会となる。

そこで

その結果

その状況において

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達成感の共有

No. 11

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達成感もみんなでつくる。

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プロジェクトが一段落した。

プロジェクトの成果を自分のものだと感じられず、目立った貢献をした一部のメンバー

だけでつくったもののように感じる学び手が出てきてしまう。

メンバー全員の貢献によってプロジェクトは成り立っているが、発言の回数や貢献の量、

その実感もメンバーごとに異なる。そのなかで、他のメンバーから大きく貢献したと感

じられているメンバーは目立ちやすい。つくることは苦しみを伴うため、自分の貢献が

評価されないと、ただつらいばかりの活動になってしまう。また、プロジェクト活動で

は役割を分担するため、プロジェクトの達成の瞬間に全員が立ち会えないことがある。

メンバー全員が成果をつくりあげた達成感を共有できるよう、記念の出来事をつくる。

メンバー全員で、普段とは違う何か特別なことを行う。このとき、皆がつくったのだと

いう実感が持てるような工夫をする。例えば、全員での議論で意見が出尽くして、模造

紙に考えがまとまったら、その模造紙を前に記念撮影をしてみる。あるいは、プロジェ

クトに一区切りをつけたすぐ後に打ち上げの食事会などお祝いのイベントを開いて、プ

ロジェクトを振り返るのも良い。

学び手はプロジェクトが自分自身の貢献があってこそのものだと感じられ、大きな達成

感を得る。そして、他の学び手や成果そのものにも愛着が湧く。また全員でつくりあげ

た経験は、次のつくる活動に取り組むモチベーションを高める。さらに、プロジェクト

の区切りをつけることで、今までつくることに夢中になっていたところから離れ、つく

り上げた成果物の意味や成果物をどう活かすかを冷静に考えられるようになる。しかし、

プロジェクトの区切りを意識させすぎると、プロジェクトでの経験がその場で完結して

しまい、学びをつなげていくことができなくなってしまうことがある。そのため、先生

は常に「きっかけの違和感」(No.12) を実践し続ける必要がある。

そこで

その結果

その状況において

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きっかけの違和感

No. 12

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学び手の心に引っかかりをつくり、発見につなげる。

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ひとつのプロジェクトが終わり、振り返りを行っている。

学び手の感想や反省を共有するだけで振り返りが終わってしまう。

反省点を考えるだけで終わるのがが振り返りのように思われがちであり、振り返りの中

だけでは発見を生むことは難しい。また、学び手の気づきや発見を計画的に起こすこと

は困難であり、最後の振り返りの中で見い出せるとは限らない。

学び手の心に違和感をつくりだし、次のプロジェクトの中でも考えるきっかけをつくる。

振り返りの際に、プロジェクトによって明らかになったこととそうでないことを整理し

たり、学び手に対して疑問を問いかけたりして、学び手の心に引っかかりや違和感をつ

くる。たとえば、プロジェクトの中でやり残した点や成果に対 する外の人からの評価

への違和感、失敗の原因などを学び手の心に留めるようにする。そして、次のプロジェ

クトが始まったときやその途中にも、その違和感について考える機会を設ける。

プロジェクトの終わりに違和感をつくることで、つくる中での疑問や違和感をメンバー

と確認することができる。また、その後のプロジェクトの始まりや途中でも残った違和

感について折に触れて振り返ることで、違和感を新たな発見につなげることができる。

さらに、このような違和感を継続的につくっていくことで、「そういえばあの時も…」

という発見を学び手が違和感から自然に生み出すようになり、自らのつくる力を育むこ

とにつながる。

そこで

その結果

その状況において

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挑戦の領域

No. 13

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自分にとって新しい要素をプロジェクトの中に取り入れる。

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新たにプロジェクトを構想している。

以前行ったプロジェクトを使い回して実施すると、学び手の発見を素直に受け止められ

なくなってしまう。

「つくる教育」(No.0) を行うためには、常に新しいプロジェクトに取り組むことが望ま

しい。ただ、カリキュラムの都合上、同じ内容のプロジェクトをくり返さないといけな

いこともある。しかし、完全に同じプロジェクトを繰り返していると、学び手がつまず

きそうなポイントや、出てくるアイデア、得られる結果におおよその見当がついてしま

う。そのような状態では、先生はプロジェクトで得られる発見を学び手とわかちあうこ

とが難しくなる。学び手にとっても、先生があらかじめ答えを知っているプロジェクト

は緊張感がなく、取り組みがいの無いものに感じられてしまう。

新たな発見を学び手と共に探れるような取り組みをプロジェクトに加えていく。

自分自身にとって新しい取り組みとなる部分を活動内容に加え、常に発見があるように

プロジェクトを設計する。たとえば「果たすべきミッション」(No.2) を再考し、同じテー

マであっても今までとは違った成果を目指したり、人数や使用するものなどを変更して

制限を加えたりする。また、今までとは異なる進め方でプロジェクトに違う角度から取

り組み、プロジェクトの可能性をどのように広げられるか模索していく。

先生も学び手と同じように、発見の余地がある状態でプロジェクトに取り組むことにな

り、学び手は先生自身の挑戦する姿勢を学びとることができる。また、プロジェクトへ

の挑戦的な取り組み方を考えることで、先生はこれまでとは違った新しい視点でプロ

ジェクトに着目することになる。これによって、同じような内容のプロジェクトに取り

組んでいても、学び手とともに未知なる領域へと挑戦する「生成的な参加者」(No.3) で

あり続けることができる。

そこで

その状況において

その結果

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つくり続ける生き方

No. 14

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つくる仲間とともに、つくることに挑み続ける。

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「つくる教育」(No.0) を実践してきた。

プロジェクトの実践の中で、創造的につくることを教えられない。

学び手に創造性、生きていくことや社会をつくっていくことを伝えるのは、実践を通し

てでも難しい。それはどんなにいい言葉や分かりやすい図を用いたとしても、伝える自

分という枠を超えて教えられるものではないからである。

先生である自分自身がつくる ことに挑戦し、探求し続ける。

「つくる教育」(No.0) を目指してプロジェクトを繰り返し、様々な人々と教え合い、学

び続ける。常に挑戦し続けていくことで、自分の概念・認識をつくり続ける。 未知の

世界に挑戦し、失敗を繰り返しながら、何か ” つくる ” こと。これは不透 明な社会の中

で生きていくこと、未来をつくることに他ならない。学び手たちは背中を見て学び、成

長し、やがて「生成的な参加者」(No.3)として活躍することになる。学び手たちの学

びに終わりがないように、自らのつくる学びにも終わりはない。

そこで

その状況において

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Creative Education Project

「創造的な学び」を支援・実現することに挑戦するプロジェクトチーム。

本冊子は、慶應義塾大学 総合政策学部・環境情報学部に所属する、渋谷岳史、瀬下翔太、窪田哲朗、櫻庭里嘉、原島裕志によって、井庭崇(総合政策学部 准教授)、市川力(NPO法人 東京コミュニティスクール校長)の支援のもと制作された。

※本冊子についてのご意見・ご感想・お問い合わ せは、[email protected] まで、メールにてお願いいたします。

Creative Education Patterns (ver. 0.60)

〒252-0882 神奈川県藤沢市遠藤 5322 慶應義塾大学総合政策学部、環境情報学部 井庭崇研究室Creative Education ProjectE-Mail:[email protected] : http://ilab.sfc.keio.ac.jp/edu/

Creative Education Patterns

No.0 つくる教育No.1 発見の拡がりNo.2 果たすべきミッションNo.3 生成的な参加者No.4 つながりの発掘No.5 発見の編集No.6 予想外の学び No.7 ステージに上がるNo.8 未来をうつす鏡No.9 創造への挑発No.10 つくり方をみせるNo.11 達成感の共有No.12 きっかけの違和感No.13 挑戦の領域No.14 つくり続ける生き方

2013 年(平成 25 年)11 月 20 日Creative Education Project

櫻庭里嘉、原澤香織

発 行 日編 著イラスト

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©iLab Creative Education Project

CreativePatternsつくる教育のためのパターン・ランゲージ

Ver.0.60Creative Education Project

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