CPCまとめ - drmtl.orgdrmtl.org/data/105121700.pdf日皮会誌:105 (12),1700―1703, 1995 (平7)...

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日皮会誌:105 (12), 1700―1703, 1995 (平7) CPCまとめ CPCll題の演題を演者の方と座長で以下のようにまとめました。①は演者の診断,②は最終診断,③は演者の コメントです。 CPC-1 四肢の皮疹を伴った側頭動脈炎の一例 新田悠紀子,有沢祥子,池谷敏彦(愛知医大) ①四肢の皮疹を伴った側頭動脈炎 ②Eosinophilic temporal and cutaneus arteritis ③真鍋先生はHypereosinophilic syndrome (HES)。 側頭動脈のgranulomatous arteritisの像が我々の症 例には認められた事や壊死性血管炎を呈する蝉疹様皮 疹が認められる点, HESと考えにくい。原先生の診 断はEosinophilic temporal and systemic arteritis。 我々の症例に非常に類似しているが皮疹がない点がど うか?Dr. Ackermanの診断は木村病。木村病で壊死 性血管を呈す全身の滓疹様皮疹や側頭動脈炎を認めな いため否定したい。 CPC-2 白然消退を示す結節 河上真巳,中山英俊,三原基之(鳥取大) ①真皮にpseudo-Kaposi肉腫様変化を伴った局所多 発型ケラトアカントーマ ②同上 CPC一3 形質細胞浸潤を主所見とする皮下結節の一 徳王 宏,城野昌義,小野友道(熊本大) ①Morphea ②同上 ③Borrelia burgdorferi tこ対する抗体は陰性でした。 CPC~4 種々の治療に抵抗した多発性紅斑性結節 千釜理性,谷田宗男,照井 正,m上八朗(東北大) ①Lichen planus verrucosus (keratosis lichenoides chronica) ②同上 ③個疹が疵状の形態を示し,皮疹が自然消退すること なく増加し続ける臨床経過,またlichen planusに類 似する病理組織学的所見から上記と診断した。今回, 施行した免疫組織学的検査でも浸潤細胞は多くが CDj,CDI陽性細胞で病変部keratinocyteでは ICAM-1,HLA一DRの発現がみられる等の結果か らprurigoやlymphoma等は否定し得ると考えた。 過去の報告例と本症が類似していた点も考慮し,最終 診断とした。 CPC-5 紅皮症で発症したIBL -like T cell lymphomaまたはanaplastic large cell lymphoma 山口都美子,片桐一元,高安 進(大分医大),菊池 博(同輸血部),横山繁生(同中検病理) ①IBL-like T celllymphoma : Anaplastic large cell lymphoma ②Drug eruption ③リンパ節の組織標本でのモノクローナルなlarge cellの増殖よりlymphomaと当初診断した。 CPCに てのコメントをもとに a. 皮膚の組織像は中毒疹である。 b.リンパ節の組織像では,一部の濾胞と辺縁洞は 残存し,構造が保たれている。 c. 増殖している細胞は異形・分裂像に乏しく,ま た,被膜を超えて増殖していない。 d.経過が良好である。 以上より薬疹を最終診断とした。 CPC-6 腹部に多発性潰瘍を生じ,好酸球,大型異 型細胞の浸潤がみられた1例 田嶋 徹,今村亜紀子,本田まりこ,新村員人(慈恵 医大),山田統正(港区) ①lymphomatoid papulosis ②同上 ③病理組織からはlymphomaを否定することは出来 ない。自験例は皮疹の再発が見られなかったことと, 皮疹が通常よりも大型であったことが典型例とは異な っていた。 lymphomaが否定できないこと, lymphomatoid papulosisからlymphomaに移行する 例も10%みられることから,今後も注意深い経過観 察が必要であると思われる。 CPC-7 結節性紅斑類似の臨床像で発症し,1年後 に死の転帰をとった例

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Page 1: CPCまとめ - drmtl.orgdrmtl.org/data/105121700.pdf日皮会誌:105 (12),1700―1703, 1995 (平7) CPCまとめ CPCll題の演題を演者の方と座長で以下のようにまとめました。

日皮会誌:105 (12), 1700―1703, 1995 (平7)

CPCまとめ

 CPCll題の演題を演者の方と座長で以下のようにまとめました。①は演者の診断,②は最終診断,③は演者の

コメントです。

CPC-1 四肢の皮疹を伴った側頭動脈炎の一例

新田悠紀子,有沢祥子,池谷敏彦(愛知医大)

①四肢の皮疹を伴った側頭動脈炎

②Eosinophilic temporal and cutaneus arteritis

③真鍋先生はHypereosinophilic syndrome (HES)。

側頭動脈のgranulomatous arteritisの像が我々の症

例には認められた事や壊死性血管炎を呈する蝉疹様皮

疹が認められる点, HESと考えにくい。原先生の診

断はEosinophilic temporal and systemic arteritis。

我々の症例に非常に類似しているが皮疹がない点がど

うか?Dr. Ackermanの診断は木村病。木村病で壊死

性血管を呈す全身の滓疹様皮疹や側頭動脈炎を認めな

いため否定したい。

CPC-2 白然消退を示す結節

河上真巳,中山英俊,三原基之(鳥取大)

①真皮にpseudo-Kaposi肉腫様変化を伴った局所多

発型ケラトアカントーマ

②同上

CPC一3 形質細胞浸潤を主所見とする皮下結節の一

徳王 宏,城野昌義,小野友道(熊本大)

①Morphea

②同上

③Borrelia burgdorferi tこ対する抗体は陰性でした。

CPC~4 種々の治療に抵抗した多発性紅斑性結節

千釜理性,谷田宗男,照井 正,m上八朗(東北大)

①Lichen planus verrucosus (keratosis lichenoides

chronica)

②同上

③個疹が疵状の形態を示し,皮疹が自然消退すること

なく増加し続ける臨床経過,またlichen planusに類

似する病理組織学的所見から上記と診断した。今回,

施行した免疫組織学的検査でも浸潤細胞は多くが

CDj,CDI陽性細胞で病変部keratinocyteでは

ICAM-1,HLA一DRの発現がみられる等の結果か

らprurigoやlymphoma等は否定し得ると考えた。

過去の報告例と本症が類似していた点も考慮し,最終

診断とした。

CPC-5 紅皮症で発症したIBL -like T cell

lymphomaまたはanaplastic large cell lymphoma

山口都美子,片桐一元,高安 進(大分医大),菊池

博(同輸血部),横山繁生(同中検病理)

①IBL-like T celllymphoma : Anaplastic large cell

lymphoma

②Drug eruption

③リンパ節の組織標本でのモノクローナルなlarge

cellの増殖よりlymphomaと当初診断した。 CPCに

てのコメントをもとに

 a. 皮膚の組織像は中毒疹である。

 b.リンパ節の組織像では,一部の濾胞と辺縁洞は

残存し,構造が保たれている。

 c. 増殖している細胞は異形・分裂像に乏しく,ま

た,被膜を超えて増殖していない。

 d.経過が良好である。

 以上より薬疹を最終診断とした。

CPC-6 腹部に多発性潰瘍を生じ,好酸球,大型異

型細胞の浸潤がみられた1例

田嶋 徹,今村亜紀子,本田まりこ,新村員人(慈恵

医大),山田統正(港区)

①lymphomatoid papulosis

②同上

③病理組織からはlymphomaを否定することは出来

ない。自験例は皮疹の再発が見られなかったことと,

皮疹が通常よりも大型であったことが典型例とは異な

っていた。 lymphomaが否定できないこと,

lymphomatoid papulosisからlymphomaに移行する

例も10%みられることから,今後も注意深い経過観

察が必要であると思われる。

CPC-7 結節性紅斑類似の臨床像で発症し,1年後

に死の転帰をとった例

Page 2: CPCまとめ - drmtl.orgdrmtl.org/data/105121700.pdf日皮会誌:105 (12),1700―1703, 1995 (平7) CPCまとめ CPCll題の演題を演者の方と座長で以下のようにまとめました。

清原隆宏,熊切正信,清水忠道,小林 仁,大河原

章(北海道大),大貫正博(千歳市立)

①angiotropic lymphoma (ormalignant angioen-

dotheliomatosis)

②同上

CPC-8 Dermatomyofibromaか?

谷 昌寛(西神戸医療センター),小村明彦(西宮市

立中央),市橋正光(神戸大)

①Dermatomyofibroma (Plaqueformige dermale

Fibromatose)

②同上

CPC-9 質部腫瘤の1例

新見やよい,青木順子,青木見佳子,本田光芳(日本

医大),前田昭太郎,杉崎祐一(同病理),田中庸介,

1701

惣滑谷直孝(同第4内科),小泉 潔(同胸部外科),

米山雅雄(足立区)

①Extraskeletal osteosarcoma

②同上

CPC-10 放射線照射部位に生じた紅斑と腫瘤

小林順一,辻m 淳,太田浩平,永江洋之介,今山修

平,堀 嘉昭(九州大)

①Angiosarcoma

②同上

CPC-11 外陰部の潰瘍

石井祐子,村上信司,宮内俊次,大塚 寿,白石 聡

(愛媛大),佐伯典道(済生会今治)

①Basal cellcarcinoma

②同上

討論のまとめ

熊切正信(北海道大),田上八朗(東北大)

 5月20日,土曜日,午後3時55分から懇親会直前の6時29分まで,11症例について熱心な討議が行われた。

日皮会雑誌(105: 624-630, 1995.)に前もって症例を紹介し,考えられる診断名を応募したところ51大学を含む

62名から貴重なご意見をいただいた。さらに会場での討論を有意義にするため,病理学者である原 一夫(愛知

医大病理),真鍋俊明(川崎医大病理)の2先生の出席を仰いだ。また皮膚科医を代表し,城野昌義(熊本大学),

桐生美麿(北九州医療センター),谷口芳記(三重大),前田 学(岐阜大),清水 宏(慶応大),大原國章(虎の

門),坂本ふみ子(新潟大),三橋善比古(山形大)の8先生および海外からは皮膚病理組織学専門のアッカーマン

(A. Bernard Ackerman, MD ; Jefferson Medical College)先生に標本を回覧し,コメントをいただいた。

四肢の皮疹を伴った側頭動脈炎の1例,新田悠紀子,

有沢祥子,池谷敏彦(愛知医大)

 解答の集計では木村病が24票, angiolymphoid

hyperplasia with eosinophilia (ALH)が同じく24

票であった。つづいて,側頭動脈炎16票, hyper-

eosinophilic syndrome 11票, allergic

granulomatous angitis 6 票などであった。清水,ア

ッカーマンはじめ大多数の意見は木村病ないしは

ALHであった。しかし,好酸球浸潤,リンパ濾胞様

構造,皮下硬結,側頭部の索状結節での動脈炎の所見,

多発する滓疹のすべてを満足できる診断名はhyper-

eosinophilic syndromeであろうとする意見(真鍋)

力付1票あった。原はeosinophilic temporal and sys-

temic arteritisの診断を提示した。

自然消退を示す結節,河上真巳,中山英俊,三原基之

(鳥取大学)

 ブヨ刺傷を契機に生じた多発する紅斑,結節で,偽

上皮腫性増殖,角質嚢腫様構造があり,自然消槌を示

す痘痕がある。いわゆる毛包角化に似た角化に特徴が

ある。集計ではkeratoacanthomaが46票と圧倒的

であった。しかし,結節性岸疹が8票, pseudocar-

cinomatous hyperplasiaが4票, perforating der-

matoses 4 票, traumatic epidermal cyst 3 票,

pyoderma vegetansが1が票であった。コメンテイ

クー(三橋,大原,原,アッカヽ-マン)は,多発性の

ケラトアカントーマ(ときに家族性に発生する

Ferguson-Smith type)と診断した。しかし,結節性

岸疹の可能性(谷口),HPVの関係したepidermal

cystを否定するため,電顕,免疫組織でHPVの感染

の有無は調べておきたい(真鍋)との指摘があった。

Page 3: CPCまとめ - drmtl.orgdrmtl.org/data/105121700.pdf日皮会誌:105 (12),1700―1703, 1995 (平7) CPCまとめ CPCll題の演題を演者の方と座長で以下のようにまとめました。

1702

形質細胞を主所見とする皮下結節の1例,徳王 宏,

城野昌義,小野友道(熊本大学)

 隆起性皮膚線維肉腫を考えさせる皮下硬結で,病理

像は異型性がないが,形質細胞の密な浸潤であった。

集計ではcutaneous plasmacytosisが24票, plas-

macytoma 17票, pseudo-lymphoma 9票,B cell

lymphoma 6票, LE profundus (panniculitis) 6票,

morphea 4票などであった。形質細胞には異型性は

ないが,浸潤が高度なため,疑問を感じながらも,

plasmocytosisないしplasmacytomaを考える意見が

多かった。他方,ムチンの高度の沈着,リンパ球,形

質細胞浸潤を伴った皮下脂肪織炎を主体に考える立場

からはLE profundus (桐生,原)やmorphea (アッ

カーマン)のように膠原病を考えた。演者はその後の

経過で皮膚表面が象牙色になったことからmorphea

を主張した。

種々の治療に抵抗した多発性紅斑性結節,千釜理性,

谷m宗男,照井 正,田上八朗(東北大学)

 臨床像は丘疹ないしは結節の多発で,表皮肥厚と欄

密な単核球性細胞浸潤であり,特徴的な所見に乏しい。

集計でもhypertrophic lichen planus 32 票, prurigo

group 26票, multiple keratoacanthoma 8票,

hypertrophi DLE 3票, lymphoma 3票などであった。

扁平苔癖との意見(大原,原,坂本)が多く,とくに

hypertrophic lichen planusが指摘された。しかし一

方ではprurigo nodularis (桐生,アッカーマン)で

説明がつくのではないか,あるいは扁平苔癖も一つの

考えだが,菌状息肉症の可能性も捨て難い(清水)と

の意見があった。

紅皮症で発症したIBL-like T celllymphoma または

anaplasiticlarge celllymphoma, 山口都美子ほか

(大分大学)

 狭心症の治療後2週間で発症した丘疹の多発,リン

パ節腫脹,発熱で,皮膚の生検ではリンパ球浸潤があ

るが異型性はない。ところが,リンパ節では濾胞の破

壊。異型細胞のシート状増殖がある。また,強力な化

学療法を行わなかったが治癒し,再発がない。集計は

リンパ腫を考える意見と薬疹/中毒疹を考える意見が

対立した。T細胞リンパ腫(IBL type) 21票,

cutaneous T cell lymphoma 19票, malignant

lymphoma 16 票に対して, toxicoderma/drug erup-

tion 16 票, immunoblastic lymphadenopathy 6 票,

EB virus infection 3 票であった。なお,アッカーマ

ンの意見は菌状息肉症でよいが,リンパ節はIBLに

似るというものであった。

腹部に多発性潰瘍を生じ,好酸球,大型異型細胞の浸

潤がみられた1イ列,田嶋 徹ほか(慈恵医大)

 丘疹の多発で,一部はクルミ大までの潰瘍を形成し

ていた。好酵球性毛嚢炎で紹介されたが,壊疸性獣皮

症,悪性リンパ腫を疑って生検したところ,好酵球,

リンパ球,大型の異型性のある細胞のwedge-shaped

patternを示す浸潤であった。集計では

Lymphomatoid papulosisが52票と多数を占めた。

他の病名もmalignant lymphoma 8票,T cell

lymphoma 5票であり,アッカーマンは

lymphomatoid papulosisの像をとったリンパ腫との

診断であった。コメントもこの線に沿って遺伝子再構

成を問う設問があった。しかし, pyoderma gan-

grenosumとの見方も可能(三三橋)という意見が2票

あり, lymphocytoma cutis (pseudolymphoma)が

3票であった。

結節性紅斑類似の臨床像で発症し,1年後に死の転帰

をとった症例,清原隆宏ほか(北大)

 結節性紅斑類似の皮下硬結で,生検で血管内に腫瘍

細胞の塞栓像があり,血栓の形成もみられた。集計で

はmalignant endotheliomatosis (angiotropic large

cell lymphoma) 38票, malignant lymphoma 13票,

malignant histiocytosis 6票, angiosarcoma

(malignant endothelioma) 5票であった。検索の結

果,B細胞性悪性リンパ腫の性質を持つことが報告さ

れた。 malignant angioendotheliomatosisと呼ばれ

た疾患は近年angiotropic large cell lymphoma の名

称で呼ばれることが多い。 neoplastic angioendoth-

eliomaという従来の名称は変えた方がよいだろうと

の意見(原)も寄せられた。

8

Dermatomyofibromaヵり,谷 昌寛(西神戸医療セ

ンター)ほか

Page 4: CPCまとめ - drmtl.orgdrmtl.org/data/105121700.pdf日皮会誌:105 (12),1700―1703, 1995 (平7) CPCまとめ CPCll題の演題を演者の方と座長で以下のようにまとめました。

 ケロイドの好発する肩に,淡褐紅色の局面で,大き

さが4, 5cmの線維性腫瘍がある。病理組織像は線維

芽細胞よりも大型で,胞体が豊富ではあるが,平滑筋

細胞とも異なる細胞がfasciclesを形成する。der-

matofibromaで説明可能か,最近提唱されている

dermatomyofibromaに合致するかが話題となった。

集計はdermatomyofibroma (Kamino Hideko,

1992)が40票と多く, dermatofibroma 30票,

leiomyoma 3票, desmoid tumor 2 票であった。アッ

カーマンはplaque-like dermal fibromatosis (Heino

Hugel, 1991)の解答であったが, dermatomyofi-

bromaと同じ腫瘍を指すと考えられている。myofi-

broblastは通常smooth muscle actin も陽性であるが,

本例では陰性であることからdermatofibromaをと

りたいとの意見(清水)があった。

脊部腫瘤の1例,新見やよい,他(日本医大)

 12年間つづく皮下結節で,部分的に骨外性骨肉腫,

線維肉腫,悪性線維性組織球腫を考えさせる像がある。

統一的に骨外性骨肉腫と呼ぶことができるか,骨様の

変化を伴うことのある線維性腫瘍,あるいは皮膚付属

器腫瘍かが議論の対象となった。集計ではmalignant

fibrous histiocytoma (MFH)が28票であったが,

extraskeletal osteosarcomaが22票あり, malig-

nant pilomatricoma 7票, malignant mixed tumor 2

票などと付属器腫瘍が挙がった。腫瘍の周辺部に線維

肉腫~悪性線維性組織球腫に相当する組織像もみられ

るが,腫瘍の中心部は壊死巣で,骨,類骨に相当する

像があり,その外層には破骨型多核巨細胞,レース状

の類骨に囲まれた異型細胞が増殖するため,コメンテ

イターの多く(坂本,アッカーマン,原,真鍋)が骨

外性骨肉腫を支持した。

10

放射線照射部位に生じた紅斑と腫瘤,小林順一ほか

(九州大学)

 子宮頚癌への放射線療法部位に生じた暗紫色斑,有

痛性結節で,リンパの僻滞,放射線の影響によって生

じた血管肉腫ないしはリンパ管肉腫という印象であっ

た。集計ではangiosarcoma/malignant hemangioen-

dotheliomaが72票,そのなかでも放射線療法に関連

して生じた点を指摘し, Stewart-Treves症候群の名

を使用した解答が5票あった。他の診断は少数で,転

1703

移癌3票, sec十angiogenesis2票であった。多く

(アッカーマン,真鍋)が赤血球を含む管腔の形成,

細胞内の小管腔,ヘモジデリンの沈着,結節の周囲の

anastomosing vascular channel を重要視した。しか

し,単発性,孤立性の結節,血管周囲のrosette形成,

炎症反応がないことなどから,子宮癌の転移について

も検討する必要のあることが指摘(大原,坂本)され

た。

11

外陰部の潰瘍,石井祐子,他(愛媛大学)

 全体像は基底細胞上皮腫に似るが,細胞に異型性が

あり,主病巣から離れた神経周囲にも浸潤のある点が

この症例の一つの特徴である。 anaplastic basal cell

carcinoma (アッカーマン)は予想どおりの解答であ

った。集計では基底細胞上皮腫(癌)が43票で,汗

腺癌の23票,有棟細胞癌7票,転移性皮膚癌3票,

メルケル細胞癌2票,毛包癌2例であった。大原,原

はperineural invasion のあることを強調した。一方,

柵状配列はあるが,結合織間に散在性に浸潤する胞巣

では結合繊間の裂隙形成はみられない点,胞体の明る

い細胞がある点などから,転移癌を否定する必要性を

指摘(坂本)し,付属器癌(城野,前田), adenoid

cystic carcinoma (谷口)などを否定するための病理

組織学的検索を十分施行する必要性が指摘された。